(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持部は、前記摩擦板に向けて前記固定部材から突設され、前記ヨークには、前記摩擦板と対向する面と反対側の面に、前記支持部が嵌入される第3孔部が前記第1孔部と連設されて形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電磁ブレーキ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の電磁ブレーキ装置は、回転軸をケース型コアに軸支するため、通常、ケース型コアと回転軸の間に軸受が配置された構成である。このためケース型コアの内部には、回転軸を挿通させる孔部を形成することに加え、別部材として軸受を配置する必要があるため、それだけ装置全体が径方向に大型化するという問題がある。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑み、径方向への小型化を図ることができる電磁ブレーキ装置、及び、これを用いた力覚付与型回転入力装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電磁ブレーキ装置は、回転軸と、回転軸に直接又は他の部材を介して取り付けられて、回転軸と同心に回転される被回転体と、回転軸が挿通される第1孔部を有したリング状のヨークと、ヨークに形成された、第1孔部と同心でリング状をなす凹溝、凹溝の径方向内側に形成される内筒部、及び径方向外側に形成される外筒部と、凹溝に収納されたコイル部と、回転軸を挿通する第2孔部を中央に有して、被回転体とヨークとの間に配置された状態で被回転体に連結される摩擦板と、ヨークを固定する固定部材とを備え、内筒部は、摩擦板に向けて突設されて第2孔部に回転可能に挿入される突設軸部を有し、突設軸部は第1孔部と同心の外壁面を有しており、固定部材は、回転軸を回転可能に支持する支持部を有し、支持部は、ヨークに固定された状態において、第1孔部と同心の内壁面を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の電磁ブレーキ装置の構成によれば、回転軸が、ヨークの第1孔部と同心に回転可能に支持される。すなわち、回転軸の一側は、支持部における、第1孔部と同心の内壁面によって回転可能に支持されるので、第1孔部と同心に支持され回転される。一方、回転軸の他側は、回転軸の軸心と同心の被回転体が、第1孔部と同心の外壁面をもつ突設軸部に挿入される第2孔部を中央に有する摩擦板と連結されて一体回転するので、第1孔部と同心に支持され回転される。その結果、ヨーク内部に軸受のような別部材を設けることなく回転軸をスムーズに回転可能に支持することができるので、装置全体を径方向に小型化できる。また、軸受を装着するような製造工程を省略できるので、製造コストの低下を図ることができる。
【0009】
また、本発明の電磁ブレーキ装置において、外筒部の端面とは、互いに接触されており、内筒部の端面とは、互いに摩擦板非接触状態に維持されるのに必要な距離が設定されていることが好ましい。
【0010】
かかる構成によれば、コイル部への通電時に摩擦板がヨークに衝突する音が生じるのを防止できる効果を奏する。また、摩擦板とヨーク間の磁路が外筒部の端面側に集中するため、摩擦板の軸心から回転制止力が発生する箇所までの距離を大きく設定できるので、より大きい回転制止力(ブレーキトルク)を確保することができ、小型の電磁ブレーキ装置を適用できることから、装置全体の小型化を図ることができる。さらに、突設軸部と摩擦板との摩擦で生じる摩耗粉等が内筒部の端面と摩擦板との間に入り込んでも、操作感触が阻害される(ざらざらした操作感触になる)ことはない。
【0011】
また突設軸部は、先端にかけて先細形状となる傾斜面を有することが好ましい。
かかる構成によれば、コイル部への通電時に突設軸部と摩擦板との間に磁束集中が発生するのを防止して、外筒部の端面側に磁路を集中させることができるので、摩擦板に対する回転制止力を大きくすることができる。
