特許第5792095号(P5792095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792095
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】現像ロール
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   G03G15/08 235
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-42598(P2012-42598)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-178412(P2013-178412A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 圭一
(72)【発明者】
【氏名】早崎 康行
【審査官】 中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−032692(JP,A)
【文献】 特開2006−184608(JP,A)
【文献】 特開2011−059505(JP,A)
【文献】 特開2009−151144(JP,A)
【文献】 特開2005−283912(JP,A)
【文献】 特開2004−295095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型転写によって形成された多数の突出部を外表面に有するゴム弾性層と、該ゴム弾性層の外表面に沿って形成された塗膜とを有する現像ロールであって、
上記塗膜は、該塗膜を構成するマトリックスポリマーと、上記塗膜表面を粗面化するための粗さ形成用粒子と、シリコーングラフトアクリル樹脂およびフッ素含有基グラフトアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上とを含有しており、
上記突出部の高さHと上記粗さ形成用粒子の平均粒子径dの比d/Hが0.50以下であることを特徴とする現像ロール。
【請求項2】
請求項1に記載の現像ロールであって、
上記マトリックスポリマー100質量部に対し、上記シリコーングラフトアクリル樹脂およびフッ素含有基グラフトアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上を0.5〜20質量部の範囲内で含有することを特徴とする現像ロール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の現像ロールであって、
上記マトリックスポリマー100質量部に対し、上記粗さ形成用粒子を1〜20質量部の範囲内で含有することを特徴とする現像ロール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像ロールであって、
上記粗さ形成用粒子の平均粒子径dは、0.1〜15μmの範囲内にあることを特徴とする現像ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置が使用されている。これら画像形成装置には、一般に、感光ドラムが組み込まれており、感光ドラムの周囲には、現像ロールや帯電ロールなどの各種のロール部材が配設されている。上記画像形成装置における現像は、カートリッジ内のトナーを現像ロールによって感光ドラムまで保持・搬送し、感光ドラム表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて可視像とすることにより行われる。
【0003】
上記現像ロールとしては、例えば、軸体と、軸体の外周に形成されたゴム弾性層と、ゴム弾性層の表面に被覆された塗膜とを有するものが知られている。この種の現像ロールは、十分なトナー搬送性を確保するため、ロール表面が粗面化されていることが多い。
【0004】
具体的には、例えば、特許文献1には、型転写によって形成された突出部を表面に有するゴム弾性層の表面に、粗さ形成用粒子を含む塗膜形成材料を塗工した後、乾燥、加熱して塗膜を形成することにより、塗膜表面に粗さを付与した現像ロールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−32692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の現像ロールは以下の点で改善の余地がある。
