特許第5792200号(P5792200)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5792200エタノールを製造する水素化プロセスのための酢酸を気化する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792200
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】エタノールを製造する水素化プロセスのための酢酸を気化する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/149 20060101AFI20150917BHJP
   C07C 31/08 20060101ALI20150917BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150917BHJP
【FI】
   C07C29/149
   C07C31/08
   !C07B61/00 300
【請求項の数】26
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-551385(P2012-551385)
(86)(22)【出願日】2011年2月1日
(65)【公表番号】特表2013-518821(P2013-518821A)
(43)【公表日】2013年5月23日
(86)【国際出願番号】US2011023332
(87)【国際公開番号】WO2011097223
(87)【国際公開日】20110811
【審査請求日】2014年1月24日
(31)【優先権主張番号】12/974,982
(32)【優先日】2010年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/332,699
(32)【優先日】2010年5月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/332,696
(32)【優先日】2010年5月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/300,815
(32)【優先日】2010年2月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500175107
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ホートン,トリニティ
(72)【発明者】
【氏名】ジェヴティック,ラドミラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン,ヴィクター・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー,アール・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイナー,ハイコ
(72)【発明者】
【氏名】アムレ,ワエル
(72)【発明者】
【氏名】グルセンドルフ,ジェラルド
【審査官】 天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/055285(WO,A1)
【文献】 特開平05−331095(JP,A)
【文献】 特開2001−106649(JP,A)
【文献】 特表2013−518820(JP,A)
【文献】 特表2013−508424(JP,A)
【文献】 特表2013−518818(JP,A)
【文献】 特表2009−532483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/149
C07C 31/08
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸を気化器中に導入して、少なくとも2:1の蒸気供給流とブローダウン流との重量比を有する蒸気供給流及びブローダウン流を形成し、ここで、ブローダウン流は、少なくとも85重量%の酢酸を含み
蒸気供給流を反応器中に導入し;そして
蒸気供給流からの酢酸を触媒の存在下で水素化して、エタノールを含む粗エタノール生成物を形成する;
工程を含むエタノールの製造方法。
【請求項2】
反応器を10KPa〜3000KPaの運転圧力で運転し、酢酸を運転圧力における酢酸の沸点よりも低い温度で気化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
蒸気供給流の温度が160℃未満である、請求項1及び2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
酢酸を気化器の上部に供給する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
水素を気化器の下部に供給する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
蒸気供給流とブローダウン流との重量比が少なくとも10:1である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ブローダウン流が、1重量%未満の酢酸より高い沸点を有する化合物を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
粗エタノール生成物を、1以上の蒸留カラム内においてエタノール流及び少なくとも1つの再循環流に分離することを更に含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの再循環流の少なくとも一部を気化器中に導入する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの再循環流が、酢酸及び1重量%未満の酢酸より高い沸点を有する化合物を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
蒸気供給流が蒸気供給流の全重量を基準として少なくとも70重量%の酢酸を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
触媒が、白金/スズ、白金/ルテニウム、白金/レニウム、パラジウム/ルテニウム、パラジウム/レニウム、コバルト/パラジウム、コバルト/白金、コバルト/クロム、コバルト/ルテニウム、銀/パラジウム、銅/パラジウム、ニッケル/パラジウム、金/パラジウム、ルテニウム/レニウム、及びルテニウム/鉄からなる群から選択される複数の金属の組み合わせを含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
気化器がステンレススチールで構成されている、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
酢酸を気化器内に導入して蒸気供給流を形成し;
蒸気供給流を反応器中に導入し;
蒸気供給流からの酢酸を触媒の存在下で水素化して、エタノールを含む粗エタノール生成物を形成し;そして
粗エタノール生成物からエタノール及び少なくとも1つの再循環流を分離する;
工程を含み、少なくとも1つの再循環流は、酢酸及び1.0重量%未満の酢酸より高い沸点を有する化合物を含み、少なくとも1つの再循環流を酢酸と一緒に気化器に導入して蒸気供給流を形成するエタノールの製造方法。
【請求項15】
反応器を10KPa〜3000KPaの運転圧力で運転し、酢酸を運転圧力における酢酸の沸点よりも低い温度で気化する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
蒸気供給流の温度が160℃未満である、請求項14及び15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
気化器からブローダウン流を取り出すことを更に含み、ブローダウン流が少なくとも85重量%の酢酸及び1重量%未満の酢酸より高い沸点を有する化合物を含む、請求項14〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
蒸気供給流とブローダウン流との重量比が少なくとも2:1である、請求項14〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
蒸気供給流が蒸気供給流の全重量を基準として少なくとも70重量%の酢酸を含む、請求項14〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
気化器がステンレススチールで構成されている、請求項14〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
酢酸を、気化器内において水素の存在下で気化して、気化酢酸を含む蒸気供給流を形成し;
蒸気供給流を反応器中に導入し;そして
気化酢酸を、反応器の運転圧力において触媒の存在下で水素化してエタノールを含む粗エタノール生成物を形成する;
