【文献】
Nat. Biotechnol.,2001年,Vol.19,P.673-676
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一オリゴヌクレオチドが、前記プローブオリゴヌクレオチドに隣接してハイブリダイズし、前記侵入的切断反応において侵入的切断構造を形成する、請求項2に記載の方法。
前記提供ステップが、(vii)検出構造を切断できる酵素を提供するステップをさらに含み、前記インキュベートステップが、成分(i)〜(vii)をインキュベートするステップを含む、請求項1に記載の方法。
前記第一および前記第二オリゴヌクレオチドの、一方もしくは両方の前記第二部分が、第一領域と第二領域を含み、第二部分中のその第一領域とその第二領域が、互いにハイブリダイズして、ヘアピン構造を形成することができる、請求項1に記載の方法。
少なくとも一部が、前記第二オリゴヌクレオチドの前記第二部分中の領域に相補的である、第二スタッカーオリゴヌクレオチド、を提供することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記miRNAが、Let−7、miR−1、miR−135、miR−15、miR−16、miR125b、miR−1d、およびmiR124aからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
本発明を分りやすくするために、いくつかの用語および語句を以下に定義する。
【0025】
本明細書で使用するように、「miRNA」という用語はマイクロRNAをさす。本明細書で使用するように、「miRNA標的配列」という用語は、(例えば他の核酸の存在下で)検出するmiRNAをさす。いくつかの実施形態では、miRNA標的配列はmiRNA変異体である。
【0026】
本明細書で使用するように、「RNA検出構造」および「検出構造」という用語は、核酸(例えばオリゴヌクレオチド)をRNA標的、例えばmiRNAもしくはsiRNAとハイブリダイズすることによって形成される構造をさす。いくつかの実施形態では、核酸は単一核酸[例えば、miRNAと相同する小領域を有するより大型の核酸]である。他の実施形態では、核酸は、[例えば、miRNAとハイブリダイズしてヘアピン(例えば、一重もしくは二重ヘアピン)構造を形成する]2個の核酸を含む。好ましい実施形態では、miRNA検出構造は、それだけには限らないが、本明細書に開示した方法を含む公知の核酸検出方法を使用し検出することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、RNA検出構造は、ハイブリダイゼーションステップ後にさらに改変する。例えば、いくつかの実施形態では、検出構造の一種もしくは複数の成分は、核酸ポリメラーゼによって伸長するための鋳型を提供する。他の実施形態では、検出構造の一種もしくは複数の成分をリガーゼと接触させ、別の核酸にライゲートする。
【0028】
「siRNA」という用語は短鎖干渉RNAをさす。いくつかの実施形態では、siRNAは、二本鎖領域の各鎖が約18〜25ヌクレオチド長である二重鎖、すなわち二本鎖領域を含み、その際、アンチセンス鎖によって長さを決定した場合、二本鎖領域は短くても16塩基対長、長くても29塩基対長でありうる。siRNAは、各鎖の3’末端に約2〜4個の不対ヌクレオチドを有することが多い。siRNAは、無脊椎動物および脊椎動物ではRNA干渉を誘発し、植物では転写後遺伝子サイレンシング中に配列特異的RNA分解を誘発する主要な中間物として機能すると思われる。siRNAの二重鎖もしくは二本鎖領域の少なくとも一鎖は、標的RNA分子と実質的に相同し、もしくは実質的に相補的である。標的RNA分子に相補的である鎖が「アンチセンス」鎖であり、標的RNA分子と相同する鎖が「センス」鎖であり、さらにsiRNAアンチセンス鎖に相補的である。二本鎖領域の一鎖は、反対鎖と同一長でなくてもよく、すなわち一鎖は、反対相補鎖よりもヌクレオチドが少なくとも一個少なくてよく、結果として反対鎖中に「バブル」、すなわち少なくとも一個の非対応塩基がもたらされる。二本鎖領域の一鎖は、反対鎖に厳密に相補的でなくてもよく、すなわち、その鎖、好ましくはセンス鎖は、少なくとも一個のミスマッチ塩基対を有してもよい。
【0029】
siRNAは、追加の配列を含んでもよく、そのような配列の限定しない例には、二重鎖領域の二本鎖を結合するリンキング配列、すなわちループが含まれる。このsiRNA形を「si様RNA」「短鎖ヘアピンsiRNA」(短鎖はsiRNAの二重鎖領域をさす)、または「ヘアピンsiRNA」をさす。siRNA中に存在する別の配列の別の限定しない例には、ステム構造および他のフォールド構造が含まれる。別の配列は、公知の機能を有しても、有していなくてもよく、そのような機能の限定しない例には、siRNA分子の安定性増加、または細胞目的シグナルの提供が含まれる。
【0030】
本明細書で使用するように、「対象」および「患者」という用語は、植物、微生物、および動物(例えば、イヌ、ネコ、家畜、およびヒトなど、哺乳動物)含む任意の生物をさす。
【0031】
本明細書で使用するように、「INVADERアッセイ試薬」または「侵入的切断アッセイ試薬」という用語は、標的配列の存在下で侵入的切断構造を形成できるオリゴヌクレオチドを含む、標的配列を検出する一種もしくは複数の試薬をさす。いくつかの実施形態では、INVADERアッセイ試薬は、侵入的切断構造の存在を検出する薬剤(例えば切断剤)をさらに含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、第一と第二オリゴヌクレオチドを含み、前記第一オリゴヌクレオチドは標的核酸の第一領域に相補的な5’部分を含み、前記第二オリゴヌクレオチドは3’部分と5’部分を含み、前記5’部分は、第一部分の下流にあって第一部分と近接している標的核酸の第二領域に相補的である。いくつかの実施形態では、第二オリゴヌクレオチドの3’部分は、標的核酸に相補的でない3’末端ヌクレオチドを含む。好ましい実施形態では、第二オリゴヌクレオチドの3’部分は、標的核酸に相補的でない単一のヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態では、第一と第二オリゴヌクレオチドは、(例えばリンカーを通じて)互いに共有結合している。
【0032】
いくつかの実施形態では、INVADERアッセイ試薬は固相支持体をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、アッセイ試薬の一個もしくは複数のオリゴヌクレオチド(例えば、橋掛けされていようが、いまいが、第一および/または第二オリゴヌクレオチド)を固相支持体に取り付ける。いくつかの実施形態では、INVADERアッセイ試薬は緩衝液をさらに含む。いくつかの好ましい実施形態では、緩衝液は二価のカチオン源を含む(例えば、Mn
2+および/またはMg
2+イオン)。INVADERアッセイ試薬を集合的に構成する個々の成分(例えば、オリゴヌクレオチド、酵素、緩衝液、標的核酸)を、「INVADERアッセイ試薬成分」と呼ぶ。
【0033】
いくつかの実施形態では、INVADERアッセイ試薬は、第一の標的核酸の第一部分の上流にある標的核酸の第三部分に相補的な第三のオリゴヌクレオチドをさらに含む。さらに別の実施形態では、INVADERアッセイ試薬は標的核酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、INVADERアッセイ試薬は第二標的核酸をさらに含む。さらに別の実施形態では、INVADERアッセイ試薬は、第二標的核酸の第一領域に相補的な5’部分を含む、第三のオリゴヌクレオチドをさらに含む。いくつかの具体的な実施形態では、第三のオリゴヌクレオチドの3’部分は第二標的核酸に共有結合している。他の具体的な実施形態では、第二標的核酸は5’部分をさらに含み、その際、第二標的核酸の5’部分は第三のオリゴヌクレオチドである。さらに別の実施形態では、INVADERアッセイ試薬は、ARRESTOR分子(例えばARRESTORオリゴヌクレオチド)をさらに含む。
【0034】
各プローブの標的特異的領域に完全に、およびその5’−フラップ領域に部分的に塩基対が形成された2’O−メチル化ARRESTORオリゴヌクレオチドを封入すると、二次反応で非切断プローブは隔離され、X構造の形成は防止される(Eisら, Nature Biotechnology, 19:673-676 (2001);当該文献は、あらゆる目的のために、その全体を参照により本明細書に組み込む)。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態では、INVADERアッセイ試薬は核酸切断生成物を検出する試薬をさらに含む。いくつかの実施形態では、INVADERアッセイ試薬中の一個もしくは複数のオリゴヌクレオチドは標識を含む。いくつかの好ましい実施形態では、前記第一オリゴヌクレオチドは標識を含む。他の好ましい実施形態では、前記第三のオリゴヌクレオチドは標識を含む。特に好ましい実施形態では、試薬は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)効果を発生させる部分で標識した、第一および/または第三のオリゴヌクレオチドを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、(すなわち、再測定または再調合がない手順ステップで使用するために予め測定した)予め調合する型式で、一個もしくは複数のINVADERアッセイ試薬を提供してよい。いくつかの実施形態では、選択したINVADERアッセイ試薬成分を混合し、一緒に予め調合する。好ましい実施形態では、予め調合したアッセイ試薬成分を、予め調合し、(反応チューブ、または例えばマイクロタイタープレート中のウェル含むが、それだけには限らない)反応槽で提供する。特に好ましい実施形態では、予め調合したINVADERアッセイ試薬成分を反応槽で乾燥させる(例えば、乾燥保存しまたは凍結乾燥する)。
【0037】
いくつかの実施形態では、INVADERアッセイ試薬をキットとして提供する。本明細書で使用するように、「キット」という用語は物質を配達するための任意の配達系をさす。反応アッセイと関連して、そのような配達系は、ある場所から別の場所へ、反応試薬の保存、輸送、または配達を可能にするシステム(例えば、好適な容器に入れたオリゴヌクレオチド、酵素など)および/または支持物質(例えば、緩衝液、アッセイを実施するために記載された使用説明書など)を含む。例えば、キットは、関連する反応試薬および/または支持物質を入れる、一個もしくは複数の入れ物(例えば箱)を含む。本明細書で使用するように、「細分化キット」という用語は、それぞれ、全キット成分のサブポーションを入れた、2個またはそれ以上の分離した容器を含む配達系をさす。容器は、意図したレシピエントに一緒にまたは別々に配達しうる。例えば、第一容器には、アッセイで使用する酵素を入れ、第二容器にはオリゴヌクレオチドを入れる。「細分化キット」という用語は、連邦食品医薬品化粧品法第520(e)節に定められている検体特異的試薬(ASR:Analyte specific reagents)を含むキットを包含するものとするが、それだけには限らない。実際、「細分化キット」という用語には、それぞれが、全キット成分のサブポーションを入れた、2個またはそれ以上の分離した容器を含む任意の配達系が含まれる。それに反して、「混合キット」は、1個の容器に反応アッセイの成分の全てを入れた(例えば、所望成分のそれぞれを単一ボックスに収容した)配達系さす。「キット」という用語には、細分化キットおよび混合キットが含まれる。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明を実施するのに必要な成分の一個もしくは複数を入れたINVADERアッセイ試薬キットを提供する。例えば、本発明は、INVADERアッセイの実施に必要な酵素および/または反応成分を貯蔵しまたは配達するキットを提供する。キットには、アッセイに必要なもしくは所望されるあらゆる成分、それだけには限らないが、試薬自体、緩衝液、対照試薬(例えば、組織試料、正および負の対照標的オリゴヌクレオチドなど)、固相支持体、標識、記載および/または図解使用説明書、および製品情報、阻害薬、標識および/または検出試薬、パッケージ環境対照(例えば氷、乾燥剤など)などを含む成分を入れて良い。いくつかの実施形態では、キットは、使用者が残りの成分を供給すると予想される、必要成分のサブセットを提供する。いくつかの実施形態では、キットには、それぞれ容器が配達すべき成分のサブセットを収容する、2個またはそれ以上の分離した容器が含まれる。例えば、第一の容器(例えばボックス)には、酵素(例えば、適切な保存緩衝液中の構造特異的切断酵素、および容器)を入れ、第二ボックスには、オリゴヌクレオチド(例えば、INVADERオリゴヌクレオチド、プローブオリゴヌクレオチド、対照標的オリゴヌクレオチドなど)を入れてよい。
【0039】
本明細書で使用する「標識」という用語は、検出可能(好ましくは定量化可能)効果を得るために使用でき、核酸もしくはタンパク質に取り付けることができる、任意の原子または分子をさす。標識には、それだけには限らないが、色素;
32Pなどの放射標識;ビオチンなどの結合部分;ディグオキシジェニンなどのハプテン;発光発生的(luminogenic)、リン光、もしくは蛍光発生的部分;質量タグ;および蛍光色素単独、あるいは蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)により、発光スペクトルを抑制し、またはシフトさせることができる部分と組み合わせた蛍光色素が含まれる。標識によって、蛍光、放射能、比色分析、重量測定、X線回析もしくは吸収、磁性、酵素活性、質量特性または質量により左右される挙動特性(例えば、MALDI飛行時間型質量分析、蛍光偏光)などによって検出可能なシグナルが得られる。標識は、荷電部分(正もしくは負の電荷)であってよく、または別法として中性電荷であってよい。標識は、標識を含む配列が検出可能であれば、核酸もしくはタンパク質配列を含み、またはそれらからなっていてもよい。
【0040】
本明細書で使用するように、シグナルに関して「別個(distinct)」という用語は、例えば、スペクトル特性、例えば、蛍光発光波長、色彩、吸光度、質量、サイズ、蛍光偏光特性、電荷などによって、または別の部分と、例えば化学試薬、酵素、抗体などと相互作用する能力によって、ある物と別の物を区別することができるシグナルをさす。
【0041】
本明細書で使用するように、「相補的」または「相補性」という用語は、塩基対形成規則により関連し合うポリヌクレオチド(すなわち、オリゴヌクレオチドまたは標的核酸などのヌクレオチド配列)に関して使用される。例えば、配列「5’−A−G−T−3’」は配列「3’−T−C−A−5’」に相補的である。相補性は「部分的」であってよく、その際、核酸塩基の一部のみが、塩基対形成規則に従って適合する。または、核酸間に「完全」または「全」相補性があってもよい。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に著しく影響する。これは、増幅反応、および核酸間の結合によって決まる検出方法では特に重要性である。どちらの用語も、個々のヌクレオチドに関して使用してよく、特にポリヌクレオチドに関連して使用してよい。例えば、オリゴヌクレオチド中の特定のヌクレオチドは、別の核酸鎖中のヌクレオチドに対するその相補性、またはその相補性が欠けていることによって注目されようが、それはそのオリゴヌクレオチドの残りの部分とその核酸鎖との間の相補性に反して、またはその相補性と比較してのものである。
【0042】
「相同性」および「相同」という用語は、同一性の程度をさす。部分的相同性と完全相同性がありうる。部分的相同配列は、別の配列との同一性が100%未満というものである。
【0043】
本明細書で使用するように、「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的核酸対に関して使用される。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション強度(すなわち核酸間の会合強度)は、核酸間の相補程度、関与する条件のストリンジェンシー、および形成されたハイブリッドのT
mなどの要因の影響を受ける。「ハイブリダイゼーション」方法には、ある核酸と、別の相補的核酸、すなわち相補的ヌクレオチド配列を含む核酸とのアニーリングが含まれる。互いに相手を見つけ、かつ塩基対形成相互作用を通じてアニールする、相補的配列を含む2個の核酸ポリマーの能力は、十分に認識されている現象である。Marmur and Lane, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 46:453 (1960)およびDotyら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 46:461 (1960)による「ハイブリダイゼーション」過程の初期観察後、この過程は洗練されて現代生物学の不可欠なツールになった。
【0044】
本明細書で使用する核酸配列の相補鎖(complement)は、ある配列の5’末端が別の配列の3’末端と対を形成するように核酸配列が整列しているとき、「逆平行関係」にあるオリゴヌクレオチドをさす。天然核酸には一般に見られないある種の塩基を本発明の核酸に含めてよく、例えば、イノシンおよび7−デアザグアニンが含まれる。相補性は完全でなくてもよく、安定した二重鎖は、ミスマッチ塩基対または非対応塩基を含みうる。核酸技術の当業者は、例えば、オリゴヌクレオチド長、オリゴヌクレオチドの塩基組成と配列、イオン強度、およびミスマッチ塩基対の発生率を含む、いくつかの変数を経験的に考慮して、二重鎖の安定性を決定することができる。
【0045】
本明細書で使用するように、「T
m」という用語は「融解温度」に関して使用される。融解温度は、二本鎖核酸分子集団が半解離して一本鎖になる温度である。核酸のT
mを算出するいくつかの方程式は、当技術分野で周知されている。標準的参照文献によって示されるように、核酸を水溶液に1M NaClで入れた場合のT
m値の単純な推定は、次方程式によって計算しうる。T
m=81.5+0.41(%G+C)[例えばAnderson and Young, Quantitative Filter Hybridization, in Nucleic Acid Hybridization (1985)を参照]。別の参照文献[例えば、Allawi and SantaLucia, Biochemistry 36: 10581-94 (1997)]には、T
mの計算に、構造的、環境的、および配列特性を考慮するより高性能な計算が含まれる。
【0046】
「遺伝子」という用語は、非コーディング機能を有するRNA(例えば、リボソームRNAもしくは転移RNA)、ポリペプチド、または前駆体の生成に必要な、対照配列およびコード配列を含むDNA配列をさす。所望の活性または機能が保持されている限り、RNAまたはポリペプチドは、全長コード配列またはコード配列の任意の部分によってコードされていてよい。
【0047】
「野生型」という用語は、天然源から単離したとき、その遺伝子もしくは遺伝子産物の特性を有する、遺伝子もしくは遺伝子産物をさす。野生型遺伝子は、集団で最も頻繁に観察され、従って遺伝子の「正常」型または「野生」型と任意に指定されるものである。それに反して、野生型遺伝子もしくは遺伝子産物と比較した場合、「改変体」、「突然変異体」、または「多形」という用語は、配列および/または機能特性に改変(すなわち変化した特性)が見られる遺伝子もしくは遺伝子産物をさす。自然発生の変異体は、単離できることに留意されたい。自然発生の突然変異体は、野生型遺伝子もしくは遺伝子産物と比較した場合、変化した特性をそれらが有することによって同定される。
【0048】
本明細書で使用する「組換えDNAベクター」という用語は、所望の異種配列を含むDNA配列をさす。例えば、その用語は、発現した配列または発現産生物をコードする配列の使用に限定されないが、いくつかの実施形態では、異種配列は、コード配列、および宿主生物でコード配列を複製するのに、もしくは特定の宿主生物で作動可能に連結したコード配列を発現させるのに必要な好適DNA配列である。原核生物での発現に必要なDNA配列には、プロモーター、任意によりオペレーター配列、リボソーム結合部位、およびおそらく他の配列が含まれる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化(polyadenlyation)シグナルおよびエンハンサーを利用することが知られている。
【0049】
本明細書で使用する「オリゴヌクレオチド」という用語は、2個またはそれ以上のデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、好ましくは少なくとも5個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約10〜15個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約15〜30個のヌクレオチドを含む分子として定義される。正確なサイズは、多くの要因に依存し、次いで、それは、オリゴヌクレオチドの究極の機能または使用に依存する。オリゴヌクレオチドは、化学合成、DNA複製、逆転写、PCR、またはそれらの組合せを含む、いかなる方式によっても生成しうる。