すなわち、塗膜形成材料中に粗さ形成用粒子を添加して塗膜を形成する場合、ゴム弾性層表面の突出部を覆う塗膜に、添加した粗さ形成用粒子が保持されてしまうことを回避するのは困難である。突出部を覆う塗膜には、搬送するトナーを層状に形成したり、トナーを摩擦帯電したりするためのブレード部材が接地する。そのため、突出部を覆う塗膜に粗さ形成用粒子が存在すると、使用時に粗さ形成用粒子が削られたり、塗膜から脱落したりする。このような脱落等が生じると、そこを起点にトナーが固着しやすくなり、トナーフィルミングが発生しやすくなる。また、粒子の脱落跡から塗膜が剥がれやすくなる。それ故、これまで以上に耐久性を向上させようとすることは難易度が高い。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、従来に比べ、耐久性を向上させることが可能な現像ロールを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、型転写によって形成された多数の突出部を外表面に有するゴム弾性層と、該ゴム弾性層の外表面に沿って形成された塗膜とを有する現像ロールであって、
上記塗膜は、該塗膜を構成するマトリックスポリマーと、上記塗膜表面を粗面化するための粗さ形成用粒子と、シリコーングラフトアクリル樹脂およびフッ素含有基グラフトアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上とを含有しており、
上記突出部の高さHと上記粗さ形成用粒子の平均粒子径dの比d/Hが0.50以下であることを特徴とする現像ロールにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
上記現像ロールは、多数の突出部を有するゴム弾性層の外表面に沿って形成された塗膜が、塗膜を構成するマトリックスポリマーと、塗膜表面を粗面化するための粗さ形成用粒子と、シリコーングラフトアクリル樹脂およびフッ素含有基グラフトアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上とを含有する構成とされている。さらに、突出部の高さHと粗さ形成用粒子の平均粒子径dの比d/Hが0.50以下とされている。そのため、上記塗膜をゴム弾性層の表面に形成する際に、塗膜形成材料中に含有させるシリコーングラフトアクリル樹脂およびフッ素含有基グラフトアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上の存在によって、突出部を覆う塗膜に粗さ形成用粒子が保持されずに突出部周囲の平坦部(隣り合う突出部間の凹部)に流された状態で塗膜が形成される。それ故、塗膜中に含まれる粗さ形成用粒子のほとんどが、ゴム弾性層の突出部周囲の平坦部を覆う塗膜に保持された状態となる。
【0010】
上記現像ロールによれば、突出部を覆う塗膜に保持された粗さ形成用粒子が使用時に削れたり、脱落したりすることがなく、塗膜剥がれやトナーフィルミングを長期にわたって抑制することができる。
【0011】
したがって、上記現像ロールよれば、従来に比べ、耐久性を向上させることが可能な現像ロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例に係る現像ロールを模式的に示す説明図である。
図2図1のA−A断面を模式的に示す説明図である。
図3図2のB位置における断面を拡大して模式的に示す説明図である。
図4】試料1の現像ロールにおけるロール表面の観察写真である。
図5】試料18の現像ロールにおけるロール表面の観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記現像ロールは、ゴム弾性層と、ゴム弾性層の外表面に沿って形成された塗膜とを有している。ゴム弾性層は、例えば、軸体の外周面に沿って形成することができる。軸体としては、例えば、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属(合金含む)からなる中実体(芯金)や中空体、導電性プラスチックからなる中実体や中空体、導電性または非導電性のプラスチックからなる中実体や中空体に金属めっきを施したものなどを例示することができる。
【0014】
上記現像ロールにおいて、ゴム弾性層は、1層から構成されていてもよいし、2層以上が積層されて構成されていてもよい。ゴム弾性層を1層から構成する場合、現像ロールのベースとなる基層として機能させることができる。また、ゴム弾性層を2層以上から構成する場合には、基層、中間層(例えば、体積抵抗率を調整するための抵抗調整層等)等を順に積層し、要求されるロール特性に応じて、各層に必要な機能を付与することができる。
【0015】
ゴム弾性層は、型転写によって形成された多数の突出部を外表面に有している。突出部は、ゴム弾性層の外表面から外方に突出しており、ゴム弾性層の表層と同一のゴム材料により一体に形成されている。また、隣接する突出部の間は平坦部とされている。
【0016】