工程を含み、酢酸を反応器の運転圧力における酢酸の沸点よりも低い温度で気化するエタノールの製造方法。
【請求項22】
反応器の運転圧力が10KPa〜3000KPaである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
蒸気供給流の温度が160℃未満である、請求項21及び22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
気化器からブローダウン流を取り出すことを更に含み、ブローダウン流が少なくとも85重量%の酢酸及び1重量%未満の酢酸より高い沸点を有する化合物を含む、請求項21〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
蒸気供給流とブローダウン流との重量比が少なくとも2:1である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
気化器がステンレススチールで構成されている、請求項21〜25のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2010年2月2日出願の米国仮出願61/300,815;2010年5月7日出願の米国仮出願61/332,696;2010年5月7日出願の米国仮出願61/332,699;及び2010年12月21日出願の米国出願12/974,982(これらの全ての内容及び開示事項は参照として本明細書中に包含する)に対する優先権を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、概してエタノールを製造する水素化方法に関し、及び特には水素化する酢酸を気化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]工業用途用のエタノールは、通常は、石油、天然ガス、又は石炭のような石油化学供給材料から、合成ガスのような供給材料中間体から、或いはトウモロコシ又はサトウキビのようなデンプン材料又はセルロース材料から製造されている。石油化学供給材料及びセルロース材料からエタノールを製造するための通常の方法としては、エチレンの酸接触水和、メタノールホモロゲーション、直接アルコール合成、及びフィッシャー・トロプシュ合成が挙げられる。石油化学供給材料の価格の不安定さによって通常製造されているエタノールのコストが変動し、これによって供給材料の価格が上昇している場合には、エタノール製造の別の源に対する必要性がなお更に大きくなる。デンプン材料及びセルロース材料は、発酵によってエタノールに転化する。しかしながら、発酵は通常は、燃料用又は食用のエタノールの消費者製造のために用いられる。更に、デンプン又はセルロース材料の発酵は食物源と競合し、工業用途のために製造することができるエタノールの量に対しては制約が加えられる。
【0004】
[0004]アルカン酸及び/又は他のカルボニル基含有化合物の還元によるエタノールの製造は広く研究されており、触媒、担体、及び運転条件の種々の組合せが文献において言及されている。アルカン酸及び/又は他のカルボニル基含有化合物の水素化は、米国特許4,480,115に記載されているように液相中で行うことができる。液相中においては、酢酸は非常に腐食性であり、触媒及び/又は反応装置を損傷する可能性がある。米国特許4,517,391においては、液体酢酸を反応器に供給することによって酢酸を蒸気相中で水素化するためのコバルト触媒が記載されている。酢酸を反応器内において反応条件下で気化する。米国特許4,777,303においても、酢酸を蒸気相中で反応させている。
【0005】
[0005]アルカン酸、例えば酢酸の還元中においては、他の化合物がエタノールと共に形成されるか、或いは副反応で形成される。これらの副生成物及び/又は不純物によって、エタノールの製造、及びかかる反応混合物からのエタノールの回収が制限される。例えば、水素化中においては、エタノール及び/又は水と一緒に共沸混合物を形成するエステルが生成し、これは分離するのが困難である。更に、転化が不完全である場合には、粗エタノール生成物中に未反応の酸が残留し、これはエタノールを回収するために除去しなければならない。また、不純物は回収システム内に蓄積される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許4,480,115
【特許文献2】米国特許4,517,391
【特許文献3】米国特許4,777,303
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0006]したがって、酢酸を水素化するために酢酸の気化を向上させる必要性が未だ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0007]第1の態様においては、本発明は、酢酸を気化器中に導入して、少なくとも2:1の蒸気供給流とブローダウン流との重量比を有する蒸気供給流及びブローダウン流を形成することを含む、エタノールの製造方法に関する。蒸気供給流を反応器に導入し、蒸気供給流からの酢酸を触媒の存在下で水素化して、エタノールを含む粗エタノール生成物を形成する。
【0009】
[0008]第2の態様においては、本発明は、酢酸を気化器内に導入して蒸気供給流を形成し;蒸気供給流を反応器中に導入し;そして、蒸気供給流からの酢酸を触媒の存在下で水素化して、エタノールを含む粗エタノール生成物を形成する;工程を含むエタノールの製造方法に関する。この方法は、粗エタノール生成物からエタノール及び少なくとも1つの再循環流を分離することを更に含む。再循環流は、酢酸、及び1.0重量%未満の酢酸より高い沸点を有する化合物を含む。更に、再循環流を酢酸と一緒に気化器に導入して蒸気供給流を形成する。
【0010】
[0009]第3の態様においては、本発明は、酢酸を、気化器内において水素の存在下で気化して、気化酢酸を含む蒸気供給流を形成し;蒸気供給流を反応器中に導入し;そして、気化酢酸を、反応器の運転圧力において触媒の存在下で水素化してエタノールを含む粗エタノール生成物を形成する;工程を含むエタノールの製造方法に関する。好ましくは、酢酸は反応器の運転圧力における酢酸の沸点よりも低い温度で気化する。反応器の運転圧力は10KPa〜3000KPaであってよい。
【0011】
[0010]以下において、添付の図面を参照して本発明を詳細に記載する。同様の数値は同様の部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】[0011]図1は、本発明の一態様による水素化システムの概要図である。
図2】[0012]図2は、本発明の一態様による反応区域の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0013]本発明は、水素化プロセスに供給する酢酸を気化する方法に関する。気化した酢酸を触媒の存在下で水素化して、エタノールを含む粗反応器生成物を形成する。本発明の幾つかの態様においては、粗反応器生成物からエタノールを回収する。水素化プロセスは好ましくは蒸気相中で行う。一態様においては、水素化の前に酢酸を気化することができる。蒸気相中の酢酸は液相中の酢酸よりも腐食性が低い。しかしながら、蒸気相中の酢酸はその露点付近では腐食性である可能性がある。本発明の幾つかの態様は、酢酸を反応中のその沸点より低い温度で気化することによってこれらの腐食性環境を回避する。
【0014】
[0014]酢酸を水素化した後、精製システムによって、粗反応器生成物を副生成物及び不純物を含む幾つかの流れに分離する。これらの副生成物及び不純物は反応器に再循環することができる。好ましくは、再循環流を酢酸と一緒に気化する。これによって、より重質の副生成物及び不純物が気化器内に蓄積する可能性があり、より重質の成分をパージするためにはブローダウン流が必要である。品質によって、新しい酢酸供給流もより重質の成分を含む可能性がある。一般にパージ流は廃棄しなければならず、経済的な利益は少ししか有さず、而して取り扱うための非効率的な更なるコストがかかる。本発明の再循環流は少量のより重質の成分を含んでいてよい。また、僅かな副反応が気化器内で起こってより重質の成分が形成されるとも考えられている。本発明の幾つかの態様においては、酢酸を気化することによって、再循環流を気化器に供給する場合であってもブローダウン流を少量にすることができる。一態様においては、ブローダウン流は断続的にパージする必要がある可能性がある。少量のブローダウン流又は断続的なパージが必要な流れによって、供給流のかなりの部分を気化させて反応器に送ることが可能になる。更に、ブローダウン流は酢酸の高い濃度を有する可能性があり、再使用することができる。有利には、少量のブローダウン流によって向上した効率性が与えられる。
【0015】
