特許第5792090号(P5792090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792090
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】扁平形アルカリ電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/12 20060101AFI20150917BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H01M6/12 A
   H01M4/62 C
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-30047(P2012-30047)
(22)【出願日】2012年2月15日
(65)【公開番号】特開2013-168259(P2013-168259A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078064
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 鐵雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115901
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 英樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 光俊
(72)【発明者】
【氏名】菅野 昌紀
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−001473(JP,U)
【文献】 特開2008−108585(JP,A)
【文献】 特開2000−106176(JP,A)
【文献】 特開平08−279355(JP,A)
【文献】 実開昭52−142616(JP,U)
【文献】 特開昭54−048041(JP,A)
【文献】 特開昭57−078771(JP,A)
【文献】 特開平08−171903(JP,A)
【文献】 特開2000−294233(JP,A)
【文献】 特開2002−117859(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0082456(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 6/12
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装缶の開口部にガスケットを介して封口板が嵌合され、かつ前記外装缶の開口端部が内方に締め付けられることにより形成されてなる密閉空間内に、正極合剤の成形体からなる正極、亜鉛粒子または亜鉛合金粒子を含有する負極、セパレータおよびアルカリ電解液を有する扁平形アルカリ電池であって、
前記亜鉛粒子および前記亜鉛合金粒子は、水銀を含有しないものであり、
前記外装缶の内側面と前記樹脂製ガスケットとの間に、前記正極合剤の成形体の外周部が配置されており、
前記正極合剤の成形体の外周部には、前記樹脂製ガスケットの押圧により凹みが形成されており、
前記正極合剤は、二酸化マンガンの含有量が50質量%以上であり、
前記外装缶を下側にして置いたとき、電池内における前記正極合剤の成形体の、前記セパレータを介して前記樹脂製ガスケットと接する部分における最も低い部分と、前記正極合剤の成形体の最も高い部分との間の高さの差が、0.35〜1.0mmであることを特徴とする扁平形アルカリ電池。
【請求項2】
正極合剤は、二酸化マンガンと黒鉛とアルカリ金属の水酸化物とを含む複合体と、銀−ニッケル複合酸化物とを含有しており、黒鉛の含有量が5〜10質量%である請求項1に記載の扁平形アルカリ電池。
【請求項3】
二酸化マンガンと黒鉛とアルカリ金属の水酸化物とを含む複合体は、二酸化マンガンと黒鉛と濃度が45質量%以上のアルカリ金属の水酸化物の水溶液との混合物を、プレス処理してシート状物とし、該シート状物を粉砕することで得られたものである請求項2に記載の扁平形アルカリ電池。
【請求項4】
外装缶の開口部にガスケットを介して封口板が嵌合され、かつ前記外装缶の開口端部が内方に締め付けられることにより形成されてなる密閉空間内に、正極合剤の成形体からなる正極、亜鉛粒子または亜鉛合金粒子を含有する負極、セパレータおよびアルカリ電解液を有し、前記外装缶の内側面と前記樹脂製ガスケットとの間に、前記正極合剤の成形体の外周部が配置されている扁平形アルカリ電池の製造方法であって、
二酸化マンガンと黒鉛と濃度が45質量%以上のアルカリ金属の水酸化物の水溶液との混合物を、プレス処理してシート状物とし、該シート状物を粉砕して、二酸化マンガンと黒鉛とアルカリ金属の水酸化物とを含む複合体を形成する工程と、
前記複合体と銀−ニッケル複合酸化物とを混合して、黒鉛の含有量が5〜10質量%である正極合剤を調製する工程と、
