(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
相互に固定される第1の部材及び第2の部材と、前記第1の部材に設けられた取付孔と、この取付孔に取り付けられたゴム部材と、このゴム部材に形成された軸孔と、この軸孔に取り付けられた円筒部材と、この円筒部材に挿入され、かつ、前記第1の部材と前記第2の部材とを相互に固定する軸部材と、この軸部材に設けられており、かつ、前記第1の部材と前記第2の部材とを相互に固定する際に、前記第2の部材との間に前記ゴム部材及び前記円筒部材が介在される押さえ部材とを有する固定構造であって、
前記ゴム部材は、前記第2の部材と接触する部分、及び前記押さえ部材と接触する部分の少なくとも一方に、前記円筒部材の中心線を中心として円周方向に沿って形成され、かつ、前記中心線に沿った方向の深さを備えた溝を有し、
前記ゴム部材は、前記中心線を中心とする半径方向で前記溝により隔てられた内側部と外側部とを有し、
前記内側部は、前記半径方向で前記外側部よりも内側に位置し、
前記内側部は、前記溝の底部側を基端側とし、かつ、前記溝の開口部側を自由端側として前記中心線に沿った方向に延ばされており、
前記内側部の前記自由端側における前記半径方向の幅が、前記内側部の基端側における前記半径方向の幅以上に設定され、
前記溝は、前記中心線を中心とする同一円周上に複数設けられており、
前記外側部は、前記溝を形成する第1壁面を備え、
前記第1壁面は、前記底部側から前記開口部側に近づくほど前記軸孔から離れる向きに傾斜しており、
前記複数の溝同士の間に、前記内側部と前記外側部とを接続する接続部が設けられており、前記内側部が前記半径方向で外側に弾性変形し易くなっていることを特徴とする固定構造。
【背景技術】
【0002】
従来、第1の部材と第2の部材とを軸部材を用いて固定する固定構造が知られており、その固定構造の一例が特許文献1、特許文献2に記載されている。特許文献1に記載された固定構造は、ワイパフレーム(第1の部材)を車体(第2の部材)に固定するものである。ワイパフレームは、ワイパモータ及びワイパアームが取り付けられた部材であり、ワイパフレームには取付孔が設けられている。この取付孔にはフローティングゴム(ゴム部材)が装着されている。フローティングゴムは、環状部と、環状部から外側に向けて延ばされた2つの鍔部とを備えている。2つの鍔部は共に環状に構成されている。環状部は、ワイパフレームの取付孔に嵌め込まれており、2つの鍔部の間にワイパフレームが位置している。また、環状部内には円筒部材が挿入されている。
【0003】
一方、車体には孔が形成されている。さらに、ワイパフレームを車体パネルに固定するためのボルト(軸部材)及びナットを有する。ボルトの軸部にはワッシャ(押さえ部材)が取り付けられており、その軸部の先端側には雄ねじ部が形成されている。そして、円筒部材内にボルトの軸部を挿入し、かつ、その軸部を孔に挿入して、雄ねじ部にナットを取り付けてボルトを締め付けると、ワッシャと車体との間にフローティングゴム、カラーが介在された状態で、ワイパフレームが車体に固定されるようになっている。このように構成された特許文献1の固定構造は、ワイパフレームの振動成分をフローティングゴムの弾性変形によって減衰することにより、振動が車体に伝達されることを抑制している。
【0004】
特許文献2に記載された固定構造は、ワイパアームを支持するピボット軸と、ピボット軸を支持するホルダ部と、ホルダ部を車体(第2の部材)に取り付ける取付部(第1の部材)とを有している。取付部には取付孔が設けられており、取付孔には防振ゴム(ゴム部材)が取り付けられている。さらに、防振ゴムには筒孔が設けられており、筒孔には円筒部材が挿入されている。さらに、車体には孔が形成されており、孔及び円筒部材に挿入されるボルトを有する。ボルトは頭部及び軸部を有し、軸部には雄ねじ部が形成されている。そして、軸部を孔及び円筒部材に挿入するとともに、ナット(押さえ部材)を雄ねじ部に取り付けて、ボルトを締め付けることにより、取付部が車体に固定されるように構成されている。すなわち、ナットと車体との間に防振ゴム、円筒部材が介在された状態で、取付部が車体に固定される。
【0005】
上記の特許文献1、2に記載された固定構造は、第1の部材の振動をゴム部材の弾性変形によって減衰することにより、振動が第2の部材に伝達されることを抑制している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1、2に記載された固定構造は、軸部材を用いて第1の部材と第2の部材とを固定する際に、軸部材を締め付けたときの圧縮荷重によりゴム部材が弾性変形し、ゴム部材が第2の部材と円筒部材との間、または押さえ部材と円筒部材との間のうち、少なくとも一方に挟まれる問題があった。
