【実施例1】
【0026】
図1から
図3において、この発明の実施例1に係る架線磨き用先端工具(以下、先端工具と略す。)1及びこの先端工具1が装着される間接活線作業用の把持工具の一例である絶縁ヤットコ100が示されている。
【0027】
絶縁ヤットコ100は、公知のものであるがその構成について
図2、
図3を用いて概説すると、作業者が掴む相対的に径の太い支持棒101と、この支持棒の先端に設けられた把持機構102と、この把持機構102を操作するための操作部(図示せず。)と、この操作部の動作を把持機構102に伝達する相対的に径の細い伝達棒103とを有して構成されている。
【0028】
更に、把持機構102は、特に
図3に示されるように、支持棒101の係合部101aのプレート間に挟持固定されて動かない固定把持部104と、伝達棒103に連結されていると共に係合部101aのプレート間に挟持され且つ軸部105を介して回転可能に軸支されて固定把持部104に遠近する方向に可動する可動把持部106とを有して構成されている。
【0029】
そして、固定把持部104は、特に
図2に示されるように、係合部101a側に配置された弧状部分104aと、この弧状部分104aの係合部101aとは反対側から延びる直線状部分104bとを有して構成されていると共に、可動把持部106は、係合部101a側に配置された弧状部分106aと、この弧状部分106aの係合部101aとは反対側から延びる直線状部分106bとを有して構成されている。固定把持部104と可動把持部106とが最も接近した状態では、
図2に示されるように、固定把持部104の弧状部分104aの内側面と可動把持部106の弧状部分106aの内側面とで囲まれた、架線200及び先端工具1の突出部25、25を収容可能な空間部107が形成される。
【0030】
先端工具1は、
図1に示される接続部材2を一対有して構成されている。すなわち、各接続部材2は、反転させることで、固定把持部104の直線状部分104bへも、可動把持部106の直線状部分106bへも装着することが可能となっている。もっとも、図示しないが、一方の接続部材2を固定把持部104の直線状部分104bへの装着専用の構成とし、他方の接続部材2を可動把持部106の直線状部分106bへの装着専用の構成としても良い。
【0031】
各接続部材2は、例えばアルミニウム合金等の金属により形成されているもので、
図2に示されるように、絶縁ヤットコ100の直線状部分104b、106bを収容可能な把持部収容空間21を内部に備えたボックス状を成し、把持部収容空間21は絶縁ヤットコ100の直線状部分104b、106bを挿入・抜去するための開口部21aが形成されて外部と連通している。把持部収容空間21の内幅は絶縁ヤットコ100の直線状部分104b、106bの厚みよりも僅かに大きなものとなっている。
【0032】
更に、そして、各接続部材2は、把持部収容空間21に収容された絶縁ヤットコ100の直線状部分104b、106bを保持するために、係合ピン22と、ピン受け部23と、コイルスプリング24とを備えている。
【0033】
係合ピン22は、円板状のヘッド部22aと、このヘッド部22aから延びる棒状の軸部22bとからなっている。ピン受け部23は、円筒状に形成されており、接続部材2の側面から突出したもので、その中央には、把持部収容空間21と連通するピン孔23aが形成されており、その軸方向の寸法はピン孔23aに外部から挿入された係合ピン22の先端の所要部分が収容空間21内に突出可能なものとなっている。更に、ピン孔23aの内径寸法は、ピン受け部23の開口と連通する側の部位では、コイルスプリング24が収容可能な内径寸法の部位となっていると共に、把持部収容空間21側の部位では係合ピン22が摺接可能な内径寸法の部位となっており、これにより、係合ピン22内には段差部が形成されている。
【0034】
コイルスプリング24は、係合ピン22の軸部22bに外装しつつピン穴23a内に配置されるもので、一端が係合ピン22のヘッド部22aに固定され、他端がピン孔23aの段差部に固定されると共に収縮した状態でピン孔23a内に収容される。しかるに、係合ピン22は、コイルスプリング24により、絶縁ヤットコ100の把持部104、106の直線状部分104b、106bを押圧する方向に付勢された状態となって、絶縁ヤットコ100の把持部104、106の直線状部分104b、106bを接続部材2の収容空間21の内面に押し付けて保持している。
【0035】
ところで、この実施例1の先端工具1では、
図1から
図3に示されるように、接続部材2の収容空間21の開口端から絶縁ヤットコ100の空間部107内に向かって延びる突出部25が形成されている。この突出部25は、絶縁ヤットコ100の直線状部分104b、106bを開口部21aから収容空間21内に挿入し、或いは開口部21aから収容空間21外に抜去するための領域を確保するために、開口部21aから収容空間21の軸方向に沿って所要寸法ほど直線状に延出した基部25aと、この基部25aに連接し係合ピン22側に向けて半円の円弧状に湾曲した湾曲部25bとを有する形状となっている。そして、湾曲部25bは、半円の円弧状の曲面26を備えている。
