特許第5792175号(P5792175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5792175オリゴマー−カルシミメティクスコンジュゲートおよび関連化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792175
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】オリゴマー−カルシミメティクスコンジュゲートおよび関連化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/30 20060101AFI20150917BHJP
   C08G 65/333 20060101ALI20150917BHJP
   A61K 47/48 20060101ALI20150917BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20150917BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20150917BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20150917BHJP
   A61P 5/18 20060101ALN20150917BHJP
【FI】
   C07C211/30
   C08G65/333
   A61K47/48
   A61K47/34
   A61K31/137
   !A61K45/00
   !A61P5/18
【請求項の数】14
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2012-531124(P2012-531124)
(86)(22)【出願日】2010年9月29日
(65)【公表番号】特表2013-505966(P2013-505966A)
(43)【公表日】2013年2月21日
(86)【国際出願番号】US2010050761
(87)【国際公開番号】WO2011056325
(87)【国際公開日】20110512
【審査請求日】2013年9月25日
(31)【優先権主張番号】61/246,931
(32)【優先日】2009年9月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313005927
【氏名又は名称】ウェルズ ファーゴ バンク ナショナル アソシエイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リッグス−ソーシエ, ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】チェン, リン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン, デイビッド
【審査官】 瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/121386(WO,A1)
【文献】 特表2007−514761(JP,A)
【文献】 MARCUS YONIT,TURNING LOW-MOLECULAR-WEIGHT DRUGS INTO PROLONGED ACTING PRODRUGS BY REVERSIBLE PEGYLATION: 以下備考,JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,2008年 7月,V51 N14,P4300-4305,A STUDY WITH GENTAMICIN
【文献】 URENA PABLO,CALCIMIMETIC AGENTS: REVIEW AND PERSPECTIVES,KIDNEY INTERNATIONAL,2003年 6月,V63 N85,P S91-S96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 211/30
A61K 47/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化105】

に包含される化合物であって
式中
Xは、エーテル、アミド、ウレタン、アミン、チオエーテル、尿素、単結合、または炭素−炭素結合を含む連結であり、
POLYは、ポリ(エチレンオキシド)である化合物。
【請求項2】
前記ポリ(エチレンオキシド)が約1〜約30のモノマーを有する、請求項に記載の化合物。
【請求項3】
前記ポリ(エチレンオキシド)が約1〜約10のモノマーを有する、請求項に記載の化合物。
【請求項4】
前記ポリ(エチレンオキシド)がアルコキシまたはヒドロキシエンドキャッピング部分を含む、請求項に記載の化合物。
【請求項5】
前記ポリ(エチレンオキシド)が2,000ダルトンより小さい分子量を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記ポリ(エチレンオキシド)が2,000ダルトンより大きい分子量を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
前記連結が安定した連結である、請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記連結が遊離可能な連結である、請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
前記連結が1つ以上のアミノ酸を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
前記連結が単一のアミノ酸を含む、請求項に記載の化合物。
【請求項11】
前記連結が2個のアミノ酸を含む、請求項に記載の化合物。
【請求項12】
以下の式
【化111】

【化112】

のいずれかに包含される、請求項1〜11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物と、場合により、薬学的に許容される賦形剤とを含む、組成物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物を含む組成物であって、前記化合物が剤形で存在する、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2009年9月29日に出願された米国仮特許出願第61/246,931号の優先権の利益を主張するものであり、その開示全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、(特に)コンジュゲート化されていない形態のカルシミメティクスと比して特定の利点を有する、カルシミメティクスのコンジュゲートを含む。本明細書に記載されるコンジュゲート(「発明化合物」および「本発明の化合物」とも称される)は、(特に)創薬、薬物療法、生理学、有機化学およびポリマー化学の分野に関する、および/またはこのような分野における1つまたは複数の用途を有する。
【背景技術】
【0003】
カルシミメティクスは、様々なヒト臓器組織で発現するカルシウム感知受容体をアロステリックに活性化することにより、組織に対するカルシウムの作用を模倣する小分子薬物である。カルシミメティクスは、数ある用途の中でも特に、副甲状腺癌および慢性腎不全により引き起こされることの多い副甲状腺機能亢進症に罹患した患者の治療に用いられる。市販のカルシミメティクスは(αR)−(−)−α−メチル−N−[3−[3−[トリフルオロメチルフェニル]プロピル]−1−ナフタレンメタンアミン(napthalenemethanamine)すなわちシナカルセトであり、北米およびオーストラリアでは商標SENSIPAR(登録商標)のシナカルセトとして(Amgen Inc.、Thousand Oaks,CA)、および欧州では商標MIMPARA(登録商標)のシナカルセトとして(Amgen Inc.、Thousand Oaks,CA)販売されている。
【0004】
簡潔には、カルシミメティクスは、カルシウム受容体を活性化させることにより副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を減少させる経口で有効な小分子のクラスである。副甲状腺ホルモンの分泌は、通常はカルシウム感知受容体により調節される。カルシミメティクスは、副甲状腺ホルモンの放出を阻害するこの受容体の対カルシウム感受性を増加させ、それにより副甲状腺ホルモンレベルを数時間以内に低下させる。
【0005】
シナカルセトはカルシミメティクスの代表的なメンバーとして利用可能であるにも関わらず、患者におけるその使用には欠点が伴う。たとえば、シナカルセトはCYP2D6の阻害薬であり、CYP2D6により代謝される薬物の血中濃度を上昇させ得る。したがって、シナカルセトを他の薬物と同時投与すると、有害な薬物間相互作用が生じ得る。加えて、シナカルセトは一般に少なくとも1日1回投与されるが、それほど頻回でない用量(たとえば、週1回投与)であれば、より好都合なレジメンを実現し得る。さらに、半減期がシナカルセトの30〜40時間より長いカルシミメティクスであれば、低カルシウム血症の可能性、ならびにCmaxが低下することおよび/またはCmaxから外れている時間が長くなることに関連する他のリスクが回避され得る。カルシミメティクスからこれらの副作用の1つまたは複数が削減されたならば、治療薬としてのその価値が高まるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術におけるこれらの需要や他の需要に対処しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つ以上の実施形態では、安定したまたは遊離可能な連結によって水溶性非ペプチドオリゴマーと共有結合的に結合されたカルシミメティクス残基を含む化合物、およびその薬学的に許容される酸付加塩または錯体が得られる。カルシミメティクスのエナンチオマーの組成物もまた企図され、ここでこの組成物は一方のエナンチオマーを他方より多量に含み(たとえば、一方のエナンチオマーが組成物中に実質的に存在し、他方のエナンチオマーが組成物中に実質的に存在しない)、Rエナンチオマーが好ましい。
【0008】
本発明の例示としての化合物は、安定したまたは遊離可能な連結によって水溶性非ペプチドオリゴマーと共有結合的に結合されたカルシミメティクス(calicimimetic)残基を含む化合物、およびその薬学的に許容される酸付加塩または錯体を含む。
【0009】
本発明の例示としての化合物は、以下の構造を有するものを含む。
【化1】

式中、
【化2】

は、3−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよび1−ナフチルからなる群から選択され、
各Rは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、フェニル、−CF、−CFH、−CFH、低級アルキル(たとえば、−CH)、−O−低級アルキル(たとえば、−OCH)、−OCHCF、−OH、−CN、−NO、−C(O)−低級アルキル(たとえば、−C(O)CH)、−C(O)O−低級アルキル(たとえば、−C(O)OCH)、−C(O)NH−低級アルキル(たとえば、−C(O)NH−CH)、−C(O)N−低級アルキル(たとえば、−C(O)N(CH)、−OC(O)−低級アルキル(たとえば、−OC(O)CH)、および−NH−C(O)−低級アルキル(たとえば、−NH−C(O)CH)からなる群から選択され、
(a)は、1〜5の整数であり、
は、低級アルキル(たとえば、メチル)であり、
式中、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなる群から選択され、
Xは、スペーサー部分(または「連結」)であり、
POLYは、水溶性非ペプチドオリゴマーである。
【0010】
本発明のさらなる例示としての化合物は、以下の構造を有するものを含む。
【化3】

式中、
【化4】

は、3−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよび1−ナフチルからなる群から選択され、
各Rは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、フェニル、−CF、−CFH、−CFH、低級アルキル(たとえば、−CH)、−O−低級アルキル(たとえば、−OCH)、−OCHCF、−OH、−CN、−NO、−C(O)−低級アルキル(たとえば、−C(O)CH)、−C(O)O−低級アルキル(たとえば、−C(O)OCH)、−C(O)NH−低級アルキル(たとえば、−C(O)NH−CH)、−C(O)N−低級アルキル(たとえば、−C(O)N(CH)、−OC(O)−低級アルキル(たとえば、−OC(O)CH)、および−NH−C(O)−低級アルキル(たとえば、−NH−C(O)CH)からなる群から選択され、
(a)は、1〜5の整数であり、
式中、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなる群から選択され、
Xは、スペーサー部分(または「連結」)であり、
POLYは、水溶性非ペプチドオリゴマーである。
【0011】
本発明のさらなる例示としての化合物は、以下の構造を有するものを含む。
【化5】

式中、
【化6】

は、3−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよび1−ナフチルからなる群から選択され、
各Rは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、フェニル、−CF、−CFH、−CFH、低級アルキル(たとえば、−CH)、−O−低級アルキル(たとえば、−OCH)、−OCHCF、−OH、−CN、−NO、−C(O)−低級アルキル(たとえば、−C(O)CH)、−C(O)O−低級アルキル(たとえば、−C(O)OCH)、−C(O)NH−低級アルキル(たとえば、−C(O)NH−CH)、−C(O)N−低級アルキル(たとえば、−C(O)N(CH)、−OC(O)−低級アルキル(たとえば、−OC(O)CH)、および−NH−C(O)−低級アルキル(たとえば、−NH−C(O)CH)からなる群から選択され、
(a)は、1〜5の整数であり、
は、低級アルキル(たとえば、メチル)であり、
式中、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなる群から選択され、
Xは、スペーサー部分(または「連結」)であり、
POLYは、水溶性非ペプチドオリゴマーである。
【0012】
本発明のさらなる例示としての化合物は、以下の構造を有するものを含む。
【化7】

式中、
【化8】

は、3−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよび1−ナフチルからなる群から選択され、
各Rは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、フェニル、−CF、−CFH、−CFH、低級アルキル(たとえば、−CH)、−O−低級アルキル(たとえば、−OCH)、−OCHCF、−OH、−CN、−NO、−C(O)−低級アルキル(たとえば、−C(O)CH)、−C(O)O−低級アルキル(たとえば、−C(O)OCH)、−C(O)NH−低級アルキル(たとえば、−C(O)NH−CH)、−C(O)N−低級アルキル(たとえば、−C(O)N(CH)、−OC(O)−低級アルキル(たとえば、−OC(O)CH)、および−NH−C(O)−低級アルキル(たとえば、−NH−C(O)CH)からなる群から選択され、
(a’)は、1〜4の整数であり、
は、低級アルキル(たとえば、メチル)であり、
式中、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなる群から選択され、
Xは、スペーサー部分(または「連結」)であり、
POLYは、水溶性非ペプチドオリゴマーである。
【0013】
「カルシミメティクス残基」は、(直接または間接的に)1つ以上の水溶性非ペプチドオリゴマーを結合するよう機能する1つ以上の結合が存在することで変化するカルシミメティクスの構造を有する化合物である。
【0014】
この点について、カルシミメティクスである化合物のいずれも、カルシミメティクスとして用いることができる。好ましいカルシミメティクスは米国特許第6,011,068号明細書に記載されている。
【0015】
例示としてのカルシミメティクス部分は、以下の式Iに包含される構造を有する。
【化9】

式中、
alkは、n−プロピレン、2,4−ブチレンおよび1,3−ブチレンからなる群から選択され、
は、1〜3個の炭素原子の低級アルキルおよび1〜7個のハロゲン原子で置換された1〜3個の炭素原子の低級ハロアルキルからなる群から選択され、
およびRは、OCF、1〜3個の炭素原子の低級アルキル、1〜7個のハロゲン原子で置換された1〜3個の炭素原子の低級ハロアルキル、1〜3個の炭素原子の低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、1〜3個の炭素原子の低級アルキルアミド、シアノ、ヒドロキシ、2〜4個の炭素原子のアシル、1〜3個の炭素原子の低級ヒドロキシアルキル、および1〜3個の炭素原子の低級チオアルキルからなる群から独立して選択される1〜5個の置換基で場合により置換されていてもよい5〜7員環を有する、独立に選択された単環式または二環式炭素環式アリール基またはシクロアルキル基であり、
場合により、Rがフェニルである場合、前記フェニルRは、4−OH−フェニルではない少なくとも1個の置換基を有してもよい。
【0016】
好ましいカルシミメティクスは、以下の式に包含される。
【化10】

式中、
【化11】

は、3−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよび1−ナフチルからなる群から選択され、
各Rは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、フェニル、−CF、−CFH、−CFH、低級アルキル(たとえば、−CH)、−O−低級アルキル(たとえば、−OCH)、−OCHCF、−OH、−CN、−NO、−C(O)−低級アルキル(たとえば、−C(O)CH)、−C(O)O−低級アルキル(たとえば、−C(O)OCH)、−C(O)NH−低級アルキル(たとえば、−C(O)NH−CH)、−C(O)N−低級アルキル(たとえば、−C(O)N(CH)、−OC(O)−低級アルキル(たとえば、−OC(O)CH)、および−NH−C(O)−低級アルキル(たとえば、−NH−C(O)CH)からなる群から選択され、
(a)は、1〜5の整数であり、
は、低級アルキル(たとえば、メチル)であり、
式中、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなる群から選択される。
【0017】
本発明の1つ以上の実施形態では、安定したまたは遊離可能な連結によって水溶性非ペプチドオリゴマーと共有結合的に結合されたカルシミメティクス残基を含む化合物と、場合により、薬学的に許容される賦形剤とを含む、組成物が得られる。
【0018】
本発明の1つ以上の実施形態では、安定したまたは遊離可能な連結によって水溶性非ペプチドオリゴマーと共有結合的に結合されたカルシミメティクス残基を含む化合物であって、剤形で存在する化合物を含む、剤形が得られる。
【0019】
本発明の1つ以上の実施形態では、水溶性非ペプチドオリゴマーをカルシミメティクスに共有結合的に結合することを含む、方法が得られる。
【0020】
本発明の1つ以上の実施形態では、安定したまたは遊離可能な連結によって水溶性非ペプチドオリゴマーと共有結合的に結合されたカルシミメティクス残基を含む化合物を投与することを含む、方法が得られる。
【0021】
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
連結によって水溶性非ペプチドオリゴマーと共有結合的に結合されたカルシミメティクス残基を含む化合物。
(項目2)
以下の式:
【化101】


に包含され、
式中、
【化102】


は、3−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよび1−ナフチルからなる群から選択され、
各Rは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、フェニル、−CF、−CFH、−CFH、低級アルキル、−O−低級アルキル、−OCHCF、−OH、−CN、−NO、−C(O)−低級アルキル、−C(O)O−低級アルキル、−C(O)NH−低級アルキル、−C(O)N−低級アルキル、−OC(O)−低級アルキル、および−NH−C(O)−低級アルキルからなる群から選択され、
(a)は、1〜5の整数であり、
は、低級アルキルであり、
式中、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなる群から選択され、
Xは、スペーサー部分であり、
POLYは、水溶性非ペプチドオリゴマーである、項目1に記載の化合物。
(項目3)
以下の式:
【化103】


