(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の室内に設けられ前記車両が障害物に衝突した場合の衝撃の程度を示す第1検出値を導出する第1検出手段と、前記車両の前部に配置され前記車両が障害物に衝突した場合の衝撃の程度を示す第2検出値を導出する第2検出手段とから、前記第1検出値、および、前記第2検出値を取得する取得手段と、
前記第1検出値から区間積分により第1積分値を導出し、前記第1積分値の変化量を導出し、前記第2検出値から前記区間積分により第2積分値を導出する導出手段と、
前記車両に備えられたエアバッグの展開の可否を前記第1積分値に基づいて判定する判定手段と、
前記判定手段による前記エアバッグを展開する判定情報を前記エアバッグの展開を制御する駆動回路へ出力する出力手段と、
を備える制御装置であって、
前記判定手段は、前記第2積分値が所定の閾値を超えた場合に、前記変化量に基づく判定を有効とすること、
を特徴とするエアバッグ制御装置。
(a)車両の室内に設けられ前記車両が障害物に衝突した場合の衝撃の程度を示す第1検出値を導出する第1検出手段と、前記車両の前部に配置され前記車両が障害物に衝突した場合の衝撃の程度を示す第2検出値を導出する第2検出手段とから、前記第1検出値、および、前記第2検出値を取得する工程と、
(b)前記第1検出値から区間積分により第1積分値を導出し、前記第1積分値の変化量を導出し、前記第2検出値から前記区間積分により第2積分値を導出する工程と、
(c)前記車両に備えられたエアバッグの展開の可否を前記第1積分値に基づいて判定する工程と、
前記工程(c)による前記エアバッグを展開する判定情報を前記エアバッグの展開を制御する駆動回路へ出力する工程と、
を備えるエアバッグ制御方法であって、
前記工程(c)は、前記第2積分値が所定の閾値を超えた場合に、前記変化量に基づく判定を有効とすること、
を特徴とするエアバッグ制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。以下に示す実施の形態は例示であり、本願発明の技術的範囲をこれらに限定するものではない。
【0015】
<第1の実施の形態>
<1.各センサ配置図>
図1は、車両1に備えられたフロントセンサ20(フロントセンサ20a、および、フロントセンサ20b)と、ECU(Electronic Control Unit)3に含まれるフロアセンサ30との配置を示す図である。
【0016】
フロントセンサ20a、および、フロントセンサ20bは車両1の前部に配置されている。詳細には、フロントセンサ20aは車両1の車体の右前方に設けられ、フロントセンサ20bは車両1の車体の左前方に設けられている。そして、それぞれのセンサは車両1のラジエータサポータ近傍やサイドメンバー等の位置に設けられている。
【0017】
フロアセンサ30は、車両1の車室内で車両1の略中央にあるフロアトンネル部に配置されている。なお、フロアセンサ30はECU3内に設けられている。
【0018】
<2.ブロック図>
図2は、フロントセンサ20a、20b、エアバッグ50、および、ECU3を主に備えるシステムのブロック図である。
【0019】
フロントセンサ20a、および、20bは、車両の1が障害物に衝突した場合の衝撃の程度を示す減速度を検出する。ここで、減速度とは車両が障害物に衝突した場合に失われる1秒あたりの速度であり、加速度を負の値としたものである。
【0020】
エアバッグ50は、内部の火薬を爆発させることにより生じた気体をバッグに送り込むことによって、車両1の乗員であるユーザへの衝撃を吸収する装置である。また、エアバッグ50は、内部に点火装置であるスクイブ501を備えており、スクイブ501を通電させてエアバッグ50内部の火薬を爆発させる。
【0021】
ECU3は、車両1が障害物に衝突した場合の衝撃の程度に応じてエアバッグ50の展開を制御する装置である。また、ECU3はフロアセンサ30、駆動回路40、および、制御装置9を備えている。
