特許第5792052号(P5792052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792052
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】バッテリー温調ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/613 20140101AFI20150917BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20150917BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20150917BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20150917BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20150917BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20150917BHJP
   F28F 13/18 20060101ALI20150917BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20150917BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H01M10/613
   H01M10/625
   H01M10/6551
   H01M10/6563
   B60H1/32 611Z
   F28D1/053 A
   F28F13/18 B
   B60R16/04 Y
   B60L11/18 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-284070(P2011-284070)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-134876(P2013-134876A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 昭男
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−277767(JP,A)
【文献】 特開平10−329532(JP,A)
【文献】 特開2010−025479(JP,A)
【文献】 特開2010−243147(JP,A)
【文献】 特開2010−255885(JP,A)
【文献】 特開昭62−252890(JP,A)
【文献】 特開2002−313441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H1/00−3/06
B60L1/00−3/12、
7/00−13/00、
15/00−15/42
B60R16/00−17/02
F28D1/00−13/00
F28F11/00−19/06
H01M2/10、
10/52−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に送風路を有するユニットケースと、前記送風路に配置され送風された空気を冷却可能なエバポレータと、を備え、車両走行用モータに電力を供給するバッテリーを温度調節するバッテリー温調ユニットにおいて、
前記エバポレータは、冷媒通路を構成し扁平に形成されたチューブと、前記チューブの扁平面に配置されるフィンとを備え、前記チューブと前記フィンとを交互に積層してなる積層型エバポレータであり、
前記チューブは、略水平として配置され、
前記チューブの冷媒通路に沿った側縁の少なくとも一方は、上方に向かう側縁先端部を備えること
を特徴とするバッテリー温調ユニット。
【請求項2】
前記チューブは、一対のプレート部材を互いに接合して形成されることを特徴とする
請求項に記載のバッテリー温調ユニット。
【請求項3】
前記エバポレータは、表面に親水性皮膜が形成されることを特徴とする
請求項1又は2のいずれかに記載のバッテリー温調ユニット。
【請求項4】
前記バッテリー温調ユニットは、前記エバポレータに当接する保水部材を前記送風路に備えること
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のバッテリー温調ユニット。
【請求項5】
前記保水部材は、前記エバポレータに対し、前記送風される空気の流れ方向下流側に設けられること
を特徴とする請求項に記載のバッテリー温調ユニット。
【請求項6】
