特許第5792167号(P5792167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5792167非一体的に鍛造されたクランクシャフト及びカムシャフトを含むシリンダ状コンポーネントを備える異形シャフト製造用の誘導電気エネルギー印加
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792167
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】非一体的に鍛造されたクランクシャフト及びカムシャフトを含むシリンダ状コンポーネントを備える異形シャフト製造用の誘導電気エネルギー印加
(51)【国際特許分類】
   B21J 1/06 20060101AFI20150917BHJP
   B21K 1/08 20060101ALN20150917BHJP
   B21K 1/12 20060101ALN20150917BHJP
【FI】
   B21J1/06 Z
   !B21K1/08
   !B21K1/12
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-519654(P2012-519654)
(86)(22)【出願日】2010年7月3日
(65)【公表番号】特表2012-532028(P2012-532028A)
(43)【公表日】2012年12月13日
(86)【国際出願番号】US2010041003
(87)【国際公開番号】WO2011005722
(87)【国際公開日】20110113
【審査請求日】2013年7月3日
(31)【優先権主張番号】61/223,022
(32)【優先日】2009年7月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501395742
【氏名又は名称】インダクトヒート インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・エイ・ドイオン
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・アール・ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・エル・ラブレス
(72)【発明者】
【氏名】バレリー・アイ・ルードネフ
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−016658(JP,A)
【文献】 特開平04−361847(JP,A)
【文献】 特開2009−125752(JP,A)
【文献】 特開平04−095385(JP,A)
【文献】 特開昭62−290093(JP,A)
【文献】 特開2007−199356(JP,A)
【文献】 特開平02−170390(JP,A)
【文献】 特表平8−502452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 1/06
B21K 1/08
B21K 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材から非一体的に鍛造された物品を鍛造する方法であって、
(1)前記素材の1セクションを誘導コイルアセンブリに挿入し、
(2)前記誘導コイルアセンブリに電力を供給して該誘導コイルアセンブリ内の前記素材の1セクションを誘電加熱して誘導コイルアセンブリ内の素材の前記セクションにカップリングする磁束場を発生させ、かくして素材の鍛造前加熱セクションを形成し、
(3)誘導コイルアセンブリから素材を取り出し、
(4)取り出した素材を鍛造装置に移送し、
(5)素材の前記鍛造前加熱セクションに特徴部を鍛造し、
(6)素材を誘導コイルアセンブリに移送し
前記(1)〜(6)の各ステップを製造物品全体が鍛造されるまで反復することを含み、
誘導コイルアセンブリ内で素材の前記セクションの軸方向長さに沿った実際の素材温度を検出し、前記素材の前記セクションの軸方向長さに沿った実際の素材温度をコンピュータソフトウェアに入力して実際の素材温度の分布プロファイルを生成し、
誘導コイルアセンブリ内で素材の前記セクションを、要求鍛造前軸方向長さ温度プロファイルに加熱するよう、前記実際の素材温度の分布プロファイルと、前記コンピュータソフトウェアが決定する前記要求鍛造前軸方向長さ温度プロファイルとの間の差に依存する誘導加熱システム制御プログラムを実行して素材の前記セクションの軸方向長さに沿った磁束場の前記カップリングを制御することを更に含む方法。
【請求項2】
前記誘導コイルアセンブリ内で素材の前記セクションの軸方向長さに沿った温度を検出することが、誘導コイルアセンブリ内への素材の1セクション挿入と同時に実施される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記誘導コイルアセンブリ内で素材の前記セクションの軸方向長さに沿った温度を検出することが、誘導コイルアセンブリ内への素材の1セクション挿入に続けて実施される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記素材の前記セクションの軸方向長さに沿った磁束場の前記カップリングを制御することが、誘導コイルアセンブリの少なくとも1端に2つ以上の交互する電気的エンドタップを形成し、該2つ以上の交互する電気的エンドタップ間における誘導コイルアセンブリ端子との接続を、前記誘導コイルアセンブリ内の素材の1セクションを誘電