特許第5792006号(P5792006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792006
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】カーテンエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/232 20110101AFI20150917BHJP
   B60R 21/213 20110101ALI20150917BHJP
【FI】
   B60R21/232
   B60R21/213
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-197448(P2011-197448)
(22)【出願日】2011年9月9日
(65)【公開番号】特開2013-56649(P2013-56649A)
(43)【公開日】2013年3月28日
【審査請求日】2014年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】舞田 昭大
(72)【発明者】
【氏名】小西 修平
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 智樹
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−201998(JP,A)
【文献】 特開2002−029360(JP,A)
【文献】 特開2011−001042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内側壁の上部にアシストグリップの一対の取付部が取り付けられた車両に搭載されるカーテンエアバッグ装置であって、
折り畳まれた状態で車両の前後方向に沿って配置されるとともに、前記車室内側壁の上方部に、一部が前記一対の取付部の下方を通って配置されるカーテンエアバッグと、
ガスを発生して前記カーテンエアバッグを下方に向かって膨張展開させるインフレータと、を備え、
前記カーテンエアバッグは、
対向する布の間に形成された膨張部と、
前記対向する布を接合して前記膨張部の外縁形状を規定する外縁接合部と、
前記対向する布を接合して前記膨張部内に形成され、上端が前記外部接合部に繋がり前記外縁接合部から前記膨張部内へ向かって延びる複数の内部接合部と、
前記アシストグリップよりも車両後方側で、前記インフレータが発生するガスを前記膨張部内へ供給するガス供給部と、を有し、
前記複数の内部接合部は、少なくとも、前記アシストグリップと前記ガス供給部の間、前記一対の取付部のうちの車両前方側の取付部の近接位置、及び、前記一対の取付部の間に配置されて、下方からガスが流入して膨張する近接気室を形成するカーテンエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内でカーテンエアバッグを膨張展開させて、カーテンエアバッグにより乗員を保護するカーテンエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の緊急時や衝突時に乗員を保護するため、エアバッグを備えた側壁用のエアバッグ装置が使用されている。エアバッグは、折り畳まれた状態で、車室内の上部に沿って取り付けられる。車室内の上部には、乗員を補助するため、アシストグリップが取り付けられている。エアバッグは、アシストグリップに近接して配置される。エアバッグ装置は、エアバッグをカーテン状に膨張展開させる。乗員は、エアバッグにより受け止められて保護される。その際、膨張展開するエアバッグにより、アシストグリップが破損することがある。
【0003】
図6は、従来のエアバッグ装置とアシストグリップの例を示す断面図である。図6Aは、エアバッグが膨張する前の図である。図6Bは、エアバッグが膨張した後の図である。
従来のエアバッグ装置100では、図6Aに示すように、折り畳まれたエアバッグ101が、ヘッドライニング92A内で車体99に取り付けられる。ヘッドライニング92A内には、車体99に固定された固定部材88が配置されている。アシストグリップ80は、車体99に取り付けられる取付部81と、乗員が掴む掴み部82を有する。取付部81は、ヘッドライニング92Aの挿入孔92Bに挿入されて、固定部材88に取り付けられる。これにより、アシストグリップ80が、エアバッグ101に近接する位置で、車体99に取り付けられる。
【0004】
