【文献】
Kitaoka, M.,母乳によるビフィズス菌増殖の分子機構,Japanese Journal of Lactic Acid Bacteriase,日本,2011年,22(1),15-24
【文献】
Xiao, Jin-zhong ,Distribution of In Vitro Fermentation Ability of Lacto-N-Biose I, a Major Building Block of Human Milk Oligosaccharides, in Bifidobacterial Strains,Applied AND Environmental Microbiology,米国,2009年10月23日,Vol.76, No.1,54-59
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酵素反応によりα−グルコース−1−リン酸を生成し得る糖質、N−アセチルグルコサミン、リン酸、及び、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトースに、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1304(NITE ABP-1252)株の菌体又は菌体処理物、及び糖質からα−グルコース−1−リン酸を生成させる酵素を作用させて、ラクト−N−ビオースIを産生させる、ラクト−N−ビオースIの製造方法。
前記スクロースホスホリラーゼが、スクロースを炭素源として培養したときにスクロースホスホリラーゼを産生するビフィドバクテリウム属細菌を、スクロースを炭素源として培養した菌体又は菌体処理物である、請求項2に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
ラクト−N−ビオースI(Galβ1−3GlcNAc、以下「LNB」と記載すること
がある。)は、母乳に含まれるオリゴ糖の中に存在する構成単位で、これまでビフィズス菌増殖促進作用などの機能性が報告されており、整腸作用や免疫調節作用など、健康の増進と維持に有効な種々の働きが期待されている(非特許文献1、3)。
【0003】
従来、LNBの製造法はいくつか報告されている。たとえば、ラクトースとN−アセチル
グルコサミンとを含有する基質を出発原料として、ブタ睾丸起源のβ−ガラクトシダーゼとバチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)の生産するβ−ガラクトシダーゼとを順次的に反応させる方法(特許文献1)、糖ヌクレオチドと複合糖質前駆物質から複合糖質を生産する能力を有する微生物、動物細胞、または昆虫細胞を利用する方法(特許文献2)、及び、後述の4種又は5種の酵素を用いる方法(特許文献3)の報告がある。しかし、特許文献3以外の方法は、安全性や原料の入手の困難さから非現実的な方法とされている。
【0004】
特許文献3に記載の方法では、N−アセチルグルコサミン又はN−アセチルガラクトサミン、リン酸、ラクト−N−ビオースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.211)及びUDP−グルコース−4−エピメラーゼ(EC 5.1.3.2)の存在下で、(i)糖質原料と、該糖質原料を加リン酸分解しα−グルコース−1−リン酸を生じる酵素との組合せ;並びに(ii)α−グルコース−1−リン酸をUDP−グルコースに変換する酵素及びUDPガラクトースをガラクトース−1−リン酸に変換する酵素とそれらの補因子との組合せ、及び/又はα−グルコース−1−リン酸及びUDP−ガラクトースをそれぞれUDP−グルコース及びα−ガラクトース−1−リン酸に変換する酵素(UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(UDP−Gly生成酵素ともいう))とその補因子との組合せを作用させて、LNBが得られる。この方法に基づいて、蔗糖とN−アセチルグ
ルコサミンを出発原料に、ラボスケールにてキロ単位のLNBの製造が行われたことが報告
されている(非特許文献2)。
【0005】
しかし、特許文献3及び非特許文献2では、LNB合成に必要な上記各種酵素のうち、i
)ラクト−N−ビオースホスホリラーゼ(以下、「GLNBP」と記載することがある。)、ii)スクロースホスホリラーゼ(以下、「SP」と記載することがある。)、iii)UDP−グルコース−4−エピメラーゼ(以下、「GalE」と記載することがある。)、およびiv)UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(以下、「GalT」と記載することがある。)は、ビフィズス菌からそれぞれの遺伝子をクローニングし大腸菌で発現させることによって得られている。このような遺伝子組換え技術を利用して得られる酵素を用いる方法で製造されたLNBは、安全性に関して懸念され、現在のとこ
ろ食品での応用について多くの制限を受けてしまうことは否めない。特に、育児用粉乳などの幅広い製品群にLNBを添加するためには、より安心、安全な方法によってLNBを製造する方法が求められる。
【0006】
ビフィズス菌はLNBを合成するために必要な酵素を持っていることが知られているが、
酵素の活性についての報告は少ない。GalEおよびGalTはほとんどのビフィズス菌がある程