【0008】
本発明の目的は、軸部材を用いて第1の部材と第2の部材とを固定する際に、ゴム部材が第2の部材と円筒部材との間、または押さえ部材と円筒部材との間のうち、少なくとも一方に挟まれることを防止することの可能な固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の固定構造は、相互に固定される第1の部材及び第2の部材と、前記第1の部材に設けられた取付孔と、この取付孔に取り付けられたゴム部材と、このゴム部材に形成された軸孔と、この軸孔に取り付けられた円筒部材と、この円筒部材に挿入され、かつ、前記第1の部材と前記第2の部材とを相互に固定する軸部材と、この軸部材に設けられており、かつ、前記第1の部材と前記第2の部材とを相互に固定する際に、前記第2の部材との間に前記ゴム部材及び前記円筒部材が介在される押さえ部材とを有する固定構造であって、前記ゴム部材は、前記第2の部材と接触する部分、及び前記押さえ部材と接触する部分の少なくとも一方に、前記円筒部材の中心線を中心として円周方向に沿って形成され、かつ、前記中心線に沿った方向の深さを備えた溝を有し、前記ゴム部材は、前記中心線を中心とする半径方向で前記溝により隔てられた内側部と外側部とを有し、
前記内側部は、前記半径方向で前記外側部よりも内側に位置し、前記内側部は、前記溝の底部側を基端側とし、かつ、前記溝の開口部側を自由端側として前記中心線に沿った方向に延ばされており、前記内側部の前記自由端側における前記半径方向の幅が、前記内側部の基端側における前記半径方向の幅以上に設定され
、前記溝は、前記中心線を中心とする同一円周上に複数設けられており、前記外側部は、前記溝を形成する第1壁面を備え、前記第1壁面は、前記底部側から前記開口部側に近づくほど前記軸孔から離れる向きに傾斜しており、前記複数の溝同士の間に、前記内側部と前記外側部とを接続する接続部が設けられており、前記内側部が前記半径方向で外側に弾性変形し易くなっていることを特徴とする。
【0011】
本発明の固定構造は、前記内側部
は、前記溝を形成する第2壁面を備え、前記第2壁面は前記中心線と平行であり、
かつ、前記軸孔の内周面は前記中心線と平行であることにより、前記内側部の前記自由端側における前記半径方向の幅が、前記内側部の前記基端側における前記半径方向の幅と同じに設定されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の固定構造は、前記
第2壁面は、前記中心線に対して傾斜しており、前記軸孔の内周面は前記中心線と平行であることにより、前記内側部の前記自由端側における前記半径方向の幅が、前記内側部の基端側における前記半径方向の幅よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発
明の固定構造によれば、軸部材を円筒部材に挿入し、かつ、押さえ部材と第2の部材との間にゴム部材が介在された状態で、第1の部材と第2の部材とを固定するにあたり、ゴム部材に対して中心線に沿った方向の圧縮荷重が加えられると、内側部は、中心線の半径方向で外側部に向けて弾性変形する。したがって、内側部が、第1の部材と押さえ部材との間、または第2の部材と円筒部材との間のうち、少なくとも一方に挟まれることを防止できる。
【0014】
本発
明の固定構造によれば、内側部と外側部とが接続部により接続されているため、内側部が外側部に向けて弾性変形し易い。
【0015】
本発
明の固定構造によれば、内側部が軸孔に向けて弾性変形することを、一層確実に回避できる。
【0016】
本発
明の固定構造によれば、内側部が軸孔に向けて弾性変形することを、さらに確実に回避できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の固定構造は、例えば車両に用いることが可能であり、具体的には、電動モータを取付けたブラケットを、車体に固定する場合に用いることができる。以下、本発明の固定構造の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の固定構造の第1実施形態を
図1〜
図3に示す。
図1〜
