特許第5792134号(P5792134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792134
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】浮体構造物
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/34 20060101AFI20150917BHJP
   B63B 35/38 20060101ALI20150917BHJP
   B63B 21/26 20060101ALI20150917BHJP
   E02B 3/06 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   B63B35/34 B
   B63B35/38 B
   B63B21/26
   E02B3/06 302
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-190483(P2012-190483)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-46762(P2014-46762A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100099128
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(72)【発明者】
【氏名】上山 啓太
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 実公平07−046630(JP,Y2)
【文献】 特開平09−111734(JP,A)
【文献】 特開2009−248792(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0040488(US,A1)
【文献】 特開昭61−162618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/34
B63B 21/26
B63B 35/38
E02B 3/06
E02B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカーによって浮上しないように固定された主構造体と、該主構造体から水深方向に延設した柱状の副構造体と、該副構造体内に配置した発泡樹脂製ブロック群とを少なくとも備えた浮体構造物であり、
前記副構造体の下端面は底床版により上端面は上床版により閉鎖されており、前記副構造体内に配置された発泡樹脂製ブロック群圧縮強度は、上端面近傍側よりも下端面近傍側が大きくなるように発泡樹脂製ブロックが配置されていることを特徴とする浮体構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の該発泡樹脂製ブロック群は、圧縮強度の異なる発泡樹脂製ブロックから構成され、前記上端面近傍側の発泡樹脂製ブロックと該下端面近傍側の発泡樹脂製ブロックとの間には、前記上端面近傍側に配置された発泡樹脂製ブロックよりも圧縮強度が大きく、かつ、前記下端面近傍側に配置された発泡樹脂製ブロックよりも圧縮強度が小さい発泡樹脂製ブロックが配置されていることを特徴とする浮体構造物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の該発泡樹脂製ブロック群は、圧縮強度の異なる発泡樹脂製ブロックを積み重ねており、水深方向の深くなる方向に、圧縮強度の大きな発泡樹脂製ブロックが配置されていることを特徴とする浮体構造物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の浮体構造物であって、前記副構造体は発泡樹脂製ブロック群を保護するための外殻を備え、該外殻は水深方向に強度が一定であるかまたは水深方向に強度が次第に大きくなることを特徴とする浮体構造物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の浮体構造物であって、前記副構造体は水深方向の適所に少なくとも1枚の中床版を備えることを特徴とする浮体構造物。
【請求項6】