に包含され、
式中、
【化104】
は、3−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよび1−ナフチルからなる群から選択され、
各Rは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、フェニル、−CF、−CFH、−CFH、低級アルキル、−O−低級アルキル、−OCHCF、−OH、−CN、−NO、−C(O)−低級アルキル、−C(O)O−低級アルキル、−C(O)NH−低級アルキル、−C(O)N−低級アルキル、−OC(O)−低級アルキル、および−NH−C(O)−低級アルキルからなる群から選択され、
(a)は、1〜5の整数であり、
式中、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなる群から選択され、
Xは、スペーサー部分であり、
POLYは、水溶性非ペプチドオリゴマーである、項目1に記載の化合物。
(項目4)
以下の式:
【化105】


に包含され、
式中、
【化106】


は、3−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよび1−ナフチルからなる群から選択され、
各Rは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、フェニル、−CF、−CFH、−CFH、低級アルキル、−O−低級アルキル、−OCHCF、−OH、−CN、−NO、−C(O)−低級アルキル、−C(O)O−低級アルキル、−C(O)NH−低級アルキル、−C(O)N−低級アルキル、−OC(O)−低級アルキル、および−NH−C(O)−低級アルキルからなる群から選択され、
(a)は、1〜5の整数であり、
は、低級アルキルであり、
式中、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなる群から選択され、
Xは、スペーサー部分であり、
POLYは、水溶性非ペプチドオリゴマーである、項目1に記載の化合物。
(項目5)
以下の式:
【化107】


に包含され、
式中、
【化108】


は、3−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよび1−ナフチルからなる群から選択され、
各Rは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、フェニル、−CF、−CFH、−CFH、低級アルキル、−O−低級アルキル、−OCHCF、−OH、−CN、−NO、−C(O)−低級アルキル、−C(O)O−低級アルキル、−C(O)NH−低級アルキル、−C(O)N−低級アルキル、−OC(O)−低級アルキル、および−NH−C(O)−低級アルキルからなる群から選択され、
(a’)は、1〜4の整数であり、
は、低級アルキルであり、
式中、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなる群から選択され、
Xは、スペーサー部分であり、
POLYは、水溶性非ペプチドオリゴマーである、項目1に記載の化合物。
(項目6)
前記カルシミメティクス残基が、以下の式:
【化109】


に包含されるカルシミメティクスの残基であり、
式中、
alkは、n−プロピレン、2,4−ブチレンおよび1,3−ブチレンからなる群から選択され、
は、1〜3個の炭素原子の低級アルキルおよび1〜7個のハロゲン原子で置換された1〜3個の炭素原子の低級ハロアルキルからなる群から選択され、
およびRは、OCF、1〜3個の炭素原子の低級アルキル、1〜7個のハロゲン原子で置換された1〜3個の炭素原子の低級ハロアルキル、1〜3個の炭素原子の低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、1〜3個の炭素原子の低級アルキルアミド、シアノ、ヒドロキシ、2〜4個の炭素原子のアシル、1〜3個の炭素原子の低級ヒドロキシアルキル、および1〜3個の炭素原子の低級チオアルキルからなる群から独立して選択される1〜5個の置換基で場合により置換されていてもよい5〜7員環を有する、独立に選択された単環式または二環式炭素環式アリール基またはシクロアルキル基である、項目1に記載の化合物。
(項目7)
前記カルシミメティクス残基が、以下の式:
【化110】
に包含されるカルシミメティクスの残基であり、
式中、
【化111】


は、3−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよび1−ナフチルからなる群から選択され、
各Rは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、フェニル、−CF、−CFH、−CFH、低級アルキル、−O−低級アルキル、−OCHCF、−OH、−CN、−NO、−C(O)−低級アルキル、−C(O)O−低級アルキル、−C(O)NH−低級アルキル、−C(O)N−低級アルキル、−OC(O)−低級アルキル、および−NH−C(O)−低級アルキルからなる群から選択され、
(a)は、1〜5の整数であり、
は、低級アルキルであり、
式中、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなる群から選択される、項目1に記載の化合物。
(項目8)
前記カルシミメティクス残基がシナカルセトの残基である、項目1に記載の化合物。
(項目9)
前記水溶性非ペプチドオリゴマーがポリ(アルキレンオキシド)である、項目1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
(項目10)
前記ポリ(アルキレンオキシド)がポリ(エチレンオキシド)である、項目9に記載の化合物。
(項目11)
前記水溶性非ペプチドオリゴマーが約1〜約30のモノマーを有する、項目1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
(項目12)
前記水溶性非ペプチドオリゴマーが約1〜約10のモノマーを有する、項目11に記載の化合物。
(項目13)
前記ポリ(アルキレンオキシド)がアルコキシまたはヒドロキシエンドキャッピング部分を含む、項目9に記載の化合物。
(項目14)
単一の水溶性非ペプチドオリゴマーが前記カルシミメティクス残基に共有結合的に結合する、項目1〜13のいずれか一項に記載の化合物。
(項目15)
前記水溶性非ペプチドオリゴマーが2,000ダルトンより小さい分子量を有する、項目1〜14のいずれか一項に記載の化合物。
(項目16)
前記水溶性非ペプチドオリゴマーが2,000ダルトンより大きい分子量を有する、項目1〜14のいずれか一項に記載の化合物。
(項目17)
前記連結が安定した連結である、項目1〜16のいずれか一項に記載の化合物。
(項目18)
前記連結が遊離可能な連結である、項目1〜16のいずれか一項に記載の化合物。
(項目19)
前記連結が1つ以上のアミノ酸を含む、項目1に記載の化合物。
(項目20)
前記連結が単一のアミノ酸を含む、項目19に記載の化合物。
(項目21)
前記連結が2個のアミノ酸を含む、項目19に記載の化合物。
(項目22)
連結によって水溶性非ペプチドオリゴマーと共有結合的に結合されたカルシミメティクス残基を含む化合物と、場合により、薬学的に許容される賦形剤とを含む、組成物。
(項目23)
連結によって水溶性非ペプチドオリゴマーと共有結合的に結合されたカルシミメティクス残基を含む化合物を含む組成物であって、前記化合物が剤形で存在する、組成物。
(項目24)
コンジュゲートの作製方法であって、水溶性非ペプチドオリゴマーをカルシミメティクスと共有結合的に結合することを含む、方法。
(項目25)
連結によって水溶性非ペプチドオリゴマーと共有結合的に結合されたカルシミメティクス残基を含む化合物を哺乳動物に投与することを含む、方法。
本発明のこれらの、および他の目的、態様、実施形態および特徴は、以下の詳細な説明と併せて読むとき、当業者にさらに十分に明らかとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】実施例14にさらに説明するとおりの、例示としての化合物および例示としての化合物から遊離したシナカルセトの血漿濃度−時間プロファイルを示すグラフである。
図1B】実施例14にさらに説明するとおりの、例示としての化合物および例示としての化合物から遊離したシナカルセトの血漿濃度−時間プロファイルを示すグラフである。
図2】実施例14にさらに説明するとおりの、例示としての化合物および例示としての化合物から遊離したシナカルセトの血漿濃度−時間プロファイルを示すグラフである。
図3】実施例14にさらに説明するとおりの、例示としての化合物および例示としての化合物から遊離したシナカルセトの血漿濃度−時間プロファイルを示すグラフである。
図4】実施例14にさらに説明するとおりの、例示としての化合物および例示としての化合物から遊離したシナカルセトの血漿濃度−時間プロファイルを示すグラフである。
図5】実施例14にさらに説明するとおりの、例示としての化合物および例示としての化合物から遊離したシナカルセトの血漿濃度−時間プロファイルを示すグラフである。
図6】実施例17にさらに説明するとおりの、シナカルセト(10mg/kg、経口)および例示としての化合物(1mg/kg、静脈内)の投与後のラット血漿中PTHレベルのグラフである。
図7】実施例17にさらに説明するとおりの、シナカルセト(10mg/kg、経口)および例示としての化合物(1mg/kg、静脈内)の投与後のラット血漿中PTHレベルのグラフである。
図8】実施例17にさらに説明するとおりの、シナカルセト(10mg/kg、経口)および例示としての化合物(1mg/kg、静脈内)の投与後のラット血漿中PTHレベルのグラフである。
図9】実施例17にさらに説明するとおりの、シナカルセト(10mg/kg、経口)および例示としての化合物(1mg/kg、静脈内)の投与後のラット血漿中PTHレベルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で使用する場合、単数形の「a」「an」「the」は、文脈からそうでないことが明らかな場合を除き、該当する対象の複数形も含む。
【0024】
本発明について説明および権利請求するにあたり、下記の定義に基づいて以下の専門用語を使用する。
【0025】
「水溶性非ペプチドオリゴマー」は、室温で水に対して少なくとも35%(重量比)可溶、好ましくは70%(重量比)を超え、一層好ましくは95%(重量比)を超えて可溶なオリゴマーを示す。一般に、「水溶性の」オリゴマーの濾過していない水性調製物は、濾過後に同じ溶液で伝達される量の光の少なくとも75%、一層好ましくは少なくとも95%を伝達する。しかしながら、水溶性オリゴマーは、水に対して少なくとも95%(重量比)可溶であるか、水に対して完全に可溶であるのが最も好ましい。「非ペプチド」に関しては、オリゴマーはアミノ酸残基数が35%(重量比)未満のときに非ペプチドである。
【0026】
「モノマー」「モノマーサブユニット」「モノマー単位」という用語は、本明細書では同義に用いられ、ポリマーまたはオリゴマーの基本構造単位のうちの1つを示す。ホモオリゴマーの場合、単一の繰り返し構造単位でオリゴマーが形成される。コオリゴマーの場合、2つ以上の構造単位が一定のパターンあるいはランダムに繰り返され、オリゴマーが形成される。本発明に関連して用いられる好ましいオリゴマーは、ホモオリゴマーである。水溶性非ペプチドオリゴマーは一般に、直列に結合されてモノマー鎖を形成する1つ以上のモノマーを含む。オリゴマーは、単一のモノマータイプ(すなわちホモオリゴマー)からでも2つまたは3つのモノマータイプ(すなわちコオリゴマー)からでも形成可能である。
【0027】
「オリゴマー」は、約1から約30個のモノマーを有する分子である。本発明で用いる具体的なオリゴマーは、詳細については後述する、直鎖、分岐鎖またはフォーク状などの多岐にわたる幾何学的形状を有するものを含む。
【0028】
「PEG」または「ポリエチレングリコール」とは、本明細書で使用する場合、水溶性ポリ(エチレンオキシド)を包含することを意図している。特に明記しないかぎり、「PEGオリゴマー」またはオリゴエチレングリコールは、実質的にすべての(好ましくはすべての)モノマーサブユニットがエチレンオキシドサブユニットであるものであるが、オリゴマーがたとえばコンジュゲーション用に明確なエンドキャッピング部分または官能基を含むものであってもよい。本発明で用いるPEGオリゴマーは、たとえば合成変換時に末端酸素が置き換わるか否かに応じて、「−(CHCHO)−」または「−(CHCHO)n−1CHCH−」という2つの構造のうちの1つを含む。上述したように、PEGオリゴマーの場合、変数(n)は1から30の範囲であり、末端基と全体としてのPEGのアーキテクチャは可変である。たとえば小分子薬剤とのリンク用にPEGがさらに官能基Aを含む場合、この官能基が、PEGオリゴマーと共有結合的に結合すれば、(i)酸素−酸素結合(−O−O−、ペルオキシド連結)も(ii)窒素−酸素結合(N−O、O−N)も形成されない。
【0029】
「エンドキャップされた」または「末端キャップされた」という表現は、本明細書では同義に用いられ、エンドキャッピング部分を有するポリマーの末端または端点を示す。一般に、必ずしもそうである必要はないが、エンドキャッピング部分は、ヒドロキシまたはC1〜20アルコキシ基を含む。よって、エンドキャッピング部分の例としては、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、ベンジルオキシなど)ならびにアリール、ヘテロアリール、シクロ、ヘテロシクロなどを含む。また、上記の各々について飽和、不飽和、置換、未置換の形態も想定される。さらに、エンドキャッピング基は、シランであってもよい。エンドキャッピング基は、検出可能なラベルを有利に含み得る。ポリマーが、検出可能なラベルを含むエンドキャッピング基を有する場合、ポリマーおよび/またはポリマーが結合された該当する部分(活性剤など)の量または場所を好適な検出器で判断することが可能である。このようなラベルは、限定することなく、蛍光剤、化学発光剤、酵素標識に用いられる部分、比色剤部分(染料など)、金属イオン、放射性部分などを含む。好適な検出器としては、光度計、フィルム、分光器などがあげられる。また、エンドキャッピング基は、標的化部分を含んでもよい。
【0030】
「標的化部分」という用語は、本明細書では、本発明のコンジュゲートを標的化領域に局在させる一助となる(細胞に侵入、あるいは受容体を結合する一助となるなど)分子構造を示すのに用いられる。好ましくは、標的化部分は、ビタミン、抗体、抗原、受容体、DNA、RNA、シアリルルイスX抗原、ヒアルロン酸、糖類、細胞特異的レクチン、ステロイドまたはステロイド誘導体、RGDペプチド、細胞表面レセプターのリガンド、血清成分またはさまざまな細胞内受容体または細胞外受容体に対するコンビナトリアル分子からなる。また、標的化部分は、脂質またはリン脂質を含むものであってもよい。例示としてのリン脂質は、限定することなく、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミンを含む。これらの脂質は、ミセルまたはリポソームなどの形をとってもよい。標的化部分は、検出可能なラベルをさらに含むものであってもよく、あるいは、検出可能なラベルが標的化部分として機能するものであってもよい。コンジュゲートが検出可能なラベルを含む標的化基を有する場合、ポリマーおよび/またはポリマーが結合される部分(活性剤など)の量および/または分布/場所を、好適な検出器で判断することが可能である。このようなラベルは、限定することなく、蛍光剤、化学発光剤、酵素標識に用いられる部分、比色剤(染料など)、金属イオン、放射性部分、金粒子、量子ドットなどを含む。
【0031】
オリゴマーの幾何学的形状または全体としての構造に関する「分岐」とは、分岐点から延在する2つ以上のポリマー「アーム」を有するオリゴマーを示す。
【0032】
オリゴマーの幾何学的形状または全体としての構造に関する「フォーク状」とは、分岐点から延在する2つ以上の官能基(一般に1つ以上の原子を介して)を有するオリゴマーを示す。
【0033】
「分岐点」とは、オリゴマーが直鎖構造から1つ以上の別のアームに分岐またはフォーク状に分かれる1つ以上の原子を含む二分岐点を示す。
【0034】
「反応性」または「活性化された」という表現は、従来の有機合成条件下で容易にまたは実用的な速度で反応する官能基を示す。これは、反応しないか、反応に強力な触媒または非実用的な反応条件を必要とする基(すなわち「非反応性」または「不活性」基)とは対照的である。
【0035】
反応混合物内の分子上に存在する官能基に関して「容易に反応しない」とは、その基が反応混合物中で所望の反応を生むのに効果的な条件下でほぼ原形を保つことを示す。
【0036】
「保護基」は、特定の反応条件下で分子内の特定の化学的反応性官能基の反応を防止または阻止する部分である。保護基は、保護対象となる化学的反応性基のタイプ、ならびに使用される反応条件、分子内における別の反応基または保護基の存在次第で異なることがある。保護対象となることが可能な官能基には、一例として、カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基などがあげられる。代表的な保護基としては、カルボン酸に対する場合はエステル(p−メトキシベンジルエステルなど)、アミド、ヒドラジド;アミノ基に対する場合はカルバメート(tert−ブトキシカルボニルなど)やアミド;ヒドロキシル基に対する場合はエーテルやエステル;チオール基に対する場合はチオエーテルやチオエステル;カルボニル基に対する場合はアセタールやケタールなどがあげられる。このような保護基は当業者間で周知であり、たとえば、T.W. Greene and G.M. Wuts, Protecting Groups in Organic Synthesis, Third Edition, Wiley, New York, 1999ならびにそこに引用されている参考文献に記載されている。
【0037】
「保護された形態」の官能基とは、保護基を有する官能基を示す。本明細書で使用する場合、「官能基」という用語またはその同義語は、その保護された形態を包含する。
【0038】
「生理学的に切断可能な」結合または「加水分解可能な」結合または「分解可能な」結合は、生理学的条件下で水と反応する(すなわち加水分解される)比較的弱い結合である。水中における結合の加水分解しやすさは、二つの中心原子を接続する連結の一般的なタイプだけではなく、これらの中心原子に結合する置換基にも左右されることがある。加水分解的に不安定または弱い適切な連結としては、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、オリゴヌクレオチド、チオエステル、および炭酸塩があげられるが、これに限定されるものではない。
【0039】
「酵素的に遊離可能な連結」は、1つ以上の酵素によって分解され得る連結を意味する。
【0040】
「安定した」連結または結合とは、水中で実質的に安定している、すなわち生理学的条件下で長期間にわたって適当な程度まで加水分解されない化学結合を示す。加水分解的に安定した連結の例として、炭素−炭素結合(脂肪族鎖におけるものなど)、エーテル、アミド、ウレタン、アミンなどがあげられるが、これに限定されるものではない。通常、安定した連結は、生理学的条件下で1日あたりの加水分解率が約1〜2%未満のものである。代表的な化学結合の加水分解率は、たいていの標準的な化学テキストに掲載されている。
【0041】
「実質的に」または「本質的に」とは、ほぼ全体的または完全にということを意味し、たとえば、特定の量の95%以上、一層好ましくは97%以上、なお一層好ましくは98%以上、さらに一層好ましくは99%以上、さらになお一層好ましくは99.9%以上であり、99.99%以上が最も好ましい。
【0042】
「単分散」とは、組成物中の実質的にすべてのオリゴマーが、クロマトグラフィまたは質量分析で測定した場合に分子量が明確な単一値であり、なおかつモノマー数も明確なオリゴマー組成物を示す。単分散オリゴマー組成物は、ある意味では純粋すなわち、モノマー数が大きく分布するのではなく実質的に単一かつ限定的(整数として)である。単分散オリゴマー組成物は、MW/Mn値が1.0005以下、一層好ましくはMW/Mn値が1.0000である。ひいては、単分散コンジュゲートからなる組成物とは、組成物中のすべてのコンジュゲートの実質的にすべてのオリゴマーのモノマー数が大きく分布するのではなく単一かつ限定的(整数として)であり、MW/Mn値が1.0005、一層好ましくはMW/Mn値が1.0000であることを意味する(オリゴマーがカルシミメティクスに結合していなかった場合)。しかしながら、単分散コンジュゲートからなる組成物は、溶媒、試薬、または賦形剤などの1つ以上の非コンジュゲート物質を含むものであってもよい。
【0043】
オリゴマー組成物に関する「二峰性」は、組成物中の実質的にすべてのオリゴマーについて、モノマー数が大きく分布するのではなく限定的で異なる2種類の数(整数として)のうちの1つであり、分子量の分布を分率と分子量でプロットした場合に、2つの識別可能な別のピークとして現れるオリゴマー組成物を示す。好ましくは、本明細書に記載したような二峰性オリゴマー組成物の場合、各ピークは通常、その平均を中心にして対称であるが、2つのピークの大きさが異なっていてもよい。理想的には、二峰性分布の各ピークの多分散度指数Mw/Mnが1.01以下であり、一層好ましくは1.001以下、なお一層好ましくは1.0005以下、最も好ましくはMW/Mn値が1.0000である。ひいては、二峰性コンジュゲートからなる組成物は、組成物中のすべてのコンジュゲートの実質的にすべてのオリゴマーが、モノマー数が大きく分布するのではなく限定的で異なる2種類の数(整数として)のうちの1つであり、MW/Mn値が1.01以下、一層好ましくは1.001以下、なお一層好ましくは1.0005以下、最も好ましくはMW/Mn値が1.0000であることを意味する(オリゴマーがカルシミメティクスに結合していなかった場合)を意味する。しかしながら、二峰性コンジュゲートからなる組成物は、溶媒、試薬、賦形剤などの1つ以上の非コンジュゲート物質を含み得る。
【0044】
「カルシミメティクス」は、分子量が約1000ダルトン未満で、ある程度のカルシミメティクス活性を有する有機、無機または有機金属化合物を示す。当業者は、公知のアッセイを用いて、任意の特定の化合物がカルシミメティクス活性を有するかどうかを判断することができる。カルシミメティクスの活性のなかでも特に、細胞外カルシウムによる活性化に対するカルシウム感知受容体の感受性の増加が挙げられる。
【0045】
「生体膜」は、少なくともいくつかの外来物質あるいは、そうでなければ望ましくない材料に対する関門として機能する、細胞または組織で構成される膜である。本明細書で使用する場合、「生体膜」は、たとえば、血液脳関門(BBB)、血液脳脊髄液関門、血液胎盤関門、血液乳関門、血液精巣関門、ならびに膣粘膜や尿道粘膜、肛門粘膜、頬粘膜、舌下粘膜、および直腸粘膜を含む粘膜関門をはじめとする生理学的保護関門に関連した膜を含む。文脈からそうでないことが明らかな場合を除き、「生体膜」という用語は、中部消化管(胃および小腸など)に関連した膜を含まない。
【0046】
「生体膜通過率」は、化合物が血液脳関門(「BBB」)などの生体膜を通過する機能の尺度となる。生体膜での分子の輸送を評価するには、多岐にわたる方法を用いることができる。特定の生体関門(血液脳脊髄液関門、血液胎盤関門、血液乳関門、腸管関門など)に関する生体膜通過率の評価方法は、公知であるか、本明細書および/または関連の文献に記載されているおよび/または当業者が判断することができる。
【0047】
「アルキル」は、約1から20原子長の範囲の炭化水素鎖を示す。このような炭化水素鎖は、好ましくは飽和であるが必ずしもそうでなくてもよく、分岐鎖であっても直鎖であってもよい。例示としてのアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、3−メチルペンチルなどを含む。本明細書で使用する場合、「アルキル」は、3個以上の炭素原子に言及する場合にシクロアルキルを含む。
【0048】
「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基を示し、メチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチルにより例示される直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0049】
「非干渉置換基」とは、分子中に存在する場合、一般に同一分子に含まれる他の官能基に対して非反応性である基のことである。
【0050】
「アルコキシ」とは、Rがアルキルまたは置換アルキル、好ましくはC〜C20アルキル(メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ベンジルなど)、好ましくはC〜Cである−O−R基を示す。
【0051】
「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容されるキャリア」とは、患者に対して毒物学的作用を有意に引き起こすことのない、本発明の組成物に含まれていてもよい成分を示す。
【0052】
「アリール」という用語は、最大14個の炭素原子を有する芳香族基を意味する。アリール基としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタセニルなどがあげられる。「置換フェニル」および「置換アリール」はそれぞれ、ハロ(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アルキル(C1〜6アルキルなど)、アルコキシ(C1〜6アルコキシなど)、ベンジルオキシ、カルボキシ、アリールなどから選択される1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ(置換基1〜2個、1〜3個または1〜4個など)で置換されたフェニル基およびアリール基を示す。
【0053】
「薬理学的有効量」「生理学的有効量」「治療有効量」は、本明細書では同義に用いられ、血流または標的組織において所望のレベルの活性剤および/またはコンジュゲートを提供するのに必要な、組成物中に存在する水溶性オリゴマー−小分子薬剤コンジュゲートの量を意味する。厳密な量は、特定の活性剤、組成物の成分と物理的特徴、意図した患者個体群、患者の検討事項などの多数の要因に左右されることがあり、本明細書に記載の情報ならびに関連の文献で入手可能な情報に基づいて当業者が容易に判断できるものである。
【0054】
「二官能性」オリゴマーは、そこに含まれる(一般に末端にて)2つの官能基を有するオリゴマーである。官能基同士が同じである場合、オリゴマーはホモ二官能性であると言われる。官能基同士が異なる場合、オリゴマーはヘテロ二官能性であると言われる。
【0055】
本明細書に記載の塩基性反応剤または酸性反応剤は、中性で帯電されたその対応の任意の塩形態を含む。
【0056】
「患者」という用語は、本明細書に記載されているようなコンジュゲートを投与することで予防可能または治療可能な症状があるか症状になりやすい生命体を示し、人間と動物の両方を含む。
【0057】
「任意の」または「任意に」とは、その後ろで説明される状況が起こるかもしれないが必ずしもそうとはかぎらないことを意味するため、説明にはその状況が起こる場合と起こらない場合が含まれる。
【0058】
上述したように、本発明は、(特に)安定したまたは遊離可能な連結によって水溶性非ペプチドオリゴマーと共有結合的に結合されたカルシミメティクス残基を含む化合物、およびその薬学的に許容される酸付加塩または錯体に関するものである。
【0059】
本発明の1つ以上の実施形態では、安定したまたは遊離可能な連結によって水溶性非ペプチドオリゴマーと共有結合的に結合されたカルシミメティクス(calicimimetic)残基を含む化合物、およびその薬学的に許容される酸付加塩または錯体が得られ、このカルシミメティクスは以下の構造を有する。
【化12】