【0036】
これにより、一の接続部材2の突出部25の湾曲部25bと他の接続部材2の突出部25の湾曲部25bとを、基部25a、25aが隙間なく接するように合せた場合には、
図2に示されるように、湾曲部25b、25bの曲面26、26が連なり、円状の筒となる。そして、湾曲部25b、25bは、双方を合せて円筒形状となったときに下記する架線200の芯線201を囲むことができるように、曲面26の半円の半径寸法は架線200の芯線201の半径寸法より所要寸法ほど大きくなっている。
【0037】
そして、湾曲部25bの曲面26に複数の細い線状体を密に立設することにより、湾曲部25bは曲面26にブラシ27が形成されたものとなっている。ブラシ27を構成する線状体の曲面26から延びる寸法は、湾曲部25b、25b内の架線200の芯線201に先端が接する程度であっても、湾曲部25b、25b内の架線200の芯線201に接して先端が座屈する程度であっても良い。
【0038】
上記した先端工具1の構成に基づき、この先端工具1を用いて架線200の芯線201を磨く工程の一例を説明する。
【0039】
まず、
図3に示されるように、架線200から被覆を剥がして芯線201が露出した状態に加工すると共に、絶縁ヤットコ100の把持部104、106に先端工具1の接続部材2、2を外装した後、固定把持部104と可動把持部106とが開いた状態のまま、絶縁ヤットコ100を持ち上げる等して架線200の芯線201に近接させて、架線200の芯線201が固定把持部104と可動把持部106との間に位置するようにする。
【0040】
次に、架線200の芯線201が固定把持部104と可動把持部106との間になったら、絶縁ヤットコ100を持ち上げ或いは反対に引き下げる等して絶縁ヤットコ100を変位させ、固定把持部104に外装された接続部材2の突出部25の曲面26に近接した位置に架線200の芯線201が存するようにする。そして、絶縁ヤットコ100の操作部を操作して固定把持部104に可動把持部106を接近させる。これにより、可動把持部106に外装された突出部25の曲面26も架線200の芯線201側に向かうので、双方の突出部25の湾曲部25bが合うまで絶縁ヤットコ100の操作部を操作し、
図2に示されるように、双方の突出部25の湾曲部25bで形成された円状の筒内に架線200の芯線201を収容する。
【0041】
最後に、絶縁ヤットコ100が閉じた状態、すなわち、双方の接続部材2の突出部25の湾曲部25bが閉じた状態のまま絶縁ヤットコ100を動かして、架線200の軸方向に沿って前進、後退するかたちで変位させる。これにより、架線200の芯線201の側面に対し円周方向に沿って曲面26に形成されたブラシ27が360度の範囲で囲み且つ接した状態にあるので、ブラシ27で架線200の芯線201を磨くことができる。
【0042】
しかも、架線200の芯線201はその全周を接続部材2の突出部25の湾曲部25bにより囲まれた状態にあるので、絶縁ヤットコ100を動かしても、架線200の芯線201を磨くときに、架線200の芯線201から接続部材2、2のブラシ27が外れることがない。
【実施例2】
【0043】
図4から
図6において、この発明の実施例2に係る架線磨き用先端工具(以下、先端工具と略す。)1及びこの先端工具1が装着される間接活線作業用の把持工具の一例である絶縁ヤットコ100が示されているが、絶縁ヤットコ100は実施例1で説明したものと同じなのでその説明は省略する。
【0044】
そして、先端工具1についても、先の実施例1と同一の構成については同一の符号を付してその説明を簡略化、先の実施例1と異なる構成を中心に説明していく。
【0045】
先端工具1は、
図4に示されるように、実施例1と同様の接続部材2と、接続部材2’とを有して構成されている。接続部材2’は、絶縁ヤットコ100の直線状部分104b、106bを収容空間21内に収容可能であること、収容空間21内に収容した絶縁ヤットコ100の直線状部分104b、106bを保持するための機構(係合ピン22等)を有すること、及び、本発明のブラシ27を有する曲面26が形成された突出部25を備えていることについては、先の実施例1と同様である。そして、接続部材2’は、この実施例2では、突出部25とは反対側に延出した延出部28を有し、延出部28の先端には下記する連結棒35を挿通させるための四角形状の貫通孔29が形成されている。貫通孔29は、架線200の軸方向に沿って延びている。
【0046】
そして、先端工具1は、
図5、
図6に示されるように、この実施例2では、2つの保持部材30を備えている。
【0047】
この保持部材30の一例を
図5及び
図6に基づいて説明すると、固定コネクタ部材31、可動コネクタ部材32、及び2つのバネ33、33とで基本的に構成されている。
【0048】
このうち、固定コネクタ部材31は、