請求項に記載の浮体構造物であって、前記中床版は、該中床版の裏面側に作用する浮力に起因する応力によって上方に湾曲した姿勢を取ることのできる強度を備えた薄板で構成されていることを特徴とする浮体構造物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の浮体構造物であって、前記発泡樹脂製ブロックの全部または一部は水平断面が六角形状をなす柱状体で構成されていることを特徴とする浮体構造物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の浮体構造物であって、前記発泡樹脂製ブロック群を構成する少なくとも上下方向で隣接する発泡樹脂製ブロック同士は、返し片を備えた固定具によって連結固定されていることを特徴とする浮体構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
上部に機器あるいは装置などの重量の大きな載荷物を載荷させた状態で水に浮くことができるようにした浮体構造物は知られている。そのような浮体構造物は、一般に、特許文献1に記載されるように、一般に上部工と呼ばれている載荷物支持体としての主構造体と、該主構造体から水深方向に延設して設けられる副構造体とを備えており、該副構造体内に芯材として発泡樹脂製ブロックを配置することで、副構造体が破損したときに副構造体内に海水が浸入するのを防止し、浮沈化構造物としている。
【0003】
浮きプラットホームのような浮体構造物も知られており、特許文献2に記載される浮きプラットホームは、下部に開口部を有する箱体型に形成された鋼製の浮きプラットホーム本体の内部に、所定形状に形成された多数個の熱可塑性樹脂発泡ブロックを密着嵌合して組み合わせたブロック塊が配置された構成を備えている。
【0004】
鋼材からなる骨格体と該骨格体を外側から覆う外壁材とで構成される浮体構造物も知られている。特許文献3には、そのような浮体構造物であって、浮体構造物内の所要高さにまで発泡樹脂製ブロックを配置し固定したもの記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−308181号公報
【特許文献2】特開平10−67378号公報
【特許文献3】特開2007−262809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、浮体構造物の上に風車を備えて、海上に風力発電装置を構築するというような提案もなされており、かつ実現化しようとしている。そのために、従来よりも大きな荷重を支えることができ、平面積も広くされた浮体構造物に対する要望が高まっている。
【0007】
海上に規模の大きな浮体構造物を設置する場合には、風車などである作業機器が載置される主構造体(上部工、プラットホーム等)の全体が、海水面から所要距離だけ浮上した位置で停止していることが、波による被害を回避するために必要となる。また、波による衝撃を緩和するために波を拡散させる必要があり、そのために、浮体部分である副構造体は、主構造体から水深方向に延設する複数本の柱状体で構成されることが求められる。また、所要の浮力を得るために、浮体部分を構成する副構造体は水深方向に長さの長いものとならざるを得ず、副構造体内に配置される発泡樹脂製ブロックの重さも考慮すると、浮体部分の重量は大きなものとなり、その重量は浮体構造物全体としても無視できないものとなる。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、浮体構造物において、載荷物を支持した主構造体に所要の浮力を与えるために、水深方向に長さの長い柱状の副構造体(柱状体)を備えることが必要となる場合であっても、その副構造体自体の重量を軽量化することができ、結果として、浮体構造物全体の重量も軽量化することのできる浮体構造物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明による浮体構造物は、アンカーによって浮上しないように固定された主構造体と、該主構造体から水深方向に延設した柱状の副構造体と、該副構造体内に配置した発泡樹脂製ブロック群とを少なくとも備えた浮体構造物であって、前記副構造体の下端面は底床版により上端面は上床版により閉鎖されており、前記副構造体内に配置された発泡樹脂製ブロック群は圧縮強度の異なる発泡樹脂製ブロックの集合体で構成されており、該圧縮強度の異なる発泡樹脂製ブロックは水深の深くなる方向に次第に圧縮強度が大きくなるように配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明による浮体構造物では、柱状の副構造体内に配置された芯材としての発泡樹脂製ブロック群が水中に位置することで、主構造体に浮力が生じさせる。そして、発泡樹脂製ブロック群を構成する発泡樹脂製ブロックは、水深が深くなる方向に次第に圧縮強度が大きくなるようにされている。すなわち、最も深い所に位置する発泡樹脂製ブロックは最も圧縮強度が大きいものとされ、水深が浅くなるにつれて、連続的にまたは段階的に、圧縮強度の小さいものとされる。発泡樹脂製ブロックにおいて、重量と圧縮強度とはほぼ比例しており、芯材としての発泡樹脂製ブロックのすべてを、最も水深の深い箇所での水圧および浮力に耐えるだけの圧縮強度を備えた発泡樹脂製ブロックで構成する場合と比較して、副構造体全体の重量を軽減することができる。また、水深に応じて圧縮強度の異なる発泡樹脂製ブロックを配置することで、水圧によって発泡樹脂製ブロックが破壊するのも回避できる。
