(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792253
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】導光路を有する透過型光学式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/347 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
G01D5/347 110V
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-207673(P2013-207673)
(22)【出願日】2013年10月2日
(65)【公開番号】特開2015-72177(P2015-72177A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2014年10月21日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】坂田 顕庸
【審査官】
井上 昌宏
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−047915(JP,U)
【文献】
特開平08−184465(JP,A)
【文献】
特開昭63−238428(JP,A)
【文献】
特開2008−020417(JP,A)
【文献】
特開2007−278927(JP,A)
【文献】
特開2008−034420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D5/26〜5/38
G01B11/00〜11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、受光素子と、スリットが形成されていて検出対象物と一緒に回転可能な回転ディスクと、前記発光素子に向けられた入口及び前記受光素子に向けられた出口を有する導光路と、を具備する透過型光学式エンコーダにおいて、
前記発光素子及び前記受光素子は、前記回転ディスクに対して同じ側に配置されており、
前記導光路は、前記回転ディスクの回転動作から独立して固定されており、
前記導光路は、前記入口及び前記出口のうちの少なくともいずれか一方において、該導光路の断面積が徐々に拡大する拡大部を有する、透過型光学式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透過型光学式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な透過型光学式エンコーダは、発光素子と、受光素子と、所定のピッチで配列されたスリットを有する回転ディスクと、を具備する。透過型光学式エンコーダにおいては、発光素子から発せられた光が回転ディスクに照射され、それにより、スリットを通過する光と、スリットが形成されていない部分によって遮断される光とによって明暗のパターンが生成される。そして、回転ディスクが回転する際の明暗のパターンの変化が受光素子によって検出される。それにより、回転ディスクと連動する検出対象の角度位置及び回転速度が得られるようになっている。
【0003】
このような光学式エンコーダにおいて、発光素子及び受光素子が回転ディスクに対して互いに反対側に設けられていてそれらの間に回転ディスクが位置する構成が採用されることがある。この場合、発光素子及び受光素子並びにそれらの実装部品などによって、光学系が占める空間が大型化する傾向がある。
【0004】
それに対し、発光素子及び受光素子が回転ディスクに対して同じ側に設けられる構成を有する回転ディスクが提案されている。例えば特許文献1には、周方向に沿って一定のピッチで配列されたスリットを有する移動板と、第1の領域において移動板に対向して設けられる発光素子と、第2の領域において移動体に対向して設けられる受光素子と、第1の領域及び第2の領域の間において、移動体に対して発光素子及び受光素子とは反対側に設けられる投影手段と、を具備する光学式エンコーダが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、スリットを含む複数のトラックが形成された回転ディスクと、各トラックに向けて配置された発光素子と、回転ディスクに対して発光素子と同じ側に設けられていて回転ディスクの回転軸線上に設けられる受光素子と、回転ディスクと一体的に回転する回転導光ディスクと、を具備する光学式エンコーダが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、一端が光源に向けられるとともに他端が光位置検知素子に向けられた光ファイバを導光手段として備える、光学式回転角度検出装置が開示されている。光ファイバは、回転軸に連結される回動部材によって支持されていて回転軸と一緒に回転するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−184465号公報
【特許文献2】特開2008−82958号公報
【特許文献3】特開平5−141960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された光学式エンコーダにおいては、投影手段が等倍反転光学系を形成するようになっている。そのため、光学系の構成が複雑化するとともに、十分な検出精度を保証するために光学系の各部品が正確に位置決めされる必要がある。したがって、エンコーダの製造コストが増大する。また、光学系の各部品の位置関係が変化しないことが要求されるので、エンコーダの用途が自ずと制限される。
【0009】
また、特許文献2及び特許文献3に記載された光学式エンコーダにおいては、発光素子と受光素子との間を光学的に接続する導光手段が、機械的に回転する回転部と連動するようになっている。とりわけ産業用機械に使用される電動機の動作を検出するためにエンコーダが使用される場合、高速動作する電動機に起因して比較的大きな機械的振動が発生する。そして、その振動が連結部を介して導光手段に伝達されることがある。そのため、導光手段と受光素子との間のギャップが変動し、それにより、エンコーダの検出精度が損なわれる虞がある。
【0010】
したがって、検出精度を損ねることなく小型化された透過型光学式エンコーダが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に係る
