(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シートは前記ロックリングの周方向に沿って延びる一般部及びこの一般部から前記ロックリング側へ向けて突出する突起部を有すると共に、この突起部によって前記当接部が構成されている請求項1記載のウェビング巻取装置。
前記突起部が前記ロックリング側へ向けて突出する円錐状に形成されていると共に、前記ロックリングが回転した際にこのロックリングに対して相対的に摺接して、前記突起部の先端部が磨耗するように設定された請求項2又は請求項3記載のウェビング巻取装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜
図13を用いて、本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置について説明する。
【0018】
図1及び
図2に示されるように、本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置10は、フレーム12と、スプール20と、ウェビング22と、ロック部としてのロックギヤ24と、フォースリミッタ機構31を構成するメイントーションシャフト32と、トリガワイヤ40と、サブトーションシャフト44と、クラッチ機構52と、を備えている。また、
図5に示されるように、ウェビング巻取装置10は、切替機構120を備えている。以下、先ずフレーム12について説明し、次いでスプール20、ウェビング22、ロックギヤ24、メイントーションシャフト32、トリガワイヤ40、サブトーションシャフト44、クラッチ機構52及び切替機構120についてこの順で説明する。
【0019】
図1に示されるように、フレーム12は、平面視で略凹形状に形成されていると共に、車体に固定される板状の背板14を備えている。また、背板14の幅方向両端部からは脚片16,18が略直角に延出されている。なお、脚片18の外側には、周知のロック機構(図示省略)が取付けられている。
【0020】
スプール20は、軸方向に貫通する貫通孔21を有する円筒状に形成されており、フレーム12の脚片16と脚片18との間に配置されている。スプール20は、軸線方向が脚片16と脚片18との対向方向に沿う状態で配置されており、後述するメイントーションシャフト32、サブトーションシャフト44等を介してフレーム12に回転可能に支持されている。
【0021】
ウェビング22は、乗員の身体に装着されるものであり、その長手方向一端部である基端部がスプール20に係止されている。スプール20は、一方の回転方向である巻取方向(
図1等の矢印Aの方向)へ回転することでウェビング22を基端側から巻取って収納する構成となっている。
【0022】
ロックギヤ24は、スプール20の軸方向一方側にスプール20と同軸上に配置されている。このロックギヤ24の外周部にはギヤ部26が形成されている。また、このロックギヤ24の軸心部には、軸方向に貫通する貫通孔28が形成されており、当該貫通孔28の内周部には、スプライン状の被係合部30が形成されている。
【0023】
ロックギヤ24は、車両の急減速時及びスプール20が急激に引出方向へ回転した際に、ロック部材(図示省略)と係合する。その結果、ロックギヤ24の引出方向(
図1等の矢印Bの方向)への回転が規制(ロック)され、スプール20の引出方向への回転が規制される。
【0024】
メイントーションシャフト32は、スプール20及びロックギヤ24と同軸上に配置されていると共に、スプール20の貫通孔21及びロックギヤ24の貫通孔28にそれぞれ挿入されている。このメイントーションシャフト32には、その長手方向中央部にスプライン状の第一係合部34が形成されると共に、その先端部に同じくスプライン状の第二係合部36が形成されている。そして、この第一係合部34がロックギヤ24の被係合部30と係合されることにより、メイントーションシャフト32は、ロックギヤ24に一体回転可能に固定されている。また、第二係合部36が、スプール20の内周部における軸線方向中間部に形成された図示しない被係合部と係合されることにより、メイントーションシャフト32がスプール20に一体回転可能に固定されている。このメイントーションシャフト32における第一係合部34と第二係合部36との間の部分は、後述する如くウェビング22の引張りに供される乗員の運動エネルギを吸収するための第一エネルギ吸収部38として構成されている。
【0025】
トリガワイヤ40の基端部40Aは、ロックギヤ24における貫通孔28よりも径方向外側の位置に形成された孔部29に挿入されて、ロックギヤ24に係止されている。一方、トリガワイヤ40における基端部40Aよりも先端側は、貫通孔21と並行してスプール20に形成された孔部42に挿入されており、その先端部40Bは、スプール20から軸方向他方側に突出されている。