前記正極合剤を成形して正極合剤の成形体を形成する工程とを有することを特徴とする扁平形アルカリ電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐漏液性に優れた扁平形アルカリ電池と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子玩具などの電子機器では、その電源として、ボタン形やコイン形などの扁平形のアルカリ電池が汎用されている。扁平形アルカリ電池の正極には、二酸化マンガンなどの正極活物質、黒鉛などの導電助剤およびバインダを含有する正極合剤の成形体(例えば、ペレット状の成形体)が使用されることが一般的である。
【0003】
また、扁平形のアルカリ電池は、例えば、正極合剤の成形体を収容する外装缶と、亜鉛粒子などの負極材料を収容する封口板とが、樹脂製ガスケットを介して嵌合しており、外装缶1の開口端部が内方に締め付けられ、これにより樹脂製ガスケットが封口板に当接することで、外装缶の開口部が封口されて電池内部が密閉構造となる構造が採用されている。そして、正極合剤の導入量を多くして電池の高容量化を図るために、外装缶の内側底面と樹脂製ガスケットとの間に正極合剤の成形体の外周部が配置された所謂底敷構造が採用されることがある。
【0004】
ところで、二酸化マンガンを多く含む正極合剤の成形体は、比較的柔らかい。そのため、前記の底敷構造を採用すると、樹脂製ガスケットの下面と当接する正極合剤の成形体の外周部に、樹脂製ガスケットに押されて凹みが生じる。
【0005】
特許文献1では、正極合剤の成形体に前記のような凹みが生じた場合には、電解液の漏れを引き起こすことが指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−162100号公報(段落[0010]、図2など参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐漏液性に優れた扁平形アルカリ電池と、その製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成し得た本発明の扁平形アルカリ電池は、外装缶の開口部にガスケットを介して封口板が嵌合され、かつ前記外装缶の開口端部が内方に締め付けられることにより形成されてなる密閉空間内に、正極合剤の成形体からなる正極、亜鉛粒子または亜鉛合金粒子を含有する負極、セパレータおよびアルカリ電解液を有する扁平形アルカリ電池であって、前記外装缶の内側面と前記樹脂製ガスケットとの間に、前記正極合剤の成形体の外周部が配置されており、前記正極合剤は、二酸化マンガンの含有量が50質量%以上であり、前記外装缶を下側にして置いたとき、電池内における前記正極合剤の成形体の、前記セパレータを介して前記樹脂製ガスケットと接する部分における最も低い部分と、前記正極合剤の成形体の最も高い部分との間の高さの差が、0.35〜1.0mmであることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の扁平形アルカリ電池の製造方法は、外装缶の開口部にガスケットを介して封口板が嵌合され、かつ前記外装缶の開口端部が内方に締め付けられることにより形成されてなる密閉空間内に、正極合剤の成形体からなる正極、亜鉛粒子または亜鉛合金粒子を含有する負極、セパレータおよびアルカリ電解液を有し、前記外装缶の内側面と前記樹脂製ガスケットとの間に、前記正極合剤の成形体の外周部が配置されている扁平形アルカリ電池の製造方法であって、二酸化マンガンと黒鉛と濃度が45質量%以上のアルカリ金属の水酸化物の水溶液との混合物を、プレス処理してシート状物とし、該シート状物を粉砕して、二酸化マンガンと黒鉛とアルカリ金属の水酸化物とを含む複合体を形成する工程と、前記複合体と銀−ニッケル複合酸化物とを混合して、黒鉛の含有量が5〜10質量%である正極合剤を調製する工程と、前記正極合剤を成形して正極合剤の成形体を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0010】
なお、電池業界においては、高さより径の方が大きい扁平形電池をコイン形電池と呼んだり、ボタン形電池と呼んだりしているが、そのコイン形電池とボタン形電池との間に明確な差はなく、本発明の扁平形アルカリ電池には、コイン形電池、ボタン形電池のいずれもが含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐漏液性に優れた扁平形アルカリ電池と、その製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の扁平形アルカリ電池の一例を模式的に表す側面図である。
図2図1に示す扁平形アルカリ電池の断面図である。