突出部の形状は、特に限定されるものではない。突出部の形状としては、例えば、(1)突出部の高さよりも突出部の基端部における径の方が大きい形状、(2)突出部の表面が略球面の一部を含む形状などを例示することができる。なお、上記「略球面」とは、完全な球面だけでなく、実質的に球面とみなせる曲面状も含む意味である。また、上記「一部を含む」とは、突出部の表面が略球面の部分を切り取った面を少なくとも有していることを意味する。なお、ゴム弾性層の突出部等は、ロール表面やロール周方向断面の観察等から確認することができる。
【0017】
突出部の形状が上記(1)を満たす場合としては、具体的には、例えば、突出部の高さ方向に沿って切断したときの断面が略台形状(但し、上底<下底を満たす)などの形状を例示することができる。この場合には、ゴム弾性層表面の平坦部にトナーが固着し難いので、安定したトナー搬送、均一なトナー搬送に寄与しやすくなる。このような形状を有する突出部は、例えば、めっき反応により生じる気泡の表面の一部を写し取った穴部を有するめっき層を備えた型の転写などによって好適に形成することができる。
【0018】
また、突出部の形状が上記(2)を満たす場合としては、具体的には、例えば、略半球状などの形状を例示することができる。この場合には、ゴム弾性層表面の突出部を覆う塗膜とブレード部材との接触を均一にしやすくなる。そのため、ロール長手方向にわたって、トナーストレスの低減効果を均一にしやすくなる。このような突出部は、例えば、略球状粒子の表面の一部を写し取った穴部を有するめっき層を備えた型の転写などによって好適に形成することができる。
【0019】
ゴム弾性層を構成するゴム材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、ヒドリンゴム、ニトリルゴムなどを例示することができる。ゴム弾性層の耐ヘタリ性に優れるなどの観点から、シリコーンゴム、ウレタンゴムを好適に用いることができる。シリコーンゴムは、温度変化や湿度変化などの環境変化に対して体積変化を生じ難く、環境変化によるゴム弾性層の外径変動が小さい利点も有するため、特に好適である。
【0020】
上記ゴム材料には、ゴム弾性層へ導電性を付与するため、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ等の電子導電剤、第四級アンモニウム塩等のイオン導電剤、イオン液体などの導電剤を1または2以上含有させることができる。なお、その他にも、必要に応じて、充填剤、増量剤、補強材、加工助剤、硬化剤、加硫促進剤、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料、シリコーンオイル、助剤、界面活性剤などの各種添加剤を1または2以上適宜添加することもできる。
【0021】
ゴム弾性層の厚みは、例えば、0.1〜10mmの範囲内、好ましくは、1〜5mmの範囲内とすることができる。
【0022】
上記現像ロールにおいて、塗膜は、塗膜を構成するマトリックスポリマーと、上記塗膜表面を粗面化するための粗さ形成用粒子と、シリコーングラフトアクリル樹脂およびフッ素含有基グラフトアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上とを含有している。
【0023】
マトリックスポリマーとしては、例えば、ウレタン樹脂、ウレタンシリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂、フッ素ゴムとフッ素樹脂の混合物、シリコーン樹脂、ニトリルゴム、ウレタンゴムなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。ヘタリ難さ(硬さ)と硬化収縮の低減とを両立しやすい、耐摩耗性などの観点から、マトリックスポリマーは、好ましくは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーと熱硬化性ポリウレタンとの混合ポリマーであるとよい。
【0024】
粗さ形成用粒子としては、無機粒子、樹脂粒子などを用いることができる。好ましくは、塗膜の硬度上昇が少なく、トナーにストレスを与え難い、塗膜形成後にマトリックスポリマーから脱落し難いなどの観点から、粗さ形成用粒子としては、樹脂粒子を好適に用いることができる。粗さ形成用粒子としては、例えば、ウレタン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0025】
シリコーングラフトアクリル樹脂および/またはフッ素含有基グラフトアクリル樹脂は、塗膜形成時に、ゴム弾性層の突出部に塗工された粗さ形成粒子をゴム弾性層の平坦部側へ流れやすくするのに寄与する。シリコーングラフトアクリル樹脂は、アクリル樹脂の主鎖にシリコーン側鎖がグラフトされたポリマーである。フッ素含有基グラフトアクリル樹脂は、アクリル樹脂の主鎖にフッ素含有基の側鎖がグラフトされたポリマーである。シリコーン(ポリシロキサン)側鎖としては、例えば、ジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、ジプロピルシロキサン等のアルキル置換シロキサンなどを例示することができる。フッ素含有基としては、例えば、パーフルオロアルキルエチレンオキシド基、パーフルオロアルキル基、フッ素基(−F)などを例示することができる。これらシリコーン側鎖、フッ素含有基は、1種または2種以上グラフトされていてもよい。