前記バッテリー温調ユニットは、前記送風路に送風可能なブロワと、前記ブロワの動作と前記チューブの前記冷媒通路を開閉する開閉装置の動作とを制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記ブロワを稼動させ前記開閉装置を開き前記冷媒通路に冷媒を流す冷却モードと、前記ブロワを稼動させ前記開閉装置を閉じ前記冷媒通路に冷媒を流さない送風モードとを制御し、
前記冷却モードの終了後に前記送風モードに切り替えること
を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のバッテリー温調ユニット。
【請求項7】
前記バッテリー温調ユニットは、前記バッテリーとともにモジュールケースの内部空間に配置され、
前記内部空間は、前記バッテリー温調ユニットにより温調されること
を特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のバッテリー温調ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等に用いられるバッテリーの温度調整に用いられるバッテリーの温調ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリット自動車に設けられる車両駆動用のバッテリーは、充放電の性能を最適にするために熱交換器等を有して構成されたバッテリー温調装置で所定の温度に管理されている。
【0003】
バッテリー温調装置に冷却用熱交換器として搭載されるエバポレータは、チューブとフィンとを介して冷媒と空気との間で熱交換し、チューブおよびフィンの表面を流れる空気を冷却する。具体的な例としては、循環可能な冷却通路を画成するケースと、前記冷却通路内に、その一部又は全部が露出するバッテリーと、前記冷却通路内に配されるエバポレータと、空調装置の冷凍サイクルのコンプレッサ及びコンデンサと連結され、膨張手段及び前記エバポレータから少なくとも構成される冷媒バイパス通路と、前記冷却通路内に配される送風機とを具備するバッテリー冷却装置が知られている(特許文献1参照)。
そして冷媒と空気との間での熱交換時には、空気中に含まれる水分も冷やされてチューブやフィンの表面に凝縮水が付着する。
【0004】
凝縮水は、電子部品等に飛散すると回路の短絡や錆びの発生等の不具合を引き起こす恐れがあるため、たとえば車両用空調装置のユニットのように、凝縮水をユニットのケースの下部に設けたドレン孔からケースの外部に排出することが望ましい。
【0005】
ところで、車両駆動用のバッテリーは高電圧が流れる電子部品であり、機能保持のため水滴や埃の存在がない清浄な環境に配置されることが求められる。そのため、気密性や水密性の高いモジュールケースが用意され、この内部空間に配置されることが多い。そして前記バッテリー温調装置は、バッテリーの充放電の性能を最適にするためにバッテリーとともにモジュールケースの内部空間に配置されるが、モジュールケースの内部空間は気密性や水密性を確保するため、ドレン孔を形成することができない。したがって、モジュールケースの内部空間では、凝縮水を外部に排出できずに水滴が溜まり、バッテリー温調装置のエバポレータから水滴の飛散や漏洩の可能性が考えられ、短絡等の電子部品の不具合に配慮する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−313441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、バッテリー温調装置が、気密性や水密性の高いバッテリーモジュールの内部空間に配置されても、該バッテリー温調装置のエバポレータに付着した凝縮水の集合や飛散を防ぐことで、電子部品の不具合を防止するバッテリー温調ユニットを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のバッテリー温調ユニットは、内部に送風路を有するユニットケースと、前記送風路に配置され送風された空気を冷却可能なエバポレータと、を備え、車両走行用モータに電力を供給するバッテリーを温度調節するバッテリー温調ユニットにおいて、前記エバポレータは、冷媒通路を構成し扁平に形成されたチューブと、前記チューブの扁平面に配置されるフィンとを備え、前記チューブと前記フィンとを交互に積層してなる積層型エバポレータであり、前記チューブは、略水平として配置され、前記チューブの冷媒通路に沿った側縁の少なくとも一方は、上方に向かう側縁先端部を備えることを特徴としている。
【0009】
チューブを略水平として配置することで、冷房運転により発生した凝縮水をチューブに分散保持し、凝縮水が集合して水滴が形成されるのを防止することが可能になるため、凝縮水の飛散や漏洩を防ぐことが可能となる。
【0010】