度の活性を持つとされている。一方、SPは、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)等のビフィズス菌を、スクロースを糖源として培養すれば誘導されることが知られている。しかし、GLNBPについては遺伝子レベルにて一部のビフィズス菌しか
持っていないとされており(非特許文献1、3)、中でも、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)JCM1254株、及びビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)標準株(タイプストレイン)ATCC15700
TにはGLNBP活性を有していることが報告されているものの(非特許文献1、3)、具体的な活性の強弱に関するデータは皆無である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ラクト−N−ビオースIを、安全に製造することができる方法、及びそれに用いる微生物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記4種類の酵素の中でも、特にGLNBPの活性が重要であると考え、同酵
素の活性が高いビフィズス菌株を発見するために鋭意研究を行い、従来知られているビフィズス菌より高いGLNBP活性を持つ新規ビフィズス菌株を見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち本発明は、酵素反応によりα−グルコース−1−リン酸を生成し得る糖質、N−アセチルグルコサミン、リン酸、及び、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトースに、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)MCC1304(NITE ABP-1252)株の菌体又は菌体処理物、及び糖質からα−グルコース−1−リン酸を生
成させる酵素を作用させて、ラクト−N−ビオースIを産生させる、ラクト−N−ビオースIの製造方法である。
本発明の方法は、前記糖質がスクロースであり、前記酵素がスクロースホスホリラーゼであることを好ましい態様としている。
また本発明の方法は、前記スクロースホスホリラーゼが、スクロースを炭素源として培養したときにスクロースホスホリラーゼを産生するビフィドバクテリウム属細菌を、スクロースを炭素源として培養した菌体又は菌体処理物であることを好ましい態様としている。
また本発明の方法は、前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)であることを好ましい態様としている。
また本発明は、新規菌株であるビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1304(NITE ABP-1252)株を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法により、遺伝子組換え酵素を使用せずに、より安全にLNBを提供すること
ができる。本発明の方法により得られるLNBは、育児用乳製品等に、従来のオリゴ糖とは
異なるヒトミルクオリゴ糖(human milk oligosaccharide, HMO)の構成成分を直接添加
することが可能になり、育児用乳製品を母乳により近づけることができる。
また、本発明の方法では、LNB合成に必要な各酵素を調製する必要がなく、従来よりも
簡便にLNBを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法は、酵素反応によりα−グルコース−1−リン酸を生成し得る糖質、N−アセチルグルコサミン、リン酸、及び、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトースを原料として、ラクト−N−ビオースI(LNB)を製造する方法である。前記原料に
、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1304(NITE ABP-1252)株の菌体又は菌体処理物、及び糖質からα−グルコース−1−リン酸を生成させる酵素を作用させると、ラクト−N−ビオースIが生成する。
【0014】
前記糖質から、リン酸存在下で前記酵素によって、グルコース−1−リン酸(Glc1-P)が生成する。Glc1-Pから、UDP−グルコースの存在下で、UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT)、及びUDP−グルコース−4−エピメラーゼ(GalE)の作用によって、ガラクトース−1−リン酸(Gal1-P)が生成する。Gal1-Pから、N−アセチルグルコサミンの存在下でラクト−N−ビオースホスホリラーゼ(GLNBP)の作用によって、LNBが生成する。
【0015】
ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス等のビフィズス菌は、GalE及びGalTに加えて、スクロースを糖源として培養した場合に、糖質からα−グルコース−1−リン酸を生成させる酵素として、スクロースホスホリラーゼ(SP)を産生する。一方、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス等については、GLNBPの遺伝子の存在に関する報告があるものの、GLNBPの活性の強弱にについては知られていない。
【0016】