【0026】
シリコーングラフトアクリル樹脂、フッ素含有基グラフトアクリル樹脂は、いずれも他の官能基を1種または2種以上有していてもよい。例えば、シリコーングラフトアクリル樹脂、フッ素含有基グラフトアクリル樹脂は、OH基およびCOOH基から選択される少なくとも1種以上の官能基を有することができる。これら官能基を有する場合には、マトリックスポリマーとの架橋を形成するのに有利であり、摩耗よる成分減少等を抑制することができる。
【0027】
また、シリコーングラフトアクリル樹脂、フッ素含有基グラフトアクリル樹脂におけるアクリル骨格の重量平均分子量Mwは、100000以下であるとよい。
【0028】
この場合には、塗膜形成時に、液状の塗膜形成材料の粘度が過度に高くなるのを抑制することができる。そのため、ゴム弾性層の平坦部に粗さ形成用粒子が流れやすく、用いた粗さ形成用粒子のほぼ全てを、平坦部を覆う塗膜に保持させることができる。なお、重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)により測定することができる。
【0029】
塗膜は、導電性を付与するため、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、c−TiO 、c−ZnO、c−SnO( c−は導電性を意味する。)等の電子導電剤や、第四級アンモニウム塩、ホウ酸塩等のイオン導電剤や、イオン液体などといった導電剤を1または2以上含有することができる。また、上述した以外にも必要に応じて、軟化剤(オイル)、加硫剤、加硫促進剤、滑剤、助剤などを1または2以上含有することができる。
【0030】
上記塗膜は、上記マトリックスポリマーを形成するための成分、粗さ形成用粒子、シリコーングラフトアクリル樹脂およびフッ素含有基グラフトアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上、必要に応じて添加される導電剤等の添加剤を含む液状の塗膜形成材料を、例えば、ロールコート法、ディッピング法、スプレー法等の各種の塗工法を用いてゴム弾性層表面にコーティングし、用いた材料の種類等を考慮し、必要に応じて乾燥、加熱すること等によって硬化物として形成することができる。
【0031】
上記マトリックスポリマーとして、熱可塑性ポリウレタンエラストマーと熱硬化性ポリウレタンとの混合ポリマーを選択する場合、上記マトリックスポリマーを形成するための成分は、例えば、(a)熱可塑性ポリウレタンエラストマー、(b)ポリオール、(c)硬化剤とすることができる。この際、(a)熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、例えば、カプロラクタム型、アジペート型、エーテル型などを例示することができる。耐摩耗性、弾性回復率の確保等の観点から、好ましくは、カプロラクタム型であるとよい。また、(b)ポリオールとしては、例えば、エーテル系、カプロラクトン系、エステル系などを例示することができる。低抵抗、画像の残像特性が良好になる等の観点から、好ましくは、エーテル系であるとよい。なお、エーテル系ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の多価アルコール1種または2種以上にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等を1種または2種以上を付加重合させて得られるポリエーテルポリオール、テトラヒドロフランを開環重合させて得られるポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)などを例示することができる。(c)硬化剤としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等のポリイソシアネートを例示することができる。なお、(a)熱可塑性ポリウレタンエラストマー、(b)ポリオール、(c)硬化剤は、それぞれの質量比率をa、b、cとした場合、例えば、a+b+c=100、40≦a≦75、5≦b≦20、20≦cの条件を満たすように配合することができる。マトリックスポリマーを形成するための成分を上記配合とした場合には、ゴム弾性層の突出部を覆う塗膜の膜厚が過度に薄くなり過ぎず、耐久性の向上に寄与することができる。
【0032】