チューブの冷媒通路に沿った側縁の少なくとも一方に上方に向かう側縁先端部を備えることで、各チューブの保水量の増加を図り、凝縮水の集合を、より確実に防止することができる。
【0011】
また前記チューブは、一対のプレート部材を互いに接合して形成されてもよい。
【0012】
前記エバポレータは、表面に親水性皮膜が形成されてもよい。
【0013】
エバポレータの表面に親水性皮膜が形成されるので、該表面にて凝縮水が発生しても水滴は薄く拡がって送風された空気の風圧を受けにくくなるとともに、該表面への付着力も増加するので、凝縮水が飛散することをより確実に防止できる。
【0014】
前記バッテリー温調ユニットは、前記エバポレータに当接する保水部材を前記送風路に備えるようにしてもよい。
【0015】
エバポレータに当接する保水部材を設けることで、保水部材に水分を吸収させることができ、凝縮水の集合を、より確実に防止することができる。
【0016】
前記保水部材は、前記エバポレータに対し、前記送風される空気の流れ方向下流側に設けられるようにしてもよい。
【0017】
保水部材を、エバポレータに対し、送風される空気の流れ方向下流側に設けたので、水滴の飛散をより確実に防止できる。
【0018】
前記バッテリー温調ユニットは、前記送風路に送風可能なブロワと、前記ブロワの動作と前記チューブの前記冷媒通路を開閉する開閉装置の動作とを制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記ブロワを稼動させ前記開閉装置を開き前記冷媒通路に冷媒を流す冷却モードと、前記ブロワを稼動させ前記開閉装置を閉じ前記冷媒通路に冷媒を流さない送風モードとを制御し、前記冷却モードの終了後に前記送風モードに切り替えるようにしてもよい。
【0019】
チューブ上に分散保持された凝縮水を冷却モード終了後に早期に気化することができ、凝縮水の集合や飛散の機会を減少できるとともに、気化熱によって送風モードにおいても冷却機能の維持を図ることが可能となる。
【0020】
前記バッテリー温調ユニットは、前記バッテリーとともにモジュールケースの内部空間に配置され、
前記内部空間は、前記バッテリー温調ユニットにより温調されるようにしてもよい。
【0021】
バッテリー温調ユニットは凝縮水を分散保持できるので、凝縮水の排水経路を形成することができないモジュールケースの、内部空間を冷却するのに好適である。
【発明の効果】
【0022】
以上本発明によれば、チューブを略水平として配置することで、冷房運転により発生した凝縮水を分散保持し、凝縮水が集合して水滴が形成されることを防ぎ凝縮水の飛散や漏洩を防止することによって電子部品等の故障を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1(a)は、実施例1にかかるバッテリーモジュールの全体を示した断面図である。(b)は、制御部の入出力を示すブロック図である。
図2図2(a)は、エバポレータの正面図である。(b)は、(a)のA−A断面図である。
図3図3は、チューブの断面拡大図である。
図4図4は、制御部による温調制御を示したフロー図である。
図5図5(a)は、実施例2かかるエバポレータの正面図であり、(b)は、そのA−A断面図である。
図6図6は、フランジアップされたエバポレータのバリエーションを示すものであり、(a)は、一対のプレートを接合してチューブが形成されたエバポレータの断面図であり、(b)は、ロールフォーミング法でチューブが形成されたエバポレータの断面図である。
図7図7は、バッテリー温調装置に保水部材を設けたバッテリーモジュールの全体を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のバッテリー温調ユニットについて、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0025】
図1(a)に示すように、バッテリー温調ユニット1は、電気自動車やハイブリッド車両等の車両走行用モータに電力を供給するバッテリーモジュール2の内部空間21を温調するもので、バッテリーモジュール2は、モジュールケース22の中にバッテリー23と、バッテリー温調ユニット1とを備えて構成されている。
【0026】
バッテリーモジュール2のモジュールケース22は、要求される仕様やコスト、環境条件に応じ、鉄、ステンレス、アルミ等の金属、またはABS、ポリプロピレン、ナイロン等の樹脂の素材から適宜選択されて形成され、この例では略長方形状を呈する中空箱に形成され、上面、側面、底面のいずれかに開口するモジュール開口24を有している。そして、モジュールケースの蓋部材22aと箱部材22bとで構成されており、バッテリー23、バッテリー温調ユニット1、各種電気配線等を箱部材22b内部に設置したのち、蓋部材22aで閉じることで、各種部品を内部空間21に配置する。