【0011】
本発明による浮体構造物において、前記副構造体が底床版に作用する浮力に耐えられる構造であることは必要であるが、水深に応じた水圧に耐える構造であることは必ずしも必要でない。本発明による浮体構造物では、前記のように、水深の深くなる方向に次第に圧縮強度が大きくなるようにして配置した圧縮強度の異なる発泡樹脂製ブロックによって、水深に応じた水圧の全部または一部を受けるようにしたことで、副構造体の構成を軽量化することが可能となる。
【0012】
本発明による浮体構造物において、前記副構造体は発泡樹脂製ブロック群を保護するための外殻を備えていてもよく、備えていなくてもよい。備える場合に、外殻は水深方向に強度が一定のものでもよく、水深方向に強度が次第に大きくなる外殻であってもよい。
【0013】
本発明による浮体構造物において、副構造体に水圧に対する構造材としての機能を全く持たせないようにすることもできる。すなわち、最も深い所に位置する発泡樹脂製ブロックが、そこに作用する水圧によって圧壊しないだけの高い圧縮強度を持つものである場合には、副構造体は単に発泡樹脂製ブロック群を群として保持しておくだけの機能を備えればよい。例えば、周囲の複数本の支柱と透水性を備えた網様体のようなもので構成される副構造体であってもよい。それにより、副構造体の大幅な軽量化が可能となる。
【0014】
本発明による浮体構造物の他の態様において、前記副構造体は水深方向の適所に少なくとも1枚の中床版を備えていることを特徴とする。この態様では、各中床版には当該中床版が位置する水深での浮力が作用することとなる。そのために、副構造体の浮力に対する構造をより簡素化することができる。また、中床版の上位に位置する発泡樹脂製ブロックは、当該中床版が位置する水深での水圧に耐える強度を備えたものであればよく、発泡樹脂製ブロック群の軽量化が可能となる。中床版は1枚でもよく、2枚以上の中床版を水深方向に形成してもよい。
【0015】
中床版を備える形態の浮体構造物において、中床版は、当該中床版の裏面側に作用する浮力に起因する上向きの応力によって、上方に湾曲した姿勢を取ることのできる強度を備えた薄板で構成されていることは好ましい。この形態では、上向きの応力を吸収しやすくなり、中床版の破損防止と速やかな応力分散とが可能となる。
【0016】
上記したいずれの態様の浮体構造物においても、発泡樹脂製ブロックの形状に制限はなく、発泡樹脂製ブロック群としたときに、互いに密接した状態を取ることができる形状であれば、任意である。直方体状の発泡樹脂製ブロックを面方向に位置をずらしながら適数段だけ積み上げることで発泡樹脂製ブロック群としてもよい。
【0017】
好ましい一つの態様では、前記発泡樹脂製ブロックの全部または一部は水平断面が六角形状をなす柱状体で構成されていることを特徴とする。この形態の発泡樹脂製ブロックを組み付けて構成した発泡樹脂製ブロック群は、発泡樹脂製ブロック群全体を適宜のシートで覆うことで、波等の衝撃を受けても、衝撃に対する応力分散が円滑となり、容易には分解しない発泡樹脂製ブロック群を得ることができる。また、各発泡樹脂製ブロック同士の接合面内に海水が浸入することで、浮力が低下するのも確実に阻止することができる。
【0018】
本発明による浮体構造物の一態様では、前記発泡樹脂製ブロック群を構成する少なくとも上下方向で隣接する発泡樹脂製ブロック同士は、返し片を備えた固定具によって連結固定されていることを特徴とする。
【0019】
海水中に設置される浮体構造物は、波の影響を受けて前記副構造体およびそこに配置された発泡樹脂製ブロック群には、不規則な応力が作用するのを避けられない。予期せぬ海水の乱れにより、発泡樹脂製ブロック群が分解してしまうような応力が作用するとも起こり得る。上記の返し片を備えた固定具によって互いに隣接する発泡樹脂製ブロック同士を固定しておくことにより、分離分解する危険を効果的に回避することができる。
【0020】