上記現像ロールにおいて、突出部の高さHと粗さ形成用粒子の平均粒子径dの比d/Hは0.50以下とされる。d/Hが0.50を上回ると、粗さ形成用粒子の脱落や削れ、塗膜の剥がれ、トナーフィルミングが発生しやすくなり、耐久性が低下する。また、長期使用時に、形成される画像に濃度低下等の不具合も発生しやすくなる。d/Hの上限値は、好ましくは、0.45以下、より好ましくは、0.4以下であるとよい。なお、d/Hの下限値は、特に限定されるものではないが、突出部周囲の平坦部を微細に粗化することができ、ロール表面とトナーとの接触面積を増加させることができる等の観点から、好ましくは、0.01以上、より好ましくは、0.05以上、さらに好ましくは、0.1以上であるとよい。
【0033】
なお、ゴム弾性層の突出部の高さHは、レーザー顕微鏡((株)キーエンス製、「VK−9510」)等により用いて測定することができる。粗さ形成用粒子の平均粒子径dは、レーザー回折・散乱式粒子径・粒度分布測定装置(日機装(株)製、「マイクロトラックHT3000」)等により測定することができる。詳しくは、実施例にて詳述する。
【0034】
上記現像ロールは、マトリックスポリマー100質量部に対し、シリコーングラフトアクリル樹脂およびフッ素含有基グラフトアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上を0.5〜20質量部の範囲内で含有することが好ましい(請求項2)。
【0035】
この場合には、長期使用時における、粗さ形成用粒子の脱落や削れ、塗膜剥がれ、トナーフィルミングの抑制バランスに優れ、耐久性の向上に寄与しやすい。シリコーングラフトアクリル樹脂およびフッ素含有基グラフトアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上の含有量の下限値は、長期使用時にトナーフィルミングを抑制しやすくなる等の観点から、マトリックスポリマー100質量部に対し、より好ましくは、1質量部、さらにより好ましくは、3質量部であるとよい。一方、シリコーングラフトアクリル樹脂およびフッ素含有基グラフトアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上の含有量の上限値は、長期使用時に、粗さ形成用粒子の脱落や削れ、塗膜剥がれを効果的に抑制しやすくなる等の観点から、マトリックスポリマー100質量部に対し、より好ましくは、19質量部、さらに好ましくは、17質量部、さらにより好ましくは、15質量部であるとよい。
【0036】
また、上記現像ロールは、マトリックスポリマー100質量部に対し、粗さ形成用粒子を1〜20質量部の範囲内で含有することが好ましい(請求項3)。
【0037】
この場合には、長期使用時における、粗さ形成用粒子の脱落や削れ、塗膜剥がれ、トナーフィルミングの抑制バランスに優れ、耐久性の向上に寄与しやすい。粗さ形成用粒子の含有量の下限値は、長期使用時にトナーフィルミングを抑制しやすくなる等の観点から、マトリックスポリマー100質量部に対し、より好ましくは、2質量部、さらに好ましくは、3質量部であるとよい。一方、粗さ形成用粒子の含有量の上限値は、長期使用時に、粗さ形成用粒子の脱落や削れ、塗膜剥がれを効果的に抑制しやすくなる等の観点から、マトリックスポリマー100質量部に対し、より好ましくは、18質量部、さらに好ましくは、14質量部、さらにより好ましくは、12質量部であるとよい。
【0038】
また、上記現像ロールは、粗さ形成用粒子の平均粒子径dが、0.1〜15μmの範囲内にあることが好ましい。
【0039】
この場合には、ゴム弾性部の平坦部を覆う塗膜表面を適度な範囲で粗面化することができる。また、塗膜形成時に突出部上に粗さ形成用粒子が塗工された際、突出部上から平坦部側へ移行しやすくなる。粗さ形成用粒子の平均粒子径dの下限値は、ゴム弾性部の平坦部を覆う塗膜表面の粗面化の観点から、より好ましくは、0.5μm、さらに好ましくは、2μmであるとよい。粗さ形成用粒子の平均粒子径dの上限値は、粗さ形成用粒子の削れ抑制などの観点から、より好ましくは、12μm、さらに好ましくは、10μmであるとよい。
【0040】
上記塗膜の膜厚は、(1)ゴム弾性層の突出部が塗膜に埋没しないこと、(2)突出部を覆う塗膜が過度に薄くならないこと、(3)突出部が露出しないこと、などを考慮して、適切な範囲に設定することができる。突出部周囲の平坦部を覆う塗膜の膜厚は、好ましくは、1〜6μm、より好ましくは、1.2〜3.5μmの範囲内にあるとよい。
【0041】
上記現像ロールは、例えば、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリ、複合機、POD(Print On Demand)装置等の画像形成装置に組み込んで用いることができる。
【実施例】
【0042】
実施例に係る現像ロールについて、図面を用いて具体的に説明する。
