特許第5792076号(P5792076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5792076複合構造の予測可能な結合補修のためのテーパつきパッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792076
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】複合構造の予測可能な結合補修のためのテーパつきパッチ
(51)【国際特許分類】
   B29C 73/10 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   B29C73/10
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-554090(P2011-554090)
(86)(22)【出願日】2010年3月4日
(65)【公表番号】特表2012-519615(P2012-519615A)
(43)【公表日】2012年8月30日
(86)【国際出願番号】US2010026256
(87)【国際公開番号】WO2010104746
(87)【国際公開日】20100916
【審査請求日】2013年2月18日
(31)【優先権主張番号】12/400,561
(32)【優先日】2009年3月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ダン−ジャンボ, ユージン エー
(72)【発明者】
【氏名】ケラー, ラッセル エル
(72)【発明者】
【氏名】ウェスターマン, エベレット エー
【審査官】 粟野 正明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04987700(US,A)
【文献】 米国特許第05190611(US,A)
【文献】 米国特許第05868886(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0188821(US,A1)
【文献】 米国特許第4554036(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 73/00−73/34
B29C 67/00
B64F 5/00
B64C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合構造の不整合領域を補修するためのパッチであって、
テーパの付いた断面を有する複数の複合プライを含む、不整合領域を覆うための複合積層パッチであって、前記複合プライが、それぞれ第1及び第2の領域を画定する少なくとも第1組及び第2組のプライを含んでおり、各組のプライに異なる基質またはファイバの複合材料を使用することにより、それぞれ異なる破壊靱性を有する少なくとも第1及び第2の領域を含む積層パッチと、
前記積層パッチを前記複合構造に結合するための接着層と
を備え、
前記第1組及び第2組の各々に含まれるプライの縁が、テーパの付いた断面を形成している、
パッチ。
【請求項2】
前記積層パッチが、前記第1及び第2の領域の破壊靭性とは異なる破壊靭性を有する第3の領域を含んでおり、且つ
前記複合プライが、それぞれ第1、第2、及び第3の領域を画定する少なくとも第1、第2、及び第3組のプライを含んでいる、請求項1に記載のパッチ。
【請求項3】
前記第1及び第2の領域が、それぞれ概ね円形の外周を有しており、実質的に同心である、請求項1に記載のパッチ。
【請求項4】
前記接着層の厚さが前記第1の領域から前記第2の領域に向かって次第に小さくなっている、請求項1に記載のパッチ。
【請求項5】
前記積層パッチが、第1及び第2の面を有し、第1の面から第2の面に向かって外側へと次第に薄くなっており、且つ
前記第2の面が前記接着層によって前記複合構造に結合している、
請求項1に記載のパッチ。
【請求項6】
前記パッチのプライの前記テーパの付いた断面が、前記接着層によって前記複合構造に結合している、請求項1に記載のパッチ。
【請求項7】
前記接着層が、それぞれ前記積層パッチの第1及び第2の領域を前記複合構造に結合させる少なくとも第1及び第2の領域を含んでおり、前記接着層の第1及び第2の領域が、不整合領域周辺の歪みエネルギーを異なる速度で放出する異なる特性を有している、請求項1に記載のパッチ。
【請求項8】
複合構造の、不整合性を有する一領域を補修する方法であって、
不整合な領域を囲む複合構造の縁にテーパを付けること、
テーパの付いた複合積層パッチを形成することであって、
第1組、及び第2組の複合プライを積み重ねること、
各組のプライに異なる基質またはファイバの複合材料を使用することにより、それぞれ異なる積層内破壊靭性を有する第1、及び第2の領域を積層パッチ内に形成すること、並びに
各組のプライの縁に、第1、及び第2のスカーフ角度にそれぞれ対応する角度でテーパを付けること
を含むことと、
該複合構造の該当領域を覆うようにパッチを配置することと、
プライの組の縁と、該複合構造の第1、及び第2面との間に接着層を導入することと、
接着層を使用して、テーパの付いたパッチのプライの組の縁を、該複合構造の縁に結合することと
を含む方法。
【請求項9】
不整合な領域を囲む複合構造の縁にテーパを付けることは、第1のスカーフ角度を有する第1のテーパ付き表面を形成すること及び第2のスカーフ角度を有する第2のテーパ付き表面を形成することを含む請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して複合構造に関し、具体的には不整合箇所を含む複合構造の領域を補修するための方法と複合パッチに対処する。