【0022】
フロアセンサ30は、車両1が障害物に衝突した場合の衝撃の程度を示す減速度を車両1のフロアトンネル部を通して検出する。
【0023】
駆動回路40は、ECU3の後述する入出力回路10(以下、「I/O回路10」という。)から出力される駆動信号に基づいてエアバッグ50のスクイブ501を通電させる回路である。
【0024】
制御装置9は入出力回路10、CPU11(Central Processing Unit)、および、不揮発性メモリ12を主に備えている。
【0025】
I/O回路10は、フロントセンサ20、および、フロアセンサ30が検出した検出値である減速度を取得する。またI/O回路10は、CPU11からの駆動信号を駆動回路40に出力する。
【0026】
CPU11は、車両1に備えられたエアバッグ50の展開の可否を判定する処理を行う。CPU11は、主に導出部111、判定部112、および、変更部113を備えている。
【0027】
導出部111は、フロントセンサ20a、20bの検出値に対して区間積分の処理を行い、区間積分値を導出する。ここで、フロントセンサ20a、20bの二つのセンサのそれぞれの検出値のうち値が高い検出値に基づき、フロントセンサ20の区間積分値(以下、「第2積分値」ともいう。)が導出される。なお、導出部111は、フロントセンサ20の区間積分値を全て足し合わせた全積分値も導出する。
【0028】
また、導出部111は、フロアセンサ30の検出値に対して区間積分の処理を行い区間積分値(以下、「第1積分値」ともいう。)を導出する。なお、導出部111は、フロアセンサ30の区間積分値を全て足し合わせた全積分値も導出する。
【0029】
さらに、導出部111は、第1積分値の変化量(以下、単に「変化量」ともいう。)を導出する。つまり、導出部111はフロアセンサ30の検出値に対して区間積分の処理を行い、一の区間積分値と一の区間積分値に隣接する他の区間積分値との変化量を導出する。なお、導出部111による区間積分値の導出処理、および、変化量の導出処理等については後に詳述する。
【0030】
判定部112は、車両1に備えられたエアバッグ50の展開の可否を第1積分値に基づいて判定する。つまり、フロアセンサ30の検出値を区間積分した第1積分値が所定の閾値(例えば、
図5に示す閾値th1)を超えた場合に、判定部112はエアバッグ50の展開が必要であると判定し、I/O回路10を介して駆動回路40に駆動信号を出力する。
【0031】
なお、後述するように変更部113がエアバッグ50の展開の可否の判定要件について変化量に基づく判定を有効とした場合は、判定部112は当該変化量に基づいてエアバッグ50の展開の可否を判定する。このように変化量に基づいてエアバッグ50の展開の可否を判定することで、フロアセンサ30の第1積分値に基づいてエアバッグ50の展開の可否を判定する場合と比べて、衝撃の状態を顕著に捉えることができる。また、車両1のユーザがエアバッグ50を必要とする場合に、早期にエアバッグ50を展開してユーザを保護できる。
【0032】
変更部113は、フロントセンサ20の第2積分値が所定の閾値(例えば、
図6に示す閾値th2)を超えた場合、変化量に基づく判定を有効とする。つまり、変更部113は、フロントセンサ20の第2積分値が閾値を超えた場合、エアバッグを展開させる必要性が高いとして、変化量に基づく判定部112の判定を有効とする。
【0033】
不揮発性メモリ12は、CPU11で行われる処理に用いる各種データを記憶している。具体的には、不揮発性メモリ12は主に閾値データ121を備えている。
【0034】
閾値データ121は、各センサの検出値に対して区間積分等の処理を行った後の値に対する閾値データである。例えば、
図5に示す閾値th1、
図6に示す閾値th2、および、
図7に示す閾値th3などが該当する。
<3.各センサの検出値に基づく導出処理>
以下、各センサの検出値、区間積分値、変化量についてグラフ線を用いて説明する。