【0012】
本発明の電磁ブレーキ装置において、内筒部の突設軸部の根元から凹溝に至るまでの平坦部に凹部が形成されていることが好ましい。
かかる構成によれば、突設軸部との外壁面摩擦板(第2孔部)の内壁面との間で発生した摩耗粉を凹部に溜めることができるので、他所へ摩耗粉が移動することによる不具合の発生(操作感触の悪化、回転抵抗の増加等)を防止することができる。
【0013】
また、支持部は、摩擦板に向けて固定部材から突設され、ヨークには、摩擦板と対向する面と反対側の面に、支持部が嵌入される第3孔部が第1孔部に連設されていてもよい。
かかる構成であれば、高さ方向のサイズを小さくすることができる。
【0014】
また本発明の別の一態様によれば、上述の電磁ブレーキ装置を備えた力覚付与型回転入力装置を実現できる。
【0015】
本発明の力覚付与型回転入力装置によれば、径方向への小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態の電磁ブレーキ装置100を用いた力覚付与型の回転入力装置(以下、単に回転入力装置と称する)10の全体的な構成を示す斜視図である。電磁ブレーキ装置100は、回転入力装置10において力覚(操作感覚)を付与する用途に適している。また力覚付与型の回転入力装置10は、例えば、カーエアコンシステムの入力装置として使用され、車室内のインストルメントパネルやセンターコンソールに設置される。
【0018】
回転入力装置10は、回転操作部として操作ノブ12を有しており、操作ノブ12が電磁ブレーキ装置100の回転軸66(
図1には示されない)に連結されている。操作者が操作ノブ12を回転させてカーエアコンシステムの動作条件を選択すると、電磁ブレーキ装置100によって力覚が付与される。
【0019】
図2は、操作ノブ12を除く回転入力装置10及び電磁ブレーキ装置100の概略的な分解斜視図である。
図3は、電磁ブレーキ装置100の一部と操作ノブ12を除く回転入力装置10の概略的な分解斜視図である。なお
図3では、分解斜視図の視線方向は
図2と異なっている。また
図4は、電磁ブレーキ装置100を用いた回転入力装置10全体の概略的な縦断面図である。
【0020】
図4の縦断面図に示されているように、電磁ブレーキ装置100は、主に摩擦板としてのアーマチュア52、ソレノイドユニット58及びハウジング68から構成されている。アーマチュア52は、後述するように、操作ノブ12の回転に連動して操作ノブ12と同心に回転する。またソレノイドユニット58は、磁性材料からなるアーマチュア52を通電時に発生する磁束で吸引し、摩擦力で回転制動力を発生させるものである。電磁ブレーキ装置100で発生させた回転制動力は、様々な構成部品(詳細は後述)を介して操作ノブ12の操作者に対して力覚を付与する。なおハウジング68は、ソレノイドユニット58のヨークコア60(ヨーク)を固定している。
【0021】
電磁ブレーキ装置100は、ヨークコア60を有しており、このヨークコア60は、
図2に示されるように、全体としてリング形状をなしている。ヨークコア60はその中心位置に第1孔部としての回転軸孔部60bを有しており、この回転軸孔部60bに回転軸66が挿通される。なお、回転軸66は回転入力装置10の構成部分であるため、その詳細は後述する。
【0022】
図2及び
図4に示されているように、ヨークコア60には、回転軸孔部60bの周囲にリング状をなす凹溝60aが形成されている。ヨークコア60には、この凹溝60aを挟んで径方向の内外両側に、内筒部をなす内側ヨーク部60cと外筒部をなす外側ヨーク部(外筒部)60dとがそれぞれ形成されている。このうち内側ヨーク部60cは比較的肉厚の円筒形状をなしており、外側ヨーク部60dは比較的薄肉の円筒形状をなしている。内側ヨーク部60c及び外側ヨーク部60dは互いに同心形状であり、中心は回転軸孔部60bの中心軸線(図示していない)と一致している。
【0023】
ソレノイドユニット58はコイル(コイル部)64を有しており、コイル64はヨークコア60の凹溝60a内に収容されている。なお、コイル64の巻線中心は回転軸66の回転中心に略一致している。ヨークコア60は軟磁性材料で構成されている。