【0050】
モノヌクレオチド同士は、反応して、1個のモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸が、リン酸ジエステル結合を通じて、一方向のその隣接配列の3’酸素に付着するような方法で、オリゴヌクレオチドを作製するので、オリゴヌクレオチド端は、その5’リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3’酸素に結合していない場合は「5’末端」と称し、その3’酸素が続くモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸に結合していない場合は「3’末端」と称する。本明細書で使用するように、たとえ大型オリゴヌクレオチドの内部にあっても、核酸配列は5’および3’末端を有すると言ってよい。核酸鎖に沿って5’から3’方向へ移動したとき、第一領域の3’末端が第二領域の5’末端の前にある場合、核酸鎖に沿う第一領域は、別の領域の上流にあると言う。
【0051】
異なる2個の非重複オリゴヌクレオチドが、同じ直鎖相補的核酸配列の異なる領域にアニールし、一オリゴヌクレオチドの3’末端が、別のオリゴヌクレオチドの5’末端を目指している場合、前者は「上流」オリゴヌクレオチドと呼ばれ、後者は「下流」オリゴヌクレオチドと呼ばれる。同様に、その5’末端が第二オリゴヌクレオチドの5’末端の上流にあり、第一オリゴヌクレオチドの3’末端が第二オリゴヌクレオチドの3’末端の上流にあるように、第一オリゴヌクレオチドが位置して、2個の重複オリゴヌクレオチドが、同じ直鎖相補的核酸配列とハイブリダイズするとき、第一オリゴヌクレオチドを「上流」オリゴヌクレオチドと呼び、第二オリゴヌクレオチドを「下流」オリゴヌクレオチドと呼んでよい。
【0052】
「プライマー」という用語は、プライマー伸長が開始する条件下に置いたとき、合成開始点として作用することが可能なオリゴヌクレオチドをさす。オリゴヌクレオチド「プライマー」は、精製制限消化で自然に生成させることも、または合成により生成することもできる。
【0053】
プライマーは、鋳型の特異的配列鎖に「実質的に」相補的であるように選択する。プライマーは、プライマーの伸張が起きるためには、鋳型鎖とハイブリダイズするのに十分な相補性がなければならない。プライマー配列は、鋳型の正確な配列を反映しなくてもよい。例えば、プライマー配列の残り部分がその鎖に実質的に相補的である、プライマーの5’末端に非相補的ヌクレオチドフラグメントを取り付けてよい。プライマー配列が、ハイブリダイズする鋳型配列に十分な相補性を有し、それによってプライマー伸長生成物合成用の鋳型プライマー複合体が形成されるのであれば、プライマー中に非相補的塩基または長い配列を散在させることもできる。
【0054】
本明細書で使用する「切断構造」という用語は、少なくとも一個のプローブオリゴヌクレオチドと標的核酸との相互作用によって形成され、二重鎖を含む構造を形成し、それだけには限らないが、酵素を含む切断手段によって得られた構造を切断できる構造をさす。切断構造は、切断手段によって特異的に切断するための基質であり、二次構造に考慮することなく(すなわち、二重鎖構造を形成しないことは必要ではない)、核酸分子を切断するホスホジエステラーゼなどの薬剤によって、非特異的に切断するための基質である核酸分子とは対照的である。
【0055】
本明細書で使用する「切断手段」または「切断剤」という用語は、切断構造を切断することが可能な任意の手段をさし、それだけには限らないが酵素が含まれる。「構造特異的ヌクレアーゼ」または「構造特異的酵素」は、核酸分子の特異的二次構造を認識し、これらの構造を切断する酵素である。本発明の切断手段は、切断構造の形成に応答して核酸分子を切断し、切断手段が、切断構造中の任意の特定の位置で切断構造を切断しなくてもよい。
【0056】
切断手段は、CLEAVASE酵素(Third Wave Technologies, Madison, WI)、(RAD2およびXPGタンパク質、ならびに古細菌に由来するFEN−1エンドヌクレアーゼ含む)FEN−1エンドヌクレアーゼ、Taq DNAポリメラーゼおよび大腸菌DNAポリメラーゼIを含む様々な供給源から得たヌクレアーゼ活性を含みうる。切断手段は、5’ヌクレアーゼ活性(例えば、Taq DNAポリメラーゼ(DNAP)、大腸菌DNAポリメラーゼI)を有する酵素を含みうる。切断手段には、5’ヌクレアーゼ活性は有するが、合成活性は持たない改変DNAポリメラーゼを含めてもよい。本方法および本発明のキットで使用するのに適切な切断手段の例は、米国特許第5,614,402号、米国特許第5,795,763号、米国特許第5,843,669号、PCT出願番号WO 98/23774号、WO 02/070755A2、およびWO 0190337A2に提供され、その各々を参照によりそれら全体を本明細書に組み込む。
【0057】
「熱安定性」という用語は、5’ヌクレアーゼなどの酵素に関して使用する場合、酵素が、高温、すなわち約55℃以上(例えば、それだけには限らないが、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃または90℃を含む)で、機能性または活性を有する(すなわち、触媒作用を示すことができる)ことを示す。
【0058】
本明細書で使用する「切断生成物」という用語は、切断構造による切断手段の反応(すなわち、切断手段による切断構造の処理)によって生じた生成物をさす。
【0059】
「非標的切断生成物」という用語は、標的核酸に由来しない切断反応生成物をさす。先に述べたように、本発明のいくつかの方法では、切断構造の切断は、一般的にプローブオリゴヌクレオチド中で生じる。この標的核酸依存的切断によって生じたプローブオリゴヌクレオチドフラグメントは、「非標的切断生成物」である。
【0060】
「プローブオリゴヌクレオチド」という用語は、INVADERアッセイ反応と関連しては、INVADERオリゴヌクレオチドの存在もしくは非存在下で、標的核酸と相互作用して、切断構造を形成するオリゴヌクレオチドをさす。標的核酸にアニールすると、プローブオリゴヌクレオチドと標的は、切断構造を形成し、そのプローブオリゴヌクレオチド中で切断が行なわれる。
【0061】
「INVADERオリゴヌクレオチド」という用語は、プローブと標的核酸間のハイブリダイゼーション領域近傍位置で、標的核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをさし、その場合、INVADERオリゴヌクレオチドは、プローブと標的間のハイブリダイゼーション領域と重複する部分(化学的部分、またはその標的に相補的であろうと、なかろうとヌクレオチドなど)を含む。いくつかの実施形態では、INVADERオリゴヌクレオチドは、その3’末端に、プローブオリゴヌクレオチドの5’末端にある配列と事実上同じ配列を含む。
【0062】
「ARRESTOR分子」という用語は、一種もしくは複数の反応成分が、その後の作用もしくは反応に参加しないようにするために、侵入的切断反応に加えられ、または含める薬剤をさす。これは、いくつかの反応成分を隔離または不活性化することによって(例えば、核酸成分を結合し、もしくは塩基対形成すること、またはタンパク質成分に結合することによって)行いうる。「ARRESTORオリゴヌクレオチド」という用語は、任意の反応(例えば、第一の反応および/または任意のそれに続く反応もしくは作用。ARRESTORオリゴヌクレオチドは、任意の特定の反応もしくは反応ステップに限定されないものとする)の一つまたは複数の態様を停止しまたは抑止するために、侵入的切断反応に含まれるオリゴヌクレオチドをさす。これは、いくつかの反応成分を隔離すること(例えば、別の核酸との塩基対形成、またはタンパク質成分と結合)によって行いうる。しかし、単に反応成分を隔離するという状況などに限定されないものとする。
【0063】
本明細書で使用する「カセット」という用語は、INVADERアッセイでプローブオリゴヌクレオチドの切断に応答して、検出可能なシグナルを発生するように構成した、オリゴヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドの組合せをさす。好ましい実施形態では、プローブオリゴヌクレオチドの切断から得られた非標的切断生成物とカセットをハイブリダイズして、次いでそのカセットが切断されるように、第二の侵入的切断構造を形成する。
【0064】
本発明のいくつかの好ましい実施形態で、二次切断反応にはFRETカセットの使用が含まれる。そのような分子によって、二次標的(Secondary Reaction TargetすなわちSRT)とFRET標識した切断可能配列が両方とも得られ、(すなわち、反応後の生成物の分離または他の操作なしに)逐次侵入的切断反応の均質な検出が可能になる。他の好ましい実施形態では、FRETプローブと合成標的が、別々のオリゴヌクレオチドとして得られる二次反応系で使用される。一次反応から切断された5’−フラップは、二次反応で侵入型オリゴヌクレオチドとして働き、その際フラップは好適な二次反応標的(SRT)に結合する。
【0065】
いくつかの実施形態では、カセットは、ヘアピン部分(すなわち、カセットオリゴヌクレオチドの一部が、反応条件下で、同じオリゴヌクレオチドの第二部分にハイブリダイズして二重鎖を形成する領域)を含む単一オリゴヌクレオチドである。他の実施形態では、カセットは、反応条件下で二重鎖を形成できる相補部分を含む、少なくとも2個のオリゴヌクレオチドを含む。好ましい実施形態では、カセットは標識を含む。特に好ましい実施形態では、カセットは、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)効果を生み出す標識部分を含む。
【0066】
「実質的に一本鎖」という用語は、核酸基質に関して使用する場合、鎖間塩基対形成相互作用によって一緒に保持される核酸の二本鎖として存在する二本鎖基質とは対照的に、基質分子が主として核酸の一本鎖として存在することを意味する。
【0067】
本明細書で使用する「非増幅オリゴヌクレオチド検出アッセイ」という語句は、標的配列のコピーを作製することなく、(例えばPCRによって)増幅されない特定の標的配列(例えば、miRNA、SNP、反復配列など)の存在もしくは非存在を検出するように構成された検出アッセイをさす。「非増幅オリゴヌクレオチド検出アッセイ」は、例えば、標的配列がコピーされない限り、標的配列中の特定の標的配列もしくは多形の存在もしくは非存在を示すために使用されるシグナルを増幅しうる。
【0068】
本明細書で使用するように、「非増幅オリゴヌクレオチド検出アッセイ」という語句は、標的配列のコピーを作製することなく、標的配列(例えば、miRNA、SNP、反復配列など)の存在もしくは非存在を検出するように構成された検出アッセイをさす。「非増幅オリゴヌクレオチド検出アッセイ」は、例えば、標的配列がコピーされない限り、標的配列中の特定の標的配列もしくは多形の存在もしくは非存在を示すために使用されるシグナルを増幅しうる。
【0069】
本明細書で使用する「配列多様性」という用語は、2個の核酸間の核酸配列の差異をさす。例えば、野生型構造遺伝子およびこの野生型構造遺伝子の突然変異体は、1個の塩基の置換および/もしくは欠失または一個もしくは複数のヌクレオチドの挿入が存在することによって、配列が変化しうる。これらの2個の構造遺伝子形態は、互いに配列が異なると言う。第二の構造遺伝子突然変異体も存在しうる。この第二突然変異体は、野生型遺伝子およびその遺伝子の第一突然変異体とも、配列が異なると言う。
【0070】
本明細書で使用する「遊離すること」という用語は、5’ヌクレアーゼなどの作用によって、オリゴヌクレオチドなどの大きい核酸フラグメントから、核酸フラグメントが遊離することをさし、放出されたフラグメントが、そのオリゴヌクレオチドの残部にそれ以上共有結合することはない。
【0071】
本明細書で使用する「K
m」という用語は、酵素におけるミカエリス−メンテン定数をさし、所与の酵素が、酵素触媒反応でその最高速度の1/2を得られる特定の基質の濃度として定義される。
【0072】
本明細書で使用する「ヌクレオチド類似体」という用語は、改変ヌクレオチドもしくは自然に存在しないヌクレオチドをさし、それだけには限らないが、7−デアザプリン(すなわち、7−デアザ−dATPおよび7−デアザ−dGTP)など、変化した積層(stacking)相互作用を有する類似体、代替の水素結合構成を有する塩基類似体[例えば、S. Bennerに付与され、参照により本明細書に組み込む米国特許第6,001,983号に記載されている、Iso−CやIso−Gおよび他の非標準的塩基対など]、非水素結合類似体[例えば、その各々を参照により本明細書に組み込むB.A. Schweitzer and E.T. Kool, J. Org. Chem., 1994, 59, 7238-7242、B.A. Schweitzer and E.T. Kool, J. Am. Chem. Soc., 1995, 117, 1863-1872に記載されている2,4−ジフルオロトルエンなどの非極性芳香族ヌクレオシド類似体]、5−ニトロインドールおよび3−ニトロピロールなどの「ユニバーサル」塩基、ならびにユニバーサルプリンおよびピリミジン[「K」および「P」ヌクレオチドなど、それぞれ、P. Kong,ら, Nucleic Acids Res., 1989, 17, 10373-10383、P. Kongら, Nucleic Acids Res., 1992, 20, 5149-5152]が含まれる。ヌクレオチド類似体には、糖部分が修飾されているヌクレオチド、例えば、ジデオキシヌクレオチドおよび2’−O−メチルヌクレオチドが含まれる。ヌクレオチド類似体には、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドの改変形態が含まれる。
【0073】
「多形遺伝子座」という用語は、集団メンバー間に変動がある集団中に存在する遺伝子座である(例えば、最も一般的な対立遺伝子の頻度は0.95未満である)。それに反して、「単形遺伝子座」は、集団メンバー間に変動がほとんど、またはまったく見られない遺伝子遺伝子座である(一般的に、集団の遺伝子プール中、最も一般的な対立遺伝子の頻度が0.95を超える遺伝子座をさす)。
【0074】
本明細書で使用する「微生物」という用語は、余りに小さくて肉眼で観察できない生物を意味し、それらだけには限らないが、細菌、ウイルス、原生動物、真菌、および繊毛虫類が含まれる。
【0075】
「微生物性遺伝子配列」という用語は、微生物に由来する遺伝子配列をさす。
【0076】
「細菌」という用語は、真正細菌種および古細菌種を含む任意の菌種をさす。
【0077】
「ウイルス」という用語は、自律増殖能がない偏性寄生虫、極微寄生虫、細胞内寄生虫をさす(すなわち、複製するためには、宿主細胞の機構を使用しなければならない)。
【0078】
本明細書および特許請求の範囲内で「試料」という用語は、その最も広範な意味で使用される。一方で、試料は、標本または培養物(例えば、微生物学的培養物)を含むものとする。他方で、試料は、生物学的および環境的試料を含むものとする。試料は、合成起源の標本を含みうる。
【0079】
生物試料は、ヒト、液体、固体(例えば糞便)または組織、さらに液体および固体の食物および餌製品、および成分、例えば、乳製品目、野菜、食肉と食肉副産物、および廃棄物を含め、動物性であってよい。生物試料は、それだけには限らないが、有蹄動物、クマ、魚類、ウサギ、げっ歯類などの動物を含め、様々な家畜ファミリー、および自然もしくは野生動物の全てから得られる。
【0080】
環境的試料には、地上物質、土壌、水などの環境的物質、および工業的試料、ならびに食物および乳を加工する機器、装置、設備、用具、使い捨て品および非使い捨て品から入手した試料が含まれる。これらの例は、本発明に適用可能な試料の種類を制限しないと解釈される。
【0081】
「標的核酸源」という用語は、核酸[RNA(例えばmiRNA)またはDNA]を含む任意の試料をさす。特に好ましい標的核酸源は、それだけには限らないが、血液、唾液、大脳髄液、胸水、乳、リンパ、痰、および精液を含む生物試料である。
【0082】
オリゴヌクレオチドが、別のオリゴヌクレオチド(または標的核酸配列)よりも高モル濃度で存在する場合、別のオリゴヌクレオチド(または標的核酸配列)に比べて、オリゴヌクレオチドが「過剰に」存在すると言う。プローブオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチドが、相補的である標的核酸配列濃度に比べて過剰に切断反応中に存在する場合、存在する標的核酸の量を示すために反応を使用しうる。典型的には、過剰に存在するというとき、プローブオリゴヌクレオチドは、少なくとも100倍モル過剰に存在し、典型的には、標的核酸配列が約10fmole以下で存在するとき、各プローブオリゴヌクレオチドは少なくとも1pmole使用されよう。
【0083】
第一および第二標的核酸「を含むことが推測される」試料は、いずれかの標的核酸分子もしくは両方の標的核酸分子を含み、またはどちらの標的核酸分子も含まない場合がある。
【0084】
「反応体」という用語は、本明細書でその最も広範な意味で使用される。反応体には、例えば、酵素的反応体、化学的反応体または光(例えば、紫外線、特に短波長紫外線は、オリゴヌクレオチド鎖を破壊することが知られている)を含めることができる。オリゴヌクレオチドと反応して、オリゴヌクレオチドを短縮(例えば切断)し、または伸長することが可能な任意の薬剤を「反応体」という用語内に包含する。
【0085】
本明細書で使用するように、「精製」という用語は、試料から混入物質を除去することをさす。例えば、いくつかの実施形態では、細菌宿主細胞で組換えCLEAVASEヌクレアーゼを発現させ、宿主細胞タンパク質を除去することによってそのヌクレアーゼを精製するが、それによって試料中のこの組換えヌクレアーゼの%割合は増加する。
【0086】
本明細書で使用する「部分」という用語は、(「所与のタンパク質の一部」として)タンパク質に関する場合、そのタンパク質のフラグメントをさす。フラグメントのサイズは、4アミノ酸残基から、アミノ酸配列全体から1個のアミノ酸を引いた数(例えば4、5、6、...、n−1)までの範囲であろう。
【0087】
本明細書で使用する「核酸配列」という用語は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、またはポリヌクレオチド、およびそのフラグメントもしくは部分、およびゲノム起源または合成起源のDNAもしくはRNAをさし、一本鎖もしくは二本鎖であってもよく、センス鎖もしくはアンチセンス鎖を表してもよい。同様に、本明細書で使用する「アミノ酸配列」は、ペプチドもしくはタンパク質配列をさす。
【0088】
本明細書で使用するように、「精製」または「実質的に精製」という用語は、その自然環境から取り出し、単離もしくは分離し、自然に付随している他の成分を少なくとも60%、好ましくは75%、最も好ましくは90%を含まない核酸もしくはアミノ酸配列である分子をさす。従って「単離ポリヌクレオチド」または「単離オリゴヌクレオチド」は、実質的に精製ポリヌクレオチドである。
【0089】
本明細書で使用する「核酸連続鎖」という用語は、切れ目もしくは他の撹乱なしに、連続に共有結合する主鎖構造を有する核酸鎖を意味する。各ヌクレオチドの塩基部分の配置は、塩基対を形成し、一本鎖であり、もしくはミスマッチであろうと、連続鎖の定義の要素ではない。連続鎖の主鎖は、自然発生の未修飾核酸に見出されるリボースリン酸もしくはデオキシリボースリン酸組成に限定されない。本発明の核酸は、主鎖構造に、それだけには限らないが、ホスホロチオ酸残基、ホスホネート残基、2’置換リボース残基(例えば、2’Oメチルリボース)、および代替の糖(例えばアラビノース)を有する残基を含む修飾を含みうる。
【0090】
本明細書で使用する「連続的二重鎖」という用語は、二重鎖での塩基対の進行に撹乱がない二本鎖核酸領域をさす(すなわち、二重鎖に沿う塩基対が、連続的二重鎖領域の限定に伴うギャップ、バルジ、もしくはミスマッチを収容するように歪められていない)。本明細書で使用するように、この用語は、核酸鎖主鎖部分の連続性を意味することなく、二重鎖中の塩基対配列のみをさす。塩基対形成は連続的であるが、片方または両方の鎖に切れ目がある二重鎖核酸も、連続的二重鎖の定義内にある。
【0091】
「二重鎖」という用語は、一鎖のヌクレオチドの塩基部分が、第二鎖に並んでいるその相補的塩基に水素結合を通じて結合している核酸状態をさす。二重鎖形であるという状態が、核酸の塩基状態を反映する。塩基対形成により、一般的に、核酸鎖から大小の溝を有する二重螺旋の三次構造が想定される。その螺旋形の仮説は、二重鎖になるという作用において絶対的である。
【0092】
「鋳型」という用語は、相補的コピーが、鋳型依存的核酸ポリメラーゼの活性により、ヌクレオシド三リン酸から構築される核酸鎖をさす。二重鎖内では、鋳型鎖は、慣例により「底部」鎖として描かれ記載される。同様に、非鋳型鎖は、「上部」鎖として描かれ記載されることが多い。
【0093】
(発明の詳細な説明)