図3は、フロアセンサ30の検出値を示す図である。
図3の横軸は時間[ms]、縦軸は減速度[m/s
2]を示す。
【0035】
図3に示すグラフ線s1、および、グラフ線s2は車両1が障害物に衝突した時からの時間の経過に伴う車両1の減速度を示している。ここで、グラフ線s1とグラフ線s2との違いは、例えば車両1が障害物に衝突したときの速度である。つまり、グラフ線s1は車両1が高速(例えば、50km/h〜60km/h)で走行中に障害物に衝突した場合のグラフ線である。また、グラフ線s2は車両1が低速(例えば、10km/h〜20km/h)で走行中に障害物に衝突した場合のグラフ線である。
【0036】
図4は、フロアセンサ30の検出値の区間積分の処理を示す図である。つまり、
図4は
図3に示したグラフ線s1、および、グラフ線s2に基づく区間積分の処理を説明する図であり、一例として、導出部111がフロアセンサ30の検出値であるグラフ線s1の区間積分値を導出する状態が示されている。区間積分の処理は、導出部111がグラフ線s1に対して所定の幅wd1(例えば、10msの幅)で区間積分を行い、一の幅の積分値に対応する第1積分値を導出する。また、導出部111は各幅の積分値を全て足し合わせた全積分値を導出する。なお、グラフ線s2についてもグラフ線s1と同様に区間積分値、および、全積分値の導出処理が行われる。
【0037】
図5は、第1積分値に基づきエアバッグの展開の可否を判定する場合の動作を説明するグラフであり、フロアセンサ30の区間積分値および全積分値に対応するグラフ線を示す図である。
図5のグラフ線s1aは
図4のグラフ線s1の区間積分および全積分に対応する値を示すものであり、グラフ線s2aは
図4のグラフ線s2の区間積分および全積分に対応する値を示すものある。
【0038】
図5の横軸は全積分値[m/s]、縦軸は区間積分値[m/s
2]を示す。ここで、横軸の全積分値は、車両1が障害物に衝突したときから一の時間(例えば、0.5msごとの時間間隔における一の時間)までの車両1の減速量[m/s]である。また、縦軸の区間積分値は車両1が障害物に衝突した後、一の時間において所定の幅で区間積分した値であり、減速度[m/s
2]を示す。つまり、
図5に示すグラフ線s1a、および、グラフ線s2aは所定時間ごと(例えば、0.5msごと)の全積分値、および、区間積分値の変化を示すものである。
【0039】
そして、
図5に示すようにグラフ線s1aおよびグラフ線s2aに対して閾値th1が設けられている。閾値th1は高速で障害物に衝突した場合(グラフ線s1a)はエアバッグを展開させ(これをON要件という)、低速で障害物に衝突した場合(グラフ線s2a)はエアバッグを展開させない(これをOFF要件という)ように、全積分値と区間積分値に応じて、
図5に破線で示すようにグラフ線s1aとs2aの間にその値が設定される。
【0040】
車両1が高速で障害物に衝突した場合は、グラフ線s1aに示すように閾値th1を超える区間積分値が導出される。つまり、時刻t3(減速量v11)のタイミングで第1積分値が閾値th1を超えることで、判定部112は、エアバッグ50を展開する判定情報である駆動信号を駆動回路40へ出力する。
【0041】
一方、車両1が低速で障害物に衝突した場合は、グラフ線s2aに示すように閾値th1を下回る区間積分値が導出される。つまり、閾値th1を超える第1積分値は導出されないため、判定部112がエアバッグ50を展開する駆動信号を駆動回路40へ出力することはない。
【0042】
図6は、フロントセンサ20の区間積分値および全積分値に対応するグラフ線を示す図である。
図6の横軸は全積分値[m/s]、縦軸は区間積分値[m/s
2]を示す。そして、
図6に示すグラフ線s11、およびグラフ線s12は所定時間ごと(例えば、0.5msごと)の全積分値、および、区間積分値の変化を示すものである。
