特許第5792153号(P5792153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792153
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】制振構造物
(51)【国際特許分類】
   E04H 12/00 20060101AFI20150917BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   E04H12/00 B
   E04H9/02 311
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-270101(P2012-270101)
(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-114621(P2014-114621A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2014年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】512319726
【氏名又は名称】株式会社アイ・イーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】石垣 秀典
【審査官】 土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−209635(JP,A)
【文献】 特開2010−248835(JP,A)
【文献】 特許第3411449(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 12/00 −28
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剪断変形よりも転倒モーメントによる曲げ変形が大きな比率を占め、断面積が高さによって異なる第1の塔状構造物と、
前記第1の塔状構造物の内部に配置され、前記第1の塔状構造物に連結されている第2の塔状構造物と、
一端が前記第1の塔状構造物と外周側固着点で固着されていると共に、他端が前記第2の塔状構造物と前記外周側固着点とは異なる高さの内周側固着点で固着されているダンパーとを具備し、
前記ダンパーは、複数層にわたって、加力方向に対して上流側と下流側とにそれぞれ設置され、
上流側と下流側とにそれぞれ設置された前記ダンパーの前記内周側固着点の間隔は、前記加力方向における前記第2の塔状構造物の最大幅よりも小さく設定され
上流側と下流側とにそれぞれ設置された前記ダンパーの前記外周側固着点の間隔に対する、上流側と下流側とにそれぞれ設置された前記ダンパーの前記内周側固着点の間隔の比率が各層において略同一に設定されていることを特徴とする制振構造物。
【請求項2】
上流側と下流側とにそれぞれ設置された前記ダンパーの前記外周側固着点の間隔は、前記加力方向における前記第2の塔状構造物の最大幅よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1記載の制振構造物。
【請求項3】
層に設置された前記ダンパーの鉛直方向の減衰係数は、各層における粘性減衰定数が略同一になるように設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の制振構造物。
【請求項4】
剪断変形よりも転倒モーメントによる曲げ変形が大きな比率を占め、断面積が高さによって異なる第1の塔状構造物の制振工法であって、
前記第1の塔状構造物の内部に、自身の鉛直荷重を支持可能な第2の塔状構造物を設け、
複数層にわたって、ダンパーの一端を前記第1の塔状構造物と外周側固着点で固着させると共に、前記ダンパーの他端を前記第2の塔状構造物と前記外周側固着点とは異なる高さの内周側固着点で固着させ、
上流側と下流側とにそれぞれ設置された前記ダンパーの前記内周側固着点の間隔を、前記加力方向における前記第2の塔状構造物の最大幅よりも小さく設定し、
上流側と下流側とにそれぞれ設置された前記ダンパーの前記外周側固着点の間隔に対する、上流側と下流側とにそれぞれ設置された前記ダンパーの前記内周側固着点の間隔の比率を各層において略同一に設定することを特徴とする制振工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺れを抑制する制振構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