本発明は、核酸分子を検出し特徴付ける組成物および方法[例えば、RNA{例えば、マイクロRNA(miRNA)および短鎖干渉RNA(siRNA)などのスモールRNA}および他の短い核酸分子]に関する。本発明は、miRNAの発現を検出し、特徴付け、そして定量する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、検出に役立てるためにmiRNAに核酸を加えるステップを含む、miRNAの発現を検出する方法を提供する。次いで、それだけには限らないが、本明細書に開示した方法を含め、任意の適切な方法を使用し、得られた「miRNA検出構造」を検出する。以下の記述は、miRNAの検出および定量に焦点を当てているが、本発明が、他の短い核酸分子(例えば、例えば、50、40、30、または20ヌクレオチド長未満のDNAおよびRNA)を用いても役立つことは理解されるものとする。
【0094】
miRNAを一例として使用する様々な実施形態を以下に例示する。しかし、本方法が、他の小型核酸分子にも利用しうることは理解されるものとする。
【0095】
I.miRNA検出構造形成
いくつかの実施形態では、本発明は、miRNAの検出に役立つmiRNA検出構造を生成する方法を提供する。miRNAは、サイズが小さく[約21ヌクレオチド(例えば、およそ18〜25ヌクレオチド)]、従って標準化されたハイブリダイゼーション法を使用して検出するのは困難である。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、(例えばハイブリダイゼーション、伸長、またはライゲーションにより)miRNAに核酸分子を加えて、検出構造を生成するステップを含む。次いで、任意の適切な方法を使用し、そのような検出構造を検出することができる。
【0096】
具体的一実施形態では、miRNAを検出するために
図2に記載した検出構造を生成する。この実施形態では、2個のオリゴヌクレオチドをmiRNAにアニールして、二重ループすなわち「亜鈴」様構造を形成する。miRNAの両端をオリゴヌクレオチドの二本鎖領域で伸長することによって、亜鈴構造から大型の二本鎖核酸領域が形成される。いくつかの実施形態では、miRNAの各端部は、2〜5ヌクレオチド伸長される。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの両端に、miRNAとハイブリダイズしない追加の核酸配列を含める。いくつかの実施形態では、これらの追加の配列によって、侵入的切断構造(例えば、INVADERアッセイ侵入的切断構造)が形成される。いくつかの実施形態では、侵入的切断構造をINVADERアッセイ(例えば以下の記述を参照)によって検出する。例えば、いくつかの実施形態では、実施例18に記載したオリゴヌクレオチド(例えば
図31を参照)は、癌に伴うmiRNAを検出する(例えば、INVADERアッセイによって検出できる侵入的切断構造を形成する)ために使用される。
【0097】
他の実施形態では、miRNAを検出するために、
図3に記載する検出構造を生成する。この実施形態では、一オリゴヌクレオチドをmiRNAにアニールして、アーチ形構造を生成する。miRNAは、miRNAの非存在下よりも高い効率でオリゴヌクレオチドの両端を結合する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの両端に、miRNAを超えて伸長し、miRNAとハイブリダイズしない追加の配列を含める。いくつかの実施形態では、これらの追加の配列によって、侵入的切断構造(例えば、INVADERアッセイ侵入的切断構造)が形成される。いくつかの実施形態では、侵入的切断構造はINVADERアッセイによって検出する(例えば以下の記述を参照)。他の実施形態では、INVADERアッセイ侵入的切断構造の切断後、得られた両端をライゲートして環状構造を形成する。他の実施形態では、一オリゴヌクレオチドとmiRNAをハイブリダイズ(例えば、miRNAの隣接ヌクレオチドとハイブリダイズ)し、その結果、オリゴヌクレオチドの両端が接近し、次いでライゲートされる。
【0098】
さらに別の実施形態では、
図24、25に記載する検出構造が生成される。この実施形態では、プローブまたはINVADERオリゴヌクレオチドが伸長して、単一ヘアピンループすなわち「半亜鈴」構造を形成する。例えば、いくつかの実施形態では、実施例18に記載したオリゴヌクレオチド(例えば
図31を参照)は、癌に伴うmiRNAを検出する(例えば、INVADERアッセイによって検出できる侵入的切断構造を形成する)ために使用される。
【0099】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの両端には、miRNAとハイブリダイズしない追加の核酸配列が含まれる(例えば実施例19Gおよび19Hを参照)。いくつかの実施形態では、これらの追加の配列は、侵入的切断構造(例えば、INVADERアッセイ侵入的切断構造)を形成する。いくつかの実施形態では、侵入的切断構造は、INVADERアッセイによって検出する(例えば以下の記述を参照)。
【0100】
他の実施形態では、切断構造、例えば、INVADERアッセイ侵入的切断構造を安定化させるために、これらの追加の配列は、反応混合物に付加した追加のオリゴヌクレオチドに相補的である(
図4)。
【0101】
いくつかの実施形態では、ローリングサークル型複製アッセイを使用して、上記のように生成された環状構造を検出する(例えば、ローリングサークル型複製についての以下の記述を参照)。
【0102】
さらに別の実施形態では、検出構造は、長鎖オリゴヌクレオチド(例えば、50、100、1000ヌクレオチド長以上)と、miRNAに相同な短鎖領域とから形成される。一個もしくは複数のmiRNAをオリゴヌクレオチドとハイブリダイズして、検出構造を生成する。いくつかの実施形態では、これらの検出構造は、(例えば、ライゲーション、またはRT−PCRなどの重合反応を通じて)miRNAが伸長することによって検出する。いくつかの実施形態では、これらの検出構造は、さらに、微小球、または他の表面、または構造などの固相支持体にコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドとハイブリダイゼーションすることによって検出する。いくつかの実施形態では、非miRNA成分は、伸長し、または別の核酸とライゲートし、そして直接的にまたは間接的に検出する。
【0103】
いくつかの実施形態では、検出構造を形成するのに使用するオリゴヌクレオチドは、一個もしくは複数のヌクレオチド類似体を含む。例えば、いくつかの実施形態では、2’−O−メチルヌクレオチドを使用する。本発明は、特定の機序に限定されない。実際、その機序を理解することは、本発明を実施する上で必ずしも必要ではない。それにもかかわらず、2’−O−メチル塩基が存在すると、ハイブリダイズした検出構造の安定性は増大し、それ以上の検出方法に役立つと考えられる。
【0104】
II.核酸の検出(例えば干渉RNA)
いくつかの実施形態では、本発明はmiRNAを検出する方法を提供する。本発明は、特定の検出アッセイに限定されない。それだけには限らないが、本明細書に開示した方法を含め、任意の適切な方法を使用してよい。
【0105】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、miRNA検出方法は定量的である。本発明は、特定の機序に限定されない。実際、その機序を理解することは、本発明を実施する上で必ずしも必要でない。それにもかかわらず、体内の特定のmiRNAのレベルは、その同族遺伝子からの遺伝子発現レベルに関連付けられると考えられる。従って、本発明は、特定の遺伝子[例えば疾患状態(例えば癌)または代謝に関与する遺伝子]の遺伝子発現と相関するmiRNAの方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、特定のmiRNAの異常な(例えば高もしくは低)レベル(例えば癌に伴うmiRNAの発現)が存在するかどうかを判定するために、[Calinら, Proc Natl Acad Sci USA, 99, 15524-15529 (2002)などを参照されたい。例えば実施例18および
図31に記載したオリゴヌクレオチドを使用する]、または介入(例えば薬物)がmiRNAの発現に与える効果を判定するために、本発明の方法を使用する。他の実施形態では、miRNAの発現系の効率を特徴付けるために、(例えば、発現ベクター、遺伝子導入構築体、形質移入などの)異種miRNAを検出する。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明は、特定のmiRNA(例えば、mir−1またはmir−135などのmiRNA)を検出する方法を提供する。他の実施形態では、本発明の方法を使用して、特定のmiRNAの変異体(例えば、多型または突然変異型)を識別する。さらに別の実施形態では、本発明は、miRNAの存在について試験する細胞を溶解する方法を提供する。
【0107】
A.INVADERアッセイ
いくつかの実施形態では、miRNAの検出にINVADERアッセイを使用する。いくつかの実施形態では、INVADERアッセイは、標的核酸の存在に依存する核酸切断構造を形成するステップ、および特徴的な切断生成物を遊離するために、核酸切断構造を切断するステップを含む。例えば5’ヌクレアーゼ活性を使用して、標的依存的切断構造を切断するが、その得られた切断生成物もしくは切断構造の切断物が、試料中の特異的標的核酸配列の存在を示す。1本もしくは2本の(またはそれ以上の)核酸鎖、またはオリゴヌクレオチドは、両方が標的核酸鎖にハイブリダイズし、その結果、重複する侵入的切断構造を形成すると、以下に記述するように侵入的切断が生じうる。切断剤(例えば、5’ヌクレアーゼ)と上流オリゴヌクレオチドの相互作用を通じて、特徴的なフラグメントを生成するような方式で、切断剤は、下流オリゴヌクレオチドを内部部位で切断できるようになる。そのような実施形態が、INVADERアッセイ(Third Wave Technologies)と呼ばれ、米国特許第5,846,717号、米国特許第5,985,557号、米国特許第5,994,069号、米国特許第6,001,567号、米国特許第6,090,543号、米国特許第6,348,314号、および米国特許第6,458,535号、WO 97/27214、WO 98/42873、Lyamichevら, Nat. Biotech., 17:292 (1999),Hallら, PNAS, USA, 97:8272 (2000)に記載されている。その各々は、あらゆる目的において、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0108】
INVADERアッセイは、構造特異的酵素によって特異的構造を酵素切断することによって、プローブと標的のハイブリダイゼーションを検出する[INVADERアッセイ、Third Wave Technologiesを参照。例えば、米国特許第5,846,717号、米国特許第6,090,543号、米国特許第6,001,567号、米国特許第5,985,557号、米国特許第5,994,069号、米国特許第6,090,543号、米国特許第6,348,314号、米国特許第6,458,535号、米国特許出願番号第20030186238号(第10/084839号)、米国特許出願番号第20030104378号A1(第09/864636号)、Lyamichevら, Nat. Biotech., 17:292 (1999)、Hallら, PNAS, USA, 97:8272 (2000)、WO 97/27214およびWO 98/42873を参照されたい。その各々を、あらゆる目的において、その全体を参照により本明細書に組み込む]。
【0109】
INVADERアッセイは、重複するオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションによって形成された複合体を切断する構造特異的酵素(例えばFENエンドヌクレアーゼ)の使用によって、特異的DNAとRNA配列を検出する(例えば、
図1を参照)。高温と過剰な1個のプローブによって、温度サイクリングなしに、存在する各標的配列用の複数のプローブを切断できるようになる。いくつかの実施形態では、次いで、これらの切断したプローブが、第二の標識したプローブの切断を指揮する。二次プローブオリゴヌクレオチドは、内部色素によって消光するフルオレセインで、5’末端標識することができる。切断されると、脱消光フルオレセイン標識した生成物は、標準蛍光プレートリーダーを使用し検出することができる。
【0110】
INVADERアッセイは、増幅物と同様に未増幅物の特異的配列、突然変異、およびSNP(例えば実施例19、
図32を参照)、RNA、およびゲノムDNAを含むDNAを検出する。
図1に概略的に示す実施形態では、INVADERアッセイでは、連続する2つの工程(一次および二次反応)が使用されるが、どちらも標的特異的シグナルを発生し、次いでこれを増幅する。便宜上、以下の考察では、たとえ、この用語法が全ての遺伝子の変化に当てはまらないとしても、対立遺伝子を野生型(WT)および突然変異体(MT)と記載する。一次反応(
図1パネルA)では、WT一次プローブとINVADERオリゴヌクレオチドが、標的核酸に直列でハイブリダイズして重複構造を形成する。WT一次プローブの5’末端に、不対「フラップ」が含まれる。構造特異的酵素(例えば、CLEAVASE酵素、Third Wave Technologies)が重複を認識し、不対フラップを切り離し、標的特異的生成物としてそれを放出する。二次反応では、この切断生成物が、WT蛍光共鳴エネルギー転移(WT−FRET)プローブで、INVADERオリゴヌクレオチドとして役立ち、再度構造特異的酵素によって認識される構造を形成する(パネルA)。1個のFRETプローブ上の2個の色素が、(
図1で矢印によって示す)切断によって分離すると、バックグラウンド蛍光で検出可能な蛍光シグナルが発生する。従って、この第二構造の切断によって蛍光が増大し、WT対立遺伝子(または検出可能なシグナルを発生させるために、突然変異対立遺伝子用にアッセイを構成した場合は突然変異対立遺伝子)の存在が示される。いくつかの実施形態では、1回の反応で異なる対立遺伝子もしくは遺伝子座を検出できるように、検出すべき各対立遺伝子もしくは遺伝子座用に、(例えば、発光もしくは励起波長の差異によって分析可能、または時間分解型蛍光検出によって分析可能な)異なる標識を有するFRETプローブを準備する。そのような実施形態では、1つのアッセイで一次プローブセットと異なるFRETプローブを混合すると、同じ試料中の各対立遺伝子もしくは遺伝子座から、そのシグナルの比較が可能になる。
【0111】
一次プローブオリゴヌクレオチドと標的ヌクレオチド配列が、切断部位で完全にマッチしない場合(例えば、MT一次プローブとWT標的のように、
図1パネルB)、重複構造は形成されず切断が抑制される。構造特異的酵素(例えば、CLEAVASE VIII酵素、Third Wave Technologies)を使用すると、非重複構造よりも効率よく(例えば、少なくとも340倍)重複構造が切断され、対立遺伝子を高度に判別できるようになる。
【0112】
プローブは、温度サイクリングなしにターンオーバーして、一個の標的につき多くのシグナルを発生する(すなわち直線的シグナル増幅)。同様に、各標的特異的生成物によって、多くのFRETプローブを切断できるようになる。
【0113】
一次INVADERアッセイ反応は、検出する標的DNA(またはRNA)を対象とする。標的DNAは、第一の侵入的切断では制限的成分である。INVADERと一次プローブがモル過剰で供給されるからである。第二の侵入的切断では、制限的なものは放出されたフラップである。これらの2つの切断反応を逐次実施すると、標的DNA量に関して複合体反応からの蛍光シグナルが直線的に蓄積する。
【0114】
ある実施形態では、INVADERアッセイまたは他のヌクレオチド検出アッセイは、利用可能部位で設計したオリゴヌクレオチドおよび/または橋掛けオリゴヌクレオチドを用いて実施する。そのような方法、手順、および組成は、米国特許第6,194,149号、米国特許第6,358,691号、米国特許第6355,437号、米国特許出願番号第09/882,945号、およびPCT出願WO 9850403、およびWO 0198537に記載されており、それらの全てはその全体を特に参照により組み込む。
【0115】
いくつかの好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドとその薬剤に、試料[例えば核酸配列{例えば干渉RNA(例えばmiRNAもしくはsiRNA)}]を曝露することには、前記標的配列が前記試料中に存在する場合、前記標的配列と前記オリゴヌクレオチド間に侵入的切断構造が形成される条件下で、オリゴヌクレオチドとその薬剤に試料を曝露するステップを含み、その際、前記切断剤によって前記侵入的切断構造は切断されて、切断生成物を形成する。
【0116】
いくつかの実施形態では、標的配列(例えばmiRNA)は、第一領域と第二領域を含み、その第二領域は第一領域の下流にあり近接し、オリゴヌクレオチドは、第一と第二オリゴヌクレオチドを含み、その際、第一オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的配列の第一部分に完全に相補的であり、第二オリゴヌクレオチドは3’部分と5’部分を含み、その5’部分は、標的核酸の第二部分に完全に相補的である。
【0117】
いくつかの好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドとその薬剤に試料を曝露することには、標的配列が試料中に存在する場合、標的配列とオリゴヌクレオチド間に侵入的切断構造が形成される条件下で、オリゴヌクレオチドとその薬剤に試料を曝露するステップを含み、その際、切断剤によって侵入的切断構造は切断されて切断生成物を形成する。
【0118】
いくつかの特に好ましい実施形態では、標的配列は、第一領域と第二領域を含み、前記第二領域は前記第一領域の下流にあり近接し、前記オリゴヌクレオチドは、第一と第二オリゴヌクレオチドを含み、その際、前記第一オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、前記標的配列の前記第一部分に完全に相補的であり、前記第二オリゴヌクレオチドは3’部分と5’部分を含み、前記5’部分は、前記標的核酸の前記第二部分に完全に相補的である。
【0119】
ある実施形態では、本発明は、INVADER検出試薬(例えば、一次プローブ、INVADERプローブ、およびFRETカセット)を使用し、プールした試料(例えば、プールした血液試料もしくはプールした細胞ライセート)をアッセイするキットを提供する。好ましい実施形態では、キットは、INVADERアッセイの実施方法、いくつかの実施形態では、多くの個体から得たプールした試料、または一対象から得た多くの細胞(例えば生検試料)の「プールした」試料に、INVADER検出アッセイを利用する方法についての使用説明書をさらに含む。
【0120】
本発明は、さらに、複数ラウンドのオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションおよびプローブの切断中、標的核酸が再利用もしくはリサイクルされるアッセイであって、温度サイクリング(すなわち、標的核酸鎖の周期的変性)または核酸合成(すなわち、標的鎖もしくはプローブ核酸鎖の重合に基づく置換)を使用する必要がないアッセイを提供する。標的鎖上でプローブが[例えば、プローブ−プローブ置換または、プローブ/標的の会合と分離の平衡、またはこれらの機序を含む組合せを通じて(Reynaldoら, J. Mol. Biol. 97: 511-520 (2000)]連続的に置換される条件下で切断反応を行なうと、複数のプローブを同じ標的にハイブリダイズすることができ、複数の切断と複数の切断生成物の生成が可能になる。
【0121】
INVADERアッセイ反応
INVADER DNAアッセイの好ましい実施形態では、2個のオリゴヌクレオチド(特徴的一次プローブとINVADERオリゴ)が、標的DNAに直列でハイブリダイズして重複構造を形成する。一次プローブの5’末端には、標的DNAにハイブリダイズしない5’−フラップが含まれる(
図1)。結合したINVADERオリゴヌクレオチドの3’−ヌクレオチドは、一次プローブに重複するが、標的DNAにハイブリダイズしなくてもよい(例えば、実施例15および16を参照)。CLEAVASE酵素は、この重複構造を認識し、一次プローブの不対5’−フラップを切り離し、標的特異的生成物としてそれを放出する。一次プローブは、融解温度が反応温度に近似するように設計されている。従って、等温アッセイ条件下では、過剰に提供された一次プローブは標的DNA上でサイクルされる。これにより、各標的DNAについて複数ラウンドの一次プローブの切断、および放出された5’−フラップ数の増幅が可能になる。
【0122】
二次反応では、それぞれの放出された5’−フラップは、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)カセットで、INVADERオリゴヌクレオチドとして役立ち、CLEAVASE酵素によって認識、切断される別の重複構造を形成することができる(
図1)。FRETカセットが切断されると、フルオロフォア(F)とクエンチャー(Q)が分離し、検出可能な蛍光シグナルが発生する。一次反応に類似して、放出された5’−フラップとFRETカセットは循環して、結果として蛍光シグナルが増幅する。一次および二次反応は、同じウェルで同時に行なう。
