(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、受信機が使用され得る無線通信システムの一例を示すブロック図である。無線通信システム100は、複数のアクセス端末104
1〜104
Nと通信できるアクセスネットワーク102を含む。アクセス端末104
1〜104
Nは、アクセスネットワーク102を介して互いに通信することもできる。アクセスネットワークからアクセス端末104
1〜104
Nのうちの1つへの通信リンクは、一般に順方向リンクと呼ばれ、アクセス端末104
1〜104
Nのうちの1つからアクセスネットワーク102への通信リンクは、一般に逆方向リンクと呼ばれる。
【0016】
アクセス端末104
1〜104
Nのいずれも、携帯電話、コンピュータ、ラップトップコンピュータ、電話、携帯情報端末(PDA)、オーディオプレイヤ、ゲームコンソール、カメラ、カムコーダ、オーディオデバイス、ビデオデバイス、マルチメディアデバイス、上記のいずれかのコンポーネント(プリント回路基板、集積回路および/または回路部品など)、あるいは無線通信をサポートできる他の任意のデバイスを表し得る。さらに、アクセス端末104
1〜104
Nは、静止していることも移動していることもあり、ディジタルデバイス、アナログデバイス、または両方の組合せを含んでよい。
【0017】
通信システム100は、無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)用の無線技術である、超広帯域(UWB)システムに対応し得る。通信システム100は、他の多くの通信プロトコルのうちの1つを使用してよい。例を挙げると、通信システム100はエボリューションデータオプティマイズド(EV−DO)および/またはウルトラモバイルブロードバンド(UMB)をサポートすることができる。EV−DOおよびUMBは、CDMA2000規格ファミリの一環として第3世代パートナーシッププロジェクト2(3GPP2)によって公表されたエアインタフェース規格であり、移動体加入者に広帯域インターネットアクセスを提供するために符号分割多元接続(CDMA)など、複数のアクセス技術を使用する。あるいは、通信システム100は、主として広帯域符号分割多元接続(W−CDMA)エアインタフェースに基づいてユニバーサル移動通信システム(UMTS)携帯電話規格を改良するための3GPP2内のプロジェクトである、ロングタームエボリューション(LTE)をサポートすることができる。通信システム100は、WiMAXフォーラムに関連するWiMAX規格をサポートすることもできる。これらは、例示的なプロトコルにすぎず、通信システム100はこれらの例に限定されない。
【0018】
通信システム100によって使用される実際の通信プロトコルは、特定の応用例、およびシステムに課された全体的な設計制約に依存する。本開示全体に渡って提示された様々な技術は、異種または同種の通信プロトコルの任意の組合せに等しく適用可能であり、無線または有線通信システム、あるいは他のタイプのシステムまたはデバイスで適用可能である。
【0019】
図2は、
図1のアクセス端末のうちの1つの一例を示す概念ブロック図である。アクセス端末104は、バス204または他の構造またはデバイスを介して受信機206および送信機208と通信可能な処理システム202を含む。開示された構成でバス以外の通信手段を使用できることを理解されたい。処理システム202は、オーディオ、ビデオ、マルチメディアおよび/または、通信のために送信機208に提供される他のタイプのデータを生成することができる。さらに、オーディオ、ビデオ、マルチメディアおよび/または他のタイプのデータは、受信機206で受け取られ、処理システム202によって処理され得る。
【0020】
処理システム202は、汎用プロセッサならびにソフトウェアプログラム用のデータおよび命令を格納するための揮発性または不揮発性メモリを含んでよい。メモリ210に格納され得るソフトウェアプログラムは、処理システム202によって様々なネットワークへのアクセスの制御および管理、ならびに他の通信および処理機能の提供のために使用することができる。ソフトウェアプログラムは、表示装置212およびキーパッド214など、様々なユーザインタフェースデバイスのための処理システム202へのインタフェースを提供することもできる。処理システム202は、畳み込み符号化、変調およびスペクトル拡散処理など、様々な信号処理機能をオフロードするための組込みソフトウェア層を有するディジタル信号プロセッサ(DSP)を含むこともできる。DSPは、電話アプリケーションをサポートする符号器機能を実施することもできる。
【0021】
IS−98規格などの規格は、受信機206などの受信機の厳密な直線性および雑音指数仕様を有することがある。こうした仕様に準拠するために、受信機内のLNAとダウンコンバータ間でRx段間SAWフィルタを使用することができる。この構成は、ダウンコンバータの前で高利得の低雑音増幅器を使用することにより、低い雑音指数を達成することができる。さらに、段間SAWフィルタは送信リーケージ・フラックスを減少させ、ダウンコンバータの直線性要件を緩和することができる。しかし、SAWフィルタの使用は一般にコスト、基板面積およびピンの追加を必要とする。従って、SAWフィルタを使用せずに低い雑音指数および高い直線性を提供する受信機アーキテクチャが望ましい。
【0022】
図3は、それぞれ異なる利得状態を通って進む利得遷移の一例を示すグラフである。受信機(例えば、
図2の受信機206)は、一般にG0、G1、G2、G3と呼ばれ得る、それぞれ異なる利得状態を有する。
図3で見ることができるように、受信機利得は一般にG0→G1→G2→G3と通って進む時のように、利得遷移で〜15dBだけ減少する。この点で、Rx信号の典型的な利得状態電圧は以下の通りである。
【0023】