細長い塔状構造物に対する制振工法として、独立して設けられた補助構造体との間にダンパーを設置して、両者の変形差により揺れを抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−269165号公報
【特許文献2】特開平8−218681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、転倒モーメントによる曲げ変形が大きな比率を占める場合には、塔状構造物と補助構造体との変形差が顕在化しないため、揺れを効果的に抑制することができないという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、転倒モーメントによる曲げ変形が大きな比率を占める場合でも、揺れを効果的に抑制することができる制振構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制振構造物は、剪断変形よりも転倒モーメントによる曲げ変形が大きな比率を占め、断面積が高さによって異なる第1の塔状構造物と、前記第1の塔状構造物の内部に配置され、前記第1の塔状構造物に連結されている第2の塔状構造物と、一端が前記第1の塔状構造物と外周側固着点で固着されていると共に、他端が前記第2の塔状構造物と前記外周側固着点とは異なる高さの内周側固着点で固着されているダンパーとを具備し、前記ダンパーは、複数層にわたって、加力方向に対して上流側と下流側とにそれぞれ設置され、上流側と下流側とにそれぞれ設置された前記ダンパーの前記内周側固着点の間隔は、前記加力方向における前記第2の塔状構造物の最大幅よりも小さく設定され、上流側と下流側とにそれぞれ設置された前記ダンパーの前記外周側固着点の間隔に対する、上流側と下流側とにそれぞれ設置された前記ダンパーの前記内周側固着点の間隔の比率が各層において略同一に設定されていることを特徴とする。
さらに、本発明の制振構造物は、上流側と下流側とにそれぞれ設置された前記ダンパーの前記外周側固着点の間隔は、前記加力方向における前記第2の塔状構造物の最大幅よりも大きく設定しても良い。
さらに、本発明の制振構造物は、断面積が高さによって異なる前記第1の塔状構造物に、複数層にわたって前記ダンパーが設置されており、各層に設置された前記ダンパーの鉛直方向の減衰係数は、各層における粘性減衰定数が略同一になるように設定しても良い。
また、本発明の制振工法は、剪断変形よりも転倒モーメントによる曲げ変形が大きな比率を占め、断面積が高さによって異なる第1の塔状構造物の制振工法であって、前記第1の塔状構造物の内部に、自身の鉛直荷重を支持可能な第2の塔状構造物を設け、複数層にわたって、ダンパーの一端を前記第1の塔状構造物と外周側固着点で固着させると共に、前記ダンパーの他端を前記第2の塔状構造物と前記外周側固着点とは異なる高さの内周側固着点で固着させ、上流側と下流側とにそれぞれ設置された前記ダンパーの前記内周側固着点の間隔を、前記加力方向における前記第2の塔状構造物の最大幅よりも小さく設定し、上流側と下流側とにそれぞれ設置された前記ダンパーの前記外周側固着点の間隔に対する、上流側と下流側とにそれぞれ設置された前記ダンパーの前記内周側固着点の間隔の比率を各層において略同一に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、転倒モーメントによる曲げ変形が大きな比率を占める場合でも、ダンパーによるエネルギー吸収性能に優れた制振構造物の構築が可能になり、揺れを効果的に抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る制振構造物の第1の実施の形態の基本構成を示す図である。
図2図1に示すZ−Z断面図である
図3図1に示す第1の塔状構造物の曲げ変形を説明する説明図である。
図4】本発明に係る制振構造物の実施の形態の制振モデルを示す図である。
図5図4に示す制振モデルにおけるダンパーの減衰係数と塔状構造物の粘性減衰定数との関係を示すグラフである。
図6】本発明に係る制振構造物の第2の実施の形態の基本構成を示す図である。