【背景技術】
【0002】
複合構造は、ときに、構造を設計許容度内に適応させるために補修が必要な一又は複数の不整合箇所を含む局所領域を有する。
【0003】
過去の一補修プロセスは、不整合領域を覆うように配置されて、メカニカルファスナーを用いて親構造に固定されるパッチを使用して実行された。このような補修技術は、ファスナーの目視検査を行うことにより長時間にわたってパッチの状態を監視できるので望ましい。しかしながら、ファスナーの使用は航空機の重量及び/又は航空機上の抗力を増大させる可能性があり、また用途によっては美的に望ましくない。
【0004】
幾つかの用途では、補修パッチは接着継手の使用により親構造に固定されているが、この技術も、停止機構を形成して不整合箇所の進展を制限する第2の負荷経路となるメカニカルファスナーを使用することが必要である。更に、親構造上に補修パッチを固定する接着継手に生じる変化は、継手又は継手のインターフェースの停止機構が目視できないため、長時間にわたって容易に監視することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、目視又は他の種類の非破壊的検査技術を用いた長時間にわたる補修領域の状態の監視を可能にしながら、複合構造の不整合領域を補修する補修パッチ及び補修方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示される実施形態により、補修パッチ、並びにメカニカルファスナーを必要とせずに結合式補修パッチを使用して複合構造を補修する方法が提供される。この補修パッチは、補修された領域の状態を長時間にわたって目視検査することが可能で、将来的な接着継手の変化を確実に予測することができるという特徴を有している。補修領域の状態が目視検査可能であり、且つ未来の結合状態に関する予測が可能であるため、本結合式補修パッチ及び目視検査技術は航空機認可機関による補修の認可を可能にするものである。
【0007】
開示される一実施形態によれば、複合構造の不整合領域を補修するためのパッチが提供される。本パッチは、不整合領域を覆う複合積層パッチと、積層パッチを複合構造に結合する接着層とを含んでいる。積層パッチは、テーパの付いた断面を有し、それぞれ異なる破壊靭性を有する第1及び第2の領域を含む複数の複合プライを含んでいる。パッチの第1及び第2の領域は、第1組及び第2組のプライによって画定され、各組のプライの縁がテーパの付いた断面を形成している。一実施形態では、積層パッチは、第1及び第2の領域の破壊靭性とは異なる破壊靱性を有する第3の領域を含んでいる。第1の領域と第2の領域とは、互いに実質的に隣接し、且つ同心に配置されている。接着層の厚さは、層の外縁から中心領域に向かって次第に薄くなっていてよい。
【0008】
別の実施形態によれば、複合積層パッチと、複合構造に積層パッチを結合する接着層とを含む、複合構造の不整合領域の補修用パッチが提供される。積層パッチは、異なる積層内破壊靭性を有する第1及び第2の領域をそれぞれ画定する少なくとも第1組及び第2組の複合積層プライを含んでいる。第1組のプライの幅は第2組のプライの幅より大きく、プライの各組はテーパの付いた縁を有することができる。第1組及び第2組それぞれのプライは、異なる成層配向シーケンス及び/又は異なるプライ数を有することができる。
【0009】
また別の実施形態によれば、複合構造の不整合領域の補修は、不整合領域を囲む複合構造上のテーパ付きの縁、及び不整合領域を覆うテーパ付きの複合パッチを含む。構造上のテーパ付きの縁は、それぞれ第1及び第2のスカーフ角度を有する第1及び第2のテーパ付き表面を含んでいる。パッチは、複合構造の第1及び第2のテーパ付き表面にそれぞれ結合される第1及び第2のテーパ付き部分を有するナッジ部を含んでいる。一実施形態では、複合構造のテーパの付いた縁は、第3のスカーフ角度を有する第3のテーパ付き表面を含み、テーパ付きパッチの縁は、複合構造の縁の第3のテーパ付き表面に結合される第3の部分を含む。複合パッチは、異なる積層内破壊靭性を有する第1及び第2の領域をそれぞれ画定する少なくとも第1組及び第2組の複合積層プライを含んでいる。
【0010】
開示される方法の一実施形態によれば、複合構造内の、不整合を含む一の領域が補修される。本方法は、不整合な領域を囲む構造の縁にテーパを付けることを含み、縁に少なくとも第1及び第2のスカーフ角度を形成することを含む。テーパの付いた縁を有する複合パッチが形成される。結合されるスカーフ継手は、パッチのテーパの付いた縁と、複合構造のテーパの付いた縁との間に形成される。複合パッチの形成は、構造の縁に位置する第1及び第2のスカーフ角度にそれぞれ対応する、パッチの縁に位置する第1及び第2のテーパ角度を含むことができる。
【0011】
開示される実施形態は、補修状態を目視により監視することができ、接着継手のあらゆる変化を目視検査に基づいて予測できる、複合材料の不整合領域の補修を可能にする方法と結合式複合材補修パッチとに対する需要を満たす。
【0012】
10.複合構造の不整合領域を補修するためのパッチであって、
少なくとも第1組及び第2組の複合積層プライを含む、不整合領域を覆う複合積層パッチであって、第1組及び第2組の複合積層プライが、異なる積層内破壊靭性を有する第1及び第2の領域をそれぞれ画定し、第1組のプライが第1の幅を有し、第2組のプライが、第1の幅とは異なる第2の幅を有する複合積層パッチと、