1番目の発明によれば、発光素子と、受光素子と、スリットが形成されていて検出対象物と一緒に回転可能な回転ディスクと、前記発光素子に向けられた入口及び前記受光素子に向けられた出口を有する導光路と、を具備する透過型光学式エンコーダにおいて、前記発光素子及び前記受光素子は、前記回転ディスクに対して同じ側に配置されており、前記導光路は、前記回転ディスクの回転動作から独立して固定されており、前記導光路は、前記入口及び前記出口のうちの少なくともいずれか一方において、該導光路の断面積が徐々に拡大する拡大部を有する、透過型光学式エンコーダが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンコーダの光学系をコンパクトな空間に収容できるので、小型化されたエンコーダが提供されるようになる。また、導光路を比較的簡易な構成にすることができるので、安価なエンコーダが提供される。さらに、導光路をエンコーダの回転部分から独立した構成にすることによって、外的要因によってもたらされうるエンコーダの検出精度の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光学式エンコーダを示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の変形例に係る光学式エンコーダを示す図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る光学式エンコーダを示す図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る光学式エンコーダを示す図である。
【
図5】本発明の第4の実施形態に係る光学式エンコーダを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図示される実施形態の構成要素は、本発明の理解を助けるためにそれらの縮尺が適宜変更されている。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学式エンコーダ10を示す図である。透過型光学式エンコーダ(以下、単に「エンコーダ」と称する。)10は、ハウジング12と、回転軸線Oの回りに回転可能な回転シャフト14と、回転シャフト14と一体的に回転する回転ディスク16と、発光素子18と、受光素子20と、導光路22と、を備えている。
【0016】
エンコーダ10のハウジング12は、回転ディスク16に対して概ね平行に延在する第1のハウジング部品24と、第1のハウジング部品24から直立するように設けられていてハウジング12の周壁を形成する第2のハウジング部品26と、を備えている。ハウジング12には、第1のハウジング部品24に対向する面において開口部28が形成されている。ハウジング12の開口部28は、発光素子18及び受光素子20が実装されるプリント回路基板30によって閉塞されている。
【0017】
回転シャフト14は、図示されない回転体に連結されていて回転体とともに回転軸線Oの回りに回転する。ここで、回転体は、エンコーダ10によってその回転運動に関する情報、すなわち角度位置、回転速度などが検出されるべき検出対象である。回転体は、例えば供給される電力を回転動力に変換する電動機でありうる。回転シャフト14の一端には回転ディスク16が連結されている。回転ディスク16は、周方向に間隔を空けて形成される複数のスリット(図示せず)を有する円盤状の部材である。したがって、回転ディスク16は、回転シャフト14とともに回転体と一緒に回転可能に形成されている。
【0018】
発光素子18は、公知の形態を有する発光素子、例えば発光ダイオード、レーザダイオードなどである。一実施形態において、発光素子18は、発光素子18から発せられる光を概ね平行光に変換するレンズ32を備えていてもよい。発光素子18から発せられた光は、後述するように導光路22を通って回転ディスク16に照射される。
【0019】
導光路22は、第1のハウジング部材24の内部を通って発光素子18と受光素子20との間を光学的に接続するように作用する。導光路22は、例えばポリカーボネート、アクリルなどのプラスチック製の導光部材、又は光ファイバなどによって形成される。導光路22は、一端において入口22aを有するとともに、他端において出口22bを有している。導光路22は、第1のハウジング部材24によって、概ねU字状の形態を有するように固定されている。図示されるように、導光路22の入口22aは発光素子18に向けられており、導光路22の出口22bは、回転ディスク16を介在させて受光素子20に向けられている。なお、図中においてハッチングが施された部位は、各部材間を進む光を表している。
【0020】
発光素子18から発せられた光は、導光路22の入口22aから導光路22の内部に進入する。一実施形態において、導光路22が鏡面からなる内部構造を有していてもよい。この場合、入口22aから入射された光が導光路22内部において鏡面反射を繰り返しながら進むので、平行性の高い光が出口22bから出射されるようになる。
【0021】
導光路22の出口22bから出た光は、回転ディスク16の所定の領域に向けられる。光は、回転ディスク16に形成されたスリットを通ってその一部が回転ディスク16を通過する。また、スリットが形成されていない部位に照射された光は、回転ディスク16によって遮断される。このようにして、回転ディスク16によって明暗のパターンが形成される。そして、この明暗のパターンは受光素子20によって検出されるようになっている。
【0022】
受光素子20は、公知の形態を有する受光素子、例えばフォトダイオード、フォトトランジスタなどである。受光素子20は、回転ディスク16によって生成される明暗のパターンを検出して回転体(例えば電動機)の回転運動の状況を検出する目的で使用される。すなわち、回転体が回転すると、それに連動して回転ディスク16が回転する。それにより、回転ディスク16によって生成される明暗パターンが変化する。受光素子20は、この明暗パターンの変化に応じて電気信号を出力する。受光素子20から出力された電気信号は、図示されない処理装置によって、回転体の角度位置及び回転速度などを表す情報に変換される。なお、発光素子18及び受光素子20は、それぞれ複数の発光素子及び受光素子をマトリクス状に配列させた集合体でありうる。