図3に示す固定構造10は、車両のワイパ装置(図示せず)を車体パネル11に固定する例である。ワイパ装置は、車両のガラスを払拭するワイパアーム(図示せず)と、ワイパアームを動作させる電動モータ(図示せず)と、電動モータが取付けられたブラケット12とを有する。ブラケット12は金属材料により構成された板状部材である。ブラケット12には、取付孔12aが厚さ方向に貫通して設けられている。車体パネル11には、孔11aが厚さ方向に貫通して設けられている。孔11aの内径は取付孔12aの内径よりも小さい。
【0020】
また、ブラケット12の取付孔12aにはマウントラバー13が取り付けられている。マウントラバー13は、ブラケット12と車体パネル11との間で振動が伝達されることを抑制するために設けられている。マウントラバー13はゴム材料により一体成形された環状体である。マウントラバー13には軸孔13aが貫通して形成されている。軸孔13aは中心線Aを中心として形成されており、軸孔13aの内径は中心線Aに沿った方向で一定に構成されている。また、マウントラバー13の外周面には全周に亘って環状溝13bが形成されている。そして、マウントラバー13の環状溝13bには、ブラケット12における取付孔12aを形成する部分が嵌まり込んで、ブラケット12にマウントラバー13が固定されている。
【0021】
マウントラバー13の軸孔13aには、円筒形状のカラー14が挿入されている。カラー14は金属材料により構成されており、カラー14は、後述するボルトの締め付け量を規制する要素である。マウントラバー13に対して、カラー14の中心線Aに沿った方向の荷重が与えられていない状態、つまり、無負荷状態であるとき、中心線Aに沿った方向におけるマウントラバー13の長さは、中心線Aに沿った方向におけるカラー14の長さを超える値を有している。
【0022】
また、固定構造10は、ブラケット12を車体パネル11に固定するボルト15を有する。ボルト15は、軸部15aと、軸部15aの一端に形成された頭部15bとを有しており、軸部15aの外周面には雄ねじ部15cが形成されている。そして、ボルト15は、中心線Aに沿った方向で頭部15bと車体パネル11との間にマウントラバー13が位置するように、軸部15aがカラー14の内部及び孔11aに挿入されている。また、軸部15aには、金属材料により構成された環状のワッシャ16が取り付けられている。ワッシャ16は、ボルト15とは物理的に別の部材であり、ワッシャ16は、中心線Aに沿った方向でカラー14と頭部15bとの間に位置している。ワッシャ16の外径はカラー14の外径よりも大きく、ワッシャ16の内径はカラーの外径よりも小さい。
図1、
図3においては、ワッシャ16の外径がマウントラバー13の外径と同一である例が示されている。
【0023】
さらに、雄ねじ部15cにはナット17が取り付けられている。ナット17は金属材料により構成されており、ナット17の内周面に雌ねじ部17aが形成されている。ナット17は車体パネル11に溶接固定されていてもよいし、車体パネル11に溶接固定されていなくてもよい。そして、ボルト15を回転させて締め付けることにより、ワッシャ16と車体パネル11との間にマウントラバー13、カラー14が介在された状態で、
図3のようにブラケット12が車体パネル11に固定されている。
【0024】
このように、ブラケット12が車体パネル11に固定された状態で、マウントラバー13は、中心線Aに沿った方向における一方の端部が車体パネル11に接触しており、中心線Aに沿った方向における他方の端部がワッシャ16に接触している。そして、マウントラバー13と車体パネル11との接触部分、またはマウントラバー13とワッシャ16との接触部分のうち、少なくとも一方に、中心線Aを中心とする円周方向に沿った溝18が形成されている。第1実施形態においては、マウントラバー13と車体パネル11との接触部分、及びマウントラバー13とワッシャ16との接触部分の両方に溝18が形成されている。すなわち、中心線Aに沿った方向において、環状溝13bの両側に溝18が配置されている。また、溝18は中心線Aに沿った方向の深さを有している。
【0025】
マウントラバー13は、
図1に示すように環状溝13bを中心として上下対称の形状を有している。このため、便宜上、マウントラバー13と車体パネル11との接触部分に形成された溝18について構造を具体的に説明する。溝18は、中心線Aを取り囲むように同一円周上に複数配置されている。