[0015]本発明の幾つかの態様においては、酢酸を反応温度において気化することができ、次に気化した酢酸を、非希釈状態か又は窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素などのような比較的不活性のキャリアガスで希釈した状態で水素と一緒に供給することができる。蒸気相中の反応運転のためには、温度は酢酸の露点より低くならないように系内で制御しなければならない。一態様においては、酢酸を水素化反応器の運転圧力における酢酸の沸点において気化させることができ、次に気化した酢酸を反応器入口温度に更に加熱することができる。水素、再循環気体、他の好適な気体、又はこれらの混合物を、酢酸の沸点より低い温度において酢酸に通すことによって酢酸を蒸気状態に変化させて、それによってキャリアガスを酢酸蒸気で湿らせ、次に混合蒸気を反応器入口温度に加熱することができる。好ましくは、水素及び/又は再循環気体を125℃又はそれより低い温度において酢酸に通すことによって酢酸を蒸気に変化させ、次に混合気体流を反応器入口温度に加熱する。
【0016】
[0016]図1及び2は、本発明の一態様にしたがって、酢酸を水素化し、粗反応混合物からエタノールを分離するのに好適な水素化システム100を示す。システム100は、反応区域101及び精製区域102を含む。反応区域101は、反応器103、気化器104、水素供給ライン105、及び酢酸供給ライン106を含む。図1において、精製区域102はフラッシャー120及び第1のカラム121を含む。図2において、精製区域102は、第2のカラム122、第3のカラム123、及び第4のカラム124を更に含む。
【0017】
[0017]本発明方法に関連して用いる原材料である酢酸及び水素は、天然ガス、石油、石炭、バイオマスなどをはじめとする任意の好適な源から誘導することができる。例として、酢酸は、メタノールカルボニル化、アセトアルデヒドの酸化、エチレンの酸化、酸化発酵、及び嫌気発酵によって製造することができる。石油及び天然ガスの価格は変動してより高価か又はより安価になるので、代替の炭素源から酢酸並びにメタノール及び一酸化炭素のような中間体を製造する方法に益々興味が持たれている。特に、石油が天然ガスと比べて比較的高価である場合には、任意の利用できる炭素源から誘導される合成ガス(シンガス)から酢酸を製造することが有利になる可能性がある。例えば、米国特許6,232,352(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)においては、酢酸を製造するためにメタノールプラントを改造する方法が教示されている。メタノールプラントを改造することによって、新しい酢酸プラントのためのCO製造に関連する大きな設備コストが大きく減少するか又は大きく排除される。シンガスの全部又は一部をメタノール合成ループから迂回させ、分離器ユニットに供給してCO及び水素を回収し、これを次に酢酸を製造するために用いる。酢酸に加えて、このようなプロセスを用いて本発明に関して用いることができる水素を製造することもできる。
【0018】
[0018]酢酸を製造するために好適なメタノールカルボニル化プロセスは、米国特許7,208,624;7,115,772;7,005,541;6,657,078;6,627,770;6,143,930;5,599,976;5,144,068;5,026,908;5,001,259;及び4,994,608(これらの開示事項は参照として本明細書中に包含する)に記載されている。場合によっては、エタノールの製造をかかるメタノールカルボニル化プロセスと統合することができる。
【0019】
[0019]米国特許RE35,377(これも参照として本明細書中に包含する)においては、石油、石炭、天然ガス、及びバイオマス材料のような炭素質材料を転化させることによってメタノールを製造する方法が与えられている。このプロセスは、固体及び/又は液体の炭素質材料を水素添加ガス化してプロセスガスを得て、これを追加の天然ガスで蒸気熱分解して合成ガスを形成することを含む。シンガスをメタノールに転化させ、これを酢酸にカルボニル化することができる。この方法では更に、上述のように本発明に関して用いることができる水素が生成する。米国特許5,821,111(ガス化によって廃バイオマスを合成ガスに転化させる方法が開示されている)、及び米国特許6,685,754(これらの開示事項は参照として本明細書中に包含する)。
【0020】
[0020]1つの随意的な態様においては、水素化反応に供給する酢酸は、他のカルボン酸及び無水物、並びにアセトアルデヒド及びアセトンを含んでいてもよい。好ましくは、好適な酢酸供給流は、酢酸、無水酢酸、アセトアルデヒド、酢酸エチル、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種類以上の化合物を含む。これらの他の化合物も本発明方法において水素化することができる。幾つかの態様においては、プロパン酸のようなカルボン酸又はその無水物の存在はプロパノールの製造において有益である可能性がある。
【0021】
[0021]或いは、米国特許6,657,078(その全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている種類のメタノールカルボニル化ユニットのフラッシュ容器からの粗生成物として、蒸気形態の酢酸を直接回収することができる。粗蒸気生成物は、例えば、酢酸及び軽質留分を凝縮するか又は水を除去する必要なしに本発明のエタノール合成反応区域に直接供給することができ、これによって全体の処理コストが節約される。
【0022】
[0022]水素供給ライン105は、気化器104への入熱を与えるリボイラー流107に供給することができる。これによって、水素供給ライン105を気化器104の下部に供給することができる。リボイラー流107はまた、水素供給ライン105と一緒にリボイラー109を通って循環される残渣の一部も含む。幾つかの態様においては、残渣はブローダウン流108の一部を構成することができる。水素供給ライン105は、30℃〜150℃、例えば50℃〜125℃、又は60℃〜115℃の温度に予備加熱することができる。水素供給ライン105は、1300KPa〜3100KPa、例えば1500KPa〜2800KPa、又は1700KPa〜2600KPaの圧力で供給することができる。場合によっては、水素供給ライン105は、保護床、圧力スイング吸収器、膜、又はこれらの組合せのような1以上の分離器に供給して、一酸化炭素及び二酸化炭素のような水素供給ライン105中の不純物を除去することができる。
【0023】
[0023]リボイラー流107は、再循環蒸気流110からの未反応水素を更に含む可能性がある。再循環蒸気流110は、下記のようにしてフラッシャー120から得られる。好ましくは、再循環蒸気流110の圧力及び温度は、水素供給ライン105の供給温度及び圧力と同等である。再循環蒸気流110は、リボイラー流107に直接供給することができ、或いは水素供給流105と混合してリボイラー流107に一緒に供給することができる。
【0024】
[0024]酢酸供給ライン106は気化器104の上部に供給することができる。好ましくは、酢酸供給ライン106は液相中で気化器104に供給する。酢酸供給ライン106は、30℃〜150℃、例えば50℃〜125℃、又は60℃〜115℃の温度に予備加熱することができる。上記に示したように、酢酸供給ライン106は、酢酸、無水酢酸、アセトアルデヒド、酢酸エチル、及びこれらの混合物を含んでいてよい。場合によっては、酢酸供給ライン106は1以上の保護床に供給して、ハロゲンのような酢酸供給ライン106内の不純物を除去することができる。
【0025】
[0025]酢酸供給ライン106に加えて、第1のカラム121からの残渣の一部を含む再循環流111を気化器104に供給することができる。第1のカラム121の残渣は酢酸及び水を含む。好ましくは、再循環流111は、1.0重量%未満、例えば0.5重量%未満、0.25重量%未満、又は0.15重量%未満の酢酸より高い沸点を有する化合物を含む。酢酸より高い沸点を有する化合物としては、無水酢酸及びプロパン酸のような重質化合物を挙げることができる。
【0026】
[0026]場合によっては、1以上の更なる再循環流112も気化器104に供給することができる。好ましくはこの場合には、これらの1以上の再循環流112及び再循環流111は、合計で1.0重量%未満、例えば0.5重量%未満、又は0.25重量%未満の酢酸より高い沸点を有する化合物を含む。これらの随意的な再循環流112は精製区域102から得ることができ、未反応の酢酸、アセトアルデヒド、酢酸エチル、水、エタノール、及びこれらの混合物を含んでいてよい。一態様においては、再循環流111又は随意的な再循環流112は、気化器104に供給する前に合流させて酢酸供給ライン106と混合することができる。
【0027】