エアバッグ101の膨張展開時には、図6Bに示すように、エアバッグ101が、ヘッドライニング92Aを押し開いて車室S内に展開する。ヘッドライニング92Aは、膨張するエアバッグ101により押されて大きく変形する。アシストグリップ80の取付部81は、ヘッドライニング92Aから受ける力により変形する。その結果、取付部81が大きなダメージを受けることがある。このように、従来のエアバッグ装置100では、エアバッグ101の膨張展開に伴い、アシストグリップ80が破損する虞がある。
【0005】
これに対し、従来、アシストグリップが大きなダメージを受けるのを防止したエアバッグ装置が知られている(特許文献1参照)。
従来のエアバッグ装置では、インフレータが接続される接続口部を、アシストグリップの近傍に配置する。また、エアバッグ内の上端をアシストグリップの近傍で下方にずらせて、ガスをアシストグリップの近傍で下方に迂回させる。これにより、アシストグリップが大きなダメージを受けるのを防止する。
【0006】
しかしながら、従来のエアバッグ装置では、エアバッグの上部が、最初に、アシストグリップの近傍で膨張する。また、エアバッグの上部は、ヘッドライニング内で、素早く、かつ、大きく膨張する。そのため、膨張するエアバッグの上部がアシストグリップを押して、アシストグリップがダメージを受ける虞がある。エアバッグの上部がヘッドライニングを大きく変形させて、アシストグリップが破損する虞もある。従って、アシストグリップの破損を防止する観点から、アシストグリップが受けるダメージを低減することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−1042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、アシストグリップに近接するカーテンエアバッグが膨張展開するときに、アシストグリップが受けるダメージを低減して、アシストグリップの破損を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車室内側壁の上部にアシストグリップの一対の取付部が取り付けられた車両に搭載されるカーテンエアバッグ装置であって、折り畳まれた状態で車両の前後方向に沿って配置されるとともに、前記車室内側壁の上方部に、一部が前記一対の取付部の下方を通って配置されるカーテンエアバッグと、ガスを発生して前記カーテンエアバッグを下方に向かって膨張展開させるインフレータと、を備え、前記カーテンエアバッグは、対向する布の間に形成された膨張部と、前記対向する布を接合して前記膨張部の外縁形状を規定する外縁接合部と、前記対向する布を接合して前記膨張部内に形成され、上端が前記外部接合部に繋がり前記外縁接合部から前記膨張部内へ向かって延びる複数の内部接合部と、前記アシストグリップよりも車両後方側で、前記インフレータが発生するガスを前記膨張部内へ供給するガス供給部と、を有し、前記複数の内部接合部は、少なくとも、前記アシストグリップと前記ガス供給部の間、前記一対の取付部のうちの車両前方側の取付部の近接位置、及び、前記一対の取付部の間に配置されて、下方からガスが流入して膨張する近接気室を形成するカーテンエアバッグ装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アシストグリップに近接するカーテンエアバッグが膨張展開するときに、アシストグリップが受けるダメージを低減できる。また、アシストグリップの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態のエアバッグ装置を示す図である。
図2図1の矢視X1−X1線で見たエアバッグと車両の断面図である。
図3図2の矢視X2−X2線で見たエアバッグと車両の断面図である。
図4】平面上に拡げたエアバッグを示す図である。
図5】車両内で膨張展開したエアバッグを示す図である。
図6】従来のエアバッグ装置とアシストグリップの例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のエアバッグ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態のエアバッグ装置は、車両内でエアバッグをカーテン状に展開させるカーテンエアバッグ装置(以下、単にエアバッグ装置という)である。エアバッグ装置は、車両に搭載されて、膨張展開するエアバッグにより乗員を受け止めて保護する。
【0013】
図1は、本実施形態のエアバッグ装置を示す図である。図1では、車両90に搭載したエアバッグ装置1を車室内から見て示している。また、車両90の側壁91とエアバッグ装置1を、車両90の後方側を省略して、かつ、車両90の幅方向から見て模式的に示している。エアバッグ装置1は、車両90の内面を透視して示している。