式中、
alkは、n−プロピレン、2,4−ブチレンおよび1,3−ブチレンからなる群から選択され、
は、1〜3個の炭素原子の低級アルキルおよび1〜7個のハロゲン原子で置換された1〜3個の炭素原子の低級ハロアルキルからなる群から選択され、
およびRは、OCF、1〜3個の炭素原子の低級アルキル、1〜7個のハロゲン原子で置換された1〜3個の炭素原子の低級ハロアルキル、1〜3個の炭素原子の低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、1〜3個の炭素原子の低級アルキルアミド、シアノ、ヒドロキシ、2〜4個の炭素原子のアシル、1〜3個の炭素原子の低級ヒドロキシアルキル、および1〜3個の炭素原子の低級チオアルキルからなる群から独立して選択される1〜5個の置換基で場合により置換されていてもよい5〜7員環を有する、独立に選択された単環式または二環式炭素環式アリール基またはシクロアルキル基であり、
場合により、Rがフェニルである場合、前記フェニルRは、4−OH−フェニルではない少なくとも1個の置換基を有してもよい。
【0060】
好ましいカルシミメティクスは、以下の式に包含される。
【化13】

式中、
【化14】

は、3−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよび1−ナフチルからなる群から選択され、
各Rは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、フェニル、−CF、−CFH、−CFH、低級アルキル(たとえば、−CH)、−O−低級アルキル(たとえば、−OCH)、−OCHCF、−OH、−CN、−NO、−C(O)−低級アルキル(たとえば、−C(O)CH)、−C(O)O−低級アルキル(たとえば、−C(O)OCH)、−C(O)NH−低級アルキル(たとえば、−C(O)NH−CH)、−C(O)N−低級アルキル(たとえば、−C(O)N(CH)、−OC(O)−低級アルキル(たとえば、−OC(O)CH)、および−NH−C(O)−低級アルキル(たとえば、−NH−C(O)CH)からなる群から選択され、
(a)は、1〜5の整数であり、
は、低級アルキル(たとえば、メチル)であり、
式中、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなる群から選択される。
【0061】
式Iおよび式IIに包含されるカルシミメティクス部分および他のカルシミメティクスは、米国特許第6,011,068号明細書および同第6,211,244号明細書に記載されている。カルシミメティクスの調製方法は、米国特許第7,563,930号明細書、同第7,393,967号明細書、同第7,250,533号明細書、同第6,211,244号明細書、同第6,011,068号明細書、同第5,648,541号明細書および同第4,966,988号明細書に記載されている。
【0062】
本発明の例示としての化合物は、以下の構造を有するものを含む。
【化15】

式中、
【化16】

は、3−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよび1−ナフチルからなる群から選択され、
各Rは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、フェニル、−CF、−CFH、−CFH、低級アルキル(たとえば、−CH)、−O−低級アルキル(たとえば、−OCH)、−OCHCF、−OH、−CN、−NO、−C(O)−低級アルキル(たとえば、−C(O)CH)、−C(O)O−低級アルキル(たとえば、−C(O)OCH)、−C(O)NH−低級アルキル(たとえば、−C(O)NH−CH)、−C(O)N−低級アルキル(たとえば、−C(O)N(CH)、−OC(O)−低級アルキル(たとえば、−OC(O)CH)、および−NH−C(O)−低級アルキル(たとえば、−NH−C(O)CH)からなる群から選択され、
(a)は、1〜5の整数であり、
は、低級アルキル(たとえば、メチル)であり、
式中、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなる群から選択され、
Xは、スペーサー部分(または「連結」)であり、
POLYは、水溶性非ペプチドオリゴマーである。
【0063】
本発明のさらなる例示としての化合物は、以下の構造を有するものを含む。
【化17】

式中、
【化18】

は、3−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよび1−ナフチルからなる群から選択され、
各Rは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、フェニル、−CF、−CFH、−CFH、低級アルキル(たとえば、−CH)、−O−低級アルキル(たとえば、−OCH)、−OCHCF、−OH、−CN、−NO、−C(O)−低級アルキル(たとえば、−C(O)CH)、−C(O)O−低級アルキル(たとえば、−C(O)OCH)、−C(O)NH−低級アルキル(たとえば、−C(O)NH−CH)、−C(O)N−低級アルキル(たとえば、−C(O)N(CH)、−OC(O)−低級アルキル(たとえば、−OC(O)CH)、および−NH−C(O)−低級アルキル(たとえば、−NH−C(O)CH)からなる群から選択され、
(a)は、1〜5の整数であり、
式中、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなる群から選択され、
Xは、スペーサー部分(または「連結」)であり、
POLYは、水溶性非ペプチドオリゴマーである。
【0064】
本発明のさらなる例示としての化合物は、以下の構造を有するものを含む。
【化19】

式中、
【化20】

は、3−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよび1−ナフチルからなる群から選択され、
各Rは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、フェニル、−CF、−CFH、−CFH、低級アルキル(たとえば、−CH)、−O−低級アルキル(たとえば、−OCH)、−OCHCF、−OH、−CN、−NO、−C(O)−低級アルキル(たとえば、−C(O)CH)、−C(O)O−低級アルキル(たとえば、−C(O)OCH)、−C(O)NH−低級アルキル(たとえば、−C(O)NH−CH)、−C(O)N−低級アルキル(たとえば、−C(O)N(CH)、−OC(O)−低級アルキル(たとえば、−OC(O)CH)、および−NH−C(O)−低級アルキル(たとえば、−NH−C(O)CH)からなる群から選択され、
(a)は、1〜5の整数であり、
は、低級アルキル(たとえば、メチル)であり、
式中、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなる群から選択され、
Xは、スペーサー部分(または「連結」)であり、
POLYは、水溶性非ペプチドオリゴマーである。
【0065】
本発明のさらなる例示としての化合物は、以下の構造を有するものを含む。
【化21】