複合構造に積層パッチを結合する接着層と
を含むパッチ。
【0013】
11.第1の幅が第2の幅より狭く、
第1組のプライが第1の面を有し、
第2組のプライが、第1の面とは反対方向を向き、接着層により複合構造に結合される第2の面を有する、
請求項10に記載のパッチ。
【0014】
12.第1組及び第2組それぞれのプライがテーパの付いた縁を含んでいる、請求項10に記載のパッチ。
【0015】
13.第1組及び第2組それぞれのプライが、ファイバ配向及び成層配向のシーケンスを有する補強ファイバを含んでおり、
第1組のプライの成層シーケンスが、第2組のプライの成層シーケンスとは異なっている、
請求項10に記載のパッチ。
【0016】
14.第1組のプライの数が第2組のプライの数とは異なっている、請求項10に記載のパッチ。
【0017】
15.第1組のプライの厚さが第2組のプライの厚さとは異なっている、請求項10に記載のパッチ。
【0018】
16.接着層の厚さが、層の外縁から層の中央に向かって次第に薄くなっている、請求項10に記載のパッチ。
【0019】
17.複合構造の不整合領域の補修が、
不整合領域を囲む複合構造のテーパ付きの縁であって、それぞれ第1及び第2のスカーフ角度を有する第1及び第2のテーパ付き表面を含むテーパ付きの縁と、
不整合領域を覆うテーパ付き複合積層パッチであって、複合構造の縁の第1及び第2のテーパ付き表面にそれぞれ結合された第1及び第2のテーパ付き部分を有する縁を含み、複合構造とテーパ付き複合積層パッチとの間にスカーフ継手を形成するテーパ付き複合積層パッチと
を含む補修。
【0020】
18.複合構造上のテーパ付きの縁が、第3のスカーフ角度を有する第3のテーパ付き表面を含み、
テーパ付きパッチの縁が、複合構造の縁の第3のテーパ付き表面に結合される第3の部分を含む、
請求項17に記載の補修。
【0021】
19.テーパ付き積層パッチが、異なる積層内破壊靭性を有する第1及び第2の領域をそれぞれ画定する少なくとも第1組及び第2組の複合積層プライを含む、
請求項17に記載の補修。
【0022】
24.航空機の複合構造の不整合領域を補修するためのパッチであって、
破壊靱性の異なる第1、第2、及び第3の領域をそれぞれ画定する第1組、第2組、及び第3組の積み重ねられた複合プライを含み、不整合領域を覆う複合積層パッチと、
それぞれ第1、第2、及び第3の角度にテーパを付けた縁を有する第1組、第2組、及び第3組のプライと、
不整合領域を囲む複合構造の縁に形成されて、第1、第2、及び第3の角度と概ね一致するスカーフ角度をそれぞれ有する第1、第2、及び第3の表面と、
複合構造の縁の第1、第2及び第3の表面にプライの縁を結合する接着層と
を含むパッチ。
【0023】
25.航空機の複合構造の、不整合性を有する一領域を補修する方法であって、
不整合な領域を囲む複合構造の縁にテーパを付けることであって、第1のスカーフ角度を有する第1のテーパ付き表面を形成すること、第2のスカーフ角度を有する第2のテーパ付き表面を形成すること、及び第3のスカーフ角度を有する第3のテーパ付き表面を形成することを含むことと、
テーパの付いた複合積層パッチを形成することであって、
第1組、第2組、及び第3組の複合プライを積み重ねること、
各組のプライに異なる複合材料を使用することにより、それぞれ異なる積層内破壊靭性を有する第1、第2、及び第3の領域を積層パッチ内に形成すること、並びに
各組のプライの縁に、第1、第2、及び第3のスカーフ角度にそれぞれ対応する角度でテーパを付けること
を含むことと、
航空機の複合構造の該当領域を覆うようにパッチを配置することと、
プライの組の縁と、航空機の複合構造の第1、第2、及び第3の面との間に接着層を導入することと、
接着層を使用して、テーパの付いたパッチのプライの組の縁を、航空機の複合構造の縁に結合することと
を含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、複合構造上の結合式補修パッチを示している。
図2図2は、図1の線2−2に沿った断面図である。
図3図3は、図2に示す接着層の平面図である。
図3図3A〜Cは、図3に示す接着層のセクションそれぞれの平面図である。
図4図4は、図3の線4−4に沿った断面図である。
図5図5は、図1に示される補修パッチの一部を形成する複合積層パッチの平面図である。
図6図6は、図5の線6−6に沿った断面図である。
図7図7は、不整合性を含む一領域内の親構造に結合されたテーパ付きパッチの断面図である。
図8図8は、図7に類似であるが、パッチの個々のプライと、接着継手を形成する接着層とを示している。
図8A図8Aは、パッチの別の実施形態の部分断面図である。
図9図9は、図8に示す接着層の断面図である。
図10図10は、スカーフ継手を使用して親構造に結合されたテーパ付き補修パッチの断面図である。
図11図11は、図10に示す親構造の一部の断面図であり、材料を除去して複数のテーパを形成する領域が分かり易く示されている。
図12図12は、図7に示すテーパ付き補修パッチの平面図であり、剥離の典型的な伝播経路を示している。
図13図13は、テーパ付きパッチの複数の領域にまたがる剥離の進行を示す断面図である。
図14図14は、テーパ付きパッチの複数の領域にまたがる剥離の進行を示す断面図である。
図15図15は、テーパ付きパッチの複数の領域にまたがる剥離の進行を示す断面図である。
図16図16は、テーパ付き補修パッチを使用して複合構造の不整合領域を補修する方法のフロー図である。
図17図17は、航空機の製造及び整備方法のフロー図である。