本発明による浮体構造物の上に載置する物品に制限はなく、任意のものを載置することができる。例えば、風車および風車による発電装置を載置して風力海上発電施設とすることもでき、太陽電池パネルと蓄電施設を配置した太陽光海上発電施設とすることもできる。牧草を成長させながら家畜などを飼育して海上牧場とすることもでき、魚の養殖場と加工場を配置して海上魚市場とすることもできる。これらは、諸施設の設置場となる主構造体から、水深方向に長さの長い柱状の副構造体を延設し、そこに発泡樹脂製ブロック群を配置することで、面積の大きい主構造体の全体を海水面から所要距離だけ浮上した位置で停止させておくことができ、かつ、波による衝撃も効果的に分散して低減できることから、可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、浮体構造物において、載荷物を支持した主構造体に所要の浮力を与えるために、水深方向に長さの長い柱状の副構造体(柱状体)を備えることが必要となる場合であっても、その副構造体自体の重量を軽量化した状態でこれを構築することが可能となる。結果として、浮体構造物全体の重量も軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による浮体構造物の一例を示す斜視図。
図2】(a)は図1に示す浮体構造物における副構造体とそこに配置した発泡樹脂製ブロック群の一例(第1の実施の形態)を示す断面図、(b)は発泡樹脂製ブロックの配置状態の一例を示す斜視図。
図3図1に示す浮体構造物における副構造体とそこに配置した発泡樹脂製ブロック群の他の例(第2の実施の形態)を示す断面図。
図4図1に示す浮体構造物における副構造体とそこに配置した発泡樹脂製ブロック群のさらに他の例(第3の実施の形態)を示す断面図。
図5】本発明による浮体構造物で用いる副構造体の他の例を示す斜視図。
図6】発泡樹脂製ブロック群の他の例を示す斜視図。
図7】発泡樹脂製ブロック同士を固定するのに用いる固定具の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明による浮体構造物の実施の形態を説明する。図1は、本発明による浮体構造物の一例を示す斜視図である。
【0024】
浮体構造物Aは、主構造体10と副構造体20とを備える。主構造体10は、浮体構造物Aに設けられる機器あるいは装置(不図示)を載置するための基台として機能するものであり、トラス筋などである鉄筋11の組み合わせ等により、所要の強度を持つように作られる。主構造体10の平面視形状は、構築しようとする水上施設の全体設計に応じて定められるが、図示の例では、ほぼ正六角形とされている。主構造体10は図示しないアンカーによって浮上しないように水中(海中)に固定される。
【0025】
副構造体20は、前記主構造体10から水深方向に延設した柱状体であり、内部に軽量材である発泡樹脂製ブロック30を配置することで、浮体構造物Aに浮力を生じさせる。この例では、前記平面視六角例をなす主構造体10の各角部に、6本の副構造体20が固定されているが、副構造体20の数は、所要の浮力が得られることを条件に、任意であり、1本の副構造体20であってもよい。
【0026】
各副構造体20の水平断面形状は任意であり、構築しようとする水上施設の全体構成や設置される水域の環境などを考慮して適宜設定される。材料としては、プレキャストコンクリート、繊維強化樹脂板あるいは鋼板などが好適に用いられる。副構造体20が円筒体であることは、波などから受ける衝撃力を分散でき、荷重の集中箇所を生じさせないことから、好ましい。しかし、角柱体や楕円柱体などであってもよい。
【0027】
この例において、副構造体20はプレキャストコンクリート製である円筒体の外殻21を備え、外殻21の下端面は底床版22(図2参照)により、上端面は上床版23により閉鎖されている。なお、上床版23は、副構造体20ごとにそれぞれ配置されてもよく、主構造体10である上部工の一部が複数個のあるいはすべての副構造体20の上床版23を兼ねるようにしてもよい。
【0028】
図1に示す例において、各副構造体20は、水深方向の複数の箇所(図では4箇所)で補助構造体15によって支持されており、構造体全体としての安定性を確保している。補助構造体15は、予測される水流あるいは海流の力によって各副構造体20が不規則に揺動したり分解するのを規制できるだけの強度を備えていればよく、鋼材を適宜組み合わせて作ることができる。
【0029】
[副構造体20の第1の実施の形態]
次に、図2を参照して、前記副構造体20およびその内部に配置する発泡樹脂製ブロック30の第1の実施の形態を具体的な数値を参照しながら説明する。図2(a)は、副構造体20の1つを縦方向の断面で示している。この例において、浮体構造物Aは、上面に載置物(不図示)を設置した状態の主構造体10が、水面Lから2mの高さに位置できるように設計されており、それに必要な浮力が得られるように、副構造体20の長さおよびその内部に配置する発泡樹脂製ブロック30の圧縮強度が選定される。