図3】通常の扁平形アルカリ電池の一例を模式的に表す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1および図2に、本発明の扁平形アルカリ電池の一例を模式的に表している。図1は側面図、図2は断面図(縦断面図)である。本発明の扁平形アルカリ電池は、例えば、図1および図2に示すように、正極3およびセパレータ5を内填した外装缶1の開口部に、負極4を内填した封口板2が、断面L字状で環状の樹脂製ガスケット6を介して嵌合しており、外装缶1の開口端部が内方に締め付けられ、これにより樹脂製ガスケット6が封口板2に当接することで、外装缶1の開口部が封口されて電池内部が密閉構造となっている。すなわち、図1および図2に示す扁平形アルカリ電池では、外装缶1、封口板2および樹脂製ガスケット6からなる電池容器内の空間(密閉空間)に、正極3、負極4およびセパレータ5を含む発電要素が装填されており、更にアルカリ電解液(図示しない)が注入されている。そして、外装缶1は正極端子を兼ね、封口板2は負極端子を兼ねている。
【0014】
また、本発明の扁平形アルカリ電池は、図2に示しているように、外装缶1の内側底面と樹脂製ガスケット6との間に正極(正極合剤の成形体)3の外周部が配置された所謂底敷構造を採用している。
【0015】
図3に示す通常の扁平形アルカリ電池では、樹脂製ガスケット6が外装缶1の底にまで到達している所謂中入れ構造を採用しているが、このような電池では、その内容積のうち、発電に関与しない樹脂製ガスケット6の占有容積分が大きい。これに対し、図3に示しているように底敷構造を採用している本発明の扁平形アルカリ電池では、電池内における正極の充填量(正極活物質の充填量)をより高めることが可能であり、高容量化を図ることができる。
【0016】
本発明の扁平形アルカリ電池に係る正極は、正極合剤の成形体からなるものであり、前記正極合剤は、二酸化マンガンの含有量が50質量%以上のものである。扁平形アルカリ電池の正極活物質としては、二酸化マンガンの他に酸化銀が一般的であるが、二酸化マンガンは酸化銀に比べて価格が低いため、正極合剤における二酸化マンガンの含有量を50質量%以上とし、正極活物質の主体を二酸化マンガンとすることで、電池の低コスト化を図ることが可能となり、これにより電池の生産性を高めることができる。正極合剤における二酸化マンガンの含有量は、70質量%以上であることが好ましい。
【0017】
ただし、正極合剤における二酸化マンガンの含有量を多くしすぎると、後述する他の成分の含有量が少なくなりすぎて、これらによる作用を十分に発揮させ得ない虞がある。よって、正極合剤における二酸化マンガンの含有量は、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
【0018】
前記の通り、二酸化マンガンの含有量を多くした正極合剤の成形体は、比較的柔らかいことから、図2に示すように、外装缶1の開口部に、樹脂製ガスケット6を介して封口板2を嵌合させ、外装缶1の開口端部を内方に締め付けることで樹脂製ガスケット6を封口板2に当接させて封口を行うと、正極(正極合剤の成形体)3のうち、セパレータ5を介して樹脂製ガスケット6と接する部分が、樹脂製ガスケット6側に押されて凹んでしまう。
【0019】
特許文献1では、正極合剤の成形体に前記の凹みが生じると、封口板と樹脂製ガスケットと正極合剤の成形体との間の圧縮が低下し、電解液が漏出するとしている。
【0020】
しかしながら、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、正極合剤の成形体における前記の凹みの程度を制御することで、却って電解液の漏出を高度に抑制し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
本発明の扁平形アルカリ電池は、外装缶を下側にして置いたとき(すなわち、図1および図2に示す向きに電池を置いたとき)、電池内における正極合剤の成形体の、セパレータを介して樹脂製ガスケットと接する部分における最も低い部分と、正極合剤の成形体の最も高い部分との間の高さの差(すなわち、図2中Aの長さ。以下「高さの差A」という。)が、0.35mm以上、好ましくは0.45mm以上である。前記高さの差Aを前記の値にすることで、樹脂製ガスケットと正極合剤の成形体とが、セパレータを介して接する部分の面積を大きくすることができるため、電池容器の封口性が向上し、電解液の漏出を高度に抑制できるようになる。
【0022】
ただし、前記高さの差Aの値が大きくなりすぎると、正極合剤の成形体が負極側へ盛り上がっていき、負極を圧迫したり、樹脂製ガスケットのかかる力がばらつきやすくなったりするために、耐漏液性が損なわれる虞がある。よって、前記高さの差Aは、1.0mm以下であり、0.70mm以下であることが好ましい。
【0023】
正極合剤の成形体における前記高さの差は、正極合剤の成形体の柔らかさを調整すると共に、封口後に正極合剤の成形体に係る応力を調整することで制御できる。具体的には、正極合剤の成形体において、前記高さの差を前記の値に調整するには、正極合剤における二酸化マンガンの含有量を前記の値にすることに加えて、正極合剤(正極合剤の成形体)を、後述する構成のものとした上で、封口のために外装缶の開口端部を内方に締め付ける力を調整すればよい。
【0024】
