特許第5792112号(P5792112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792112
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】車両用アウタミラー装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/06 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   B60R1/06 D
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-96429(P2012-96429)
(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公開番号】特開2013-224061(P2013-224061A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2014年11月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】中尾 知宏
【審査官】 常盤 務
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−225698(JP,A)
【文献】 特開平07−329641(JP,A)
【文献】 特開2001−301529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に組付けられたベースに固定され、支持軸を有する支持部材と、
前記支持軸に回動可能に支持された回動体と、
前記回動体に結合され、ミラーを保持する縦壁と前記縦壁から延びて前記ベースの上側に配置されると共に前記支持軸が挿通される挿通孔が1部材で形成された底壁とを有する保持部材と、
前記挿通孔の縁部における前記縦壁とは反対側の部分のみに形成された係合部と、
前記回動体に形成され、前記係合部と前記ベースとの間で前記係合部と係合された被係合部と、
前記縦壁の前記回動体と対向する部分に形成された嵌合部と、
前記回動体に形成され、前記嵌合部と嵌合されて前記回動体の上下方向への移動を制限する被嵌合部と、
を備えた車両用アウタミラー装置。
【請求項2】
前記嵌合部は、前記回動体側へ開放された凹状に形成され、
前記被嵌合部は、前記回動体から前記縦壁側へ突出された突起状に形成され、
前記縦壁には、上下方向に延びる一対の案内壁が形成されると共に、一対の前記案内壁の間に前記嵌合部が配置された請求項1に記載の車両用アウタミラー装置。
【請求項3】
前記縦壁における前記嵌合部の上側部分には、下側へ向かうに従い前記回動体側へ傾斜された傾斜面が形成された請求項2に記載の車両用アウタミラー装置。
【請求項4】
前記被係合部は、前記支持軸の軸心に対して点対称に一対形成され、
前記被係合部の一方が前記係合部と係合され、
前記挿通孔の縁部には、前記被係合部の他方と干渉しない非干渉部が形成された請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の車両用アウタミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アウタミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された車両用ドアミラーでは、ミラーベース(ベース)の上側に下側ハウジングの底壁が配置されている。そして、この底壁には開口部(挿通孔)が貫通形成されており、開口部内には、ミラーベースに固定されたシャフトが挿通されている。これにより、下側ハウジング(底壁)とミラーベースとの間に上下方向の隙間(以下、この隙間を「見切り隙」という)が形成されている。つまり、この見切り隙をミラーベースと形成する部材が1部材にされている。
【0003】
ところで、下側ハウジングは、一般に樹脂で成形されている。また、下側ハウジングは、底壁から上側へ向かう周壁を有している。この周壁と底壁との厚さを同じ厚さに設定すると、周壁と底壁との交差する角部の厚さが厚くなるため、下側ハウジングを成形する時に、この角部にヒケが発生する可能性がある。一方、このヒケの発生を抑制するために底壁の厚さを薄くすると、底壁の開口部の周縁における強度が低くなる。このため、底壁の開口部の周縁がミラーベース側へ変形して、見切り隙の寸法が安定しない可能性がある。
【0004】