図1のように、中心線Aを含む断面内において、溝18は、2つの壁面18a,18bを有する楔形状に構成されている。このように、マウントラバー13に溝18が形成されることにより、マウントラバー13には、中心線Aを中心とする半径方向において、溝18により隔てられた内側部13c及び外側部13dが形成されている。中心線Aを中心とする半径方向で、内側部13cは外側部13dよりも内側に位置している。また、内側部13cは、溝18の底部側18eに相当する部分を基端側13fとし、溝18の開口部側18fに相当する部分を自由端側13gとして、中心線Aに沿った方向に延ばされている。ここで、溝18の開口部側18fとは、溝18のうち、車体パネル11に最も近い部分を意味し、溝18の底部側18eとは、溝18のうち、環状溝13bに最も近い部分を意味する。
【0026】
さらに、
図2に示すように、溝18はそれぞれ円弧形状を有しており、中心線Aを中心とする円周方向において、溝18同士の間には接続部13eが設けられている。接続部13eは内側部13cと外側部13dとを接続している。中心線Aを中心とする円周方向において、溝18の長さ、接続部13eの長さ、溝18の数等は任意に設定可能である。
【0027】
すなわち、中心線Aを中心とする円周方向において、複数の溝18同士は、接続部13eを隔てて間欠的に配置されている。また、壁面18a,18bのうち、中心線Aを中心とする半径方向で内側に位置する壁面18aは、中心線Aと平行である。これに対して、壁面18bは中心線Aに対して交差するように傾斜している。具体的には、壁面18bは、車体パネル11に近づくほど、中心線Aから離れる向きに傾斜している。
【0028】
前記のように、軸孔13aの内径は中心線Aに沿った方向で一定であり、かつ、壁面18aは中心線Aと平行である。このため、内側部13cは、中心線Aを中心とする半径方向の幅R1は、中心線Aに沿った方向で一定となっている。すなわち、内側部13cの自由端側13gにおける幅R1と、内側部13cの基端側13fにおける幅R1とは同じである。
【0029】
このように、マウントラバー13は、複数の溝18が形成されていることにより、中心線Aを中心とする半径方向の強度が弱められている。具体的に説明すると、内側部13cは、中心線Aを中心とする半径方向で外側、すなわち、溝18に向けて弾性変形し易くなっている。なお、マウントラバー13とワッシャ16との接触部分にも、溝18が設けられている。すなわち、中心線Aを中心とする半径方向で内側部13c及び外側部13dが設けられている。なお、マウントラバー13とワッシャ16との接触部分に設けた溝18の形状、構造、内側部13c及び外側部13dの形状、構造は、マウントラバー13と車体パネル11との接触部分に設けられた溝18、内側部13c、外側部13dの形状、構造とは上下対称であり、前記説明のうち「車体パネル11」を「ワッシャ16」と読み替えればよい。
【0030】
次に、ボルト15を用いて、ブラケット12を車体パネル11に固定する作業(工程)を説明する。まず、ブラケット12を車体パネル11に固定する前に、マウントラバー13の軸孔13aにカラー14を挿入する。そして、カラー14と車体パネル11の孔11aとを同軸に配置するとともに、ボルト15の軸部15aをカラー14の内部に挿入し、かつ、軸部15aを孔11aに挿入し、ボルト15を回転させて雄ねじ部15cをナット17にねじ込むことで、ボルト15を締め付ける。
【0031】
ここで、マウントラバー13に対して、中心線Aに沿った方向の圧縮荷重が作用していない状態では、カラー14の長さはマウントラバー13の長さよりも短い。これは、ボルト15を締め付けたときにマウントラバー13を弾性変形させて、マウントラバー13をワッシャ16及び車体パネル11の両方に確実に接触させるための構成である。このため、マウントラバー13が弾性変形する前の段階において、マウントラバー13の中心線Aに沿った方向の両端は、車体パネル11及びワッシャ16に接触する。
【0032】
これに対して、中心線Aに沿った方向でカラー14の一端部はワッシャ16に接触するが、中心線Aに沿った方向でカラー14の他端部は車体パネル11には接触しない。そして、ボルト15を締め付けて軸部15aが中心線Aに沿った方向に移動すると、ワッシャ16と車体パネル11とによりマウントラバー13が挟み付けられる。そして、中心線Aに沿った方向でカラー14の一端がワッシャ16に接触し、カラー14の他端が車体パネル11に接触した時点で、ボルト15の締め付けが完了し、ブラケット12が車体パネル11に固定される。
【0033】