式中、
【化22】

は、3−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよび1−ナフチルからなる群から選択され、
各Rは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、フェニル、−CF、−CFH、−CFH、低級アルキル(たとえば、−CH)、−O−低級アルキル(たとえば、−OCH)、−OCHCF、−OH、−CN、−NO、−C(O)−低級アルキル(たとえば、−C(O)CH)、−C(O)O−低級アルキル(たとえば、−C(O)OCH)、−C(O)NH−低級アルキル(たとえば、−C(O)NH−CH)、−C(O)N−低級アルキル(たとえば、−C(O)N(CH)、−OC(O)−低級アルキル(たとえば、−OC(O)CH)、および−NH−C(O)−低級アルキル(たとえば、−NH−C(O)CH)からなる群から選択され、
(a’)は、1〜4の整数であり、
は、低級アルキル(たとえば、メチル)であり、
式中、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなる群から選択され、
Xは、スペーサー部分(または「連結」)であり、
POLYは、水溶性非ペプチドオリゴマーである。
【0066】
別々のオリゴマー(比較的不純な組成物との対照でオリゴマーの単分散組成物または二峰性組成物からなど)を使ってオリゴマー含有化合物を形成することで、対応する小分子薬剤に関連した特定の特性を都合よく変更できることがある。たとえば、本発明の化合物は、非経口、経口、経皮、頬側、経肺または経鼻などのいくつかの好適な投与経路のいずれかで投与すると、CYP2D6における代謝の変化を呈する。さらに、本発明の化合物は、オリゴマーをまったく含まない化合物の生物活性および生物学的利用率と比較すると、ある程度の生物活性ならびに生物学的利用率を維持する。
【0067】
特定の化合物(この化合物が水溶性非ペプチドオリゴマーを含むか否かを問わない)がカルシミメティクス活性を有するかどうかを判断するためのアッセイは公知であり、および/または当業者によって調製されてもよい。
【0068】
これらの(ならびに他の)カルシミメティクス部分は各々、(直接的に、あるいは1つ以上の原子を介して)水溶性非ペプチドオリゴマーに共有結合的に結合可能である。
【0069】
カルシミメティクスとして作用する小分子薬剤の例示としての分子量としては、約950ダルトン未満、約900ダルトン未満、約850ダルトン未満、約800ダルトン未満、約750ダルトン未満、約700ダルトン未満、約650ダルトン未満、約600ダルトン未満、約550ダルトン未満、約500ダルトン未満、約450ダルトン未満、約400ダルトン未満、約350ダルトン未満、約300ダルトン未満の分子量があげられる。
【0070】
本発明で用いられる小分子薬剤(すなわちカルシミメティクス)は、キラルであれば、ラセミ混合物中にあってもよく、単一の光学的に活性なエナンチオマーなどの光学的に活性な形態であってもよく、あるいはエナンチオマーの組み合わせまたは比(すなわち、スカレミック混合物)であってもよい。また、小分子薬剤は、1つ以上の幾何異性体を有することがある。幾何異性体に関して、組成物は、単一の幾何異性体または2つ以上の幾何異性体の混合物を含み得る。本発明で用いる小分子薬剤には、その普通の活性形態が可能なものであり、あるいは、若干の修飾を有するものであってもよい。たとえば、小分子薬剤は、オリゴマーの共有結合の前または後に、標的化剤、タグまたはこれに結合されたトランスポーターを有するものであってもよい。あるいは、小分子薬剤は、リン脂質(ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンすなわち「DSPE」、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンすなわち「DPPE」など)といったこれに結合された脂溶性部分または小さな脂肪酸を有するものであってもよい。しかしながら、場合によっては、小分子薬剤部分が脂溶性部分に対する結合を含まないことが好ましい。
【0071】
水溶性非ペプチドオリゴマーへのカップリング用のカルシミメティクスは、オリゴマーとの共有結合に適した遊離ヒドロキシル、カルボキシル、チオ、アミノ基など(すなわち、「ハンドル」)を有する。また、反応性基の導入、好ましくはその既存の官能基のうちの1つをオリゴマーと薬剤との安定した共有連結の形成に適した官能基に変換することによってカルシミメティクスを修飾することができる。
【0072】
カルシミメティクス上のアミノ基は、カルシミメティクス(calicimetics)とオリゴマーとの間の結合点を提供する。
【0073】
カルシミメティクスの利用可能なアミンとの共有結合性の連結を形成するのに有用な1つ以上の官能基により活性化される好適なオリゴマーの例は数多くある。具体例を、対応するコンジュゲートと共に以下の表1に提供する。表中、変数(n)はモノマーの繰り返し単位の数を表し、「−NH−(Cal)」は、オリゴマーとのコンジュゲーション後のカルシミメティクスの残基を表す。表1に示される各オリゴマー部分[たとえば、(OCHCHまたは(CHCHO)]は「CH」基を終端とするが、これは他の基(Hおよびベンジルなど)に置き換えることができる。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
カルシミメティクスのアミノ基とのオリゴマーのコンジュゲーションは、様々な技術により達成することができる。一つの方法において、カルシミメティクスは、スクシンイミジル誘導体(または他の活性化エステル基または炭酸塩基、ここではそれらの代替的な活性化エステル基を含むポリマー試薬について記載されるものと同様の方法を用いることができる)で官能化されたオリゴマーとコンジュゲート化することができる。この方法では、スクシンイミジル誘導体を有するオリゴマーを、pH7〜9.0の水性媒体中でカルシミメティクスに結合させることができる。加えて、アミン末端の水溶性非ペプチドオリゴマーを、活性化しているカルボン酸基を有するカルシミメティクスと反応させることにより、アミド連結を形成することができる。
【0082】
したがって、各オリゴマーは、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド;ビニルアルコール、1−プロペノールまたは2−プロペノールなどのオレフィンアルコール;ビニルピロリドン;ヒドロキシアルキルメタクリルアミドまたはヒドロキシアルキルメタクリレート(この場合、アルキルは好ましくはメチルである);乳酸またはグリコール酸などのα−ヒドロキシ酸;ホスファゼン、オキサゾリン、アミノ酸、単糖、糖類、またはマンニトールなどの炭化水素、;N−アクリロイルモルホリンからなる群から選択される最大3種類のタイプのモノマーで構成される。好ましいモノマータイプとしては、アルキレンオキシド、オレフィンアルコール、ヒドロキシアルキルメタクリルアミドまたはメタクリレート、N−アクリロイルモルホリン、α−ヒドロキシ酸があげられる。好ましくは、各オリゴマーが独立して、この群から選択される2つのモノマータイプのコオリゴマーであるか、一層好ましくは、この群から選択される1つのモノマータイプのホモオリゴマーである。
【0083】
コオリゴマーにおける2つのモノマータイプは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドといった2つのアルキレンオキシドなどの同一のモノマータイプであってもよい。好ましくは、オリゴマーは、エチレンオキシドのホモオリゴマーである。通常は、必ずしもそうである必要はないが、小分子を共有結合的に結合していないオリゴマーの末端をキャップして、これを非反応性にする。あるいは、末端が反応性基を含むものであってもよい。末端が反応性基である場合、反応性基は、最終的なオリゴマーの形成条件下または小分子薬剤に対するオリゴマーの共有結合時に非反応性であるように選択されるか、必要に応じて保護される。一般的なひとつの末端官能基に、特にオリゴエチレンオキシドについてのヒドロキシルまたは−OHがある。
【0084】
水溶性非ペプチドオリゴマー(本明細書にて提供するさまざまな構造における「POLY」など)は、多数の異なる幾何学的形状のうち、どのような形状をとるものであってもよい。たとえば、それは、直鎖、分岐鎖またはフォーク状であり得る。最も一般には、水溶性非ペプチドオリゴマーは直鎖または分岐鎖であり、たとえば、1つの分岐点を有する。本明細書の説明の多くはオリゴマーの例としてポリ(エチレンオキシド)に焦点を当てているが、本明細書にて提示する説明と構造は、上述した水溶性非ペプチドオリゴマーのうち、いずれでも包含するよう容易に拡大適用可能である。
【0085】
本発明の化合物に関して、オリゴマーの分子量は比較的小さくても、または比較的大きくてもよい。たとえば、および理論によって制約されることなく、経口的に利用可能なカルシミメティクス(コンジュゲート化されていない形態)は、化合物中に比較的低分子量(たとえば、2,000ダルトン未満)のオリゴマーが存在するときその経口的に利用可能な能力を実質的に維持することができると考えられる。加えて、および同様に理論によって制約されることなく、比較的大きい(たとえば、2,000ダルトン〜約80,000ダルトンの分子量)を含むことで静脈内投与が必要になったとしても、カルシミメティクス(calicimimetic)を投与される患者は既に透析に頼っていて、したがって静脈内薬物の投与に必要なインフラストラクチャーおよび医療提供者への比較的容易なアクセスを有し得るため、かかる投与が重大な欠点となることはないものとし得る。
【0086】
リンカー部分を除く化合物中の水溶性非ペプチドオリゴマーの分子量が比較的小さいとき(たとえば、2,000ダルトン未満)、水溶性オリゴマーの分子量の例示としての値は、約1500ダルトン未満;約1450ダルトン未満;約1400ダルトン未満;約1350ダルトン未満;約1300ダルトン未満;約1250ダルトン未満;約1200ダルトン未満;約1150ダルトン未満;約1100ダルトン未満;約1050ダルトン未満;約1000ダルトン未満;約950ダルトン未満;約900ダルトン未満;約850ダルトン未満;約800ダルトン未満;約750ダルトン未満;約700ダルトン未満;約650ダルトン未満;約600ダルトン未満;約550ダルトン未満;約500ダルトン未満;約450ダルトン未満;約400ダルトン未満;約350ダルトン未満;約300ダルトン未満;約250ダルトン未満;約200ダルトン未満;および約100ダルトン未満があげられる。
【0087】
水溶性非ペプチドオリゴマー(リンカーを除く)の分子量の例示としての範囲は、約100から約1400ダルトン、約100から約1200ダルトン、約100から約800ダルトン、約100から約500ダルトン、約100から約400ダルトン、約200から約500ダルトン、約200から約400ダルトン、約75から1000ダルトン、約75から約750ダルトンがあげられる。
【0088】
好ましくは、水溶性非ペプチドオリゴマーのモノマー数は、以下の範囲すなわち、約1〜約30(これらの値も含む)、約1〜約25、約1〜約20、約1〜約15、約1〜約12、約1〜約10のうちの1つ以上に入る。特定の場合には、オリゴマー(および対応するコンジュゲート)で直列になっているモノマー数は、1、2、3、4、5、6、7または8のうちの1つである。別の実施形態では、オリゴマー(および対応するコンジュゲート)が、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のモノマーを含む。さらに他の実施形態では、オリゴマー(および対応するコンジュゲート)が、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30のモノマーを直列に含む。よって、たとえば、水溶性非ペプチドポリマーがCH−(OCHCH−を含む場合、「n」は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30であり得る整数であり、以下の範囲すなわち、約1〜約25、約1〜約20、約1〜約15、約1〜約12、約1〜約10のうちの1つ以上に入り得る。
【0089】
水溶性非ペプチドオリゴマーが、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のモノマーを有する場合、これらの値はそれぞれ、分子量が約75、119、163、207、251、295、339、383、427、471ダルトンのメトキシエンドキャップされたオリゴ(エチレンオキシド)に対応する。オリゴマーが11、12、13、14または15のモノマーを有する場合、これらの値はそれぞれ、約515、559、603、647、691ダルトンに対応する分子量のメトキシエンドキャップされたオリゴ(エチレンオキシド)に対応する。
【0090】
リンカー部分を除く化合物中の水溶性非ペプチドオリゴマーの分子量が比較的大きいとき(たとえば、2,000ダルトン超)、重量は2,000ダルトンから約150,000ダルトンの範囲内にあり得る。しかしながら、例示としての範囲は、約3,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲;約5,000ダルトンから約110,000ダルトンの範囲;約5,000ダルトン超から約100,000ダルトンの範囲、約6,000ダルトンから約90,000ダルトンの範囲、約10,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、約10,000ダルトン超から約85,000ダルトンの範囲、約20,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、約53,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、約25,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、約29,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、約35,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、および約40,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲の重量平均分子量があげられる。任意の特定のオリゴマーについて、これらの範囲の1つ以上の分子量を有するポリ(エチレンオキシド)が好ましい。
【0091】
水溶性オリゴマーの例示としての重量平均分子量は、約2,200ダルトン、約2,500ダルトン、約3,000ダルトン、約4,000ダルトン、約4,400ダルトン、約4,500ダルトン、約5,000ダルトン、約5,500ダルトン、約6,000ダルトン、約7,000ダルトン、約7,500ダルトン、約8,000ダルトン、約9,000ダルトン、約10,000ダルトン、約11,000ダルトン、約12,000ダルトン、約13,000ダルトン、約14,000ダルトン、約15,000ダルトン、約20,000ダルトン、約22,500ダルトン、約25,000ダルトン、約30,000ダルトン、約35,000ダルトン、約40,000ダルトン、約45,000ダルトン、約50,000ダルトン、約55,000ダルトン、約60,000ダルトン、約65,000ダルトン、約70,000ダルトン、および約75,000ダルトンがあげられる。前述のいずれかの総分子量を有する分枝鎖型の水溶性オリゴマー(たとえば、20,000ダルトンのオリゴマー2個から構成される分枝鎖状の40,000ダルトンの水溶性オリゴマー)もまた用いることができる。1つ以上の実施形態では、コンジュゲートは、直接的にも、または間接的にも、約6,000ダルトン未満の重量平均分子量を有するPEGと結合したPEG部分は含まない。
【0092】
ポリマーとして使用されるとき、PEGは一般にいくつかの(OCHCH)モノマー[または(CHCHO)モノマー、PEGをどのように定義するかによる]を含み得る。この説明全体を通じた使用について、繰り返し単位の数は、「(OCHCH」の添え字「n」により特定される。したがって、(n)の値は、一般に以下の範囲の1つ以上のなかに含まれる:2〜約3400、約100〜約2300、約100〜約2270、約136〜約2050、約225〜約1930、約450〜約1930、約1200〜約1930、約568〜約2727、約660〜約2730、約795〜約2730、約795〜約2730、約909〜約2730、および約1,200〜約1,900。分子量が既知の任意の特定のポリマーについては、ポリマーの総重量平均分子量を繰り返しモノマーの分子量で除すことによって繰り返し単位の数(すなわち、「n」)を決定することが可能である。
【0093】
水溶性非ペプチドオリゴマーが(1つ以上のモノマーを段階的に加えてオリゴマーをカルシミメティクスに効果的に「成長させる」こととの対比で)カルシミメティクスに結合されている場合、水溶性非ペプチドオリゴマーの活性化された形態を含む組成物が単分散であると好ましい。しかしながら、二峰性組成物を用いる場合、この組成物は上記の任意の2つの数のモノマーを中心とした二峰性分布を持つことになる。たとえば、二峰性オリゴマーは、モノマーサブユニットについての以下の例示としての組み合わせのうちのいずれを有するものであってもよい。1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、1−7、1−8、1−9、1−10など;2−3、2−4、2−5、2−6、2−7、2−8、2−9、2−10など;3−4、3−5、3−6、3−7、3−8、3−9、3−10など;4−5、4−6、4−7、4−8、4−9、4−10など;5−6、5−7、5−8、5−9、5−10など;6−7、6−8、6−9、6−10など;7−8、7−9、7−10など;8−9、8−10など。
【0094】