【0123】
二重(biplex)型式のINVADER DNAアッセイによって、単一ウェルで2個のDNA配列を同時に検出できるようになる(例えば、実施例17および19(L)を参照)。これには、(例えばmiRNA中)特定の多形の2変異体の検出が伴うことが極めて多い。二重型式では、それぞれ特有の5’−フラップを有する異なる2個の特徴的な一次プローブと、それぞれスペクトルが異なるフルオロフォアを有する異なる2個のFRETカセットが使用される。設計によっては、放出される5’−フラップは、その各々のFRETカセットのみに結合して標的特異的シグナルを発生する。
【0124】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明を実施するのに必要な成分の一個もしくは複数を含むキットを提供する。例えば、本発明は、本発明の酵素および/または切断アッセイ(例えば、INVADERアッセイ)を実施する必要な反応成分を貯蔵しまたは配達するキットを提供する。例として、そして任意の特定の成分構成もしくは成分の組合せに本発明のキットを限定する意図はないが、以下の節では、本発明を実施するためのキットの一実施形態について記載する。
【0125】
いくつかの実施形態では、本発明のキットは以下の試薬を提供する。
【0126】
CLEAVASE酵素 一次プローブオリゴ
DNA反応緩衝液1 INVADERオリゴ
FRETカセット1(例えばF)
FRETカセット2(例えばR)
突然変異体DNA対照
野生型DNA対照
「標的なし」ブランク対照
他の実施形態では、本発明のキットは、RNAを直接検出するため構成されている。このキットは、以下の試薬を提供しうる。
【0127】
CLEAVASE酵素 一次プローブ
オリゴヌクレオチド
DNA反応緩衝液1 INVADERオリゴ
FRETプローブ1(例えばF)
FRETプローブ2(例えばR)
二次反応標的1
二次反応標的2
ARRESTORオリゴヌクレオチド1
ARRESTORオリゴヌクレオチド2
突然変異体DNA対照
野生型DNA対照
「標的なし」ブランク対照
追加の考察は、1回の反応でオリゴヌクレオチドの特定の組合せから生じた望ましくない作用に関するものである。そのような一作用は、標的に依存しないバックグラウンドシグナルの発生である。他のものと組み合わさったある種のオリゴヌクレオチドは、INVADERアッセイで、検出する特定の標的の非存在下シグナルを発生しかねない。この作用を緩和するために、異なるプールにこれらのオリゴヌクレオチドの組合せを分離する方法を使用できる。同様に、ある種のオリゴヌクレオチドの組合せによって、所望の標的からのシグナルの発生を人工的に抑制することができる。繰り返すが、これらの組合せを異なるプールに分離することによって、この作用を緩和することができる。
【0128】
本明細書(例えば実験の節を参照)に示す反応設計および最適化のガイドラインを使用し、miRNA検出アッセイでの使用にプローブセットの設計(例えば、オリゴヌクレオチドおよび/またはそれらの配列)を適応させる。例えば、いくつかの実施形態では、より小さいハイブリダイゼーション領域に合わせて反応温度を(例えば50〜60℃に)低下させる。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明の方法を実施するために、本発明のキットは、使用者が揃えるべき追加成分(例えば試薬、供給物、および/または設備)のリストを提供する。例えば、そのような追加成分リストを任意の特定の成分に限定する意図はないが、そのようなリストの一実施形態には以下のものが含まれる。
【0130】
Clear CHILLOUT−14液体ワックス(MJ Research)またはRNase不含光学等級鉱油(Sigma、カタログ番号M−5904)
96穴ポリプロピレンマイクロプレート(MJ Research、カタログ番号MSP−9601)
滅菌1.5−mlまたは2.0−mlマイクロ遠心管
滅菌、DNase/RNase不含使い捨てエアロゾルバリアピペットチップ
マルチチャンネルピペット(0.5−10μl、2.5−20μl)
サーマルサイクラーまたは他の熱源(例えば、ラボ用オーブンまたは加熱ブロック)。
【0131】
諸研究室設備(試験管立て、マイクロピペッター、マルチチャンネルピペット、マイクロ遠心機、ボルテックスミキサー)。
【0132】
蛍光マイクロプレートリーダー(好ましいプレートリーダーは、上部読取り式であり光フィルターを備える)は以下の特性を有する。
【0133】
励起 発光
(波長/バンド幅) (波長/バンド幅)
485nm/20nm 530nm/25nm
560nm/20nm 620nm/40nm
いくつかの実施形態では、本発明の方法の性能を高めるために、本発明のキットは、使用者が揃えるべき任意選択成分(例えば、試薬、供給物、および/または設備)のリストを提供する。例えば、そのような任意選択成分リストを任意の特定の成分に限定する意図はないが、そのようなリストの一実施形態には以下ものが含まれる。
【0134】
滅菌8−チューブストリップまたはマイクロプレート(任意)
使い捨てプラスチックトラフ(任意)
プレートシーリングテープ(任意)
いくつかの実施形態では、本発明の方法の性能を高めるために、本発明のキットは、複数の代替物(例えば試料調製キット)も許容されるが、使用者が揃えるべき必要成分のリストを提供する。例えば、そのような任意選択成分リストを任意の特定の成分に限定する意図はないが、そのようなリストの一実施形態には以下ものが含まれる。
【0135】
QIAGEN QIAAMP Bloodキット
Gentra Systems PUREGENEキット
Gentra Systems GENERATION製品
キットのいくつかの実施形態に詳細なプロトコルを提供する。好ましい実施形態では、INVADERアッセイ反応を組み立てるプロトコル(例えば、製剤および反応混合物を作製する好ましい手順)を提供する。特に好ましい実施形態では、反応混合物を組み立てるプロトコルには、本発明の方法の性能での過誤の危険性を減少させる、コンピューター的または図式的補助物が含まれる(例えば、複数の反応に必要な試薬容量の計算を容易にする表、および多数のアッセイ反応を含めるための、マルチウェルアッセイプレートの構成に役立つプレートレイアウトガイド)。
【0136】
いくつかの実施形態では、補足的書類、例えば追加の試薬を調製し、または本発明の方法で使用する試料を調製するための補助的手順のプロトコルなどを提供する。好ましい実施形態では、補足的書類には、未熟練なもしくは不慣れな使用者が、本方法およびキットを首尾よく使用する助けとなるガイドラインおよび注意書きリストを含める。特に好ましい実施形態では、補足的書類には、故障点検ガイド、例えば、使用者が直面するであろう潜在的問題について記載し、そのような問題を解決しもしくは回避する際に、使用者に役立てるために示唆する解決策または修正案を提供するガイドが含まれる。
【0137】
好ましい実施形態では、一反応につき10−μl添加に相当する濃度に試料を希釈する。100−ng試料の濃度は15ng/μlである。
【0138】
B.ローリングサークル型複製
他の実施形態では、miRNA検出構造を検出するために、ローリングサークル型複製法(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)を使用する[例えば、米国特許第6,344,329号、米国特許第6,143,495号、米国特許第6,316,229号、米国特許第6,210,884号、米国特許第6,183,960号、および米国特許第6,235,502号を参照されたい。その各々を参照により本明細書に組み込む]。いくつかの実施形態では、ローリングサークル型複製は、miRNAとアニールする単一オリゴヌクレオチドの両端アニーリングから発生した、環状miRNA検出構造を検出するために使用される。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの両端は、重複することなくmiRNAとハイブリダイズする。このオリゴヌクレオチドは、miRNAの存在もしくは非存在下でライゲートさせることができる。しかし、ライゲーション反応は、miRNAの存在下でより効率的になる。そのような実施形態では、miRNAを含まない対照反応と、経時的に検出する環状分子レベルを比較する。
【0139】
他の実施形態では、侵入的切断構造を生成するために、端部を重複させてオリゴヌクレオチドの両端をmiRNAとハイブリダイズする。そのような構造は、ライゲーション前に切断され、それによって環状検出構造の生成特異性が改善される。
【0140】
ローリングサークル型増幅(RCA)には、環状一本鎖DNA分子の複製が伴う。RCAでは、ローリングサークル型複製プライマーは、環状核酸分子とハイブリダイズし、続いて鎖置換DNAポリメラーゼを使用する核酸分子のローリングサークル型複製が行なわれる。増幅は、1回反応サイクルではローリングサークル型複製中に生じる。ローリングサークル型複製によって、核酸配列の縦列反復を含む、大型DNA分子がもたらされる。このDNA分子を直列配列DNA(TS−DNA)と称する。
【0141】
いくつかの実施形態では、複製前にライゲーションの操作を伴うライゲーション媒介ローリングサークル型増幅(LM−RCA)が使用される。ライゲーションの操作では、プローブは、その同族標的核酸配列が存在する場合は、それとハイブリダイズし、続いてハイブリダイズしたプローブの両端をライゲーションして、共有結合で閉じた一本鎖核酸を形成する。ライゲーション後、ローリングサークル型複製プライマーは、プローブ分子とハイブリダイズし、続いて鎖置換DNAポリメラーゼを使用する環状分子のローリングサークル型複製が行なわれる。一般的に、LM−RCAは、開環プローブと標的試料を混合し、結果としてプローブ−標的試料混合物を得るステップ、およびその開環プローブと標的配列間のハイブリダイゼーションを促進する条件下で、そのプローブ−標的試料混合物をインキュベートするステップ、リガーゼとそのプローブ−標的試料混合物を混合し、結果としてライゲーション混合物を得るステップ、およびその開環プローブのライゲーションを促進する条件下で、そのライゲーション混合物をインキュベートして、増幅標的環(ATC)を形成するステップ、ローリングサークル型複製プライマー(RCRP)とそのライゲーション混合物を混合して、結果としてプライマー−ATC混合物を得るステップ、およびその増幅標的環とローリングサークル型複製プライマー間のハイブリダイゼーションを促進する条件下で、そのプライマー−ATC混合物をインキュベートするステップ、DNAポリメラーゼとそのプライマー−ATC混合物を混合し、結果としてポリメラーゼ−ATC混合物を得るステップ、およびその増幅標的環の複製を促進する条件下で、そのポリメラーゼ−ATC混合物をインキュベートするステップを含み、その際、その増幅標的環の複製によって直列配列DNA(TS−DNA)が形成される。
【0142】
C.追加の検出方法
本発明は、INVADERアッセイまたはローリングサークル型アッセイ検出に限定されない。miRNA検出構造の検出を可能にする任意の方法を使用してよい。本発明の方法に使用される例示的な限定しない検出アッセイを以下に記載する。
【0143】
1.ハイブリダイゼーションアッセイ
本発明のいくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーションアッセイを使用し検出構造を検出する。ハイブリダイゼーションアッセイでは、試料から得たDNAが相補DNA分子(例えばオリゴヌクレオチドプローブ)とハイブリダイズする能力に基づき、所与の核酸配列の有無を判定する。ハイブリダイゼーションおよび検出用の様々な技術を使用する、様々なハイブリダイゼーションアッセイを利用することができる。アッセイの選択について以下に記載する。
【0144】
a.「DNAチップ」アッセイを使用するハイブリダイゼーションの検出
本発明のいくつかの実施形態では、DNAチップハイブリダイゼーションアッセイを使用し配列を検出する。このアッセイでは、一連のオリゴヌクレオチドプローブを固相支持体に固定する。オリゴヌクレオチドプローブは、所与の標的配列(例えば検出複合体成分)に特有であるように設計されている。当該試料をDNA「チップ」と接触させ、ハイブリダイゼーションを検出する。
【0145】
いくつかの実施形態では、DNAチップアッセイは、GeneChip[Affymetrix,Santa Clara,CA;例えば、米国特許第6,045,996号、米国特許第5,925,525号、および米国特許第5,858,659号を参照されたい。その各々を参照により本明細書に組み込む]アッセイである。GeneChip技術では、「チップ」に固定したオリゴヌクレオチドプローブの小型化高密度アレイが使用される。プローブアレイは、Affymetrix社製光指向性化学合成法によって製造するが、その方法は、固相化学合成と、半導体業界で使用されるフォトリソグラフ製作技術を組み合わせている。チップの曝露部位を限定するために一連のフォトリソグラフマスク、続いて特異的化学合成ステップを使用し、その過程は、アレイの所定の位置に各プローブを配して、オリゴヌクレオチドの高密度アレイを構築する。大型ガラスウェーハ上に複数のプローブアレイを同時に合成する。次いで、ウェーハをダイシングして、射出成形したプラスチックカートリッジ中に個々のプローブアレイを封入するが、このカートリッジはプローブアレイを環境から保護し、かつハイブリダイゼーション用チャンバーとして役立つ。
【0146】
分析する核酸を単離し、PCRによって増幅し、蛍光レポーター基で標識する。次いで、フルーイディクスステーション(fluidics station)を使用し、標識DNAをアレイと共にインキュベートする。次いで、アレイをスキャナーに挿入し、そこでハイブリダイゼーションパターンを検出する。プローブアレイに結合させた標的に、既に組み込まれている蛍光レポーター基から発せられた光として、ハイブリダイゼーションデータを採取する。標的に完全適合するプローブは、ミスマッチを含むプローブよりも一般的に強力なシグナルを発する。アレイ上の各プローブの配列および位置は分っているので、相補性によって、プローブアレイに利用した標的核酸の同一性を定量することができる。
【0147】
他の実施形態では、電子的に捕捉したプローブを含むDNAマイクロチップ(Nanogen, San Diego, CA)を使用する[例えば、米国特許第6,017,696号、米国特許第6,068,818号、および米国特許第6,051,380号を参照されたい。その各々を参照により本明細書に組み込む]。マイクロエレクトロニクスの使用によって、Nanogen社の技術は、荷電分子の活性な動作および濃度が、その半導体マイクロチップ上の指定試験部位へ行き来するのを可能にするものである。所与の標的配列に特有なDNA捕捉プローブをマイクロチップ上の特異的部位に電子的に配置し、または「アドレス化」する。DNAは、強力な負電荷を有するので、正電荷領域に電子的に移動しうる。
【0148】
第一に、マイクロチップ上の試験部位もしくは試験部位列に、正電荷をかけて電子的に活性化させる。次に、マイクロチップ上にDNAプローブを含む溶液を導入する。負荷電プローブは、正電荷部位に急速に移動し、そこで濃縮され、マイクロチップ上の部位に化学的に結合する。次いで、マイクロチップを洗浄し、特異的に結合したDNAプローブのアレイが完成するまで、別個のDNAプローブの別の溶液を加える。
【0149】
次いで、DNA捕捉プローブのどれが、標的配列とハイブリダイズしているかを判定することによって、標的配列の存在について試験試料を分析する。マイクロチップ上の一個もしくは複数の試験部位に、標的分子を移動し濃縮させるために、電子電荷も使用される。各試験部位での試料DNAの電子濃縮は、試料DNAと相補的捕捉プローブの迅速なハイブリダイゼーションを促進する(ハイブリダイゼーションは数分で生じるであろう)。各部位からいかなる未結合DNAもしくは非特異的結合DNAも除去するために、その部位の極性もしくは電荷を負に逆転させ、それによっていかなる未結合DNAもしくは非特異的結合DNAも捕捉プローブから剥がして溶液に強制的に戻す。結合を検出するために、レーザーをベースにした蛍光スキャナーが使用される。
【0150】
さらに別の実施形態では、表面張力の差による平面(チップ)での液体分離に基づくアレイ技術(ProtoGene, Palo Alto, CA)を使用する[例えば米国特許第6,001,311号、米国特許第5,985,551号、および米国特許第5,474,796号を参照されたい。その各々を参照により本明細書に組み込む]。Protogeneの技術は、化学コーティングにより付与された表面張力の差により、液体が、平面で分離できるという事実に基づく。一度そのように分離されたならば、試薬をインクジェット印刷することによって、オリゴヌクレオチドプローブを直接チップ上に合成する。表面張力によって定義したその反応部位を備えたアレイを、4個の圧電ノズルセットの下、X/Y翻訳ステージ上にマウントするが、4個の標準的DNA塩基の各々について1個のノズルである。翻訳ステージは、アレイ列の各々に沿って移動し、反応部位の各々に好適な試薬を配達する。例えば、Aアミダイトは、アミダイトAがその合成ステップ中に結合する部位のみに配達され、以下同様である。一般的試薬の配薬および洗浄は、表面全体に流し込み、次いで遠心分離除去することによって行なう。
【0151】
Protogeneの技術を使用し、当該標的配列(例えば検出複合体成分)に特有なDNAプローブをチップに固定する。次いで、チップをPCR増幅した当該遺伝子と接触させる。ハイブリダイゼーション後、未結合DNAを除去し、任意の適切な方法(例えば、組み込み蛍光基の蛍光脱消光によって)を使用してハイブリダイゼーションを検出する。
【0152】
さらに別の実施形態では、多型の検出に「ビーズアレイ」を使用する[Illumina, San Diego, CA;例えばPCT公開WO 99/67641およびWO 00/39587を参照されたい。その各々を参照により本明細書に組み込む]。Illuminaは、光ファイバー束と、アレイに自己組織化するビーズを組み合わせたビーズアレイ技術を使用している。各光ファイバー束には、束の径に応じて数千から数百万の個々の繊維が含まれる。所与のSNPもしくは突然変異体の検出に特異的なオリゴヌクレオチドでビーズをコートする。ビーズのバッチを混合して、そのアレイに特異的なプールを形成する。アッセイを実施するために、調製した対象試料(例えば核酸試料)にビーズアレイを接触させる。任意の適切な方法を使用し、ハイブリダイゼーションを検出する。
b.酵素的ハイブリダイゼーションの検出
本発明のいくつかの実施形態では、特異的構造の酵素切断によってハイブリダイゼーションを検出する。
【0153】
いくつかの実施形態では、TaqManアッセイ[PE Biosystems, Foster City, CA;例えば米国特許第5,962,233号および米国特許第5,538,848号を参照されたい。その各々を参照により本明細書に組み込む]を使用し、結合したプローブのハイブリダイゼーションを検出する。アッセイは、PCR反応中に実施される。TaqManアッセイは、AMPLITAQ GOLD DNAポリメラーゼの5’−3’エクソヌクレアーゼ活性を利用する。所与の対立遺伝子もしくは突然変異体に特異的なプローブがPCR反応に含まれる。プローブは、5’−レポーター色素(例えば蛍光色素)と3’−クエンチャー色素を有するオリゴヌクレオチドからなる。PCR中、プローブがその標的に結合した場合、AMPLITAQ GOLDポリメラーゼの5’−3’核酸分解活性によって、レポーター色素とクエンチャー色素間でプローブが切断される。クエンチャー色素からレポーター色素が分離すると、蛍光が増大する。PCRの各サイクルでシグナルは蓄積し、蛍光計でモニターすることができる。
【0154】
さらに別の実施形態では、SNP ITプライマー伸長法アッセイ[Orchid Biosciences, Princeton, NJ;例えば米国特許第5,952,174号および米国特許第5,919,626号を参照されたい。その各々を参照により本明細書に組み込む]を使用して多型を検出する。このアッセイでは、特別に合成したDNAプライマーとDNAポリメラーゼを使用して、推測されるSNP位置で、一塩基によってDNA鎖を選択的に伸長することによって、SNPを同定する。当該領域中のDNAを増幅し変性する。次いで、マイクロフルイディクスと称する小型化されたシステムを使用し、ポリメラーゼ反応を実施する。標的配列位置と推測されるヌクレオチドに標識を付加することによって検出を行なう。DNA中への標識の取り込みは、任意の適切な方法によって検出することができる(例えば、ヌクレオチドが、ビオチン標識を含む場合、検出は、蛍光標識したビオチン特異的抗体による)。
【0155】
2.他の検出アッセイ
miRNA検出構造の検出に有用な別の検出アッセイには、それだけには限らないが、以下のものが含まれる。酵素ミスマッチ切断方法[例えばVariagenics、米国特許第6,110,684号、米国特許第5,958,692号、米国特許第5,851,770号、その全体を参照により本明細書に組み込む]、ポリメラーゼ連鎖反応[例えば、実施例19および
