(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0010】
図1は、本発明に係る建設機械1の構成例を示す図である。
図1において、建設機械1は、クローラ式の下部走行体2の上に、旋回機構を介して、上部旋回体3を旋回自在に搭載している。また、上部旋回体3は、前方中央部に、ブーム、アーム及びバケット(図示せず)等の掘削アタッチメントを備える。尚、掘削アタッチメントは、ブレーカや破砕機等のような他のアタッチメントであってもよい。
【0011】
図示の例では、建設機械1は、旋回時に上部旋回体3の後部が下部走行体2の後部側で食み出さない超小旋回機である。即ち、建設機械1は、上部旋回体3の後部の出っ張りが小さい超小旋回機である。但し、建設機械1は、必ずしも超小旋回機である必要はなく、任意のタイプの建設機械であってよい。
【0012】
上部旋回体3の後部には、カウンタウエイト70が取り付けられる。カウンタウエイト70は、建設機械1の前部の重量(特にアタッチメントの重量)に対する重量バランスを取るための重量物である(
図3も参照)。図示の例では、カウンタウエイト70は、鋳物で形成される。即ち、カウンタウエイト70は、鋳造により製造される。但し、カウンタウエイト70は、板金等で形成されてもよい。
【0013】
上部旋回体3の後部には、複数のカメラ80,82,84が取り付けられる。尚、各カメラ80,82,84の取り付け構造の詳細については後述する。各カメラ80,82,84は、CCD(charge-coupled device)やCMOS(complementary metal oxide semiconductor)等のような任意の撮像素子を備え、建設機械1の後方の環境画像を取得する。例えば、各カメラ80,82,84は、動作時、リアルタイムに後方環境画像を取得し、NTSC方式等のコンポジット映像信号で合成画像生成装置50(
図2参照)に供給するものであってよい。また、各カメラ80,82,84は、取得した後方環境画像を所定のフレーム周期のストリーム形式で合成画像生成装置50(
図2参照)に供給するものであってもよい。
【0014】
各カメラ80,82,84は、協動して建設機械1の後方の広範囲を撮像できるように配置される。図示の例では、カメラ80は、建設機械1の左後方を撮像するように上部旋回体3の左後方部に配置され、カメラ84は、建設機械1の右後方を撮像するように上部旋回体3の右後方部に配置され、カメラ82は、建設機械1の後方正面を撮像するように上部旋回体3の後方中央部に配置される。尚、各カメラ80,82,84から取得される後方環境画像は、重複部の無いものであってもよいし、重複部を有するものであってもよい。尚、各カメラ80,82,84のレンズ等の詳細は任意であり、例えば広角レンズ(魚眼レンズ)を備えてもよい。
【0015】
図2は、合成画像生成に関連した主要構成の一例を示す図である。
【0016】
各カメラ80,82,84により取得される後方環境画像は、合成画像生成装置50により合成され、キャビン内に設けられるディスプレイ52に出力される。
【0017】
合成画像生成装置50は、画像処理機能を備える。合成画像生成装置50は、各カメラ80,82,84により取得される後方環境画像を単に合成することで表示画像を生成してもよいし、所定の加工処理を行った上で合成して表示画像を生成してもよい。後者の場合、例えば、合成画像生成装置50は、各カメラ80,82,84により取得される後方環境画像に対して視点変換処理を行って例えば鳥瞰表示(俯瞰画像)を生成してもよい。また、各カメラ80,82,84から取得される後方環境画像が重複部を有する場合、合成画像生成装置50は、各後方環境画像の重複部を処理してシームレスな合成画像を生成してもよい。尚、合成画像の生成方法や出力方法は、例えば特許文献1に開示される態様であってもよい。
【0018】
ディスプレイ52は、液晶ディスプレイ等の任意の表示装置であってよい。また、合成画像生成装置50の機能の一部又は全部は、ディスプレイ52内に内蔵されうる処理装置により実現されてもよい。ディスプレイ52には、上述の如く、各カメラ80,82,84により取得される後方環境画像が合成されて表示される。これにより、ユーザ(オペレータ)は、ディスプレイ52上の表示を見ることで、建設機械1の後方の環境情報を得ることができる。
【0019】
図3は、カウンタウエイト70の単品状態を示す斜視図である。尚、
図3では、カウンタウエイト70の周辺部品の絵が二点鎖線で示されている。カウンタウエイト70には、
図3に示すように、ボルト孔72が形成される。
図3に示す例では、ボルト孔72は、カウンタウエイト70の上面の左右の各端部と、カウンタウエイト70の上面の中央部とにそれぞれ形成され、計3つである。ボルト孔72は、カウンタウエイト70を吊るためのアイボルトの締結孔として機能する。即ち、カウンタウエイト70の取り外し時、カウンタウエイト70を上方に吊る際、アイボルトが各ボルト孔72に螺着される。各アイボルトには、フックが引っ掛けられ、フックを引き上げることにより、カウンタウエイト70が吊り上げられる。
【0020】
図4は、各カメラ80,82,84を上部旋回体3の後部に取り付けるためのブラケット100の一例(実施例1)を示す斜視図である。
