(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792056
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】塗りモルタル
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20150917BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20150917BHJP
C04B 24/40 20060101ALI20150917BHJP
C04B 24/24 20060101ALI20150917BHJP
C04B 14/42 20060101ALI20150917BHJP
C04B 16/06 20060101ALI20150917BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20150917BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20150917BHJP
E04F 13/02 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/38 B
C04B24/40
C04B24/24 A
C04B14/42 Z
C04B16/06 Z
C04B22/06 Z
C04B14/10 B
C04B24/38 Z
E04F13/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-290152(P2011-290152)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-139349(P2013-139349A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 俊之
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 隆之
【審査官】
相田 悟
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−020153(JP,A)
【文献】
特開2004−211384(JP,A)
【文献】
特開2004−225281(JP,A)
【文献】
特開2007−176740(JP,A)
【文献】
特開2007−269501(JP,A)
【文献】
特開2010−105831(JP,A)
【文献】
特開2007−269537(JP,A)
【文献】
米国特許第04741777(US,A)
【文献】
米国特許第06166113(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0271848(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00〜28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セメント100質量部に対し(B)細骨材を80〜103質量部、(C)保水剤を0.09〜0.20質量部、(D)撥水剤を0.22〜0.36質量部、(E)繊維を0.14〜0.43質量部、並びに(F)(F1)表面親水性ポリマー及び(F2)表面疎水性ポリマーを合計固形分換算で2.4〜4.1質量部含有し、(F1)表面親水性ポリマーと(F2)表面疎水性ポリマーの含有比率(F2/F1)が0.18〜0.43であることを特徴とする塗りモルタル。
【請求項2】
(F1)表面親水性ポリマーが、表面親水性再乳化形粉末樹脂であり、(F2)表面疎水性ポリマーが、表面疎水性再乳化形粉末樹脂、ディスパージョン形粉末樹脂、エマルション形粉末樹脂、及びこれらの表面を脂肪酸塩又はシラン化合物で処理した粉末樹脂から選ばれるポリマーである請求項1記載の塗りモルタル。
【請求項3】
セメント100体積部に対し、細骨材が104〜122体積部であり細骨材中の軽量骨材の割合が60〜70vol%である請求項1又は2記載の塗りモルタル。
【請求項4】
(E)繊維が、引張強度1500N/mm2以上のものと1500N/mm2未満のものからなり、セメント100質量部に対し、引張強度1500N/mm2以上の繊維を0.04〜0.29質量部含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の塗りモルタル。