[0027]気化器104は、反応器の運転圧力における反応器103内の酢酸の沸点よりも低い温度において酢酸を液相から気相に変化させることによって蒸気供給流113を生成させる。一態様においては、液体状態の酢酸を、160℃より低く、例えば150℃より低く、又は130℃より低い温度に維持する。気化器は少なくとも118℃の温度で運転することができる。酢酸はその露点においては腐食性である可能性があり、酢酸を反応器内においてその沸点より低い温度に維持することによって酢酸の腐食性を減少させることができる。有利には、本発明の幾つかの態様のために用いる気化器104は、SS316、SS316L、SS317、2205、HASTELLOY B(Haynes International)、HASTELLOY Cなど(しかしながらこれらに限定されない)のステンレススチール及び同様の材料で構成することができる。本発明の幾つかの態様は、より高グレードの材料の必要性を排除又は減少して、これによってコストを減少させることができる。
【0028】
[0028]蒸気供給流113の温度は、好ましくは100℃〜350℃、例えば120℃〜310℃、又は150℃〜300℃である。蒸気供給流113は、予備加熱して反応器103に供給することができる。好ましくは一態様においては、蒸気供給流113の温度は、気化器104から排出された時点で約120℃であってよく、反応器103に供給する前に約200℃〜250℃の温度に予備加熱することができる。蒸気供給流113は、反応器流出流のような他の流れとの間接接触熱交換器によって予備加熱することができる。
【0029】
[0029]一態様においては、蒸気供給流113とブローダウン流108との重量比は、少なくとも2:1、例えば少なくとも5:1、又は少なくとも10:1である。有利には、本発明の幾つかの態様は比較的少量のブローダウン流108を可能にすることができ、重量比は、2:1〜250:1、例えば5:1〜200:1、又は10:1〜175:1にすることができる。好ましい重量比は、少なくとも17:1、例えば少なくとも70:1、又は少なくとも160:1である。
【0030】
[0030]好ましくは、蒸気供給流113は、蒸気供給流の全重量を基準として少なくとも70重量%、例えば少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%の酢酸を含む。ブローダウン流108は、好ましくは、少なくとも85重量%、例えば少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%の酢酸を含む。好ましくはこの場合には、ブローダウン流108は、1.0重量%未満、例えば0.5重量%未満、又は0.25重量%未満の酢酸よりも高い沸点を有する化合物を含む。随意的な態様においては、組成物の分析のためにブローダウン流108をモニタリングするためのサンプリングバルブを存在させることができる。蒸気供給流113及びブローダウン流108はまた、水素、アセトアルデヒド、エタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、水、アセトン、酢酸メチル、及びこれらの混合物も含む可能性がある。ブローダウン流108の更なる成分としては、エチリデンジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、及び/又はn−ブチルベンゾエートを挙げることができる。一態様においては、重量比が増加すると、ブローダウン流108の酢酸の純度も増加する。これによって、ブローダウン流108を、廃棄するのではなく、水素化プロセスにおいて用いるか、或いは他の化学プロセスにおいて用いることが可能である。
【0031】
[0031]図1は、蒸気供給流113を反応器103の頂部に送ることを示しており、幾つかの他の態様においては、蒸気供給流113は、反応器103の側部、上部、又は底部に送ることができる。
【0032】
[0032]反応器103は、カルボン酸、好ましくは酢酸の水素化において用いる触媒を含む。好適な水素化触媒としては、場合によっては触媒担体上に、第1の金属、及び場合によっては第2の金属、第3の金属、又は更なる金属の1以上を含む触媒が挙げられる。第1並びに場合によって用いる第2及び第3の金属は、第IB族、第IIB族、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、第VIII族遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、或いは第IIIA族、第IVA族、第VA族、及び第VIA族のいずれかから選択される金属から選択することができる。幾つかの代表的な触媒組成物のために好ましい金属の組合せとしては、白金/スズ、白金/ルテニウム、白金/レニウム、パラジウム/ルテニウム、パラジウム/レニウム、コバルト/パラジウム、コバルト/白金、コバルト/クロム、コバルト/ルテニウム、銀/パラジウム、銅/パラジウム、ニッケル/パラジウム、金/パラジウム、ルテニウム/レニウム、及びルテニウム/鉄が挙げられる。代表的な触媒は、米国特許7,608,744及び7,863,489、及び米国公開2010/0197485(その全部を参照として本明細書中に包含する)に更に記載されている。
【0033】
[0033]1つの代表的な態様においては、触媒は、銅、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、チタン、亜鉛、クロム、レニウム、モリブデン、及びタングステンからなる群から選択される第1の金属を含む。好ましくは、第1の金属は、白金、パラジウム、コバルト、ニッケル、及びルテニウムからなる群から選択される。より好ましくは、第1の金属は白金及びパラジウムから選択される。第1の金属が白金を含む場合には、触媒は、白金の高い需要のために、5重量%未満、例えば3重量%未満、又は1重量%未満の量の白金を含むことが好ましい。
【0034】
[0034]上記に示すように、触媒は、場合によっては、通常は促進剤として機能する第2の金属を更に含む。存在する場合には、第2の金属は、好ましくは、銅、モリブデン、スズ、クロム、鉄、コバルト、バナジウム、タングステン、パラジウム、白金、ランタン、セリウム、マンガン、ルテニウム、レニウム、金、及びニッケルからなる群から選択される。より好ましくは、第2の金属は、銅、スズ、コバルト、レニウム、及びニッケルからなる群から選択される。より好ましくは、第2の金属はスズ及びレニウムから選択される。
【0035】
[0035]触媒が2種類以上の金属、例えば第1の金属及び第2の金属を含む場合には、第1の金属は、場合によっては、0.1〜10重量%、例えば0.1〜5重量%、又は0.1〜3重量%の量で触媒中に存在する。第2の金属は、好ましくは、0.1〜20重量%、例えば0.1〜10重量%、又は0.1〜5重量%の量で存在する。2種類以上の金属を含む触媒に関しては、2種類以上の金属は互いと合金化することができ、或いは非合金化金属溶液又は混合物を構成することができる。
【0036】
[0036]好ましい金属比は、触媒において用いる金属によって変化させることができる。幾つかの代表的な態様においては、第1の金属と第2の金属とのモル比は、10:1〜1:10、例えば4:1〜1:4、2:1〜1:2、1.5:1〜1:1.5、又は1.1:1〜1:1.1である。
【0037】
[0037]触媒にはまた、第3の金属が第1及び第2の金属と異なる限りにおいて、第1又は第2の金属に関連して上記に列記した任意の金属から選択される第3の金属を含ませることもできる。好ましい形態においては、第3の金属は、コバルト、パラジウム、ルテニウム、銅、亜鉛、白金、スズ、及びレニウムからなる群から選択される。より好ましくは、第3の金属は、コバルト、パラジウム、及びルテニウムから選択される。存在する場合には、第3の金属の全重量は、好ましくは0.05〜4重量%、例えば0.1〜3重量%、又は0.1〜2重量%である。
【0038】
[0038]1種類以上の金属に加えて、代表的な触媒は、担体又は変性担体(担体材料、及び担体材料の酸性度を調節する担体変性剤を含む担体を意味する)を更に含む。触媒の全重量を基準とする担体又は変性担体の全重量は、好ましくは75重量%〜99.9重量%、例えば78重量%〜97重量%、又は80重量%〜95重量%である。変性担体を用いる好ましい態様においては、担体変性剤は、触媒の全重量を基準として0.1重量%〜50重量%、例えば0.2重量%〜25重量%、0.5重量%〜15重量%、又は1重量%〜8重量%の量で存在する。
【0039】
[0039]好適な担体材料としては、例えば安定な金属酸化物ベースの担体、又はセラミックベースの担体を挙げることができる。好ましい担体としては、シリカ、シリカ/アルミナ、カルシウムメタシリケートのような第IIA族シリケート、焼成シリカ、高純度シリカ、及びこれらの混合物のようなシリカ質担体が挙げられる。他の担体としては、酸化鉄、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、炭素、グラファイト、高表面積グラファイト化炭素、活性炭、及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0040】