【0026】
サブトーションシャフト44は、メイントーションシャフト32と同軸上に配置されており、その長手方向中央部よりも基端側は、スプール20の貫通孔21に挿入されている。一方、このサブトーションシャフト44の長手方向中央部よりも先端側は、スプール20から軸方向他方側に突出されている。このサブトーションシャフト44には、その基端部に少なくとも一部がスプライン状の第一係合部46が形成されると共に、その先端部には、同じくスプライン状の第二係合部48が形成されている。また、第一係合部46は、スプール20の内周部における軸線方向中間部に形成された図示しない被係合部と係合されており、これにより、サブトーションシャフト44は、スプール20に一体回転可能に固定されている。さらに、このサブトーションシャフト44における第一係合部46と第二係合部48との間の部分は、後述する如くウェビング22の引張りに供される乗員の運動エネルギを吸収するための第二エネルギ吸収部50として構成されている。
【0027】
図1及び
図2に示されるように、クラッチ機構52は、スリーブ54と、クラッチガイド64と、クラッチベース82と、クラッチカバー88と、一対のクラッチプレート100と、スクリュー108と、一対のコイルスプリング98とを備えている。なお、
図4(A)には、このクラッチ機構52の作動途中の状態が示されており、
図4(B)には、このクラッチ機構52の作動が完了した状態が示されている。
【0028】
スリーブ54は、サブトーションシャフト44と同軸上に配置されている。このスリーブ54の軸心部には、軸方向に貫通する貫通孔56が形成されており、この貫通孔56には、上述のサブトーションシャフト44が遊挿されている。また、このスリーブ54の内周部における先端側には、スプライン状の被係合部58が形成されており、この被係合部58にサブトーションシャフト44の第二係合部48が係合されることにより、スリーブ54は、サブトーションシャフト44に一体回転可能に固定されている。また、このスリーブ54における基端側は、円形状の外形を有する支持部60として構成されており、このスリーブ54における支持部60よりも先端側は、六角形状の外形を有する嵌合部62として構成されている。
【0029】
クラッチガイド64は、樹脂製とされており、軸方向に貫通する貫通孔66を有する環状に形成されている。この貫通孔66には、上述の支持部60が挿入されており、これにより、クラッチガイド64は、スリーブ54に相対回転可能に支持されている。このクラッチガイド64における周方向の二箇所の位置には、
図3に示されるように、コイルスプリング98を収容する一対のコイルスプリング収容部68が形成されている。これらのコイルスプリング収容部68は、クラッチガイド64の中央部を中心とする点対称状に形成されており、それぞれ、クラッチガイド64の周方向に延びる外側壁部70及び内側壁部72と、クラッチガイド64の径方向に延びて外側壁部70と内側壁部72の各端部を連結する連結壁部74とを有する略U字形状に形成されている。また、このクラッチガイド64には、クラッチプレート100を収容する一対のクラッチプレート収容部76が各コイルスプリング収容部68に隣接して形成されている。これらのクラッチプレート収容部76には、連結壁部74から内側壁部72と反対側に向けて延びる第一支持壁部78と、連結壁部74に対する外側壁部70とは反対側に連結壁部74と離間して第二支持壁部80と、が形成されている。
【0030】
図1及び
図2に示されるように、クラッチベース82は、六角形状を成す環状の被嵌合部84を有して構成されている。この被嵌合部84の内側には、スリーブ54の嵌合部62が嵌合(圧入)されており、これにより、クラッチベース82は、スリーブ54に一体回転可能に固定されている。なお、他の実施形態では、スリーブ54とクラッチベース82を一体に形成してもよい。また、このクラッチベース82には、被嵌合部84から外側に突出する一対の係止部86が形成されている。これらの係止部86は、後述するクラッチプレート100に形成されたアーム部102の基端部と係止されている。
【0031】
クラッチカバー88は、スリーブ54と同軸上に配置されると共に、クラッチガイド64に対してスプール20とは反対側に配置され、かつクラッチガイド64と対向して配置されている。このクラッチカバー88は、軸方向に貫通する貫通孔90を有する環状に形成されており、その内周部には、径方向内側に突出する嵌合爪92が複数形成されている。そして、貫通孔90にスリーブ54の嵌合部62が挿入されると共に、複数の嵌合爪92が嵌合部62と嵌合されることにより、クラッチカバー88は、スリーブ54、ひいては、サブトーションシャフト44に一体回転可能に固定されている。また、このクラッチカバー88は、後述する十字爪96がクラッチガイド64に対して周方向に係合するようになっており、クラッチガイド64は、このクラッチカバー88に対して、