図18図18は、航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1及び2に示すように、開示される実施形態によれば、補修用複合パッチ30は、複合構造24の不整合領域22を補修するために使用される。本明細書で使用する「不整合領域」、「不整合性」、及び「不整合箇所」は、いずれも設計の公差を逸脱する複合構造24の局所領域を指す。不整合性22は、限定しないが、例えば、複合構造24が製造される時点で生じるか、又はその後複合構造24の耐用期間中に生じうる空隙、凹み、又は気孔を含む。
【0026】
複合パッチ30は、不整合領域22の上に重なり、構造用接着剤の層34により複合構造24に結合されて接着継手42を形成する複合積層パッチ32を含んでいる。パッチ30の大きさは、用途及び不整合領域22の寸法に応じて変化させることができる。接着層34は、接着継手42及び領域22を、構造24とパッチ30との間で伝達される遷移負荷を円滑に減少させうる第1、第2、及び第3の制御領域36、38、40に分割する。第1の制御領域36は、不整合領域22を覆って中心に位置しており、第2及び第3の制御領域46、48は、それぞれ中央に位置する第1の領域36を囲む一対のほぼ同心円状のリング域を含んでいる。図では、開示される実施形態の領域36、38、40はほぼ円形であるが、他の様々な形状が可能である。また、他の実施形態では、パッチ30は二つの制御領域36、38のみを有してもよく、又は三つの制御領域36、38、40より多い制御領域を有してもよい。
【0027】
第1の制御領域36は、有利な面内付着応力を示すことができる。第2の制御領域38は耐久性領域と呼ばれ、この領域内のパッチ32と親構造24との間に生じた剥離については、評価及び定量化することにより補修の必要性を決定することが必要である。第3の制御領域40は、最大の面内せん断及び剥離モーメントを有することができ、パッチ32と親構造24との間の全体的な構造的結合の挙動に影響しうる。
【0028】
次に図2〜4を参照すると、接着層34は、中央に円形セクション44を含み、この円形セクション44は同心のリング形状セクション46及び48により囲まれている。接着セクション44、46、48の大きさ及び形状は、それぞれ補修パッチ30の第1、第2、及び第3の制御領域36、38、40に概ね相当する。接着セクション44、46、48の各々は、通常は所望の形状に切り離すことが可能なフィルム状又はシート状の市販の構造接着剤からなる一又は複数のプライを含むことができる。接着セクション44、46、48は、市販の構造接着ペーストから形成することもできる。上述のように、接着性のシート材からなる複数のプライ(図示しない)を積み上げて、接着セクション44、46、48の各々について所望の厚さ「t」を形成することができる。結合の強さは、パッチ32と構造24との間の厚さ「t」を用いて調節することができる。用途及び接着シートの厚さに応じて、接着性のシート材のプライを一つしか必要としない用途もあれば、複数のプライが必要な用途もある。
【0029】
一実施形態では、接着セクション44、46、48の間に環状の隙間「g」を形成することにより、積層パッチ32と複合構造24との間の潜在的剥離の進展を停止させることを補助することができる。このような停止の補助となる隙間「g」の一方又は両方に、充填剤50を配置することができる。
【0030】
接着セクション44、46、48の各々の特性は、接着継手42の第1、第2、及び第3の制御領域36、38、40からそれぞれ歪みエネルギーが放出される速度に影響するように調節することができる。接着セクション44、46、48の各々の調節は、厚さ「t」又は幅「w」といった接着セクション44、46、48の寸法を変更することにより、或いはフィルム、ペースト、スクリムなどの形状を変更することにより、加えて破壊靭性、剥離又はせん断特性といった接着層の構造特性を変更することにより、或いは接着セクション44、46、48の間に隙間「g」を設けることにより、達成することができる。破壊靱性は、剥離に対する材料の全体的な耐久性とすることができる。加えて、スペーサ又は充填剤50を接着セクション44、46、48の間に挿入することにより、剥離の進展の停止を助けることができる。本明細書で使用する場合、「層内破壊靭性」及び「破壊靱性」は、一般に、層間剥離に対する積層材料の耐久性を指す。具体的には、これらの用語は、破壊力学において、積層のプライを引き離すように又は積層に亀裂を生じるように作用する引張力により最初に生じるモードI型の剥離に対する耐久性として知られるものを指す。
【0031】
調節された接着セクション44、46、48の使用により、複数の制御領域36、38、40に分割された結合式補修パッチ30ができあがる。これらの制御領域36、38、40は、それぞれ異なる速さで歪みエネルギーを放出する。第1、第2、及び第3の制御領域36、38、40は、パッチ32と構造24との間の遷移負荷を徐々に減少させ、これにより剥離が広がる経路を予測できるだけでなく、単純な目視検査、又はその他の非破壊検査技術による補修パッチ30の状態の評価が可能となる。三つの制御領域36、38、40を示して説明するが、制御領域の数は三つより多くても少なくてもよい。
【0032】
不整合領域22の上に重なるパッチ30の第1の制御領域36は、接着継手42の剥離の境界周辺に応力が集中することを抑制できる有利な面内応力を示す。第1の制御領域36内の全体的な付着応力は、複合構造24に印加される最大負荷限度下で剥離が延長するのに必要な歪みエネルギー放出速度を低下させることができる。
【0033】