【請求項5】
さらに(G)膨張材、(H)粘土鉱物及び(I)スターチ類から選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の塗りモルタル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の下地調整材等として用いられる塗りモルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の仕上げは、施工箇所に応じさまざまな仕上げが施される。外壁はタイル張り、仕上塗料が施工され、屋上は塗膜防水、アスファルト防水等の防水工事が実施される。また、屋内はクロス張り、フローリング、エントランス部床の石張りなどが実施される。これらの工事を行う際の躯体コンクリートの補修はジャンカ補修、欠損部の補修、目違い補修や屋上の防水工事を行う際に水勾配を取る場合がある。
【0003】
モルタルでコンクリート構造物を補修する場合、厚塗りする箇所と薄塗りする箇所が不連続に発生する。一般的には、薄塗用補修モルタルと厚塗用補修モルタルの2種を用いて補修を行うため、補修工事は煩雑であり時間の掛かる作業である。そのため、真珠岩パーライト、黒曜石パーライト、減水剤を組み合わせ施工厚さ1mm以下から10mm程度まで施工可能な補修モルタルが考案されている(特許文献1)。しかし、パーライトと減水剤を併用すると施工時の環境温度の影響を受けやすくなり、寒冷期には凝結が遅れ、外壁に施工した場合ダレの発生する恐れがある。
【0004】
軽量骨材、ポゾラン物質、有機繊維、ポリマーを併用し、躯体コンクリートとの付着性改善、乾燥収縮の低減を図るとともに1回の施工厚さが60mmまで可能な補修モルタルが考案されている(特許文献2)このモルタルは、厚付け性能を向上させるため、軽量骨材が多く練混ぜ水量が多くなっており、曲げ強度が低下している。厚付け性能は向上しているが薄付けが困難であるため、水勾配を取る必要がある屋上の防水工事用材料には不向きである。
【0005】
また、コンクリート構造物を補修する場合、躯体コンクリートとの付着性、強度、防水性を付与するため、一般にポリマーセメントモルタルが使用される。多くの場合、保水剤をポリマーと併用するため、粘性が増加しコテ作業性が低下する。コテ作業性の改善策としてシラン化合物とポリマーを併用することでコテ作業性、付着性、強度を改善した補修モルタルが考案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−175636号公報
【特許文献2】特開平11−199297号公報
【特許文献3】特開2002−20153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、薄塗りから厚塗りまでを可能とし、コテ作業性、付着性、平滑性及び曲げ剛性を満足するものではなく、これらの要求を満たす塗りモルタルが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく検討した結果、セメントに細骨材、保水剤、撥水剤及び繊維に加えて、表面が親水性であるポリマーと表面が疎水性であるポリマーとを一定の比率で配合することにより、曲げ剛性、厚塗り性、平滑性及びコテ作業性に優れる塗りモルタルが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]に係るものである。
[1](A)セメント100質量部に対し(B)細骨材を80〜103質量部、(C)保水剤を0.09〜0.20質量部、(D)撥水剤を0.22〜0.36
質量部、(E)繊維を0.14〜0.43質量部、並びに(F)(F1)表面親水性ポリマー及び(F2)表面疎水性ポリマーを合計固形分換算で2.4〜4.1質量部含有し、(F1)表面親水性ポリマーと(F2)表面疎水性ポリマーの含有比率(F2/F1)が0.18〜0.43であることを特徴とする塗りモルタル。
[2](F1)表面親水性ポリマーが、表面親水性再乳化形粉末樹脂であり、(F2)表面疎水性ポリマーが、表面疎水性再乳化形粉末樹脂、ディスパージョン形粉末樹脂、エマルション形粉末樹脂、及びこれらの表面を脂肪酸塩又はシラン化合物で処理した粉末樹脂から選ばれるポリマーである[1]記載の塗りモルタル。
[3]セメント100体積部に対し、細骨材が104〜122体積部であり細骨材中の軽量骨材の割合が60〜70vol%である[1]又は[2]記載の塗りモルタル。