場合によっては、水溶性非ペプチドオリゴマーの活性化された形態を含む組成物が、上述したような一定範囲のモノマー単位を有する三峰性または四峰性のものである。オリゴマーの十分に定義された(すなわち、二峰性、三峰性、四峰性など)混合物を含むオリゴマー組成物を、オリゴマーの所望のプロファイルを得るように精製された単分散オリゴマーを混合して(モノマー数だけが異なる2種類のオリゴマーの混合物は二峰性であり、モノマー数だけが異なる3種類のオリゴマーの混合物は三峰性であり、モノマー数だけが異なる4種類のオリゴマーの混合物は四峰性である)調製することが可能であり、あるいは、所望かつ定義された分子量の範囲にあるオリゴマーの混合物を得るように「中心カット(center cut)」を回収する多分散オリゴマーのカラムクロマトグラフィで得ることが可能である。
【0095】
単分子または単分散の組成物から水溶性非ペプチドオリゴマーを得るのが好ましい。すなわち、組成物中のオリゴマーは、分子量の分布ではなく同一の離散分子量値を有する。単分散オリゴマーの中には、Sigma−Aldrichから入手可能なものなど商業ソースから購入可能なものもあるし、あるいは、Sigma−Aldrichなどの市販の開始材料から直接調製することも可能である。水溶性非ペプチドオリゴマーは、Chen Y., Baker, G.L., J. Org. Chem., 6870〜6873 (1999)、国際公開第02/098949号パンフレット、米国特許出願公開第2005/0136031号明細書に記載されているようにして調製可能である。
【0096】
存在する場合、本明細書で「リンカー」とも称されるスペーサー部分(それを介して水溶性非ペプチドポリマーがカルシミメティクスに結合する)は、単結合、単一の原子、たとえば酸素原子または硫黄原子など、2個の原子、またはいくつかの原子であってよい。スペーサー部分は一般に、しかし必須ではないが、本質的に直鎖状である。スペーサー部分「X」は安定していても、または遊離可能であってもよい。生体内に見られる酵素に関連して、スペーサー部分「X」はかかる酵素に対して安定であっても、またはかかる酵素と相互作用したときに遊離可能であってもよい。好ましくは、スペーサー部分「X」は、鎖長が約12原子未満のものであり、好ましくは約10原子未満、なお一層好ましくは約8原子未満、さらに一層好ましくは約5原子未満のものであり、この長さは単鎖の原子数を意図するものであって、置換基を数えたものではない。たとえば、Rオリゴマー−NH−(C=O)−NH−R’薬剤などの尿素連結は鎖長が3原子(−NH−C(O)−NH−)であるとみなす。選択的な実施形態において、連結にはさらにスペーサー基を含まない。
【0097】
場合によっては、スペーサー部分「X」(または「連結」)が、エーテル、アミド、ウレタン、アミン、チオエーテル、尿素または炭素−炭素結合を含む。一般に、連結の形成には後述ならびに実施例にて例示するものなどの官能基を使用する。スペーサー部分は、それほど好ましくはないが、後述するように他の原子を含む(または他の原子と隣接または他の原子にフランクされた)ものであってもよい。
【0098】
具体的には、選択的な実施形態において、本発明のスペーサー部分X(または「連結」)は、以下のうちのいずれであってもよい。「−」(すなわち、カルシミメティクス残基と水溶性非ペプチドオリゴマーとの間の安定したまたは分解可能であり得る共有結合)、−C(O)O−、−OC(O)−、−CH−C(O)O−、−CH−OC(O)−、−C(O)O−CH−、−O−、−NH−、−S−、−C(O)−、−OC(O)−CH−、C(O)−NH、NH−C(O)−NH、O−C(O)−NH、−C(S)−、−CH−、−CH−CH−、−CH−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−、−O−CH−、−CH−O−、−O−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CH−CH−O−、−O−CH−CH−CH−、−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−O−、−O−CH−CH−CH−CH−、−CH−O−CH−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−CH−O−、−C(O)−NH−CH−、−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH−CH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−C(O)−NH−、−NH−C(O)−CH−、−CH−NH−C(O)−CH−、−CH−CH−NH−C(O)−CH−、−NH−C(O)−CH−CH−、−CH−NH−C(O)−CH−CH、−CH−CH−NH−C(O)−CH−CH、−C(O)−NH−CH−、−C(O)−NH−CH−CH−、−O−C(O)−NH−CH−、−O−C(O)−NH−CH−CH−、−NH−CH−、−NH−CH−CH−、−CH−NH−CH−、−CH−CH−NH−CH−、−C(O)−CH−、−C(O)−CH−CH−、−CH−C(O)−CH−、−CH−CH−C(O)−CH−、−CH−CH−C(O)−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−C(O)−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−C(O)−CH−、二価シクロアルキル基、−N(R)−、Rは、Hであるか、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、および置換アリールからなる群から選択される有機ラジカルである。
【0099】
しかしながら、本発明の目的で、原子の群はこれがオリゴマーセグメントにすぐ隣接している場合は連結とはみなされず、この原子の群は、オリゴマー鎖を単に伸ばしただけの群であるという点でオリゴマーのモノマーと同一である。
【0100】
水溶性非ペプチドオリゴマーと小分子との間の連結「X」は一般に、オリゴマー(またはオリゴマーをカルシミメティクスに「成長させる」ことが望ましい場合は新生オリゴマー)の末端にある官能基とカルシミメティクス内の対応する官能基との反応によって形成される。以下、例示的な反応を簡単に説明する。たとえば、オリゴマーのアミノ基を小分子のカルボン酸または活性化されたカルボン酸誘導体と反応させるかその逆によって、アミド結合を生成することができる。あるいは、オリゴマーのアミンと薬剤の活性化された炭酸塩(炭酸スクシンイミジルまたは炭酸ベンゾトリアジルなど)との反応またはその逆では、カルバミン酸塩の結合が形成される。オリゴマーのアミンと薬剤のイソシアネート(R−N=C=O)との反応またはその逆では、尿素結合(R−NH−(C=O)−NH−R’)が形成される。さらに、オリゴマーのアルコール(アルコキシド)基とハロゲン化アルキルまたは薬剤内のハロゲン化物との反応またはその逆では、エーテル結合(linkage)が形成される。さらに別のカップリング法においては、アルデヒド官能基(function)を持つ小分子を還元的アミノ化によってオリゴマーのアミノ基とカップリングし、オリゴマーと小分子の間に第二級アミンの連結を形成する。
【0101】
特に好ましい水溶性非ペプチドオリゴマーは、アルデヒド官能基を有するオリゴマーである。この点について、オリゴマーは以下の構造を有することになる。CHO−(CH−CH−O)−(CH−C(O)H[この場合、(n)は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10のうちの1つであり、(p)は1、2、3、4、5、6、7のうちの1つである]を有する。好ましい(n)の値としては3、5、7があげられ、好ましい(p)の値としては2、3、4があげられる。加えて、−C(O)H部分に対する炭素原子αが、場合によりアルキルで置換されていてもよい。
【0102】
一般に、官能基を持たない水溶性非ペプチドオリゴマーの一つを除く全ての末端が、非反応性になるようにキャップされる。オリゴマーがコンジュゲートの形成用以外で末端にさらに官能基を含む場合、その基は連結「X」の形成条件下で非反応性であるように選択されるか、連結「X」の形成時には保護される。
【0103】
上述したように、水溶性非ペプチドオリゴマーは、コンジュゲーションの前に少なくとも1つの官能基を含む。官能基は一般に、小分子に含まれるまたは小分子に導入される反応性基に応じて、小分子との共有結合のための求電子基または求核基を含む。オリゴマーまたは小分子のいずれかに存在し得る求核基の例としては、ヒドロキシル、アミン、ヒドラジン(−NHNH)、ヒドラジド(−C(O)NHNH)、チオールがあげられる。好ましい求核剤には、アミン、ヒドラジン、ヒドラジド、チオールがあり、特にアミンがある。オリゴマーに対して共有結合される小分子薬剤のほとんどは、遊離のヒドロキシル、アミノ、チオ、アルデヒド、ケトンまたはカルボキシル基を有する。
【0104】
オリゴマーまたは小分子のいずれかに存在し得る求電子官能基の例としては、カルボン酸、カルボン酸エステル、特にイミドエステル、オルトエステル、カーボネート、イソシアネート、イソチオシアネート、アルデヒド、ケトン、チオン、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、スルホン、マレイミド、ジスルフィド、ヨード、エポキシ、スルホネート、チオスルホネート、シラン、アルコキシシラン、およびハロシランがあげられる。これらの群のさらに具体的な例として、スクシンイミジルエステルまたは炭酸塩、イミダゾイルエステルまたは炭酸塩、ベンゾトリアゾールエステルまたは炭酸塩、ビニルスルホン、クロロエチルスルホン、ビニルピリジン、ピリジルジスルフィド、ヨードアセトアミド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレート、およびトレシレート(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)があげられる。
【0105】
また、チオン、チオン水和物、チオケタールなどのこれらの群のうちのいくつかの硫黄類似体、2−チアゾリジンチオンなど、ならびに上記の部分のいずれかの水和物または保護化誘導体(アルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、ケタール、チオケタール、チオアセタールなど)も含まれる。
【0106】
カルボン酸の「活性化された誘導体」とは、誘導体化していないカルボン酸よりも通常はかなり容易に求核剤と反応するカルボン酸誘導体を示す。活性化されたカルボン酸は、たとえば、酸ハロゲン化物(酸クロリドなど)、無水物、炭酸塩、エステルを含む。このようなエステルとしては、N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステルまたはN−ヒドロキシフタルイミジルエステルなど、一般的形態−(CO)O−N[(CO)−]で示されるイミドエステルがあげられる。また、イミダゾリルエステルやベンゾトリアゾールエステルも好ましい。特に好ましいのは、本件と同一出願人による米国特許第5,672,662号明細書に記載されているような、活性化されたプロピオン酸またはブタン酸のエステルである。これには、形態−(CH2〜3C(=O)O−Qの群を含むが、この場合のQは、N−スクシンイミド、N−スルホスクシンイミド、N−フタルイミド、N−グルタルイミド、N−テトラヒドロフタルイミド、N−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、ベンゾトリアゾール、7−アザベンゾトリアゾール、およびイミダゾールから選択されると好ましい。
【0107】
他の好ましい求電子基としては、炭酸スクシンイミジル、マレイミド、炭酸ベンゾトリアゾール、グリシジルエーテル、炭酸イミダゾイル、炭酸p−ニトロフェニル、アクリレート、トレシレート、アルデヒド、およびオルトピリジルジスルフィドがあげられる。
【0108】
これら求電子基を、ヒドロキシ、チオまたはアミノ基などの求核剤と反応させ、さまざまな結合タイプを形成する。本発明で好ましいのは、加水分解的に安定した連結の形成を好む反応である。たとえば、オルトエステル、スクシンイミジルエステル、イミダゾリルエステル、ベンゾトリアゾールエステルを含むカルボン酸やその活性化された誘導体は、上記のタイプの求核剤と反応して、それぞれエステル、チオエステル、アミドを形成し、このうちアミドが加水分解的に最も安定である。炭酸スクシンイミジル、炭酸イミダゾリル、炭酸ベンゾトリアゾールをはじめとする炭酸塩は、アミノ基と反応してカルバミン酸塩を形成する。
イソシアネート(R−N=C=O)はヒドロキシル基またはアミノ基と反応して、それぞれ、カルバミン酸塩(RNH−C(O)−OR’)または尿素(RNH−C(O)−NHR’)連結を形成する。アルデヒド、ケトン、グリオキサール、ジオン、これらの水和物またはアルコールアダクト(すなわち、アルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、ケタール)を、好ましくはアミンと反応させた後、必要があれば得られるイミンを還元して、アミン連結を得る(還元アミン化)。
【0109】
求電子官能基のなかには、チオールなどの求核基が結合する求電子二重結合を含むか追加可能であって、たとえば、チオエーテル結合を形成する。これらの基として、マレイミド、ビニルスルホン、ビニルピリジン、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミドがあげられる。他の基は、求核基で置き換え可能な脱離基を含み、これには、クロロエチルスルホン、ピリジルジスルフィド(切断可能なS−S結合を含む)、ヨードアセトアミド、メシレート、トシレート、チオスルホネート、トレシレートが含まれる。エポキシドは、求核剤によって開環することで反応し、たとえばエーテルまたはアミン結合を形成する。オリゴマーと小分子の上述したものなどの相補的反応性基を伴う反応は、本発明のコンジュゲートの調製に利用される。
【0110】
場合によっては、コンジュゲーションに適した官能基がカルシミメティクスにないこともある。この場合、コンジュゲーションに適した官能基を持つように、「もとの」カルシミメティクスを修飾(または「官能化」)することが可能である。たとえば、カルシミメティクスにアミド基はあるがアミン基が望ましい場合、Hofmann転位、Curtius転位(アミドがアジドに変換されたら)またはLossen転位(アミドがヒドロオキサミドに変換された後、トリレン−2−塩化スルホニル/塩基で処理したら)によって、このアミド基を修飾してアミン基にすることが可能である。
【0111】
カルボキシル基を持つ小分子カルシミメティクスのコンジュゲートを調製可能であるが、この場合、カルボキシル基を持つ小分子カルシミメティクスをアミノ末端オリゴマーエチレングリコールとカップリングして、小分子カルシミメティクスをオリゴマーに共有結合的に連結しているアミド基を有するコンジュゲートを提供する。これは、たとえば無水有機溶媒中にてカルボキシル基を持つ小分子カルシミメティクスとアミノ末端オリゴマーエチレングリコールとをカップリング試薬(ジシクロヘキシルカルボジイミドすなわち「DCC」など)の存在下で組み合わせて実現可能である。
【0112】
さらに、ヒドロキシル基を持つ小分子カルシミメティクスのコンジュゲートを調製可能であるが、この場合、ヒドロキシル基を持つ小分子カルシミメティクスをオリゴマーエチレングリコールハロゲン化物とカップリングし、エーテル(−O−)連結小分子コンジュゲートを得る。これは、たとえば水素化ナトリウムを用いてヒドロキシル基を脱プロトン化した後、ハロゲン化物末端オリゴマーエチレングリコールと反応させて実現可能である。
【0113】
さらに、ヒドロキシル基を持つ小分子カルシミメティクスのコンジュゲート(たとえば、式Iおよび式IIの少なくとも1つに包含される構造を有するカルシミメティクスなど)を調製することが可能であり、この場合、ヒドロキシル基を持つ小分子カルシミメティクスを、ハロホルメート基[たとえば、CH(OCHCHOC(O)−ハロ、式中ハロは、クロロ、ブロモ、ヨードである]を持つオリゴマーエチレングリコールにカップリングし、炭酸塩[−O−C(O)O−]連結小分子コンジュゲートを得る。これは、たとえば、カルシミメティクスと、ハロホルメート基を持つオリゴマーエチレングリコールとを求核触媒(4−ジメチルアミノピリジンすなわち「DMAP」など)の存在下で組み合わせ、対応する炭酸塩連結コンジュゲートを得ることにより実施可能である。
【0114】
もうひとつの例では、まずケトン基を還元して対応するヒドロキシル基を形成することで、ケトン基を持つ小分子カルシミメティクスのコンジュゲートを調製することが可能である。その後、ヒドロキシル基を持った小分子カルシミメティクスを本明細書に記載のようにしてカップリング可能である。
【0115】
さらに別の例では、アミン基を持つ小分子カルシミメティクスのコンジュゲートを調製することが可能である。ひとつの方法において、アミン基を持つ小分子カルシミメティクスとアルデヒドを持つオリゴマーとを好適な緩衝液に溶解させた後、好適な還元剤(NaCNBHなど)を加える。還元後、得られるのはアミン基含有小分子カルシミメティクスのアミン基とアルデヒドを持つオリゴマーのカルボニル炭素との間のアミン連結である。
【0116】
アミン基を持つ小分子カルシミメティクスのコンジュゲートを調製するためのもうひとつの方法では、一般にカップリング試薬(DCCなど)の存在下にて、カルボン酸を持つオリゴマーとアミン基を持つ小分子カルシミメティクスとを組み合わせる。得られるのは、アミン基含有小分子カルシミメティクスのアミン基とカルボン酸を持つオリゴマーのカルボニルとの間に形成されるアミド連結である。
【0117】