図7】本発明に係る制振構造物の第2の実施の形態の基本構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態を、図1乃至図6を参照して具体的に説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態の制振構造物1は、図1及び図2を参照すると、第1の塔状構造物2と、第1の塔状構造物2の内部に配置された第2の塔状構造物3と、第1の塔状構造物2と第2の塔状構造物3との間に設置されたダンパー4とを備えている。
【0010】
第1の塔状構造物2は、剪断変形よりも転倒モーメントによる曲げ変形が大きな比率を占める塔状の構造物である。第1の塔状構造物2は、例えば、送電線やアンテナを支持する鉄塔や、内部に配置された第2の塔状構造物3を支持する鉄塔で構成される。第1の塔状構造物2は、鉄製の骨組み構造で構成され、複数本の傾斜柱21で自立している。そして、第1の塔状構造物2は、傾斜柱21の間に横方向に架け渡された横部材22によって補強されていると共に、傾斜柱21と横部材22との間に斜め方向に架け渡された図示しない斜め部材によって補強されている。なお、本実施の形態では、第1の塔状構造物2の断面形状を四角形としたが、第1の塔状構造物2の断面形状は限定されることなく、円形やその他の多角形であっても良い。
【0011】
第2の塔状構造物3は、図示しない連結部材によって第1の塔状構造物2と連結され、水平方向には図示しない連結部材を介して第1の塔状構造物2で支持されている。従って、第2の塔状構造物3は、鉛直荷重を支持可能な構造であれば良い。第2の塔状構造物3は、例えば、煙突で構成される。なお、本実施の形態では、第2の塔状構造物3の断面形状を四角形としたが、第2の塔状構造物3の断面形状は限定されることなく、円形やその他の多角形であっても良い。
【0012】
ダンパー4は、地震や強風等の外乱によって、第1の塔状構造物2に曲げ変形が発生したときの震動エネルギーを減衰させる減衰手段である。ダンパー4としては、鉛ダンパー等の履歴型制震ダンパーやオイルダンパー等の粘性型制震ダンパーを用いることができる。
【0013】
ダンパー4の一端は第1の塔状構造物2に、他端は第2の塔状構造物3にそれぞれ固着されている。ダンパー4と第1の塔状構造物2との固着点α(以下、外周側固着点αと称す)と、ダンパー4と第2の塔状構造物3との固着点β(以下、内周側固着点βと称す)とは、図1に示すように、異なる高さに設定されている。第1の塔状構造物2に曲げ変形が発生したときには、図3に示すように、第1の塔状構造物2の一方の傾斜柱21が伸びて、他方の傾斜柱21が縮むのに対して、第2の塔状構造物3の鉛直方向の変形は第1の塔状構造物2に比べて微小である。従って、ダンパー4には、外周側固着点αと内周側固着点βとの相対変形差が作用することになり、第1の塔状構造物2の傾斜柱21に作用する鉛直方向の震動エネルギーが減衰される。なお、本実施の形態では、ダンパー4を斜め方向に設置した例を説明したが、ダンパー4は、鉛直方向に設置するようにしても良い。
【0014】
また、図2に示すように第2の塔状構造物3の中心をCとすると、ダンパー4は、想定される加力方向に対して中心Cの上流側と下流側とにそれぞれ設置されている。図2(a)には、断面四角形の第1の塔状構造物2及び第2の塔状構造物3に対し、横方向の加力を想定してダンパーを設置した例が、図2(b)には、斜め方向の加力を想定してダンパー4を設置した例がそれぞれ示されている。
【0015】
加力方向における第2の塔状構造物3の最大幅をdとすると、加力方向上流側の外周側固着点αと、加力方向下流側の外周側固着点αとの間隔Dは、第2の塔状構造物3の最大幅dよりも大きく設定されている。なお、間隔Dは、大きいほど好ましく、加力方向における第1の塔状構造物2の最大幅をDに近似させて設置すると良い。
【0016】
また、加力方向上流側の内周側固着点βと、加力方向下流側の内周側固着点βとの間隔dは、第2の塔状構造物3の最大幅dよりも小さく設定されている。なお、間隔dは、小さいほど好ましく、「0」に近似させて設置すると良い。
【0017】
さらに、ダンパー4は、第2の塔状構造物3の中心Cを通り、加力方向に対して垂直な線に対して線対称な位置にそれぞれ設置することが好ましい。これにより、中心Cの上流側と下流側とでのエネルギー吸収(減衰)のバランスが取れて効率的な制振効果が得られる。
【0018】