一方、ビフィドバクテリウム・ビフィダムは、上記各酵素のうち、GalE、GalT、及びGLNBPを産生し、特にGLNBP活性が高い菌株が存在することが知られている。しかしながら、ビフィドバクテリウム・ビフィダムはスクロース資化性がなく、SPを産生しない。したがって、GLNBP活性が高いビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体又は菌体処理物と、糖
質からα−グルコース−1−リン酸を生成させる酵素を混合すれば、スクロース等の糖質からLNBを合成させるのに必要な酵素群が揃う。すなわち、下記の反応によりスクロース
からLNBが産生される。
【0018】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1304株は、特にLNBの生成経路のうち重要と考えられるGLNBP活性が、公知のビフィズス菌よりも高く、LNBの製造に好適である。
【0019】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1304株は、2012年2月23日に、独立行政
法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に、NITE ABP-1252の受領番号で、ブダペスト条約に基づき国際寄託さ
れている
【0020】
本発明において菌体処理物とは、GalE、GalT、及びGLNBP、又はSPを含む限り特に制限
されないが、前記各酵素を含む菌体破砕物、菌体抽出物又はその分画物、粗精製画分等が挙げられる。また、菌体、菌体抽出物もしくはその分画物、又は粗精製画分は、アクリルアミド等の樹脂、カラギーナン、アルギン酸等の糖類のような担体に固定化されたものであってもよい。
【0021】
GLNBPを高発現するビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1304株を培養するための培地は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの培養に適した培地であれば特に制限されないが、例えば後述のNB培地、MRS培地等が挙げられる。培地の炭素源としては、グルコース、
スクロース等が挙げられる。
培養温度、培養時間等の発酵条件は、通常のビフィドバクテリウム属細菌の培養と同様の条件を採用することができる。例えば、培養温度は30℃〜40℃が好ましく、34℃〜38℃がより好ましい。培養時間は、通常、5〜24時間、好ましくは10〜16時間が好ま
しい。
培地に接種する菌体は、予め種培養又は前培養しておいてもよい。種培養又は前培養に用いられる培地には、酵母エキス等の生育促進物質や、L−システイン等の還元剤等を添加してもよい。
【0022】
菌体の破砕の方法は、前記酵素の活性が維持される限り特に制限されず、例えば、超音波破砕機、ビーズ式破砕機、又はフレンチプレスを用いる方法等が挙げられる。菌体破砕を水性媒体中で行えば、菌体抽出物が得られる。分画物又は粗精製物は、菌体抽出物から、通常酵素の分画又は生成に用いられる方法、例えば塩析、溶媒沈殿法、各種クロマトグラフィー等によって得ることができる。
【0023】
糖質は、酵素による加リン酸分解によりα−グルコース−1−リン酸が生成するものであれば特に制限されない。糖質と、該糖質からα−グルコース−1−リン酸を生成させる酵素(ホスホリラーゼ)の組合わせとしては、例えば、スクロースとスクロースホスホリラーゼ(SP)、デンプンとスターチホスホリラーゼ又はグリコーゲンホスホリラーゼ、デキストリンとグリコーゲンホスホリラーゼ等の組合わせが上げられる。
【0024】
上記のようなホスホリラーゼは、単離又は精製された酵素でもよく、同酵素を産生する微生物の菌体又は菌体処理物であってもよい。例えば、SPを産生するビフィズス菌としては、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス等が挙げられる。ビフィドバクテリウム・ロンガムとしては、ATCC BAA-999株やATCC 15707などが、ビフィドバクテリウム・ブレーベとしてはATCC 15700などが、ビフィドバクテリウム・インファンティスとしてはATCC 15697などが挙げられる。これらの菌株は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所
12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, United States of America)か
ら購入することができる。
【0025】
上記のようなホスホリラーゼを産生するビフィドバクテリウム属細菌を、スクロースを炭素源として含む培地で培養すれば、SPの産生が誘導される。培地は、スクロースを炭素源として含む限り特に制限されず、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1304株につい
て記載したのと同様の培地が挙げられる。
【0026】
糖質、N−アセチルグルコサミン、リン酸、及び、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトースに、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1304(NITE ABP-1252)株の菌体又は菌体処理物、及び糖質からα−グルコース−1−リン酸を生成させる酵素を作用させるには、これらの原料、菌体又は菌体処理物及び酵素を水性媒体中で混合すればよい。