このように、フロアセンサ30の検出値を全積分値と区間積分値の二次元で表すことで、ON要件とOFF要件を満足するように閾値th1を設定することができ、判定部112はフロアセンサ30の区間積分値、即ち第1積分値が閾値th1を越えるとエアバッグ50を展開する駆動信号を駆動回路40へ出力する。しかしながら、かかる第1積分値による衝突判定だけでは、エアバッグの展開に遅れが生じる場合がある。そのため、以下に述べる変化量による判定を導入する。
図6のグラフ線s11は車両1が高速(例えば、50km/h〜60km/h)で走行中に障害物に衝突した場合のグラフ線である。また、グラフ線s12は車両1が低速(例えば、10km/h〜20km/h)で走行中に障害物に衝突した場合のグラフ線である。
【0043】
そして、
図6に示すようにグラフ線s11およびグラフ線s12に対して、
図5と同様にON要件とOFF要件を満たすと共に、変化量による判定に切り替えるための閾値th2が設けられている。車両1が高速で走行中に障害物に衝突した場合は、グラフ線s11に示すように閾値th2を超える区間積分値が導出される。つまり、時刻t1(減速量v1)のタイミングで第2積分値が閾値th2を超えることで、変更部113は変化量に基づく判定を有効とする。
【0044】
なお、車両1が低速で走行中に障害物に衝突した場合は、グラフ線s12に示すように閾値th2を下回る区間積分値が導出される。つまり、閾値th2を超える第2積分値は導出されないため、判定部112は判定要件を第1積分値としてエアバッグ50の展開の可否を判定する。
【0045】
さらに、グラフ線s11の推移は車両1が高速で障害物に衝突した場合を示すものであるが、車両1の速度が高速の場合でも車両1と障害物との衝突の状態によっては、閾値th2を超えることのなくグラフ線が推移する場合もある。つまり、判定部112が変化量を判定要件とせずに、第1積分値を判定要件してエアバッグの展開の可否を判定する場合もある。
【0046】
図7は、フロアセンサ30の第1積分値の変化量および全積分値に対応するグラフ線を示す図である。詳細には、
図7のグラフ線s1bはグラフ線s1の変化量、および、グラフ線s1の全積分値に対応する値を示すものであり、グラフ線s2bはグラフ線s2の変化量、および、グラフ線s2の全積分値に対応する値を示すものある。
図7の横軸は全積分値[m/s]、縦軸は変化量[m/s
2]を示す。ここで、横軸の全積分値は、車両1が障害物に衝突したときから一の時間までの車両1の減速量である。また、縦軸の変化量は、フロアセンサ30の検出値を所定の幅で区間積分した変化量である。詳細には、
図4に示す所定の幅wd1で積分した各区間積分における一の区間積分値と隣接する区間積分値との差の値である。このように
図7に示すグラフ線s1b、およびグラフ線s2bは所定時間ごと(例えば、0.5msごと)の全積分値、および、区間積分値の変化を示すものである。
【0047】
そして、
図7に示すようにグラフ線s1bおよびグラフ線s2bに対して閾値th3が設けられており、車両1が高速で障害物に衝突した場合は、グラフ線s1bに示すように閾値th3を超える変化量が導出される。つまり、時刻t2(減速量v2)のタイミングで変化量が閾値th3を超えることで、判定部112は、エアバッグ50を展開する判定情報である駆動信号を駆動回路40へ出力する。
【0048】
なお、車両1が低速で衝突した場合は、グラフ線s2bに示すように閾値th3を下回る変化量を導出される。つまり、閾値th3を超える変化量は導出されないため、判定部112がエアバッグ50を展開する駆動信号を駆動回路40へ出力することはない。
<4.タイミングチャート>
図8は、車両1が高速で走行中に障害物に衝突した場合の各センサの信号を示すタイミングチャートである。
図8にはフロントセンサ20の第2積分値と閾値th2との関係を示す信号sg1、フロアセンサ30の第1積分値の変化量と閾値th3との関係を示す信号sg2、フロアセンサ30の第1積分値と閾値th1との関係を示す信号sg3が示されている。そして、各信号はON状態でセンサの値が対応する閾値を超えた状態となり、OFF状態ではセンサの値が対応する閾値を下回る状態となる。