一方、上記の車両用ドアミラーでは、底壁に第1〜第4の圧着固定用凸部が設けられており、シャフトに回動可能に支持されたフレームに、第1〜第4の圧着固定部が設けられている。そして、シャフトを開口部内に配置してフレームをシャフトの軸回りに回転させると、第1〜第4の圧着固定用凸部が第1〜第4の圧着固定部内に入りこんで、フレームが下側へ押圧されると共に、フレームの下面が下側ハウジングに当接される。これにより底壁の上下方向への移動が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−173557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の車両用ドアミラーでは、フレームに位置決め用のボスが設けられており、フレームを回転させる際にボスが底壁の傾斜面上を摺動して、フレームが傾斜面によって上側へ押圧される。このため、フレームを底壁に組付ける際に、底壁の傾斜面からフレームに作用する力の方向と第1〜第4の圧着固定部からフレームに作用する力の方向とが反対方向となるため、組付性が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮し、ベースと見切り隙を形成する部材を1部材にした際の見切り隙の寸法を安定化しつつ回動体の保持部材への組付性を向上できる車両用ミラー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の車両用アウタミラー装置では、車体に組付けられたベースに固定され、支持軸を有する支持部材と、前記支持軸に回動可能に支持された回動体と、前記回動体に結合され、ミラーを保持する縦壁と前記縦壁から延びて前記ベースの上側に配置されると共に前記支持軸が挿通される挿通孔が1部材で形成された底壁とを有する保持部材と、前記挿通孔の縁部における前記縦壁とは反対側の部分のみに形成された係合部と、前記回動体に形成され、前記係合部と前記ベースとの間で前記係合部と係合された被係合部と、前記縦壁の前記回動体と対向する部分に形成された嵌合部と、前記回動体に形成され、前記嵌合部と嵌合されて前記回動体の上下方向への移動を制限する被嵌合部と、を備えている
【0009】
請求項1に記載の車両用アウタミラー装置では、回動体に保持部材が結合されている。この保持部材は縦壁を有しており、縦壁によってミラーが保持されている。また、保持部材は底壁を有しており、底壁は縦壁から延びてベースの上側に配置されている。この底壁には挿通孔が形成されており、挿入孔内には、ベースに固定された支持部材の支持軸が挿通されている。これにより、底壁(保持部材)とベースとの間に上下方向の隙間(以下、この隙間を「見切り隙」という)が形成される。
【0010】
ここで、挿通孔の縁部における縦壁とは反対側の部分には、係合部が形成されており、係合部は、係合部のベース側で回動体の被係合部と係合されている。これにより、例えば、保持部材の外観を良好にするために、保持部材の底壁の厚さを薄くしても、保持部材の挿通孔周縁の下側への変形が被係合部によって抑制される。したがって、見切り隙の寸法を安定化できる。
【0011】
また、縦壁には、嵌合部が形成されており、この嵌合部に回動体の被嵌合部が嵌合されて回動体の上下方向の移動が制限される。このため、回動体を保持部材に組付ける際には、被係合部を係合部の下側へ潜り込ませるように回動体を傾倒させて、回動体を縦壁側へ回動させることで、被係合部と係合部とが係合されると共に、被嵌合部と嵌合部とが嵌合される。これにより、回動体を保持部材に仮組みできる。つまり、回動体は、保持部材の底壁と係合されると共に保持部材の縦壁と嵌合されるため、例えば被嵌合部が嵌合部に嵌合される際に縦壁が弾性変形しても、この縦壁の弾性変形が回動体と底壁との係合に直接的に影響しない。このため、回動体を保持部材に組付ける際の組付性を向上できる。
【0012】
請求項2車両用アウタミラー装置は、請求項1に記載の車両用アウタミラー装置において、前記嵌合部は、前記回動体側へ開放された凹状に形成され、前記被嵌合部は、前記回動体から前記縦壁側へ突出された突起状に形成され、前記縦壁には、上下方向に延びる一対の案内壁が形成されると共に、一対の前記案内壁の間に前記嵌合部が配置されている。
【0013】
請求項2車両用アウタミラー装置では、嵌合部は、回動体側へ開放された凹状に形成されており、被嵌合部は、回動体から縦壁側へ突出された突起状に形成されている。そして、縦壁には、上下方向に延びた一対の案内壁が形成されており、この一対の案内壁の間に嵌合部が配置されている。
【0014】
これにより、一対の案内壁の間に被嵌合部を挿入させることで、案内壁によって被嵌合部を嵌合部へ案内させることができる。したがって、回転体を保持部材に組付ける際の組付性を一層向上できる。
【0015】