図4(B)に示される作動位置と、
図3に示される非作動位置との間で相対回転可能とされている。また、このクラッチカバー88における周方向の二箇所の位置には、径方向外側に開口する軸方向視にて凹形状を成す切欠部94がそれぞれ形成されている。また、このクラッチカバー88には、各切欠部94の内側に位置されるように一対の十字爪96が形成されている。これら一対の十字爪96は、クラッチカバー88の中央部を中心とする点対称状に形成されている。また、これらの十字爪96は、クラッチカバー88の径方向から見てクランク状に屈曲しており、先端側が基端側よりもクラッチガイド64側へ突出している。
【0032】
各十字爪96の先端側には、クラッチガイド64の径方向内側へ突出した内側突出部と、クラッチガイド64の径方向外側へ突出した外側突出部と、クラッチガイド64の周方向一方(巻取方向)へ突出した周方向突出部とが設けられており、各十字爪96の先端側は、クラッチガイド64の軸方向から見て十字状に形成されている。
【0033】
クラッチプレート100は、クラッチカバー88とクラッチガイド64との間に配置されている。このクラッチプレート100は、アーム部102と、このアーム部102の先端部に形成された円弧部104とを有している。アーム部102の基端部には、クラッチカバー88側に突出すると共にサブトーションシャフト44の軸方向に沿って延びる回動軸106が形成されている。そして、この回動軸106がクラッチカバー88に形成された孔部89に挿入されることにより、クラッチプレート100は、クラッチカバー88に回動可能に支持されている。また、円弧部104の外周部(クラッチプレート100の先端部)には、平歯状のローレット歯104Aが形成されている。
【0034】
スクリュー108は、ネジ部110と、このネジ部110よりも大径の押え部112とを有して構成されている。ネジ部110は、サブトーションシャフト44の先端部に形成されたネジ孔45に螺合されており、これにより、スクリュー108は、サブトーションシャフト44の先端部に固定されている。また、このように、スクリュー108がサブトーションシャフト44の先端部に固定された状態では、スリーブ54の先端部に押え部112が当接される。そして、これにより、スリーブ54のサブトーションシャフト44に対する抜き方向への移動が制限されている。なお、この状態では、クラッチガイド64は、クラッチカバー88とスプール20とによって軸方向の移動を制限されている。また、このスクリュー108は、ケースエクステンション242を介してボデー122に取付けられたスプリングコンポーネント244のアダプタ246に接続されている(
図9参照)。
【0035】
また、上述のクラッチガイド64及びクラッチカバー88には、孔部65,91がそれぞれ形成されている。これらの孔部65,91は、クラッチガイド64がクラッチカバー88に対して非作動位置に配置された状態で互いに対向するように形成されており、これらの孔部65,91には、トリガワイヤ40の先端部40Bがそれぞれ挿入されている。これにより、クラッチガイド64は、非作動位置に配置された状態でスプール20及びクラッチカバー88に対する相対回転を制限されている(クラッチガイド64が非作動位置に拘束されている)。
【0036】
またさらに、上述の如くクラッチガイド64が非作動位置に拘束された状態では、クラッチガイド64の各コイルスプリング収容部68における開口部付近に、クラッチカバー88の各十字爪96が位置される。そして、各十字爪96の周方向突出部は、各コイルスプリング収容部68に収容されたコイルスプリング98の軸方向一端部から当該コイルスプリング98の内側に挿入されており、各十字爪96の内側突出部及び外側突出部は、コイルスプリング98の軸方向一端部に当接している。これにより、コイルスプリング98の軸方向一端部が各十字爪96に係止されている。また、このコイルスプリング98の軸方向他端部は、コイルスプリング収容部68の連結壁部74(
図3参照)に係止されている。
【0037】
また、この状態では、十字爪96と連結壁部74との間隔がコイルスプリング98の自由状態での全長よりも短くなり、これにより、コイルスプリング98が圧縮状態とされる。そして、これにより、クラッチガイド64に対しては巻取方向の付勢力が付与されており、クラッチガイド64は作動位置へと付勢されている。
【0038】
一方、この状態では、クラッチカバー88の孔部89(クラッチプレート100の回動軸106)と連結壁部74との間隔が十分に確保された状態となり、クラッチプレート100は、ローレット歯104Aがクラッチガイド64の外周部よりも内側に納まるように、クラッチプレート収容部76に収容される。また、この状態では、円弧部104の先端に連結壁部74が当接されている。