【0024】
ハウジング68は、上ケース70及び下ケース72からなる。上ケース70は軟磁性材料で構成されている。なお上ケース70は、ヨークコア60を固定する固定部材に相当する。
【0025】
図5は、ヨークコア60からアーマチュア52を分離させた状態で示した分解斜視図である。アーマチュア52は、全体として円盤形状をなしており、その中央に第2孔部としての挿通孔部52aが形成されている。回転入力装置10の完成状態では、回転軸孔部60b(第1孔部)と挿通孔部52a(第2孔部)とが同心であり、挿通孔部52a内には上記の回転軸66が挿通される。アーマチュア52はヨークコア60に対向して配置され、
図4の下側の面が外側ヨーク部60dの端面に接触する。
【0026】
ヨークコア60の内側ヨーク部60cには、アーマチュア52に向けて突設するように突設軸部61が形成されている。突設軸部61は、回転軸孔部60bと同心の外壁面を有し、挿通孔部52aに回転可能に嵌入される。
【0027】
図4に示されているように、突設軸部61は挿通孔部52aに嵌入された状態で、アーマチュア52を回転可能に支持している。この状態でアーマチュア52は、様々な他の構成部品(詳細は後述)を介して回転軸66に連結されている。
【0028】
回転軸66の一側(
図4の下方側)は、回転軸孔部60b(第1孔部)と同心に支持されて回転される。すなわち、回転軸66の一側は、回転軸孔部60bと同心に形成された挿入孔部60e(第3孔部)に嵌入された支持部70aの内壁面によって回転可能に支持されるので、回転軸孔部60bと同心に支持され回転される。ここで支持部70aは、上ケース70の上面(ヨークコア60と接する面)から突設軸部61の突出方向に向けて突出して形成されている。挿入孔部60eは、回転軸孔部60bよりも大きな径と、支持部70aの外周部分を挿入可能な長さとを有し、回転軸孔部60bと連設されるようハウジング68側に形成される。
【0029】
回転軸66の他側(
図4の上方側)もまた回転軸孔部60bと同心に支持されて回転される。すなわち、回転軸66の軸心と同心に回転される後述するアウターギヤ42(被回転体)が、回転軸孔部60b(第1孔部)と同心に回転される後述するアーマチュア52(摩擦板)と連結されているので、回転軸66の他側は、回転軸孔部60bと同心に支持され回転される。なおアウターギヤ42は、
図6に示すように、後述するプラネタリキャリア14と同心に公転するプラネタリギヤ28を介して、回転軸66を同心に固定するサンギヤ30と噛合しているので、回転軸66と同心に回転される。アーマチュア52は、
図4に示すように、その中央部に形成された挿通孔部52a(第2孔部)に、回転軸孔部60b(第1孔部)と同心の外壁面をもつ突設軸部61が嵌通されているので、回転軸孔部60bと同心に支持され回転される。
【0030】
したがって、回転軸66はヨークコア60の回転軸孔部60b(第1孔部)の軸心と同心に回転可能に支持される。このように本実施形態の電磁ブレーキ装置100では、ヨークコア60と回転軸66との間に軸受のような部品を設けることなく、回転軸66をスムーズに回転可能に支持することができるので、装置全体を径方向に小型化できる。また、軸受を装着するような製造工程を省略できるので、製造コストの低下を図ることができる。
【0031】
また
図4に示されているように、アーマチュア52はヨークコア60に対向して配置されるが、このときアーマチュア52と外側ヨーク部60dの端面との間の距離C1は0mmに設定されて両者は接触状態となる。
一方、アーマチュア52と内側ヨーク部60cの端面との間の距離C2はゼロ寸法より大きく設定されており(C1<C2)、このためアーマチュア52と内側ヨーク部60cの端面とは非接触状態に維持されている。
【0032】