次に、図4に示す制振モデルに基づいてダンパー4の設置方法について検討する。制振モデルは、図4(a)に示すように、軸方向剛性Kを有する傾斜柱で支持されている塔状構造物Aと、塔状構造物Aの内部に配置され、塔状構造物Aにピンで連結された塔状構造物Bとの間に減衰係数Cのダンパーを設置して、制振構造物を構成している状態を想定する。なお、ダンパーは、塔状構造物Aと塔状構造物Bとの鉛直方向の相対変形差に作用させるため、斜めまたは垂直に設置することになるが、ここではダンパーを鉛直方向に設置した制振モデルについて検討する。
【0019】
まず、図4(b)に示すように、塔状構造物A及び塔状構造物Bが振幅Xで振動している状態を考える。塔状構造物Aは両側の傾斜柱の軸伸縮による曲げ変形を、塔状構造物Bは剛体回転のみによる変形を仮定する。ここで、加力方向における塔状構造物Aの幅をD、傾斜柱の軸方向剛性Kの鉛直成分KsinθをK、塔状構造物Aと塔状構造物Bとを連結するピンまでの高さをHとそれぞれすれば、塔状構造物Aの柱の軸伸縮による曲げ剛性EIは、次式[数1]で表される。
【0020】
【数1】
【0021】
これより、塔状構造物A及び塔状構造物Bの質量をMとすると、慣性力−M・dx/dtによる変形量xは、次式[数2]で表される。
【0022】
【数2】
【0023】
一方、この時のダンパーの減衰係数Cによる抵抗力は、塔状構造物Aと塔状構造物Bとの鉛直方向相対変位によって発現し、加力方向における塔状構造物Bの幅をdとすると、ダンパーの抵抗力による偶力Mと、偶力Mによる水平方向の減衰力Fとは、次式[数3]で表される。
【0024】
【数3】
【0025】
従って、変形量(振幅)xでの定常振動状態における塔状構造物A及び塔状構造物Bの振動方程式は次式[数4]で表される。
【0026】
【数4】
【0027】
これより、固有円振動数ω及び粘性減衰定数hは、次式[数5]に示すように表現できる。
【0028】
【数5】
【0029】
[数5]により、制振構造物の性能を表している粘性減衰定数hの値は、加力方向における、塔状構造物Aの幅Dと塔状構造物Bの幅dとの比率により変化していくことが分かる。ここで、ダンパーの減衰係数Cに対して、塔状構造物Aの幅D及び塔状構造物Bの幅dの比率を変化させて、構造物全体の粘性減衰定数hを求めた結果を図5に示す。
【0030】
図5において、グラフの横軸は、減衰係数Cを質量Mと固有円振動数ωで除して無次元化した値である。グラフから、減衰係数Cが大きいほど、またd/Dの比率が小さくなるほど粘性減衰定数hが大きくなり、構造物のエネルギー吸収が大きくなることが分かる。すなわち、同じ減衰係数Cの値を有するダンパーであれば、d/Dが小さくなるようにダンパーを設置することにより、より大きなエネルギー吸収性能を有する制振構造物を構築することが可能となることが分かる。
【0031】
ここで、図4に示す制振モデルにおける内部の塔状構造物Bの幅dは、第1の実施の形態における、加力方向の上流側及び下流側の内周側固着点βの間隔dに読み替えることができる。従って、図4に示す制振モデルにおける外周の塔状構造物Aの幅Dを、第1の実施の形態において、加力方向の上流側及び下流側の外周側固着点αの間隔Dに読み替え、間隔Dに対する間隔dの比率が小さくなるようにダンパー4を設置することにより、エネルギー吸収性能に優れた制振構造物の構築が可能になる。
【0032】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の制振構造物10は、図6を参照すると、複数層にわたってダンパー4が設置されている。図6の例では、断面積が高さによって異なる第1の塔状構造物2の4層にわたってダンパー4が設置されている。制振構造物10では、鉛直方向において同一の減衰係数Cを有するダンパー4が各層でそれぞれ用いられている。また、各層において、加力方向の上流側及び下流側の外周側固着点αの間隔Db1〜Db4に対する、加力方向の上流側及び下流側の内周側固着点βの間隔db1〜db4のそれぞれの比率が略同一になるように設定されている。これにより、各層における粘性減衰定数hがほぼ同じ値になり、各層でのエネルギー吸収のバランスが取れて効率的な制振効果が得られる。なお、各層における間隔db1〜db4を一定としたり、図7に示すように、各層における間隔db1〜db4を「0」に近似させたりした制振構造物11の場合には、ダンパー4の鉛直方向における減衰係数Cを各層で調整すれば同様な効果が得られる。図7では、同一のダンパー4を用い、ダンパー4の設置角度を変えることで、鉛直方向における減衰係数Cを各層で調整するように構成したが、異なる減衰係数Cを有するダンパー4を各層で用いるようにしても良い。