図5(b)に示されるように、可動コネクタ部材32と対峙する側において、架線200を挟持するための円弧状の凹面を有する窪み部31aと、窪み部31aよりも小さな円弧状の凹面を有する窪み部31bとを備えており、窪み部31bは窪み部31aよりもバネ33側に位置している。また、固定コネクタ部材31は、窪み部31bよりも窪み部31a側において、下記する噛合用窪み部32cと噛み合うための噛合用突起部31cが形成されていると共に、窪み部31bに対し噛合用突起部31cとは反対側に窪み部31bの円弧状の凹面に連なる面を有する突出部31dを有している。更に、固定コネクタ部材31は、上方(接続部材2’の延出部28と同じ方向)に延出した延出部31dを有している。
【0049】
可動コネクタ部材32は、固定コネクタ部材31と対峙する側において、固定コネクタ部材31と対峙する側において、架線200を挟持するための円弧状の凹面を有する窪み部32aと、窪み部32aよりも小さな円弧状の凹面を有する窪み部32bとを備えており、窪み部32bも窪み部32aよりもバネ33側に位置している。そして、可動コネクタ部材32は、窪み部32bよりも窪み部32a側において、前記した固定コネクタ部材31の噛合用突起部31cと噛み合うための噛合用窪み部32cが形成されている。
【0050】
バネ33は、略C字状の線状体であって、一端が固定コネクタ部材31の外側側面に固定され、他端が可動コネクタ部材32の外側側面に固定されていると共に、その途中部位が固定コネクタ部材31の延出部31dを貫通したものとなっている。そして、バネ33は、固定コネクタ部材31の窪み部31aと可動コネクタ部材32の窪み部32aとが相対的に接近する方向に、可動コネクタ部材32若しくは可動コネクタ部材32と固定コネクタ部材31との双方を付勢しているが、その付勢力は相対的に小さいものとなっている。
【0051】
保持部材30は、上記のような構成とすることにより、架線200に窪み部31a、32aの下方の縁部位が当接すると、可動コネクタ部材32は窪み部31b、32bの凹面で形成される円の中心を回転中心として固定コネクタ部材31から離れる方向(開く方向)に回転して、架線200を固定コネクタ部材31の窪み部31aと可動コネクタ部材32の窪み部32aとの間まで送り込み、その後はバネ33の付勢力により可動コネクタ部材32が固定コネクタ部材31に向けて閉じる方向に回転するので、可動コネクタ部材32を絶縁ヤットコ100等で持ち上げたりしなくても、架線200を自動的に保持することができる。そして、可動コネクタ部材32と固定コネクタ部材31とは、架線200が軸方向に移動するのを許容する一方で架線200が磨き作業中にゆれない力で架線200を挟持したものとなっている。
【0052】
固定コネクタ部材31は、延出部31dの先端には下記する連結棒35を挿通させるための四角形状の貫通孔34が形成されている。貫通孔34は、架線200の軸方向に沿って延びている。
【0053】
連結棒35は、
図6に示されるように、四角形の棒状体のもので、例えば、連結棒35を、先端工具1の接続部材2’の延出部28に設けた貫通孔29に挿通させ、先端工具1が連結棒35の軸方向の中央部位に位置するように連結棒35を動かした後、2つの保持部材30、30の固定コネクタ部材31の延出部31dに設けた貫通孔29に挿通させるようになっている。
【0054】
そして、連結棒35に先端工具1、2つの保持部材30を吊り下げ状に装着した状態で、先端工具1の双方の突出部25の曲面26で形成される円状の筒の中心は、保持部材30の固定コネクタ部材31の窪み部31aと可動コネクタ部材32の窪み部32aとで形成される円の中心と一致したものとなっている。
【0055】
これにより、前記した実施例1の先端工具1を用いて架線200の芯線201を磨く工程と同様の工程順で、架線200の芯線201を固定把持部104と可動把持部106との間にするときに、架線200を先端工具1の両接続部材2、2’の突出部25よりも下方にした後、絶縁ヤットコ100を持ち上げることで、先端工具1の双方の突出部25の曲面26で架線200の芯線201を囲うと同時に、2つの保持部材30の固定コネクタ部材31の窪み部31aと可動コネクタ部材32の窪み部32aとで架線200を相対的に緩く挟持した状態にもなる。但し、架線200の芯線201を接続部材2、2’の湾曲部25b、25bで保持した後に、絶縁ヤットコ100を下方に動かして、保持部材30、30で架線200を保持するようにしても良い。
【0056】
よって、実施例2では、先端工具1の突出部25の曲面26に形成したブラシ27で架線200の芯線201を磨くときに、保持部材30で架線200が揺れないように保持することができるため、架線200の芯線201の磨き作業をトング等の間接活線工具を用いずに行えるので、作業を一人で行うことができる。
【0057】
また、実施例2では、引下線のコネクタ(図示せず。)を取り付けるときに、架線200の芯線201を磨く範囲が例えば15cmである場合には、保持部材30を連結棒35に沿ってずらして、先端工具1と各保持部材30との間隔を10cmとする調整を行うことができるものであり、保持部材30で架線200の芯線201が露出していない部位を挟持しつつ、接続部材2、2’のブラシ27が架線200の芯線201を磨くのに好適な配置とすることが可能になっている。