【実施例】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜
図6を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の壁面設置用フラップゲート式防水パネルの第1の例を説明する図である。
【0014】
本発明は、建物に衝突した津波が壁面を鉛直方向に遡上することを利用して防災パネルを起立させ、開口部を閉塞して建物内部への津波の浸入を防止するもので、例えば
図1に示すような構成である。
【0015】
1は例えばステンレス鋼等の金属で製作された扉体であり、内部を中空に形成して海水よりも小さな比重となるようにしている。このような扉体1とすることで、津波が建物2の正面から衝突せずに建物2の壁面を鉛直方向に遡上しなかった場合や、建物2の正面から衝突しても建物2の壁面を鉛直方向に遡上する勢いがなく、水位が徐々に上昇する場合であっても対応することができる。
【0016】
3は建物2の壁面に設けられた開口部2aの外側の外周壁面に設置する戸当りであり、例えば金属又はコンクリートで製作されている。この戸当り3は、開口部2aを閉塞する際には前記扉体1と接触して水密ラインを形成するため、戸当り3には必要に応じて水密ゴム(図示省略)が取り付けられる。また、戸当り3の下部には、扉体1
の先端側が起立揺動する際の中心となるヒンジ部1aの取り付け部3aが設けられている。このヒンジ部1aにも、必要に応じて水密ゴムが取り付けられる。
【0017】
図1に示した例では、戸当り3の下部に整流板5を設置したものを示している。この整流板5は、その下面が
建物2への取付け側に対して先端側が水平面から5〜80°上方に傾斜するように設置し、壁面を遡上してきた津波の流れを鉛直上向きから津波の上流方向に変え、津波の流れが扉体1に垂直に衝突しないようにして、扉体1に作用する津波の衝撃力を低減するものである。
【0018】
4は前記扉体1の側方から津波や徐々に水位が上昇する水が浸水することを防ぐために、前記戸当り3の両側に前記扉体1の側端面に沿って設置された側部戸当りであり、前記戸当り3と同様、例えば金属又はコンクリートで製作されている。この側部戸当り4と接触する扉体1の部分にも、必要に応じて水密ゴム(図示省略)が取り付けられる。
【0019】
この側部戸当り4の下面も、津波による衝撃力を低減するために、
建物2への取付け側に対して先端側が水平面から5〜80°上方
となるように傾斜させている。また、この側部戸当り4の内側には、扉体1を支持するための受け部材4aが設けられている。
【0020】
この受け部材4aにより支持される扉体1も、津波の流れを受け流して衝撃力を低減するように、
ヒンジ部1aに対して先端側が水平面から5〜80°上方に傾斜するような状態とすることが望ましい。津波の流れが扉体面に垂直に作用した場合、扉体1が受ける衝撃力が大きくなって、扉体1が衝撃的に起立揺動して損傷したり、扉体1が戸当り3に衝突して両者が損傷するおそれがあるからである。
【0021】
本発明の壁面設置用フラップゲート式防水パネルは、少なくとも前記の扉体1、戸当り3、側部戸当り4を備えたものであるが、
図1に示した例では、津波によって扉体1が動作する際の妨げとならない建物2の内部に、さらに手動の開閉装置6を設けている。
【0022】
この開閉装置6は、例えば、一端側を扉体1に接続したチェーン6aの他端側をスプロケット6bを介してチェーンブロック6cで巻き上げ、巻き戻すことで、時間的な余裕がある場合や動作点検時に、扉体1を手動で開閉するものである。
【0023】
このような本発明の防災パネルを建物2の開口部2aに設置した場合には、
図2に示すように津波が押し寄せ(a図)、建物2の壁面に津波が衝突して反射することで波高が増大し(b図)、この際に壁面を遡上する水の勢いを利用して扉体1を無動力かつ人為的操作無しで起立させ(c図)、開口部2aを閉塞して(d図)、建物内部への津波の浸入を防止できる。
【0024】
また、津波の勢いは無いが徐々に水位が上昇して水面が開口部2aにまで達する場合にも、扉体1が持つ浮力により、扉体1が水位上昇に合わせて無動力かつ人為的操作無しで起立して
図2(d)のように開口部2aを閉塞するので、建物内部への津波の浸入を防止できる。
【0025】
前記開閉装置6に換えて、
図3に示すような開閉装置7としても良い。この開閉装置7は、一端側を扉体1に接続したワイヤロープ7aの他端側を巻き付けたワイヤドラム7bと同軸にワイヤドラム7cを取り付けている。そして、このワイヤドラム7cに一端側を巻き付けたワイヤロープ7eの他端側に扉体1を起立させる方向に作用するカウンタウエイト7dを接続する一方、ワイヤドラム7cと同軸に扉体1の起立方向の回動のみを許容する一方向クラッチ7fを取り付けている。
【0026】
このような開閉装置7を設置した場合は、扉体1が起立する際の補助力としてカウンタウエイト7dが作用するので、津波が襲来して扉体1が起立し始めるとカウンタウエイト7dによりワイヤドラム7b,7cが回転して扉体1の起立を補助する。また、その際、扉体1が倒伏しようとしても、一方向クラッチ7fの作用により扉体1は倒伏せず、起立姿勢を保持できる。
【0027】
図3のように、一方向クラッチ7fと同軸に取り付けたスプロケット7gと減速機7iのスプロケット7j間をチェーン7hで連結しておけば、減速機7iのハンドル7mを回転させることにより、スプロケット7j、チェーン7hを介して回転力がワイヤドラム7c,7bに伝達され、ワイヤロープ7aを巻き取ることができる。
【0028】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0029】
例えば、
図4に示すように、雨除けのために金属又はコンクリート製の上部戸当り8を取り付けても良い。この上部戸当り8を取り付ける場合も、必要に応じて扉体1の先端に水密ゴムを取り付けて水密ラインを形成する。
【0030】
この上部戸当り8は、津波波力を受けることが予想されるので、
図5に示すように、上部戸当り8の先端部8aと基端部8bをヒンジ8cで連結したフラップ式とし、津波波力を受け流す構造としても良い。
【0031】
また、
図1,3,4,5に示した例では、開口部2aの閉塞を1枚の扉体1で行っているが、
図6に示すように、高さ方向に複数枚(
図6では2枚)の扉体1を取り付けて開口部2aを閉塞するようにしても良い。このようにすれば、壁面からの張り出し量を低減しつつ、高さ方向に長い開口部2aであっても閉塞することができる。