【0027】
バッテリー23は、この例では薄板矩形状に形成され、モジュールケース22に固定されている。バッテリー23の形状はこの他に円柱状などもあるが、特に限定はしない。
【0028】
バッテリー温調ユニット1は、ユニットケース3の内部に形成された送風路4に、少なくともエバポレータ5が配置されるもので、必要に応じて送風路4の内部を送風するブロワ7、送風路4の空気を暖めるヒータコア8、送風路4の空気の温度を検知する温度センサ26も加えられる。
【0029】
ユニットケース3は、ポリプロピレン等の樹脂製のもので長方形状を呈する中空箱に形成されており、内部に送風路4が形成されたユニットケース本体3aと、封止部材3bとから構成されている。
【0030】
ユニットケース本体3aは、モジュールケース22に設けられたモジュール開口24の開口方向と同一方向(図においては上面)に開口するユニット開口10と、長手方向の一端の側面に開口する送風を取り入れる吸入孔11と、長手方向の他端の側面に開口する送風を吹き出す吹出孔12とが設けられている。
【0031】
封止部材3bは、アルミ等の金属で形成され、モジュールケース22の壁面に設けられたモジュール開口24を塞ぎ内部空間21を封止するモジュール開口封止部31と、ユニットケース本体の壁面に設けられたユニット開口10を塞ぎ送風路4を封止するユニット開口封止部41と、を有して構成され、ユニットケース本体に固定ボルトで固定されている。また、モジュール開口封止部31及びユニット開口封止部41には、水密性または気密性が確保されるようシール材32,42が設けられている。
【0032】
ブロワ7は、軸方向から吸引した空気を外径方向へ送風するインペラ7aと、インペラ7aを回転させる駆動モータ7bを有して構成されるもので、吸入孔11から吸い込んだ空気を吹出孔12から排出するようになっている。
【0033】
ヒータコア8は、この例ではエバポレータ5を通過した空気を加熱する電気式のヒータコアであり、図示しない複数の発熱素子と、発熱素子の積層方向の間に配設される複数の放熱フィンとで構成されている。図示しないが、公知の温水式ヒータコアであってもよい。
【0034】
図2(a)、(b)に示すように、エバポレータ5は、冷媒通路50を構成するチューブ51とフィン52とを交互に積層して形成される積層型のもので、対をなすタンク53と、このタンク53間を連通し扁平状に形成された複数のチューブ51と、隣り合うチューブ51の扁平面51aの間に介在されるコルゲート状の複数のフィン52と、積層方向の両端に位置するフィン52に対し更に外側に配されるサイドプレート54と、タンク53の長手方向の一方端に配されたコネクタ55とを有して構成されている。なお、図中の矢印はブロワ7により送風された空気の流れ方向を示している。
【0035】
そして、エバポレータ5は、バッテリー23を温調する際、すなわち、冷媒が送風路4内の空気と熱交換して温度調節するときに、チューブ51とフィン52との積層方向が上下方向となり、さらにチューブ51の延設方向が略水平となるようにしてユニットケース3に配置されている。その結果、エバポレータ5のチューブ51の扁平面51aが略水平(扁平面51aに対する垂線が略鉛直)となるように配置され、凝縮水が扁平に形成されたチューブの面上に停留し、分散保持されやすいようになっている。なお、本発明における略水平とは、重力に対して直角に交わる意味での水平を含むのはもちろん、車両が通常の走行時に取りうる姿勢程度の水平までを含むものである。
【0036】
チューブ51は、ロールフォーミング法により一枚の板状素材を折り曲げることで内部に冷媒通路50を形成し、両端がタンク53に挿入可能に開口されている。
【0037】
また、エバポレータ5の表面には、親水性皮膜56が形成されており、たとえば、チューブ51の表面に凝縮水が付着すると水滴接触角が10度以下となり、図3に示すように、水滴20の形状は広い面積に薄く拡がるようになる。
親水性皮膜56は、たとえば、親水性の官能基を有するナイロン系、アクリル系、ビニル系、ウレタン系の合成樹脂溶液中にエバポレータを浸漬し、その後、乾燥して形成する。
【0038】