【0030】
図2に示す例において、各副構造体20の水深方向の長さは17mであり、15mが水中に入り込んでいる。そして、水面Lから水深1.5mの位置では水面Lの高さ変動(有義波高)も考慮して約2tf/mの水圧が、水深3mの位置では約3.5tf/mの水圧が、最大で作用するものとする。以下、水深5m位置では約5tf/m、水深7m位置では約7tf/m、水深9m位置では約9tf/m、水深11m位置では約11tf/m、水深13m位置では約13tf/m、水深15m位置では約15tf/mの水圧が作用し、副構造体20の底面を閉鎖する底床版22には15tf/mの浮力が作用する。底床版22はその浮力と水圧に耐えられる構造を備えるようにされている。
【0031】
また、外殻21は、最深部での水圧、すなわち水深15mで作用する15tf/mの水圧に耐える強度に全体が作られており、その内部に、心材として、異なる圧縮強度(密度)を持つ発泡樹脂製ブロック30が、水深が深くなる方向に次第に圧縮強度が大きくなるようにして配置されている。主構造体10である上部工には15tf/mの浮力が作用している。なお、表1は、発泡樹脂製ブロックが発泡ポリスチレンである場合での物性表であり、密度(kg/m)と圧縮強度(tf/m)の関係を示している。そして、グレードとして積水化成品工業社製「商品名:エスレンブロック、品種:D−12〜D−45」の符号を付している。
【0032】
【表1】
【0033】
密度の測定は「JIS K 7222:2005 発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」に準拠して行った。
【0034】
圧縮強度の測定は「JIS K 7220:2006 硬質発泡プラスチック−圧縮特性の求め方」に規定する試験法で行った。試験片の寸法は50×50×50mmとし、圧縮速度は試験片厚の10%/minとした。圧縮強度は、圧縮弾性領域における圧縮比例限すなわち、圧縮弾性限界ひずみに対応する圧縮応力とした。繰り返し荷重に対して弾性的挙動を示す領域は、圧縮ひずみ1%程度以下であり、圧縮比例限と一致している。
【0035】
具体的には、図2(a)に示すように、水面上2.0m〜水面下1.5mまでは、圧縮強度が2.0tf/mであるD−12の発泡ポリスチレンブロックが充填されており、水面下1.5m〜3mまでは、圧縮強度が3.5tf/mであるD−16の発泡ポリスチレンブロックが充填されている。従って、水面下3.5mまでの間で外殻21に破損等が生じそこから海水が浸入しようとしても、その水圧によって発泡ポリスチレンブロックに圧縮変形が生じることはなく、海水が副構造体20内に侵入するのは阻止される。
【0036】
以下、水面下3m〜5mまでは、圧縮強度が5.0tf/mであるD−20の発泡ポリスチレンブロックが、水面下5m〜7mまでは、圧縮強度が7.0tf/mであるD−25の発泡ポリスチレンブロックが、水面下7m〜9mまでは、圧縮強度が9.0tf/mであるD−30の発泡ポリスチレンブロックが、水面下9m〜11mまでは、圧縮強度が11.0tf/mであるD−35の発泡ポリスチレンブロックが、水面下11m〜13mまでは、圧縮強度が13.0tf/mであるD−40の発泡ポリスチレンブロックが、さらに、水面下13m〜15mまでは、圧縮強度が15.0tf/mであるD−45の発泡ポリスチレンブロックが、それぞれ充填されており、それぞれの水深箇所で外殻21に破損等が生じそこから海水が浸入しようとしても、その水深での水圧によって配置された発泡ポリスチレンブロックに圧縮変形が生じることはない。それにより、海水が副構造体20内に侵入するのは阻止される。
【0037】
図2に示す形態では、外殻21内に充填する発泡ポリスチレンブロック30として、最も圧縮強度が高いブロック(D−45)を外殻21内の全部に充填する場合と比較して、副構造体20の全体重量を軽減することができると共に、上記したように、万が一、外殻21に破損が生じた場合でも、海水の侵入によって設計した浮力が発生しなくなるのを確実に阻止することが可能となり、不沈化構造物としての安定性の高い浮体構造物Aが得られる。
【0038】
なお、副構造体20における水面Lから主構造体10までの2mの領域にも圧縮強度が2.0tf/mであるD−12の発泡ポリスチレンブロックを充填することで、有義波高に対する強度と浮力も確保している。
【0039】