上記のようにしてボルト15を締め付ける過程において、マウントラバー13には中心線Aに沿った方向の圧縮荷重が加えられて、マウントラバー13が弾性変形する。そして、マウントラバー13の長さはカラー14の長さよりも長いため、カラー14と車体パネル11との間に、マウントラバー13の内周部分が挟まる可能性がある。しかしながら、第1実施形態においては、マウントラバー13の内側部13cが、中心線Aを中心とする半径方向で外側に向けて弾性変形し易くなっている。
【0034】
このため、内側部13cがカラー14と車体パネル11との間に挟まること、すなわち、噛み込みを防止でき、マウントラバー13の組み付け状態を安定したものとすることができる。したがって、ボルト15の締め付け量不足、ボルト15の締め付けトルク不足、ボルト15の緩み等を回避することができる。また、カラー14とワッシャ16とが接触していない状態でボルト15を締め付けた場合においても、ワッシャ16に接触する部分に設けられた内側部13cが、上記と同様の原理により半径方向で外側に向けて弾性変形する。したがって、内側部13cがカラー14とワッシャ16との間に挟まることを防止できる。また、内側部13cと外側部13dとが接続部13eにより接続されているため、内側部13cが軸孔13a側に弾性変形することを確実に回避できる。
【0035】
また、マウントラバー13に溝18を設け、溝18及び内側部13cの形状、構造を特定することにより、マウントラバー13の内側部13cがカラー14と車体パネル11との間、またはカラー14とワッシャ16との間のうち、少なくとも一方に挟まることを防止できる。したがって、マウントラバー13が挟まれることを防止するために、専用の部品を新たに設ける必要はなく、新たな部品を取り付ける工程も必要はない。さらに、マウントラバー13に溝18を形成することで、内側部13cを弾性変形し易くしているから、ゴム材料を低減させることができる。したがって、マウントラバー13の製造コストを低減することができる。
【0036】
このように、ボルト15を用いてブラケット12が車体パネル11に固定された状態において、電動モータの駆動によりワイパアームが揺動運動する。また、電動モータの駆動により発生する振動は、マウントラバー13が弾性変形して減衰されるため、その振動が車体パネル11に伝達されることを抑制できる。また、マウントラバー13は外側部13dを有し、外側部13dが車体パネル11及びワッシャ16に密着することで接触面積を確保し、中心線Aに対して垂直な平面内で、マウントラバー13と、車体パネル11及びワッシャ16との接触部分に滑りが生じることを抑制できる。さらに、外側部13dがあることで、中心線Aに沿った方向、中心線Aと交差する平面に沿った方向において、マウントラバー13の強度を確保することができ、振動を減衰する機能を維持できる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明における固定構造10の第2実施形態を、
図4に基づいて説明する。固定構造10の第2実施形態は、第1実施形態の固定構造10と比べて溝18の形状、内側部13cの形状、幅R1が異なる。溝18を形成する2つの壁面18c,18dは共に中心線Aに対して傾斜している。具体的には、壁面18cは溝18の内壁面を構成し、壁面18dは溝18の外壁面を構成している。また、壁面18c,18dは、車体パネル11に近づくほど、中心線Aから離れる向きで傾斜したテーパ形状を有する。
【0038】
そして、壁面18cと中心線Aとの成す鋭角側の傾斜角度は、壁面18dと中心線Aとの成す鋭角側の傾斜角度と同じである。すなわち、壁面18cと壁面18dとは平行である。そして、内側部13cの半径方向の幅R1は、車体パネル11に近づくことにともない長くなっている。すなわち、内側部13cの自由端側13gにおける幅R1が、内側部13cの基端側13fにおける幅R1よりも大きい。なお、固定構造10の第2実施形態において、その他の構造、形状、寸法等は、固定構造10の第1実施形態と同じである。
【0039】
上記構成を有する固定構造10の第2実施形態は、ボルト15を締め付ける過程でマウントラバー13に圧縮荷重が加わったときに、内側部13cが溝18に向けて弾性変形する特性を確保することができる。したがって、固定構造10の第1実施形態と同様に、マウントラバー13の内側部13cがカラー14と車体パネル11との間に挟まることを防止できる。また、固定構造10の第2実施形態は、カラー14とワッシャ16とが接触していない状態でボルト15を締め付けた場合においても、上記と同様の作用により内側部13cが溝18に向けて弾性変形する。したがって、固定構造10の第2実施形態は、内側部13cがカラー14とワッシャ16との間に挟まることを防止できる。なお、固定構造10の第2実施形態において、その他の作用効果は固定構造10の第1実施形態と同じである。