[4](E)繊維が、引張強度1500N/mm
2以上のものと1500N/mm
2未満のものからなり、セメント100質量部に対し、引張強度1500N/mm
2以上の繊維を0.04〜0.29質量部含有する[1]〜[3]のいずれか1項記載の塗りモルタル。
[5]さらに(G)膨張材、(H)粘土鉱物及び(I)スターチ類から選ばれる1種又は2種以上を含有する[1]〜[4]のいずれかに記載の塗りモルタル。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗りモルタルは、曲げ剛性、厚塗り性、平滑性及びコテ作業性に優れており、コンクリート構造物外壁のタイル、仕上塗料の下地調整、屋上の塗膜防水の下地調整等の用途に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の塗りモルタルに使用される(A)セメントは、水硬性のものならば制限されない。具体的には、普通、早強、超早強、中庸等、低熱等のポルトランドセメント、高炉セメントやフライアッシュセメントのような各種混合セメント、白色セメントやエコセメントのような特殊セメントを例示することができる。ここに例示した以外のセメントや2種以上のセメントを併用しても良い。
【0012】
本発明の塗りモルタルに使用される(B)細骨材は、通常のモルタルに使用されるものであれば限定されないが、普通骨材と軽量骨材を併用することが好ましい。普通骨材は、モルタルやコンクリートに使用できるものなら何れのものでも良く、例えば、市販の珪砂、寒水石、石灰石砂その他、川砂、海砂、山砂、砕砂等を挙げることができる。また、軽量骨材は、例えばEVA炭酸カルシウム発泡骨材やスチレン発泡骨材等の有機材質の軽量骨材や天然又は人工の無機材質の軽量骨材の何れでも使用できる。細骨材は、厚塗り性、コテ作業性の点から、セメント100質量部に対して80〜103質量部使用する必要があり、81〜92質量部使用するのが好ましい。
【0013】
普通骨材としては、粒度管理された市販の珪砂、寒水石、石灰石砂が本発明の塗りモルタルの品質を管理する上で好ましい。例えば、朝日珪砂鉱業(株)製商品名「朝日珪砂5号」、(株)トウチュウ製商品名「鹿島珪砂6号」、「鹿島珪砂7号」、日立寒水石(株)製
商品名「日立寒水石1号」などが挙げられる。軽量骨材を含む細骨材は、セメント100体積部に対し104〜122体積部使用するのが好ましい。当該細骨材が少ないと、厚塗り性が低下するとともに収縮量が大きくなり、ひび割れの発生する恐れがある。また、多すぎると強度低下が大きくなるとともにコテ作業性が低下するので適当ではない。細骨材中の軽量骨材の割合は60〜70vol%が好ましく、より好ましくは62〜69vol%である。軽量骨材が少ないと厚塗り性が低下し、厚塗りするとダレが発生する。さらに、粘性が上がりコテ作業性も低下する。軽量骨材が多すぎると、強度低下が発生するとともに練混ぜ水量が増加し、硬化後収縮量が増加しひび割れの発生する恐れがあるので適当ではない。
【0014】
本発明の塗りモルタルに使用する(C)保水剤は、モルタル又はコンクリートで使用できるものなら何れのものでも良く、例えば水溶性セルロース誘導体やポリビニルアルコール類を挙げることができる。水溶性セルロース誘導体としては、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース硫酸エステル等のセルロース誘導体を挙げることができる。例えば、信越化学工業(株)製商品名「メトローズSB
P30501」が使用可能である。
【0015】
(C)保水剤を使用することでモルタルの左官施工時の躯体コンクリートへの付着性を向上することができ、硬化後の乾燥ひび割れの発生や剥離・剥落を防ぐことができる。(C)保水剤の使用量は、セメント100質量部に対し、0.09〜0.20質量部が好ましく、0.09〜0.15質量部がより好ましい。
この範囲で使用することにより、付着性、コテ作業性等が良好となる。
【0016】
本発明に使用される(D)撥水剤としては、シラン系撥水剤が好ましい。シラン系撥水剤は、セメントモルタルに混和し高アルカリ条件下で反応性のシラノールになるシラン化合物が好ましい。例えば、有機シラン、ポリシラン等である。具体例としては、アクゾノーベル(株)製商品名「シール80」等である。反応性シラノールは、シラノール基間の架橋