[0040]エタノールの製造においては、触媒担体は担体変性剤によって変性することができる。好ましくは、担体変性剤は、低い揮発性を有するか又は揮発性を有しない塩基性変性剤である。かかる塩基性変性剤は、例えば、(i)アルカリ土類酸化物、(ii)アルカリ金属酸化物、(iii)アルカリ土類金属メタシリケート、(iv)アルカリ金属メタシリケート、(v)第IIB族金属酸化物、(vi)第IIB族金属メタシリケート、(vii)第IIIB族金属酸化物、(viii)第IIIB族金属メタシリケート、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。酸化物及びメタシリケートに加えて、硝酸塩、亜硝酸塩、酢酸塩、及び乳酸塩などの他のタイプの変性剤を用いることができる。好ましくは、担体変性剤は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、スカンジウム、イットリウム、及び亜鉛のいずれかの酸化物及びメタシリケート、並びに上記のいずれかの混合物からなる群から選択される。好ましくは、担体変性剤はケイ酸カルシウム、より好ましくはカルシウムメタシリケート(CaSiO)である。担体変性剤がカルシウムメタシリケートを含む場合には、カルシウムメタシリケートの少なくとも一部は結晶形態であることが好ましい。
【0041】
[0041]好ましいシリカ担体材料は、Saint-Gobain NorProからのSS61138高表面積(HSA)シリカ触媒担体である。Saint-Gobain NorPro SS61138シリカは、約250m/gの表面積;約12nmの中央細孔径;水銀侵入ポロシメトリーによって測定して約1.0cm/gの平均細孔容積;及び約0.352g/cm(22 lb/ft)の充填密度;の約95重量%の高表面積シリカを含む。
【0042】
[0042]好ましいシリカ/アルミナ担体材料は、約5mmの見かけ直径、約0.562g/mLの密度、約0.583g−HO/g−担体の吸水度、約160〜175m/gの表面積、及び約0.68mL/gの細孔容積を有するKA-160(Sud Chemie)シリカ球状体である。
【0043】
[0043]当業者に認められるように、担体材料は、触媒系がエタノールを形成するために用いるプロセス条件下において好適に活性で、選択性で、且つ強靱であるように選択する。
【0044】
[0044]触媒の金属は、担体全体に分散させるか、担体の外表面上に被覆するか(卵殻型)、又は担体の表面上に装飾状に施すことができる。
[0045]本発明において用いるのに好適な触媒組成物は、好ましくは変性担体の金属含侵によって形成するが、化学蒸着のような他のプロセスを用いることもできる。かかる含侵法は、米国特許7,608,744及び7,863,489、並びに米国公開2010/0197485(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0045】
[0046]当業者に容易に認められるように、好適な反応器としては固定床反応器又は流動床反応器を用いる種々の構成を挙げることができる。本発明の多くの態様においては、「断熱」反応器を用いることがき、即ち、熱を加えるか又は除去するために反応区域を通る内部配管を用いる必要性は少しかないか又は全くない。他の態様においては、1つ又は複数の放射流反応器を用いることができ、或いは一連の複数の反応器を、熱交換、クエンチ、又は更なる供給材料の導入を行うか又は行わないで用いることができる。或いは、熱伝達媒体を備えたシェルアンドチューブ反応器を用いることができる。多くの場合においては、反応区域は、単一の容器内か、或いはその間に熱交換器を有する一連の複数の容器内に収容することができる。
【0046】
[0047]好ましい態様においては、触媒は、例えば、通常は蒸気形態の反応物質が触媒の上又は触媒を通して通過するパイプ又はチューブの形状の固定床反応器内で用いる。流動床又は沸騰床反応器のような他の反応器を用いることができる。幾つかの場合においては、水素化触媒を不活性材料と組み合わせて用いて、触媒床を通る反応物質流の圧力降下、及び反応物質化合物と触媒粒子との接触時間を調節することができる。
【0047】
[0048]水素化反応は、好ましくは次の条件下において蒸気相中で行う。反応温度は、125℃〜350℃、例えば200℃〜325℃、225℃〜300℃、又は250℃〜300℃の範囲であってよい。圧力は、10KPa〜3000KPa(約1.5〜435psi)、例えば50KPa〜2300KPa、又は100KPa〜1500KPaの範囲であってよい。反応物質は、500hr−1より高く、例えば1000hr−1より高く、2500hr−1より高く、又は更には5000hr−1より高い気体空間速度(GHSV)で反応器に供給することができる。範囲に関しては、GHSVは50hr−1〜50,000hr−1、例えば500hr−1〜30,000hr−1、1000hr−1〜10,000hr−1、又は1000hr−1〜6500hr−1の範囲であってよい。
【0048】
[0049]水素化は、場合によっては選択されるGHSVにおいて触媒床を横切る圧力降下を克服するのに丁度十分な圧力において行うが、より高い圧力を使用することに対する制約はなく、例えば5000hr−1又は6500hr−1の高い空間速度においては反応器床を通る相当な圧力降下に遭遇する可能性があると理解される。
【0049】
[0050]反応は、1モルのエタノールを製造するために酢酸1モルあたり2モルの水素を消費するが、供給流中の水素と酢酸との実際のモル比は、約100:1〜1:100、例えば50:1〜1:50、20:1〜1:2、又は12:1〜1:1で変化させることができる。最も好ましくは、水素と酢酸とのモル比は2:1より大きく、例えば4:1より大きく、又は8:1より大きい。
【0050】
[0051]接触又は滞留時間も、酢酸の量、触媒、反応器、温度、及び圧力のような変数によって広範囲に変化させることができる。通常の接触時間は、固定床以外の触媒系を用いる場合には1秒以下乃至数時間超の範囲であり、好ましい接触時間は、少なくとも蒸気相反応に関しては0.1〜100秒、例えば0.3〜80秒、又は0.4〜30秒である。
【0051】
[0052]一態様においては、1以上の保護床(図示せず)を用いて、供給流又は戻り/再循環流中に含まれる阻害物質又は望ましくない不純物から触媒を保護することができる。かかる保護床は蒸気又は液体流中で用いることができる。好適な保護床材料は当該技術において公知であり、例えば炭素、シリカ、アルミナ、セラミック、又は樹脂が挙げられる。一形態においては、保護床媒体を官能化してイオウ又はハロゲンのような特定の種を捕捉する。
【0052】
[0053]特に、酢酸の水素化によって、酢酸の有利な転化率、並びにエタノールへの有利な選択率及び生産性を達成することができる。本発明の目的のためには、「転化率」という用語は、酢酸以外の化合物に転化する供給流中の酢酸の量を指す。転化率は、供給流中の酢酸を基準とするモル%として表す。転化率は、少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%にすることができる。少なくとも80%、又は少なくとも90%のような高い転化率を有する触媒が望ましいが、幾つかの態様においては、エタノールに関する高い選択率において低い転化率を許容することができる。勿論、多くの場合においては、適当な再循環流又はより大きな反応器の使用によって転化率を補償することができるが、劣った選択率を補償することはより困難であることがよく理解されている。
【0053】
[0054]選択率は、転化した酢酸を基準とするモル%として表す。酢酸から転化するそれぞれの化合物は独立した選択率を有し、選択率は転化率とは独立していることを理解すべきである。例えば、転化した酢酸の50モル%がエタノールに転化する場合には、エタノール選択率を50%と言う。好ましくは、触媒のエトキシレートへの選択率は少なくとも60%、例えば少なくとも70%、又は少なくとも80%である。ここで用いる「エトキシレート」という用語は、具体的には、エタノール、アセトアルデヒド、及び酢酸エチルの化合物を指す。好ましくは、エタノールへの選択率は少なくとも80%、例えば少なくとも85%、又は少なくとも88%である。水素化方法の好ましい態様はまた、メタン、エタン、及び二酸化炭素のような望ましくない生成物への低い選択率も有する。これらの望ましくない生成物への選択率は、好ましくは4%未満、例えば2%未満、又は1%未満である。より好ましくは、これらの望ましくない生成物は不検出である。アルカンの形成は低くすることができ、理想的には触媒上を通過する酢酸の2%未満、1%未満、又は0.5%未満が、燃料として以外の価値を少ししか有しないアルカンに転化する。
【0054】
[0055]本明細書において用いる「生産性」という用語は、1時間あたり、用いた触媒1kgを基準とする水素化中に形成される具体的な生成物、例えばエタノールのグラム数を指す。触媒1kgあたり1時間あたり少なくとも200g、例えば少なくとも400g、又は少なくとも600gのエタノールの生産性が好ましい。範囲に関しては、生産性は、好ましくは触媒1kgあたり1時間あたり200〜3,000、例えば400〜2,500、又は600〜2,000gのエタノールである。
【0055】