さらに、エバポレータ5は、図1(a)に示すように、車両用空調装置の冷凍サイクルの一部をバイパスする冷媒配管60を介してこの冷凍サイクル6に接続され、またこの冷媒配管60のエバポレータ5の上流側には、膨張装置16(例えば、機械式膨張弁、外部信号によって弁開度が可変する電気式膨張弁又はオリフィスチューブ)が設けられる。前記冷凍サイクル6は、この実施例では、電磁クラッチ61を介して図示しない走行用エンジン等と連結されて駆動するコンプレッサ62と、このコンプレッサ62によって圧縮された冷媒を凝縮するコンデンサ63と、このコンデンサ63によって凝縮され気体と液体が混合した状態の冷媒から気体状冷媒と液体状冷媒とを分離するリキッドタンク64と、液体状冷媒を膨張させて圧力を低下させる空調用膨張装置65(例えば、機械式膨張弁、外部信号によって弁開度が可変する電気式膨張弁又はオリフィスチューブ等)と、この空調用膨張装置65で低圧になった冷媒を蒸発させ、空調ダクト66を通過する空気を冷却する空調用エバポレータ67と、によって構成され、前記冷媒配管60は、前記空調用膨張装置65及び空調用エバポレータ67に並列に接続される。なお、コンプレッサ62は電磁クラッチ61を備えない電動コンプレッサであってもよく、また冷凍サイクル6は空調用への冷媒経路を備えずに当該バッテリー温調ユニット1のみに冷媒を供給する専用経路であってもよい。
【0039】
さらに、前記冷媒配管60上には、この冷媒配管を開閉する第1の開閉弁68(開閉装置)が設けられる。また、前記空調用膨張装置65と前記冷媒配管60の分岐点の間には、前記空調用膨張装置65側への冷媒の流れをオンオフする第2の開閉弁69が設けられる。これによって、車両用空調装置のみを稼動させ冷房したい場合には、第1の開閉弁68を閉とし且つ第2の開閉弁69を開としてコンプレッサ62を稼動する。また、車両用空調装置を稼動し冷房している時にエバポレータ5も並行して稼動させたい場合には、第1の開閉弁68を開とし且つ第2の開閉弁69も開としてコンプレッサ62を稼動する。さらに、車両用空調装置による車室内の冷房は不要であるが前記エバポレータ5だけを稼動させたい場合には、第1の開閉弁68を開とし且つ第2の開閉弁69を閉としてコンプレッサ62を稼動する。なお、膨張装置16、空調用膨張装置65を、弁開度の可変制御および弁の閉塞ができる電気式膨張装置に置き換えれば、冷媒通路の開閉も任意に行うことが可能となるため、開閉弁を省くこともできる。
【0040】
なおエバポレータ5は、図示しないが、冷媒の代わりに熱媒体として冷水や冷えたクーラントなどを用いる方式であってもよい。
【0041】
次に、バッテリー温調ユニット1を搭載したバッテリーモジュール2の作動を説明する。
以上のバッテリーモジュール2の稼動制御は、車両に搭載される空調制御を行う制御部によって空調制御の一環として制御されてもよい。
図1(b)は、制御部25の入出力を示すブロック図である。バッテリーモジュール2には各種制御を行う制御手段としての制御部25が設けられている。
制御部25は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されている。そして制御部25には、各種センサからのセンサ信号等が入力され、少なくとも、モジュールケース22内部の空気温度を検知する温度センサ26から信号が入力される。また、制御部25は、演算結果に基づいて、冷凍サイクル6、バッテリー温調ユニット1等に制御信号を出力する。なお、本実施形態では、バッテリーモジュールの制御および空調制御を同一の制御部25で制御しているが、それぞれ個別に制御部25を設けて異なる制御部間で通信を行うようにしてもよい。
【0042】
制御部25によるバッテリー温調ユニット1の具体的な制御は、図4に示すように、制御部25は、温度センサ26に基づいてモジュールケース22内部の空気温度が所定温度以上であるか否かを判断し(ステップS11)、所定温度以上であることを検知すると(ステップS11:Y)、第1の開閉弁68を開いて冷媒通路50に冷媒を流すと共に、ブロワ7を稼動させて冷却モードを開始する(ステップS12)。冷却モードの開始後、モジュールケース22内部の空気温度が所定温度以下であるか否かを判断し(ステップS13)、所定温度以下であることを検知すると(ステップS13:Y)、第1の開閉弁68を閉じて冷媒通路における冷媒の流れを遮断すると共に、ブロワ7の稼動を継続する送風モードを行う(ステップS14)。さらに、図示しないタイマに基づいて送風モードの開始から所定時間経過すると(ステップS15:Y)、ブロワ7を停止する(ステップS16)。
なお、上述のステップS11、ステップS13、ステップS15の判断において、所定条件を満たすまでは各判断が繰り返し行われる(ステップS11:N、ステップS13:N、ステップS15:N)。
【0043】
以上、本発明のバッテリー温調ユニット1によると、バッテリー23を温度調節するときにチューブ51を略水平として配置することで、冷房運転により発生した凝縮水を分散保持し、凝縮水が集合して水滴が形成されるのを防ぎ凝縮水の飛散と漏洩とを防止することによって、電子部品等の故障や不具合を防ぐことができる。また、凝縮水を分散保持できることにより、凝縮水の排水経路を形成することのできないモジュールケース22の、内部空間を冷却するのに好適である。