や無機化合物との反応により表面が疎水性に変性される。そのため、シラン系撥水剤は練混ぜ性状が良く、本発明の高耐久仕上材は硬化後優れた撥水性を発揮する。
【0017】
(D)撥水剤は、セメント100質量部に対し、0.22〜0.36質量部使用するのが好ましく、より好ましくは0.22〜0.30質量部使用される。撥水剤が少なすぎると、適正な撥水性が得られず、混和した効果がない。一方、多すぎると撥水効果の改善は小さく不経済である。
【0018】
本発明に使用される(E)繊維としては、耐アルカリ繊維が好ましい。耐アルカリ繊維は、塗りモルタルとしての厚塗り性と曲げ強度を低下させないように、繊維長10mm以上が好ましい。市販の繊維には単繊維と収束型があるがどちらも使用可能である。さらに、好ましくは繊維長10〜25mmのものが良い。繊維長が短すぎると、ダレ止めの効果はあるが曲げ強度の向上効果は得られない。耐アルカリ性を有すればモルタルに混和可能な有機繊維、ガラス繊維とも使用可能であり、併用することも可能である。有機繊維としては、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリプロピレン等が使用可能であり、ガラス繊維は耐アルカリ性を有するガラス繊維が使用可能である。
【0019】
(E)繊維の使用量は、厚塗り性、曲げ強度、コテ作業性を向上させる点から、セメント100質量部に対し0.14〜0.43質量部が好ましく、さらに好ましくは0.15〜0.39質量部が良い。
【0020】
厚塗りモルタルとしての厚塗り性、曲げ強度、コテ作業性を同時に向上させるためには、引張強度1500N/mm
2以上の繊維と1500N/mm
2未満の繊維を併用することが好ましい。セメント100質量部に対し、引張強度1500N/mm
2以上の繊維を0.04〜0.29質量部使用することが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.29質量部である。
【0021】
本発明においては(F)(F1)表面親水性ポリマーと(F2)表面疎水性ポリマーとを併用するのが、コテ作業性向上性の点で必要である。通常、セメントに配合される再乳化形粉末樹脂は、ポリマー表面が疎水性であり、セルロース誘導体等の保水剤と併用すると粘性が高くなりすぎコテ作業性が低下する。本発明においては、(F2)表面が疎水性であるポリマーに加えて(F1)表面が親水性であるポリマーと併用することにより、施工中の粘度増加を抑制でき、コテ作業性が向上する。
(F1)表面親水性ポリマーとしては、表面親水性再乳化形粉末樹脂が挙げられ、樹脂表面が例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド等で処理された再乳化形粉末樹脂が挙げられる。このうち、ポリビニルアルコールで処理された再乳化形粉末樹脂がより好ましい。粉末樹脂本体としては、エチレン酢酸ビニル、酢酸ビニル/バーサテック酸ビニルエステル、酢酸ビニル/バーサテック酸ビニル/アクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルなどを主成分とする樹脂が挙げられる。
【0022】
(F2)表面疎水性ポリマーとしては、表面疎水性再乳化形粉末樹脂、ディスパージョン形粉末樹脂、エマルション形粉末樹脂、及びこれらの表面を脂肪酸塩、シラン化合物等で表面処理した粉末樹脂が挙げられる。これらの粉末樹脂本体としては、エチレン酢酸ビニル、酢酸ビニル/バーサテック酸ビニルエステル、酢酸ビニル/バーサテック酸ビニル/アクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルなどを主成分とする樹脂が挙げられる。
【0023】
これらの(F)ポリマーは、セメント100質量部に対して、合計固形分換算で2.4〜4.1質量部がするのが好ましく、より好ましくは、2.7〜3.5質量部である。2.4質量部未満では、適性な付着強度が得られないとともに吸水量が増加する。4.1質量部を超えるとコテ作業性が低下するとともに近隣の建築構造物で火災が起きた際本発明の厚塗りモルタルが着火する恐れが高まる。さらに(F1)表面親水性ポリマーと(F2)表面疎水性ポリマーの含有比率(F2/F1)は0.18〜0.43が好ましく、より好ましくは0.37〜0.42である。0.18未満では、コテ作業性の改善効果がえられない。0.43を超えると粘性が低下し、厚塗り性が低下する。
【0024】