【0049】
最初に時刻t0からt1までは第2積分値(グラフ線s11)が、閾値th2を超えることなく推移するため、
図8に示す信号sg1はOFF状態のまま推移する。そのため、時刻t0から時刻t1までの間は、判定部112によるエアバッグ50の判定はフロアセンサ30の第1積分値に基づいて行われることとなる。そして、
図8に示す信号sg3は時刻t0から時刻t1まではOFF状態であり、第1積分値が閾値th1を超えていないことから判定要件を満たしていない。なお、フロアセンサ30の第1積分値とあわせて、第1積分値の変化量(信号sg2)も導出される。
【0050】
そして、第2積分値が閾値th2を超えたことにより信号sg1が時刻t1でON状態となる。その結果、変更部113は信号sg2に対応する変化量に基づく判定を有効とする。
【0051】
次に、
図8に示すように信号sg2に対応する変化量が時刻t1よりも後で、かつ、時刻t3よりも前の時刻t2で閾値th3を超えたことで、判定部112は、エアバッグ50を展開する判定情報である駆動信号を駆動回路40へ出力する。
【0052】
なお、仮に判定部112が第1積分値をエアバッグ50の展開の可否を判定する判定要件としていた場合、第1積分値は時刻t3で閾値th1超え、
図8に示す信号sg3は時刻t3でON状態となるが、時刻t3は時刻t2よりも後の時刻であるため、判定部112が判定要件を第1積分値とした場合は、変化量を判定部112の判定要件とした場合と比べて、エアバッグ50を展開する制御に時間的な遅れが生じる。
【0053】
そのため、フロントセンサ20の第2積分値が閾値th2を超えた場合に、判定部112がフロアセンサ30の変化量に基づいてエアバッグ50の展開の可否を判定することで、フロアセンサ30の第1積分値に基づいてエアバッグ50の展開の可否を判定する場合と比べて、衝撃の状態を顕著に捉えることができる。また、車両のユーザがエアバッグ50を必要とする場合に早期にエアバッグ50を展開してユーザを保護できる。
<5.論理回路図>
図9は、判定部112がエアバッグ50の展開の可否を判定する場合の論理回路を示す図である。当該論理回路にはANDゲート101とORゲート102とが設けられている。ANDゲート101は2つの入力部と1つの出力部とを備えている。また、ORゲート102は2つの入力部と1つの出力部とを備えており、ANDゲート101の出力部がORゲートの2つの入力部のうち一方の入力部と電気的に接続されている。
【0054】
ANDゲート101の一方の入力部(以下、「第1入力部」という。)には、第2積分値が閾値th2を超えた場合はHi信号が入力され、第2積分値が閾値th2を下回った場合はLow信号が入力される。また、ANDゲート101の他方の入力部(以下、「第2入力部」という。)には、第1積分値の変化量が閾値th3を超えた場合はHi信号が入力され、変化量が閾値th3を下回った場合はLow信号が入力される。
【0055】
そして、ANDゲート101の第1入力部にHi信号が入力され、かつ、第2入力部にHi信号が入力された場合、ANDゲート101の出力部からはHi信号が出力される。なお、第1入力部および第2入力部の少なくともいずれか一方の入力部にLow信号が入力されると、ANDゲート101の出力部からはLow信号が出力される。
【0056】
次に、ORゲート102の一方の入力部(以下、「第3入力部」という。)には、第1積分値が閾値th1を超えた場合はHi信号が入力され、第1積分値が閾値th1を下回った場合はLow信号が入力される。また、ORゲート102の他方の入力部(以下、「第4入力部」という。)には、ANDゲート101の出力部からのHi信号、および、Low信号のいずれかの信号が入力される。
【0057】