請求項3に記載の車両用アウタミラー装置は、請求項2に記載の車両用アウタミラー装置において、前記縦壁における前記嵌合部の上側部分には、下側へ向かうに従い前記回動体側へ傾斜された傾斜面が形成されている。
【0016】
請求項3に記載の車両用アウタミラー装置では、縦壁における嵌合部の上側部分に傾斜面が形成されており、傾斜面は、下側へ向かうに従い回動体側へ傾斜されている。このため、回動体を保持部材に組付ける際には、被嵌合部が傾斜面上を摺動して嵌合部に嵌合されるため、回動体を保持部材に組付ける際に縦壁から回動体に作用する力を徐々に大きくできる。これにより、回動体を保持部材に組付ける際の組付性をより一層向上できる。
【0017】
請求項4に記載の車両用アウタミラー装置は、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の車両用アウタミラー装置において、前記被係合部は、前記支持軸の軸心に対して点対称に一対形成され、前記被係合部の一方が前記係合部と係合され、前記挿通孔の縁部には、前記被係合部の他方と干渉しない非干渉部が形成されている。
【0018】
請求項4に記載の車両用アウタミラー装置では、被係合部が、支持軸の軸心に対して点対称に一対形成されている。そして、被係合部の一方は、係合部と係合されており、挿通孔の縁部には、被係合部の他方と干渉しない非干渉部が形成されている。このため、車両の右側及び左側に組付けられる車両用アウタミラー装置において、回動体を共用できる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の車両用アウタミラー装置によれば、ベースと見切り隙を形成する部材を1部材にした際の見切り隙の寸法を安定化しつつ回動体の保持部材への組付性を向上できる。
【0020】
請求項2車両用アウタミラー装置によれば、回転体を保持部材に組付ける際の組付性を一層向上できる。
【0021】
請求項3に記載の車両用アウタミラー装置によれば、回動体を保持部材に組付ける際の組付性をより一層向上できる。
【0022】
請求項4に記載の車両用アウタミラー装置によれば、車両の右側及び左側に組付けられる車両用アウタミラー装置において、回動体を共用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置に用いられるケースがバイザボディに組付けられた状態の一部を示す車両左側から見た側断面図(図4の1−1線断面図)である。
図2】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置を示す車両前側から見た正面図である。
図3図2に示される車両用ドアミラー装置を示す車両左側から見た側断面図(図2の3−3線断面図)である。
図4図2に示される車両用ドアミラー装置のバイザカバーを取外した状態を示す概略した正面図である。
図5図3に示される車両用ドアミラー装置のA部を拡大した拡大図である。
図6図4に示されるバイザボディの底壁を上側から見た(図4の矢視Bに対応する)平面図である。
図7図1に示されるケースがバイザボディに組付けられる際を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図2には、本実施の形態に係る「車両用アウタミラー装置」としての車両用ドアミラー装置10が車両前側から見た正面図にて示されている。なお、図面に適宜示される矢印FRは車両前側を示し、矢印RHは車両右側(車両幅方向一側)を示し、矢印UPは上側を示している。
【0025】
この車両用ドアミラー装置10は、車両のフロントドア(図示省略)にそれぞれ設置されており、車両の右側に設置された車両用ドアミラー装置10と車両の左側に設置された車両用ドアミラー装置10とは車両幅方向において左右対称に構成されている。このため、車両の右側に設置された車両用ドアミラー装置10について説明して、車両の左側に設置された車両用ドアミラー装置10についての説明は省略する。
【0026】
この図に示すように、車両用ドアミラー装置10は、ベース12と、ドアミラー本体30と、を含んで構成されている。また、図3に示すように、ベース12は、ベース本体14と、第1ベースカバー18と、第2ベースカバー26と、を含んで構成されて、車両のフロントドアの車両右側に配置されている。
【0027】
ベース本体14はベース12の内側部分を構成しており、ベース本体14の下部が車両のフロントドア(車体)に固定されている。また、ベース本体14の上部には、後述するスタンド34を固定するための固定部16が3箇所形成されており(図3では固定部16が1箇所のみ示されている)、固定部16は、上側へ開放された凹状を成している。そして、固定部16の底壁には、貫通孔16Aが形成されている。