なお、本発明では、車両90における前方と後方を単に前方と後方といい、車両90における前後方向を単に前後方向という。また、車両90における上方と下方を単に上方と下方といい、車両90における上下方向を単に上下方向という。
【0014】
車両90は、図示のように、車室内の側壁91に、上方のルーフレール92、前方のフロントピラー(Aピラー)93、センターピラー(Bピラー)94、及び、後方のリアピラー(Cピラー)(図示せず)を備えている。また、車両90は、側壁91に、前部ドア95、後部ドア96、及び、ドア95、96の窓97、98を備えている。側壁91内で、窓97、98のガラスが開閉する。側壁91には、フロントピラートリム93Aと、ヘッドライニング92Aの一部が取り付けられている。フロントピラートリム93Aは、フロントピラー93に設けられる。ヘッドライニング92Aは、ルーフ(図示せず)とルーフレール92を覆う。
【0015】
車両90は、車室内に配置されたアシストグリップ80(図1ではニ点鎖線で示す)を備えている。アシストグリップ80の取付部81は、車室内の上部に取り付けられている。ここでは、アシストグリップ80は、前部ドア95の上方に、かつ、側壁91の上部に設けられる。取付部81は、側壁91の上部(ルーフレール92)に取り付けられる。
【0016】
エアバッグ装置1は、エアバッグ(カーテンエアバッグ)10と、筒状のインフレータ2を備えている。エアバッグ10は、膨張展開できるように折り畳まれて、車両90内に取り付けられる。その際、エアバッグ10は、例えば、下方の縁部(下縁部という)から上方の縁部(上縁部という)に向かって蛇腹状に折り畳まれる。又は、エアバッグ10は、下縁部から上縁部に向けて、かつ、側壁91側に巻かれてロール折りされる。或いは、エアバッグ10は、蛇腹状の折りとロール折りを複合した複合折りにより折り畳まれる。これらの折り畳みにより、エアバッグ装置1の作動時に、エアバッグ10が、側壁91(窓97、98)に沿って展開する。エアバッグ10は、乗員と側壁91の間で膨張展開する。エアバッグ10は、細長く折り畳まれた状態で、車室内の側壁91の上部に配置される。エアバッグ10は、前後方向に沿ってルーフレール92に取り付けられる。エアバッグ10は、リアピラーからフロントピラー93まで配置される。
【0017】
折り畳まれたエアバッグ10は、フロントピラートリム93Aとヘッドライニング92A内に配置される。エアバッグ10は、固定手段(図示せず)により車体99に固定される。フロントピラートリム93Aとヘッドライニング92Aは、車体99に取り付けられて、エアバッグ10を覆う。エアバッグ10の前方部11は、フロントピラートリム93A内で、車体99に取り付けられる。また、折り畳まれたエアバッグ10は、アシストグリップ80に近接して配置される部分12を有する。エアバッグ10の一部が、アシストグリップ80に沿って配置される。アシストグリップ80及び取付部81は、折り畳まれたエアバッグ10の近傍で車体99に取り付けられる。
【0018】
インフレータ2は、シリンダタイプのガス発生装置である。インフレータ2は、エアバッグ10内に挿入されて、エアバッグ10内でガスを発生する。インフレータ2は、長手方向の一端部に、複数のガスの噴出口2Aを有する。インフレータ2は、センターピラー94の上方に配置されて、ルーフレール92に取り付けられる。インフレータ2は、固定手段(図示せず)により、ヘッドライニング92A内で車体99に固定される。車両緊急時や衝撃検知時に、インフレータ2は、複数の噴出口2Aからガスを発生し、エアバッグ10にガスを供給する。このガスにより、エアバッグ10を、側壁91の上部から下方に向かって膨張展開させる。エアバッグ10は、側壁91に沿ってカーテン状に膨張展開する。また、エアバッグ10の一部は、アシストグリップ80の近接位置から下方に展開する。
【0019】
図2は、図1の矢視X1−X1線で見たエアバッグ10と車両90の断面図である。図2では、アシストグリップ80を、取付部81を含む断面図で示している。図3は、図2の矢視X2−X2線で見たエアバッグ10と車両90の断面図である。図3では、エアバッグ10を点線で示している。
アシストグリップ80は、図示のように、一対の取付部81と、乗員が掴む掴み部82を有する。一対の取付部81は、それぞれ掴み部82の端部に形成され、掴み部82から同じ方向に突出する。取付部81の先端には、環状の突起81Aが形成されている。
【0020】