[0056]種々の態様においては、水素化方法によって製造される粗エタノール生成物は、精製及び分離のような任意の引き続く処理の前においては、通常は未反応の酢酸、エタノール、及び水を含む。本明細書において用いる「粗エタノール生成物」という用語は、5〜70重量%のエタノール及び5〜35重量%の水を含む任意の組成物を指す。幾つかの代表的な態様においては、粗エタノール生成物は、粗エタノール生成物の全重量を基準として5重量%〜70重量%、例えば10重量%〜60重量%、又は15重量%〜50重量%の量のエタノールを含む。好ましくは、粗エタノール生成物は、少なくとも10重量%のエタノール、少なくとも15重量%のエタノール、又は少なくとも20重量%のエタノールを含む。粗エタノール生成物は、通常は、転化率によって、例えば、90重量%未満、例えば80重量%未満、又は70重量%未満の量の未反応の酢酸を更に含む。範囲に関しては、未反応の酢酸は、好ましくは0〜90重量%、例えば5〜80重量%、15〜70重量%、20〜70重量%、又は25〜65重量%である。反応プロセス中に水が形成されるので、一般的に水が、例えば、5〜35重量%、例えば10〜30重量%、又は10〜26重量%の範囲の量で粗エタノール生成物中に存在する。また酢酸エチルも酢酸の水素化中か又は副反応によって生成する可能性があり、例えば、0〜20重量%、例えば0〜15重量%、1〜12重量%、又は3〜10重量%の範囲の量で存在してよい。またアセトアルデヒドも副反応によって生成する可能性があり、例えば、0〜10重量%、例えば0〜3重量%、0.1〜3重量%、又は0.2〜2重量%の範囲の量で存在してよい。例えばエステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルカン、及び二酸化炭素のような他の成分は、検出できる場合には合計で10重量%未満、例えば6重量%未満、又は4重量%未満の量で存在してよい。範囲に関しては、他の成分は、0.1〜10重量%、例えば0.1〜6重量%、又は0.1〜4重量%の量で存在してよい。代表的な態様の粗エタノールの組成範囲を表1に与える。
【0056】
【表1】
【0057】
[0057]水素化プロセス中においては、粗エタノール生成物を、反応器103からライン114を通して好ましくは連続的に排出する。粗エタノール生成物流を凝縮してフラッシャー120に供給し、次に蒸気流及び液体流を与えることができる。フラッシャー120は、好ましくは、50℃〜500℃、例えば70℃〜400℃、又は100℃〜350℃の温度で運転する。一態様においては、フラッシャー120の圧力は、好ましくは50KPa〜2000KPa、例えば75KPa〜1500KPa、又は100〜1000KPaである。一態様においては、フラッシャー120の温度及び圧力は反応器103の温度及び/又は圧力と同等であってよい。
【0058】
[0058]フラッシャー120から排出される蒸気流は水素及び炭化水素を含む可能性があり、これはパージするか及び/又はライン110を通して反応区域101に戻すことができる。図1に示すように、蒸気流の戻される部分は圧縮機115に通して、リボイラー流107と混合する。
【0059】
[0059]フラッシャー120からの液体は排出し、ライン116を通して、酸分離カラムとも呼ぶ第1のカラム121の側部に供給組成物としてポンプ移送する。ライン116の内容物は、通常は反応器から直接得られる生成物と実質的に同様であり、実際に粗エタノール生成物として特徴付けることもできる。しかしながら、ライン116内の供給組成物は、好ましくは、フラッシャー120によって取り出される水素、二酸化炭素、メタン、又はエタンを実質的に有しない。ライン116内の液体の代表的な成分を表2に与える。液体ライン116は、供給流中の成分のような列記していない他の成分を含む可能性があることを理解すべきである。
【0060】
【表2】
【0061】
[0060]本出願全体にわたって表において未満(<)と示されている量は好ましくは存在せず、存在する場合には微量又は0.0001重量%より多い量で存在することができる。
【0062】
[0061]表2における「他のエステル」としては、プロピオン酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、又はこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。表2における「他のエーテル」としては、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソブチルエチルエーテル、又はこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。表2における「他のアルコール」としては、メタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、又はこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。一態様においては、供給組成物、例えばライン116は、0.001〜0.1重量%、0.001〜0.05重量%、又は0.001〜0.03重量%の量のプロパノール、例えばイソプロパノール及び/又はn−プロパノールを含む可能性がある。これらの他の成分は、他に示さない限りにおいては、本明細書において記載する留出物流又は残渣流のいずれかの中で運ばれる可能性があることを理解すべきであり、ここでは更には記載しない。
【0063】
[0062]ライン116における酢酸の含量が5重量%未満である場合には、酸分離カラム121を省略して、ライン116を本明細書において軽質留分カラムとも呼ぶ第2のカラム122に直接導入することができる。
【0064】
[0063]図1に示す態様においては、ライン116を、第1のカラム121の下部、例えば下半分又は下三分の一に導入する。第1のカラム121においては、存在する場合には未反応の酢酸、水の一部、及び他の重質成分をライン116内の組成物から取り出して、残渣として好ましくは連続的に排出する。残渣の一部又は全部を、ライン111を通して反応区域101に戻すか及び/又は再循環して戻すことができる。第1のカラム121においてはまた塔頂留出物も形成され、これはライン125内に排出し、凝縮して、例えば、10:1〜1:10、例えば3:1〜1:3、又は1:2〜2:1の比で還流することができる。
【0065】
[0064]カラム121、122、123、又は124のいずれにも、分離及び/又は精製をすることができる任意の蒸留カラムを含ませることができる。カラムは、好ましくは1〜150段、例えば10〜100段、20〜95段、又は30〜75段を有するトレイカラムを含む。トレイは、篩トレイ、固定バルブトレイ、可動バルブトレイ、又は当該技術において公知の任意の他の好適なデザインのものであってよい。他の態様においては、充填カラムを用いることができる。充填カラムについては、構造化充填又はランダム充填を用いることができる。トレイ又は充填材は1つの連続カラム内に配置することができ、或いは第1セクションからの蒸気を第2セクションに導入し、一方、第2セクションからの液体を第1セクションに導入するなどのようにした2以上のカラム内に配置することができる。
【0066】
[0065]蒸留カラムのそれぞれと共に用いることができる関連する凝縮器及び液体分離容器は任意の通常のデザインのものであってよく、図1及び2において簡略化している。図1及び2に示すように、熱を、熱交換器又はリボイラーによってそれぞれのカラムの底部又は循環塔底流に供給することができる。幾つかの態様においては、内部リボイラーのような他のタイプのリボイラーを用いることもできる。リボイラーに供給する熱は、リボイラーと統合したプロセス中に発生する任意の熱、又は他の熱発生化学プロセス又はボイラーのような外部源から誘導することができる。図1及び2においては1つの反応器及び1つのフラッシャーを示しているが、本発明の幾つかの態様においては、更なる反応器、フラッシャー、凝縮器、加熱部材、及び他の構成部品を用いることができる。当業者に認められるように、化学プロセスを実施するのに通常用いられる種々の凝縮器、ポンプ、圧縮機、リボイラー、ドラム、バルブ、連結器具、分離容器等を、組み合わせて本発明方法において用いることもできる。
【0067】
[0066]任意のカラムにおいて用いられる温度及び圧力は変化させることができる。実際問題としては、これらの区域においては10KPa〜3000KPaの圧力が一般に用いられるが、幾つかの態様においては大気圧以下の圧力及び大気圧以上の圧力を用いることができる。種々の区域内の温度は、通常は留出物として取り出される組成物と、残渣として取り出される組成物の沸点の間の範囲である。当業者であれば、運転している蒸留カラム内の所定の位置における温度は、その位置における材料の組成及びカラムの圧力によって定まることを認識するであろう。更に、供給速度は製造プロセスの寸法によって変化させることができ、記載する場合には供給重量比の観点で包括的に示すことができる。
【0068】