したがって、コイル64の通電時に磁束が発生すると、アーマチュア52とヨークコア60間における磁束が、内側ヨーク部60cの端面側に比べて外側ヨーク部60dの端面側に多く集中するので、アーマチュア52は外側ヨーク部60dの端面に強く吸着される。したがって、アーマチュア52の軸心から回転制止力が発生する箇所までの距離を長く設定できるため、同一サイズの電磁ブレーキ装置100であっても大きい回転制止力(ブレーキトルク)を得ることができるので、装置全体の小型化を図ることができる。また、このときの磁力でアーマチュア52が外側ヨーク部60dの端面に吸着されても、元々の両者間の距離C1がゼロ寸法であるため、アーマチュア52の衝突音が発生するようなこともない。
【0033】
また、アーマチュア52の回転時には、挿通孔部52aの内周面と突設軸部61の外周面とが接触して擦れ合って生じた摩耗粉が、アーマチュア52と内側ヨーク部60cの端面との間(ゼロ寸法よりも大きい距離C2の隙間)に移動しても、操作感覚が阻害されにくい。
【0034】
突設軸部61は、先端にかけて先細形状となる傾斜面61aを有している。このため突設軸部61が挿通孔部52aに挿入された状態で、傾斜面61aと挿通孔部52aの内周面との間の箇所に適度なエアギャップ(空隙)が形成され、コイル64の通電時に当該箇所での磁束の集中が緩和される。したがって、コイル64への通電時に、突設軸部61とアーマチュア52との間に磁束が集中するのを防止でき、外側ヨーク部(外筒部)60dの端面側に磁束を集中させることができるので、アーマチュア52に対する回転制止力を大きくすることができる。
【0035】
また内側ヨーク部60cには、突設軸部61の根元から凹溝60aに至るまでの平坦部61bにリング状の凹部61cが形成されている。このような凹部61cは、突設軸部61の外壁面とアーマチュア52の挿通孔部52a内周面との間で発生した摩耗粉を凹部61cに溜めることがきるので、摩耗粉が他の箇所へ移動することによる不具合の発生(操作感触の悪化、回転抵抗の増加等)を防止することができる。ここで凹部61cは、周方向に点在する複数の凹部であってもよい。
【0036】
次に、
図2から
図6に基づいて電磁ブレーキ装置100を用いた回転入力装置10について説明する。なお
図6は、操作ノブ12及び一部の構成部品を除いて、回転入力装置10を示す平面図である。
【0037】
操作ノブ12には、遊星歯車(プラネタリギヤ)28を回転可能に支持する遊星歯車支持体としてのプラネタリキャリア14が、操作ノブ12と同心かつ一体的に回転するように連結されている。
具体的には、操作ノブ12は、プラネタリキャリア14に連結される連結軸部16を有する。プラネタリキャリア14は、円板部18の操作ノブ12側の面から突出される連結筒部20と、円板部18の操作ノブ12とは反対側の面から突出される歯車軸部22及び回転軸部24とを有する。
【0038】
操作ノブ12の連結軸部16とプラネタリキャリア14の連結筒部20とはタッピングスクリュー等で結合される。
歯車軸部22は、回転軸部24の周りに120°間隔にて同心円上に配置されている。歯車軸部22には、プラネタリキャリア14の径方向の内方及び外方にカット面22aが形成されており、プラネタリギヤ28がプラネタリキャリア14の径方向に変位できる範囲を拡大することができる。かかる構成によって、もし、操作ノブ12の回転中心に対して遊星歯車機構を構成する各回転部材の回転中心が偏心した場合であっても、プラネタリギヤ28の回転が阻害されないので、操作ノブ12のスムーズな回転操作を実現することができる。
【0039】
各歯車軸部22には、プラネタリギヤ(遊星歯車)28が回転可能にそれぞれ支持されている。
図6に示すように、3つのプラネタリギヤ28は、被回転体としてのアウターギヤ42に形成された内歯列42aと、第1回転体の一部をなす回転基板であるサンギヤ(太陽歯車)30に形成された外歯列30aとにそれぞれ噛合されている。これらプラネタリギヤ28、サンギヤ30及びアウターギヤ42が遊星歯車機構を構成している。
【0040】