そして、ORゲート102の第3入力部および第4入力部の少なくともいずれか一方の入力部にHi信号が入力されると、ORゲート102の出力部はHi信号を出力する。その結果、判定部112は、エアバッグ50を展開する判定情報である駆動信号を駆動回路40へ出力する。なお、ORゲート102の第3入力部および第4入力部の入力部にLow信号が入力されると、ORゲート102の出力部はLow信号を出力する。その結果、判定部112は、駆動信号の駆動回路40への出力は行わない。
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態と第1の実施形態との相違点は、導出部111が第1積分値、第2積分値、および、第1積分値の変化量に加えて次の値を導出する点である。つまり、変化量を導出する場合よりも区間積分値の幅(所定の幅wd1)が狭い幅(例えば、
図10に示す所定の幅wd2)で導出される特定変化量が導出部111により導出される点である。そして、フロントセンサ20の第2積分値が所定の閾値よりも値の大きい特定閾値を超えた場合に、変更部113は判定部112の判定要件について特定変化量に基づく判定を有効とする。なお、その他の構成および処理については第1の実施の形態の構成および処理と同一である。そのため、構成および処理が同一の部分についての記載は省略する。
<6.各センサの検出値に基づく導出処理>
図10は、フロントセンサ20の区間積分値および全積分値に対応するグラフ線を示す図である。
図10に示すようにグラフ線s11およびグラフ線s12に対して、閾値th2と、閾値th2よりも値の大きい特定閾値th2aが設けられている。
【0058】
車両1が高速で走行中に障害物に衝突した場合は、グラフ線s11に示すように時刻t1(減速量v1)のタイミングで区間積分値が閾値th2を超えることで、変更部113は、判定部112の判定要件について変化量に基づく判定を有効とする。そして、時刻t1の後の時刻t11(減速量v11)のタイミングで区間積分値が特定閾値th2aを超えることで、変更部113は、判定部112の判定要件について特定変化量に基づく判定を有効とする。
【0059】
なお、グラフ線s11の推移は車両1が高速で障害物に衝突した場合を示すものであるが、車両1の速度が高速の場合でも車両1と障害物との衝突の状態によっては、閾値th2aを超えることなくグラフ線が推移する場合もある。つまり、判定部112が特定変化量を判定要件とせずに、変化量を判定要件してエアバッグの展開の可否を判定する場合もある。
【0060】
図11は、フロアセンサ30の特定変化量の導出について説明する図である。導出部111は、第1積分値の積分区間よりも狭い幅で区間積分した値(以下、「第3積分値」ともいう。)の変化量を特定変化量として導出する。詳細には、所定の幅wd1よりも狭い幅wd2(例えば、5msの幅)で区間積分した場合の一の区間積分値と隣接する区間積分値との差の値を変化量として特定変化量を導出する。このように区間積分を行う幅を所定の幅wd1よりも狭い幅wd2とすることで、一の区間積分値と隣接する区間積分値との差の値がより大きい部分(変化が顕著な部分)で変化量の導出を行える。なお、グラフ線s2についてもグラフ線s1と同様に特定変化量の導出処理が行われる。
【0061】
図12は、フロアセンサ30の特定変化量および全積分値に対応するグラフ線を示す図である。詳細には、
図12のグラフ線s1cはグラフ線s1の特定変化量、および、グラフ線s1の全積分値に対応する値を示すものであり、グラフ線s2cはグラフ線s2の特定変化量、および、グラフ線s2の全積分値に対応する値を示すものある。
図12の横軸は全積分値[m/s]、縦軸は特定変化量[m/s
2]を示す。また
図12のグラフ線s1c、および、グラフ線s2cは所定時間ごと(例えば、0.5msごと)の全積分値、および、区間積分値の変化を示すものである。
【0062】
そして、
図12に示すようにグラフ線s1cおよびグラフ線s2cに対して閾値th3が設けられており、車両1が高速で障害物に衝突した場合は、グラフ線s1cに示すように閾値th3を超える特定変化量を導出される。つまり、