【0028】
第1ベースカバー18は、ベース本体14の上部を覆う略円環板状の上壁20と、ベース本体14の車両後側部分を覆う側壁24と、を有すると共に、ネジ等の締結部材によってベース本体14に締結されている。この上壁20は、板厚方向を上下方向にしてベース本体14の上側に配置されている。また、上壁20には、後述するスタンド34を収容するためのスタンド収容部22が形成されており、スタンド収容部22は、上側へ開放された凹状を成している。そして、スタンド収容部22の底壁には、円形状の貫通孔22Aが形成されており、これにより、ベース本体14の上部が貫通孔22Aから露出されている。一方、第1ベースカバー18の側壁24は、上壁20の外周部における車両後側部分から下側へ延びて、ベース本体14の外側に配置されている。
【0029】
第2ベースカバー26は、湾曲された板状に形成されて、ベース本体14の車両前側に配置されている。この第2ベースカバー26の上端部は、第1ベースカバー18の上壁20の外周部における車両前側部分と係合されている。また、第2ベースカバー26には、図示しない係合爪が形成されており、この係合爪が第1ベースカバー18に係合されることで、第2ベースカバー26が第1ベースカバー18に組付けられている。以上により、第1ベースカバー18の上面が、ベース12の上面を構成している。
【0030】
ドアミラー本体30は、電動格納ユニット32と、「保持部材」としてのバイザボディ62と、バイザカバー88(広義には、「カバー部材」として把握される要素である)と、を含んで構成されている。そして、電動格納ユニット32は、「支持部材」としてのスタンド34と、「回動体」としてのケース44と、を含んで構成されている。
【0031】
スタンド34は、第1ベースカバー18のスタンド収容部22内に収容されており、スタンド34の下部がスタンド収容部22の貫通孔22Aから下側へ突出されている。スタンド34の下部には、被固定部36が3箇所形成されており(図3には被固定部36が1箇所のみ図示されている)、この被固定部36には、下側へ開放された被締結部38が形成されている。そして、被固定部36がベース本体14の固定部16内に配置されており、固定部16の貫通孔16A内及び被締結部38内にネジ40が挿入されて、ネジ40によってスタンド34がベース本体14に固定(締結)されている。
【0032】
また、スタンド34には、略円筒状の支持軸42が一体に形成されており、支持軸42はスタンド34から上側へ突出されている。
【0033】
ケース44は、ケース44の上側部分を構成する上ケース46とケース44の下側部分を構成する下ケース48とを含んで構成されて、略箱状に形成されている。そして、スタンド34がケース44から下側へ突出されるように支持軸42がケース44内に収容されており、ケース44は支持軸42に回転可能に支持されている。また、ケース44内には、モータ(図示省略)及びギヤ(図示省略)が収容されており、ケース44はギアを介してモータに連結されている。これにより、モータに電流が供給されると、ケース44が支持軸42の軸回りに回動するように構成されている。
【0034】
図1に示すように、下ケース48の下部には、フランジ部50が一体に形成されており、フランジ部50は、支持軸42の径方向外側へ突出されている。さらに、フランジ部50の下面には、円環状の環状リブ52が一体に形成されており、環状リブ52はフランジ部50から下側へ突出されている。そして、環状リブ52の外周部には、「被係合部」としての一対の被係合片54,56が一体に形成されており、被係合片54,56は、上側から見て略矩形板状に形成されると共に、環状リブ52からそれぞれ車両前側及び車両後側へ突出されている(図6参照)。つまり、被係合片54,56は支持軸42の軸心に対して点対称の位置に配置されている。図5に示すように、被係合片54,56はベース12(第1ベースカバー18)の上側に配置されており、被係合片54,56の下面と第1ベースカバー18の上面との間には、上下方向に隙間Gが形成されている(図5には、被係合片54のみ示されている)。
【0035】
図1に示すように、下ケース48の車両前側部及び車両後側部には、被係合片54,56よりも車両右側の位置において、一対の「被嵌合部」としての嵌合突起58、60が形成されている。嵌合突起58、60は、略円柱状に形成されて、軸方向を車両前後方向として同軸上に配置されると共に、下ケース48からそれぞれ車両前側及び車両後側へ突出されている。また、嵌合突起58、60は、側面視で支持軸42の軸心に対して車両前後方向に対称に形成されている。
【0036】