図4に示すように、サンギヤ30(回転基板)の中央の軸孔30bの図中下側には、前述する回転基板とともに第1回転体の一部をなす回転軸66が同心に固設され、軸孔30bの図中上側には、プラネタリキャリア14の回転軸部24が回転可能に挿入されている。したがって、回転軸66は、操作ノブ12に対して同心かつ間接的に回転するように設けられており、アウターギヤ42に対しても同心かつ間接的に回転するように設けられている。また、アウターギヤ42は略リング状をなしており、回転軸66に対し同心で回転可能である。
【0041】
図6に示すように、サンギヤ30は、3つの外歯列30aの間に、各外歯列30aよりも径方向外方に突出している突出基部32を有する。各突出基部32には凹部34がそれぞれ形成されている。各凹部34は、サンギヤ30の径方向に延びており、径方向外方に向けて開口している。
【0042】
各凹部34には、プランジャ36と圧縮コイルばね38とがそれぞれ配置されている。プランジャ36は、後述するカム部としての凹カム部44に弾接されるように、圧縮コイルばね38によって外方へ向けて常時付勢されている。
【0043】
プランジャ36は、圧縮コイルばね38を外挿する軸部36aを有する。
凹部34は、径方向において外方の凹部分34aが内方の凹部分34bよりも幅広くなるように段差を介して形成されている。プランジャ36は、外方の凹部分34aに往復動可能に摺接される。凹部34の開口の両側には、径方向外方に向けて突出する突起40が形成されている。突起40は、後述する遊びの角度範囲を規制するものである。
【0044】
図6に示すように、アウターギヤ42の内側面には、各突出基部32に配設されたプランジャ36の先端部が当接する、カム部としての3つの凹カム部44が形成されている。
【0045】
各凹カム部44は、プランジャ36の先端部が弾性的に当接して摺接するカム面46を有している。カム面46は、中央の谷部46aとその両側を挟んだ1対の傾斜面46bとからなり、サンギヤ30の回転中心からカム面46までの距離が、カム面46の中央で最も長く、両端に向けて徐々に短くなるように設定されている。
【0046】
カム面46の両側には、各傾斜面46bの傾きよりも大きな傾きをもち、突起40の側壁と対向する規制面48が形成されている。もし、アウターギヤ42が回転制止された場合、プランジャ36の両側に位置する規制面48は、アウターギヤ42に対しサンギヤ30(操作ノブ12・プラネタリキャリア14)が回転可能な角度範囲を規定する。例えば、サンギヤ30が一方向へ回転される場合、プランジャ36の先端が谷部46aに係合する状態から、突起40の側面と規制面48とが衝当される状態までの角度範囲において、サンギヤ30はアウターギヤ42に対して回転可能である。この角度範囲が遊びに相当する。なお、サンギヤ30を他方向へ回転する場合も同様に遊びを有する。かかる構成によれば、回転阻止された操作ノブ12に大きな力がかかっても、各構成部材に破損を生じることなく操作ノブ12の回転を確実に制止できるので、信頼性の高い回転入力装置10を提供することができる。
【0047】
ここで、凹カム部44、プランジャ36及び圧縮コイルばね38は、復帰手段を構成しており、アウターギヤ42(第2回転体)及びサンギヤ30(第1回転体)間に介設されている。アウターギヤ42が回転制止されていないときには、プランジャ36が凹カム部44の谷部46aに係止されており、サンギヤ30とアウターギヤ42とが仮固定されている。したがって、操作ノブ12を回転させると、サンギヤ30とアウターギヤ42とが一体的に回転される。
【0048】
また、アウターギヤ42が回転制止されているときには、操作ノブ12をアウターギヤ42が回転制止されるまで回転した方向に回転させることによって、アウターギヤ42に対してサンギヤ30が所定位置から他の位置へと回転され、プランジャ36の先端がカム面46の谷部46aから規制面48へ向けて傾斜面46bを上るように移動して、操作ノブ12への回転力に対して抗力(壁感触となる力)を生じる。その際、プラネタリギヤ28が自公転され、プラネタリキャリア14に対してサンギヤ30が増速回転される。その後、操作ノブ12への力を除くか、又は、操作ノブ12を逆方向に回転させると、アウターギヤ42に対してサンギヤ30が他の位置から所定位置へと戻されつつ操作ノブ12を元の位置に戻すと共に、プラネタリギヤ28が自公転され、プラネタリキャリア14に対してサンギヤ30が増速回転される。ここで抗力は、プランジャ36の先端がカム面46の谷部46aから規制面48へと移動するとき圧縮される圧縮コイルばね38の弾発力によって生じる。一方、操作ノブ12を元の位置へと戻す力は、圧縮状態の圧縮コイルばね38が伸長しようとして傾斜面46bを付勢する力によって生じる。