また、上記の例では、発泡樹脂製ブロック30として発泡ポリスチレン系樹脂ブロックを用いることとしたが、これに限らず、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等の独立気泡率が高い発泡樹脂製のブロックを用いることもできる。
【0040】
発泡樹脂ブロックの形状にも特に制限はなく、前記した副構造体20内に、隙間に水が入り込む空間が形成されないようにして所要の容積分だけ組み付けことができる形状のものであればよい。図2(a)に示した例では、直方体状の発泡樹脂ブロック30(高さ50cm)を面方向に位置をずらしながら多段に積み上げることで発泡樹脂ブロック群を形成している。この場合、副構造体20を構成する外殻21との間には隙間が形成されるので、図2(b)に示すように、直方体状の発泡樹脂ブロック30を適宜の形状と大きさに裁断して、その隙間を埋めることが望ましい。
【0041】
なお、上記第1の実施の形態である副構造体20では、底床版22に水深15mでの浮力に耐えるだけの構造材としての機能を持たせることは必須の構成となる。もし、底床版22がそれだけの構造材としての機能を備えないと、浮力が上位のより圧縮強度の小さい発泡樹脂製ブロックに直接作用して、発泡樹脂製ブロックを破壊することとなるからである。
【0042】
[副構造体20の第2の実施の形態]
次に、副構造体20の第2の実施の形態について、図2に対応する図である図3を参照して説明する。この副構造体20Aは、水深方向の中間位置に少なくとも1枚(図示の例では4枚)の中床版40を備える点、および外殻21aの構成において、図2に示した第1の実施の形態の副構造体20と相違する。その他の構成は図2に示したものと同じであり、対応する部材には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0043】
図示の副構造体20Aでは、水深11mの箇所に第1中床版40aが、水深7mの箇所に第2中床版40bが、水深3.5mの箇所に第3中床版40cが、水深0mの箇所に第4中床版40dが、外殻21aを横断するように配置されている。また、外殻21aもプレキャストコンクリート製ではあるが、その厚みが水深方向で次第に厚くなるようにされている。すなわち、底床版22と第1中床版40aの間の外殻21aは水深15mの水圧に耐えることのできる厚さにされ、第1中床版40aと第2中床版40bの間の外殻21aは水深11mの水圧に耐えることのできる厚さにされ、第2中床版40bと第3中床版40cの間の外殻21aは水深7mの水圧に耐えることのできる厚さにされ、第3中床版40cと第4中床版40dの間の外殻21aは水深3.5mの水圧に耐えることのできる厚さにされ、さらに、第4中床版40dと上床版23の間の外殻21aも水深3.5mの水圧に耐えることのできる厚さにされている。
【0044】
そして、底床版22と第1中床版40aの間には圧縮強度が15tf/mであるD−45の発泡ポリスチレンブロックが配置され、第1中床版40aと第2中床版40bの間には圧縮強度が11tf/mであるD−35の発泡ポリスチレンブロックが配置され、第2中床版40bと第3中床版40cの間には圧縮強度が7tf/mであるD−25の発泡ポリスチレンブロックが配置され、第3中床版40cと第4中床版40dの間には圧縮強度が3.5tf/mであるD−16の発泡ポリスチレンブロックが配置され、さらに、第4中床版40dと上床版23との間には圧縮強度が2tf/mであるD−12の発泡ポリスチレンブロックが配置されている。
【0045】
この態様において、中床版40a〜40dは、それが配置された深さにおける浮力に耐えるだけの強度を備えるようにされている。具体的には、第1中床版40aは11tf/mの浮力に耐えることのできる構成とされ、第2中床版40bは7tf/mの浮力に耐えることのできる構成とされ、第3中床版40cは3.5tf/mの浮力に耐えることのできる構成とされている。第4中床版40dは水面Lの変動(有義波高)を考慮して1.5tf/mの浮力に耐えることのできる構成とされている。そして、この場合には、主構造体10である上部工には2tf/mの浮力が作用している。
【0046】
この態様の副構造体20Aでは、中床版40を設けることで、外殻21aの厚みを水深方向で異なるようにしても、外殻21aは必要な強度を備えることができるので、副構造体20の軽量化を図ることができる。また、万が一、外殻21aのいずれかの箇所に破損が生じた場合でも、浸入しようとする海水の水圧によって発泡ポリスチレンブロックが破壊することはなく、不沈化構造物としての機能が阻害されることもない。また、外殻21aが破損したことによって破損箇所の直上位に位置する中床版40に浮力が作用することとなっても、当該中床版が破壊するのも回避できる。