図32を参照]、分枝ハイブリダイゼーション法[例えば、Chiron、米国特許第5,849,481号、米国特許第5,710,264号、米国特許第5,124,246号、および米国特許第5,624,802号。その全体を参照により本明細書に組み込む]、NASBA[例えば米国特許第5,409,818号。その全体を参照により本明細書に組み込む]、分子ビーコン技術[例えば米国特許第6,150,097号、その全体を参照により本明細書に組み込む]、E−センサー技術[Motorola、米国特許第6,248,229号、米国特許第6,221,583号、米国特許第6,013,170号、および米国特許第6,063,573号、その全体を参照により本明細書に組み込む]、サイクリングプローブ技術[例えば米国特許第5,403,711号、米国特許第5,011,769号、および米国特許第5,660,988号、その全体を参照により本明細書に組み込む]、Dade Behringシグナル増幅法[例えば米国特許第6,121,001号、米国特許第6,110,677号、米国特許第5,914,230号、米国特許第5,882,867号、および米国特許第5,792,614号、その全体を参照により本明細書に組み込む]、リガーゼ連鎖反応[Barnay Proc. Natl. Acad. Sci USA 88, 189-93 (1991)]、およびサンドイッチハイブリダイゼーション法[例えば米国特許第5,288,609号、その全体を参照により本明細書に組み込む]。
【0156】
実験
本発明のある好ましい実施形態および態様を実証し、さらに例示するために、以下の実施例を提供するが、その範囲を制限するものとは解釈されない。
【実施例1】
【0157】
材料および方法
以下の終濃度を実施例1〜18の全ての反応に使用した(本明細書中にて特に明記しない限り)。
【0158】
プローブ=1μM
INVADER=1μM
ARRESTOR=2.67μM
CLEAVASE XII酵素=30ng
合成miRNAオリゴヌクレオチドは全て、Dharmaconから購入し、20%変性アクリルアミドでゲル精製した。合成miRNAを使用して、温度最適条件(以下を参照)およびLODを決定した。
【0159】
別段の指示が無い限り、一体型DNA技術(IDT:Integrated DNA Technologies)またはThird Wave Technologiesによって、INVADERオリゴヌクレオチド、プローブオリゴヌクレオチド、およびARRESTORオリゴヌクレオチドを合成し、20%変性アクリルアミドで精製した。
【0160】
全ての反応に、(別段の記載が無い限り)以下の2.5×一次反応緩衝液を使用した。
【0161】
25mM MOPS(pH7.5)
62.5mM KCl
0.125% Tween 20
0.125% Nonidet NP40
62.5mM MgSO
4
5% PEG
別段の記載が無い限り、最初の熱インキュベーション前に、全ての反応は10μlの鉱油で被覆した。
【0162】
別段の記載が無い限り、合成miRNAには5’OHを含めた。5’リン酸化合成miRNA標的 対 非リン酸化合成miRNA標的の検出比較実験により、これら2個の異なるタイプの合成分子を検出するINVADERアッセイの能力に、有意差はないことが示唆された。
【実施例2】
【0163】
let−7およびmir−1について温度最適化実験
let−7に対するオリゴヌクレオチドの設計を
図5に示す。mir−1に対するオリゴヌクレオチドの設計を
図5に示す。以下の一次混合物を作製し、96穴プレート中50℃±10℃で30分間インキュベートした。さらに、標的基本混合物は調製しなかった(RNAの代わりにH
2Oの添加)。全反応を鉱油で覆って蒸発を防いだ。
【表1】
【0164】
一次反応完了後、以下の二次反応混合物の5μlを加え、次いで反応を60℃で10〜15分間反応インキュベートした。
【表2】
【0165】
反応の完了後、CYTOFLUOR 4000蛍光マイクロプレートリーダーで、励起波長485nmおよび発光波長530nmを使用し、プレートを読み取った。結果を
図6および7に示す。INVADERオリゴヌクレオチドの3’末端が2’−O−メチル化されていると、miRNA3’末端へのINVADERオリゴヌクレオチド5’末端の積層は強化される。さらに、INVADERオリゴヌクレオチド5’末端の2’−O−メチル化によって、反応温度は上昇する。INVADERオリゴヌクレオチドの2’−O−メチル化塩基が、miRNAの最初の2個の塩基と塩基対を形成するように、それらの2’−O−メチル化塩基を伸長すると[let−7aの配列番号9(1496−96−01R)の設計で配列番号8(1496−96−02) 対 配列番号23(1496−96−03)]、記載の反応の最適温度は上昇するが、検出は強化されない。
【実施例3】
【0166】
let−7およびmiR−1についてLOD実験
プローブオリゴヌクレオチドとINVADERオリゴヌクレオチドの各セットについて最適の反応温度を決定し、(温度最適化正味シグナル(net signal)から)最良の作業設計を決定した後、合成RNAを使用する設計のLODを定量するために以下の実験を準備した。以下の反応混合物を96穴プレートに分注した(以下のプレート設定を参照)。各ウェルには次のものが含まれる。
【表3】
【0167】
以下の設定を使用し、三つ組または四つ組で、以下の濃度のmiRNAを2.5μl加えた。
【表4】
【0168】
プレートに鉱油(10μl)を重層し、50℃で2時間インキュベートした。一次反応完了後、以下のものを5μl各ウェルに加え、そのプレートを60℃で1.5時間インキュベートした。上記の設定を使用しプレートを読み取った(実施例2を参照)。
【表5】
【0169】
次に、ヒトRNA試料で、let−7およびmir−1のLODを試験した。上記プロトコルを使用した。組織特異的全ヒトRNA試料(Clonetech, Palo Alto, CA)を50〜100ng使用した。結果を
図8および10に示す。全RNAを使用すると、組織源に応じてlet−7a発現レベルで以前に見られたものと、同じ組織発現プロフィールが、let−7a INVADERアッセイによって検出される[Pasquinelliら, 408:86 (2000)]。
【実施例4】
【0170】
let−7a、c、e、およびfの交差反応性実験
この実施例は、別の下位型の代わりに1個の下位型let−7に対する、プローブおよび/またはINVADERオリゴヌクレオチドの交差反応性の分析について記載する。実施例3に記載した合成let−7a miRNAの設定のプロトコルを使用した。
図5にオリゴヌクレオチドの設計を示す。以下のプレートの設定を使用した。
【表6】
【0171】
結果を
図9に示す。Let−7aの設計では、miRNAがその切断部位から離れて一塩基変化を有するものと同じ長さであるとき、交差反応性は最高である。すなわち、INVADERオリゴヌクレオチド/miRNAハイブリダイズ領域でのミスマッチは、それが、切断部位から最も離れているときに(let−7c)、高い交差反応性が得られる。塩基変化が切断部位の反対(または近似)にあるとき、交差反応性は最低である。Let−7aでは、最悪の交差反応性はlet−7cで得られ、そのシグナルの25%である。INVADERアッセイによって、極めて類似するmiRNA同士を弁別できることをこの実施例は実証する。
【実施例5】
【0172】
CLEAVASE IX酵素 対CLEAVASE XII酵素
この実施例は、miRNAアッセイで使用するCLEAVASE酵素の最適化について記載する。上記の温度最適化プロトコルを使用した。CLEAVASE IX酵素(Third Wave Technologies, Madison, WI)20ngまたはCLEAVASE XII酵素(Third Wave Technologies, Madison, WI)30ngを使用した。CLEAVASE IX酵素に以下の緩衝液を使用した。
【0173】
2.5×一次反応緩衝液:25mM MOPS(pH7.5)、250mM KCl、0.125% Tween 20、0.125% Nonidet NP40、31.25mM MgSO
4、10% PEG。
7.5×二次反応緩衝液:87.5mM MgSO
4
【0174】
CLEAVASE XII酵素に以下の緩衝液を使用した。
【0175】
2.5×一次反応緩衝液:25mM MOPS(pH7.5)、62.5mM KCl、0.125% Tween 20、0.125% Nonidet NP40、62.5mM MgSO
4、5% PEG。
7.5×二次反応緩衝液:H
2O
【0176】
CLEAVASE IXまたはXII酵素を用いてLOD実験プロトコルを使用した。両酵素についてLODを定量した。結果を
図11に示す。
【0177】
CLEAVASE IX酵素またはCLEAVASE XII酵素によりアッセイしたとき、増加量のlet−7 miRNAにより、シグナルは直線的に増大した。しかし、R
2値はCLEAVASE XII酵素で高く、高い直線性が示された。さらに、LODはCLEAVASE XII酵素で低かった。2.5amoleの検出の正味シグナルは、CLEAVASE IX酵素で20カウント、そしてCLEAVASE XII酵素で66.75カウントであった。
【実施例6】
【0178】
miR−135、GAPDHとU6 RNA
A.miR135を検出するためのオリゴヌクレオチドの設計
この実施例は、miRNA miR135のアッセイ設計およびLODの定量について記載している。miR−1について実施例2および3に記載したように実験を実施した。オリゴヌクレオチドの設計を
図5に記載する。mir−135 miRNAの検出に、設計(A〜D)のそれぞれで、異なるINVADERオリゴヌクレオチドとプローブオリゴヌクレオチドを利用する。設計の全て性能を比較する温度最適化実験の結果を
図13に示す。設計Dで最高シグナルが示された。アッセイ設計Dを使用するLOD実験の結果を
図14に示す。
【0179】
図14Aは、表示した標的濃度のそれぞれで、4回の反復アッセイから発生した未処理数を示す。各標的濃度で得られた平均カウントを、正味シグナルおよび「0を超える倍数」(FOZ:fold-over-zero)として示す。この実験でmiR−135標的の検出限界は、98,743分子に等しい164zmoleであった。
図14Bに各濃度で得られた平均カウントグラフを含めるが、試験した濃度範囲のほとんど全体にわたって、INVADERアッセイが直線的であったことを示す。
【0180】
B.GAPDHとU6 RNAを検出するためのオリゴヌクレオチドの設計
状況によっては、例えば、二重アッセイでは、組織特異的方式で発現する可能性がある一種もしくは複数のmiRNA種に加えて、一般的に一定のレベルで全細胞中に存在するRNAを共検出するのが望ましいこともあり得る。従って、一般的に全細胞型に見られる2個の別個のRNA:ヒトグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(hGAPDH)とU6 RNAに対して、INVADERアッセイを設計した。
【0181】
hGAPDHの場合には、二重miRNA検出アッセイで以下のオリゴヌクレオチドを使用した。INVADERオリゴヌクレオチド(配列番号41)、プローブ(配列番号42)、ARRESTORオリゴヌクレオチド(配列番号43)、SRTオリゴヌクレオチド(配列番号49)、FRETオリゴヌクレオチド(赤色素)(配列番号48)。
【0182】
U6の場合には、「ユニバーサル」INVADERアッセイの設計に適切な領域を同定するために、C.エレガンスからマウス、シロイヌナズナ、ヒトに至る8種の異なる種のU6 RNAの配列アライメント。アライメントを
図12に示す。この配列を検出するために形成したオリゴヌクレオチド配列は配列番号93〜95である。
【0183】
配列番号45〜47を使用し、細胞ライセートでこれらのオリゴヌクレオチドを用いて実施した初期実験では、U6反応からのシグナルが、miRNAのシグナルの前に十分飽和に達したことが実証されたが、おそらく細胞中の大量のU6 RNAのためと思われる。従って、プローブとINVADERオリゴヌクレオチドの濃度を希釈することによって、INVADERとプローブの最終濃度範囲が1μM〜12.5nMである、二重miRNA検出アッセイでの使用に、このプローブセットが適切なものになるかどうかを判定するために、滴定反応を実施した。終濃度が12.5〜50nMであるINVADERオリゴヌクレオチドとプローブオリゴヌクレオチドが、miR−1dとlet−7aの二重miRNA検出に適切であった。ARRESTOR、SRT、およびFRETプローブの濃度は、先の実施例に記載した。さらなる実験によって、「ユニバーサル」U6 RNAオリゴヌクレオチド(配列番号93〜95)でU6 RNAを検出することは、配列番号45〜47で検出することに匹敵することが実証されている。
【実施例7】
【0184】
細胞ライセート中のlet−7、GAPDH、およびU6 RNAの検出
A.細胞ライセート中のlet7aの検出
この実施例は、直接全細胞RNA中、およびヒト骨肉腫細胞系、MG63(Third Wave Technologies, Madison, WI;カタログ番号CRL−1427)から得た未誘発線維芽細胞中のlet−7 miRNAの検出について記載している。TRIZOL(Gibco-BRL)を使用し、先に述べた通り[Chomczynskiら, Anal. Biochem. 162: 156-156 (1987)]全細胞RNAを抽出し、かつEisら, Nature Biotechnology, 19: 673-6 (2001)に記載されているように細胞ライセートを調製した。両刊行物を参照により本明細書に組み込む。
【0185】
以下のように反応を準備した。マイクロタイタープレートの好適なウェルに、細胞ライセート5μlのアリコート、表示濃度で溶解緩衝液[Eisら, Nature Biotechnology, 19: 673-6 (2001)]に含まれている合成miRNA標的、または20ng/μl tRNA(標的無対照用)5μlをピペットで取り入れた。以下の試薬を含む96反応用に一次反応基本混合物を作製した。
【表7】
【0186】
好適な標的もしくは対照を含むウェルに、一次反応基本混合物の5μlのアリコートを加えた。プレートに鉱油(10μl)を重層し、53℃で2時間インキュベートした。一次反応完了後、以下のものの5μlを各ウェルに加え、そのプレートを60℃で1.5時間インキュベートした。上記の設定を使用しプレートを読み取った(実施例2を参照)。
【表8】
【0187】
全標的を四つ組でアッセイした。全RNAと細胞ライセートについてアッセイした、異なる数の細胞から得られた平均カウントを
図15にプロットした。既知量の合成let−7a miRNAによるINVADERアッセイから得られた検量線を使用して、細胞当たりlet−7aコピー数を推定した。Eisら, Nature Biotechnology, 19: 673-6 (2001)(参照により本明細書に組み込む)に記載されているように、細胞溶解前の播種手順中に、細胞ライセートを作製した細胞数を定量した。この実験では、156細胞から得た全RNA抽出物で、細胞ライセートの検出限界に到達した。
【0188】
B.Mg++不存在下での溶解
代替の溶解手順を以下のように開発した。上記溶解手順を使用したとき、長鎖mRNA、すなわちGAPDHの長鎖mRNAは、推定した量では検出されないことに留意した。ライセート中のRNA抽出に及ぼすMg
++の影響を検査するために実験を実施した。この実施例中上記のTRIZOLを使用し調製した全細胞RNA抽出物と、MgCl
2の存在もしくは非存在下で溶解している抽出物とを比較した。
【0189】
100mM KClを加えた10mM MOPS緩衝液(pH7.5)の溶液100μlに、Hela細胞(7.5×10
6細胞)を懸濁させた。アリコート10μlを別々のチューブに加え、以下のように調製した異なる2種の溶解緩衝液100μlで溶解した。
【表9】
【0190】
次いで、全チューブを80℃で15分間インキュベートして細胞を溶解し、次いでペレット片に遠心分離した。以下のように、様々なライセートの5μlのアリコートをINVADER反応に加えた。
【0191】
一次INVADER反応は、let−7aについて上記した通りであった。PIオリゴヌクレオチド混合物をGAPDH(配列番号41〜43)およびU6(50nM終濃度で配列番号45〜47)用に作製した。
【表10】
【0192】
*一次INVADER反応は、let−7aについて上記した通りであった。PIオリゴヌクレオチド混合物をGAPDH(配列番号41〜43)およびU6(50nM終濃度で配列番号45〜47)用に作製した。
【0193】
一次反応混合物を49℃で1時間インキュベートした。次いで、以下の二次反応混合物のアリコートを加えた。
【表11】
【0194】
二次反応混合物には、実施例7Aに示した濃度で、SRT(let−7用に配列番号22;GAPDHとU6用に配列番号49)標的、FRETオリゴヌクレオチド(let−7用に配列番号21;GAPDHとU6用に配列番号48)、ARRESTOR(let−7用に配列番号7、GAPDH用に配列番号43、およびU6用に配列番号47)を含めた。
【0195】
二次反応を60℃で1時間実施した。実施例2に記載したように、CYTOFLUORマイクロプレートリーダーで反応を読み取った。結果を
図16に示すが、結果からGAPDHシグナルの存在は、溶解緩衝液にMg++が存在しないことに依存するが、U6 RNAシグナルは、Mg++の存在にも関わらず比較的一定に保たれていることが示唆される。追加の実験によって、Mg++非存在下での溶解から得たものと匹敵するレベルで、全てのRNAは、全細胞RNA中で検出可能であったことが確認された。
【実施例8】
【0196】
様々なmiRNAを検出するための代替INVADERアッセイの設計
A.let−7A検出用の代替設計
この実施例は、let−7a miRNAを検出するための代替オリゴヌクレオチドの設計の作成および試験について記載している。一連の実験では、INVADERオリゴヌクレオチドとプローブオリゴヌクレオチドの標的特異的領域が11ヌクレオチド長である、代替の設計セットを作製した。プローブオリゴヌクレオチドの標的特異的領域が10ヌクレオチド長であり、INVADERオリゴヌクレオチドの標的特異的領域が12ヌクレオチド長である、第二の設計セットを作製した。
【0197】
1.オリゴヌクレオチドの設計
a.11−merプローブとINVADERオリゴヌクレオチドの設計
図5には、プローブオリゴヌクレオチドとINVADERオリゴヌクレオチドの標的特異的領域が11ヌクレオチド長である、let−7a miRNAを検出するための代替オリゴヌクレオチドの設計セットを示す。配列番号50〜51に、INVADERオリゴヌクレオチドとプローブオリゴヌクレオチドが直線的である設計を示す。配列番号6は、ステムループ構造を形成するプローブオリゴヌクレオチドを含み、配列番号5は、ステムループ構造を形成するINVADERオリゴヌクレオチドを含み、配列番号5〜6は、ステムループを有する、プローブオリゴヌクレオチドとINVADERオリゴヌクレオチドを含む。
【0198】
b.10−merプローブおよび12−mer INVADERオリゴヌクレオチドの設計
図5には、プローブの標的特異的領域が10ヌクレオチドを含み、INVADERオリゴヌクレオチドの標的特異的領域が12ヌクレオチドを含む、let−7a miRNAを検出するための代替オリゴヌクレオチドの設計セットを示す。配列番号52〜53に、INVADERオリゴヌクレオチドとプローブオリゴヌクレオチドが直線的である設計を示す。配列番号2は、ステムループ構造を形成するプローブオリゴヌクレオチドを含み、配列番号1はステムループ構造を形成するINVADERオリゴヌクレオチドを含む。
【0199】
2.let−7a miRNAを検出するための代替オリゴヌクレオチド設計の温度最適化プロフィール
以下のように温度最適化実験を実施した。24反応用に基本混合物を作製した。各反応に以下のものを含めた。
【表12】
【0200】
図16〜17に示すように、この実験では、プローブオリゴヌクレオチドとINVADERオリゴヌクレオチドの様々な組合せを使用した。
【0201】
二次反応混合物は、let−7について実施例3に記載した通りであった。適宜、ループ全体と、プローブの標的特異的領域と、およびプローブの5’末端に向って伸長する6塩基とに相補するARRESTOR配列を作製した。
【0202】
11−mer温度最適化実験の場合には、実施例2に記載したように、50℃±9℃で1時間一次反応を実施し、続いて60℃で15分間の二次反応を実施した。10−merプローブに関して、12−mer INVADERオリゴを用いて、50℃±9℃で15分間一次反応を実施し、続いて二次反応を60℃にて15分間実施した。
【0203】
INVADERオリゴヌクレオチドとプローブオリゴヌクレオチドの標的特異的部分が11ヌクレオチド長である設計の結果を
図18に示す。
図18Aは、各設計の温度最適化プロフィールを示す。
図18Bは、それぞれの最適温度を含む各設計の規準化した最高性能を示す。プローブオリゴヌクレオチドの標的特異的部分が10塩基であり、INVADERオリゴヌクレオチドの標的特異的部分が12塩基である設計の結果を
図19に示す。
図19Aは、温度最適化プロフィールを示し、
図19Bは、各設計の規準化した最高性能を示す。
【0204】