【0049】
図4に示すように、アウターギヤ42は、プラネタリキャリア14とアーマチュア52との間に介設される。また、アウターギヤ42は、その外周部から図中上方へ延設された3つの係合突起50を有する。各係合突起50の先端には径方向内方に突出する爪部50aが形成され、それら爪部50aが、円板部18(プラネタリキャリア14)の上面に形成された切欠18aにそれぞれ係合される。
【0050】
上述の遊びを確保するために、切欠18aの周方向の幅は、係合突起50の爪部50aの幅よりも広く形成されている。したがって、アウターギヤ42とプラネタリキャリア14とは、遊びの少なくとも2倍に応じた角度範囲で相対的に回転可能である。
【0051】
アウターギヤ42は、アウターギヤ42からアーマチュア52(摩擦板)に向けて突設された連結突起54が、アーマチュア52に形成された連結孔56に挿入されており、
図6に示すように、ネジ59によってアーマチュア52に螺着されている。かかる構成により、アウターギヤ42は、軸方向へは移動せずに周方向においてのみアーマチュア52と一体的に回転する。したがって、アウターギヤ42は、アーマチュア52がソレノイドユニット58によって吸引されると、軸方向に変位せずに回転停止される。
【0052】
電磁ブレーキ装置100において、ソレノイドユニット58のコイル64に電流を流すと、アーマチュア52は、コイル64に生じる磁力によってヨークコア60に吸引されて、磁力に応じた接触圧にてヨークコア60(外側ヨーク部60dの端面)に当接する。この状態で操作ノブ12を回転させると、その接触圧によって、アーマチュア52とヨークコア60との間に生じる摩擦力、すなわち、アウターギヤ42の回転を制止する力が生じる。
【0053】
サンギヤ30の軸孔30bに固設された回転軸66は、
図4に示すように、ヨークコア60の回転軸孔部60bとハウジング68を構成する上ケース70の中心孔とを貫通して、その先端がハウジング68内に存する。このように回転軸66を構成することによって、後述する回転検出手段(磁石76・磁気センサ78)を適宜設定でき、配置の自由度を高めることができる。
【0054】
回転軸66の先端に螺子75で固設されたバックヨーク74には、磁石76が固定されている。なおバックヨーク74や磁石76は、ハウジング68の内部に収容されている。
【0055】
下ケース72に取り付けた回路基板80上には、磁石76と対向するように、磁気センサ78(例えばGMRセンサ)が設置されている。磁気センサ78は、回路基板80に取り付けたコネクタ82を介して、回転軸66の回転に応じた信号を外部に出力する。ここで、磁石76、及び、磁気センサ78が回転検出手段を構成している。
【0056】
なお、上ケース70には、
図2に示すように、2つの固定用突起84が外方に突設されている。これら固定用突起84を利用して、ハウジング68は、インストルメントパネルやセンターコンソール等に固定される。
【0057】
図7は、回転入力装置10の回路構成を説明するための概略的なブロック図である。
図7に示すように回転入力装置10は、回転入力装置10の動作を制御する制御手段としての制御部86を有する。制御部86は、例えばMCU(マイクロコンピュータ)によって構成され、CPU(中央演算処理装置)やメモリ等を有する。
制御部86は、磁気センサ78(回転検出手段)と、カーエアコンのメインコントローラ88と、コイル64(制動手段)に電流を流す電源部90とに接続され、磁気センサ78の出力に基づいてカーエアコンのメインコントローラ88を制御する。
【0058】