[0067]カラム121を標準大気圧下で運転する場合には、カラム121からライン111内に排出される残渣の温度は、好ましくは95℃〜120℃、例えば105℃〜117℃、又は110℃〜115℃である。カラム121からライン125内に排出される留出物の温度は、好ましくは70℃〜110℃、例えば75℃〜95℃、又は80℃〜90℃である。他の態様においては、第1のカラム121の圧力は、0.1KPa〜510KPa、例えば1KPa〜475KPa、又は1KPa〜375KPaの範囲であってよい。第1のカラム121に関する留出物及び残渣組成物の代表的な成分を下表3に与える。留出物及び残渣は、供給流中の成分のような列記していない他の成分も含む可能性があることも理解すべきである。便宜上のために、第1のカラムの留出物及び残渣は「第1の留出物」又は「第1の残渣」と呼ぶこともできる。他のカラムの留出物及び残渣も、これらを互いから区別するために同様の数値の修飾語(第2、第3等)を用いて呼ぶことができるが、かかる修飾語はいかなる特定の分離の順番を必要とするようにも解釈すべきではない。
【0069】
【表3】
【0070】
[0068]理論には縛られないが、表3に示すように、驚くべきことに且つ予期しなかったことに、酸分離カラム121(第1のカラム)へ導入される供給流中に多量のアセタールが検出される場合には、アセタールはカラム内で分解して、留出物及び/又は残渣中にはより少ない量が存在するか又は更には検出できる量が存在しないと思われることが見出された。
【0071】
[0069]反応条件によって、反応器103からライン114内に排出される粗エタノール生成物は、エタノール、酢酸(未転化)、酢酸エチル、及び水を含む可能性がある。反応器103から排出された後、フラッシャー120及び/又は第1のカラム121に加えられるまでに、粗エタノール生成物中に含まれる複数の成分の間に非接触平衡反応が起こる可能性がある。この平衡反応は、下記に示すように、粗エタノール生成物をエタノール/酢酸及び酢酸エチル/水の間の平衡に推進する傾向がある。
【0072】
【化1】
【0073】
[0070]粗エタノール生成物を、精製区域102に送る前に例えば貯蔵タンク内に一時的に貯蔵する場合には、延長した滞留時間に遭遇する可能性がある。一般に、反応区域101と精製区域102との間の滞留時間がより長いと、酢酸エチルの形成がより多くなる。例えば、反応区域101と精製区域102との間の滞留時間が5日間より長いと、非常により多い酢酸エチルがエタノールを消費して形成される可能性がある。而して、形成されるエタノールの量を最大にするためには、反応区域101と精製区域102との間のより短い滞留時間が一般に好ましい。一態様においては、ライン116からの液体成分を5日間以下、例えば1日間以下、又は1時間以下一時的に貯蔵するために、反応区域101と精製区域102との間に貯蔵タンク(図示せず)を含ませる。好ましい態様においては、タンクは含ませず、凝縮液を第1の蒸留カラム121に直接供給する。更に、非接触反応が起こる速度は、例えばライン116内の粗エタノール生成物の温度が上昇するにつれて増加する可能性がある。これらの反応速度は、30℃より高く、例えば40℃より高く、又は50℃より高い温度において特に問題となる可能性がある。而して、一態様においては、ライン116内又は場合によって用いる貯蔵タンク内の液体成分の温度は、40℃未満、例えば30℃未満、又は20℃未満の温度に維持する。ライン116内の液体の温度を低下させるために1以上の冷却装置を用いることができる。
【0074】
[0071]上記で議論したように、ライン116からの液体成分を例えば1〜24時間、場合によっては約21℃の温度において一時的に貯蔵(対応してそれぞれ0.01重量%〜1.0重量%の酢酸エチルが形成する)するために、反応区域101と精製区域102との間に貯蔵タンク(図示せず)を含ませることができる。更に、非接触反応が起こる速度は、粗エタノール生成物の温度が上昇するにつれて増加する可能性がある。例えば、ライン116内の粗エタノール生成物の温度が4℃から21℃に上昇すると、酢酸エチル形成の速度は約0.01重量%/時から約0.005重量%/時に増加する可能性がある。而して、一態様においては、ライン116内又は場合によって用いる貯蔵タンク内の液体成分の温度は、21℃未満、例えば4℃未満、又は−10℃未満の温度に維持する。
【0075】
[0072]更に、上記に記載の平衡反応はまた第1のカラム121の頂部領域内においてエタノール形成に有利に働く可能性があることがここで見出された。
[0073]カラム121の留出物、例えば塔頂流は、場合によっては凝縮して好ましくは1:5〜10:1の還流比で還流する。ライン125内の留出物は、好ましくはエタノール、酢酸エチル、及び水を、他の不純物と共に含み、これらは二元又は三元共沸混合物の形成のために分離するのが困難な可能性がある。
【0076】
[0074]ライン125内の第1の留出物は、「軽質留分カラム」とも呼ぶ第2のカラム122の、好ましくはカラム122の中央部、例えば中央の半分又は中央の三分の一に導入する。一例として、25段のトレイカラムを水抽出を行わないでカラム内において用いる場合には、ライン125は17段目において導入する。一態様においては、第2のカラム122は抽出蒸留カラムであってよい。かかる態様においては、水のような抽出剤を第2のカラム122に加えることができる。抽出剤が水を含む場合には、これは外部源からか、又はライン131からの第3のカラム123の残渣からのような1以上の他のカラムからの内部戻り/再循環ラインから得ることができる。
【0077】
[0075]第2のカラム122はトレイ又は充填カラムであってよい。一態様においては、第2のカラム122は、5〜70段、例えば15〜50段、又は20〜45段を有するトレイカラムである。
【0078】
[0076]第2のカラム122の温度及び圧力は変化させることができるが、大気圧においては、第2のカラム122からライン127内に排出される第2の残渣の温度は、好ましくは60℃〜90℃、例えば70℃〜90℃、又は80℃〜90℃である。第2のカラム122からライン128内に排出される第2の留出物の温度は、好ましくは50℃〜90℃、例えば60℃〜80℃、又は60℃〜70℃である。カラム122は大気圧で運転することができる。他の態様においては、第2のカラム122の圧力は、0.1KPa〜510KPa、例えば1KPa〜475KPa、又は1KPa〜375KPaの範囲であってよい。第2のカラム122についての留出物及び残渣組成物に関する代表的な成分を下表4に与える。留出物及び残渣は、供給流中の成分のような列記されていない他の成分も含む可能性があることを理解すべきである。
【0079】
【表4】
【0080】
[0077]第2の残渣中のエタノールと第2の留出物中のエタノールとの重量比は、好ましくは少なくとも3:1、例えば少なくとも6:1、少なくとも8:1、少なくとも10:1、又は少なくとも15:1である。第2の残渣中の酢酸エチルと第2の留出物中の酢酸エチルとの重量比は、好ましくは0.4:1未満、例えば0.2:1未満、又は0.1:1未満である。第2のカラム122内において抽出剤として水を用いる抽出カラムを用いる態様においては、第2の残渣中の酢酸エチルと第2の留出物中の酢酸エチルとの重量比は0に近い。
【0081】
[0078]示すように、エタノール及び水を含む第2のカラム122の底部からの第2の残渣は、ライン127を通して、「生成物カラム」とも呼ぶ第3のカラム123に供給する。より好ましくは、ライン127内の第2の残渣は、第3のカラム123の下部、例えば下半分又は下三分の一の中に導入する。第3のカラム123は、好ましくは、共沸性の水含量以外は実質的に純粋であるエタノールを、留出物としてライン130内に回収する。第3のカラム123の留出物は、好ましくは、図1に示すように、例えば、1:10〜10:1、例えば1:3〜3:1、又は1:2〜2:1の還流比で還流する。好ましくは主として水を含むライン131内の第3の残渣は、好ましくは、システム100から取り出すか、又はシステム100の任意の部分に部分的に戻すことができる。一態様においては、ライン131の一部を第2のカラム122に抽出剤として供給することができる。第3のカラム123は、好ましくは上記に記載のトレイカラムであり、好ましくは大気圧で運転する。第3のカラム123からライン130内に排出される第3の留出物の温度は、カラムを大気圧において運転する場合には、好ましくは60℃〜110℃、例えば70℃〜100℃、又は75℃〜95℃である。第3のカラム123から排出される第3の残渣131の温度は、好ましくは70℃〜115℃、例えば80℃〜110℃、又は85℃〜105℃である。第3のカラム123についての留出物及び残渣組成物の代表的な成分を下表5に与える。留出物及び残渣は供給流中の成分のような列記されていない他の成分も含む可能性があることを理解すべきである。
【0082】
【表5】
【0083】