本発明の化合物はそれ自体で投与されても、または薬学的に許容される塩の形態で投与されてもよく、本明細書における本発明の化合物のいずれの言及も、薬学的に許容される塩を含むことが意図される。本明細書に記載されるとおりの化合物の塩は、使用される場合には薬理学的にも、かつ薬学的にも許容されるものでなければならないが、薬学的に許容されない塩が遊離活性化合物またはその薬学的に許容される塩の調製に好都合に用いられてもよく、本発明の範囲から排除するものではない。かかる薬理学的および薬学的に許容される塩は、文献に詳述される標準的な方法を用いて化合物を有機酸または無機酸と反応させることにより調製することができる。有用な塩の例としては、限定することなく、以下の酸から調製されるものがあげられる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸(salicyclic)、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸およびベンゼンスルホン酸など。また、薬学的に許容される塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類塩、たとえばカルボン酸基のナトリウム塩、カリウム塩、またはカルシウム塩として調製することもできる。
【0118】
本明細書に開示される全ての範囲のコンジュゲートが記載のとおりの挙動を示すと考えられるが、各々が異なるオリゴマーサイズを有する一連の化合物を試験することにより最適サイズのオリゴマーを特定することができ、および最良の活性を有する化合物が好ましい化合物として特定される。
【0119】
生物学的利用率に関して、当業者であれば常法による実験を用いて、まず分子量と官能基の異なる一連のオリゴマーを調製した後、コンジュゲートを患者に投与して定期的に血液および/または尿のサンプルを採取して必要なクリアランスのプロファイルを得ることで、経口生物学的利用率を改善するのに最適な分子サイズと連結を判断することができる。試験したコンジュゲートごとに一連のクリアランスのプロファイルが得られてしまえば、好適なコンジュゲートを特定することが可能である。
【0120】
動物モデル(齧歯類と犬)を使用して、経口薬剤輸送について研究することも可能である。また、in vivo以外の方法として、齧歯類の反転腸管の組織切片やCaco−2細胞の単層膜組織培養モデルがあげられる。これらのモデルは、薬剤の経口薬剤生物学的利用率を予測する上で有用である。
【0121】
また、本発明は、薬学的賦形剤との組み合わせで本明細書に記載のコンジュゲートを含む医薬品も含む。通常は、コンジュゲート自体が固体状(沈殿物など)であり、これを固体または液体状のいずれかの好適な薬学的賦形剤と組み合わせることが可能である。
【0122】
例示としての賦形剤には、限定することなく、炭水化物、無機塩、抗微生物剤、酸化防止剤、界面活性剤、緩衝液、酸、塩基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるものを含む。
【0123】
糖、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖などの誘導体化糖および/または糖ポリマーなどの炭化水素が賦形剤として含まれていてもよい。具体的な炭化水素賦形剤としては、たとえば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなどの単糖類、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖類、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、スターチなどの多糖、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールなどのアルジトールがあげられる。
【0124】
賦形剤には、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、およびこれらの組み合わせなどの無機塩または緩衝液を含むことも可能である。
【0125】
調製物は、微生物の成長を防止または遅らせるための抗微生物剤を含むものであってもよい。本発明に適した抗微生物剤の非限定的な例として、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、およびこれらの組み合わせがあげられる。
【0126】
調製物には酸化防止剤も含有させることが可能である。酸化防止剤は、酸化を防止して調製物中のコンジュゲートまたは他の成分の劣化を防ぐために用いられる。本発明で用いられる好適な酸化防止剤としては、たとえば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、重硫酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウムホルムアルデヒド、メタ重亜硫酸ナトリウム、これらの組み合わせがあげられる。
【0127】
界面活性剤を賦形剤として含有してもよい。例示としての界面活性剤には、「Tween 20」および「Tween 80」などのポリソルベート、F68およびF88などのプロロニック(いずれもBASF、Mount Olive, New Jerseyから入手可能);ソルビタンエステル;レシチンといったリン脂質および他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(ただし、好ましくはリポソームの形態でないもの)、脂肪酸および脂肪酸エステルなどの脂質;コレステロールなどのステロイド;EDTA、亜鉛、他のこのような好適なカチオンなどのキレート化剤がある。
【0128】
薬学的に許容される酸または塩基も賦形剤として調製物中に含有させることができるものである。使用可能な酸の非限定的な例として、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される酸があげられる。好適な塩基の例として、限定することなく、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される塩基があげられる。
【0129】
組成物中のコンジュゲートの量は多数の要因次第で変わるが、組成物を単位用量の容器で保存する場合は、治療有効用量であると最適であろう。治療有効用量は、コンジュゲートの量を増やしながら繰り返し投与して、どの量で臨床的に望ましい端点が得られるかを判断することで、実験的に定められるものである。
【0130】
組成物中の個々の賦形剤の量は、賦形剤の活性と、組成物の特定の必要性に応じて変わる。一般に、個々の賦形剤の最適量は、常法による実験すなわち、さまざまな量の賦形剤(低量から高量まで)を含有する組成物を調製し、安定性および他のパラメータを試験した上で、有意な副作用を伴わずに最適な効果が得られる範囲を求めることで決定される。
【0131】
しかしながら、賦形剤は通常、約1%から約99重量%、好ましくは約5%〜98重量%の量で組成物中に存在し、一層好ましくは約15〜95重量%が賦形剤であって、濃度30重量%未満が最も好ましい。
【0132】
上述した薬学的賦形剤ならびに他の賦形剤、薬学的組成物に関する一般的な教示内容は、“Remington: The Science & Practice of Pharmacy”, 19th ed., Williams & Williams, (1995)、“Physician‘s Desk Reference”, 52nd ed., Medical Economics, Montvale, NJ (1998)、Kibbe, A.H., Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3rd Edition, American Pharmaceutical Association, Washington, D.C., 2000に記載されている。
【0133】
薬学的組成物は、さまざまな形態をとり得るものであり、この点に関して本発明は何ら限定されるものではない。例示としての調製物は、最も好ましくは、錠剤、カプレット、カプセル、ジェルキャップ、トローチ、分散液、懸濁液、溶液、エリキシル剤、シロップ、薬用キャンディなどの経口投与に適した形態、経皮パッチ、スプレー、坐剤および粉末である。
【0134】
経口投与により活性のあるコンジュゲートについては経口剤形が好ましく、錠剤、カプレット、カプセル、ジェルキャップ、懸濁液、溶液、エリキシル剤、シロップが含まれ、任意にカプセル化された複数の顆粒、ビーズ、粉末またはペレットも含まれる。このような剤形は、医薬製剤の分野の人々には周知であり、関連のテキストに説明されている従来の方法で調製される。
【0135】
錠剤およびカプレットは、たとえば、標準的な錠剤処理方法と装置を用いて製造可能である。本明細書に記載のコンジュゲートを含む錠剤やカプレットの調製には、直接打錠や顆粒成型の技術が好ましい。コンジュゲートだけでなく、錠剤やカプレットは通常、薬学的に許容される不活性キャリア材料、たとえば、バインダー、潤滑剤、崩壊剤、フィラー、安定剤、界面活性剤、着色剤、流動化剤などを含む。バインダーは、錠剤に結合性をもたせ、錠剤が損なわれないようにするものである。好適なバインダー材料としては、スターチ(コーンスターチおよびα化したスターチを含む)、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロース、ラクトースを含む)、ポリエチレングリコール、ワックス、ならびにアカシアアルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロースポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを含む)、Veegumなどの天然ガムおよび合成ガムがあげられるが、これに限定されるものではない。潤滑剤は、粉末の流れをよくして、圧力を緩和した際の粒子キャッピング(すなわち粒子の破損)を防いで錠剤を製造しやすくするのに用いられる。有用な潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸があげられる。崩壊剤は、錠剤を崩壊しやすくするために用いられるものであり、通常は、スターチ、クレー、セルロース、アルギン、ガムまたは架橋ポリマーである。フィラーとしては、たとえば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、粉末セルロース、および微結晶性セルロースなどの材料、ならびにマンニトール、尿素、スクロース、ラクトース、デキストロース、塩化ナトリウム、およびソルビトールなどの可溶性材料があげられる。安定剤は、従来技術において周知のように、酸化反応など薬剤の分解反応を阻害あるいは遅延させるのに用いられる。
【0136】
カプセルも好ましい経口剤形であり、この場合、液体またはゲル(ジェルキャップの場合)または固体(顆粒、ビーズ、粉末、ペレットなどの微粒子を含む)の形でコンジュゲート含有組成物をカプセル化することが可能である。好適なカプセルとしては、ハードカプセルおよびソフトカプセルがあげられ、通常はゼラチン、スターチまたはセルロース材料で作られる。2ピースのハードゼラチンカプセルについては、ゼラチンバンドなどで封止するのが好ましい。
【0137】
実質的に乾燥状態(一般に粉末あるいはケークの形をとり得る凍結乾燥物または沈殿物として)の非経口製剤、ならびに一般に液体である注射用に調製された製剤も含まれ、これは乾燥状態の非経口製剤を再構成する段階を必要とする。注射前に固体組成物を再構成するための好適な希釈剤の例として、注射用静菌水、5%デキストロース水溶液、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、およびこれらの組み合わせがあげられる。
【0138】
場合によっては、非経口投与を想定した組成物は、非水溶液、懸濁液またはエマルション(いずれも一般に滅菌されている)の形をとり得る。非水性溶媒または溶媒剤の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油やトウモロコシ油などの植物油、ゼラチン、およびオレイン酸エチルなどの注入可能な有機エステルがあげられる。
【0139】
本明細書に記載の非経口製剤はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散助剤などのアジュバントを含むものであってもよい。製剤は、滅菌剤を加え、細菌を捕捉するフィルタを用いた濾過、放射線照射または加熱によって滅菌される。
【0140】
また、コンジュゲートは、従来の経皮パッチまたは他の経皮輸送系を用いて皮膚から投与可能であり、ここで、当該コンジュゲートは、皮膚に貼り付けられたときに薬剤送達装置として作用する積層構造内に含まれている。そのような構造において、コンジュゲートは、上側の裏打ち層の下にある層すなわち「リザーバ」に含まれる。積層構造は、単一のリザーバを含むものであってもよいし、複数のリザーバを含むものであってもよい。
【0141】
コンジュゲートを直腸投与用の坐剤として処方することも可能である。坐剤に関しては、カカオバター(カカオ脂)、ポリエチレングリコール、グリセリンゼラチン、脂肪酸、およびこれらの組み合わせなどの(室温では固体のままであるが、体温で軟化、溶融または溶解する賦形剤など)坐剤の基剤材料とコンジュゲートを混合する。坐剤は、たとえば、以下の段階を実施(必ずしもここにあげた順序でなくてもよい)して調製可能である。坐剤の基剤材料を溶融させて溶融物を形成し、コンジュゲートを(坐剤の基剤材料の溶融前または溶融後のいずれかで)取り入れ、溶融物を型に注ぎ、溶融物を冷却して(溶融物の入った型を室温環境に置くなど)坐剤を形成し、型から坐剤を取り出す。
【0142】
また、本発明は、コンジュゲートによる治療に応答する症状のある患者に、本明細書に記載したようなコンジュゲートを投与する方法を提供するものである。この方法は、通常は経口的に、治療有効量のコンジュゲート(好ましくは医薬品の一部として提供される)を投与することを含む。経肺、経鼻、頬側、直腸、舌下、経皮、非経口投与などの他の投与モードについても企図される。本明細書で使用する場合、「非経口」という用語は、皮下、静脈内、動脈内、腹腔内、心臓内、くも膜下腔内、および筋肉内注射、ならびに点滴注射を含む。
【0143】
非経口投与を用いる場合は、上述したものよりも若干大きな、分子量が約500から30Kダルトンの範囲にある(分子量が約500、1000、2000、2500、3000、5000、7500、10000、15000、20000、25000、30000またはそれをさらに上回るなど)オリゴマーを使う必要があるかもしれない。
【0144】
この投与方法を用いて、特定のコンジュゲートの投与により治療や予防が可能な症状であれば、どのような症状でも治療できる。特定のコンジュゲートでどの症状を有効に治療できるかは、当業者であれば自明であろう。実際の投与用量は、被検体の年齢や体重、全身状態、ならびに治療する症状の重篤度、医療行為従事者の判断、投与されるコンジュゲートによって決まる。治療有効量は当業者間で周知であるおよび/または関連の参考テキストおよび文献に説明されている。通常は、治療有効量は、約0.001mgから1000mgの範囲、好ましくは0.01mg/日から750mg/日の用量、一層好ましくは0.10mg/日から500mg/日の用量である。
【0145】
特定のコンジュゲート(繰り返すが、好ましくは医薬品の一部として提供される)の単位薬用量も、臨床医の判断や患者側の需要などに応じて、多岐にわたる投与スケジュールで投与可能である。具体的な投与スケジュールは、当業者であれば分かるか、常法で実験的に決定可能である。例示としての投与スケジュールとしては、限定することなく、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回、およびこれらのいずれかの組み合わせがあげられる。臨床端点に達したら、組成物の投与を中断する。
【0146】
本明細書に引用した論文、書籍、特許、特許公開、他の刊行物はいずれも、その内容全体を本明細書に援用するものである。
【実施例】
【0147】
以上、特定の好ましい実施形態および特定の実施形態に関して本発明を説明してきたが、上記の説明ならびに以下の実施例は、例示を意図したものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本発明の範囲内の他の態様、利点、改変は、本発明が属する分野の当業者には自明であろう。
【0148】
添付の実施例で取り上げる化学試薬はすべて、特に明記しないかぎり、業務入手可能なものである。PEGマーの調製については、たとえば、米国特許出願公開第2005/0136031号明細書に記載されている。
【0149】
H NMR(核磁気共鳴)データはいずれも、Bruker製のNMRスペクトロメータで生成した。特定の化合物のリストならびに化合物のソースは以下に提供する。
【0150】
実施例1
mPEGn−シナカルセト(n=1、2、3、4、5、6、7など)の合成
mPEGn−N−シナカルセトは、クロロホルメートを有するポリ(エチレングリコール)を使用して調製する。概略的に、この例についてとられる方法を以下に示す。
【化23】
【0151】
過剰のmPEG−クロロホルメート[Cl−C(O)O−CHCHO)CH]をシナカルセトの組成物に対し、塩基の存在下20℃の温度で2〜4時間にわたり添加する。このように形成されたコンジュゲートを、従来技術を用いて分離する。
【0152】
この方法を数回繰り返し、ここで方法を繰り返す都度、異なるmPEGnサイズ[たとえば、エチレンオキシドモノマーの数「n」、n=1、2、4、5、6、7など]を使用する。
【0153】
実施例2
mPEGn−シナカルセト(n=1、2、3、4、5、6、7など)の合成
mPEGn−N−シナカルセトは、スルホン酸塩(たとえば、メシル酸塩すなわち「Ms」)またはハロゲン化物などの脱離基を有するポリ(エチレングリコール)を使用して調製する。概略的に、この例についてとられる方法を以下に示す。
【化24】
【0154】