制御部86は、例えば、コイル64に電流が流されてアーマチュア52とともにアウターギヤ42が回転制止されているときに、磁気センサ78の出力に基づいて操作ノブ12の回転方向が逆転したと判断すると、コイル64に供給される電流を停止するように制御して、ソレノイドユニット58の駆動を解除する。なお、操作ノブ12が操作範囲を越えていない場合には、制御部86はコイル64に電流を供給しない。
【0059】
本実施形態における電磁ブレーキ装置100の構成によれば、ヨークコア60内部に軸受等を配置する必要がなく、電磁ブレーキ装置100全体を径方向に小型化でき、製造コストの低下を実現することができる。
【0060】
また、上述した電磁ブレーキ装置を用いた力覚付与型回転入力装置10の構成によれば、アウターギヤ42が回転阻止された状態において、操作者が、操作ノブ12を所定位置から他の位置へと回転すると、操作ノブ12に抗力(壁感触)が付与されつつ、操作ノブ12とプラネタリキャリア14とが一体的に回転されてプラネタリギヤ28が自公転され、プラネタリキャリア14に対して回転軸66がプラネタリキャリア14と同方向に増速回転される。その後、操作ノブ12への力を除くか又は操作ノブ12を逆方向に回転すると、操作ノブ12が他の位置から所定位置へと戻されつつ、操作ノブ12とプラネタリキャリア14とが一体的に逆方向に回転されてプラネタリギヤ28が自公転され、プラネタリキャリア14に対して回転軸66がプラネタリキャリア14と同方向に増速回転される。このように、プラネタリキャリア14に対して回転軸66が増速回転されるので、操作範囲を越えて回転する操作ノブ12を逆方向に回転する角度がたとえ小さくても、回転軸66の回転角度及び回転方向の変化を回転検出手段によって確実に検出できる。
【0061】
本発明は、上述した一実施形態に限定されることはなく、上述した一実施形態に適宜変更を加えた形態も含む。
例えば、上述した一実施形態では、ハウジング68の支持部70aがヨークコア60(内側ヨーク部60c)内部に設置されているが、ハウジング68内に支持部70aが設置されていてもよい。
【0062】
一実施形態では、突設軸部61に傾斜面61aを形成しているが、ヨークコア60の形状やアーマチュア52の形状により、内側ヨーク部60cとアーマチュア52との近接箇所に磁束の集中が生じにくい場合は、突設軸部61に傾斜面61aを設けなくてもよい。
【0063】
また上述した一実施形態では、回転軸66の回転角度を検出するためにGMRセンサが用いられていたが、ホールセンサを用いてもよい。また、回転角検出手段として光学式のものを用いてもよい。
上述した一実施形態では、規制面48がアウターギヤ42に設けられ、突起40がサンギヤ30に設けられていたけれども、これらの配置関係は逆であってもよい。
【0064】
なお、本実施形態における電磁ブレーキ装置100の構成として、回転軸66とアウターギヤ42(被回転体)との間に遊星歯車機構を介設させた構成(
図4)について説明したが、遊星歯車機構を用いない構成、すなわち、アーマチュアと一体的に回転する被回転体と操作ノブとが、プラネタリギヤを介さずに、直接または間接的に連結された構成であってもよい。
図8は、
図4に示す回転入力装置10の変形例の要部を示す縦断面図であり、変形例に示すように、例えば、回転軸66を同心に保持する回転軸保持部90に形成された凹状部90aに、操作ノブ12に連結された連結基部91から下方に突設した下方突設部91aを挿入した構成であってもよい。ここで被回転体としての外側回転基部92は、プランジャ36に当接するカム面44を有しており、また、図示されていないが、アーマチュア52と一体回転するように連結されている。なお
図8において、
図4に示す部材と共通する部材については、主たる部材を除いて省略するとともに、その説明についても省略している。
【0065】
最後に、本発明はカーエアコンシステムのための回転入力装置に好適であるが、これ以外の機器、例えば、カーオーディオシステムやカーナビゲーションシステム等の車載機器にも好適であり、また、パーソナルコンピュータ等にも適用可能であることは勿論である。