加熱するに先立ちまたは誘導加熱中に変更することを含む請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記素材の前記セクションの軸方向長さに沿った磁束場の前記カップリングを制御することが、誘導コイルアセンブリ内の前記素材の1セクションを誘電加熱するに先立ちまたは誘導加熱中に、誘導コイルアセンブリの1つ以上の端部コイル巻きを横断して1つ以上のキャパシタを電気的に接続することを含む請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記素材の前記セクションの軸方向長さに沿った磁束場の前記カップリングを制御することが、少なくとも2つの別個の誘導コイルセクションにして、別個の電源から受けた電力を夫々有する誘導コイルアセンブリを形成すること、前記誘導コイルアセンブリの少なくとも1端に2つ以上の交互する電気的エンドタップを形成すること、誘導コイルアセンブリ内の素材の1セクションを誘電加熱するに先立ちまたは当該誘導加熱中に、該2つ以上の交互する電気的エンドタップ間における、誘導コイルアセンブリ端子との接続を変更する、または、誘導コイルアセンブリの1つ以上の端部コイル巻きを横断して1つ以上のキャパシタを電気的に接続することを含む請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項7】
前記素材の前記セクションの軸方向長さに沿った磁束場の前記カップリングを制御することが、誘導コイルアセンブリ内の素材の1セクションを誘電加熱するに先立ちまたは当該誘導加熱中に、該誘導コイルアセンブリにおける1つ以上のコイル巻きを短絡させることを含む請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記素材の前記セクションの軸方向長さに沿った磁束場の前記カップリングを制御することが、誘導コイルアセンブリ内の素材の1セクションを誘電加熱するに先立ちまたは当該誘導加熱中に、多巻きコイルの少なくとも一部から誘導コイルアセンブリを形成し且つ前記多巻きコイルの少なくとも一部の1つ以上のセクションを切り替えることを含む請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項9】
前記素材の前記セクションの軸方向長さに沿った磁束場の前記カップリングを制御することが、誘導コイルアセンブリ内の素材の1セクションを誘電加熱するに先立ちまたは当該誘導加熱中に、螺旋状に交互巻きした少なくとも2つのコイルから成る誘導コイルアセンブリを形成し且つ前記少なくとも2つの交互巻きしたコイルを切り替えることを含む請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項10】
素材のあるセクションにおける特徴部を鍛造するに先立ち、誘導コイルアセンブリに挿入した該素材の前記セクションの鍛造前温度を制御する方法であって、
素材の前記セクションの軸方向長さに沿った実際の素材表面温度を検出し、前記素材の前記セクションの軸方向長さに沿った実際の素材表面温度をコンピュータソフトウェアに入力して実際の素材表面温度の分布プロファイルを生成し、
素材の前記セクションを誘導加熱する間、前記実際の素材表面温度の分布プロファイルと、前記コンピュータソフトウェアが決定する要求鍛造前軸方向長さ温度プロファイルとの間の差に依存する誘導加熱システム制御プログラムを実行して素材の前記セクションの軸方向長さに沿った磁束場のカップリングを制御すること、
を含む方法。
【請求項11】
前記素材のセクションの軸方向長さに沿った表面温度を検出することが、素材の前記セクションを誘導コイルアセンブリに挿入する間に実施される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
素材の前記セクションの軸方向長さに沿った表面温度を検出することが、素材の前記セクションを誘導コイルアセンブリに挿入するのに続いて実施される請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記素材の前記セクションを誘導加熱する間、素材の前記セクションの軸方向長さに沿った磁束場のカップリングを制御することが、誘導コイルアセンブリの少なくとも1端に2つ以上の交互する電気的エンドタップを形成すること、及び、該2つ以上の交互する電気的エンドタップ間における、誘導コイルアセンブリの端子との接続を変更すること、を
含む請求項10〜12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
前記素材の前記セクションを誘導加熱する間、素材の前記セクションの軸方向長さに沿った磁束場のカップリングを制御することが、誘導コイルアセンブリの1つ以上の端部コイル巻きを横断して1つ以上のキャパシタを電気的に接続することを含む請求項10〜12の何れかに記載の方法。
【請求項15】
前記素材の前記セクションを誘導加熱する間、素材の前記セクションの軸方向長さに沿った磁束場のカップリングを制御することが、少なくとも2つの別個の誘導コイルセクションにして、別個の電源から受けた電力を夫々有する誘導コイルアセンブリを形成すること、前記誘導コイルアセンブリの少なくとも1端に2つ以上の交互する電気的エンドタップを形成すること、該2つ以上の交互する電気的エンドタップ間における、誘導コイルアセンブリ端子との接続を変更する、または、誘導コイルアセンブリの1つ以上の端部コイル巻きを横断して1つ以上のキャパシタを電気的に接続することを含む請求項10〜12の何れかに記載の方法。