シナカルセトをDMF中に溶解する。この溶液にNaHを撹拌しながら添加する。20分後、mPEG−ハロゲン化物(たとえば、mPEG−Br)をこの溶液に添加し、次にそれを一晩室温で撹拌する。ジクロロメタン(150mL)を添加し、沈澱した固形物をろ過により回収する。有機ろ液を水(100mL×2)で洗浄し、次に乾燥させる。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO:DCM/メタノール 20:1)により精製する。
【0155】
この方法を数回繰り返し、ここで方法を繰り返す都度、異なるmPEGnサイズ[たとえば、エチレンオキシドモノマーの数「n」、n=1、2、4、5、6、7など]を使用する。
【0156】
実施例3
mPEGn−シナカルセト(比較的大きいオリゴマーサイズ)の合成
オリゴマーが比較的大きいmPEGn−N−シナカルセトを以下に記載する方法に従い調製する。
【0157】
簡潔には、従来技術を使用して化合物1を調製し、カップリング剤N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(すなわちEDC)の存在下にBICINをt−BOC無水物と反応させて得られるtert−ブチル2(ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ)アセテートと反応させることで、化合物2を得る。
【化25】
【0158】
その後、化合物2のヒドロキシル基を塩化アセチル(AcCl)と反応させる処理によりアシル化すると、化合物3がもたらされる。
【化26】
【0159】
次に、化合物3を20%トリフルオロ酢酸(TFA)で処理してTFA塩(化合物4)とする。
【化27】
【0160】
次に、化合物4を好適な溶媒中に溶解し、炭酸スクシンイミジル末端mPEG試薬(約2,000ダルトンの分子量)を塩基型の化合物4とカップリングして化合物5を得る。このステップは、あるいは炭酸スクシンイミジル末端mPEG試薬の代わりにクロロホルメート末端mPEG試薬を用いて実行することができる。
【化28】
【0161】
その後、化合物5中のtert−ブチル保護基を33%TFAで脱保護すると、カルボン酸を含有する化合物6がもたらされる。
【化29】
【0162】
次に、カルボキシル基を含有する化合物6のカルボン酸をカップリング剤の存在下にH−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化すると、化合物7がもたらされる。
【化30】
【0163】
その後、化合物7をシナカルセトの第二級アミンとカップリングすると、化合物8がもたらされる。
【化31】
【0164】
この方法を数回繰り返し、ここで方法を繰り返す都度、異なるmPEG重量(たとえば、5,000ダルトン、10,000ダルトン、15,000ダルトン、20,000ダルトン、30,000および40,000ダルトン)を使用する。
【0165】
実施例4
mPEGn−シナカルセト(比較的大きいオリゴマーサイズ)の合成
オリゴマーが比較的大きいmPEGn−N−シナカルセトを以下に提供する概略図に従い調製する。この概略図では、化合物9(各mPEGが約2,000ダルトンの分子量を有する)は、米国特許出願公開第2006/0293499号明細書に記載されるとおり調製することのできるオリゴマー試薬であり、シナカルセトとカップリングすると、化合物10をもたらすことができる。
【化32】
【0166】
この方法を数回繰り返し、ここで方法を繰り返す都度、異なるmPEG重量(たとえば、約5,000ダルトンの試薬重量をもたらす2,500ダルトンのmPEG重量、約10,000ダルトンの試薬重量をもたらす5,000ダルトンのmPEG重量、約15,000ダルトンの試薬重量をもたらす約7,500ダルトンのmPEG重量、約20,000ダルトンの試薬重量をもたらす10,000ダルトンのmPEG重量、約25,000ダルトンの試薬重量をもたらす約12,500ダルトンのmPEG重量、約30,000ダルトンの試薬重量をもたらす約15,000ダルトンのmPEG重量、および約40,000ダルトンの試薬重量をもたらす20,000ダルトンのmPEG重量)を使用する。
【0167】
実施例5
mPEG10k−グリシン−アミド−シナカルセト(15)の合成
シナカルセトは、1つ以上のアミノ酸を含むスペーサー部分(または「連結」)を介してオリゴマーに連結することができる。連結に1つ以上のアミノ酸を含めることにより、全体の遊離率に影響を及ぼすことが可能である。たとえば、ジペプチドは自己切断を行うことができ、これは遊離機序全体における追加的なステップに相当するもので、これにより活性部分の遊離全体が影響を受ける。シナカルセトの残基とオリゴマーとの間にアミノ酸含有リンカーを含む化合物は、以下に提供する概略図に従い調製した。
【化33】
【0168】
シナカルセト遊離塩基(12)の調製
【0169】
シナカルセトHCL塩(約3.16g、約8.02mmol、11)をジクロロメタン(DCM)中に溶解し、この溶液を飽和水性NaCO溶液で3回洗浄した。ジクロロメタン溶液をNaSOで乾燥させてろ過し、溶媒を減圧除去すると、シナカルセト遊離塩基(12)が透明の液体として得られた(約2.75g、約96%収率)。
【0170】
tBoc−グリシン−アミド−シナカルセト(13)の合成
【0171】
シナカルセト遊離塩基(約1.0g、約2.80mmol、12)、tBoc−グリシン(約0.98g、約5.60mmol)および4−N,N−ジメチルアミノピリジニウムp−トルエンスルホネート(DPTS、約0.42g、約1.40mmol)をジクロロメタン中に溶解した。次にN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、約1.3g、約8.40mmol)を添加した。反応混合液を室温で一晩(約18時間)撹拌した。次にジクロロメタン反応混合液を0.2NのHCl溶液で3回洗浄した。ジクロロメタン溶液をNaSOで乾燥させてろ過し、溶媒を減圧除去すると、粗生成物が黄色の液体として得られた。クロマトグラフィー精製後、tBoc−グリシン−アミド−シナカルセト(13)が白色の固体として得られた(約0.60g、約1.20mmol、約42%の分離収率)。
【0172】
グリシン−アミド−シナカルセト(14)の合成
【0173】
tBoc−グリシン−アミド−シナカルセト(13)(約0.60g、約1.20mmol)をジクロロメタン(約5mL)中に溶解し、その後トリフルオロ酢酸(TFA)(約3mL)を添加して反応混合液を室温で4時間撹拌した。反応の完了をHPLC分析によりモニタした。ジクロロメタン生成物混合液を飽和水性NaCO溶液で2回洗浄し、NaSOで乾燥させた。全ての溶媒を除去した後、グリシン−アミド−シナカルセト(14)が淡黄色の液体として得られた(約0.50g、約1.20mmol、定量的収率)。
【0174】
mPEG10k−グリシン−アミド−シナカルセト(15)の調製
【0175】
mPEG10k−CM[CHO(CHCHO)−CHCH−OCH−COOH(約1.2g、約0.12mmol)]、グリシン−アミド−シナカルセト(14)(約314mg、約0.76mmol)および4−N,N−ジメチルアミノピリジニウムp−トルエンスルホネート(DPTS、約227mg、約0.76mmol)をジクロロメタン中に溶解した。次にN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、約0.40mL、約353mg、約2.27mmol)を添加した。反応混合液を室温で一晩(約21時間)撹拌した。生成物混合液を激しく撹拌しながら1:1イソプロパノール/ジエチルエーテル中に注ぎ入れ、生じた白色の沈殿物を回収し、1:1イソプロパノール/ジエチルエーテルおよびジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥した。mPEG10k−グリシン−アミド−シナカルセトコンジュゲート(15)が白色の固体として得られた(約1.15g、約95%収率)。HPLCから、生成物の純度が>95%であり、小分子不純物はないことが示された。NMRから、シナカルセト置換が約95%であることが示された。
【0176】
実施例6
マルチアーム型オリゴマー−シナカルセト(16)の合成
マルチアーム型オリゴマー−シナカルセト(同様にアミノ酸含有スペーサー部分を含む)を以下の概略図に従い調製した。
【化34】
【0177】
4アーム−PEG20k−CM[C(CHO(CHCHO)−CHCH−OCH−COOH)(約2.0g、約0.10mmol)]、グリシン−アミド−シナカルセト(14)(約212mg、約0.51mmol)および4−N,N−ジメチルアミノピリジニウムp−トルエンスルホネート(DPTS、約154mg、約0.51mmol)をジクロロメタン中に溶解した。次にN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、約0.27mL、約239mg、約1.54mmol)を添加した。反応混合液を室温で一晩(約18時間)撹拌した。生成物混合液を激しく撹拌しながら1:1イソプロパノール/ジエチルエーテル中に注ぎ入れ、生じた白色の沈殿物を回収し、1:1イソプロパノール/ジエチルエーテルおよびジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥した。4アーム−PEG20k−グリシン−アミド−シナカルセトコンジュゲート(16)が白色の固体として得られた(約1.9g、約95%収率)。HPLC分析から、生成物の純度が>95%であり、小分子不純物はないことが示された。NMRから、シナカルセト置換が約95%であることが示された。
【0178】
実施例7
mPEG10k−L−ロイシン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(20)の合成
シナカルセトの残基とオリゴマーとの間にアミノ酸含有スペーサー部分を含む化合物を、以下に提供する概略図に従い調製した。
【化35】
【0179】
1−クロロエチル−カルバメート−シナカルセト(17)の合成
【0180】
シナカルセト(約360mg、約1.0mmol、12)のジクロロメタン溶液にクロロギ酸1−クロロエチル(約173mg、約1.20mmol)およびトリエチルアミン(TEA、約0.21mL、約153mg、約1.50mmol)を添加し、この溶液を室温で3時間撹拌した。次にジクロロメタン生成物混合液を0.1NのHCl/NHCl水溶液で2回、およびNaCO水溶液で1回洗浄した。ジクロロメタン相をNaSOで乾燥し、溶媒蒸発後、1−クロロエチル−カルバメート−シナカルセト(17)が無色の液体として得られた(約437mg、約94%分離収率)。
【0181】
tBoc−L−ロイシン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(18)の合成
【0182】
1−クロロエチル−カルバメート−シナカルセト(17)(約437mg、約0.92mmol)およびtBoc−L−ロイシン(約871mg、約3.77mmol)のジクロロメタン溶液にトリエチルアミン(TEA、約0.39mL、約286mg、約2.83mmol)を添加した。反応混合液を室温で一晩(約20時間)撹拌し、次に0.1NのHCl/NHCl水溶液で2回、およびNaCl水溶液で1回洗浄した。粗生成物をクロマトグラフィーによりヘキサン/酢酸エチルで精製した;tBoc−L−ロイシン−カルバメート−シナカルセト(18)が無色の液体として得られた(約280mg、約0.43mmol、約45%分離収率)。
【0183】
L−ロイシン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(19)の合成
【0184】
tBoc−L−ロイシン−カルバメート−シナカルセト(18)(約280mg、約0.43mmol)のジクロロメタン溶液にトリフルオロ酢酸(TFA)(約1.5mL)を添加した。反応混合液を室温で約1時間撹拌した。反応の完了をHPLC分析によりモニタした。ジクロロメタン生成物混合液を0.1NのHCl/NHCl水溶液で3回洗浄した。ジクロロメタン相をNaSOで乾燥し、次に全ての溶媒を減圧除去した。L−ロイシン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(19)が無色の液体として得られた(約238mg、定量的収率)。
【0185】
mPEG10k−L−ロイシン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(20)の調製
【0186】
mPEG10k−CM(約1.4g、約0.14mmol)、L−ロイシン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(19)(約115mg、約0.21mmol)および4−N,N−ジメチルアミノピリジニウムp−トルエンスルホネート(DPTS、約43mg、約0.14mmol)をジクロロメタン中に溶解した。次にN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、約0.20mL、約170mg、約1.10mmol)を添加した。反応混合液を室温で一晩(約20時間)撹拌した。生成物混合液を激しく撹拌しながら1:1イソプロパノール/ジエチルエーテル中に注ぎ入れ、生じた白色の沈殿物を回収し、1:1イソプロパノール/ジエチルエーテルおよびジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥した。mPEG10k−L−ロイシン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(20)が白色の固体として得られた(約1.3g、約93%収率)。HPLC分析から、小分子不純物はないことが示された。NMRから、シナカルセト置換が約80%であることが示された。
【0187】
実施例8
マルチアーム型オリゴマー−シナカルセト(21)の合成
マルチアーム型オリゴマー−シナカルセト(同様にアミノ酸含有スペーサー部分を含む)を、以下の概略図に従い調製した。
【化36】
【0188】
4アーム−PEG20k−CM(約760mg、約0.038mmol)、L−ロイシン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(19)(約122mg、約0.22mmol)および4−N,N−ジメチルアミノピリジニウムp−トルエンスルホネート(DPTS、約65mg、約0.21mmol)をジクロロメタン中に溶解した。次にN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、約0.60mL、約520mg、約3.39mmol)を添加した。反応混合液を室温で一晩(約22時間)撹拌した。生成物混合液を激しく撹拌しながら1:1イソプロパノール/ジエチルエーテル中に注ぎ入れ、生じた白色の沈殿物を回収し、1:1イソプロパノール/ジエチルエーテルおよびジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥した。4アーム−PEG20k−L−ロイシン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(21)が白色の固体として得られた(約750mg、約98%収率)。HPLC分析から、小分子不純物はなく、およびシナカルセト置換が約71%であることが示された。
【0189】
実施例9
mPEG10k−L−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(24)の合成
シナカルセトの残基とオリゴマーとの間にアミノ酸含有スペーサー部分を含む化合物を、以下に提供する概略図に従い調製した。
【化37】
【0190】
tBoc−L−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(22)の合成
【0191】
1−クロロエチル−カルバメート−シナカルセト(17)(約748mg、約1.61mmol)およびtBoc−L−バリン(約1.4g、約6.45mmol)のジクロロメタン溶液にトリエチルアミン(TEA、約0.67mL、約489mg、約4.84mmol)を添加した。反応混合液を室温で一晩(約20時間)撹拌し、次に0.1NのHCl/NHCl水溶液で2回、およびNaCl水溶液で1回洗浄した。粗生成物をクロマトグラフィーによりヘキサン/酢酸エチルで精製した;tBoc−L−バリン−カルバメート−シナカルセト(22)が無色の液体として得られた(約900mg、約1.40mmol、約87%分離収率)。
【0192】
L−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(23)の合成
【0193】
tBoc−L−バリン−カルバメート−シナカルセト(22)(約900mg、約1.40mmol)のジクロロメタン溶液にトリフルオロ酢酸(TFA)(約2mL)を添加した。反応混合液を室温で約3時間撹拌した。反応の完了をHPLC分析によりモニタした。ジクロロメタン生成物混合液を0.1NのHCl/NHCl水溶液で3回洗浄した。ジクロロメタン相をNaSOで乾燥した。溶媒蒸発後、L−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(23)が白色の固体として得られた(約735mg、約97%分離収率)。
【0194】
mPEG10k−L−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(24)の合成
【0195】