[0079]供給流又は粗反応生成物から蒸留プロセスを通って運ばれる任意の化合物は、一般に、第3の留出物組成物の全重量を基準として0.1重量%未満、例えば0.05重量%未満、又は0.02重量%未満の量で第3の留出物中に残留する。一態様においては、1以上の側流によって、システム100内のカラム121、122、123、及び/又は124のいずれかから不純物を取り出すことができる。好ましくは、少なくとも1つの側流を用いて第3のカラム123から不純物を取り出す。不純物はパージするか及び/又はシステム100内に留めることができる。
【0084】
[0080]ライン130内の第3の留出物は、例えば、蒸留カラム(例えば仕上げカラム)又はモレキュラーシーブのような1以上の更なる分離システムを用いて更に精製して、無水エタノール生成物流、即ち「最終無水エタノール」を形成することができる。
【0085】
[0081]第2のカラム122に戻り、第2の留出物128は、好ましくは、1:10〜10:1、例えば1:5〜5:1、又は1:3〜3:1の還流比で還流する。第2の留出物128の一部はライン112’を通して反応区域101に戻すことができる。場合によって、反応区域に戻す場合には、ライン112’内の第2の留出物の部分を気化器104に供給することができる。また、第2の留出物の一部をライン128を通して、「アセトアルデヒド除去カラム」とも呼ぶ第4のカラム124に供給することもできる。第4のカラム124においては、第2の留出物を、ライン112内のアセトアルデヒドを含む第4の留出物、及びライン132内の酢酸エチルを含む第4の残渣に分離する。第4の留出物は、好ましくは、1:20〜20:1、例えば1:15〜15:1、又は1:10〜10:1の還流比で還流し、ライン112によって示すように第4の留出物の一部を反応区域101に戻す。例えば、第4の留出物は酢酸供給流106と混合して、気化器104に加えるか、及び/又は反応器103に直接加えることができる。好ましくは、ライン112内の第4の留出物は気化器104に供給する。理論には縛られないが、アセトアルデヒドは水素化してエタノールを形成することができるので、アセトアルデヒドを含む流れを反応区域に再循環することによって、エタノールの収率が増加し、副生成物及び廃棄物の生成が減少する。他の態様(図には示さない)においては、アセトアルデヒドを回収し、更なる精製を行うか又は行わないで、n−ブタノール、1,3−ブタンジオール、及び/又はクロトンアルデヒド、並びに誘導体など(しかしながらこれらに限定されない)の有用な生成物を製造するために用いることができる。
【0086】
[0082]第4のカラム124の第4の残渣は、ライン132を通してパージすることができる。第4の残渣は主として酢酸エチル及びエタノールを含み、これらは溶媒混合物としてか又はエステルの製造において用いるのに好適である可能性がある。1つの好ましい態様においては、アセトアルデヒドは第4のカラム124内で第2の留出物から取り出して、カラム124の残渣中に検出できる量のアセトアルデヒドが存在しないようにする。
【0087】
[0083]第4のカラム124は好ましくは上記に記載したトレイカラムであり、好ましくは大気圧以上の圧力で運転する。一態様においては、圧力は120KPa〜5,000KPa、例えば200KPa〜4,500KPa、又は400KPa〜3,000KPaである。好ましい態様においては、第4のカラム124は、他のカラムの圧力よりも高い圧力で運転することができる。
【0088】
[0084]第4のカラム124からライン112内に排出される第4の留出物の温度は、好ましくは60℃〜110℃、例えば70℃〜100℃、又は75℃〜95℃である。第4のカラム124から排出される残渣の温度は、好ましくは70℃〜115℃、例えば80℃〜110℃、又は85℃〜110℃である。第4のカラム124に関する留出物及び残渣組成物の代表的な成分を下表6に与える。留出物及び残渣は供給流中の成分のような列記されていない他の成分も含む可能性があることを理解すべきである。
【0089】
【表6】
【0090】
[0085]本発明方法によって得られる最終エタノール生成物は、好ましくは、最終エタノール組成物の全重量を基準として75〜96重量%のエタノール、例えば80〜96重量%、又は85〜96重量%のエタノールを含む。代表的な最終エタノール組成範囲を下表7に与える。
【0091】
【表7】
【0092】
[0086]本発明の最終エタノール組成物は、好ましくは非常に低い量、例えば0.5重量%未満の、メタノール、ブタノール、イソブタノール、イソアミルアルコール、及び他のC〜C20アルコールのような他のアルコールを含む。一態様においては、最終エタノール中のイソプロパノールの量は、80〜1,000wppm、例えば95〜1,000wppm、100〜700wppm、又は150〜500wppmである。一態様においては、最終エタノール組成物は、好ましくはアセトアルデヒドを実質的に含まず、8wppm未満、例えば5wppm未満、又は1wppm未満のアセトアルデヒドを含んでいてよい。
【0093】
[0087]本発明の幾つかの態様によって製造される最終エタノール組成物は、燃料、溶媒、化学供給材料、医薬品、洗浄剤、殺菌剤、水素化輸送又は消費などの種々の用途において用いることができる。燃料用途においては、最終エタノール組成物を、自動車、船舶、及び小型ピストンエンジン航空機のような原動機付きの乗物のためのガソリンとブレンドすることができる。非燃料用途においては、最終エタノール組成物を、洗面及び化粧製剤、洗浄剤、殺菌剤、コーティング、インク、及び医薬のための溶媒として用いることができる。最終エタノール組成物はまた、医薬品、食料品、染料、光化学物質に関する製造プロセス、及びラテックス処理における処理溶媒として用いることもできる。
【0094】
[0088]最終エタノール組成物はまた、食用酢、エチルアクリレート、酢酸エチル、エチレン、グリコールエーテル、エチルアミン、アルデヒド、及び高級アルコール、特にブタノールのような他の化学物質を製造するための化学供給材料として用いることもできる。酢酸エチルの製造においては、最終エタノール組成物を酢酸とエステル化するか、或いはポリ酢酸ビニルと反応させることができる。最終エタノール組成物を脱水してエチレンを製造することができる。エタノールを脱水するために、米国公開2010/0030002及び2010/0030001(これらの全ての内容及び開示事項は参照として本明細書中に包含する)に記載されているもののような任意の公知の脱水触媒を用いることができる。例えば、脱水触媒としてゼオライト触媒を用いることができる。好ましくは、ゼオライトは少なくとも約0.6nmの細孔径を有し、好ましいゼオライトとしては、モルデナイト、ZSM−5、ゼオライトX、及びゼオライトYからなる群から選択される脱水触媒が挙げられる。例えば、ゼオライトXは米国特許2,882,244に、ゼオライトYは米国特許3,130,007(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0095】
[0089]本明細書に開示する発明をより効率的に理解することを可能にするために、下記において実施例を与える。以下の実施例は本発明方法を示す。
【実施例】
【0096】
[0090]酢酸の新しい供給流及び再循環流を気化器に供給した。精製区域からの再循環流は、酢酸(約83重量%)、水(約10重量%)、酢酸エチル(約3.5重量%)、エタノール(約2重量%)、アセトアルデヒド(約1.5重量%)、並びに酢酸メチル及びアセトンのような他の微量の不純物を含んでいた。気化器は、107〜117℃のポット温度、及び約100℃の蒸気温度において運転した。表8に、蒸気とブローダウン流との異なる重量比における留出物及び残渣の組成を要約する。
【0097】
【表8】
【0098】
[0091]回収された残渣試料は、2:1の比に関する僅かに明黄色から、17:1の比に関する琥珀色、及び160:1の比に関する暗緑色の範囲であった。70:1の比について非揮発分の分析を行い、0.368重量%の残留固体を有することが分かった。非揮発分の分析は、130℃の加熱砂浴内の白金るつぼ内で残渣をゆっくりと3時間加熱することによって行った。
【0099】
[0092]17:1及び70:1からの残渣試料の更なる分析は、微量のエチリデンジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、及びn−ブチルベンゾエートを示した。
【0100】
[0093]本発明を詳細に記載したが、発明の精神及び範囲内の修正は当業者に容易に明らかであろう。上記の議論、当該技術における関連する知識、並びに背景及び詳細な説明に関連して上記で議論した参照文献(それらの開示事項は全て参照として本明細書中に包含する)を考慮すると。更に、下記及び/又は特許請求の範囲において示す本発明の複数の形態並びに種々の態様及び種々の特徴の複数の部分を、完全か又は部分的に結合又は交換することができると理解すべきである。当業者に認められるように、種々の態様の上記の記載においては他の態様を示すこれらの態様を他の態様と適当に組み合わせることができる。更に、当業者であれば、上記の記載は例示のみの目的であり、本発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。
図1
図2