【請求項16】
前記素材の前記セクションを誘導加熱する間、素材の前記セクションの軸方向長さに沿った磁束場のカップリングを制御することが、誘導コイルアセンブリにおける1つ以上のコイル巻きを短絡させることを含む請求項10〜12の何れかに記載の方法。
【請求項17】
前記素材の前記セクションを誘導加熱する間、素材の前記セクションの軸方向長さに沿った磁束場のカップリングを制御することが、多巻きコイルの少なくとも一部から誘導コイルアセンブリを形成し且つ前記多巻きコイルの少なくとも一部の1つ以上のセクションを切り替えることを含む請求項10〜12の何れかに記載の方法。
【請求項18】
前記素材の前記セクションを誘導加熱する間、素材の前記セクションの軸方向長さに沿った磁束場のカップリングを制御することが、螺旋状に交互巻きした少なくとも2つのコイルから成る誘導コイルアセンブリを形成し且つ前記少なくとも2つの交互巻きしたコイルを切り替えることを含む請求項10〜12の何れかに記載の方法。
【請求項19】
素材から非一体的に鍛造された物品を鍛造する方法であって、
(a)誘導コイルアセンブリ内に前記素材のシーケンス的セクションを挿入し、
(b)誘導コイルアセンブリに挿入した前記素材のシーケンス的セクションの軸方向長さに沿った実際の素材温度を検出し、前記素材のシーケンス的セクションの軸方向長さに沿った実際の素材温度をコンピュータソフトウェアに入力して実際の素材温度の分布プロファイルを生成し、
(c)誘導コイルアセンブリに電力を供給して該誘導コイルアセンブリ内の素材の前記シーケンス的セクションとカップリングする磁束場を発生させることにより誘導コイルアセンブリ内の素材の前記シーケンス的セクションを誘電加熱し、かくして、前記誘導コイルアセンブリに挿入した素材の前記シーケンス的セクションの軸方向長さに沿って、前記実際の素材温度の分布プロファイルに応じて実行される誘導加熱システム制御プログラムにより生成される制御された温度プロファイルを有する素材の鍛造前加熱セクションを形成し、
(d)誘導コイルアセンブリから素材を取り出し、
(e)取り出した素材を鍛造装置に移送し、
(f)素材の前記鍛造前加熱セクションの特徴部を鍛造し、
(g)素材を誘導コイルアセンブリに移送し、
前記(a)〜(g)の各ステップを製造物品全部が鍛造されるまで反復すること、
を含む方法。
【請求項20】
素材の一連のセクションに、シーケンス的に鍛造した一連の特徴部を含む非一体の鍛造製造物品であって、
前記素材の一連の各セクションの前記各特徴部をシーケンス的に鍛造するに先立ち、前記素材における一連の各セクションが誘導コイルアセンブリに挿入され、誘導加熱中の素材の前記一連の各セクションの軸方向長さに沿った磁束場のカップリングが、前記素材のセクションを誘導加熱するに先立ち素材の一連の各セクションの軸方向長さに沿って検出した温度からコンピュータソフトウェアが生成する素材温度の分布プロファイルに応じて誘導加熱システム制御プログラムにより制御される非一体の鍛造製造物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は、ここでの引用により本明細書の一部とする2009年7月4日付で提出された米国仮出願第61/223,022号の利益を主張するものである。
本発明は異形シャフト、詳しくは、船舶あるいは鉄道または発電設備用途の大馬力型内燃機関用に好適な大型クランクシャフト及びカムシャフト等の大型の、あるいは非一体的に鍛造されたシャフトとして斯界に既知の異形シャフト類の誘導電気加熱処理に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の主推進エンジンで利用する等の大型クランクシャフトは軸方向全長が20メートル以上、重量は300トンを超えることもある。大型クランクシャフトは単数あるいは複数のクランクウェブ及びカウンターウェイトで相互連結した単数あるいは複数の一連のクランクピン及び主ジャーナルを含む。ジャーナルの直径は75mm(3インチ)にもなり、305mm(12インチ)を超える場合もある。大型クランクシャフトは加熱され、例えば、熱間圧延または、圧延より好ましい鍛造プロセスで熱間形成される。大型クランクシャフト用材料には、中でも、鍛鋼品、黒鉛鋳鉄鋳物、マイクロアロイド鍛鋼が最も頻繁に使用される。大型クランクシャフトの製造に際しては、強度が非常に高く、十分な弾力性を持ち、耐摩耗性に優れ、寸法精度があり、低振動性で、しかも低コストであることが重要なファクターとなる。
【0003】
大型の、または非一体的に鍛造されたクランクシャフト用の既知の製造法例を図1(a)〜図1(g)にダイヤグラムで例示する。ここで、“非一体的に鍛造された”なる用語は、巨大なクランクシャフト及びその他の異形の大型軸シャフトコンポーネントは、例えば、自動車の内燃機関で使用するもっと小型のクランクシャフトのように全体を一度には鍛造できないことから用いられる。プロセス上使用する原材料、工作物または素材10は代表的には、周囲温度下に図1(a)に断面で示す如き円筒状の引き抜き素材である。素材10は、例えば長手方向(軸方向)全長Lが20m、重量が200トンのスチール組成のものであり得る。先ず、図1(b)に示す如く、素材10の第1鍛造前セクション12a(斜線で示す)を、その断面をダイヤグラムで例示した多巻き型誘導コイル20内に位置決めする。この誘導コイルに好適な電源(図示せず)から交流電流(AC)が送られ、かくして生じた磁界が鍛造前セクション12aにカップリングして当該鍛造前セクション12aを所望の鍛造前温度に誘導加熱する。