【0039】
次に、本実施形態の要部である切替機構120について説明する。
【0040】
図5に示されるように、切替機構120は、箱状に形成されたボデー122と、このボデー122に取付けられたガスジェネレータ194と、このガスジェネレータ194によって発生したガスの圧力を受けて作動するピストン160及びこのピストン160を内部に収容するシリンダ204と、を備えている。また、切替機構120は、ピストン160に押圧されることによって配置の切り替えがなされるパウル150と、このパウル150によって回転が規制され又はこの規制が解除されるロックリング190と、を備えている。さらに、切替機構120は、ボデー122に収容されたピストン160、シリンダ204、パウル150及びロックリング190を覆うように設けられたシート212と、このシート212の外側からボデー122に取付けられるサポートプレート206と、を備えている。
【0041】
ボデー122は、ダイキャスト成形により形成されていると共に、フレーム12の脚片16側(
図1参照)へ開口するように形成されている。具体的には、ボデー122は、後述するパウル150、ピストン160、シリンダ204及びガスジェネレータ194を収容するケース部124と、ロックリング190が収容されるロックリング収容部125と、を備えている。
【0042】
ケース部124には、ピストン160及びシリンダ204が収容されると共に矢印C方向及び矢印D方向へ延在された収容溝130がフレーム12の脚片16側(
図1参照)へ開口するように形成されている。さらに、ケース部124には、パウル150が収容されると共に、上記の収容溝130と接続された凹部132がフレーム12の脚片16側(
図1参照)へ開口するように形成されている。また、
図11(A)及び(B)に示されるように、この凹部132は、パウル150の軸部152を回転自在に支持する軸支部132A及び後述するシェアピン240がせん断された際に、このシェアピン240の先端が底壁133Aに当接することが可能とされた溝部133を備えている。
【0043】
また、
図5に示されるように、ケース部124には、ガスジェネレータ194が取付けられる取付部134が形成されている。さらに、ケース部124には、スプール20(
図1参照)の軸方向と同一方向を軸方向とする筒状の連通路136(
図11(B)も参照)が形成されている。この連通路136は、収容溝130と取付部134とを連通している。その結果、ガスジェネレータ194から発生したガスが収容溝130側へ流入することが可能となっている。
【0044】
ロックリング収容部125には、ロックリング190が収容される凹部138がフレーム12の脚片16側(
図1参照)へ開口するように形成されている。また、この凹部138には、スプール20(
図1参照)の軸芯と同芯となる円形の開口140が形成されている。また、ロックリング収容部125には、後述するシート212に設けられたクリップ234が挿入される円形状の取付孔144が形成されている。
【0045】
以上説明したボデー122は、脚片16外側(
図1及び
図9参照)に固定されている。
【0046】
ガスジェネレータ194は、略円柱状に形成されていると共に、一端部はガスが噴出するガス噴出部194Aとされていると共に、他端部は配線が接続される接続端子部194Bとされている。このガスジェネレータ194は、ガス噴出部194A側からボデー122の取付部134に挿入されると共に、固定部材195を用いてボデー122に固定されている。
【0047】
ピストン160は、樹脂材料を用いて一体で形成されている。具体的には、ピストン160の基端側は、楕円柱状に形成されていると共に後述するシリンダ204のシリンダ部204Cに嵌入されるピストン部160Aとされている。また、このピストン部160Aには、Oリング取付溝160Bが形成されていると共に、Oリング208がOリング取付溝160Bに取付けられている。このOリング208によって、ガスジェネレータ194から発生したガスがピストン部160Aとシリンダ204のシリンダ部204Cとの間から漏れ出すことが防止されている。また、ピストン160の先端側は、後述するパウル150のアーム部154を押圧する押圧部160Cとされている。
【0048】