実施例に係る現像ロールの概略構成を図1図3を用いて説明する。図1図3に示す現像ロール1は、電子写真方式を採用する画像形成装置に組み込んで現像に使用されるものである。現像ロール1は、多数の突出部3aを外表面に有するゴム弾性層3と、ゴム弾性層3の外表面に沿って形成された塗膜4とを有している。ゴム弾性層3は、軸体2の外周面に沿って形成されている。但し、軸体2の両端部は、ゴム弾性層3の両端面から突出した状態とされている。
【0043】
ゴム弾性層3の突出部3aは、型転写によって形成されたものである。具体的には、突出部3aは、略円柱状の空間を有し、この空間の内周面に、内方に窪んだ多数の穴部を表面に有するめっき層が形成されたロール成形型を用い、このロール成形型のめっき表面がゴム弾性層の表面に転写されることにより、上記穴部に対応して形成されたものである。
【0044】
塗膜4は、塗膜4を構成するマトリックスポリマーと、塗膜4表面を粗面化するための粗さ形成用粒子4aと、シリコーングラフトアクリル樹脂およびフッ素含有基グラフトアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上とを含有している。塗膜4を構成するマトリックスポリマーは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーと熱硬化性ポリウレタンとの混合ポリマーであり、粗さ形成用粒子4aは、ウレタン樹脂粒子である。また、ゴム弾性部3の突出部3aの高さHと粗さ形成用粒子4aの平均粒子径dの比d/Hは、0.50以下とされている。上記現像ロール1において、塗膜4中に含まれる粗さ形成用粒子4aのほとんど(ほぼ全て)は、ゴム弾性層3の突出部3a周囲の平坦部3bを覆う塗膜4に保持されている。つまり、粗さ形成用粒子4aは、ゴム弾性層3の突出部3aを覆う塗膜4にはほとんど保持されていない。したがって、粗さ形成用粒子4aに起因する粗さは、突出部3a周囲の平坦部3bを覆う塗膜4の表面に付与されている。
【0045】
次に、各種条件の異なる現像ロールの試料を作製し、評価を行った。以下にその実験例について説明する。なお、作製した試料の現像ロールは、電子写真方式を採用する画像形成装置としてのプリンターに組み込まれる現像ロールである。
【0046】
(実験例)
<軸体の準備>
外径6mm、長さ270mmの鉄製で、表面にNiめっきが施されている中実円柱状の軸体を準備した。
【0047】
<ゴム弾性層形成材料の調製>
導電性シリコーンゴム(信越化学工業(株)製、「X−34−264A/B」、混合質量比30/70)をスタティックミキサにて混合することにより、ゴム弾性層形成材料を調製した。
【0048】
<塗膜形成材料の調製>
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(BASFジャパン(株)製、「エラストランET880」)と、ポリオール(三洋化成(株)製、「PPG2000」)と、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、「ミリオネートMT」)、カーボンブラック(電子導電剤)(電気化学工業(株)製、「デンカブラックHS−100」)と、第四級アンモニウム塩(イオン導電剤)と、ウレタン樹脂粒子(粗さ形成用粒子)(大日本インキ化学工業(株)製「バーノックCFB1000」)と、シリコーングラフトアクリル樹脂(東亞合成(株)製「サイマックUS−350」、COOH基を含有、粘度290mPa・s、アクリル骨格の重量平均分子量Mw>100000)またはフッ素含有基グラフトアクリル樹脂(DIC(株)製「メガファックF444」、フッ素含有基はパーフルオロアルキルエチレンオキシド基、OH基を含有、粘度200mPa・s、アクリル骨格の重量平均分子量Mw=90000)とを表1および表2に示す配合割合にて配合し、これらをボールミルにより混練した後、MEK400質量部を加えて混合、撹拌することにより、各塗膜形成材料を調製した。
【0049】
<ロール成形型の準備>
(基本めっき浴の調製)
硫酸ニッケル6水和物を20g/L、次亜リン酸ナトリウム1水和物(還元剤)を25g/L、乳酸(錯化剤)を27g/L、プロピオン酸(錯化剤)2.5g/Lを配合して、pH4.8の基本めっき浴を調製した。
【0050】
カチオン性界面活性剤(ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド)0.1g/Lを用いて平均粒子径15μmのアクリル粒子(根上工業(株)製、「アートパール GR−400」)12g/Lを水中に分散させた分散液を調製した。そして、この分散液を上記基本めっき浴に添加し、めっき浴(1)を調製した。平均粒子径20μmのアクリル粒子(根上工業(株)製、「アートパール GR−300」)12g/Lを水中に分散させた分散液を用いた以外は同様にして、めっき浴(2)を調製した。平均粒子径30μmのアクリル粒子(根上工業(株)製、「アートパール GR−200」)12g/Lを水中に分散させた分散液を用いた以外は同様にして、めっき浴(3)を調製した。