第2の制御領域38内における補修パッチ30の特性は、第2の制御領域38の歪みエネルギーの放出速度が第1の制御領域36の歪みエネルギーの放出速度より大きくなるようなものにすることができる。接着継手42内の第2の制御領域38に生じるどのような剥離も、剥離の進展を開始させるのに必要な仕事投入量を規定する疲労耐久性剥離曲線(図示しない)により予想することができる。第3の制御領域40の特性は、第3の制御領域40内の歪みエネルギー放出速度が第2の制御領域38の歪みエネルギー放出速度より大きくなるように選択することができ、それにより剥離の開始及び進展が抑制されるとともに、面内せん断及び剥離モーメントが抑えられる。
【0034】
次に図5及び6を参照する。図5及び6はファイバ補強ポリマーからなる複数のプライ52を含む積層パッチ32を示し、これらのプライ52は、第1、第2、及び第3の制御領域36、38、40が所望の歪みエネルギー放出速度を有するように調節することができるものである。積層パッチ32内の歪みエネルギー放出速度は、領域36、38、40の各々のプライが異なる特性を有するようにプライを選択及び/又は配置することにより、制御領域36、38、40内で調節することができる。即ち、領域36、38、40の各々は、それぞれの領域に固有のプライ特性を有することができる。したがって、例えば、領域38のプライは領域36又は40のプライとは異なる特性を有することができ、領域36のプライは領域38及び40のプライとは異なる特性を有することができる。本明細書において使用される「特性」及び「プライ特性」は、限定しないが、プライ中のファイバ補強の種類、大きさ、又は量、プライの厚さ、プライ間の隙間、プライ間に配置される材料、要素又は構造、プライの数、プライ中に使用される基質の種類又は密度、各プライの成層の配向(角度)、及び/又はプライのスタック中のプライの配向シーケンスを指す。
【0035】
制御領域36、38、40の一又は複数の内部の歪みエネルギー放出速度は、パッチ32と構造24との間にスカーフ継手又はテーパ付き継手(図示しない)を形成することにより調節することができる。歪みエネルギー放出速度は、プライ52間の特定の領域に隙間(図示しない)を設けて制御領域36、38、40の各々の積層されたパッチ32の機械特性を変更することによっても調節することができる。更に、プライ52に様々な配向シーケンスを採用することにより、画定された制御領域36、38、40の実現を補助することができる。配向とは、成層の角度又はプライ中の補強ファイバの方向を指し、限定しないが、例えば0°、30°、60°、90°、及び/又は0°、+45°、−45°、90度である。
【0036】
図5及び6に示される実施例では、第1の制御領域36は、当該領域内のプライ52に使用される材料及び/又は配向シーケンスにより最高の歪み放出速度を有し、第2及び第3の制御領域38及び40は、これらの領域それぞれの材料の選択及び/又はプライ配向シーケンスにより、それぞれ中程度、及び最低の歪み放出速度を有している。しかしながら、他の実施形態では、用途に応じて、第3の制御領域40が最高の歪みエンエルギー放出速度を有し、第1の制御領域36が最低の歪みエネルギー放出速度を有する場合がある。
【0037】
図7は、複合構造24の、一又は複数の不整合性22を内部に含む一領域を補修するために使用できる補修パッチ30aの別の実施形態を示している。この補修パッチ30aは、積層された複合プライの組59、61、63からなるテーパの付いた積層パッチ32aを含んでおり、これら複合プライの組59、61、63の各々は、限定しないが、例えば、炭素繊維エポキシといったファイバ補強ポリマーを含んでいる。積層パッチ32aは、図5に示した積層パッチ32に類似した概ね円形の構造を有することができ、この円形構造は、それぞれが異なる層内破壊靭性を有する円形形状の第1、第2、及び第3の領域36、38、40を含んでいる。第1の領域36は、プライの三つの組59、61、63のすべてから構成されるが、第2の領域38はプライの組61、63のみから構成される。第3の領域40は、プライの組63から構成される。プライの組59、61、63は、複合構造24の不整合箇所22を中心に、互いに同心に配置されている。
【0038】
プライの組59、61、63の幅又は外形d1、d2、d3は、積層パッチ32aの縁55の断面が積層パッチ32aの第1及び第2の面47、49に対してそれぞれテーパ角度θを有するように、漸次大きくなっている。通常、角度θは、用途、組59、61、63の幅又は径d1、d2、d3、及び組59、61、63の厚さに応じて決まる。この実施形態では、積層パッチ32aの第2の面49は構造24に結合される。
【0039】
次に、図7に示されるテーパ付きパッチ32aの一変形例を示す図8を参照する。図中、プライの組59、61、63の各々は、複数のプライ52から構成されており、第1及び第2の面47、49に対してそれぞれ対応する角度Φのテーパが付いた縁59a、61a、63aを含んでいる。テーパの付いた縁59a、61a、63aのテーパ角度Φは、互いに同じでも、又は異なっていてもよく、図7の角度θと同じでも、同じでなくともよい。図7に示した実施形態の場合と同様に、図8に示される積層パッチ32aは、三つのプライの組59、61、63のすべてによって決定される層内破壊靱性を有する第1の領域36を有し、第2の領域38は、プライの組61及び63によって決定される層内破壊靭性を有している。最終的に、第3の領域40の層内破壊靱性は、プライの組63によって規定される。組59、61、63のテーパの付いた縁59a、61a、63aは、この図では、個々のプライ52の階段状の配置によって形成されているが、プライ52の厚さに応じて、各プライ52の外縁は、テーパの付いた縁59a、61a、63aが階段状のテーパではなく滑らかなテーパとなるようなスカーフ又はテーパを有することができる。