車両90は、車体99(ルーフレール92)に固定された一対の固定部材88を備えている。固定部材88は、アシストグリップ80が取り付けられるブラケットであり、ヘッドライニング92A内に配置される。アシストグリップ80の取付部81は、ヘッドライニング92Aの挿入孔92Bに挿入されて、固定部材88の取付孔89に押し込まれる。取付部81の突起81Aが、取付孔89に押し込まれて、固定部材88に固定される。これにより、一対の取付部81が、一対の固定部材88に取り付けられる。アシストグリップ80は、折り畳まれたエアバッグ10に近接する位置で車体99に取り付けられる。
【0021】
折り畳まれたエアバッグ10は、アシストグリップ80が取り付けられた位置のヘッドライニング92A内に配置される。エアバッグ10の一部は、アシストグリップ80と固定部材88の下方又は側方に近接する。膨張展開時に、エアバッグ10は、フロントピラートリム93Aとヘッドライニング92Aを押し開いて、車室S内に展開する。アシストグリップ80の周辺部では、エアバッグ10が、ヘッドライニング92Aを下方に変形させて車室S内に展開する。
【0022】
図4は、平面上に拡げたエアバッグ10を示す図である。図4では、エアバッグ10内のガスの流れを矢印で示している。また、図4には、アシストグリップ80を二点鎖線で示している。
エアバッグ10は、図示のように、前後方向に長い袋体であり、例えば、樹脂を被覆した布からなる基布により製造される。ここでは、エアバッグ10は、乗員側の表基布(表パネル)13と、側壁91側の裏基布(裏パネル)14とを有する。また、エアバッグ10は、連結ベルト20と、複数(図4では、6つ)の固定布21〜26と、筒状のガス供給部27を有する。ガス供給部27内には、インフレータ2(図4では図示せず)が挿入される。
【0023】
エアバッグ10の前方端は、連結ベルト20によりフロントピラー93に連結される。複数の固定布21〜26は、エアバッグ10の上縁部に一体に形成されている。連結ベルト20と固定布21〜26は、ボルト等からなる固定手段(図示せず)により、フロントピラー93とルーフレール92に固定される。エアバッグ10は、固定布21〜26により車体99に取り付けられる。
【0024】
表基布13と裏基布14は、同じ形状に形成され、重ね合わせて、外縁接合部15で接合される。基布13、14は、対向して配置されて、互いの間に膨張部30を形成する。膨張部30は、インフレータ2が発生するガスにより膨張する。膨張部30は、外縁接合部15により区画されて、エアバッグ10の対向する布(基布13、14)の間に形成される。外縁接合部15は、膨張部30の外縁形状を規定する。基布13、14は、外縁接合部15で、縫製及び接着により接合される。即ち、基布13、14は、外縁接合部15に沿って、1周又は複数周縫製されるとともに、縫製した部分が接着剤によりシールされる。これにより、基布13、14は、気密状に接合される。
【0025】
エアバッグ10には、外縁接合部15により、前膨張部31、後膨張部32、及び、連結膨張部33が形成される。膨張部31〜33は、全体としてエアバッグ10の膨張部30を構成する。前膨張部31は、エアバッグ10内で前方に配置される。前膨張部31は、前部ドア95の窓97とセンターピラー94の側方で膨張して、主に前席の乗員を受け止める。後膨張部32は、エアバッグ10内で後方に配置される。後膨張部32は、後部ドア96の上方で膨張して、主に後席の乗員を受け止める。連結膨張部33は、前膨張部31と後膨張部32を連結する。3つの膨張部31〜33の間には、非膨張部34が形成されている。非膨張部34は、膨張部30の外に設けられる。
【0026】
ガス供給部27は、エアバッグ10内にガスを供給するための開口部である。ガス供給部27は、エアバッグ10の前後方向の中間に形成され、前膨張部31の後方端に開口する。基布13、14は、ガス供給部27において、エアバッグ10の上縁部から斜め上方に突出する。基布13、14の縁部は、先端の挿入口27Aを除いて、外縁接合部15から連続して接合される。これにより、ガス供給部27は、両端が開口した筒状に形成され、エアバッグ10の上縁部に一体に設けられる。ガス供給部27の内部は、一端の挿入口27Aでエアバッグ10の外部に繋がり、他端で膨張部30の内部と繋がる。
【0027】
インフレータ2は、挿入口27Aからガス供給部27に挿入されて、エアバッグ10内に配置される。例えば、インフレータ2は、ガスを整流するディフューザを設けたガス供給部27内に挿入される。ガス供給部27は、バンド(図示せず)で締め付けられて、インフレータ2に気密状に固定される。インフレータ2は、ガス供給部27内でガスを発生する。ガス供給部27は、インフレータ2が発生するガスをエアバッグ10内へ供給する。ガスは、ガス供給部27からエアバッグ10の膨張部30へ供給される。ガスは、前膨張部31へ供給されるとともに、連結膨張部33から後膨張部32へ供給される。これにより、エアバッグ10が膨張展開する。