鍛造前セクション12aの温度が所望温度となった時点で素材10を鍛造プレス(図示せず)に移送し、第1主ジャーナルまたはクランクピンジャーナル(“第1ジャーナル12”と称する)等の適宜のクランクシャフト特徴部またはコンポーネントに鍛造する。鋼組成用に代表的に使用される鍛造温度は1093〜1316℃(2000〜2400°F)の間であり得る。第1ジャーナル12の鍛造に引き続き、素材10全体を周囲温度付近に冷却する。次いで、素材の第2鍛造前セクション13a(斜線で示す)をこれを図1(c)に示す如く誘導コイル内に位置決めして鍛造温度に加熱する。第1鍛造前セクション12aに対するプロセスと同様に第2鍛造前セクション13aを第2ジャーナル13として鍛造した後、素材の後続する鍛造セクションを加熱するに先立ち素材全体を冷却する。セクション加熱、セクション鍛造、素材冷却の各プロセスステップが大型クランクシャフトの、例えばジャーナル14〜17に関する図1(d)〜図1(g)に例示した如き引き続く各特徴部についてシーケンス的に反復されする。
【0004】
素材全体は、誘導加熱プロセスにおいて鍛造上後続する鍛造前セクションを長手方向全体を通して実質的に一様に加熱させる上で当該鍛造上後続する鍛造前セクションの長手方向全体の初期温度条件を揃える必要上、各セクションの鍛造後に冷却される。冷却ステップを実施しないと先行する(最後の)鍛造セクションからの熱が軸方向に後続するセクションに伝熱して当該後続セクションの軸方向長さの横断温度分布プロファイルを非一様化し、かくして誘導コイル20内での誘導加熱後の当該後続セクションの長手方向における横断温度分布プロファイルが非一様化される。この冷却ステップは、当該ステップ時に熱エネルギーが非回収性熱として周囲に消散され、またエネルギー損失を招くことから、時間浪費的であると共にエネルギー非効率的でもある。結局、全エネルギー消費量は激増し、プロセスの全体効率が著しく低下する。
【0005】
図2(a)〜図2(d)には図1(a)〜図1(g)の各プロセスを通して説明した各セクションの鍛造前加熱後の素材冷却が不十分である場合の影響を例示する。図2(a)に示す如き素材の第1鍛造前セクション12aを誘導加熱するには、素材質量、素材の材料組成、鍛造前の最終要求温度、に依存して約30〜60分以上を要し得る。熱対流により、高温に誘導加熱した鍛造前セクション12aからの有意熱量がもっと低温(周囲温度)の素材端部方向に熱伝導する。図2(a)に示す鍛造前セクション12aの第1加熱ステージの完了後、当該鍛造前セクション12aのクランクシャフト特徴部を鍛造する鍛造装置に素材を移送する。代表的にはこの鍛造装置への移送ステップには数分を要する。更に、図2(b)に示す通り、素材の加熱した前記鍛造前セクションを要求されるクランクシャフト特徴部として鍛造するのに数分を要し、次いで素材を誘導コイル方向に移行して素材の後続する鍛造前セクション13aをコイルに挿通及び加熱するのも数分を要する。結局、鍛造及び移行の各ステップ間に、加熱済みの高温セクションから素材のもっと低温の(非加熱の)各セクション方向に熱伝導する時間がかなりあり、誘導コイル20内に後続する鍛造前セクション、例えば図2(b)に示す如き鍛造前セクション13aを位置決めする時点では、鍛造済みのセクション12から鍛造前セクション13aへの軸方向伝熱(図で“熱”矢印で示す)のせいで当該鍛造前セクション13aには誘導加熱以前に有意量の熱濃縮が残留する。更に重要なことに、この鍛造前セクション13aの熱濃縮により当該鍛造前セクション13aの長さ方向L13に沿った温度分布は非直線化する。
【0006】
また、鍛造前セクション13aの誘導加熱ステップ中に、加熱及び鍛造済みの第1ジャーナル12(図2(b)では前記周囲温度以上に加熱した状況を密斜線で示す)が、前記後続する鍛造前セクション13aに向かう伝導熱流れの熱源として作用し、素材の、誘導加熱された鍛造前セクション13aの温度の一様性を含むところの、過渡的及び最終的な両温度分布に非直線態様での悪影響を及ぼす。同様に、図2(c)に示す如き第2ジャーナルセクション13の加熱及び鍛造ステップの完了時で且つ後続する鍛造前セクション14aの加熱ステップ以前において、素材の各鍛造前セクション内には熱対流による更に別の、しかもずっと複雑な熱流勾配が存在する。素材の鍛造前セクション14aの誘導加熱に先立つ初期温度プロファイルは、図2(c)に示す如き第1及び第2の各ジャーナル12及び13の形成に関連する、加熱シーケンス、鍛造用移送装置、鍛造、コイル移行、の各ステップにより素材内に生じる複雑な熱流れパターンにより形成される。後続する鍛造前セクション15aの誘導加熱に先立つ初期温度分布の非一様性は、図2(d)に示す如き、素材10の先行する第1、第2、第3の各ジャーナル12、13、14の加熱及び鍛造による累積影響のために一段と高くなる。
【0007】
図3(a)〜図3(f)には、図1(a)〜図1(g)で説明したプロセスの、素材の1セクションに関する各誘導加熱及び鍛造ステップにおいて冷却を実施しない場合の、素材10の最終熱条件における初期温度の影響が例示される。図3(a)に示す如く、熱サイクル開始時点で鍛造前セクション12aが多巻き型誘導コイル20の内側に位置決めされる。好適な電源(図示せず)から誘導コイルにAC電流が送られ、発生した磁場が鍛造前セクション12aにカップリングして当該鍛造前セクション12aを誘導加熱する。図3(a)に示す各ポイント、またはノード112から312(各サブスクリプトは各ノードを位置付けたセクションを表す)は、鍛造前セクション12aの表面位置の、鍛造に先立ち一様に誘導加熱する必要のある代表的なクリティカルノードを表す。ノード413は素材の、必要上一様に加熱した鍛造前セクション12aに接近して位置付けたセクション13に位置付けられる。第1の鍛造前セクション12aに関する誘導加熱ステップ開始前の初期軸方向温度分布(T12初期)は一様であり、代表的には周囲温度に相当する。図3(b)では温度に対する各表面ノード位置は、軸方向での初期温度分布(T12初期)と、鍛造前セクション12aに関する誘導加熱ステップ終了時点での必要表面温度分布(T必要最終)とを示す。