【0040】
領域36、38、40内のパッチ30aの層内破壊靱性は、部分的にはプライの組59、61、63の寸法と、御領域36、38、40内におけるプライの組59、61、63のその他の特性とによって決定されうる。その他の特性には、限定しないが、ファイバ補強の種類、プライの数、プライの厚さ、及び/又はプライに使用される基質の種類、プライ52間における隙間(図示しない)の使用、プライ52の様々なその他機械特性、並びに異なるプライ配向シーケンスの使用が含まれ、これらのすべては図5及び6に示した積層パッチ32に関して既に説明した。
【0041】
図8に示されるテーパの付いた積層パッチ32aの第2の面49は、上述の実施形態と同様に、接着継手を形成する構造接着剤の層34によって複合構造24に結合される。しかしながら、図8に示される実施形態の場合、接着層34には図9に示されるようなテーパが付いており、厚さt1を有する外縁34aが内側に向かうにつれて薄くなり、中心領域34bの厚さは小さくなっているt2。接着層34にテーパを付けることにより、パッチ32aの領域36、38、40の層内破壊靱性を補うように接着継手42内の歪みエネルギー放出速度が調節される。他の実施形態では、接着層34には、限定しないが、中心領域34bから外縁34aへと外側に向かって、中心領域34bから一方の側にのみ向かって、又は縁34aの一方の側から他方の側にむかって、他の方法でテーパを付けることができる。
【0042】
次に図8Aを参照する。幾つかの実施例では、各組59、61、63に含まれるプライ52aの一部又は全部の径が同じであることにより、図8に示すような外縁59a、61a、63aではなく、図8Aに示す様に、各組59、61、63のプライの縁がプライ52の面にほぼ垂直になってもよい。
【0043】
次に図10及び11を参照する。図8に示されたテーパ付きの積層パッチ32aは、平面に適合する補修パッチ30aを形成するように構成して裏返すことができ、図では、テーパ付き積層パッチ32aの第2の面49が複合構造24の表面51とほぼ同一の平面に延び、第1の面47が不整合領域22を覆って不整合領域22とほぼ同じ領域に広がっている。積層パッチ32aの縁55は、不整合箇所22を囲む複合構造24のテーパ付きの縁71を覆い、結合されたスカーフ継手73を形成している。テーパの付いた縁71は、不整合箇所22を囲む複合構造24から材料を除去することにより形成される。この材料は、それぞれスカーフ角度θ1、θ2、θ3を形成する実質的に隣接した三つのテーパ付き表面71a、71b、71cを形成するように除去される。この実施例では、θ2>θ1、且つθ3>θ2である。したがって、テーパの付いた表面71cは、テーパの付いた縁71の中で最大の勾配を有する表面であり、テーパの付いた表面71aは、テーパの付いた縁71の中で最も緩い勾配を有する表面である。最大の勾配を有するスカーフ角度θ3は、最小の負荷担持能を有し、最も勾配の緩いスカーフ角度θ1は最大の負荷担持能を有することができる。複数のスカーフ角度θ1、θ2、θ3の組み合わせを使用することにより、補修パッチ30a内の負荷担持能を変化させ、長時間経過後の補修パッチ30aの性能を予測することを助けることができる。ここで、この例示的な実施形態では三つのテーパ付き表面71a、71b、71cが図示されているが、テーパ付き表面の数は三つより多くても少なくてもよいことに注意されたい。
【0044】
テーパ付きパッチ32aの縁59a、61a、63aは、それぞれテーパの付いた縁71の個々のスカーフ角度θ1、θ2、θ3とほぼ一致するテーパ角度Φ(図8)を有し、それぞれ縁71のテーパ付き表面71a、71b、71cに結合される。補修パッチ32aのテーパの付いた縁55は、縁55と複合構造の縁71との間に配置された接着層34によってテーパ付きの縁71に結合される。
【0045】
実用的な一実施形態では、積層パッチ32aの第1の領域36は、約2.0インチ−#インチの層内破壊靱性と、約45:1のテーパ比に等しいテーパ角度θ1とを有する。45:1のテーパ比は、積層パッチ32aの第1の領域36から第2及び第3の領域38、40へと何らかの亀裂が広がる最大可能性を低減することができる。積層パッチ32aの第2の領域38は、約2.0インチ−#インチの一定した層内破壊靱性と、約30:1のテーパ比に等しいテーパ角度θ2とを有し、これにより、縁の層内最大応力と、総疲労閾値歪みエネルギー放出速度の上昇が更に低減されうるので、積層パッチ32aの第2の領域38内の疲労亀裂進展速度が低下するか、又はゼロになる。積層パッチ32aの第3の領域40は、約2.0インチ−#インチの層内破壊靱性と、約20:1に等しいテーパ角度を有する。上述した特定のテーパ比は例示に過ぎず、用途に応じて他の比も可能である。
【0046】
図12には、第3の制御領域40の外縁60における剥離の開始と、内側に向かう進展を停止させることができる様子が示されている。この場合、縁60において開始する剥離が、62に示されるように直接内側に向かって進展し、制御領域38と40との間の境界64に到達する。制御領域36、38、40内の材料が異なっていることにより、及び/又は隙間「g」又は充填剤50(図5)の存在により、及び/又は接着層34のセクション44、46、48の接着特性が異なっていることにより(図2)、剥離は停止して、第3の制御領域40の境界64の周囲63で環状に移動する。別の場合では、剥離は第3の領域40から第2の制御領域38内へと進行し、参照番号66によって示されているように第1の制御領域36に向かって内側へと進行する。剥離の進行は、制御領域36と38との間の境界68に到達すると、停止して境界68の周囲で環状に移動する。