シリンダ204は、上記のピストンと同様に樹脂材料を用いて一体で形成されている。具体的には、シリンダ204は、ボデー122のケース部124に形成された連通路136に挿入される筒状の挿入部204Aを備えている。この挿入部204Aには、Oリング取付溝204Bが形成されていると共に、Oリング210がOリング取付溝204Bに取付けられている。このOリング210によって、ガスジェネレータ194から発生したガスがシリンダ204の挿入部と連通路136との間から漏れ出すことが防止されている。また、シリンダ204は、挿入部204Aの端部から矢印C方向へ屈曲するように形成されたシリンダ部204Cを備えている。このシリンダ部204Cの外郭は略角柱状に形成されていると共に、楕円筒状に形成された貫通孔が設けられている。上述したピストン160のピストン部160Aがシリンダ部204Cの貫通孔に嵌入されている。その結果、ピストン160がガスジェネレータ194から発生したガスの圧力によって矢印C方向へ直線移動することが可能となっている。
【0049】
パウル150は、略板状に形成されていると共に、断面略円形状の軸部152と、この軸部152の径方向外側へ延出するように形成されたアーム部154及び係合部156と、を備えている。また、軸部152は、ボデー122のケース部124に形成された凹部132(軸支部132A)に回動自在に支持されている。さらに、
図6に示されるように、係合部156が後述するロックリング190の切欠部192に係合した状態(この状態のパウル150の位置を第1位置としての「ロック位置」という)において、アーム部154はピストン160の押圧部160Cと近接するように配置されている。また、
図5に示されるように、パウル150には、断面円形状の係止孔158が形成されている。後述するシート212に設けられたシェアピン240が係止孔158に挿通される(
図11(A)参照)ことによって、パウル150がロック位置に規制されていると共に、パウル150の回動が制限されている。
【0050】
図5に示されるように、ロックリング190は、略円環板状に形成されている。具体的には、ロックリング190の軸方向の一方側は、このロックリング190の径方向に延在すると共に後述するシート212に設けられた突起部233が当接する被当接面191とされている。また、
図12(B)に示されるように、ロックリング190の軸方向の他方側には、このロックリング190の周方向に沿ってU字溝193が形成されている。さらに、このU字溝193の内周側の壁面はブッシュ141の取付部193Aとされている。
【0051】
また、
図9に示されるように、ロックリング190は、クラッチ機構52の外周側において、クラッチ機構52と同軸上に配置されていると共に、ボデー122のロックリング収容部125に形成された凹部138に収容されている。また、ロックリング190は、ブッシュ141を介してボデー122のロックリング収容部125に形成された開口140に回転自在に支持されている。
【0052】
なお、本実施形態では、樹脂材料を用いて形成されたブッシュ141は、ロックリング190に設けられた取付部193Aとボデー122のロックリング収容部125に形成された開口140との間に介挿される介挿部142を備えている。この介挿部142を樹脂材料を用いて薄肉で形成する場合、この部分の成型寸法が安定しないことが考えられる。そのため、
図12(A)に示されるように、ブッシュ141の介挿部142には、スリット142Aが設けられている。このスリット142Aが設けられた部分が周方向へ伸縮することによって、ブッシュ141の介挿部142が適度な締め代を有して、ロックリング190に設けられた取付部193Aとボデー122のロックリング収容部125に形成された開口140との間に介挿されている。
【0053】
また、
図5に示されるように、ロックリング190の内周部には、平歯状のローレット歯190Aが形成されている。さらに、ロックリング190の外周部には、断面略三角形状の切欠部192が形成されており、この切欠部192はロックリング190の径方向外側へ開口されている。
【0054】
図6及び
図7に示されるように、シート212は、樹脂材料を用いて略板状に形成されている。具体的には、シート212は、ボデー122におけるケース部124に形成された収容溝130及び凹部132を覆う第1カバー部214と、ロックリング収容部125に形成された凹部138を覆う第2カバー部216と、を備えている。
【0055】
第1カバー部214は、ボデー122におけるケース部124に沿って延びる一般部218を備えている。さらに、この一般部218には、ケース部124に形成されたボス127に嵌合されることによって、ボデー122に対するシート212の位置決めがなされる開口220が形成されている。また、
図11(A)に示されるように、一般部218には、パウル150の方向へ向けて突出する略円柱状のシェアピン240が設けられている。
【0056】
また、
図6及び
図7に示されるように、第2カバー部216は、ボデー122の凹部138に収容されたロックリング190の被当接面191に沿って延びる一般部231を備えている。また、この一般部231には、ボデー122のロックリング収容部125に形成された開口140と同軸となるように設けられた開口228が形成されている。さらに、第2カバー部216には、ケース部124に形成されたボス128に嵌合されることによって、ボデー122に対するシート212の位置決めがなされる開口230が形成されている。