【0008】
上述した如く、鍛造前セクション12aの誘導加熱完了後、後続セクションの加熱ステップに関する鍛造用移送装置、鍛造、コイルに移行させた後、鍛造前セクション13aを図3(c)に示す如く誘導コイル20内に位置決めする。上記各プロセスステップでの経過時間中、長手方向軸に沿った伝熱流れにより、温度対各表面ノード位置を表す図3(d)に示す如く、第2鍛造前セクション13aの誘導加熱ステップ開始に先立つ初期温度分布(T13初期)が実質的に非一様化される。初期温度分布(T13初期)は実質的に非一様化されて初期温度分布(T12初期)とはかなり相違したものとなる。図3(d)のグラフのノード113(T1)における初期温度は、一般にT1>T2>T3>T4>(T12初期)の状態下に各ノード213(T2)、313(T3)、414(T4)における各温度より相当高い。鍛造前セクション13aに対する誘導加熱プロセスが鍛造前セクション12aに関して使用するそれと同一である場合は、図3(d)に示すように各代表的ノードでの最終温度(T実際最終)は必要温度(T必要最終)より相当に高い。
【0009】
各鍛造前セクションの誘導加熱後に最終温度を支配するプロセスパラメータには、鍛造前セクションの初期温度、素材の物理特性(主に素材の組成の比熱値)、鍛造前セクションにおける誘導電力、鍛造前セクションの全誘導熱時間、熱伝導及び熱放射による素材からの表面熱損失が含まれ、以下の式から算出できる。
最終=T初期+(P誘導×T誘導)/(m×c)−Q表面 [式(1)]
【0010】
ここで、T誘導は誘導加熱時間(秒)、P誘導は鍛造前セクションにおける誘導電力(kW)、mは鍛造前セクションの誘導加熱質量(kg)、cは素材の材料組成の比熱(J/(kg・℃))、Q表面は放射及び対流を含む表面熱損失(℃)を夫々表すものとする。式(1)は、その他全ての因子が同じであると仮定すると最終温度T最終及び初期温度T初期間に直接相関関係があることを示す。
鍛造前セクション13aに図3(c)に示す加熱ステップ中に誘導熱エネルギーを充分量吸収させた後、素材10を誘導コイル20から外して鍛造装置(図示せず)に移行させて第2ジャーナル13を鍛造し、その後、図3(e)に示す如く素材を誘導コイルに戻し、後続の鍛造前セクション14aを加熱する。しかしながら、この時点におけるノード114から314及び415における初期温度は、図3(f)に温度対表面ノード位置で例示する如くずっと高くなっている。図1(a)〜図1(g)に関して説明したプロセスではこの過熱状況は更に悪化し、後続する鍛造前セクションの誘導加熱に先立つ初期温度条件であるところの(T14初期)が、図3(f)にグラフで示す如く、必要な最終温度(T必要最終)と比較して一段と高くなる。過熱は粒界清算、過剰酸化及びスケールによるメタルロス、脱炭、鍛造中の不正メタル流れ、鍛造欠陥(例えばクラック発生)、または鍛造ダイの過剰損耗等の乱れを生じ得る。これらの乱れは鍛造物品製造性能を低下させ得る。
【0011】
従って、上述した従来プロセスでは、素材の第2、第3の及び引き続く鍛造前セクションの過熱に先立つ素材長手方向に沿った初期温度プロファイルの不安定性が、各鍛造前セクションの熱的条件を、所望されざる、当該鍛造前セクションの長手方向軸線に沿った温度一様性の欠如を含むものとする恐れがある。上述した従来プロセスでは各鍛造前セクションの鍛造後、次の鍛造前ステップの誘導加熱以前の非効率的な冷却ステップによりこの恐れを回避している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
素材から大型クランクシャフトあるいはその他の、複数の異形の円筒状コンポーネントを有する大型シャフト物品等の非一体的に鍛造された物品を、先行する各熱累積ステップ中に素材に吸収された熱を利用し且つ必要エネルギー消費量を低減しつつ、各加熱済み鍛造前セクションの鍛造後にクランクシャフトを冷却する必要無しに、各鍛造前セクションをシーケンス的に誘導加熱することによる製造装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一様相によれば、シャフトの各個別セクションの誘導加熱後に個別鍛造する複数の異形円筒状コンポーネントを有する大型の非一体的に鍛造されたシャフト工作物の製造装置及び方法が提供される。シャフトは、当該シャフトの後続する誘導加熱及び鍛造セクションの軸方向長さに沿った実際の温度分布を検出することにより、鍛造及び加熱の各ステップ間の冷却無しに誘導加熱及び鍛造が連続的に実施される。後続セクションの温度プロファイルは、当該後続セクションの鍛造に先立ち、その軸方向に沿って必要な(例えば実質的に一様な)温度プロファイルが達成されるよう、当該後続セクション長さにおける誘導加熱電力量を調節するために使用される。鍛造したシャフト工作物からの温度プロファイル検出データは、後続の被鍛造シャフト工作物の長さ方向に沿った誘導加熱電力量の適応調節用に使用し得る。