図7に示した時刻t2(減速量v2)よりも早いタイミングの時刻t12(減速量v12)で特定変化量が閾値th3を超えることで、判定部112は、エアバッグ50を展開する判定情報である駆動信号を駆動回路40へ出力する。
<7.タイミングチャート>
図13は車両1が高速で走行中に障害物に衝突した場合の各センサの値を示すタイミングチャートである。
図8のタイミングチャートとの違いは、
図8の各センサの値に加えて、フロントセンサ20の第2積分値と特定閾値th2aとの関係を示す信号sg11と、フロアセンサ30の特定変化量と所定の閾値th3との関係を示す信号sg21とが加えられている点である。
【0063】
第2積分値が閾値th2を超えることにより信号sg1が時刻t1でON状態となる。そして、変更部113が判定部112の判定要件について変化量に基づく判定を有効とした後、第3積分値が時刻t1の後の時刻t11で特定閾値th2aを超えることにより信号sg11がON状態となる。その結果、変更部113は判定部112の判定要件について特定変化量に基づく判定を有効とする。
【0064】
次に、特定変化量が時刻t11よりも後で、かつ、時刻t2よりも前の時間である時刻t12で閾値th3を超えることにより信号sg21がON状態となる。これにより判定部112は、エアバッグ50を展開する判定情報である駆動信号を駆動回路40へ出力する。
【0065】
このように、フロントセンサ20の第2積分値が特定閾値th2aを超えた場合に、判定部112がフロアセンサ30の特定変化量に基づいてエアバッグ50の展開の可否を判定することで、フロアセンサ30の第1積分値の変化量に基づいてエアバッグ50の展開の可否を判定する場合と比べて、衝撃の状態の変化をより顕著に捉えることができる。また、車両のユーザがエアバッグ50を必要とする場合により適切なタイミングでエアバッグ50を展開してユーザを保護できる。
【0066】
<8.論理回路図>
図14は判定部112がエアバッグ50の展開の可否を判定する場合の論理回路を示す図である。
図14と
図9との第1の相違点は、論理回路にANDゲート103が新たに設けられた点である。また、第2の相違点は、ANDゲート103の出力部から出力されるHi信号およびLow信号のいずれかの信号がORゲート102aの第3入力部および第4入力部とは異なる入力部(以下、「第5入力部」という。)に入力される点である。その他の点は、
図9で説明した論理回路図と同じ構成である。
【0067】
ANDゲート103は2つの入力部と1つの出力部とを備えている。ANDゲート103の一方の入力部(以下、「第6入力部」という。)には、第3積分値が閾値th2aを超えた場合はHi信号が入力され、第3積分値が閾値th2aを下回った場合はLow信号が入力される。また、ANDゲート103の他方の入力部(以下、「第7入力部」という。)には、第1積分値の特定変化量が閾値th3を超えた場合はHi信号が入力され、特定変化量が閾値th3を下回った場合はLow信号が入力される。
【0068】
そして、ANDゲート103の第6入力部にHi信号が入力され、かつ、第7入力部にHi信号が入力された場合、ANDゲート103の出力部からはHi信号が出力される。なお、第6入力部および第7入力部の少なくともいずれか一方の入力部にLow信号が入力されると、ANDゲート103の出力部からはLow信号が出力される。
【0069】
そして、ORゲート102aの第3入力部、第4入力部、および、第5入力部の少なくともいずれか一方の入力部にHi信号が入力されると、ORゲート102aの出力部はHi信号を出力する。その結果、判定部112は、エアバッグ50を展開する判定情報である駆動信号を駆動回路40へ出力する。なお、ORゲート102aの第3入力部、第4入力部、および、第5入力部の入力部にLow信号が入力されると、ORゲート102aの出力部はLow信号を出力する。その結果、判定部112は、駆動信号の駆動回路40への出力は行わない。