【0051】
内径12mmの略円柱状の中空空間が形成されたSACM645(アルミニウムクロムモリブデン鋼)製の型を準備した。そして、準備した型の中空空間の内周面に、下地無電解ニッケルめっき層(厚み10μm)を形成した。次いで、この下地無電解ニッケルめっき層が形成された中空空間の内周面に、上記調製しためっき浴(1)〜(3)を用いて、めっき液温度90℃、めっき時間120分の条件で無電解共析めっきを行い、各無電解共析めっき層(厚み22μm)を形成した。このようにして、中空空間の内周面上に、アクリル樹脂粒子を含有する無電解共析めっき層を形成した。次いで、無電解共析めっき層に取り込まれたアクリル樹脂粒子をアセトンにより選択的に溶解除去した。これにより、内方に窪んだ穴部が表面に多数形成されためっき層を有するロール成形型(1)〜(3)を準備した。
【0052】
なお、デジタルマイクロスコープ((株)ナカデン・インターナショナル製「MX−1200E」)を用いて、ロール成形型(1)〜(3)におけるめっき層の表面を観察したところ、めっき層の表面には、内方に窪んだ穴部が多数形成されていた。上記穴部は、溶解除去したアクリル樹脂粒子の主に下方表面がめっき層の表面に写し取られた跡であり、略半球状の窪みから形成されていた。つまり、穴部の表面は、アクリル樹脂粒子の表面形状に対応した略球面の一部を有していた。
【0053】
<現像ロールの作製>
ロール成形型(1)〜(3)の中空空間に軸体を同軸にセットした。上記ロール成形型の内周面と軸体との間に形成された成形空間に各ゴム弾性層形成材料を注入するとともに型に蓋をし、これを150℃で30分間加熱した後、冷却、脱型した。これにより、軸体の外周面に沿ってロール状の各ゴム弾性層(厚み3mm)を形成した。
【0054】
各ゴム弾性層の軸方向中央部における表面を上記デジタルマイクロスコープにより拡大観察したところ、ロール成形型のめっき層表面の粗面状態がゴム弾性層の外表面に転写されていることが確認された。つまり、ゴム弾性層の外表面には、めっき層の穴部に対応して形成された外方に突出する多数の突出部が形成されていた。
【0055】
次いで、各ゴム弾性層の表面に、ロールコート法により各塗膜形成材料を塗工した後、乾燥させ、170℃で60分間加熱して硬化させた。これにより、ゴム弾性層の外表面に沿って各塗膜を形成した。これにより、試料1〜19の現像ロールを作製した。
【0056】
<突出部の高さH、粗さ形成用粒子の平均粒子径d、塗膜の膜厚>
各現像ロールの作製時に、レーザー顕微鏡((株)キーエンス製、「VK−9510」)を用いて、各ゴム弾性層表面の両端からそれぞれ軸方向内側5mmの位置、および軸方向中央の位置の3箇所について、ゴム弾性層表面を1000倍で撮影した。モードのプロファイル計測にて、任意の突出部の頂点を通過する計測ラインを引き、計測した高さプロファイルにおいて、ノイズを除去するために高さスムージングを行い、さらにグラフの傾きを補正した。そして、突出部の頂点と裾部分とを選択し、頂点と裾部分との高度差を求めた。上記測定をロール周方向に等間隔で3箇所実施し、得られた計9点の高度差の平均値を突出部の高さHとした。
また、上記塗膜形成材料の調製時に用いた各粗さ形成用粒子について、レーザー回折・散乱式粒子径・粒度分布測定装置(日機装(株)製、「マイクロトラックHT3000」)を用い、平均粒子径dを測定した。
また、得られた各現像ロールについて、上記レーザー顕微鏡を用いて、ロール周方向の断面を観察し、ゴム弾性層の突出部を覆う塗膜の膜厚t1、ゴム弾性層の突出部周囲の平坦部を覆う塗膜の膜厚t2を測定した。
【0057】
<ロールの表面観察>
上記レーザー顕微鏡を用い、各現像ロールのロール表面を観察した。代表例として、図4に、試料1の現像ロールにおけるロール表面の観察写真を、図5に、試料18の現像ロールにおけるロール表面の観察写真をそれぞれ示す。なお、いずれも倍率は1000倍である。
【0058】
図5に示されるように、塗膜中にシリコーングラフトアクリル樹脂および/またはフッ素含有基グラフトアクリル樹脂を含有していない試料18の現像ロールは、ゴム弾性層の突出部周囲の平坦部を覆う塗膜のみならず、ゴム弾性層の突出部を覆う塗膜にも多数の粗さ形成粒子が保持されている。つまり、塗膜の全面に粗さ形成用粒子が分散して保持されている。これに対し、塗膜中にシリコーングラフトアクリル樹脂および/またはフッ素含有基グラフトアクリル樹脂を含有している試料1の現像ロールは、ゴム弾性層の突出部を覆う塗膜には、粗さ形成粒子がほとんど保持されておらず、配合した粗さ形成粒子のほとんどは、ゴム弾性層の突出部周囲の平坦部を覆う塗膜に保持されていることが確認された。
【0059】
<耐久試験>
市販のカラーレーザープリンター(キヤノン(株)、「LBP−2510」)に作製した各現像ロールを組み込み、32.5℃×85%RH環境下にて20,000枚(A4サイズ)の画像出し(画像種類:2%トナー印字パターン)を行った。その後、上記レーザー顕微鏡を用いて、ロール表面を観察した。