【0028】
エアバッグ10は、外縁接合部15(膨張部30)内に位置する複数の内部接合部(第1〜第4の内部接合部16〜19)を有する。内部接合部16〜19は、膨張部30内で、対向する基布13、14が接合された接合部である。基布13、14は、内部接合部16〜19で、外縁接合部15と同様に接合される。内部接合部16〜19は、それぞれ外縁接合部15から膨張部30内へ向かって延びるように膨張部30内に形成される。内部接合部16〜19の先端は、膨張部30内で環状に接合される。内部接合部16〜19の環状部16A〜19Aは、外縁接合部15から離して形成される。
【0029】
複数の内部接合部16〜19は、前後方向に離して配置され、膨張部30内にガスの流通部と気室を形成する。即ち、内部接合部16〜19は、膨張部30を区画する区画用接合部である。内部接合部16〜19は、エアバッグ10の対向する布(基布13、14)を接合して、膨張部30を区画する。内部接合部16〜19は、膨張部30に第1〜第5の気室35〜39を形成する。第1〜第3の内部接合部16〜18により、第1〜第3の気室35〜37が、前膨張部31に形成される。第1〜第3の気室35〜37は、前後方向に並べて配置される。これら気室35〜37では、上部と側部が閉鎖されて、下部のみが開放している。ガスは、第1〜第3の気室35〜37に下方のみから流入する。
【0030】
第1〜第3の気室35〜37は、エアバッグ10内で上方の端部から上下方向の中間部まで形成される。第1の気室35は、エアバッグ10内の最前方部に設けられる。第1の気室35は、エアバッグ10を車両90に取り付けるときに、フロントピラートリム93A内に配置される。第1の気室35は、エアバッグ10の膨張展開時に、フロントピラートリム93A内から車室S内に展開する。第2と第3の気室36、37は、第1の気室35の後方に設けられる。第2と第3の気室36、37は、エアバッグ10を車両90に取り付けるときに、ヘッドライニング92A内に配置される。第2と第3の気室36、37は、エアバッグ10の膨張展開時に、ヘッドライニング92A内から車室S内に展開する。
【0031】
第1〜第3の気室35〜37は、アシストグリップ80に近接する位置で膨張する近接気室40A〜40Cである。近接気室40A〜40Cは、ガス流入口41A〜41Cを有する。ガス流入口41A〜41Cは、近接気室40A〜40Cの下方の端部に設けられたエアバッグ10の非接合部からなる。近接気室40A〜40Cは、それぞれ1つのガス流入口41A〜41Cのみが開口するようにエアバッグ10の膨張部30に形成される。近接気室40A〜40Cのガス流入口41A〜41C以外の外縁は、閉鎖されている。ガス流入口41A〜41Cは、近接気室40A〜40Cに下方からガスを流入させる。近接気室40A〜40Cは、ガス流入口41A〜41Cのみからガスが流入して膨張する。
【0032】
エアバッグ10は、膨張部30に、アシストグリップ80に近接して配置される複数(ここでは3つ)の近接気室40A〜40Cを有する。近接気室40A〜40Cは、膨張展開するエアバッグ10のアシストグリップ80に近接する近接部28に設けられる。エアバッグ10の近接部28は、近接気室40A〜40Cからなる。また、膨張部30のアシストグリップ80に近接する部分(近接膨張部)も、近接気室40A〜40Cからなる。複数の近接気室40A〜40Cは、アシストグリップ80の複数の取付部81に近接して配置される。一方の取付部81(インフレータ2側の取付部81)には、1つの近接気室40Cが近接する。他方の取付部81には、複数(ここでは2つ)の近接気室40A、40Bが近接する。
【0033】
第1と第2の内部接合部16、17は、近接気室40A〜40Cを形成するとともに、アシストグリップ80に近接して配置される。第1の内部接合部16の上方の端部は、上記した他方の取付部81に近接する位置に形成される。第2の内部接合部17の上方の端部は、2つの取付部81の間の位置に形成される。このように、エアバッグ10は、1つの取付部81に近接して配置される複数の近接気室40A、40Bと、取付部81に近接して配置される第1の内部接合部16を有する。
【0034】
前膨張部31には、中間膨張部42と流通部43が形成される。中間膨張部42は、ガス供給部27と流通部43の間で膨張する気室である。中間膨張部42は、エアバッグ10の前後方向の中央部に配置されている。中間膨張部42は、第3の内部接合部18により、前膨張部31の後方端で、ガス供給部27から下方に向かって形成される。
【0035】