【0047】
図12及び13を同時に参照する。剥離72(図13)が開始点60から内側に向かって進行するにつれて、補修パッチの外縁54が上方に向かって剥がれることにより、77の位置で上に位置する塗料69が裂けて、第3の制御領域40内における剥離開始及び/又は進展が視覚的に示される。このような剥離の視覚的な表示は、制御領域38と40との間の境界64で終端させることができる。
【0048】
図14に示すように、剥離72が第2の境界68に向かって第2の制御領域38へと連続する場合、制御領域38及び40のエリアのパッチ30が上方に向かって剥がれることにより、77の位置で上に位置する塗料69が更に裂け、剥離が第2の制御領域38へ、又は第2の制御領域を通って進展したことを視覚的に示す。図15は、剥離が不整合箇所22の境界75まで進展したことを示している。この時点で、パッチ30の複数のエリアと、三つの制御領域36、38、40すべてとが上方に向かって剥がれており、77の位置で上に位置する塗料69が更に裂けることにより、補修パッチ30に更に注意を払う必要がある地点まで剥離が進行したことが視覚的に更に明瞭に示されている。ここで、塗料69の目視検査により77における塗料の亀裂が検出可能であるが、他の周知の非破壊検査技術を使用して、裸眼では亀裂を視認できない場合に塗料69の亀裂を検出することができるか、又はそれ以外の場合にパッチ30の剥離を検出できることに注意されたい。したがって、上述により、補修パッチ30の制御領域36、38、40が、パッチ30と構造24との間の結合状態の非破壊検査を可能とする手段となることが明らかである。
【0049】
次に図16を参照する。図16は、上述のテーパ付き補修パッチ32aを使用して不整合箇所22を含む複合材料24の一領域を補修する方法を広義に示している。テーパ付きパッチ32aは、ステップ78において、プライ52を、それぞれ複数組59、61、63のプライを含みうる複数の領域36、38、40に分割することから始まり、次いでステップ80でプライを積み上げることを含む一連のステップ74によって形成される。ステップ82に示されるように、各組59、61、63に含まれるプライ52には随意でテーパを付けることができる。ステップ84では、不整合箇所22を囲む親複合構造24の縁71にテーパを付けることができる。このようなテーパ付けは、異なるスカーフ角度θ1、θ2、θ3を有する一又は複数のテーパ付き表面71a、71b、71cを形成することを含むことができる。
【0050】
接着層34は、ステップ86に示されるようにテーパ付きの積層パッチ32aの領域36、38、40に合わせて接着層34の厚さを調節することから始まるステップ76により形成される。ステップ88では、接着層34を、それぞれ異なる速度で歪みエネルギーを解放する複数のセクション44、46、48に分割することができるか、或いは図9に示されるように、接着層34にテーパを付けることにより調節することができる。
【0051】
次に、ステップ90では、テーパ付き補修パッチ32aの領域36、38、40を接着層34と位置合わせする。ステップ92に示されるように、接着層34は、テーパの付き補修パッチ32aを複合構造24に結合するために使用される。最後に、ステップ94では、補修パッチ30の状態を周期的に目視検査することにより、各領域36、38、40のパッチ30aの状態を決定することができる。
【0052】
本発明の実施形態は、例えば、航空宇宙、船舶、及び自動車の分野を含む特に輸送産業において、種々の潜在的な分野に用途を見出すことができる。したがって、次に図17及び18に示すように、本発明の実施形態を、図17に示される航空機の製造及び整備方法100、及び図18に示される航空機102に関して使用することが可能である。製造前の段階では、例示的な方法100は、航空機102の仕様及び設計104と、材料調達106とを含みうる。補修用のテーパ付きパッチ30aの仕様及び設計は、航空機102の仕様及び設計104の一部として行われ、調達プロセス106の一部として調達されうる。製造段階では、航空機102のコンポーネント及びサブアセンブリの製造108と、システムインテグレーション110とが行われる。テーパ付きパッチ30aは、製造108及び/又はシステムインテグレーション110の間に発生する不整合箇所を補修するための製造の間に使用されうる。その後、航空機102は認可及び納品112を経て就航114される。テーパ付きパッチ30aは、不整合箇所を補修することにより航空機102の認可を得るため、及び/又は納品要件を満たすために使用されうる。顧客により就航される間に、航空機102は定期的なメンテナンス及び整備116(改造、再構成、改修なども含みうる)を受ける。テーパ付きパッチ30aは、航空機102が就航されている間に、就航中に不整合箇所が拡大しうる航空機102のエリアを補修するために、又は周期的なメンテナンスルーチンの一部として、使用されうる。
【0053】
方法100の各プロセスは、システムインテグレーター、第三者、及び/又はオペレーター(例えば顧客)によって実施又は実行されうる。本明細書の目的のために、システムインテグレーターは、限定しないが、任意の数の航空機製造者、及び主要なシステム下請業者を含むことができ、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含むことができ、オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などでありうる。