粗さ形成用粒子の脱落や削れがほとんど見られなかったもの「A」、粗さ形成用粒子の脱落や削れが僅かに見られたが、許容範囲内であるものを「B」、粗さ形成用粒子の脱落や削れが随所に見られたものを「C」とした。
また、ゴム弾性層の突出部を覆う塗膜の剥がれがほとんど見られなかったものを「A」、ゴム弾性層の突出部を覆う塗膜の剥がれが僅かに見られたが、許容範囲内であるものを「B」、ゴム弾性層の突出部を覆う塗膜が随所で剥がれているものを「C」とした。
また、塗膜表面にトナーフィルミングがほとんど見られなかったものを「A」、塗膜表面にトナーフィルミングが見られたが、許容範囲内であるものを「B」、塗膜表面にトナーフィルミングが見られたものを「C」とした。
そして、上記評価項目において、「C」を一つも含まず、全ての項目において「A」であった場合を、耐久性に優れると判断した。「C」を一つも含まないが、「B」を含む場合を、耐久性が良好であると判断した。「C」を一つでも含む場合を耐久性に劣ると判断した。
【0060】
表1、表2に作製した現像ロールの詳細な配合、特徴、評価結果をまとめて示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1および表2によれば以下のことが分かる。すなわち、試料18の現像ロールは、塗膜形成材料中にシリコーングラフトアクリル樹脂および/またはフッ素含有基グラフトアクリル樹脂を添加していないので、塗膜中にシリコーングラフトアクリル樹脂および/またはフッ素含有基グラフトアクリル樹脂を含有していない。そのため、突出部を覆う塗膜に粗さ形成用粒子が多数保持されており、この粗さ形成用粒子の脱落や削れが発生した。また、粗さ形成用粒子の脱落や削れの跡を起点にした塗膜剥がれやトナーフィルミングが発生した。さらに、上記耐久試験後にベタ画像を印刷したところ、濃度低下の不具合も発生した。このように試料18の現像ロールは、耐久性に劣っていた。
【0064】
試料19の現像ロールは、突出部の高さHと粗さ形成用粒子の平均粒子径dの比d/Hが0.50を上回っている。そのため、粗さ形成用粒子の脱落や削れ、塗膜の剥がれ、トナーフィルミングが発生した。さらに、上記耐久試験後にベタ画像を印刷したところ、濃度低下の不具合も発生した。このように試料19の現像ロールは、耐久性に劣っていた。
【0065】
これらに対し、試料1〜17の現像ロールは、いずれも画像形成上問題となる粗さ形成用粒子の脱落や削れ、塗膜の剥がれやトナーフィルミングは見られず、耐久性を向上させることが可能なことが確認された。特に、従来、同様の耐久試験において10,000枚の画像出しの結果により耐久性があると判断された現像ロールであっても、その倍の20,000枚の画像出しというより厳しい条件にて耐久試験を行うと耐久性に劣る結果となってしまうところ、上述した試料1〜17の現像ロールによれば、ほぼ倍の耐久性が得られたことは驚くべきことである。
【0066】
また、試料1〜17の現像ロールを比較すると以下のこともわかる。すなわち、試料4〜試料8の現像ロールによれば、塗膜を構成するマトリックスポリマー100質量部に対し、粗さ形成用粒子の含有量が1質量部未満になると、トナーフィルミングが生じやすくなる傾向が見られる。これは、ゴム弾性層の突出部周囲の平坦部を覆う塗膜表面に、粗さ形成用粒子に起因する粗さが十分に付与されず、塗膜表面にトナーが点接触され難くなってトナーがストレスを受けやすくなり、トナーが潰れやすくなるためであると考えられる。一方、上記粗さ形成用粒子の含有量が20質量部超になると、粗さ形成用粒子の脱落や削れ、塗膜剥がれが生じやすくなる傾向が見られる。これは、ゴム弾性層の突出部周囲の平坦部を覆う塗膜に粗さ形成用粒子が保持され難くなる、あるいは、粗さ形成用粒子の保持力が低下しやすくなるためであると考えられる。
【0067】
試料9〜試料13の現像ロールによれば、塗膜を構成するマトリックスポリマー100質量部に対し、シリコーングラフトアクリル樹脂および/またはフッ素含有基グラフトアクリル樹脂の含有量が0.5質量部未満になると、粗さ形成用粒子の脱落や削れ、塗膜剥がれが生じやすくなる傾向が見られる。これは、塗膜形成時に、突出部周囲の平坦部側へ粗さ形成用粒子が流れ難くなり、突出部上に残りやすくなるためであると考えられる。一方、上記シリコーングラフトアクリル樹脂および/またはフッ素含有基グラフトアクリル樹脂の含有量が20質量部超になると、塗膜剥がれが生じやすくなる傾向が見られる。これは、塗膜強度が低下するためであると考えられる。
【0068】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 現像ロール
2 軸体
3 ゴム弾性層
3a 突出部
3b 平坦部
4 塗膜
4a 粗さ形成用粒子
図1
図2
図3
図4
図5