【0057】
また、
図9及び
図10に示されるように、第2カバー部216の一般部231には、ロックリング190の被当接面191の方向へ向けて突出するように形成された当接部としての突起部233が設けられている。この突起部233は、略円錐状に形成されていると共に、開口228の周方向に沿って複数設けられている(本実施形態では、開口228の周方向に沿って3個の突起部233が設けられている)。また、この突起部233の一般部231からの突出量は、シート212がボデー122に取付けられると共に、ボデー122が脚片16外側に固定された状態において、突起部233の先端部が潰される程度の突出量に設定されている。また、この突起部233の先端部は、ロックリング190が回転した際にこのロックリング190の被当接面191に対して相対的に摺接すると共に、この摺接によって磨耗するように設定されている。
【0058】
また、
図6に示されるように、第2カバー部216の一般部231には、クリップ234が設けられている。
図13(A)及び(B)に示されるように、このクリップ234は、ボデー122に設けられた取付孔144の方向に向けて突出するように形成された係止部236とガイド部238とを有して構成されている。係止部236は、この係止部236の基端部を回動中心としてガイド部238側へ回動する(弾性変形する)ことが可能に形成されている。また、係止部236の先端には、取付孔144の周縁部に係合することによってクリップ234が取付孔144から抜け出さないようにするための爪部236Aが形成されている。また、ガイド部238は、クリップ234が取付孔144に挿入される際にこの取付孔144の縁と摺接する円筒面238Aを有している。この円筒面238Aが取付孔144の縁と摺接することによってクリップ234が取付孔144の軸芯方向へガイドされる構成である。
【0059】
図5及び
図8に示されるように、サポートプレート206は、薄板鋼板をプレス加工することにより形成されたプレス成形品である。具体的には、サポートプレート206は、シート212の第1カバー部214に沿って延在する基壁部206Aと、ボデー122への取付部206B及び取付開口206Cと、を備えている。
図8に示されるように、サポートプレート206は、このサポートプレート206の基壁部206Aがシート212の第1カバー部214を覆うように配置されると共に、ボルト232(
図5参照)を介してボデー122に固定されている。
【0060】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0061】
本実施形態に係るウェビング巻取装置10では、スプール20、ロックギヤ24、メイントーションシャフト32、サブトーションシャフト44、及びクラッチ機構52(スリーブ54、クラッチベース82、クラッチプレート100及びスクリュー108を含む)が一体に巻取方向及び引出方向へ回転可能に構成されている。そのため、ウェビング22がスプール20から引出されることで、ウェビング22が車両の乗員の身体に装着される。また、ウェビング22が車両の乗員の身体に装着された状態で、例えば、車両が急減速状態になり、ロック機構が作動すると、ロックギヤ24の引出方向への回転が阻止される。その結果、このロックギヤ24にメイントーションシャフト32を介して連結されたスプール20の引出方向への回転が制限されて、スプール20からのウェビング22の引出しが制限される。したがって、車両前方へ移動しようとする乗員の身体がウェビング22によって拘束される。
【0062】
また、ロックギヤ24の引出方向への回転が阻止された状態で、更に大きな力で乗員の身体がウェビング22を引張り、この引張力に基づく引出方向へのスプール20の回転力がメイントーションシャフト32の第一エネルギ吸収部38の耐捩れ荷重(耐変形荷重)を上回ると、フォースリミッタ機構31が作動されて、第一エネルギ吸収部38の捩れ(変形)により、スプール20のフォースリミッタ荷重(第一エネルギ吸収部38の耐捩れ荷重)以上での引出方向への回転が許容される。
【0063】
したがって、第一エネルギ吸収部38の捩れによりスプール20が引出方向へ回転されてスプール20からウェビング22が引出されることで、ウェビング22による乗員の胸部への負荷(負担)が軽減される。また第一エネルギ吸収部38の捩れ分だけウェビング22の引張りに供される乗員の運動エネルギが吸収される。
【0064】