正極合剤は、導電助剤として黒鉛を含有していることが好ましい。正極合剤における黒鉛の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。なお、正極合剤における黒鉛の含有量は、5質量%以上であることが更に好ましく、この場合には、重負荷放電特性により優れた扁平形アルカリ電池を構成できる。
【0025】
ただし、正極合剤中の黒鉛の量が多くなりすぎると、例えば正極活物質である二酸化マンガンの含有量が少なくなって、電池の容量低下を引き起こす虞がある。よって、正極合剤における黒鉛の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。
【0026】
正極合剤は、銀−ニッケル含有化合物を含有していることが好ましい。銀−ニッケル複合酸化物は、正極合剤(正極合剤の成形体)において、導電助剤として機能し得る他、正極合剤の成形体の強度を高める作用も有している。よって、正極合剤に銀−ニッケル複合酸化物を含有させることで、正極合剤の成形体の生産性、ひいては、扁平形アルカリ電池の生産性を高めることができる。
【0027】
更に、銀−ニッケル複合酸化物は、水素ガスを吸収する機能を有している。例えば、後述するように、扁平形アルカリ電池の負極として使用される亜鉛粒子などには、環境負荷軽減の観点から、無水銀タイプのものを使用することが好ましいが、無水銀タイプの亜鉛粒子などを使用した電池では、内部で水素ガスが発生しやすく、これが電池の膨れの原因となる虞がある。しかし、銀−ニッケル複合酸化物を含有する正極合剤の成形体を有する扁平形アルカリ電池では、無水銀タイプの亜鉛粒子などを使用した場合でも、内部で発生する水素ガスを銀−ニッケル複合酸化物が吸収するため、かかる水素ガスに起因する電池の膨れの発生も良好に抑制できる。
【0028】
銀−ニッケル複合酸化物としては、AgNiOや、一般式AgNiで表され、X/Yが1より大きく1.9以下であるものが挙げられる。これらの中でも、一般式AgNiで表され、X/Yが1より大きく1.9以下であるものがより好ましい。前記一般式で表される銀−ニッケル複合酸化物は、銀−ニッケル複合酸化物として汎用されているAgNiOよりもAgが結晶中に過剰に取り込まれている。そのため、AgNiOを用いる場合よりも、正極の導電性および成形性を向上させることができる。
【0029】
一般式AgNiで表され、X/Yが1より大きく1.9以下である銀−ニッケル複合酸化物は、例えば、無機酸のAg塩と無機酸のNi塩とを、酸化性のアルカリ水溶液中で反応させることにより製造することができる。
【0030】
具体的には、例えば、無機酸のAg塩および無機酸のNi塩を、アルカリ金属の水酸化物と水中で中和反応させ、該中和反応前、該中和反応途中、または該中和反応後に、反応液中に酸化剤を添加して酸化処理を行う。酸化剤の添加は、前記の中和反応前、中和反応途中または中和反応後において、複数回行うことが好ましい。
【0031】
無機酸のAg塩としては、塩酸銀、硝酸銀、硫酸銀、リン酸銀などが挙げられる。また、無機酸のNi塩としては、塩酸ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、リン酸ニッケルなどが挙げられる。更に、アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。また、酸化剤としては、KMnO、K、NaOCl、Na、H、オゾンなどが挙げられる。
【0032】
前記の中和反応においては、反応液中のアルカリ度をより高くすることが好ましく、例えば、無機酸のAg塩中のAgのモル量と、無機酸のNi塩中のNiのモル量との合計量に対して、アルカリ金属の水酸化物のモル量を5倍程度とすることが望ましい。また、酸化剤の使用量は、酸化、すなわち金属イオンの価数変化に対して、等量以上とすることが好ましく、2倍等量程度とすることがより好ましい。
【0033】
中和反応および酸化処理時の温度は、例えば、室温から100℃の間(より好ましくは30〜50℃)とすることが好ましい。また、中和反応および酸化処理は、反応液を攪拌しながら行うことが好ましい。
【0034】
酸化処理後は、生成した反応沈殿物を反応液から分離し、回収した反応沈殿物を水洗、乾燥して、必要に応じて粉砕するなどし、前記一般式で表される銀−ニッケル複合酸化物を得る。
【0035】
本発明の扁平形アルカリ電池に係る正極合剤において、銀−ニッケル複合酸化物の含有量は、その使用による前記の効果を良好に確保する観点から、3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。ただし、正極合剤中の銀−ニッケル複合酸化物の量が多くなりすぎると、例えば正極合剤の流動性が低下して、正極合剤の成形体を連続生産する際の生産性が低下したり、正極合剤のコスト増大を引き起こしたりする虞がある。よって、正極合剤における銀−ニッケル複合酸化物の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0036】