本発明の他の様相によれば、本明細書に開示する方法により製造される、複数の異形の円筒状コンポーネントを有する大型の非一様鍛造シャフト工作物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(a)−1(g)は、非一様の鍛造クランクシャフトの製造プロセスで用いる誘導加熱及び鍛造の各ステップのシーケンスのダイヤグラム図である。
図2図2(a)−2(d)は、素材の各セクションをその鍛造後に周囲温度に冷却しない場合における、素材長手方向に沿って連続する各鍛造前セクションの誘導加熱に際して素材軸方向長さに沿って高温化する部分を示すダイヤグラム図である。
図3図3(a)−3(f)は、素材の第2及び第3の各鍛造前セクションの誘導加熱に先立つ、非一様鍛造製造物の引き続く各鍛造前セクションをその鍛造完了後に周囲温度に冷却しない場合の、代表的な非一様の初期温度プロファイル、その最終温度分布に対する影響、及び過熱状況を表すダイヤグラム図及びグラフである。
図4図4(a)−4(c)は、本発明で使用する、シャフト工作物の鍛造前セクションの長手方向軸に沿った表面温度の検出方法の例示図である。
図5(a)】図5(a)は、工作物の鍛造前セクションの長手方向軸に沿って印加する誘導電流を動的制御する、本発明で使用する誘導加熱装置の種々の構成の例示図である。
図5(b)】図5(b)は、工作物の鍛造前セクションの長手方向軸に沿って印加する誘導電流を動的制御する、本発明で使用する誘導加熱装置の種々の構成の例示図である。
図5(c)】図5(c)は、工作物の鍛造前セクションの長手方向軸に沿って印加する誘導電流を動的制御する、本発明で使用する誘導加熱装置の種々の構成の例示図である。
図5(d)】図5(d)は、工作物の鍛造前セクションの長手方向軸に沿って印加する誘導電流を動的制御する、本発明で使用する誘導加熱装置の種々の構成の例示図である。
図5(e)】図5(e)は、工作物の鍛造前セクションの長手方向軸に沿って印加する誘導電流を動的制御する、本発明で使用する誘導加熱装置の種々の構成の例示図である。
図5(f)】図5(f)は、工作物の鍛造前セクションの長手方向軸に沿って印加する誘導電流を動的制御する、本発明で使用する誘導加熱装置の種々の構成の例示図である。
図5(g)】図5(g)は、工作物の鍛造前セクションの長手方向軸に沿って印加する誘導電流を動的制御する、本発明で使用する誘導加熱装置の種々の構成の例示図である。
図5(h)】図5(h)は、工作物の鍛造前セクションの長手方向軸に沿って印加する誘導電流を動的制御する、本発明で使用する誘導加熱装置の種々の構成の例示図である。
図5(i)】図5(i)は、工作物の鍛造前セクションの長手方向軸に沿って印加する誘導電流を動的制御する、本発明で使用する誘導加熱装置の種々の構成の例示図である。
図6図6は、本発明で利用する、非一様鍛造工作物製造に際して誘電エネルギー印加と共に使用する制御装置の一例を表すブロックダイヤグラム図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図4(a)〜図4(c)には、本発明で使用し得る、あるセクションの軸方向長さに沿った鍛造前温度検出の一例が示される。本例では工作物または素材10は円筒形状であり、その軸方向長さは当該円筒形状の長手方向中心軸(中心線)と平行方向で測定される。上述した如き従来プロセスにおいて、当該第1鍛造前セクションの初期軸方向温度分布プロファイルが、例えば要求通りの一様な周囲温度である場合、第1鍛造前セクション12aを誘導加熱(図4(a)に示す如く)及び鍛造し得る。
【0016】
誘導加熱コイルアセンブリ22に第2(及び引き続く)鍛造前セクション13aを装填するに先立ち、例えば、コイルアセンブリ22内にへの素材装填時に、好適な温度検出装置(TS)30により素材の鍛造前セクション温度を測定して長手方向軸(軸方向長さ)の温度分布プロファイルを生成し得る。温度検出装置30は、例えば、コイルアセンブリの素材入口端22aの手前でX軸に沿って分布させた単独または多数の高温計であり得る。1つ以上の温度センサが、コイルアセンブリの素材入口端への素材挿通(図4(b)で左から右方向への)時にその表面温度を検出し得る。温度読み取りは素材の軸方向長さが1つ以上の温度センサを通過する際に連続的または個別に実施し得る。
【0017】
1つ以上の温度センサは交互に、素材の厚み中に入る温度を測定するタイプ、または任意範囲の電磁スペクトルを利用して温度検出するタイプのものであり得る。多数のセンサを共通支持ラック上にアセンブリ化し得る。円周方向の非一様温度が関心事項である場合、素材及びまたはセンサを回転させ得、あるいは各センサで素材周囲を包囲させ得る。あるいは、1つ以上の温度センサをコイルアセンブリ22内に間隔を置いて配置し、かくしてコイルアセンブリ中への素材挿通時または挿通後に温度を検出し得る。
【0018】
本発明の1実施例では、素材10の残余の非鍛造部分が誘導コイルアセンブリ22内の加熱位置に移動するに従い、素材の被鍛造過熱用の後続セクションの長手方向軸に沿った初期予備過熱表面温度プロファイルを検出し得、且つ単一の高温計で監視し得る。高温計はコイルアセンブリの入口端22aの手前側に位置決めされ、好適な搬送装置を介して非鍛造素材がコイルアセンブリ内に挿入される間、当該高温計が素材の被誘導加熱用の後続セクションの長手方向に沿った表面温度をスキャンまたは検出し、スキャンした温度データを制御装置(C)32に送り、当該制御装置32が、コイルアセンブリの構成及び当該コイルアセンブリに接続した1つ以上の電源の出力パラメータ等の好適なインターフェースを介して誘導加熱システムの各コンポーネントを制御し、かくして、素材の鍛造前セクション13aの軸方向長さに沿った要求温度分布を実現する。