【0047】
図示しないが、上記第2の実施の形態である副構造体20Aでは、底床版22に構造材としての機能を持たせないようにすることもできる。その場合には、底床版22として、単に発泡ポリスチレンブロック30の落下を防止できるだけの機能を備えるものであってよく、網様体を底床版に変えて配置してもよい。ただし、第1中床版40aには15tf/mの浮力が作用することとなるので、第1中床版40aはそれに耐えるだけの強度を備えることが必要である。
【0048】
[副構造体20の第3の実施の形態]
図4図5は、副構造体20の第3の実施の形態の2つの例を示している。この副構造体20Bでは、構造材として機能する外殻21は備えてなく、図5に示すように、底床版22と上床版23とは適数の支柱25によって連結されている。そして、該支柱25に対して前記した中床版40が適数(図4では4枚、図5では2枚)だけ固定されている。支柱25は底床版22に作用する浮力に耐えるだけの強度を備えるものであってもよく、各中床版40に作用する浮力に耐えるだけの強度を持つように、長手方向で強度を異ならせた形態のものであってもよい。図4は、図5に示す形態であって、中床版40が、図3に示したものと同じ位置に4枚配置された状態のものを断面で示している。この態様では、構造材として機能する外殻を備えないので、副構造体20Bを一層軽量化することができる。
【0049】
なお、副構造体20Bにおいて、発泡樹脂製ブロック群の姿勢を安定させるため、また、耐候性を確保するために、適宜の保護シート(好ましくは遮光性シート)や薄層コンクリート26で覆うようにしてもよい。図4は、発泡樹脂製ブロック群30の全体を薄層コンクリート26で覆ったものを示している。
【0050】
この態様の副構造体20Bでも、底床版22に構造材としての機能を持たせないようにすることもできる。その場合には、底床版22として、単に発泡ポリスチレンブロック30の落下を防止できるだけの機能を備えるものであってよく、網様体を底床版に変えて配置してもよい。ただし、図4に示す形態では、第1中床版40aに15tf/mの浮力が作用することとなるので、第1中床版40aはそれに耐えるだけの強度を備えることは必要である。
【0051】
[発泡樹脂ブロックの他の形態]
図6は、他の形状の発泡樹脂ブロックを用いて構成された発泡樹脂ブロック群を示している。ここでは、水平断面が六角形である柱状の発泡樹脂ブロック31の複数本を軸方向をそろえた状態で束ねることで、発泡樹脂ブロック群30aを形成している。互いの接触面を接着剤により一体化してもよい。六角柱を用いる場合にも、副構造体20を構成する円筒体との間に隙間が形成されないように、柱状の発泡樹脂ブロック31を軸方向に沿って適宜の形状と大きさに裁断したもの32を用意し、それを用いて、その隙間を埋めることが望ましい。
【0052】
また、例えば全体として円柱状に組み付けた発泡樹脂ブロック群30aの全体を耐水性シート(例えば、カーボンシートなど)33で覆うことで、副構造体20を構成する円筒体内への組み込みが容易になるとともに、外からの衝撃により円筒体が部分的に破損したようなときに、発泡樹脂ブロック群の中に水が入り込むのを防止することができる。耐水性シートで覆った発泡樹脂ブロック群は、前記した副構造体20Bのように、構造体としての外殻を備えない副構造体と共に用いるのにも好適である。
【0053】
また、発泡樹脂ブロック群30aは、六角柱である発泡樹脂ブロック31の寄せ集め体であることにより、外からの衝撃が加わったときでも、その衝撃力は、六角柱同士が相互に接触している接触面方向に沿って分散しやすくなり、発泡樹脂ブロック31および発泡樹脂ブロック群30aが損傷するのを回避しやすくなる。なお、水平断面が六角形状をなす柱状の発泡樹脂ブロック31は、上記の特性を生かして、浮体構造物での浮体としての利用ばかりでなく、外力による衝撃を受けやすい場所での部材を形成するのに有効に用いることができる。例えば、浮体、緩衝体、衝撃吸収体、防振体、防音体、軽量盛土体などの用途が例としてあげられる。
【0054】
[固定具]
複数個の発泡樹脂ブロックを組み付けて発泡樹脂ブロック群とする場合、各発泡樹脂ブロックが分離しないよう、適宜の固定具を用いて、隣接する発泡樹脂ブロック同士を固定することが望ましい。特に、浮力を得るために水中(海中)に配置される発泡樹脂ブロック群の場合、隣接する発泡樹脂ブロック同士の境界面に水(海水)が入り込むことが起こりやすく、それにより容易にバラバラに分離してしまう恐れがある。図7は、隣接する発泡樹脂ブロック同士を固定するのに好適な固定具50の一例を示している。