mPEG10k−CM(約2.3g、約0.23mmol)、L−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(23)(約180mg、約0.33mmol)、トリエチルアミン(TEA、約0.14mL、約100mg、約0.99mmol)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、約47mg、約0.35mmol)をジクロロメタン中に溶解した。次にN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、約0.20mL、約169mg、約1.10mmol)を添加した。反応混合液を室温で一晩(約19時間)撹拌した。生成物混合液を激しく撹拌しながら1:1イソプロパノール/ジエチルエーテル中に注ぎ入れ、白色の沈澱物を回収し、1:1イソプロパノール/ジエチルエーテルおよびジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥した。mPEG10k−L−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(24)が白色の固体として得られた(約2.0g、約87%収率)。HPLC分析から、小分子不純物はないことが示された。NMRから、シナカルセト置換が約72%であることが示された。
【0196】
実施例10
マルチアーム型オリゴマー−シナカルセト(25)の合成
マルチアーム型オリゴマー−シナカルセト(同様にアミノ酸含有スペーサー部分を含む)を、以下の概略図に従い調製した。
【化38】
【0197】
4アーム−PEG20k−CM(約1.2g、約0.059mmol)、L−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(23)(約180mg、約0.33mmol)、トリエチルアミン(TEA、約0.14mL、約100mg、約0.99mmol)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、約47mg、約0.35mmol)をジクロロメタン中に溶解した。次にN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、約0.19mL、約154mg、約0.99mmol)を添加した。反応混合液を室温で一晩(約24時間)撹拌した。生成物混合液を激しく撹拌しながら1:1イソプロパノール/ジエチルエーテル中に注ぎ入れ、白色の沈澱物を回収し、1:1イソプロパノール/ジエチルエーテルおよびジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥した。4アーム−PEG20k−L−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(25)が白色の固体として得られた(約1.0g、約83%収率)。HPLC分析から小分子不純物はないことが示され、およびNMRから、シナカルセト置換が約80%であることが示された。
【0198】
実施例11
mPEG10k−D−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(28)の合成
シナカルセトの残基とオリゴマーとの間にアミノ酸含有スペーサー部分を含む化合物を、以下に提供する概略図に従い調製した。
【化39】
【0199】
tBoc−D−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(26)の合成
【0200】
1−クロロエチル−カルバメート−シナカルセト(17)(約670mg、約1.44mmol)およびtBoc−D−バリン(約1.3g、約5.78mmol)のジクロロメタン溶液にトリエチルアミン(TEA、約0.60mL、約438mg、約4.33mmol)を添加した。反応混合液を室温で一晩(約20時間)撹拌し、次に0.1NのHCl/NHCl水溶液で2回、およびNaCl水溶液で1回洗浄した。粗生成物をクロマトグラフィーによりヘキサン/酢酸エチルで精製した;tBoc−D−バリン−カルバメート−シナカルセト(26)が無色の液体として得られた(約230mg、約0.36mmol、約25%分離収率)。
【0201】
D−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(27)の合成
【0202】
tBoc−D−バリン−カルバメート−シナカルセト(26)(約230mg、約0.36mmol)のジクロロメタン溶液にトリフルオロ酢酸(TFA)(約2mL)を添加した。反応混合液を室温で約4.5時間撹拌した。反応の完了をHPLC分析によりモニタした。ジクロロメタン生成物混合液を0.1NのHCl/NaCl水溶液で3回洗浄した。ジクロロメタン相をNaSOで乾燥した。溶媒蒸発後、D−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(27)が白色の固体として得られた(約176mg、約91%分離収率)。
【0203】
mPEG10k−D−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(28)の合成
【0204】
mPEG10k−CM(約1.1g、約0.11mmol)、D−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(27)(約88mg、約0.16mmol)、トリエチルアミン(TEA、約0.07mL、約49mg、約0.49mmol)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、約23mg、約0.17mmol)をジクロロメタン中に溶解した。次にN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、約0.09mL、約75mg、約0.49mmol)を添加した。反応混合液を室温で一晩(約18時間)撹拌した。生成物混合液を激しく撹拌しながら1:1イソプロパノール/ジエチルエーテル中に注ぎ入れ、生じた白色の沈殿物を回収し、1:1イソプロパノール/ジエチルエーテルおよびジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥した。mPEG10k−D−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(28)が白色の固体として得られた(約1.1g、約99%収率)。HPLC分析から、小分子不純物はなく、およびシナカルセト置換が約89%であることが示された。
【0205】
実施例12
マルチアーム型オリゴマー−シナカルセト(29)の合成
マルチアーム型オリゴマー−シナカルセト(同様にアミノ酸含有スペーサー部分を含む)を、以下の概略図に従い調製した。
【化40】
【0206】
4アーム−PEG20k−CM(約582mg、約0.029mmol)、D−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(27)(約88mg、約0.16mmol)、トリエチルアミン(TEA、約0.07mL、約49mg、約0.49mmol)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、約23mg、約0.17mmol)をジクロロメタン中に溶解した。次にN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、約0.09mL、約75mg、約0.49mmol)を添加した。反応混合液を室温で41時間撹拌した。生成物混合液を激しく撹拌しながら1:1イソプロパノール/ジエチルエーテル中に注ぎ入れ、生じた白色の沈殿物を回収し、1:1イソプロパノール/ジエチルエーテルおよびジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥した。4アーム−PEG20k−D−バリン−アシルオキシメチル−カルバメート−シナカルセト(29)が白色の固体として得られた(約550mg、約94%収率)。HPLC分析から小分子不純物はないことが示され、およびNMRから、シナカルセト置換が約70%であることが示された。
【0207】
実施例13
pH7.4 PBS緩衝液中での例示としての化合物の加水分解
概略手順:約5mgの目的の化合物を、約12mMのリン酸塩と約140mMのNaCl/KClとを含む約10mLのpH7.4 PBS緩衝液中に溶解した。溶液を10個の別個のHPLCバイアルに入れ、それらのHPLCバイアルを37℃のインキュベーター中に置いた。様々な時間点で試料をHPLCにより分析した。加水分解が生じたら、HPLCによりシナカルセトが未変化のまま遊離したことを確認した。様々なPEG−シナカルセトコンジュゲートの緩衝液半減期t1/2を表2に掲載する。
【0208】
【表8】
【0209】
実施例14
インビボラット試験における例示としての化合物の加水分解
インビボラット試験において例示としての化合物の加水分解率を調べた。簡潔には、塩酸シナカルセトを4匹の雄ラットに経口投与して10mg/kgのシナカルセト等価用量を与えた。このコホートについて以下の時間点で血液を採取した:0(投与前);投与後1、2、4、6、9、12、24、48および72時間。実施例5、7、6、8、9、10、11および12にそれぞれ従い調製した化合物(15)、化合物(20)、化合物(16)、化合物(21)、化合物(24)、化合物(25)、化合物(28)および化合物(29)を、別個に4匹の雄ラットに静脈内投与して1mg/kgのシナカルセト等価用量を与えた。DMSO中1mg/kgで調製した親化合物シナカルセトを別個に4匹の雄ラットに静脈内投与した。これらのコホートについて以下の時間点で血液を採取した:0(投与前)、投与後2分、10分、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間および72時間。
【0210】
結果を図1Aおよび図1Bにグラフの形で提供し、これらは試験化合物についての血漿濃度−時間プロファイル(4匹のラットについての平均)を示す。
【0211】
図2に示されるとおりの、実施例5および実施例6のそれぞれの各化合物(15)および化合物(16)から遊離したシナカルセト、ならびに静脈内投与後のDMSO中のシナカルセト(未修飾)の血漿濃度−時間プロファイルの比較。グリシンベースのスペーサー部分を使用したこれらの2つの化合物では、早い時間点で比較的低いレベルのシナカルセト(<10ng/mL)の遊離を観察することができたのみであった。
【0212】
図3では、化合物(20)および化合物(21)、ならびにこれらの2つの化合物から遊離したシナカルセトの血漿濃度−時間プロファイルをシナカルセトと共にプロットした。ロイシンベースのスペーサー部分を使用したこれらの2つの化合物(20)および(21)では、比較的多量のシナカルセトの遊離が観察された。
【0213】
図4では、化合物(24)および化合物(25)、ならびにこれらの2つの化合物から遊離したシナカルセトの血漿濃度−時間プロファイルをシナカルセトと共にプロットした。L−バリンベースのスペーサー部分を使用したこれらの2つの化合物(24)および(25)では、比較的多量のシナカルセトの遊離が観察された。
【0214】
図5では、化合物(28)および化合物(29)、ならびにこれらの2つの化合物から遊離したシナカルセトの血漿濃度−時間プロファイルをシナカルセトと共にプロットした。D−バリンベースのスペーサー部分を使用したこれらの2つの化合物(28)および(29)では、比較的多量のシナカルセトの遊離が観察された。
【0215】
それぞれ実施例7および実施例8の化合物(20)および化合物(21)の各々、ならびにシナカルセト(未修飾)についての標準的な薬物動態パラメータもまた測定した。これを表3に示す。
【0216】
【表9】
【0217】
このデータをふまえると、示される化合物(15)および(16)は静脈内(intervenous)投与後にシナカルセトの遊離を実質的に示さないと結論付けることができる。しかしながら、化合物(20)、(21)(24)、(25)、(28)および(29)に関しては、シナカルセトの遊離は静脈内投与後最大約8〜12時間にわたり続く。加えて、化合物(20)は、4アームオリゴマーを有した化合物(21)と比較して約2倍高い曝露およびほぼ等しいCmaxを示した。しかしながら、化合物(21)は化合物(20)と比較して2倍長いt1/2および2倍高いクリアランスおよび分布容積(Vss)を有するように思われる。
【0218】
したがって、所望の薬物動態特性に応じて、例示としての化合物は様々な範囲の投与オプションを提供する。
【0219】
実施例15
インビトロスクリーン−HEK293細胞
従来技術を用いてヒト胎児由来腎臓細胞(HEK293細胞)を、ヒト副甲状腺カルシウム感知受容体(CaR)を発現するように改変する。これらの細胞は、細胞質Ca2+濃度の変化をエンドポイントとして用いてCaRのアロステリックアクチベータ(カルシミメティクス)を検出することができる(フリッパーアッセイ)。細胞質Ca2+濃度の変化がこれらの細胞におけるCaR活性の定量的および機能的な評価を提供する。このインビトロモデルを用いて本発明の化合物を試験し、それらがカルシミメティクス(calicimimetic)として機能することを示す。
【0220】
実施例16
インビトロスクリーン−解離副甲状腺細胞
PTH分泌のCaR依存性調節に基づくインビトロスクリーニングを用いて本発明の化合物を試験する。解離ウシ副甲状腺細胞の初代培養物を調製し、本発明の化合物のアリコートをそれらの調製した細胞と接触させる。次に本発明の化合物の存在下におけるPTH分泌を対照と比較する。このインビトロモデルを用いて本発明の化合物を試験し、それらがカルシミメティクス(calicimimetic)として機能することを示す。
【0221】
実施例17
インビボスクリーン−正常ラットにおけるPTH低下作用
正常ラットでのPTH(副甲状腺ホルモン)低下実験においてPEG−シナカルセトのカルシミメティクス(calcimmetic)としての作用を試験した。雄性SDラット(約350g)に種々の化合物を1mg/kgで静脈内投与し、またはシナカルセトを10mg/kgで経口(「PO」)投与した。薬物投与後の様々な時間点(最大72時間)で血漿試料を採取して調製した。血漿中PTHレベルをELISAにより定量した。このモデルを用いて本発明の化合物を試験した。それらがカルシミメティクス(calicimimetic)として機能することを示す。
【0222】
図6は、シナカルセト(PO、10mg/kg)または化合物(15)および(16)(IV、1mg/kg)処置後のラット血漿中PTHレベルである。10mg/kgでは、親シナカルセト経口処置によりPTH低下作用が最大約12時間もたらされた。先行する試験では化合物(15)および(16)は顕著なシナカルセトの遊離を示さなかったが、双方の化合物とも薬物投与後2分から8時間までPTH低下作用を示した。
【0223】
図7は、シナカルセト(PO、10mg/kg)または化合物(20)および(21)(IV、1mg/kg)処置後のラット血漿中PTHレベルである。双方の化合物とも顕著なPTH低下作用を示した。化合物(20)は特に最大約24〜48時間の長時間にわたるPTH低下作用を示した。
【0224】
図8は、シナカルセト(PO、10mg/kg)または化合物(24)および(25)(IV、1mg/kg)処置後のラット血漿中PTHレベルである。図9は、シナカルセト(PO、10mg/kg)または化合物(28)および(29)(IV、1mg/kg)処置後のラット血漿中PTHレベルである。全ての化合物が異なるPTH低下作用を示し、動物のPTHレベルは約24時間でベースラインに戻った。
【0225】
要約すれば、正常ラットにおいてPEG−シナカルセト化合物のPTH低下作用を試験した。その作用は、用いられる種々のリンカーおよびPEG構造に依存した。化合物(20)は特に、投与後最大約12時間のPTH低下作用しか示さなかった10mg/kg POの親シナカルセトと比較して、この試験で最大約24〜48時間の長時間にわたるPTH低下作用を示した。
【0226】
実施例18
インビボスクリーン−ラット慢性腎不全(CRI)モデル
実施例14に記載される方法を繰り返すが、但しラットは外科的に修飾し、一方の腎臓の全摘および他方の腎臓の2/3を摘出することによって(5/6腎摘出術すなわち「5/6Nx」)慢性腎不全を再現する。各化合物は5/6腎摘出術後6〜8週間にわたり試験する。正常ラットにおける副甲状腺レベルは約100pg/mlであり、5/6 Nxラットではそれが500〜1000pg/mlまで増加する。このモデルを用いて本発明の化合物を試験し、それらがカルシミメティクス(calicimimetic)として機能し、慢性腎疾患に使用される潜在的能力があることを示す。
【0227】
実施例19
インビボスクリーン−ラット副甲状腺過形成モデル
5/6 Nx修飾ラットはまた、副甲状腺過形成も再現する。したがって、5/6腎摘出(nephrectimized)ラットにおいて本発明の化合物を試験し、それらが副甲状腺過形成を低下させる潜在的能力を有することを示す(試験終了時に副甲状腺を摘出して計量し、切片化してp21を染色することによる副甲状腺細胞の増殖および腺のサイズによる)。
【0228】
実施例20
化合物1(実施例3で使用)の調製
化合物1は以下に記載する概略図を用いて調製することができ、ここで温度、量、時間、pH、溶媒などの反応条件については、当業者はこの概略図および本明細書に提供される開示を検討することで分かるであろう。
【化41】
【0229】
加えて、この同じ概略的方法に従い、HN−CHCH(OCHCH−OH(式中、nは1以外のものとして定義され、かつ本明細書に別に定義されるとおり(たとえば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)である)を使用して、(CH−OC(O)−NH−CHCH−O(OCHCH−O−CH−C(O)OH(式中、nは1以外のものとして定義され、かつ本明細書に別に定義されるとおり(たとえば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)である)を提供することができる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9