バイザボディ62は樹脂で製作されている。図4に示すように、このバイザボディ62は、バイザボディ62における車両左下側部を構成する底壁64と、バイザボディ62における車両後側部を構成する縦壁72と、を含んで構成されると共に、全体的に車両前側へ開放されている。
【0037】
図3に示すように、底壁64は、板厚方向を上下方向にして第1ベースカバー18の上側に配置されると共に、図示しないネジ等の締結部材によって下ケース48の下部に締結されている。そして、図5に示すように、底壁64の下面は、被係合片54の下面より若干上側に配置されており、これにより、第1ベースカバー18(ベース12)と底壁64との間の上下方向の隙間(以下、この隙間を「見切り隙」という)が、隙間Gより若干大きく設定されている。したがって、ベース12と見切り隙を形成する部材が1部材で構成されている。
【0038】
図1及び図6に示すように、底壁64には、ベース12の上側の位置において、円形状の挿通孔66が貫通形成されている。この挿通孔66内には下ケース48の環状リブ52が配置されて、スタンド34が底壁64から下側へ突出されている。また、図5及び図6に示すように、挿通孔66の縁部における車両前側の部分(挿通孔66の中心を通過する車両前後方向に沿った線上の部分)には、係合部68が形成されている。この係合部68は、底壁64から上側へ膨出されて、側断面視で略クランク状に形成されている。そして、係合部68の下側にケース44の被係合片54が配置されて、被係合片54と係合部68とが上下方向に係合されている。これにより、底壁64における係合部68の下側(ベース12側)への変形が抑制されるように構成されている。
【0039】
さらに、図1及び図6に示すように、挿通孔66の縁部における車両後側の部分(挿通孔66の中心に対して係合部68とは点対称の位置)には、非干渉部70が形成されている。非干渉部70は、上側から見た平面視で挿通孔66の径方向内側へ開放された凹状に形成されており、被係合片56が非干渉部70に干渉しないように非干渉部70の内側に配置されている。
【0040】
図3に示すように、縦壁72は、板厚方向を車両前後方向として配置されると共に、底壁64の車両後側端部と一体に形成されている。図1に示すように、縦壁72には、車両左側部を除く部分において、開口凹部74が形成されており、開口凹部74は、車両前側へ膨出されて、車両後側へ開放されると共に、車両後側から見て略矩形状に形成されている。この開口凹部74内には、車両後方視認用のミラー96が配置されている。ミラー96は、バイザボディ62に組付けられた角度調節ユニット98によって、角度調節可能に保持されている(図4参照)。これにより、ミラー96が角度調節ユニット98を介して縦壁72に保持されている。
【0041】
また、図4に示すように、縦壁72には、開口凹部74の車両後側部において、一対のボス76が形成されており、ボス76は、円筒状に形成されると共に、縦壁72から車両後側へ突出されている。そして、縦壁72は、ボス76の部位において、ネジ等の締結部材によって電動格納ユニット32のケース44に締結されている。
【0042】
さらに、図1にも示すように、縦壁72には、ケース44と対向する位置において、断面円形状の「嵌合部」としての嵌合孔78が形成されている。嵌合孔78は、車両前側へ開放された有底の凹状に形成されており、嵌合孔78内に下ケース48の嵌合突起58が嵌合されている。ここで、上述したように、嵌合突起58、60は、側面視で支持軸42の軸心に対して車両前後方向に対称に形成されているため、車両の左側に設置された車両用ドアミラー装置10では、嵌合孔78内に下ケース48の嵌合突起60が嵌合されている。
【0043】
また、縦壁72には、嵌合孔78の周囲の位置において、ガイド部80が形成されている。このガイド部80は、車両前側から見た正面視で上側へ開放された略V字形状に形成されると共に、縦壁72から車両前側へ突出されている。このガイド部80の下部はストッパリブ82とされており、ストッパリブ82は嵌合孔78の周方向に沿って円弧状に形成されると共に、ストッパリブ82の内周面と嵌合孔78の内周面とが面一にされている。また、ガイド部80の上部は、一対の「案内壁」としてのガイドリブ84とされており、ガイドリブ84は、ストッパリブ82から上側へ延びると共に、上側へ向かうに従い互いに離間する方向へ傾斜して配置されている。
【0044】
さらに、縦壁72には、嵌合孔78の上側かつ一対のガイドリブ84間において、傾斜面86が形成されている。この傾斜面86は、下側へ向かうに従い車両前側(ケース44側)へ傾斜して配置されている。
【0045】
図2に示すように、バイザカバー88は、樹脂により製作される共に、車両後側へ開放された略楕円半球状に形成されている。このバイザカバー88は、バイザカバー88の上部を構成するバイザ上カバー90と、バイザカバー88の下部を構成するバイザ下カバー94とを含んで構成されている。