正極合剤には、正極活物質として、二酸化マンガンと共に酸化銀(酸化第一銀、酸化第二銀など)を使用してもよい。正極合剤に使用する酸化銀は、例えば、通常流通している径が0.1〜5μmの微粉末状のものでもよいが、このような微粉末の酸化銀を造粒して得られる顆粒状のものがより好ましい。顆粒状の酸化銀を用いると、微粉末の状態で用いた場合よりも抵抗が低くなるため、扁平形アルカリ電池の負荷特性をより向上させることができる。
【0037】
顆粒状酸化銀の粒径としては、50μm以上であることが好ましく、75μm以上であることがより好ましく、また、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。更に、顆粒状酸化銀のかさ密度は、1.5g/cm以上であることが好ましく、1.8g/cm以上であることがより好ましく、3.5g/cm以下であることが好ましく、2.6g/cm以下であることがより好ましい。このような形態の酸化銀であれば、粉末状のものに比較して流動性がよく、秤量性および成形性が向上し、抵抗が低下して反応性が向上するため、より負荷特性に優れたものとなり、また、製造される正極(ひいては扁平形アルカリ電池)個々の特性が安定化する。本明細書でいう顆粒状酸化銀の粒径は、Honeywell社製のマイクロトラック粒度分布計「9320−X100」を用いて、レーザー光の散乱により、粒子個数nおよび各粒子の直径dを測定し、算出した数平均粒子径である。また、本明細書でいう顆粒状酸化銀のかさ密度は、JIS R 1628に規定のかさ密度測定方法に準じて、所定量の顆粒状酸化銀を容器に入れ、かさ密度測定装置を用いて求めた値である。
【0038】
なお、銀−ニッケル複合酸化物や酸化銀は、正極合剤の成形体の成形剤としても機能する。通常の扁平形アルカリ電池の正極合剤の成形体(正極活物質を二酸化マンガンとする正極合剤の成形体)には、成形体の成形性を高めるためにバインダを使用することが一般的であるが、本発明に係る正極合剤に銀−ニッケル複合酸化物や酸化銀を含有させた場合には、例えば、バインダを使用しなくても正極合剤の成形体の形状を安定化することができる。
【0039】
酸化銀を使用する場合、正極合剤における酸化銀の含有量は、酸化銀の使用による前記の各効果を良好に確保する観点から、12質量%以上であることが好ましい。ただし、正極合剤における酸化銀の量が多すぎると、正極の生産コストが増大して、電池の生産性が低下する。よって、正極合剤における酸化銀の含有量は、20質量%以下であることが好ましい。
【0040】
正極合剤には、必要に応じてバインダを含有させることもできる。バインダの具体例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンなどが挙げられる。ただし、前記複合体におけるバインダの含有量は、例えば、0.1〜4.0質量%であることが好ましい。
【0041】
正極合剤は、二酸化マンガンと黒鉛とアルカリ金属の水酸化物とを含む複合体と、銀−ニッケル複合酸化物とを含有していることが好ましい。
【0042】
例えば、扁平形アルカリ電池における重負荷放電特性を高めるために、正極合剤における黒鉛の含有量を5質量%以上とすると、正極合剤の流動性が低下し、例えばホッパーを粉体状の正極合剤を連続的に成形機に導入することが難しく、正極合剤の成形体の連続製造が困難となって、前記成形体の生産性、ひいては扁平形アルカリ電池の生産性の低下を引き起こす虞がある。
【0043】
しかしながら、前記複合体を含有する正極合剤であれば、黒鉛の含有量を多くしても高い流動性を維持し得るため、例えば、ホッパーを用いて粉体状の正極合剤を連続的に成形機に導入することが可能となることから、正極合剤の成形体の生産性、ひいては扁平形アルカリ電池の生産性を高めつつ、電池の重負荷放電特性の向上を図ることができる。
【0044】
また、二酸化マンガンと黒鉛とアルカリ金属の水酸化物とを含む複合体を使用することで、正極合剤の成形体内での黒鉛の分散性を高めることが可能となり、更に、正極合剤の成形体が内部にアルカリ金属の水酸化物を含むことで、電池内において、正極合剤の成形体内でのアルカリ電解液の保持量が増大することから、これらの作用によって扁平形アルカリ電池の重負荷放電特性が向上する。しかも、嵩高い黒鉛の含有量を前記のように高めても、正極合剤の成形体のサイズの増大を抑制することができるため、正極合剤の成形体のサイズの維持のために正極合剤中の正極活物質量を低減する必要がないことから、容量低下を抑制することもできる。
【0045】
本発明の扁平形アルカリ電池に係る正極合剤を構成する前記複合体は、例えば、二酸化マンガンと、黒鉛と、アルカリ金属の水酸化物の水溶液とを混合し、この混合物をプレス処理してシート状物とし、このシート状物を粉砕することで得ることができる。
【0046】
前記の複合体を作製するに使用するアルカリ金属の水酸化物の水溶液には、そのアルカリ金属の水酸化物の濃度が45質量%以上のものを使用することが好ましい。このような高濃度のアルカリ金属の水酸化物の水溶液を使用することで、複合体形成時の各成分の結着性が向上し、より高い強度の複合体を形成できるようになる。また、前記のような高濃度のアルカリ金属の水酸化物の水溶液を用いて作製した複合体であれば、正極合剤の成形体におけるアルカリ電解液の保持性をより高め得るため、重負荷放電特性がより優れた扁平形アルカリ電池を形成できるようになる。