図5は、
図4に示すブラケット100における中央のカメラ82の取り付け部分を示す斜視図である。
【0021】
ブラケット100は、各カメラ80,82,84を互いに位置決めされた状態で保持する。図示の例では、ブラケット100は、左後方のカメラ80が固定される左ブラケット部材102と、中央のカメラ82が固定される中央
ブラケット部材104と、右後方のカメラ84が固定される右ブラケット部材106と、左ブラケット部材102及び中央
ブラケット部材104を連結する左連結部材108と、右ブラケット部材106及び中央
ブラケット部材104を連結する右連結部材110とを含む。
【0022】
左ブラケット部材102、中央部ラケット部材104、右ブラケット部材106、左連結部材108及び右連結部材110は、互いに一体となり、1つのブラケット100を構成している。左ブラケット部材102、中央部ラケット部材104、右ブラケット部材106、左連結部材108及び右連結部材110は、任意の態様で一体化されてよい。例えば、左ブラケット部材102、中央部ラケット部材104、右ブラケット部材106、左連結部材108及び右連結部材110は、溶接やボルト締結等により一体化されてよい。一体化は、好ましくは、これらの各部材104乃至110の正規の位置関係のずれが生じない態様で実現される。例えば、ボルト締結であれば、各部材間で回転自由度(回転変位)が生じないように、各部材間で2箇所以上にて実施される。尚、左連結部材108及び右連結部材110は、同一の部材により実現されてもよい。例えば、左連結部材108及び右連結部材110は、上部旋回体3の後部の左端から右端まで延在する長尺の部材であり、その各端部にそれぞれ左ブラケット部材102及び右ブラケット部材106が固定され、その中央部に中央部ラケット部材104が固定されてもよい。
【0023】
左ブラケット部材102、中央部ラケット部材104、右ブラケット部材106、左連結部材108及び右連結部材110は、典型的には、板金により形成される。尚、左連結部材108及び右連結部材110は、パイプ状の部材により形成されてもよい。
【0024】
左ブラケット部材102、中央部ラケット部材104及び右ブラケット部材106への各カメラ80,82,84の固定方法は任意であるが、典型的には、ネジ等により固定される。この際、カメラ80は、左ブラケット部材102に対して位置決めされる態様で固定され(例えば、回転自由度が生じないように少なくとも2点以上で固定され)、同様に、カメラ82及び84は、中央部ラケット部材104及び右ブラケット部材106のそれぞれに対して位置決めされる態様で固定される。
【0025】
ブラケット100は、各カメラ80,82,84が取り付けられた状態(即ちサブアセンブリ状態)で、カウンタウエイト70のボルト孔72にボルト60により締結される。図示の例では、ボルト60による締結部は、3箇所のボルト孔72に対応して3箇所であり、左ブラケット部材102、中央部ラケット部材104及び右ブラケット部材106のそれぞれに設けられる(中央部ラケット部材104については
図5参照)。このようにして、図示の例では、ブラケット100は、カウンタウエイト70に対して3箇所でボルト締結されることで、カウンタウエイト70に対して位置ずれ不能な態様(特に回転変位不能な態様)で、カウンタウエイト70に固定される。
【0026】
ここで、比較例と対比して本実施例の効果を説明する。
【0027】
図6は、比較例による複数のブラケット202,204,206を示す図である。この比較例では、各カメラ80,82,84がそれぞれ別個独立のブラケット202,204,206にてカウンタウエイト70のボルト孔72にボルト60により締結される。かかる比較例では、ブラケット202,204,206は、それぞれ、各カメラ80,82,84が取り付けられた状態で、カウンタウエイト70のボルト孔72にボルト60により締結されるが、その締結の際、ブラケット202,204,206間の位置関係にずれが生じやすい。即ち、各ブラケット202,204,206は、それぞれ、一本のボルト60により締結されるので、回転方向でずれが生じやすくなる。
【0028】
これに対して、本実施例では、単体のブラケット100は、各カメラ80,82,84が取り付けられた状態で、カウンタウエイト70に締結される。ここで、各カメラ80,82,84が左ブラケット部材102、中央部ラケット部材104及び右ブラケット部材106のそれぞれに対して位置決めされる態様で固定されたサブアセンブリ状態が形成されると、以後は(特にカウンタウエイト70への取り付けの際)、各カメラ80,82,84の位置関係には、ずれが実質的に生じない。即ち、ブラケット100における各カメラ80,82,84の位置関係は、ブラケット100に各カメラ80,82,84が取り付けられた状態でブラケット100をカウンタウエイト70に固定する際等において、実質的に変化することはない。
【0029】
このようにして、本実施例によれば、各カメラ80,82,84の位置関係のずれの発生を適切に防止することができる。これにより、各カメラ80,82,84の位置関係のずれを補償又は直すための各カメラ80,82,84の位置調整作業等を不要又は簡素化することができると共に、各カメラ80,82,84の位置関係のずれに起因して意図しない合成表示が生成されてしまうという問題点を解消することができる。