【0046】
バイザ上カバー90には、図示しない係合爪が形成されており、この係合爪がバイザボディ62に係合されることにより、バイザ上カバー90がバイザボディ62の車両前上部分を覆うように組付けられている。
【0047】
また、図3に示すように、バイザ上カバー90の開口部には、全周において、外周リブ92が形成されており、外周リブ92はバイザ上カバー90の外周面に対して内側に配置されている。そして、外周リブ92がバイザボディ62の外周縁部の内側に嵌め込まれている。さらに、図5に示すように、外周リブ92におけるバイザボディ62の挿通孔66と対向する部分では、外周リブ92が、バイザボディ62の底壁64と下ケース48のフランジ部50との間に配置されており、バイザ上カバー90の内側への移動が制限されるように構成されている。
【0048】
また、バイザ下カバー94にも、図示しない係合爪が形成されており、この係合爪がバイザボディ62に係合されることにより、バイザ下カバー94がバイザボディ62の車両前下部分を覆うように組付けられている。
【0049】
次に、電動格納ユニット32(ケース44)をバイザボディ62に組付ける際の組付手順を説明しつつ、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0050】
図7に示すように、電動格納ユニット32をバイザボディ62に組付ける際には、電動格納ユニット32を上下方向に対して車両前側へ傾倒させた状態で、下ケース48の被係合片54をバイザボディ62の係合部68の下側へ潜り込ませるように挿入させる。
【0051】
そして、この状態から電動格納ユニット32を上下方向に起立させるように(図7の矢印C方向へ)回動させて、下ケース48の嵌合突起58を一対のガイドリブ84間に挿入させる。これにより、嵌合突起58の先端が縦壁72の傾斜面86に当接される。
【0052】
この状態から電動格納ユニット32を上下方向に起立させるようにさらに回動させると、嵌合突起58の先端が縦壁72の傾斜面86上を下側へ摺動して縦壁72が嵌合突起58に押圧されて、縦壁72が車両後側へ弾性変形する。そして、嵌合突起58の先端が傾斜面86と嵌合孔78との境界部を越えると、嵌合突起58から縦壁72へ作用する押圧力が解除されて、縦壁72が弾性変形する前の位置へ復帰されると共に、嵌合孔78内に嵌合突起58が挿入される。これにより、バイザボディ62に対する電動格納ユニット32の上下方向への移動及び車両幅方向への移動が制限されて、電動格納ユニット32の位置が決められる(電動格納ユニット32が仮組みされる)。また、この際には、バイザボディ62の係合部68の下側にケース44の被係合片54が配置されて、係合部68と被係合片54とが上下方向に係合される。さらに、被係合片56がバイザボディ62の非干渉部70内に配置される。
【0053】
そして、ネジによってバイザボディ62の底壁64と下ケース48の下部とを締結すると共に、バイザボディ62の縦壁72とケース44とを締結させる。これにより、電動格納ユニット32がバイザボディ62に組付けられる。
【0054】
このように、電動格納ユニット32がバイザボディ62に組付けられた際には、バイザボディ62の係合部68の下側にケース44(下ケース48)の被係合片54が配置されて、係合部68と被係合片54とが上下方向に係合される。これにより、バイザボディ62の外観を良好にするために、バイザボディ62の底壁64の厚さを薄くしても、バイザボディ62の挿通孔66周縁の下側への変形が被係合片54によって抑制される。したがって、見切り隙が隙間G以下になることが抑制されて、見切り隙の寸法を安定化できる。
【0055】
また、上述したように、縦壁72には嵌合孔78が形成されており、この嵌合孔78にケース44(下ケース48)の嵌合突起58が嵌合されてケース44(電動格納ユニット32)の移動が制限される。このため、嵌合突起58によって縦壁72を弾性変形させつつ電動格納ユニット32をバイザボディ62に仮組させても、この弾性変形が係合部68と被係合片54との間の係合に直接的に影響しない。これにより、電動格納ユニット32をバイザボディ62に組付ける際の組付性を向上できる。
【0056】
以上により、ベース12(第1ベースカバー18)と見切り隙を形成する部材を1部材にした際の見切り隙の寸法を安定化しつつ電動格納ユニット32(ケース44)のバイザボディ62への組付性を向上できる。
【0057】