これらの結果を検証すると、どの設計が最高性能をもたらすかは、反応条件と、形成されたmiRNA−オリゴヌクレオチドハイブリッドの相対的安定性に応じて変化することが示唆される。例えば、両オリゴヌクレオチドの標的特異的領域が11塩基長である場合、プローブの標的特異的領域のTmは49℃であり、INVADERのTmは37℃であると予想される。この場合、INVADERオリゴヌクレオチド−miRNAの相互作用を安定化させることによって、この設計でアッセイ性能が向上する。しかし、プローブが10−merであり、INVADERオリゴヌクレオチドが12−merであるlet−7a設計では、2個のオリゴヌクレオチドの標的特異的領域のTmはおよそ同等である。この場合は、両オリゴヌクレオチドがループを形成している設計が最も優れた働きをする。
【0205】
3.2個の代替設計を使用するlet−7aのLOD
実施例3に記載したように、INVADERオリゴヌクレオチドがステムループ構造を形成する、二重ループ設計と単一ループ設計のLODを比較するために実験を準備した。
【0206】
LODを定量する反応は四つ組で実施した。反応混合物には以下の試薬(終濃度)を含めた。
【表13】
【0207】
図20に示す終濃度の反応混合物を含むウェルに、miRNAの5μlのアリコートを加えた。実施例8Bで決定したように設計した各々について、一次反応を最適温度で1.5時間実施した(ループを形成したINVADERオリゴヌクレオチドの設計には50℃、二重ループの設計には53℃)。実施例2および3に記載したように二次反応を準備し、60℃で1時間行なった。
【0208】
図20の結果は、miRNAのモル関数として発生した正味シグナルを示している。プロットの直線範囲は、二重ループ設計からよりも、INVADERループ設計を使用する所与量のmiRNAから、より多くのシグナルが発生したことを示している。同様に、
図20の表の検証から、各miRNAレベルのfold-over-zero値は単一ループ設計の方が高いことが分る。両設計によって、試験した最低濃度で、約16,000分子に等しい2.68×10
−20モル、すなわち26.8ゼプトモルで十分なFOZが得られた。
【0209】
4.全長対短縮ARRESTORオリゴヌクレオチド
例えば、
図4および12に示すように、全長ARRESTOR分子の相対的性能を評価するために実験を行ったが、その際、ARRESTOR分子は、プローブのmiRNA特異的領域の長さ全体と、5’フラップ領域中に、ループ周囲のその5’末端を伸長し、それに対して短縮ARRESTOR分子は、プローブのmiRNA特異的領域と5’フラップの一部にのみ相補的であるが、ループ領域中に、またはそれを超えて伸長することはない。合成let−7a miRNAを検出するために、以下のように反応を準備した。
【表14】
【0210】
マイクロタイタープレートの好適なウェルに、一次反応混合物の6μlのアリコートを加え、続いて下表に示した終濃度で合成let−7a miRNAの4μlのアリコートまたはdH
2O中10ng/μl tRNAを4μl加えた。一次INVADER反応を53℃で1.5時間インキュベートした。
【0211】
以下のように、二次反応混合物のアリコートを加えた。
【表15】
【0212】
二次反応を60℃で1.5時間インキュベートした。実施例2に記載したように、マイクロタイタープレートを読み取った。結果を
図17に示した。
【0213】
これらの結果は、二次INVADER反応に、プローブのmiRNA特異的部分に相補的な、全長もしくは短縮ARRESTORオリゴヌクレオチドを使用した場合、シグナルの発生または検出限界に著しい差異はないことを示している。
【0214】
B.直鎖プローブオリゴヌクレオチドとINVADERオリゴヌクレオチドを使用する代替設計
プローブオリゴヌクレオチドとINVADERオリゴヌクレオチドが、ユニバーサル配列を含み、どちらのオリゴヌクレオチドもヘアピンを形成しない代替設計を試験した。設計図を
図4に示す。ユニバーサル配列は、INVADERオリゴヌクレオチドの5’末端、およびプローブオリゴの3’末端に存在する。短い相補的「捕捉」オリゴヌクレオチドを付加し、2’−O−メチル残基を含めると、miRNA(例えば配列番号60)の存在下で、同軸性の積層が促進されるようになる。miR−15(配列番号58〜59および61)およびmir−135(配列番号63〜65)用に設計を作成する。miRNA標的の非存在下では、非特異的バックグラウンドシグナルは高くなるが、それにもかかわらず初期設計は、そのようなユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチドで、miRNAを検出することも可能であることを示唆している。
【実施例9】
【0215】
ループ中のヌクレオチド残基の2’−O−メチル化の効果
この実施例は、miRNAを検出するのに使用するプローブオリゴヌクレオチドとINVADERオリゴヌクレオチド中に組み込まれた2’−O−メチル残基の一部もしくは全てに、2’−デオキシ残基を置換する効果を評価することを目標とした実験について記載している。実施例2に記載したように、前記実施例に示した設計の全ては、ループ領域に2’−O−メチル残基を含む。let−7a miRNAを検出するように設計したINVADERオリゴヌクレオチドとプローブオリゴヌクレオチド中の2’−O−メチル残基の一部もしくは全てに、2’デオキシ残基を置換する効果を試験するために実験を行った。
【0216】
図5は、改変したlet−7a設計を示す。実施例2に記載したように、配列番号5〜6は2’−O−メチル残基を含む。配列番号73〜74の設計は、全ての位置に2’デオキシ残基を含み、配列番号75〜76の設計は、標的に隣接するステム部分に2’−O−メチル残基を含む。
【0217】
異なる3個の設計のシグナルの発生と温度最適条件を比較するために、INVADER反応を準備した。反応は、実施例8のLOD実験に記載した通りであり、100pM合成miRNA、1μMプローブ、および10μM INVADERオリゴヌクレオチドを含めた。一次反応を示した温度で15分間実施し、二次反応を60℃で5分間実施した。
【0218】
INVADERアッセイの結果を
図21に示すが、ステムループ構造が2’−O−メチル残基を含む設計が最もシグナルを発生し、標的に隣接する塩基が2’−O−メチル残基を含む設計がそれに続くことが示唆される。2’−デオキシ残基を全体的に含むオリゴヌクレオチドが、最低レベルのシグナルを発生した。
【0219】
以下のように追加の設計変化を試験するために、さらなる実験セットを設計した。短いヘアピンを有する、プローブオリゴヌクレオチドとINVADERオリゴヌクレオチド;より安定したループもしくは別法として短いループを有する、プローブオリゴヌクレオチドとINVADERオリゴヌクレオチド;あるいは3個の2’−O−メチル残基のみを有する、プローブオリゴヌクレオチドとINVADERオリゴヌクレオチド。miR−15の検出を試験するために、以下のように一次反応を準備した。
【0220】
以下のプローブ/INVADERオリゴヌクレオチドの組合せを試験した。
【表16】
【0221】
以下のように、一次反応混合物を作製した。
【表17】
【0222】
合成miR−15RNA5μlに以下の最終量:0、0.1amole、0.33amole、1.09amoleで、一次反応混合物の5μlのアリコートを加えた。一次反応を52.5℃で2時間インキュベートした。
【0223】
以下のように、二次反応混合物を作製した。
【表18】
【0224】
5μlのアリコートを加え、反応を60℃で45分間インキュベートした。相対的蛍光単位(RFU)の結果を以下に示す。
【表19】
【0225】
これらの結果から、プローブオリゴヌクレオチドが短縮したヘアピンを含み、かつ高度に安定したテトラループが、元のINVADERオリゴヌクレオチド設計と組み合せて2’−O−メチル残基を含む設計(2’−O−メチル残基、TTTTループ、長いヘアピン)が、多少高めのFOZ値を生成しうることが示唆される。他の方法では、代替設計オリゴヌクレオチドセットのどれも、元の設計にいかなる改善ももたらさなかった。全DNA (all-DNA)INVADERオリゴヌクレオチドと、元のキメラプローブオリゴヌクレオチドとの組合せによって、キメラプローブオリゴヌクレオチドとINVADERオリゴヌクレオチドで得られたFOZ値と、ほぼ等しいFOZ値が得られたことは注目に値する。いくつかの適用例では、オリゴヌクレオチド合成費用の削減に、全DNAINVADERオリゴヌクレオチドを置換するのが望ましく、検出限界を犠牲にすることなく実施できよう。
【0226】
さらなる実験から、より多くのRNA(例えば、ライセート、精製全RNA、合成miRNA)を反応に加えることによって、特定のオリゴヌクレオチドセットによる準最適シグナルの発生を補償できることが実証された。同様に、実施例1に記載したように、様々なオリゴヌクレオチド(すなわちプローブ、INVADER、ARRESTOR、または様々なそれらの組合せ)をゲル精製した追加の実験から、全3種のオリゴヌクレオチドを標準的ゲル精製にかけると、最大のシグナルが得られることが示唆された。その他のオリゴヌクレオチド、すなわちINVADERおよびARRESTORオリゴヌクレオチドを脱塩後合成した場合、ゲル精製したプローブでの最高レベルにほぼ等しいシグナルレベルを実現することができる。
【実施例10】
【0227】
複数の組織種由来の全RNA中のmiRNA発現の検出
多様な組織種から抽出した全RNA中の異なるmiRNA種を検出するために、この実施例は、INVADERアッセイの適合性を試験するために行なった実験について記載する。組織特異的遺伝子発現を評価するために、それぞれの設計について温度最適条件とLODをまず決定した。
【0228】
1.INVADERオリゴヌクレオチドとプローブオリゴヌクレオチドの設計
miR−15、miR−16、およびmiR−125b miRNA種を検出するために、INVADERアッセイオリゴヌクレオチドを設計した。これらのアッセイの設計を
図5に示す。let−7aおよびmiR−135の設計を、それぞれ実施例2および6に記載する。
【0229】
2.温度最適条件およびLODの決定
実施例8に記載したように、これらのオリゴヌクレオチドセットのそれぞれについて、温度最適化実験を行った。各一次反応に1nMの標的とするmiRNAを含め、50℃±9℃の範囲の温度で15分間実施した。二次反応は、実施例2に記載した通りであり、60℃で1〜1.5時間実施した。最適温度は、以下の通りであった。
【表20】
【0230】
一度温度最適条件が得られたならば、実施例8に記載したように各miRNA種についてLODを定量した。全LODは≦30ゼプトモルであった。
【0231】
3.遺伝子発現プロファイリング
異なる20組織種から抽出した全RNAで、遺伝子発現プロファイリングを実施した。全RNAをClontech(Palo Alto、CA、カタログ番号K4008-1、Human Total RNA Master Panel II)から購入した。Let−7aについては、各反応で全RNA50ngを試験し、その他のmiRNA種については、全RNA100ngを試験した。実施例8に記載したように全反応を準備し、一次反応を温度最適条件で1.5時間実施し、二次反応は上記の通りであった。各miRNA種についての遺伝子発現プロファイルを
図23に示す。これらの結果は、異なる組織種中のmiRNAの発現を検査するのに、INVADERアッセイを使用できることを示している。これらのデータから、さらに、let−7aおよびmiR−125bが多様な組織で発現することが示唆され、その他のmiRNA種は、限られた数の組織種により特異的であるように見える。
【実施例11】
【0232】
miRNAのINVADERアッセイ検出に及ぼす、可変オリゴヌクレオチド長の影響
この実施例は、let−7a 22−nt miRNAの検出に及ぼす、プローブとINVADERオリゴヌクレオチドの長さの変化の影響について記載する。特に、これらの実験では、プローブオリゴヌクレオチドとINVADERオリゴヌクレオチドの端部間に、完全積層相互作用を形成するmiRNA検出と、5’および3’重複を形成するmiRNA検出と、さらに両5’および3’末端に1個のヌクレオチドギャップをもたらすmiRNA検出を比較する。
【0233】
図24は、異なる3つの型の設計の分析の結果を示す。配列番号5〜6は、22−nt標的と、ループを形成したプローブオリゴヌクレオチドおよびINVADERオリゴヌクレオチドのフランキング端間の完全積層体を示す。配列番号83〜84では、両プローブオリゴヌクレオチドとINVADERオリゴヌクレオチドが、1個の塩基によって伸長され、結果として5’および3’重複がもたらされる。配列番号85〜86では、両プローブオリゴヌクレオチドとINVADERオリゴヌクレオチドが、配列番号5〜6の設計に比べて1個の塩基によって短縮され、結果として両端に1個のヌクレオチドギャップがもたらされる。
【0234】
これらのオリゴヌクレオチドセットが、合成let−7a miRNAを検出する性能を試験するために、INVADERアッセイを準備した。実施例8に記載したように反応を実施し、100pM合成let−7a miRNA、1μMプローブ、および10μM INVADERオリゴヌクレオチドを含めた。実施例2に記載したように、一次反応を53℃で15分間実施し、二次反応を60℃で5分間実施した。結果を
図24示す。
【0235】
これらのデータから、この実験では、miRNA標的の両端の単一ヌクレオチドの重複が、シグナルの発生を約30%減少させ、同様に最適温度を2℃低下させることが示唆される。しかし、標的の両端の1個のヌクレオチドギャップは、最適反応温度を5℃低下させたが、シグナル発生は減少しなかった。
【実施例12】
【0236】
前駆体RNA由来miRNAとコードDNA由来miRNAの判別
INVADERmiRNAアッセイが、miRNA標的自体と、その前駆体RNAおよびmiRNAをコードするDNAとを区別するかどうかを判定するために実験を実施した。
【0237】
A.前駆体交差反応試験
let−7a miRNAを模倣する可能性がある任意のフラグメントを含むかどうか判定するために、前駆体let−7 RNA(配列番号87)をインビトロ転写し、キャピラリー電気泳動によって分析した。最短混入フラグメントは約45ntであろうと推定された。実質的に実施例3に記載したように、下表に示す前駆体または合成5’P let−7a mi−RNAの濃度で、LOD反応を実施した。PI混合物には、10μMプローブ(配列番号6)および100μM INVADERオリゴヌクレオチド(配列番号5)を含めた。実質的に実施例3に記載したように、一次反応を53℃で1時間実施し、二次反応を二次反応混合物により58℃で1時間実施した(FRETプローブ配列番号21、SRT配列番号22、およびARRESTOR配列番号7)。この実験の結果からこのmiRNAアッセイは、前駆体RNAに対して約4%交差反応性であることが示唆された。
【0238】
B.RNA対DNAシグナルの判別
細胞ライセート中のlet−7a miRNAを検出するために、実施例7に記載したように反応を実施した。INVADERアッセイで検出する前に、細胞ライセート80μlに、8μg/μl RNAse A(Qiagen, Inc.)のアリコート1μlを加え、37℃で2.25時間インキュベートした。RNAse A処理した試料は、バックグラウンドより高いシグナルを発生させることができず、RNAse A不含アッセイで発生したシグナルは、miRNA標的の検出から生じたものであり、コードDNAからのシグナルではないことが示唆された(
図16)。さらに、一次反応前にまたは二次反応前にRNAse Aを加える実験を実施した。一次反応前にRNAse Aを加えたとき、前の結果に一致してシグナルは発生しなかった。一次反応後にRNAse Aを加えたとき、シグナルの損失は観察されず、検出するシグナルはRNAによるもので、CLEAVASE酵素など、他の反応成分に与えるRNAseの有害作用はないことがさらに示唆された。
【実施例13】
【0239】
二重形態miRNAの検出
miR−124a用にオリゴヌクレオチドの設計を作成した。1つは21nt長であり、他方は22nt長である、2個の自然発生miRNAを検出するために、これらのオリゴヌクレオチドを使用することができる。
【0240】
実質的に実施例3に記載したように、1nMの合成miRNA標的、25分間の一次反応および15分間の二次反応を使用し、温度最適化反応を準備した。これらの反応に使用するオリゴヌクレオチドの一覧を
図5に示す(配列番号90〜92)。2本の長さが異なるmiRNA標的の温度プロフィールを
図22に示すが、両標的を検出するために、同じオリゴヌクレオチドの設計を使用できることが示唆される。
【実施例14】
【0241】
siRNA検出用オリゴヌクレオチドの設計
siRNAを検出するために、前記実施例に記載の手法に類似する手法を同様に使用してよい。
図25には、β−アクチンsiRNAを検出するために、2個の代替INVADERアッセイの設計を例示する。このsiRNAはHarborth, J.ら, Journal of Cell Science, 114: 4557-4565 (2001)に記載されている。各センス鎖およびアンチセンス鎖に対して一設計が存在し、このsiRNAを検出する例示的なオリゴヌクレオチドの一覧を
図26の配列番号101〜106に示す。
【実施例15】
【0242】
let−7a miRNA検出の動的範囲を拡大するための最適化
let−7a miRNA INVADERアッセイ検出の動的範囲を拡大する試みでは、同じlet−7aハイブリダイズ領域を有するが、5’−フラップ「アーム」配列が異なる2個のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。異なる5’−フラップまたはアームは、切断されるとFAMシグナルを発生するように設計されたFRETカセットに行く。オリゴヌクレオチド配列は、以下の通りであった(「Z28」は、ECLIPSEクエンチャー、Nanogen, Inc., San Diego, CAをさす)。
【表21】
【0243】
また、当該配列を
図26に示す。試験した反応条件は、以下の通りであった。
【表22】
【0244】
合計9種のプローブ濃度条件について、一次Let−7a INVADER反応は10μL反応で設定した。試験した9種のプローブ濃度条件は:(i)1μM プローブ1544−82−01、(ii)1μM プローブ2343−25−01、(iii)1μM 1544−82−01プローブおよび2343−25−01プローブ、(iv)100nM プローブ2343−25−01、(v)1μM プローブ1544−82−01および100nM 2343−25−01、(vi)10nM 2343−25−01、(vii)1μM 1544−82−01および10nM 2343−25−01、(vii)4nM 2343−25−01、および(ix)1μM 1544−82−01および4nM 2343−25−01であった。これらのプローブオリゴ濃度に加えて、反応には1μM INVADERオリゴ1496−78−02、30ng CLEAVASE XII酵素、および10mM MOPS(pH7.5)、25mM KCl、0.05% Tween 20、0.05% Nonidet P40、25mM MgSO4、および2% PEGを含めた。
【0245】
各プローブ濃度条件には、一反応につき、終濃度が6×10
9、6×10
8、6×10
7、6×10
6、6×10
5、6×10
4、6×10
3、および0コピーの反応混合物に、Let−7a合成RNAを加えた。Rnase不含水で希釈した20ng/μl tRNA溶液で、Let−7a RNAを希釈した。96穴プレートで反応を組み立て、透明鉱油10μlを各ウェルに加えて蒸発を防いだ。次いで、プレートをサーマルブロックに移し、49℃で90分間インキュベートした。
【0246】
インキュベーション完了後、0.3μM 二次反応鋳型1107−10−02と2343−23−01;8μM ARRESTORオリゴヌクレオチド1581−63−01と2343−25−02;および2μM FRETプローブ23−182と2343−23−01を含む二次反応混合物5μLを加え、反応プレートを60℃で90分間インキュベートした。反応の完了後、そのプレートを蛍光プレートリーダー(Cytofluor)に移送し、取得設定(gain setting)43で励起波長と発光波長は、それぞれ485nmおよび535nmを使用し、その蛍光を読取ることによってデータを得た。
【0247】
生成された未処理および処理データは、以下の通りであった。
【0248】
1−未処理データ
【表23】
【0249】
2−処理データ
【表24】
【0250】
そして
図27に示す。
【0251】
結果から、1544−82−01プローブと2343−25−01プローブを、それぞれ、1mMと10nMで混合し(混合vii)、1mMと4nMで混合した混合(ix)とき、動的範囲>6logが得られることが判明している。
【実施例16】
【0252】
U6 RNA検出の動的範囲を拡大する最適化
INVADERアッセイを使用する、U6 RNA検出の動的範囲を拡大する試みでは、同じU6 RNAハイブリダイズ領域を有するが、5’−フラップ「アーム」配列が異なる2個のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。異なる5’−フラップまたはアームは、切断されると、REDシグナルを発生させるように設計されたFRETカセットに行く。オリゴヌクレオチド配列は、以下の通りであった(RED色素は、REDMOND RED、Nanogen Inc, San Diego, CAをさす)。
【表25】
【0253】
そして
図28に示す。