流通部43は、近接気室40A〜40Cの下方に設けられたガスの通路であり、エアバッグ10内の下方の端部に設けられている。流通部43は、近接気室40A〜40Cと外縁接合部15の間に位置し、エアバッグ10の下縁部に沿って形成されている。流通部43は、中間膨張部42の下部と複数の近接気室40A〜40Cの下部(ガス流入口41A〜41C)とを連通させる。ガスは、流通部43を通って、中間膨張部42から近接気室40A〜40Cまで流通する。流通部43は、ガスを、エアバッグ10の下縁部に沿って、複数のガス流入口41A〜41Cまで流通させる。ガスは、流通部43から、近接気室40A〜40Cのガス流入口41A〜41Cに流入する。近接気室40A〜40Cは、流通部43から流入するガスのみにより流通部43の上方で膨張する。
【0036】
インフレータ2が発生するガスは、ガス供給部27から中間膨張部42へ供給される。中間膨張部42は、最初に膨張を開始する。前膨張部31内で、ガスは、中間膨張部42から流通部43へ流れる。流通部43は、中間膨張部42から第1の気室35へ向かって膨張する。ガスは、流通部43を通過する間に、近接気室40C、40B(第3と第2の気室37、36)に流入する。また、ガスは、流通部43を通って、近接気室40A(第1の気室35)に流入する。近接気室40A〜40Cは、流通部43に続いて膨張を開始して、流通部43の膨張に伴い順に膨張する。近接気室40A〜40Cは、後方から前方の順に、タイミングをずらして膨張する。
【0037】
後膨張部32には、第4の内部接合部19により、第4と第5の気室38、39が形成される。インフレータ2が発生するガスは、連結膨張部33及び第4の気室38を通過して、第5の気室39に下部から流入する。第4と第5の気室38、39は、後膨張部32内で順に膨張する。
【0038】
エアバッグ装置1は、車両90に搭載された後、作動信号を受信したときにインフレータ2を作動させる。インフレータ2は、ガスを発生する。インフレータ2は、ガスを膨張部30へ供給して、エアバッグ10を膨張展開させる。エアバッグ10は、折り畳み形状を解消しつつカーテン状に展開する。エアバッグ10は、乗員と側壁91との間で膨張展開する。エアバッグ10は、前席と後席の乗員を受け止めて、乗員の頭部を中心に保護する。
【0039】
図5は、車両90内で膨張展開したエアバッグ10を示す図である。図5では、車両90の側壁91とエアバッグ装置1を、図1に対応させて示している。図5には、アシストグリップ80を二点鎖線で模式的に示している。
エアバッグ10は、図示のように、側壁91を覆うように、側壁91に沿って膨張展開する。エアバッグ10は、ドア95、96の位置まで展開して、窓97、98を塞ぐ。
【0040】
エアバッグ10の前膨張部31は、フロントピラー93からセンターピラー94までの領域(側壁91の前方領域)で膨張展開する。その際、中間膨張部42が、最初に膨張を開始して車室S内に展開する。中間膨張部42は、上方から下方に向かって展開する。エアバッグ10は、展開する中間膨張部42により下方に引っ張られる。これにより、中間膨張部42を含むエアバッグ10の中間部分が、ヘッドライニング92A内から引き出されて車室S内に展開する。中間膨張部42の引っ張りにより、近接気室40A〜40Cが、次第に車室S内に展開する。続いて、中間膨張部42から流入するガスにより、流通部43が膨張を開始する。流通部43内のガスは、近接気室40A〜40Cにガス流入口41A〜41Cから流入する。
【0041】
ガス流入口41A〜41Cは、近接気室40A〜40Cの下方の端部に設けられている。近接気室40A〜40Cは、下方から流入するガスにより、下方から上方に向かって膨張する。ガスがエアバッグ10内で下方に達して、エアバッグ10の一部が車室S内に引き出された後に、近接気室40A〜40Cの膨張が開始する。ガスは、エアバッグ10の各部を膨張させつつ、ガス流入口41A〜41Cまで流通して、近接気室40A〜40Cに流入する。また、ガス流入口41A〜41Cが車室S内に引き出されて展開するまで、近接気室40A〜40Cへのガスの流入が抑制される。そのため、近接気室40A〜40Cは、エアバッグ10内で遅れて膨張を開始する。近接気室40A〜40Cは、薄い状態でヘッドライニング92Aから引き出される。近接気室40A〜40Cは、ヘッドライニング92Aを大きく押し開くことなく、車室S内に展開する。
【0042】