【0047】
前記複合体の作製に使用するアルカリ金属の水酸化物の水溶液は、水酸化カリウム水溶液であることがより好ましい。よって、前記複合体が含有するアルカリ金属の水酸化物も、水酸化カリウムであることがより好ましい。
【0048】
なお、アルカリ金属の水酸化物の水溶液は、例えば水酸化カリウムの場合、室温での飽和濃度がおよそ50質量%であることから、これより高い濃度の水溶液を用いる場合には、前記複合体の作製時に温度管理を行うことが望ましい。通常、高濃度のアルカリ金属の水酸化物の水溶液の調製は、溶解性を高めるために加温した条件下で行われるが、室温での飽和濃度を超える高濃度の水溶液を調製し、これを用いて前記複合体を作製する場合には、前記複合体の各構成成分の混合も、水溶液が飽和濃度に達しない温度条件下で実施することが好ましい。具体的には、アルカリ金属の水酸化物の水溶液の調製、およびこれを用いた前記複合体の各構成成分の混合は、35℃以上で実施することが好ましく、また、70℃以下で実施することが好ましい。
【0049】
ただし、アルカリ金属の水酸化物の水溶液におけるアルカリ金属の水酸化物の濃度を高くしすぎると、前記のような温度で加温しても、十分に溶解させ得ることが困難となる。よって、アルカリ金属の水酸化物の水溶液におけるアルカリ金属の水酸化物の濃度は、65質量%以下であることが好ましい。
【0050】
なお、前記複合体の作製に使用するアルカリ金属の水酸化物の水溶液は、その含有成分を、扁平形アルカリ電池のアルカリ電解液と同様とすることができる。具体的には、例えば、前記複合体の作製に使用するアルカリ金属の水酸化物の水溶液は、酸化亜鉛などを含有していてもよい。
【0051】
前記複合体の作製に係る各構成成分の混合方法については特に制限はなく、例えば、公知のバッチタイプの混合機(混練機)などを使用することができる。また、各構成成分の混合物をプレス処理してシート状物とする方法についても特に制限はなく、例えば、ロールプレス機などを使用することができる。
【0052】
前記シート状物の粉砕物は分級することが好ましく、これにより所望の粒度分布の複合体を得ることができる。
【0053】
前記複合体においては、黒鉛の含有量を、6質量%以上とすることが好ましく、また、8.5質量%以下とすることが好ましい。前記複合体における黒鉛の含有量を、前記のような値とすることで、正極合剤における黒鉛の含有量を、電池の重負荷放電特性を高め得るとして先に記載した値に調整することが容易となる。
【0054】
また、前記複合体の作製に際しては、アルカリ金属の水酸化物の水溶液の添加量を、複合体の作製に供する全材料(二酸化マンガン、黒鉛およびアルカリ金属の水酸化物の水溶液、更には、必要に応じて後述するバインダなど。前記複合体の作製時におけるアルカリ金属の水酸化物の水溶液の添加量について、以下同じ。)中、3質量%以上とすることが好ましく、これにより、例えば前記複合体の結着性をより高めることができる。ただし、前記複合体の作製時に使用するアルカリ金属の水酸化物の水溶液の量が多すぎると、複合体の作製に使用する全材料中の水分量が多くなって、複合体の作製が困難となる虞がある。よって、前記複合体の作製に際しては、アルカリ金属の水酸化物の水溶液の添加量を、複合体の作製に供する全材料中、12質量%以下とすることが好ましい。
【0055】
前記複合体には、必要に応じてバインダを含有させることもできる。バインダには、正極合剤用のバインダとして先に例示した各種バインダが使用できる。前記複合体におけるバインダの含有量は、例えば、0.1〜4質量%であることが好ましい。
【0056】
なお、前記複合体における二酸化マンガンの含有量は、30〜95質量%であることが好ましい。
【0057】
前記の複合体を、銀−ニッケル複合酸化物などと混合して正極合剤を調製し、これを常法に従って加圧成形して、正極合剤の成形体を製造することができる。
【0058】
本発明の扁平形アルカリ電池に係る負極は、亜鉛粒子または亜鉛合金粒子(以下、両者を纏めて「亜鉛系粒子」という場合がある)を含有するものであり、これら粒子中の亜鉛が活物質として作用する。亜鉛合金粒子の合金成分としては、例えば、水銀(例えば、含有量が1〜5質量%)、インジウム(例えば、含有量が50〜500質量ppm)、ビスマス(例えば、含有量が50〜500質量ppm)などが挙げられる(残部は亜鉛および不可避不純物である)。負極の有する亜鉛系粒子は、1種単独でもよく、2種以上を有していてもよい。
【0059】
亜鉛系粒子としては、例えば、全粉末中、粒径が100〜200μmの粉末の割合が、50体積%以上、より好ましくは90体積%以上であるものが挙げられる。なお、ここでいう亜鉛などの粉末における粒径が100〜200μmの粉末の体積割合は、前述の「顆粒状酸化銀」の粒径測定法と同じ測定方法および測定装置で測定したものである。