【0254】
反応条件は、以下の通りであった。
【0255】
試薬:
【表26】
【0256】
一次INVADER反応は、プローブ濃度で、1μM 1796−53−01;4nM プローブ2343−30−01;または1μMおよび4nMの1796−53−01および2343−30−01をそれぞれ含む10μL容量で設定した。さらに、これらの反応に、1μM INVADERオリゴ1796−53−02、30ng CLEAVASE XII酵素、および10mM MOPS(pH7.5)、25mM KCl、0.05% Tween 20、0.05% Nonidet P40、25mM MgSO
4、および2% PEGを含めた。
【0257】
各プローブ濃度条件には、一反応につき終濃度が102×10
9、102×10
8、102×10
7、102×10
6、102×10
5、102×10
4、102×10
3、10,200、5,100、2,550、および0コピーの反応混合物に、U6合成RNAを加えた。Rnase不含水で希釈した20ng/μl tRNAの溶液で、U6合成RNAを希釈した。96穴プレートで反応を組み立て、透明鉱油10μlを各ウェルに加えて蒸発を防いだ。次いで、プレートをサーマルブロックに移し、50℃で90分間インキュベートした。
【0258】
インキュベーション完了後、0.3μM 二次反応鋳型23−183と2343−30−02;7.5μM ARRESTORオリゴヌクレオチド1796−53−03と2343−30−04;および1.5μM FRETプローブ23−181と2343−30−02を含む、二次反応混合物5μLを加え、次いで反応プレートを60℃で90分間インキュベートした。反応の完了後、そのプレートを蛍光プレートリーダー(Cytofluor)に移し、取得設定45で励起波長と発光波長は、それぞれ560nmおよび620nmを使用し、その蛍光を読取ることによってデータを得た。
【0259】
生成されたデータは、以下の通りであった。
【表27】
【0260】
そして、コピー数対正味シグナルプロットとして
図29に示す。
【0261】
結果から、1796−53−01プローブと2343−30−01プローブを、それぞれ1μMと4nM混合で混合したとき、動的範囲>6logが得られることが判明している。
【実施例17】
【0262】
単独反応槽で、Let−7aおよびU6検出の動的範囲を拡大する最適化
二重INVADERアッセイでの、let−7a miRNAおよびU6 RNA検出の動的範囲を拡大する試みでは、数個のパラメーターを試験し評価した。
【0263】
プローブ濃度で1μM 1796−53−01;1μM 1544−82−01;4nM 2343−30−01;4nM 2343−25−01;1μM INVADERオリゴ1796−53−02と1496−78−02;30ng CLEAVASE XII酵素;および10mM MOPS(pH7.5)、25mM KCl、0.05% Tween 20、0.05% Nonidet P40、25mM MgSO4、および2% PEGを含む10μL容量で、一次INVADER反応を設定した。
【0264】
U6 RNAおよびLet−7a miRNA濃度が、一反応につき6×10
9、1.2×10
9、2.4×10
8,4.8×10
7、9.6×10
6、1.92×10
6、384,000、76,800、15,360、3,072、および0コピーで二つ組反応を設定した。96穴プレートで反応を組み立て、透明鉱油10μlを各ウェルに加えて蒸発を防いだ。次いで、プレートをサーマルブロックに移し、49℃で90分間インキュベートした。
【0265】
インキュベーション完了後、0.3μMの二次反応鋳型1107−10−02と、2343−30−02と、23−183と、2343−30−03;7.5μM ARRESTOR1796−53−03と1581−63−01;および30nM ARRESTOR2343−30−04と2343−25−02;1.5μM FRETプローブ23−181と、2343−30−02と、23−182と、2343−23−01を含む二次反応混合物5μLを加えた。次いで、反応プレートを60℃で90分間インキュベートした。反応の完了後、そのプレートを蛍光プレートリーダー(Cytofluor)に移し、RED色素用に取得設定45で励起波長と発光波長はそれぞれ560nmおよび620nmを使用し、そしてFAM色素用に取得設定43で励起波長と発光波長はそれぞれ485nmおよび530nmを使用し、その蛍光を読取ることによってデータを得た。
【0266】
生成されたデータは、以下の通りであった。
【表28】
【0267】
そして、コピー数対正味シグナルプロットとして
図30に示す。
【0268】
結果から、二重U6およびLet−7a検出用に、動的範囲>6logが得られることが判明している。
【実施例18】
【0269】
癌に付随し、癌を予後するmiRNAを検出するための組成
miRNA遺伝子の欠失および下方調節は、癌に関連付けられてきた[B細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)など][例えばCalinら, Proc Natl Acad Sci USA, 99, 15524-15529 (2002)を参照されたい]。従って、癌に伴うmiRNAを検出し特徴付けるために、本明細書では様々なオリゴヌクレオチドを設計した。これらのオリゴヌクレオチドを
図31[図中、m=2’−O−メチル;r=リボース(DNAの代わりにRNAを示すため)]に記載する。
【実施例19】
【0270】
逆転写反応、ポリメラーゼ連鎖反応、および侵入的切断アッセイ反応を含むアッセイを使用するmiRNA検出
逆転写(RT)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、および侵入的切断反応アッセイ[例えば、二段階または一段階反応(例えば単一チューブ)]を使用し、miRNAを検出し特徴付けるための実験を行った。これらのアッセイに使用される化学(例えば、一段階RT、PCRおよび侵入的切断反応)は、例えば、米国特許第6,913,881号、米国特許第6,875,572号、米国特許第6,872,816号、および米国特許第7,011,944号、および2005年11月3日出願米国特許出願第11/266,723号に記載されており、その各々をこれによりその全体を参照により組み込む。この方法を使用するmiRNAを検出するための一般的設計を
図32に示す。手短に言えば、逆転写(RT)プライマーオリゴヌクレオチド(好ましい実施形態では、侵入的切断反応アッセイで、INVADERオリゴヌクレオチドとしても役立つ)および逆転写酵素を、標的RNA(miRNAなど)を(cDNAに)逆転写するために使用し、続いて(例えば二段階アッセイで)または同時に[例えば一段階アッセイ(単一チューブなど)で]、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーオリゴヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼを使用して、一次プローブの存在下で、cDNA生成物を増幅し、それによって(例えば、侵入的切断反応アッセイによって検出することができる)検出構造が形成されるようにする。
【0271】
本発明を開発中、逆転写反応、ポリメラーゼ連鎖反応、および侵入的切断アッセイ反応を含むアッセイを使用し、miRNA検出能力および感度を最適化するために、複数の要因を検査し特徴付けた。これらには、(例えばオリゴヌクレオチドの設計による)形成されるRTプライマー/miRNA二重鎖の長さ[例えば4〜0(6〜7など)塩基対];検出用試料で利用可能なmiRNAコピー数;(例えばオリゴヌクレオチドの設計による)形成されるPCR前進プライマー/miRNA二重鎖の長さ[例えば4〜10(7〜9など)塩基対];使用するオリゴヌクレオチドの濃度;アッセイを実施できる反応温度;スタッカーオリゴヌクレオチドの影響(例えば、RTプライマー/INVADERオリゴもしくはPCRプライマーに結合するオリゴヌクレオチド);ヘアピン構造を形成するオリゴヌクレオチドの使用;一段階もしくは二段階アッセイ構成の使用;INVADER一次プローブの長さ(例えば8〜10)塩基対の影響;単一miRNA種の変異体(突然変異体など)相互間を区別するアッセイの能力;および1回の反応で一個を超えるmiRNAを検出するアッセイの能力(二重アッセイなど)が含まれる。
【0272】
A)RT−プライマー/miRNA二重鎖の長さ
様々な長さのRT−プライマー/miRNA二重鎖を試験し特徴付けた。miRNAを検出する能力を備えた、RTプライマー−miRNA二重鎖の長さの影響を試験するために、RTプライマーとmiRNA間に、6もしくは7塩基対の二重鎖が形成されるように、RTプライマーとして使用するオリゴヌクレオチドを設計した。一反応につき、様々なレベルのlet−7a miRNA分子(例えば、300,000、50,000、8,333、1,389、231、39、および0)を使用し、これらのプライマーを三つ組で性能試験した。10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、および25μM dNTPを含む緩衝液中に、0.5μM 前進PCRプライマー2343−16−01;0.034単位/μL 未変性Taqポリメラーゼ;2単位/μl MMLV逆転写酵素;および6.67ng/μl CLEAVASE VIII酵素を含む、25μL容量で反応を実施した。6塩基対二重鎖の長さについては、0.5μM RTプライマー2343−14−01;0.5μMプローブ2343−14−05;0.25μM FRETプローブ23−211を反応混合物に加えた。7塩基対二重鎖の長さについては、0.5μM RTプライマー2343−03−01;0.5μM プローブ2343−14−08;0.25μM FRETプローブ23−755を反応混合物に加えた。鉱油10μLで覆った96穴スカートプレートで反応を組み立てた。次いで、プレートを、42℃で30分間の単一ステップ、続いて95℃で2分間、および95℃で15秒間、60℃で15秒間、72℃で45秒間の30サイクルにかけた。サイクルの完了後、反応プレートを99℃で10分間加熱し、次いで50℃で15分間冷却し、次いで取得設定45で励起波長と発光波長それぞれ560nmおよび620nmを使用し、Cytofluorプレートリーダーで読み取った。
【0273】
miRNA標的を備えた7塩基対二重鎖が得られるように構成した、RTオリゴヌクレオチドプライマーを使用し生成されたデータは、以下の通りであった。
【表29】
【0274】
miRNA標的を備えた6塩基対二重鎖が得られるように構成した、RTオリゴヌクレオチドプライマーを使用し生成されたデータは、以下の通りであった。
【表30】
【0275】
従って、本発明は、一反応につき同じコピー数のlet−7aを比較したとき、短い二重鎖の検出に十分なシグナルレベルを提供するが、正味シグナルは、6塩基対RTプライマー−miRNA二重鎖よりも、7塩基対RTプライマー−miRNA二重鎖の方が高いということを示す。従って、いくつかの実施形態では、RTプライマー/INVADERオリゴヌクレオチドとmiRNA標的との間が短い(例えば、10ヌクレオチド未満;8ヌクレオチド未満;または7ヌクレオチド未満)相同性領域を有するオリゴヌクレオチドを使用する場合でも、本発明のアッセイ(例えば、逆転写反応、ポリメラーゼ連鎖反応、および侵入的切断アッセイ反応、ならびに検出構造を含む)は、miRNA標的を検出することができる。いくつかの実施形態では、RTプライマー/INVADERオリゴヌクレオチドは、標的miRNAと(例えば相補的ではない)二重鎖を形成しない他の配列を含む。いくつかの実施形態では、二重鎖を形成しないその他の配列は、ヘアピン構造(例えば、標的RNAと二重鎖を形成しない配列内の配列は、折り畳まれ、それ自体と結合することができる)を形成する。
【0276】
従って、いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドとmiRNA標的の間に、6塩基対二重鎖が形成されるように、RTプライマー/INVADERオリゴヌクレオチドを設計する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドとmiRNA標的の間に、7塩基対二重鎖が形成されるように、RTプライマーオリゴヌクレオチドを設計する。その機序を理解することは、本発明を実施する上で必ずしも必要でなく、本発明は、任意の特定の作用機序に限定されないが、RTプライマーとmiRNA標的の間の二重鎖形成の長さが増加すると、(例えば、さらに、
図32に記載した一次INVADERオリゴヌクレオチドとして、RTプライマーオリゴヌクレオチドを使用する場合)検出構造がより容易に形成できるようになり、次いで短い二重鎖と比較して正味シグナルがより高くなる。
【0277】
B)低レベルmiRNAの検出
一反応につき3×10
6〜2コピーの範囲の、様々なレベルのmiR−16 miRNAを使用した検出レベル範囲を定量する実験を、25μL反応容量を使用し試験した。10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、および25μM dNTPを含む緩衝液中に、0.5μM プライマー2343−03−05および2343−03−06;0.67μM プローブ2343−03−07;0.25μM FRETプローブ23−210;0.034単位/μL未変性Taqポリメラーゼ;2単位/μl MMLV逆転写酵素;および6.67ng/μl CLEAVASE VIII酵素を含む反応を設定した。96穴スカートプレートで反応を組み立て、鉱油10μLで覆った。次いで、プレートを42℃で45分間の単一ステップ、続いて95℃で2分間、および95℃で15秒間、60℃で30秒間、72℃で60秒間の30サイクルにかけた。サイクルの完了後、反応プレートを99℃で10分間加熱し、次いで50℃で30分間冷却し、次いで取得設定43で励起波長と発光波長それぞれ485nmおよび535nmを使用し、Cytofluorプレートリーダーで読み取った。
【0278】
生成されたデータは、以下の通りであった。
【表31】
【0279】
従って、本発明の組成および方法[例えば、(一段階もしくは二段階アッセイなど)、逆転写反応、ポリメラーゼ連鎖反応、および侵入的切断アッセイ反応を含むアッセイならびに検出構造を使用する]を使用すると、コピー数が約38〜192コピー程度と少ないmiRNA種を測定することができる。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、低コピー数(例えば、500コピー未満、400コピー未満、300コピー未満、200コピー未満、100コピー未満、50コピー未満)で存在する、miRNAを検出し特徴付ける組成および方法を提供する。その機序を理解することは、本発明を実施する上で必ずしも必要でなく、本発明は、任意の特定の作用機序に限定されないが、いくつかの実施形態では、(例えば、逆転写反応、ポリメラーゼ連鎖反応、および侵入的切断アッセイ反応を含むアッセイにおいて)INVADERオリゴヌクレオチドとしても使用されるRTプライマーオリゴヌクレオチドを使用すると、非常に少ないコピー数[例えば100未満(50未満など)]の標的miRNAを検出できる検出構造の生成と検出に関与する、侵入的切断酵素(CLEAVASE酵素など)によって、(例えばmiRNA鋳型から)伸長し認識されるのに好適な会合量が得られる。
【0280】
C)PCR前進プライマー/miRNA二重鎖(7、8、および9塩基対)の長さの最適化
miRNAとPCR前進プライマーの最適のハイブリダイズ長を試験するために、一反応につき、3,000〜47分子の範囲の様々なレベルのmiR−16 miRNAを使用した。0.5μMの以下のプライマー2343−03−06(9b.p.)、2343−10−05(8b.p.)、2343−10−06(7b.p.)の各々を使用し、0.5μM RTプライマー2343−03−05;0.67μM プローブ2343−03−07;0.25μM FRETプローブ23−210を混合して、ハイブリダイズ領域長7、8、および9塩基対(b.p.)を試験した。25μL反応には、0.034単位/μL未変性Taqポリメラーゼ、2単位/μl MMLV逆転写酵素、および6.67ng/μl CLEAVASE VIII酵素、ならびに10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、および25μM dNTPの緩衝液が含まれた。鉱油10μLで覆った96穴スカートプレートで反応を組み立てた。次いで、プレートを42℃で45分間の単一ステップ、続いて95℃で2分間、および95℃で15秒間、60℃で15秒間、72℃で60秒間の30サイクルにかけた。サイクルの完了後、反応プレートを99℃で10分間加熱し、次いで50℃で15分間冷却し、次いで取得設定43で励起波長と発光波長それぞれ485nmおよび535nmを使用し、Cytofluorプレートリーダーで読み取った。
【0281】
結果は、以下の通りであった。
【0282】
未処理データ:
【表32】
【0283】
処理データ:
【表33】
【0284】
従って、本発明によって、PCRプライマー−miRNA二重鎖の長さが、9から7塩基対に減少するにつれ、miRNA検出アッセイの性能(例えば、逆転写反応、ポリメラーゼ連鎖反応、および侵入的切断アッセイ反応、ならびに検出構造含む)も減少することが実証されている。従って、いくつかの実施形態では、プライマーオリゴヌクレオチドと標的miRNAの間に、約9塩基対の二重鎖が形成されるように、PCRプライマーオリゴヌクレオチドを設計する。いくつかの実施形態では、プライマーオリゴヌクレオチドは、標的miRNAもしくはそれから発生したcDNAと、二重鎖を形成しない(例えば相補的ではない)他の配列を含む。いくつかの実施形態では、二重鎖を形成しないその他の配列は、ヘアピン構造を形成する(例えば、標的配列もしくはそれから発生したcDNAを有する二重鎖を形成しない配列中の配列は、折り畳まれ、それ自体と結合することができる)。
【0285】
D)1個もしくは複数のプローブを使用するLet−7a miRNAの検出
プローブの1つが存在し、または両方が存在する反応で、以下の2個のプローブ2343−14−02を0.5μMで、そして2343−14−03を40nMで使用し、一反応につき3×10
8〜3分子範囲のLet−7a miRNAレベルを試験した。全ての反応について、0.034単位/μL未変性Taqポリメラーゼ、2単位/μl MMLV逆転写酵素、および6.67ng/μl CLEAVASE VIII酵素、10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、および25μM dNTPを含む緩衝液中、好適なレベルのLet−7a;0.5μM プライマー2343−14−01および2343−16−01;および0.25μM FRETプローブ23−210および23−204を含む25μL容量中で、上記濃度の個々のプローブもしくは混合したプローブを混合した。鉱油10μLで覆った96穴スカートプレートで反応を組み立てた。次いで、プレートを42℃で45分間の単一ステップ、続いて95℃で2分間、および95℃で15秒間、60℃で15秒間、72℃で45秒間の29サイクルにかけた。サイクルの完了後、反応プレートを99℃で10分間加熱し、次いで50℃で30分間冷却し、次いで取得設定43で励起波長と発光波長それぞれ485nmおよび535nmを使用し、Cytofluorプレートリーダーで読み取った。
【0286】
生成された蛍光データは、以下の通りであった。
【表34】
【0287】
そして
図32に示す。
【0288】
従って、本発明によって、プローブ2343−14−02(0.5μM)と2343−14−03(40nM)を組み合わせると、miRNA検出の動的範囲が>6桁に拡大する。従って、いくつかの実施形態では、(例えば低コピー数miRNAの)検出感度を増大するために、本発明のmiRNA検出アッセイ(例えば、逆転写反応、ポリメラーゼ連鎖反応、および侵入的切断アッセイ反応を含む)は、一個を超える(例えば2個、3個またはそれ以上の)プローブオリゴヌクレオチドを使用する。
【0289】
E)短い標的ハイブリダイゼーション領域を備えた一次プローブを使用する反応温度の影響
短い標的ハイブリダイゼーション領域を備えた一次プローブを使用し、アッセイの温度感度(またはそれを欠く)を定量する実験を行った。インキュベーション温度45℃〜60℃の範囲を超えて、標的ハイブリダイゼーションが10および11塩基の2個の一次プローブを検証した。
【0290】
1.INVADERアッセイ用オリゴヌクレオチド:
【表35】
【0291】
2.Let−7a単位複製配列の生成:20μlの10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、0.25mM 各dNTP、0.4μM 1716−94−3、0.4μM 1716−94−6、0.4μM 1716−94−8、0.5fM let−7a RNA、2単位/μl MMLV、0.033単位/μl TaqPolを含むRT−PCR反応でlet−7a単位複製配列を生成した。PCRサイクリングプロフィール:37℃で30分間、続いて95℃で30秒間および60℃で1分間を28サイクル。
【0292】
3.Let−7a単位複製配列RT−PCRの図式
【表36】
【0293】