【0030】
また、カウンタウエイト70が鋳物で構成されている場合には、カウンタウエイト70に取り付け座等を溶接等で追加することが困難であるが、本実施例によれば、カウンタウエイト70が鋳物で構成されている場合であっても、元来存在するカウンタウエイト70のボルト孔72を利用して、ブラケット100を確実に固定することができる。また、元来存在するカウンタウエイト70のボルト孔72を利用することで、カウンタウエイト70に追加の専用のボルト孔を設ける必要がなくなる。また、元来存在するカウンタウエイト70のボルト孔72を利用することで、各カメラ80,82,84の後付けも可能となる。
【0031】
尚、上述した実施例1では、ブラケット100は、5つの主要部材(即ち左ブラケット部材102、中央部ラケット部材104、右ブラケット部材106、左連結部材108及び右連結部材110)を一体化して構成されているが、5つよりも多くの部材を一体化してブラケットを構成してもよい。即ち、左ブラケット部材102、中央部ラケット部材104及び右ブラケット部材106は、それぞれ、単一の部材から構成される必要は無く、複数の部材から構成されてもよい。
【0032】
図7は、カメラ80,82,84を上部旋回体3の後部に取り付けるための他の一例(実施例2)によるブラケット300を示す斜視図である。
【0033】
本実施例のブラケット300は、
図4に示した実施例1によるブラケット100における左ブラケット部材102、中央部ラケット部材104、右ブラケット部材106、左連結部材108及び右連結部材110が一部材で構成されている点が、主に異なる。即ち、ブラケット300は、ブラケット本体部302を備え、ブラケット本体部302には、各カメラ80,82,84が取り付けられる。ブラケット本体部302は、各カメラ80,82,84が取り付けられた状態(即ちサブアセンブリ状態)で、カウンタウエイト70のボルト孔72にボルト60により締結される。図示の例では、ボルト60による締結部は、3箇所のボルト孔72に対応して3箇所あり、ブラケット本体部302に全て設定される。尚、図示の例では、ブラケット本体部302は、各カメラ80,82,84の取り付け部を略直線的に繋ぐ外形を有しているが、ブラケット本体部302は、各カメラ80,82,84の取り付け部を提供する限り、任意の形状を有してよく、例えば重量低減や歩留まりを高める観点から孔や切欠きを有してもよい。
【0034】
本実施例2によっても上述した実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例2によれば、上述した実施例1に比べて、サイズが大きくなりうるものの、各部材(左ブラケット部材102、中央部ラケット部材104、右ブラケット部材106、左連結部材108及び右連結部材110)を結合する際の組み付け公差の影響が無く、サブアセンブリ状態前の各カメラ80,82,84の位置関係のずれ要因を少なくすることができる。
【0035】
尚、上述した実施例1と実施例2の中間的な実施例も可能である。即ち、
図4に示した実施例1によるブラケット100における左ブラケット部材102、中央部ラケット部材104、右ブラケット部材106、左連結部材108及び右連結部材110のうちの2つ以上の部材を一部材で構成してもよい。例えば、実施例1によるブラケット100における中央部ラケット部材104、左連結部材108及び右連結部材110を一部材で構成してもよい。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0037】
例えば、上述した実施例では、各カメラ80,82,84は、ブラケット100又は300を介してカウンタウエイト70に固定されているが、各カメラ80,82,84は、ブラケット100又は300を介して、上部旋回体3に固定される他の部材(カウンタウエイト70以外の部材)、又は、上部旋回体3の任意の部位に固定されてもよい。
【0038】
また、上述した実施例では、カウンタウエイト70のボルト孔72は、カウンタウエイト70を吊るためのアイボルトの締結孔と共用であるが、カウンタウエイト70のボルト孔72は、カウンタウエイト70を吊るためのアイボルトの締結孔と共用でない専用の孔であってもよい。また、ブラケット100又は300は、カウンタウエイト70を吊るためのアイボルトの締結孔と、専用の孔との組み合わせを利用して、カウンタウエイト70に固定されてもよい。
【0039】
また、上述した実施例では、一例として、ブラケット100又は300は、カウンタウエイト70に3箇所で締結されているが、2箇所又は4箇所以上で締結されてもよい。
【0040】
また、上述した実施例では、一例として、3つのカメラ80,82,84が使用されているが、カメラは、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、搭載位置についても任意であり、カメラは、上部旋回体3の後部以外に搭載されてもよい。即ち、建設機械1の側方や前方等の任意の周辺環境を撮像するカメラが使用されてもよい。