【0027】
水性媒体としては、水、又は緩衝液が挙げられる。例えば、リン酸緩衝液は、それ自体リン酸源であり、好適に用いられる。pHは、通常5.0〜8.0、好ましくは6.5〜7.5である。
【0028】
各原料の好適な濃度は、糖質は好ましくは66mM〜880mM、より好ましくは330mM〜700mM
、N−アセチルグルコサミンは好ましくは60mM〜800mM、より好ましくは300mM〜650mM、
リン酸は好ましくは30mM〜400mM、より好ましくは100mM〜200mM、UDP−グルコース及
び/又はUDP−ガラクトースは、合計で好ましくは0.1mM〜3mM、より好ましくは0.5mM
〜1.5mMである。UDP−グルコース及びUDP−ガラクトースは、いずれか一方でもよ
く、任意の割合の混合物であってもよい。
【0029】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1304(NITE ABP-1252)株の菌体又は菌体処理物は、GLNBPの活性として、好ましくは10mU/ml〜1000mU/ml、より好ましくは100mU/ml〜200mU/mlである。
【0030】
糖質からα−グルコース−1−リン酸を生成させる酵素、又は同酵素を含む菌体もしくは菌体処理物は、ホスホリラーゼ活性として、好ましくは10mU/ml〜1000mU/ml、より好ましくは100mU/ml〜200mU/mlである。
【0031】
反応は、好ましくは20〜40℃、より好ましくは30〜37℃で、好ましくは5〜96時間、よ
り好ましくは24〜72時間行うことが好ましい。反応は、撹拌下でも静置でもよい。固定化した菌体又は菌体処理物を用いる場合は、これらを充填したカラムに原料液を通液してもよい。また、原料に、SP、又はSPを含む菌体又は菌体処理物を作用させた後に、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMCC1304(NITE ABP-1252)株の菌体又は菌体処理物を作用させてもよい。
【0032】
反応液中にLNBが産生されたことの確認は、例えば実施例に記載したHPLCによる方法に
よって、行うことができる。
【0033】
産生されたLNBは、用途によって反応液又はその乾燥物をそのまま使用してもよいし、
精製してもよい。反応液からのLNBの単離、精製は、例えば、ゲル濾過、イオン交換等の
各種クロマトグラィフィー、限外濾過、結晶化、塩析、溶媒沈殿等の方法によって行うことができる。
【0034】
上記のようにして製造されたLNBは、飲食品又は医薬に配合することができる。これら
の飲食品及び医薬は、例えばビフィズス菌増殖作用を有する。
医薬の製剤形態は特に限定されず、治療目的に応じて適宜選択でき、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤、点鼻剤等を例示できる。製剤化にあたっては製剤担体として通常の薬剤に汎用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、注射剤用溶剤等の添加剤を使用できる。
【0035】
また、飲食品としては、LNBを含有させること以外は、通常飲食品に用いられる原料を
用いて通常の方法によって製造することができる。
上記のような食品としては、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、
流動食等のほか、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類; 農産缶詰め、果実缶詰め、ジ
ャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品; 水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等
の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、ベビーフード、ふりかけ、お茶潰けのり等のその他の市販食品等;育児用調製粉乳;経腸栄養食;機能性食品(特定保健用食品、栄養機能食品)等が挙げられる。
【0036】
さらに、LNBを飼料中に含有させてもよい。飼料の形態としては特に制限されず、例え
ば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、マイロ等の穀類;大豆油粕、ナタネ油粕、ヤシ油粕、アマニ油粕等の植物性油粕類;フスマ、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;魚粉、脱脂粉乳、ホエイ、イエローグリース、タロー等の動物性飼料類;トルラ酵母、ビール酵母等の酵母類;第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;単体アミノ酸;糖類等を配合することにより製造できる。飼料の形態としては、例えば、ペットフード、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1〕新規ビフィズス菌の分離および粗酵素液の調製