【0023】
本実施形態において、発光素子18及び受光素子20は、回転ディスク16に対して同じ側にそれぞれ設けられている。図示された実施形態において、発光素子18及び発光素子20は、回転ディスク16に対して第1のハウジング部品24とは反対側にそれぞれ設けられている。また、図示されるように、発光素子18及び受光素子20は、共通のプリント回路基板30において互いに離間して実装される。このような構成によれば、プリント回路基板30と外部の電源との間を接続する図示されないリード線も必要に応じて共通化できる。このように光学系の部品の一部が共通化されることによって、光学系をコンパクトな空間に収容できるようになる。したがって、エンコーダ10を小型化させられる。
【0024】
また、導光路22が、エンコーダ10の構成部品のうちの回転部分、すなわち回転シャフト14及び回転ディスク16の回転運動から独立して固定されるハウジング12に設けられている。それにより、回転ディスク16が回転している間、発光素子18、導光路22及び受光素子20からなる光学系は静止したままである。このように、本実施形態においては光学系が、回転部分が回転する際に発生しうる機械的振動から実質的に隔離されている。それにより、外部要因によって発生しうる振動によってエンコーダ10の検出精度が低下することを防止できる。
【0025】
続いて、本発明の他の実施形態について説明する。以下の説明において、既に述べた内容と重複する事項については説明を適宜省略する。また、同一又は対応する構成要素には同一の参照符号が使用される。
【0026】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る光学式エンコーダ10の変形例を示す図である。本変形例に係るエンコーダ10’においては、発光素子18及び受光素子20の位置が互いに置換されている。それにより、エンコーダ10’においては、導光路22の入口22a及び出口22bが互いに置き換えられる。すなわち、発光素子18が回転ディスク16の一部領域に向けられるようにプリント回路基板30に実装される。また、受光素子20は、発光素子18から離間した位置において共通のプリント回路基板30に実装される。エンコーダ10’は、光の進む向きが逆になる以外は、前述した第1の実施形態に係るエンコーダ10と同様の態様で動作し、同様の利点を享受しうる。
【0027】
図3は、本発明の第2の実施形態に係るエンコーダ40を示す図である。本実施形態に係るエンコーダ40においては、導光路42の内部構造が、入口42aから進入する光を全反射させるように所定の曲率を有している。この場合、入口42aから入射された光が導光路42内部において全反射を繰り返しながら進むので、平行性の高い光が出口42bから出射されるようになる。
【0028】
図4は、本発明の第3の実施形態に係るエンコーダ50を示す図である。本実施形態に係るエンコーダ50においては、レンズ52,54が導光路22の入口22a及び出口22bにそれぞれ設けられている。レンズ52,54は、それらを通過する光の向きを調整し、平行光を生成するように作用する光学要素である。このように導光路22の入口22a及び出口22bにレンズ52,54を設けることによって、それらレンズ52,54を通過した光が平行光に変わる。なお、このようなレンズは、導光路22の入口22a及び出口22bのいずれか一方のみに設けられていてもよい。
【0029】
図5は、本発明の第4の実施形態に係るエンコーダ60を示す図である。本実施形態に係るエンコーダ60においては、導光路62の入口62a及び出口62bにおいて、導光路62の断面積(光軸に対して直交する方向に切った断面の面積)が拡大するようにラッパ型の形状を有する拡大部64,66が形成されている。拡大部64,66は導光路62の断面積が入口62a又は出口62bに向かって徐々に拡大されるようになっている。
【0030】
発光素子18から発せられる光の平行性が高くない場合、発光素子18と導光路62との間のギャップが大きくなるのに従って、導光路62に入射されずに外部に漏れる光の量が増大する。それに対し、導光路62の入口62aに拡大部64を形成することによって、より大量の光が導光路62の内部に確実に導かれるようになる。
【0031】
また、受光素子20の受光部の有効面積が、導光路62から出射される光の幅に比べて大きい場合、受光素子20がその有効面積のうちの十分な範囲にわたって受光できなくなる場合がある。それに対し、導光路62の出口62bに拡大部66を形成することによって、受光素子20に対してより広範囲にわたって光を照射できるようになる。このように、拡大部64,66を設けることによって光学系の光損失を防止できる。なお、このような拡大部は、導光路62の入口62a及び出口62bのうちのいずれか一方のみに設けられてもよい。
【0032】
以上、本発明の種々の実施形態及び変形例を説明したが、他の実施形態及び変形例によっても本発明の意図される作用効果を奏することができることは当業者に自明である。特に、本発明の範囲を逸脱することなく前述した実施形態及び変形例の構成要素を削除ないし置換することが可能であるし、公知の手段をさらに付加することが可能である。また、本明細書において明示的又は暗示的に開示される複数の実施形態の特徴を任意に組合せることによっても本発明を実施できることは当業者に自明である。
【0033】
例えば、
図2を参照して、発光素子18及び受光素子20の配置を置き換える変形例について説明したものの、このような変更は他の実施形態に対しても同様に適用されうる。また、
図4を参照して説明したレンズ52,54を、
図5に示される拡大部64,66と組合せて使用してもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 エンコーダ
10’ エンコーダ
12 ハウジング
14 回転シャフト
16 回転ディスク
18 発光素子
20 受光素子
22 導光路
22a 導光路の入口
22b 導光路の出口
24 第1のハウジング部品
26 第2のハウジング部品
28 開口部
30 プリント回路基板
32 発光素子のレンズ
40 エンコーダ
42 導光路
42a 導光路の入口
42b 導光路の出口
50 エンコーダ
52 導光路入口のレンズ
54 導光路出口のレンズ
60 エンコーダ
62 導光路
62a 導光路の入口
62b 導光路の出口
64 導光路入口の拡大部
66 導光路出口の拡大部
O 回転軸線