【0019】
図4(c)に示す如く、温度検出装置30からのデータは制御装置32に送られ、当該制御装置において、コイルアセンブリ22の各コンポーネントにおける通過AC電流が確立する磁場(磁束)分布が改変され、図4(c)に示す誘導加熱中の鍛造前セクション13a内の誘導パワー密度を要求温度分布に応じて再配分させるために使用される。誘導パワー密度の再配分は図4(c)にグラフで示す初期(実際の温度プロファイル(T13初期)の非一様性を補償し、鍛造前セクション13aで要求される最終加熱条件(T要求最終)(例えば一様な)を提供する。誘導パワー密度を改変せずに非一様な初期温度プロファイル(T13初期)から得た最終温度プロファイル(T従来最終)は要求温度分布(T要求最終)と比較して相当に相違したものとなる。制御下の加熱プロファイルが存在しないと素材の任意セクションの鍛造特性は望ましからざるものとなり得る。
【0020】
本発明の特定用途に依存して、別態様の誘導コイルアセンブリ22を使用して図5(a)に示す如き被誘導加熱用の鍛造前セクション13a(及び引き続く素材の鍛造前セクション)の軸方向長さに沿った誘導パワー密度を再配分及び選択制御し得る。
【0021】
図(5b)には被加熱用の鍛造前セクションの軸方向長さに沿った誘導パワー密度の再配分及び選択的制御用に本発明で使用するコイルアセンブリの一例が例示される。多巻き型ソレノイド型誘導コイル23は、鍛造前セクション13aの誘導加熱時に当該鍛造前セクション13aの非一様性(あるいはそうでなければ望ましからざる)の初期表面温度プロファイルを補償するべく選択使用可能なエンドタップアセンブリ23a及び23bをコイルの各端部位置に含む。制御装置32は、適宜のコイルエンドタップが電源40の出力に接続されるよう、エンドタップコネクタ23a’及び23b’の位置を制御し得る。制御装置32は、温度検出装置30から送られた温度データに基づき、鍛造前セクション13aにおける誘導加熱分布を改変してその軸方向長さに沿った要求鍛造前温度を生じさせるべく当該鍛造前セクション13aを誘導加熱するよう、当該鍛造前セクション13aの誘導加熱に先立ちあるいはその最中に、コイル端部位置の適宜のコイルエンドタップ端子23a及びまたは23bを切り替える。
【0022】
図5(c)には、被加熱鍛造前セクションの軸方向長さに沿った誘導パワー密度を再配分及び選択制御するために本発明で使用するコイルアセンブリの他の実施例が例示される。誘導コイル24の1つ以上のコイルセクション(代表的には点線で示す)を横断するキャパシタバンク24aまたは24bにおける1つ以上のキャパシタ素子Cの各々を選択的に接続する(例えば、図示しないコネクタで)ことにより、局在するコイル共振(L−C)回路から選択した要求部分における誘導電流強度を増大させて当該コイルに挿通した鍛造前セクションを部分的に誘導加熱させ得、かくして温度検出装置30により検出された非一様な初期表面温度プロファイルを補償させ得る。
【0023】
図5(d)には、被加熱用鍛造前セクションの軸方向長さに沿った誘導パワー密度を再配分及び選択制御するために本発明で使用する他の実施例におけるコイルアセンブリが例示される。本実施例では、個別制御された2つの電源40a及び40b(例えば、個別制御された2つのインバータ出力用AC電源)から誘導コイル25の少なくとも2つのコイルセクション25a及び25bに電力を供給する。各電源からの電力の個別制御は、鍛造前セクション13aの非一様な(あるいはそうでなければ望ましからざる)初期表面温度プロファイルを補償するために使用し得、他方、可変のエンドコイルタップ、または図(5(b)または図5(c)に夫々例示するキャパシタ素子の何れかをも組み込み得る。各電源からの出力パワーの制御は、出力周波数及びまたは、例えばパルス幅変調制御スキームにより達成される出力パワーの大きさであり得る。
【0024】
図5(e)には被加熱用鍛造前セクションの軸方向長さに沿った誘導パワー密度の再配分及び選択制御用に本発明で使用する他の実施例におけるコイルアセンブリの他の実施例を示す。1つ以上の切り替え装置、例えば、例示した切り替え装置50a及びまたは50bを用いて多巻き型ソレノイド式誘導コイル26の1つ以上のコイル巻きを電気的に短絡させて鍛造前セクション13aの軸方向長さに沿った誘導パワー密度を再配分させ、かくして温度検出装置30の測定した初期の望ましからざる表面温度プロファイルを補償させ得る。
【0025】
図5(f)及び図5(g)には、被加熱用鍛造前セクションの軸方向長さに沿った誘導パワー密度の再配分及び選択制御用に本発明で使用する更に他の実施例におけるコイルアセンブリを例示する。誘導コイル26は、鍛造前セクション13aの軸方向長さに沿った誘導パワー密度を再配分して望ましからざる予備加熱表面温度分布プロファイルを補償し、且つ当該鍛造前セクション13aにおける要求最終鍛造前温度条件を確立するために使用する、多数の層と、多巻き型誘導コイルとを含む。図5(g)には、誘導コイル26の各対向端部分で多層化したコイル構成を例示する。例えば、切り替え装置52a及びまたは52bを使用して、鍛造前セクション13aにおける誘導パワー密度を再配分させるべく多層型の誘導コイル26のコイル端26a及び26bの回路構成を選択的に変更させて望ましからざる初期の予備加熱表面温度分布を補償し、かくして鍛造前セクション13aにおける要求最終鍛造前熱条件を確立させ得る。
【0026】