【0040】
なお、
図4に示されてはいないが、軸孔13aの内周面のうち、内側部13cに対応する部分を中心線Aに対して傾斜させてもよい。すなわち、軸孔13aの内径のうち、開口部側18fにおける内径を、その他の部位の内径よりも大きくなるように設定することである。このように構成しても、中心線Aと壁面18cとのなす鋭角側の角度が、中心線Aと軸孔13aの内周面とのなす角度よりも大きければ、内側部13cは、溝18の開口部側18fの幅R1が、溝18の底部側18eの幅R1よりも大きくなる。
【0041】
ここで、固定構造10の第1実施形態及び第2実施形態で説明した構成と、本発明の構成との対応関係を説明すると、ブラケット12が、本発明における第1の部材に相当し、車体パネル11が、本発明における第2の部材に相当し、取付孔12aが本発明の取付孔に相当し、マウントラバー13が、本発明のゴム部材に相当し、カラー14が、本発明の円筒部材に相当し、軸孔13aが、本発明の軸孔に相当し、ボルト15が、本発明の軸部材に相当し、ワッシャ16が、本発明の押さえ部材に相当し、壁面18aが、本発明の壁面に相当する。
【0042】
本発明の固定構造は、上記第1実施形態及び第2実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、ナットが車体パネルに溶接固定されていない構成であってもよい。さらに、本発明の固定構造の溝形状においては、環状溝は2重以上であってもよい。また、環状溝は楕円形状や波形状でもよい。この構成により、固定構造の最適形状を設定することができる。さらに、本発明の固定構造は、第2の部材自体に雌ねじ部が設けられており、その雌ねじ部にボルトの雄ねじ部をねじ込むように構成した固定構造、すなわち、ナットを用いずに第1の部材と第2の部材とを固定する固定構造を含む。また、本発明の固定構造は、中心線に沿った方向におけるマウントラバーの両端のうち、少なくとも一方に溝、内側部、外側部等が設けられて、内側部が外側部に向けて半径方向に弾性変形し易くなっていればよい。さらに、本発明の固定構造は、車体パネルにボルトの頭部が接触する一方、ボルトの雄ねじ部にワッシャを介してナットが取付けられ、そのワッシャがマウントラバー、円筒部材に接触するように、ボルトの軸部の挿入方向を逆にしたものを含む。
【0043】
さらに、本発明の固定構造は、
図1、
図3、
図4に示されたワッシャがなく、頭部と一体にワッシャが形成されたボルトを用いて、ブラケットと車体パネルとを固定する構造も含む。この構造では、頭部と一体に形成されたワッシャが、本発明の押さえ部材に相当する。また、本発明の固定構造は、ボルトの両端にそれぞれ雄ねじを形成し、その両端の雄ねじ部にそれぞれナットを取り付けて締め付けて、ブラケットと車体パネルとを固定する構造を含む。さらに、本発明の固定構造は、ボルトが車体に固定された植え込みボルトであり、その植え込みボルトにブラケットを取り付けた後、植え込みボルトに形成されている雄ねじにナットを取り付けて締め付けることにより、ブラケットと車体とを固定する構造を含む。植え込みボルトを用いる固定構造は、植え込みボルトが、本発明の軸部材に相当する。さらに、本発明の固定構造は、ボルト、ナット等を組み合わせて第1の部材と第2の部材とを固定するため、締結構造ということもできる。
【0044】
さらに、本発明の固定構造における軸部材は、第1の部材と第2の部材とを相互に固定する際に、押さえ部材を第2の部材に向けて押して、押さえ部材と第2の部材との間に介在されたゴム部材に、中心線に沿った方向の圧縮荷重を与える要素である。この軸部材は、ボルト、ビス、ねじ等を含む。さらに、本発明の固定構造は、ブラケットに固定される電動モータは、ワイパアームを動作させるものに限らず、車両のルーフに設けられた開口部を開閉するパネルを動作させる電動モータ、車両のドアガラスを上昇・下降させる電動モータ、車両の側部に設けられた開口部を開閉するスライドドアを動作させる電動モータ、電動パワーステアリング用の電動モータ等であってもよい。さらにまた、ブラケットに取り付けられる部品は、電動モータに限らず、ソレノイド、プーリ、ドラム、ギヤ等であってもよい。