【0060】
負極に使用する亜鉛系粒子は、前記の形態を有していてもよいが、電池の負荷特性をより高める観点からは、例えば、全粒子のうち、200メッシュの篩い目を通過し得るものが、50質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。このように、負極の有する亜鉛系粒子が小さい場合には、負極全体の比表面積を大きくできることから、負極での反応を効率よく進めることができ、電池の負荷特性(特に重負荷特性)が良好となる。
【0061】
負極の有する亜鉛系粒子のサイズを小さくして、負極での反応効率をより高める観点からは、更に、負極の有する亜鉛系粒子のうち、330メッシュの篩い目を通過し得るものの割合が、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることが更に好ましく、また、440メッシュの篩い目を通過し得るものの割合が、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。なお、負極の有する亜鉛系粒子のサイズがあまりに小さすぎると、取り扱い性が低下するため、例えば、負極が有する亜鉛系粒子の最小サイズは、1μm程度であることが望ましい。
【0062】
また、亜鉛系粒子は、水銀を含有しないものや、鉛を含有しないものであることが、より好ましい。このような亜鉛系粒子を使用している電池であれば、例えば、口から飲み込み、一定時間体内を観察した後、体外に排出して取り出すタイプの内視鏡カメラの電源用途に用いた場合などに、人体内において電池内部の亜鉛などが漏れ出した場合においても、人体への悪影響を最小限に抑えることができ、また、電池の廃棄による環境汚染も抑制できる。
【0063】
負極には、例えば、前記の亜鉛系粒子の他に、必要に応じて添加されるゲル化剤(ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルロースなど)を含み、これにアルカリ電解液を加えることで構成される負極剤(ゲル状負極)が適用できる。負極中のゲル化剤の量は、例えば、0.5〜1.5質量%とすることが好ましい。
【0064】
また、負極は、前記のようなゲル化剤を実質的に含有しない非ゲル状の負極とすることもできる(なお、非ゲル状負極の場合、亜鉛系粒子近傍に存在するアルカリ電解液が増粘しなければ構わないので、「ゲル化剤を実質的に含有しない」とは、アルカリ電解液の粘度への影響がない程度に含有していてもよい、という意味である)。ゲル状負極の場合には、亜鉛系粒子の近傍に、ゲル化剤と共にアルカリ電解液が存在しているが、ゲル化剤の作用によってこのアルカリ電解液が増粘しており、アルカリ電解液の移動、ひいてはアルカリ電解液中のイオンの移動が抑制されている。このため、負極での反応速度が抑えられ、これが電池の重負荷特性向上を阻害しているものと考えられる。これに対し、負極を非ゲル状として、亜鉛系粒子近傍に存在するアルカリ電解液の粘度を増大させずにアルカリ電解液中のイオンの移動速度を高く保つことで、負極での反応速度を高めて、重負荷特性の向上を図ることができる。
【0065】
本発明の扁平形アルカリ電池に係るアルカリ電解液には、正極合剤に係る前記複合体の作製に使用するものと同様のアルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)の水溶液が使用される。なお、アルカリ電解液も、前記複合体の作製に使用するものと同様に、水酸化カリウムの水溶液が好ましい。
【0066】
アルカリ電解液の濃度は、例えば、水酸化カリウムの水溶液の場合、水酸化カリウムが20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であって、40質量%以下、より好ましくは38質量%以下であることが望ましく、水溶液の濃度をこのような値に調整することで、導電性に優れた電解液とすることができる。
【0067】
アルカリ電解液には、前記の各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて公知の各種添加剤を添加してもよい。例えば、負極に用いる亜鉛系粒子の腐食(酸化)を防止するために、酸化亜鉛を添加するなどしてもよい。
【0068】
本発明の扁平形アルカリ電池におけるセパレータについては特に制限はなく、例えば、ビニロンとレーヨンを主体とする不織布、ビニロン・レーヨン不織布(ビニロン・レーヨン混抄紙)、ポリアミド不織布、ポリオレフィン・レーヨン不織布、ビニロン紙、ビニロン・リンターパルプ紙、ビニロン・マーセル化パルプ紙などを用いることができる。また、親水処理された微孔性ポリオレフィンフィルム(微孔性ポリエチレンフィルムや微孔性ポリプロピレンフィルムなど)とセロファンフィルムとビニロン・レーヨン混抄紙のような吸液層(電解液保持層)とを積み重ねたものをセパレータとしてもよい。
【0069】