本発明の塗りモルタルには、前記成分に加えて、(G)膨張材、(H)粘土鉱物及び(I)スターチ類から選ばれる1種又は2種以上を配合することができる。
【0025】
本発明の塗りモルタルに使用できる(G)膨張材としては、モルタルやコンクリートに使用可能なものであれば特に限定されず、水和膨張性の膨張材として生石灰を有効成分とするものやカルシウムサルフォア ルミネートを有効成分とするものを挙げることができる。膨張材を配合使用することで、主に乾燥収縮が抑制され、施工箇所の形状寸法安定性が図れると共に収縮亀裂の発生を防ぐことができる。例えば、太平洋マテリアル(株)製商品名「太平洋エクスパン(構造用)」、商品名「太平洋ジプカル」等が挙げられる。
(G)膨張材の使用量は、収縮低減効果、ひび割れ防止等の点で、セメント100質量部に対し4.5〜5.7質量部が好ましく、より好ましくは4.7〜5.7質量部である。
【0026】
本発明の塗りモルタルに使用できる(H)粘土鉱物は、コテ作業性改善効果のあるセピオライト、ベントナイトが好ましい。セピオライトは、繊維状の含水マグネシウム珪酸塩である。互いに積み重ねたチャンネル構造をしており、多孔質で比表面積が大きい繊維状形態をした粘土鉱物であるため、ダレ止め効果がある。例えば、セピオライトは、巴工業(株)製商品名「IGS」が使用可能である。
粘土鉱物の使用量は、コテ作業性改善効果、ひび割れ防止の点から、セメント100質量部に対し0.2〜0.9質量部が好ましく、より好ましくは0.2〜0.6質量部である。
【0027】
(I)スターチ類としては、スターチエーテル、コーンスターチ、ポテトスターチが使用できる。スターチエーテルとしては、例えば、SKWイーストアジア(株)製商品名「チロビスSE-7」、「STARVIS SE25F」等が挙げられる。スターチ類はコテ作業性の改善を目的としている点から、その使用量はセメント100質量部に対し、0.01〜0.03質量部が好ましく、より好ましくは0.015〜0.025質量部である。
【0028】
本発明の塗りモルタルには、通常セメント組成物に対して使用される各種混和材、添加剤を使用することが可能である。例えば、鉱物油系、ポリエーテル系、シリコーン系の消泡剤が使用可能である。また、各種スラグ粉末;フライアッシュ、シリカフューム等のポゾラン物質、硬化促進剤、硬化遅延剤等が使用可能である。
【0029】
本発明の塗りモルタルは、前記成分に水を添加混合し、通常の塗り作業、例えばコテ塗りにより、コンクリート構造物外壁のタイル、仕上塗料の下地調整、屋上の塗膜防水の下地調整等に用いることができる。
【実施例】
【0030】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0031】
実施例1〜15及び比較例1〜14
表1に示した材料を用い、表2及び表3に示す配合の塗りモルタルを製造した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
表2及び表3の塗りモルタルを用いて、曲げ強度(材齢28日)、圧縮強度(材齢28日)、付着強度(材齢2日)、長さ変化率及び吸水量を測定した。測定方法を表4に示し、評価方法を表5〜表7に示す。また試験結果を表8〜9に示す。
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
【表7】
【0040】
【表8】
【0041】
【表9】
【0042】
次に、表及び表3の塗りモルタルを用いて、コテ作業性を評価した。
【0043】
(試験方法)
20℃の試験室で450×900×60mmコンクリート版に10mm厚さで400×45
0mmの範囲で金コテで各試料を塗り付け、コテ作業性の評価を行った。
(1)コテ切れ
金ゴテに試料が付着せず、2回以内に平滑に塗り付けられた ◎
金ゴテに試料が付着しないが、平滑に塗り付けるために3回以上要した ○
金ゴテに試料が付着した ×
(2)コテ伸び
試料を容易に金ゴテで押し広げることができ、平滑にできる ◎
試料を容易に金ゴテで押し広げることができるが、平滑に塗り付けるために3回以上要する ○
試料を容易に金ゴテで押し広げることができない ×
(3)ダレの有無
ダレの発生がない 無
ダレの発生がある 有
【0044】
結果を表10及び表11に示す。
【0045】
【表10】
【0046】
【表11】
【0047】
表1〜表11から明らかなように、本発明の塗りモルタルは、曲げ強度、圧縮強度、付着性が良好で、かつコテ作業性も良好であった。