【0033】
なお、第1の塔状構造物2の内部に煙突等の第2の塔状構造物3が元々ある場合には、その構造体をそのまま利用して本実施の形態の制振構造物1、10を構成することができる。これに対して、図7のように、第1の塔状構造物2が送電線等を支持する鉄塔である場合には、内部に第2の塔状構造物3が存在しない。その場合には、新たに第2の塔状構造物3を設けることで、本実施の形態の制振構造物11を構成することができる。新たに設ける第2の塔状構造物3は、水平方向には連結部材を介して外周の第1の塔状構造物2で支持可能であるため、鉛直荷重を支持可能な構造であれば良い。すなわち、新たに設けた第2の塔状構造物3として、大きな断面の部材は不要である。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態によれば、剪断変形よりも転倒モーメントによる曲げ変形が大きな比率を占める第1の塔状構造物2と、第1の塔状構造物2の内部に配置され、第1の塔状構造物2に連結されている第2の塔状構造物3と、一端が第1の塔状構造物2と外周側固着点αで固着されていると共に、他端が第2の塔状構造物3と外周側固着点αとは異なる高さの内周側固着点βで固着されているダンパー4とを具備し、ダンパー4は、加力方向に対して上流側と下流側とにそれぞれ設置され、上流側と下流側とにそれぞれ設置されたダンパー4の内周側固着点βの間隔dは、加力方向における第2の塔状構造物3の最大幅dよりも小さく設定されている。この構成により、転倒モーメントによる曲げ変形が大きな比率を占める場合でも、ダンパー4によるエネルギー吸収性能に優れた制振構造物の構築が可能になり、揺れを効果的に抑制することができる。
【0035】
さらに、本実施の形態によれば、上流側と下流側とにそれぞれ設置されたダンパー4の外周側固着点αの間隔は、加力方向における第2の塔状構造物3の最大幅dよりも大きく設定されている。
【0036】
さらに、本実施の形態によれば、断面積が高さによって異なる第1の塔状構造物2に、複数層にわたってダンパー4が設置されており、上流側と下流側とにそれぞれ設置されたダンパー4の外周側固着点αの間隔Dに対する、上流側と下流側とにそれぞれ設置されたダンパー4の内周側固着点βの間隔dの比率が各層において略同一に設定されている。この構成により、鉛直方向の減衰係数Cが同じダンパー4を用いても、各層における粘性減衰定数hがほぼ同じ値になり、各層でのエネルギー吸収のバランスが取れて効率的な制振効果が得られる。
【0037】
さらに、本実施の形態によれば、断面積が高さによって異なる第1の塔状構造物2に、複数層にわたってダンパー4が設置されており、各層に設置されたダンパー4の鉛直方向の減衰係数Cは、各層における粘性減衰定数hが略同一になるように設定されている。この構成により、上流側と下流側とにそれぞれ設置されたダンパー4の内周側固着点βの間隔dを各層において略同一にしても、各層における粘性減衰定数hがほぼ同じ値になり、各層でのエネルギー吸収のバランスが取れて効率的な制振効果が得られる。
【0038】
さらに、本実施の形態によれば、剪断変形よりも転倒モーメントによる曲げ変形が大きな比率を占める第1の塔状構造物2の制振工法として、第1の塔状構造物2の内部に、自身の鉛直荷重を支持可能な第2の塔状構造物3を設け、ダンパー4の一端を第1の塔状構造物2と外周側固着点αで固着させると共に、ダンパー4の他端を第2の塔状構造物3と外周側固着点αとは異なる高さの内周側固着点βで固着させる。これにより、内部に第2の塔状構造物3が存在しない第1の塔状構造物2であっても、ダンパー4によるエネルギー吸収性能に優れた制振構造物を構築することができる。
【0039】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。
【符号の説明】
【0040】
1 制振構造物(第1の実施の形態)
2 第1の塔状構造物
3 第2の塔状構造物
4 ダンパー
10、11 制振構造物(第2の実施の形態)
21 傾斜柱
22 横部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7