また、電動格納ユニット32をバイザボディ62に組付ける際には、電動格納ユニット32を上下方向に対して車両前側へ傾倒させた状態から電動格納ユニット32を上下方向へ起立させる方向に回動させることで、電動格納ユニット32をバイザボディ62に仮組みできる。つまり、被係合片54を係合部68に引掛けた状態で電動格納ユニット32を一方向(図7の矢印C方向)へ回動させることで電動格納ユニット32をバイザボディ62に仮組みできる。このため、従来技術のような電動格納ユニット32を挿通孔66に入れ込んだ後に電動格納ユニット32を回転させて仮組する場合に比して、電動格納ユニット32をバイザボディ62に容易に組付けできる。
【0058】
しかも、バイザボディ62の底壁64と縦壁72とが一体に形成されているため、挿通孔66の縁部における車両後側(縦壁72側)の部分の強度を比較的高くできる。このため、挿通孔66の縁部における車両前側の部分に係合部68を形成することで、底壁64における挿通孔66周縁部の下側への変形を抑制できるため、見切り隙の寸法を効率よく安定化できる。
【0059】
また、縦壁72の嵌合孔78はケース44(電動格納ユニット32)へ開放された凹状に形成されており、下ケース48の嵌合突起58は、下ケース48から縦壁72側へ突出された円柱状に形成されている。そして、縦壁72には、上下方向に延びた一対のガイドリブ84が形成されており、この一対のガイドリブ84の間に嵌合孔78が配置されている。これにより、一対のガイドリブ84の間に嵌合突起58を挿入させることで、ガイドリブ84によって嵌合突起58を嵌合孔78へ案内させることができる。したがって、ケース44(電動格納ユニット32)をバイザボディ62に組付ける際の組付性を一層向上できる。
【0060】
さらに、縦壁72には、嵌合孔78の上側において、傾斜面86が形成されており、傾斜面86は、下側へ向かうに従いケース44(電動格納ユニット32)側へ傾斜されている。このため、ケース44をバイザボディ62に組付ける際には、嵌合突起58が傾斜面86上を摺動して嵌合孔78に嵌合されるため、ケース44をバイザボディ62に組付ける際に縦壁72からケース44に作用する力を徐々に大きくできる。これにより、ケース44をバイザボディ62に組付ける際の組付性をより一層向上できる。
【0061】
また、電動格納ユニット32のケース44には、被係合片54,56が支持軸42の軸心に対して点対称に形成されると共に、嵌合突起58、60が、側面視で支持軸42の軸心に対して車両前後方向に対称に形成されている。さらに、バイザボディ62には、非干渉部70が挿通孔66の中心に対して係合部68と点対称の位置に形成されると共に、嵌合孔78が形成されている。そして、車両の右側に設置された車両用ドアミラー装置10では、被係合片54が係合部68と係合されて、非干渉部70内に被係合片56が配置されると共に、嵌合突起58が嵌合孔78と嵌合される。一方、車両の左側に設置された車両用ドアミラー装置10では、被係合片56が係合部68と係合されて、非干渉部70内に被係合片54が配置されると共に、嵌合突起60が嵌合孔78と嵌合される。したがって、車両の右側及び左側に設置される車両用ドアミラー装置10において、ケース44(電動格納ユニット32)を共用にできる。
【0062】
なお、本実施の形態では、挿通孔66の中心を通過する車両前後方向に沿った線上に係合部68が形成されているが、係合部68を挿通孔66の縁部における車両前半分の部分(図6の斜線で示された部分)に形成してもよい。すなわち、本願の「挿通孔の縁部における縦壁とは反対側の部分」とは、挿通孔66の縁部における挿通孔66の中心に対して車両前側の部分(図6の斜線で示された部分)のことをいう。
【0063】
また、本実施の形態では、係合部68が1箇所形成されているが、係合部68を挿通孔66の縁部における車両前半分の部分(図6の斜線で示された部分)に複数形成してもよい。
【0064】
さらに、本実施の形態では、縦壁72に嵌合孔78が形成されており、ケース44に嵌合突起58が形成されている。これに替えて、ケース44に嵌合孔78を形成して、縦壁72に嵌合突起58を形成してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 車両用ドアミラー装置(車両用アウタミラー装置)
12 ベース
34 スタンド(支持部材)
42 支持軸
44 ケース(回動体)
54 被係合片(被係合部)
56 被係合片(被係合部)
58 嵌合突起(被嵌合部
62 バイザボディ(保持部材)
64 底壁
66 挿通孔
68 係合部
70 非干渉部
72 縦壁
78 嵌合孔(嵌合部)
84 ガイドリブ(案内壁)
86 傾斜面
96 アウタミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7