本発明の扁平形アルカリ電池は、従来から知られている扁平形アルカリ電池(二酸化マンガンや酸化銀を正極活物質とする扁平形電池)と同様の用途に適用することができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0071】
実施例1
<正極の作製>
電解二酸化マンガンと、黒鉛と、PTFE粉末と、水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウム濃度が56質量%で、更に酸化亜鉛を2.9質量%含有する水溶液)との、87.6:6.7:0.2:5.5(質量比)の混合物およびプレス処理を、オープンロールを用いて行った。得られたシート状物をロールクラッシャーにより粉砕して、二酸化マンガンと黒鉛とPTFEと水酸化カリウムとを含有する複合体を得た。
【0072】
前記の複合体:95.5質量%と、銀−ニッケル複合酸化物(AgNiで表され、X/Y=1):4.5質量%とを混合して正極合剤とし、この正極合剤を、充填密度3.5g/cmで、直径10.88mm、高さ1.85mmの円板状に加圧成形することによって、正極合剤の成形体を作製した。
【0073】
負極には、60メッシュの篩い目を通過し得る粒子の割合が100質量%で、平均粒径が150μmの、水銀を含有しない亜鉛粒子160mgを用いた。
【0074】
アルカリ電解液には、酸化亜鉛を5質量%溶解した36質量%水酸化カリウム水溶液を用いた。また、正極缶は、SUS319J1(クロム含量23質量%)を用いて作製した。更に負極端子板は、銅−ステンレス鋼−ニッケルクラッド板を用いて作製した。更に、セパレータには、株式会社ユアサメンブレンシステムの「YG9132」を用いた。このセパレータは、厚みが20μmのセロハンフィルムと、厚みが30μmのグラフトフィルムとを積層してなるものであり、該グラフトフィルムは、ポリエチレン主鎖にアクリル酸をグラフト共重合させた構造を有するグラフト共重合体で構成されている。また、電解液保持層として、厚みが200μmのビニロン−レーヨン混抄紙を用いた。セパレータおよび電解液保持層は、直径11.25mmの円形に打ち抜いて用いた。
【0075】
前記の正極合剤の成形体、負極、アルカリ電解液、外装缶、封口板、セパレータおよび電解液保持層を用い、更にナイロン66製の環状ガスケットを用いて、図2に示す構造で、外径11mm、厚さ5.2mmの扁平形アルカリ電池を作製した。なお、この扁平形アルカリ電池における前記高さの差Aは、0.35mmであった。
【0076】
実施例2
外装缶の開口部を、封口板および環状ガスケットを用いて封口する際に、外装缶の開口端部の締め付け強度を大きくして、封口板の押さえを強くすることで、前記高さの差Aを0.45mmに調整した以外は実施例1と同様にして扁平形アルカリ電池を得た。
【0077】
実施例3
外装缶の開口部を、封口板および環状ガスケットを用いて封口する際に、外装缶の開口端部の締め付け強度を大きくして、封口板の押さえを強くすることで、前記高さの差Aを0.70mmに調整した以外は実施例1と同様にして扁平形アルカリ電池を得た。
【0078】
実施例4
外装缶の開口部を、封口板および環状ガスケットを用いて封口する際に、外装缶の開口端部の締め付け強度を大きくして、封口板の押さえを強くすることで、前記高さの差Aを0.75mmに調整した以外は実施例1と同様にして扁平形アルカリ電池を得た。
【0079】
実施例5
外装缶の開口部を、封口板および環状ガスケットを用いて封口する際に、外装缶の開口端部の締め付け強度を大きくして、封口板の押さえを強くすることで、前記高さの差Aを1.0mmに調整した以外は実施例1と同様にして扁平形アルカリ電池を得た。
【0080】
比較例1
外装缶の開口部を、封口板および環状ガスケットを用いて封口する際に、外装缶の開口端部の締め付け強度を小さくして、封口板の押さえを弱くすることで、前記高さの差Aを0.30mmに調整した以外は実施例1と同様にして扁平形アルカリ電池を得た。
【0081】
比較例2
外装缶の開口部を、封口板および環状ガスケットを用いて封口する際に、外装缶の開口端部の締め付け強度を大きくして、封口板の押さえを強くすることで、前記高さの差Aを1.1mmに調整した以外は実施例1と同様にして扁平形アルカリ電池を得た。
【0082】
実施例および比較例の電池について、以下の方法で耐漏液性評価を行った。実施例および比較例の電池各20個を、60℃、相対湿度90%の環境下で保管し、保管開始から20日目および40日目に漏液の発生した個数を調べた。これらの結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示す通り、前記高さの差Aが適正な実施例1〜5の扁平形アルカリ電池は、保管開始から20日経過しても漏液が生じておらず、前記高さの差Aが不適な比較例1、2の電池に比べて、高い耐漏液性を備えている。また、前記高さの差Aがより好適な実施例2、3の電池では、保管開始から40日経過しても漏液が生じておらず、非常に高い耐漏液性を有している。
【符号の説明】
【0085】
1 外装缶
2 封口板
3 正極(正極合剤の成形体)
4 負極
5 セパレータ
6 樹脂製ガスケット
図1
図2
図3