日本人乳児の糞便サンプルから、ビフィズス菌を分離した。分離されたビフィズス菌を予備培養し、培養液を、グルコースを糖源とするNB培地(Nutrition Broth)に3%接種し、嫌気条件下37℃にて15時間培養した。培養液を遠心集菌し、得られた菌体を20mMのMOPS緩衝液にて懸濁し、再度遠心し集菌した。得られた洗浄菌体を20mMのMOPS緩衝液にてOD600が5程度になるように懸濁し、マルチビーズショッカー(YASUI KIKAI社製)を用い、4
℃下にて破砕した。破砕液を遠心分離し、上清を粗酵素液とした。比較対照として、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの標準株(タイプストレイン)ATCC29521
T株、及び、従来GLNBP活性が高い株として知られているビフィドバクテリウム・ビフィダムJCM1254株(Appl. Environ. Microbiol., 76(1):54-59, 201)を用いて上記と同様にして粗酵素液を調
製した。
ATCC29521
T株はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所 12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, United States of America)から、JCM1254株はRIKEN BRC(独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室、住所 〒351-0198 埼玉県和光市広沢2−1)から入手することができる。
【0039】
〔NB培地組成〕
グルコース 2.0%
Yeast Extract(BD社) 0.5%
Nutrient Broth(OXOID社) 1.6%
リン酸水素二カリウム 0.3%
Tween 80 0.1%
アスコルビン酸ナトリウム 1.0%
L-システイン-HCl 0.05%
【0040】
上記のようにして得られた粗酵素液のGLNBP活性を、以下のようにして測定した。
96 穴の マイクロプレートのウェルに、下記組成のGLNBP活性測定試薬190μlを加え、
さらに各粗酵素液10μlを混合し、30℃にて反応させ、マイクロプレートリーダーを用い
て400nmでの吸光度(ΔOD)の経時変化を測定し、下記の計算式によりGLNBP活性を算出した。結果を表1に示す。
【0041】
〔GLNBP活性測定試薬組成(最終濃度)〕
グルコース-1,6-二リン酸 11.7μM
GalT 0.443 U/ml
ホスホグルコムターゼ(PGM) 5 U/ml
グルコース−6-リン酸デヒドロゲナーゼ 5 U/ml
UDP-グルコース 0.25mM
Thio-NAD+ 0.25mM
10mM リン酸緩衝液(pH 7.0)
【0042】
GLNBP活性(mU/ml)=0.216×[ΔOD]/[時間(min)]×20(反応液量(200μl)/サンプル液量(10μl))×1000
【0043】
【表1】
【0044】
その結果、MCC1304株は、標準株(ATCC29521
T)や公知株(JCM1254)と比較して高い活性を有することが分かった。
【0045】
MCC1304株は、細胞の形態、運動性陰性、胞子形成陰性、グラム染色性陽性、カタラー
ゼ陰性、グルコースからのガスの産生陰性などの性質、および16S rRNA遺伝子塩基配列の相同性の結果から、ビフィドバクテリウム・ビフィダムであると同定された。MCC1304株
の16S rRNA遺伝子の塩基配列を配列番号1に示す。この塩基配列と、ビフィドバクテリウム・ビフィダムのタイプストレインJCM1255
T株の16S rRNA遺伝子塩基配列(GenBank accession S83624.1)の対応する部分との相同性は99.7%であった。
【0046】
〔実施例2〕LNBの製造
(1)SP粗酵素液の調製
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムATCC BAA-999株を予備培養し、得られた培養液を、グルコースをスクロースに置換えたNB培地に3%接種し、嫌
気条件下37℃にて15時間培養した。培養液を遠心集菌し、得られた菌体を20mMのMOPS緩衝液にて懸濁し、再度遠心し集菌した。得られた洗浄菌体を20mMのMOPS緩衝液にてOD600が
5程度になるように懸濁し、マルチビーズショッカー(YASUI KIKAI社製)を用い、4℃下にて破砕した。破砕液を遠心分離し、上清をSP粗酵素液とした。
【0047】
(2)LNBの合成
実施例1で得られたMCC1304株のGLNBP粗酵素液、及び本実施例(1)で得られたSP粗酵素液を用いて、N−アセチルグルコサミン、及び糖質原料としてスクロースを原料としてLNBを製造した。
【0048】
終濃度660mMスクロース、600mM N−アセチルグルコサミン、1mM UDP-グルコース、200mMのリン酸緩衝液(pH 7.0)からなる基質溶液160μl、前記GLNBP粗酵素液20μlとSP酵素の粗酵素液20μlを加えて混合し、37℃にて72時間反応させた。反応溶液をHPLCで分析し
て、産生されたLNB濃度を算出した。HPLCは、NH
2P-50E 4.6×250mm カラム(Shodex社製
)を使用し、移動相には75%アセトニトリルを用い、温度30℃、流速0.8 ml/ml の条件下で行い、LNBは示差屈折率検出器(RID)で検出した。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
その結果、MCC1304株から調製したGLNBP粗酵素液は、標準株(ATCC29521
T)や公知株(JCM1254)と比較して高いLNB合成能を有していた。