一方、上述のように、ロックギヤ24に対してスプール20が引出方向に回転されるということは、ロックギヤ24がスプール20に対して相対的に巻取方向へ回転されると言うことである。したがって、ロックギヤ24がスプール20に対して巻取方向へ相対回転されると、トリガワイヤ40における基端部40Aよりも先端側がスプール20の孔部42に挿入されたまま、このトリガワイヤ40の基端部40Aがメイントーションシャフト32の周方向に移動されるので、このトリガワイヤ40における基端部40Aよりも先端側が孔部42に対してロックギヤ24側に引張られる。
【0065】
これにより、トリガワイヤ40の先端部40Bがクラッチガイド64の孔部65とクラッチカバー88の孔部91から引抜かれて、スプール20及びクラッチカバー88に対するクラッチガイド64の相対回転の阻止状態が解消される。
【0066】
そして、コイルスプリング98の付勢力により、クラッチガイド64が非作動位置から作動位置へと回転されると、クラッチカバー88の孔部89(クラッチプレート100の回動軸106)とクラッチガイド64の連結壁部74との間隔が短くなり、クラッチプレート100の円弧部104の先端が連結壁部74によってクラッチガイド64の接線方向に押圧(案内)される。これにより、クラッチプレート100がロックリング190側へ回動され(
図4(A)の矢印R参照)、クラッチプレート100のローレット歯104Aがロックリング190のローレット歯190Aと噛合う(
図4(B)図示状態)。これにより、クラッチプレート100とロックリング190とが結合される。また、このときには、クラッチベース82に形成された係止部86がクラッチプレート100のアーム部102の基端部を引出方向へ押すことにより、クラッチプレート100がロックリング190に押し付けられ、両者の結合状態が維持される。これにより、クラッチ機構52(スリーブ54、クラッチベース82及びクラッチプレート100)の引出方向への回転と一体に、ロックリング190が引出方向へ回転しようとする。
【0067】
また、図示しない制御装置は、体格検出手段からの信号に基づいて、乗員の体格が予め定められた基準値以上であるか否かを判定すると共に、衝突検出手段からの信号に基づいて、車両が衝突したか否かを判定している。そして、制御装置が、乗員の体格が予め定められた基準値以上であると判定した場合では、ガスジェネレータ194が作動されないため、パウル150の係合部156が、ロック位置に配置されて、ロックリング190のロック孔192に係合している。このため、ロックリング190の引出方向への回転がロック(阻止)されることで、クラッチ機構52(スリーブ54、クラッチベース82及びクラッチプレート100)の引出方向への回転が阻止される。
【0068】
そして、スリーブ54の引出方向への回転が阻止された状態で、更に大きな力で乗員の身体がウェビング22を引張り、この引張力に基づく引出方向へのスプール20の回転力がメイントーションシャフト32の第一エネルギ吸収部38の耐捩れ荷重(耐変形荷重)とサブトーションシャフト44の第二エネルギ吸収部50の耐捩れ荷重(耐変形荷重)との合計を上回ると、第一エネルギ吸収部38及び第二エネルギ吸収部50の捩れ(変形)により、スプール20のフォースリミッタ荷重(第一エネルギ吸収部38の耐捩れ荷重と第二エネルギ吸収部50の耐捩れ荷重との合計)以上での引出方向への回転が許容される。
【0069】
したがって、第一エネルギ吸収部38及び第二エネルギ吸収部50の捩れによりスプール20が引出方向へ回転されてスプール20からウェビング22が引出されることで、ウェビング22による乗員の胸部への負荷(負担)が軽減されると共に、第一エネルギ吸収部38及び第二エネルギ吸収部50の捩れ分だけウェビング22の引張りに供される乗員の運動エネルギが吸収される。
【0070】
一方、制御装置が、体格検出手段からの信号に基づいて、乗員の体格が予め定められた基準値未満であると判定すると共に、衝突検出手段の信号に基づいて、車両が衝突したと判定した場合には、制御装置の制御によりガスジェネレータ194が作動される。
【0071】
ガスジェネレータ194が作動されると、ガスジェネレータ194のガス噴出部194Aから噴出したガスが、ボデー122のケース部124に形成された連通路136を通じてシリンダ204内に流入すると共に、このシリンダ204の内部の圧力が上昇する。その結果、シリンダ204のシリンダ部204Cに嵌入されたピストン160が矢印C方向へ移動する。このピストン160が矢印C方向へ移動することによって、ピストン160の押圧部160Cがパウル150のアーム部154を押圧する。その結果、パウル150の係止孔158に挿通されたシェアピン240の基端部がせん断され、パウル150が軸部152を軸中心として回転する。そしてさらに、パウル150の係合部156とロックリング190の切欠部192との係合が外れる(この状態のパウル150の位置を第2位置としての「解除位置」という)。なお、