図5(h)及び図5(i)には、被加熱用鍛造前セクションの軸方向長さに沿った誘導パワー密度の再配分及び選択制御用に本発明で使用する他の実施例におけるコイルアセンブリの他の実施例を示す。誘導コイル27は図示の如く平行に接続した少なくとも2つのコイルセクション27a及び27bを含む。図5(i)を参照するに、誘導コイル27は、平行接続され螺旋状に交互する2つのコイルセクション27a及び27bに代表される二重螺旋構造を有する。本発明の当該特定例では交互巻きされた誘導コイル27は、“偶数”のコイルセクション27a(図5(i)では白抜きの四角形で示す)と、“奇数”のコイルセクション27b(図5(i)では塗りつぶした四角形で示す)とを織り交ぜた構成を有する。奇数または偶数のコイルセクションの一方(例えば奇数のコイルセクション27b)に電源を入れ及び切ると制御装置32が鍛造前セクションの軸方向長さに沿った誘導加熱源(誘導パワー密度)を再配分し、それが望ましからざる初期の(代表的には非一様な)軸方向長さの表面温度分布を補償し、かくして誘導コイルに挿入した鍛造前セクションに関する要求最終温度条件を実現する。図5(i)に示す実施例は随意的には図5(f)及び図5(g)に関して先に説明した如き端部多層型コイル構成をも含む。
特定用途において、上述した種々のコイルアセンブリ組み合わせを本発明で使用することにより被加熱用鍛造前セクションの軸方向長さに沿った誘導パワー密度を再配分及び選択制御し得る。
【0027】
図7には更に、本発明で使用する制御装置の一例を例示する。プロセッサ80はプログラム可能なロジックコントローラ等の任意の好適なコンピュータープロセスユニットであり得る。1つ以上の温度検出装置30が、少なくとも、鍛造用に誘導コイルアセンブリ内で誘導加熱するべき後続の鍛造前セクションのために素材の軸方向長さに沿った温度データを入力する。随意的には、素材を誘導コイルアセンブリに挿入する都度、残余の素材の全軸方向長さに沿った温度を入力し、当該残余の素材の全長さに沿った加熱プロファイルにおける動的変化を記録し得る。1つ以上の位置センサ34(レーザービームセンサ等)からのプロセッサへの追加的入力により、入力済みの温度データと素材の軸方向長さに沿った特定位置とが座標化される。プロセッサ80は1つ以上の加熱用コンピュータープログラムを実行し、入力温度データを分析して実際の素材温度分布プロファイルを生成する。プログラムは、実際の素材温度分布プロファイルを、デジタル記憶装置86に保存されまたは好適な入力装置88を介してオペレーター要員が入力し得るところの要求鍛造前素材温度分布プロファイルと比較する。ソフトウェアは、鍛造前素材の実際の及び要求される各温度分布プロファイル間の差と、インストールされた特定の誘導加熱システムとに依存して実行される誘導加熱システム制御プログラムを発生する。誘導加熱システム制御レジームに応じ、プロセッサ80は好適な入出力(I/O)装置81を介し、例えば、図5(a)〜図5(i)にも記載される組み込み済みの特定コイルアセンブリに関連する電気的な切り替え装置83に、また、組み込み済みの特定の誘導加熱システムに関わる1つ以上の電源に関連する制御回路に制御信号を出力する。例えば、1つ以上の電源の単数あるいは複数の出力インバータにおけるIGBTゲーティングコントロールを使用して、1つ以上の各電源の出力パワーの大きさ及び継続時間を制御し得る。素材への誘導電力印加は、素材が尚、コイルアセンブリに挿入される間に開始し得、または素材をコイルアセンブリ中に完全に挿通した後に開始させ得る。物理的及び冶金的組成が同じである異なる各素材の各セクションのシーケンス的加熱に際し制御装置は、先行する素材の加熱で用いた加熱システム制御レジームを保存メモリから呼び出すことで後続の類似素材に対する加熱システム制御レジーム決定を促進させる。
“大型の”とは、一回の鍛造プロセスではその全体を鍛造し得ないシャフト工作物に対して参照される。一般に、それらのシャフト工作物には、直径が75mm(3インチ)、長さが1メートルを超えるジャーナルを有するクランクシャフトが含まれる。
本発明の上述した各実施例における製造物品は被一体の鍛造クランクシャフトであるが、本発明は、物品の1セクションに関する特定の鍛造前軸温度プロファイルが所望されるその他の被一体の鍛造製造物品に対してより一般的に適用され得るものである。
一様な表面温度プロファイルは誘導コイルアセンブリに挿入する鍛造前セクションの軸方向長さに沿った要求端部温度プロファイルとして示したが、本発明の他の実施例ではその他の非一様の端部温度プロファイルを本発明のプロセスにより実現し得るものとする。
以上、本発明を実施例を参照して説明したが、本発明の内で種々の変更をなし得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0028】
10 素材
12a 第1鍛造前セクション
13a 第2鍛造前セクション
22 誘導加熱コイルアセンブリ
22a 素材入口端
22 誘導コイルアセンブリ
23 ソレノイド型誘導コイル
23a コイルエンドタップ端子
24 誘導コイル
24a キャパシタバンク
25 誘導コイル
25a コイルセクション
26 誘導コイル
26a コイル端
27 誘導コイル
27a コイルセクション
27b コイルセクション
30 温度検出装置
32 制御装置
34 位置センサ
40 電源
40a 電源
40b 電源
50a 切り替え装置
52a 切り替え装置
80 プロセッサ
81 入出力装置
83 電気的な切り替え装置
86 デジタル記憶装置
88 入力装置
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図5(d)】
図5(e)】
図5(f)】
図5(g)】
図5(h)】
図5(i)】
図6