4. INVADERアッセイ:1716−94−1プローブによるINVADER反応は、0.67μM 1716−94−1、0.4μM 1716−94−3、標的として使用する1μlの10倍に希釈したlet−7a単位複製配列、2単位/μl MMLV、0.033単位/μl TaqPol、6.7ng/μl CLEAVASE VIII酵素を含む、18μlの10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、0.25mM各dNTP中で99℃で10分間、次いで45〜60℃の温度勾配で1時間実施した。この後、2μlの23−210アーム3−FAM FRETカセットをチューブに加え、95℃で1分間、次いで54℃で10分間反応を続けた。
【0294】
5.1716−94−1プローブによるINVADERアッセイの図式
【表37】
【0295】
6. 1716−94−2プローブによるINVADER反応は、0.67μM 1716−94−2、0.4μM 1716−94−5、標的として使用する1μlの10倍に希釈したlet−7a単位複製配列、2単位/μl MMLV、0.033単位/μl TaqPol、6.7ng/μl CLEAVASE VIII酵素含む、18μlの10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、0.25mM各dNTP中で、99℃で10分間、次いで45〜60℃の温度勾配で1時間実施した。この後、2μlの23−210アーム3−FAM FRETカセットをチューブに加え、95℃で1分間、次いで54℃で10分間反応を続けた。「標的対照無し」には、単位複製配列の代わりに2μlのH
2Oを使用した。
【0296】
7.1716−94−2プローブによるINVADERアッセイの図式
【表38】
【0297】
温度の関数としてプロットした、プローブ1716−94−1および1716−94−2によるINVADER反応の正味シグナルを
図34に示す。
【0298】
従って、本発明は、標的ハイブリダイゼーション領域が10もしくは11塩基の一次プローブを使用すると、広い温度範囲を超えて十分に機能することを実証する。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、miRNA検出アッセイ(例えば逆転写反応、ポリメラーゼ連鎖反応、および侵入的切断アッセイ反応、ならびに検出構造を含む)が、侵入的切断酵素(例えばCLEAVASE酵素)と共に、45〜60℃の温度(例えば、いくつかの好ましい実施形態では、50℃、別の好ましい実施形態では49℃、さらに別の好ましい実施形態では48℃、さらに好ましい実施形態では47℃)でのインキュベーションを含むことを実証する。
【0299】
F)RT−プライマーとPCR前進プライマーオリゴヌクレオチドに及ぼす、スタッカーオリゴヌクレオチドの影響
RTプライマー/INVADERオリゴヌクレオチドと、PCR前進オリゴヌクレオチドプライマーオリゴヌクレオチドに及ぼす、スタッカーオリゴヌクレオチドの影響を試験するために実験を設計し実施した。
【0300】
let−7aアッセイ用オリゴヌクレオチド:
【表39】
【0301】
1.let−7aアッセイの図式
【表40】
【0302】
2.Let−7aアッセイは、0.67μM 1716−94−1、0.4μM 1716−94−3、0.4μM 1716−94−6、2単位/μl MMLV、0.033単位/μl TaqPol、6.7ng/μl CLEAVASE VIII酵素を含む、20μlの10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、0.25mM各dNTP;0.25μM 23−210アーム3−FAM FRETカセット;60,000、6,000、600または0コピーのlet−7a RNA;両1716−94−8と1716−94−9スタッカー(8+9)、1716−94−8スタッカー(8)、1716−94−9スタッカー(9)、またはスタッカーなし(無し)の存在下で実施した。温度プロフィールは、37℃で30分間;95℃で1分間;95℃で30秒間、次いで60℃で1分間の28サイクル;99℃で10分間;49℃で30分間であった。
【0303】
let−7a RNAコピー数の関数としてプロットしたlet−7反応の未処理シグナルを
図35に示す。
【0304】
従って、本発明は、いくつかの実施形態では、[例えば低レベル(コピー数など)標的miRNAでは]スタッカー無しよりも、いくらかのスタッカーの使用が好ましいことを実証する。いくつかの実施形態では、より高いレベル(コピー数など)の標的核酸(miRNAなど)で、スタッカーの使用により、より高いシグナルがもたらされる。PCR前進オリゴヌクレオチドプライマーで、スタッカーオリゴヌクレオチドを使用することは、反応にいかなる正の利益ももたらすとは思われなかった。そして場合によっては実際、シグナルを低減させかねない。それに反して、RTプライマー/INVADERオリゴヌクレオチドのスタッカーの使用によって、アッセイ感度が増強された。
【0305】
G)スタッカーオリゴヌクレオチド 対 ヘアピン形成化RT−プライマー使用の比較
同じ領域での、RT/プライマー/INVADERオリゴヌクレオチドの5’末端のヘアピン形成化領域の使用 対 スタッカーオリゴヌクレオチドの使用を比較するために、実験を設計し実施した。
【0306】
1.INVADERアッセイ用オリゴヌクレオチド:
【表41】
【0307】
2.let−7aアッセイ用スタッカー設計の図式:
【表42】
【0308】
3.let−7aアッセイ用のヘアピン設計の図式:
【表43】
【0309】
4. Let−7aスタッカーアッセイは、1716−94−8スタッカーの存在下で、0.67μM 1716−94−1、0.4μM 1716−94−3、0.4μM 1716−94−6、2単位/μl MMLV、0.033単位/μl TaqPol、6.7ng/μl CLEAVASE VIII酵素;0.25μM 23−210アーム3−FAM FRETカセット;60,000、6,000、600またはゼロコピーのlet−7a RNAを含む20μlの10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、0.25mM各dNTPで実施した。温度プロフィールは、37℃で30分間;95℃で1分間;95℃で30秒間、次いで60℃で1分間の28サイクル;99℃で10分間;49℃で30分間であった。
【0310】
Let−7aヘアピンアッセイは、1716−94−3および1716−94−8の代わりに、0.4μM 2343−03−1を使用したことを除き、スタッカーアッセイについて記載した通りに実施した。
【0311】
let−7a RNAコピー数の関数としてプロットしたlet−7aのスタッカーアッセイおよびヘアピンアッセイの未処理シグナルを
図36に示す。
【0312】
従って、本発明は、スタッカーの使用 対 ヘアピン形成化オリゴヌクレオチドの間で、検出能力(感度など)に著しい差異がないことが観察されることを実証する。
【0313】
H)一段階対二段階反応構成の比較
一段階対二段階反応構成を比較するために実験を設計し実施した。一段階構成では、反応槽には試薬も加えないで、逆転写反応、ポリメラーゼ連鎖反応、および侵入的切断アッセイ反応のそれぞれを逐次実施する。それとは対照的に、二段階構成では、逆転写反応ステップ後、ポリメラーゼ連鎖反応および侵入的切断アッセイ反応を行なうために、試薬を含む反応槽に逆転写反応容量の1/10段階(1/10
th)を加える。
【0314】
1. 一段階let−7aアッセイ。Let−7a一段階アッセイは、0.67μM 1716−94−1、0.4μM 1716−94−3、0.4μM 1716−94−6、0.4μM 1716−94−8、2単位/μl MMLV、0.033単位/μl TaqPol、6.7ng/μl CLEAVASE VIII酵素;0.25μM 23−210アーム3−FAM FRETカセットと共に60,000、6,000、600またはゼロコピーのlet−7a RNAを含む、20μlの10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、0.25mM各dNTP中で実施した。温度プロフィールは、37℃で30分間;95℃で1分間;95℃で30秒間、次いで60℃で1分間の27サイクル;99℃で10分間;49℃で30分間であった。
【0315】
二段階let−7aアッセイ。第一段階は、0.25mM各dNTP、0.4μM 1716−94−3、0.4μM 1716−94−8、5単位/μl MMLVと共に60,000、6,000、600またはゼロコピーのlet−7a RNAを含む20μlのMMLV反応緩衝液(Promega)中37℃で30分間実施した。MMLVを95℃で1分間不活化した。第二段階は、0.67μM 1716−94−1、0.4μM 1716−94−3、0.4μM 1716−94−6、0.4μM 1716−94−8、0.033単位/μl TaqPol、6.7ng/μl CLEAVASE VIII酵素;0.25μM 23−210アーム3−FAM FRETカセットと共に2μlの第一のステップ反応試料を含む、20μlの10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、0.25mM各dNTP中で実施した。温度プロフィールは、95℃で1分間;95℃で30秒間、次いで60℃で1分間の27サイクル;99℃で10分間;49℃で30分間であった。
【0316】
let−7aコピー数の関数として、一段階および二段階let−7aアッセイによって生じた正味シグナルを
図37に示す。
【0317】
従って、本発明は、一段階もしくは二段階アッセイ構成を使用した場合、二段階構成で鋳型の1/10段階希釈を補正したとき、シグナル強度、検出限界、または動的範囲に著しい差異がないことを実証する。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、逆転写反応、ポリメラーゼ連鎖反応、および侵入的切断アッセイ反応を全て含むアッセイを使用する、標的核酸[例えばRNA(miRNAなど)]の、単一ステップ(例えば単一チューブ)による検出を提供し、それによって時間と費用を節約し、試料の混入および/または手違いの可能性を減少させる。いくつかの実施形態では、本発明は、逆転写反応、ポリメラーゼ連鎖反応、および侵入的切断アッセイ反応を含むアッセイを使用する、標的核酸[例えばRNA(miRNAなど)]の、2ステップ反応での検出を提供し、その際、逆転写反応ステップから得た核酸(cDNAなど)の一部を、ポリメラーゼ連鎖反応および侵入的切断反応アッセイを含む後続ステップで使用する。
【0318】
I)低温侵入的切断アッセイ反応の一次プローブ
低温反応において、異なる一次プローブ長の影響を試験するために実験を設計し実施した。標的ハイブリダイゼーション領域が8、9および10塩基対長の一次プローブを50℃のINVADER反応で試験した。
【0319】
1.INVADERアッセイ用オリゴヌクレオチド:
【表44】
【0320】
2.長さが異なるプローブによるlet−7aアッセイの図式
【表45】
【0321】
3. 0.67μM 1716−94−1、0.4μM 1716−94−3、0.4μM 1716−94−4、0.4μM 1716−94−8、2単位/μl MMLV、0.033単位/μl TaqPol、6.7ng/μl CLEAVASE VIII酵素;0.25μM 23−210アーム3−FAM FRETカセットと共に610
6、610
5、610
4、6,000、600、60、またはゼロコピーのlet−7a RNAを含む、20μlの10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、0.25mM各dNTP中で、1716−94−1プローブによるLet−7aアッセイを実施した。温度プロフィールは、42℃で30分間;95℃で1分間;95℃で20秒間、次いで60℃で1分間の25サイクル;99℃で6分間;50℃で30分間であった。
【0322】
4. 0.67μM 1716−94−10もしくは1716−94−11、0.4μM 1716−94−3、0.4μM 1716−94−4、0.4μM 1716−94−8、2単位/μl MMLV、0.033単位/μl TaqPol、6.7ng/μl CLEAVASE VIII酵素;0.25μM 23−204アーム4−FAM FRETカセットと共に610
6、610
5、610
4、6,000、600、60、またはゼロコピーのlet−7a RNAを含む、20μlの10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、0.25mM各dNTP中でプローブ1716−94−10もしくは1716−94−11によるLet−7aアッセイを実施した。温度プロフィールは、42℃で30分間;95℃で1分間;95℃で20秒間、次いで60℃で1分間の25サイクル;99℃で6分間;50℃で30分間であった。
【0323】
let−7aコピー数の関数として、1716−94−1、1716−94−10、もしくは1716−94−11プローブを用いるlet−7aアッセイによって生じた正味シグナルを
図38に示す。
【0324】
従って、本発明は、8〜10塩基対長の[例えば標的核酸(miRNAなど)に関連する]標的ハイブリダイゼーション領域を有する一次プローブが、アッセイで異なるレベルで機能することを実証する。具体的には、一次プローブの長さが伸長するにつれて、シグナル強度も増大し(例えば、
図38、プローブ1716−94−1を参照)、一次プローブの長さが減少すると、シグナル強度も減少する(例えば、
図38、プローブ1716−94−11を参照)。
【0325】
J)プローブ長および濃度
標的ハイブリダイズ領域の長さが異なる一次プローブを用いて、アッセイの動的範囲を拡大することができるかどうか判定するために実験を行った。この場合は、8対10bpを試験した。さらに、10bpを含む一次プローブの濃度は異なった。
【0326】
1. 0.67μM 1716−94−1;0.067、0.167、もしくは0.33μM 1716−94−11;0.4μM 1716−94−3、0.4μM 1716−94−4、0.4μM 1716−94−8、2単位/μl MMLV、0.033単位/μl TaqPol、6.7ng/μl CLEAVASE VIII酵素;0.25μM 23−210アーム3−FAMと0.25μM 23−204アーム4−FAM FRETカセットと共に610
6、610
5、610
4、6,000、600、60、またはゼロコピーのlet−7a RNAを含む20μlの10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、0.25mM各dNTP中で、動的範囲が拡大したLet−7aアッセイを実施した。温度プロフィールは、42℃で30分間;95℃で1分間;95℃で20秒間、次いで60℃で1分間の25サイクル;99℃で6分間;50℃で30分間であった。
【0327】
let−7aコピー数の関数として、異なる割合で得られた1716−94−1および1716−94−11プローブ用いる、let−7aアッセイによって発生した正味シグナルを
図39に示す。
【0328】
従って、本発明は、0.067μM〜0.33μMの一次プローブの濃度が、本発明のアッセイで機能することを実証し、その際、いくつかの実施形態では、より高濃度のプローブ(例えば0.33μM)を使用すると、低濃度(例えば0.067μM)の使用と比較してアッセイ感度は上昇する。従って、いくつかの実施形態では、本発明の検出アッセイ(例えば逆転写反応、ポリメラーゼ連鎖反応、および侵入的切断アッセイ反応、ならびに検出構造を含む)で一次プローブの濃度を修正(例えば上昇)すると、反応感度は修正(例えば上昇)される。
【0329】
K)Let−7アイソフォームの特異的判別
Let−7の密接に関連するアイソフォーム(例えばLet−7変異体)間を区別するLet−7aアッセイの能力を試験するために実験を設計し実施した。
【0330】
使用したlet−7変異体:
【表46】
【0331】
0.67μM 1716−94−1、0.4μM 1716−94−3、0.4μM 1716−94−4、0.4μM 1716−94−8、2単位/μl MMLV、0.033単位/μl TaqPol、6.7ng/μl CLEAVASE VIII酵素;0.25μM 23−210アーム3−FAM FRETカセットと共に610
5、610
4、6,000、600、60、またはゼロコピーのlet−7a RNAを含む、20μlの10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、0.25mM各dNTP中でLet−7aアッセイを実施した。温度プロフィールは、42℃で30分間;95℃で1分間;95℃で20秒間、次いで60℃で1分間の25サイクル;99℃で6分間;49℃で30分間であった。
【0332】
let−7a、let−7c、let−7e、またはlet−7fコピー数の関数として、let−7aアッセイによって発生した正味シグナルを
図40に示す。
【0333】
従って、本発明は、本明細書に記載した核酸[例えばRNA(miRNAなど)]検出アッセイ(例えば、逆転写反応、ポリメラーゼ連鎖反応、および侵入的切断アッセイ反応、ならびに検出構造含む)が、その変異体配列(例えばLet−7c)と比較して、標的核酸(例えばLet−7a)に、100倍の特異性を示すことを実証する。
【0334】
L)内部標準としてlet−7a miRNAおよびU6 RNAの二重アッセイ。
【0335】
同じ反応槽で、それぞれが別々のmiRNAに対応する、2つの蛍光シグナルの検出を試験するために実験を設計し実施した。
【0336】
1. FAM色素に伝える範囲拡張let−7aアッセイ、およびRED色素に伝えるU6 RNAアッセイの図式。
【表47】
【0337】
2. 0.67μM 1716−94−1;0.33μM 1716−94−11;0.4μM 1716−94−3、0.4μM 1716−94−4、0.4μM 1716−94−8、0.4μM 1716−96−5;0.04μM 1716−96−4;0.04μM 1716−96−8;2単位/μl MMLV、0.033単位/μl TaqPol、6.7ng/μl CLEAVASE VIII酵素;0.25μM 23−210アーム3−FAM、0.25μM 23−204アーム4−FAM FRET、および0.25μMアーム7−REDカセットを含む、20μlの10mM MOPS(pH7.5)、7.5mM MgCl
2、0.25mM各dNTP中で、U6で二重にしたLet−7aアッセイを実施した。let−7a、およびU6 RNA、または異なる組織由来の全RNA(Clontech)を既知量含むアリコートを試料として使用した。温度プロフィールは、42℃で30分間;95℃で1分間;95℃で20秒間、次いで60℃で1分間の20サイクル;99℃で6分間;50℃で10分間であった。
【0338】
3. let−7a/U6二重アッセイによって発生したLet−7aおよびU6特異的シグナルを以下に示す。
【表48】
【0339】
上記データに示すように、本発明は、一段階反応(例えば単独反応槽)で2個の別個のmiRNAを同時に増幅し検出できること実証する。
【0340】
M)癌に伴うmiRNAを検出する設計
本発明を開発中、癌に伴う様々なmiRNAを検出できる数個のオリゴヌクレオチドを生成した。以下のガイドライン従ってオリゴヌクレオチドを設計した。
【0341】
1)6塩基対のRTプライマー−miRNAハイブリダイズ領域。
【0342】
2)以下の3つの方法を使用する、標的とするmiRNAとハイブリダイズすると、同軸性積層体を形成するRTプライマー。
【0343】
a.RTプライマーの5’末端がそれ自体に折り畳まれて、miRNAの3’末端に積層するヘアピンを形成する。
【0344】
b.DNAオリゴヌクレオチドを加えて、一度miRNAとハイブリダイズすると同軸性積層体を形成するRTプライマーとハイブリダイズさせる。
【0345】
c.2’−O−メチル化オリゴヌクレオチドを加えて、一度miRNAとハイブリダイズすると同軸性積層体を形成するRTプライマーとハイブリダイズさせる。
【0346】
3)9塩基対のPCRプライマーcDNAハイブリダイズ領域。
【0347】
10および8塩基対のINVADERプローブは、それぞれアーム3および4を使用し、miRNAと相補する。
【0348】
これらのガイドライン従って設計したオリゴヌクレオチドを
図41に記載する。
【0349】
様々な長さの一次プローブおよびPCRプライマーハイブリダイズ領域を有する、let−7aおよびmiR−16の追加の設計を
図42に示す。
【0350】
この実施例で使用した全てのオリゴヌクレオチドの一覧を
図43に記載する。
【0351】
上記明細書に記載した全刊行物および特許を参照により本明細書に組み込む。本発明の範囲および趣旨から逸脱しない、本発明の記載の方法および系の様々な変更形態および変形形態は、当業者には明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関して記載されているが、特許請求する本発明は、そのような具体的実施形態に極度に限定すべきではないことは理解されるものとする。実際、分子生物学、遺伝学、または関連分野の当業者に明白な、本発明を実施するために記載された方式の様々な変更形態も、特許請求の範囲内にあるものとする。