図11(A)に示されるように、せん断されたシェアピン240の先端部が溝部133の底壁133Aに当接した状態において、このシェアピン240は係止孔158から抜け出すことなく保持されている。その結果、せん断されたシェアピン240がロックリング190等の動きを妨げることが抑制されている。
【0072】
その結果、ロックリング190の引出方向への回転が許容されることで、クラッチ機構52(スリーブ54、クラッチベース82及びクラッチプレート100)及びスプール20と共にロックリング190が引出方向へ回転可能にされる。このため、第二エネルギ吸収部50に捩れは生じないため、第一エネルギ吸収部38の捩れ(変形)により、スプール20のフォースリミッタ荷重(第一エネルギ吸収部38の耐捩れ荷重)以上での引出方向への回転が許容される。
【0073】
すなわち、乗員の体格が予め定められた基準値以上である場合では、フォースリミッタ荷重が第一エネルギ吸収部38の耐捩れ荷重と第二エネルギ吸収部50の耐捩れ荷重との合計にされて、フォースリミッタ荷重の荷重値が高荷重にされる。一方、乗員の体格が予め定められた基準値未満であり、車両の衝突が検出された場合には、フォースリミッタ荷重が第一エネルギ吸収部38の耐捩れ荷重にされて、フォースリミッタ荷重の荷重値が低荷重にされる。このため、乗員を体格に応じて適切に保護することができる。
【0074】
ここで、本実施形態では、シート212の一般部231から突出するように設けられた突起部233がロックリング190の被当接面191に当接している。そのため、車体の走行に伴う振動がウェビング巻取装置10に伝達されたとしても、ロックリング190がボデー122に設けられた凹部138の内部にて振動することが規制される。即ち、本実施形態では、車両の走行に伴う振動によって生じる異音の発生を抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態では、シート212の一般部231に設けられた突起部233がロックリング190の被当接面191に当接した状態において、シート212の一般部231とロックリング190の被当接面191との間にはクリアランスを有している。そのため、ロックリング190が回転可能とされた際に、このロックリング190はシート212の一般部と摺接することなく回転する。
【0076】
さらに、本実施形態では、突起部233が複数設けられている。そのため、この突起部233の数を適宜設定することにより、突起部233がロックリング190に当接する力を調節することができる。
【0077】
また、本実施形態では、突起部233が円錐状に形成されている。そのため、この突起部233の先端部がロックリング190の被当接面191に当接すると、突起部233の先端部には接触荷重が集中する。また、本実施形態では、ロックリング190が回転した際に、突起部233の先端部(接触荷重が集中する部分)がロックリング190の被当接面191と摺接して磨耗するように設定されている。そのため、突起部233の先端部が磨耗した後においては、ロックリング190は突起部233の先端部の影響を受けることなく回転することが可能となる。即ち、突起部233の先端部が磨耗した後においては、ロックリング190をよりスムースに回転させることが可能となる。その結果、ロックリング190が回転可能とされた際のフォースリミッタ荷重をより一層安定させることができる。
【0078】
なお、本実施形態では、突起部233の先端部がロックリング190の被当接面191と摺接して磨耗するように設定された例について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、突起部233の先端部が磨耗しなくても、設定通りのフォースリミッタ荷重を得られる場合にあっては、突起部233の先端部が磨耗しない設定(材料や突起部の形状の設定)としてもよい。
【0079】
また、本実施形態では、突起部233が複数設けられた例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えば、シート212の一般部231からロックリング190の被当接面191の方向に向けて突出すると共に、この被当接面191に沿ってリング状に形成された単一の突起部を設けた構成としてもよい。
【0080】
さらに、本実施形態では、シート212の一般部231から突出するように設けられた突起部233をロックリング190との当接部とした例について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、突起部233を設けずに、シート212の一部がロックリング190に当接するように設定しても良い。
【0081】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。