また、エバポレータ5の表面に親水性皮膜56が形成されるので、該表面にて凝縮水が発生しても水滴は薄く拡がって送風された空気の風圧を受けにくくなるとともに、該表面への付着も力増加するので、凝縮水が飛散することを防止できる。
チューブ51上に分散保持された凝縮水を冷却モード終了後に早期に気化することができ、凝縮水の集合や飛散の機会を減少できるとともに、気化熱によって送風モードにおいても冷却機能の維持を図ることが可能となる。
なお、本実施例においてはエバポレータ5のチューブ51がロールフォーミング法により折り曲げて構成されるものであったが、これに限定されるものではなく公知の方法で形成されたものであってもよい。
【実施例2】
【0044】
上述の実施例においては、エバポレータはチューブの延設方向を略水平にしてユニットケースに配置されるものだったが、このチューブの側縁の形状を上方に湾曲させたものであってもよい。以下、本実施例のバッテリー温調ユニットについて説明するが、実施例1と同一箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
図5に示すように、本実施例にかかるバッテリー温調ユニット1のエバポレータ5は、一対のプレートを接合してチューブ51が形成され、複数のチューブ51と複数のフィン52とをそれぞれ積層して構成されたものである。
【0046】
チューブ51は、上側に配置される上側プレート70と、下側に配置される下側プレート80とを互いに接合することにより冷媒通路50が内部に形成されている。
【0047】
上側プレート70と、下側プレート80とは、それぞれ、接合部71,81、冷媒通路形成部72,82、仕切部73,83とを有し、対称的に形成されている。
【0048】
また、冷媒通路50に沿って形成されるチューブ51の側縁57は、それぞれの接合部71,81を接合することで形成されている。上側プレート70の接合部71は、その先端部71aが水平方向に対して上方に向かって湾曲して形成され、下側プレート80の接合部81は、その先端部81aが水平方向に対して下方に向かって湾曲して形成されている。したがって、側縁57の先端に形成される側縁先端部57aの上側は、略水平方向に対して上方に向かうように形成されている。
【0049】
以上のように、チューブ51を構成するプレート70の側縁57の側縁先端部57aの上側が上方に湾曲して形成されることで、各チューブの凝縮水の保水量の増加を図り、凝縮水の分散保持をより確実にすることができる。
【0050】
なお、本実施例で説明したエバポレータ5のチューブ51は、上側プレート70と下側プレート80との接合部71,81の形状がそれぞれ異なる方向に湾曲されたものであったが、図6(a)に示すように、両プレート70,80の接合部71,81を上方に湾曲するものであってもよい。
さらに、本実施例においては、上側プレート70と下側プレート80とを接合してチューブ51を形成したが、図6(b)に示すようにロールフォーミング法によりプレートを折り曲げてチューブ51を形成し、側縁先端部57aを水平方向に対して上方に向けて形成してもよい。
【実施例3】
【0051】
上述の実施例においては、チューブ51に凝縮水の保水量を増加させる構成を説明したが、凝縮水を吸収させる保水部材をユニットケース3の送風路4に設けてもよい。
【0052】
図7に示すように、保水部材28は、吸放水の可能なスポンジ状の多孔質素材や発泡素材で形成され、送風方向の下流側に形成されたエバポレータ5の通風面58に当接し、送風路4の内部に設けられている。
【0053】
以上のように、エバポレータ5に当接する保水部材28を設けることで、保水部材28に水分を吸収させることができ、凝縮水の漏洩の防止をより確実にすることができる。また、保水部材28を、エバポレータ5に対し、送風される空気の流れ方向下流側に設けたので、水滴の飛散を確実に防止できる。さらに、送風モードとしたときに、保水部材28からエバポレータ5に凝縮水が徐々に放水され、送風により気化することで、冷凍サイクル6を稼動させずに冷却機能の維持を図ることができる。また、保水部材28から凝縮水を放水し気化しておくことで、次回冷却モード時の凝縮水の発生に備えて、保水可能な量を十分に確保しておくことができる。
【符号の説明】
【0054】
1 バッテリー温調ユニット
2 バッテリーモジュール
22 モジュールケース
3 ユニットケース
4 送風路
5 エバポレータ
50 冷媒通路
51 チューブ
52 フィン
56 親水性皮膜
57 側縁
57a 側縁先端部
7 ブロワ
25 制御部(制御手段)
28 保水部材
70 上側プレート
71 接合部
80 下側プレート
81 接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7