【0055】
この固定具50は、一枚の縦長の金属板により構成されており、上端51と下端52は発泡樹脂ブロック30への打ち込みが容易なように、やや先細状にされている。横幅方向のほぼ中央部には、全長にわたって半円形の凹陥溝53が形成されており、それにより、長さ方向での剛性を高くしている。
【0056】
固定具50の上下方向のほぼ中間部には、金属板の一部を90度に折り曲げて成形した水平片54、54が互いに反対方向に向けて形成されている。また、前記上端部に近接した位置には、金属板の一部を上端51側が基部となるようにして10度から30度程度(より好ましくは20度)の角度で折曲した上返し片55、55が互いに反対方向を向けて形成されている。同様に、前記下端52部に近接した位置にも、金属板の一部を下端52側が基部となるようにして10度から30度程度(より好ましくは20度)の角度で折曲した下返し片56、56が互いに反対方向を向けて形成されている。
【0057】
発泡樹脂ブロック30の上または側部に、もう一つの発泡樹脂ブロック30を配置しようとするときに、上記固定具50を一方の発泡樹脂ブロック30Xにその下端52側から垂直状態に打ち込む。下端52は先細状になっており、発泡樹脂ブロック30X内への打ち込みは容易である。発泡樹脂ブロック30X内に侵入していく過程で、前記下返し片56、56をやや閉じる方向に変位させながら、固定具50は次第に発泡樹脂ブロック30X内に入り込んでいき、水平片54、54が発泡樹脂ブロック30Xに乗った姿勢で、侵入は停止する。
【0058】
次に、発泡樹脂ブロック30Xに下半分を差し込んだ姿勢にある固定具50に対して、他方の発泡樹脂ブロック30Yを押し付ける。それにより、前記上返し片55、55はやや閉じる方向に変位しながら、露出している固定具50の上半分は次第に発泡樹脂ブロック30Y内に入り込んでいき、発泡樹脂ブロック30Xに衝接した位置で、発泡樹脂ブロック30Yは停止する。それにより、隣接する2つの発泡樹脂ブロック30X、30Yの固定作業は終了する。以下、同じ作業を、組み付けようとするすべての発泡樹脂ブロック30に対して行うことで、すべての発泡樹脂ブロック30同士が固定具50によって分離しないようにして一体に組み付けられた発泡樹脂ブロック群が作られる。
【0059】
上記のように、固定具50は、引き抜き方向には大きな抵抗体となる上返し片55、55および下返し片56、56を備えているので、組み付け後の発泡樹脂ブロック群に浮力あるいは他の外力が作用した場合でも、個々の発泡樹脂ブロック30がバラバラに分離してしまうのを確実に阻止することができる。なお、発泡樹脂ブロックがEPSの場合、EPSの荷重分散角は20度であることから、上返し片55、55および下返し片56、56の立ち上がり角を20度に設定することは、抜け防止には最も効果的である。
【0060】
なお、図示しないが、上返し片55、55および下返し片56、56は、それぞれ2段以上に設けられていてもよい。2段以上に形成する場合、そのうちのいずれかを他のものとは90度変位した姿勢のものとすることもできる。それにより、上下方向および水平方向の2つの方向において、発泡樹脂ブロック30X、Y同士が位置ずれを起こすのを阻止することが可能となる。また、素材となる材料は金属板に限らす、繊維強化樹脂のような樹脂材料を用いることもできる。樹脂材料は海水による腐食を受けないので、海水中に埋設する発泡樹脂ブロック群を形成するのには、特に好適である。組み付けに当たっては、面に各1個の固定具50を用いてもよく、2個以上の固定具50を用いてもよい。さらに、短手方向での断面がL型となるように折曲した固定具としてもよい。この場合でも、固定した発泡樹脂ブロック30X、Yが上下方向および水平方向の2つの方向において位置ずれを起こすのを阻止することができる。
【0061】
なお、上記した固定具50は、上記の特性を生かして、浮体構造物での浮体として利用される発泡樹脂ブロックの固定ばかりでなく、外力による分離する恐れのある発泡樹脂ブロックの組み合わせ体における発泡樹脂ブロック同士の固定具としても有効に用いることができる。例えば、浮体、緩衝体、衝撃吸収体、防振体、防音体、軽量盛土体などとして利用される発泡樹脂ブロック同士の固定具の用途が例としてあげられる。
【符号の説明】
【0062】
A…浮体構造物、
10…主構造体、
15…補助構造体、
20…副構造体、
21…外殻、
22…底床版
23…上床版、
30…発泡樹脂製ブロック、
40…中床版、
50…固定具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7