近接気室40A〜40Cは、アシストグリップ80から離れた位置(下方)から膨張を開始する。また、近接気室40A〜40C内を流れる間にガスの勢いが低下するため、アシストグリップ80の近傍では、近接気室40A〜40Cの膨張速度が遅くなる。その結果、アシストグリップ80に近接する位置で、エアバッグ10が、素早く、かつ、大きく膨張するのが抑制される。エアバッグ10は、アシストグリップ80に直接又は間接的に強く干渉(又は衝突)することなく膨張する。これにより、アシストグリップ80がエアバッグ10に直接又は間接的に押されるのを防止する。また、エアバッグ10がアシストグリップ80に衝撃を加えるのを防止する。エアバッグ10がアシストグリップ80にダメージを与えるのも抑制する。アシストグリップ80の取付部81の周辺では、ヘッドライニング92Aの変形が小さくなるため、取付部81がヘッドライニング92Aから受ける力が小さくなる。取付部81の変形も抑制される。そのため、取付部81のダメージが小さくなる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、エアバッグ10が膨張展開するときに、アシストグリップ80が受けるダメージを低減できる。また、アシストグリップ80の破損を防止できる。アシストグリップ80が車体99から取れるのも防止できる。近接気室40A〜40Cをアシストグリップ80の取付部81に近接して配置することで、破損し易い取付部81を保護できる。その結果、アシストグリップ80の破損を、より確実に防止できる。
【0044】
中間膨張部42により、エアバッグ10と近接気室40A〜40Cが車室S内に迅速に展開する。これにより、アシストグリップ80に近接する位置で、近接気室40A〜40Cの膨張を抑制できる。ヘッドライニング92Aの変形も、より小さくなる。中間膨張部42と流通部43により、ガスがガス流入口41A〜41Cまで達するのが遅くなる。また、アシストグリップ80の近傍で、ガスの勢いが、より低下するとともに、近接気室40A〜40Cの膨張速度が更に遅くなる。従って、アシストグリップ80の破損を確実に防止できる。流通部43をエアバッグ10内の下方の端部に設けるときには、先に膨張するエアバッグ10の下部により、膨張前の近接気室40A〜40Cが強く引っ張られる。近接気室40A〜40Cは、より迅速に車室S内に展開する。
【0045】
アシストグリップ80に近接する内部接合部16、17により、膨張後のエアバッグ10を薄くすることができる。アシストグリップ80に近接する位置で、エアバッグ10の厚さが減少するため、アシストグリップ80が受けるダメージを、より低減できる。第1の内部接合部16は、アシストグリップ80の取付部81に近接して配置される。これにより、取付部81を保護できるため、アシストグリップ80の破損を効果的に防止できる。
【0046】
なお、近接気室40A〜40C内に、基布13、14を接合した接合部を設けるようにしてもよい。その際、接合部を、近接気室40A〜40Cのアシストグリップ80に近接する部分に設けることで、アシストグリップ80に近接するエアバッグ10の膨張を抑制できる。1つ又は2つの近接気室を、アシストグリップ80に近接して配置するようにしてもよい。4つ以上の近接気室を、アシストグリップ80に近接して配置してもよい。アシストグリップ80の複数の取付部81に、それぞれ複数の近接気室を近接させてもよい。
【0047】
基布13、14を外縁接合部15で縫製のみにより接合して、エアバッグ10を形成してもよい。エアバッグ10は、ジャカード織により形成してもよい。ジャカード織でエアバッグ10を形成するときには、膨張部30は、エアバッグ10のジャカード織りした布の間に形成される。エアバッグ10の対向する布が、互いの間に膨張部30を形成する。対向する布が接合された内部接合部により、近接気室が膨張部30に形成される。
【符号の説明】
【0048】
1・・・エアバッグ装置、2・・・インフレータ、2A・・・噴出口、10・・・エアバッグ、11・・・前方部、13・・・表基布、14・・・裏基布、15・・・外縁接合部、16〜19・・・内部接合部、20・・・連結ベルト、21〜26・・・固定布、27・・・ガス供給部、28・・・近接部、30・・・膨張部、31・・・前膨張部、32・・・後膨張部、33・・・連結膨張部、34・・・非膨張部、35〜39・・・気室、40A〜40C・・・近接気室、41A〜41C・・・ガス流入口、42・・・中間膨張部、43・・・流通部、80・・・アシストグリップ、81・・・取付部、81A・・・突起、82・・・掴み部、88・・・固定部材、90・・・車両、91・・・側壁、92・・・ルーフレール、92A・・・ヘッドライニング、93・・・フロントピラー、93A・・・フロントピラートリム、94・・・センターピラー、95・・・前部ドア、96・・・後部ドア、97、98・・・窓、99・・・車体、S・・・車室。
図1
図2
図3
図4
図5
図6