【0054】
図18に示されるように、例示的方法100によって製造された航空機102は、複数のシステム120及び内装122を有する機体118を含むことができる。テーパ付きパッチ30aは、機体118の不整合箇所を補修するために使用することができる。高レベルのシステム120の例には、推進システム124、電気システム126、油圧システム128、及び環境システム130のうちの一又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙産業の例を示したが、本発明の原理は、船舶及び自動車産業のような他の産業にも適用可能である。
【0055】
本明細書に具現化されたシステム及び方法は、製造及び整備方法100の一又は複数の任意の段階で採用することができる。例えば、製造プロセス108に対応するコンポーネント又はサブアセンブリは、航空機102が就航中に製造されるコンポーネント又はサブアセンブリと同様の方法で作製又は製造することができる。また、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせは、例えば、航空機102の組立てを実質的に効率化するか、又は航空機102のコストを削減することにより、製造段階108及び110の間に利用することができる。同様に、装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせのうちの一又は複数を、航空機102の就航中に、限定しないが、例えばメンテナンス及び整備116に利用することができる。
【0056】
本発明の実施形態を、特定の例示的な実施形態に関連させて説明したが、これらの特定の実施形態は説明を目的としているのであって、限定を目的としているのではなく、当業者であれば他の変形例が想起可能であろう。
また、本発明は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
複合構造の不整合領域を補修するためのパッチであって、
テーパの付いた断面を有する複数の複合プライを含む、不整合領域を覆うための複合積層パッチであって、それぞれ異なる破壊靱性を有する少なくとも第1及び第2の領域を含む積層パッチと、
前記積層パッチを前記複合構造に結合するための接着層と
を備えるパッチ。
(態様2)
前記複合プライが、それぞれ第1及び第2の領域を画定する少なくとも第1組及び第2組のプライを含んでいる、態様1に記載のパッチ。
(態様3)
前記第1組及び第2組の各々に含まれるプライの縁が、テーパの付いた断面を形成している、態様2に記載のパッチ。
(態様4)
前記積層パッチが、前記第1及び第2の領域の破壊靭性とは異なる破壊靭性を有する第3の領域を含んでおり、且つ
前記複合プライが、それぞれ第1、第2、及び第3の領域を画定する少なくとも第1、第2、及び第3組のプライを含んでいる、
態様1に記載のパッチ。
(態様5)
前記第1及び第2の領域が、それぞれ概ね円形の外周を有しており、実質的に同心である、態様1に記載のパッチ。
(態様6)
前記接着層の厚さが前記第1の領域から前記第2の領域に向かって次第に小さくなっている、態様1に記載のパッチ。
(態様7)
前記積層パッチが、第1及び第2の面を有し、第1の面から第2の面に向かって外側へと次第に薄くなっており、且つ
前記第2の面が前記接着層によって前記複合構造に結合している、
態様1に記載のパッチ。
(態様8)
前記パッチのプライの前記テーパの付いた断面が、前記接着層によって前記複合構造に結合している、態様1に記載のパッチ。
(態様9)
前記接着層が、それぞれ前記積層パッチの第1及び第2の領域を前記複合構造に結合させる少なくとも第1及び第2のセクションを含んでおり、前記接着層の第1及び第2のセクションが、不整合領域周辺の歪みエネルギーを異なる速度で放出する異なる特性を有している、態様1に記載のパッチ。
(態様10)
不整合箇所を含む複合構造の一領域を補修する方法であって、
前記不整合領域を囲む複合構造の縁に少なくとも第1及び第2のスカーフ角度を形成することを含む、前記縁にテーパを付けること、
テーパの付いた縁を有する複合積層パッチを形成すること、並びに
前記パッチのテーパの付いた縁と前記複合構造のテーパの付いた縁との間に結合された接着継手を形成すること
を含む方法。
(態様11)
前記複合パッチを形成することが、それぞれ前記構造の縁の前記第1及び第2のスカーフ角度に対応する第1及び第2のテーパ角度を前記パッチの縁に形成することを含む、態様10に記載の方法。
(態様12)
前記複合構造の縁にテーパを付けることが、縁に第3のスカーフ角度を形成することを含み、且つ
前記複合パッチを形成することが、前記複合構造の縁の前記第3のスカーフ角度に対応する第3のテーパ角度を前記パッチの縁に形成することを含む、
態様10に記載の方法。
(態様13)
前記複合パッチを形成することが、
ファイバ補強ポリマーからなる複数のプライを積み上げること、
前記プライを少なくとも二つの領域に分割すること、並びに
前記二つの領域に異なる剛性を付与すること
を含む、態様10に記載の方法。
図1
図2
図3
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図8A
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18