G0:Rx信号は−110dBmから−90dBmの間である
G1:Rx信号は−90dBmから−75dBmの間である
G2:Rx信号は−75dBmから−60dBmの間である
G3:Rx信号は−60dBmから−45dBmの間である
G4:Rx信号>−45dBm
X軸は、受信機が入力電力を受け取るCDMA入力電力を表す。Y軸は、受信機の出力の電圧を表し、ここで受信機はアナログ−ディジタル変換器(ADC)に接続される。
図3を使用すると、受信機への入力電力が−100dBmである場合、受信機の出力の電圧は−62dBボルトである。入力電力が−90dBmに達する時、利得状態はG0からG1に変更される。増幅器の利得は、妨害波が検出されるかどうかに応じて変化する。図ではG0(例えば、
図7乃至
図10のG0−HL,G0−LL)の使用が示されているが、他の任意の利得状態(例えば、G1,G2またはG3)を使用できることにも留意されたい。
【0024】
図4Aは、低雑音増幅器(LNA)がLNAの出力部で通信信号を増幅するように構成される例示的な受信機システムを示す概念ブロック図である。LNAは、通信信号を低直線性受信モードまたは高直線性受信モードで増幅することができる。本技術のある構成によれば、受信機システム400は受信機206または
図2のアクセス端末104に対応し得る。受信機システム400は、受信機206またアクセス端末104に限定されず、他のタイプの電子システムまたは他のタイプの受信機に対応し得ることに留意されたい。
【0025】
図4Aで見ることができるように、LNA 402は電流バッファ406および408に結合された増幅器404(例えば、高利得増幅器)を含み、電流バッファ406および408はコンバイナ414に結合される。電流バッファ406は、スイッチ410および412にも結合される。増幅器404は、LNA 402の入力に結合される。増幅器406および408は、LNA 402の出力に結合される。
【0026】
妨害信号の存在に基づく高直線性受信モード(後述)では、スイッチ410は閉じており、スイッチ412は開いている。この構成は、電流バッファ408からの電流だけがコンバイナ414を入るように、閉じたスイッチ410によってもたらされた経路を介して電流バッファ406からの電流をコンバイナ414からそらす。この構成は、受信機の雑音指数(NF)を劣化させる(例えば、NFを3dBから5dBに増加させる)低い利得に対応すると見ることができる。従って、(例えば、増幅器404の使用による)低い利得および高い直線性を達成することができる。
【0027】
妨害信号の不在に基づく低直線性受信モード(後述)では、スイッチ412は閉じており、スイッチ410は開いている。この構成は、電流バッファ406と408の両方からの電流がコンバイナ414に入るように、電流バッファ406からの電流をコンバイナ414に向ける。従って、(例えば、両方のトランジスタ回路406,408の使用による)高い利得および低い雑音指数を低い直線性を犠牲にして達成することができる。従って、低い直線性はトレードオフであり、(2つの増幅器406および408を使用することによって)それを達成することができる。
【0028】
従って、高直線性受信モードは低い利得および劣化したNFに対応することがあり、低直線性受信モードは高い利得に対応し得る。受信機システム400は、低いNFを達成できる限り、妨害波が不在の場合には劣化した直線性を有してよい。さらに、受信機システム400は高い直線性を達成できる限り、妨害波が存在する場合には劣化したNFを有してよい。換言すると、妨害波の有無を検出できるならば、低いNFと高い直線性を必ずしも同時に達成する必要はない。従って、妨害波の有無を検出できるので、堅牢な受信機設計は必要ない。信号中の妨害の有無の検出は、利得状態下で行うことができ、高直線性受信モードは、低直線性受信モードの利得に比べて、その利得状態でのより低い利得に対応し得る。
【0029】
例えば、妨害波が存在する場合(高直線性受信モードに対応する)、信号レベルは−110dBmから−90dBmに上げることができ、受信機NFは最大3dBから最大5dBへの増加が許される。しかし、低と高の両方の直線性受信モードにおいて、特定の規格(例えば、IS−98規格)の仕様に準拠できるほど高い利得を依然として実現することができる。LNAの(出力ではなく)入力部で高直線性受信モードと低直線性受信モードの間の遷移を制御することによって、NFの緩和をうまく利用することができ、LNAおよびダウンコンバータ(DnC)ミキサの3次歪み(triple-beat)IIP3(TB IIP3)を改善できることにも留意されたい。LNA 402の入力(404など)とLNA 402の出力(406および408など)の両方で増幅器を使用することによって、LNA 402の入力部と出力部の両方で低直線性受信モードと高直線性受信モード間の遷移を制御することが可能となる。
【0030】
コンバイナ414は、通信信号(例えば、RF信号)をダウンコンバートするように構成されたミキサ416に結合されてよい。ミキサ416は、ダウンコンバートされた信号をフィルタリングするように構成されたベースバンドフィルタ418に結合されてよい。ベースバンド信号は、受信機システム400の出力(例えば、Rx出力)に対応し得る。
【0031】
ミキサ416は、妨害波検出器420にも結合され得る。妨害波検出器420は、通信信号中の妨害の存在を検出するように構成される。これに関して、通信信号中の「妨害」は、通信信号中の干渉に対応し得る。妨害波検出器の使用については、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,130,602号(「‘602特許」)にさらに記載されている。
【0032】
例えば、
図4Bは、「‘602特許」の
図1であり、デュアルバンド、クワッドモードトランシーバのブロック図の一部を示しているが、しかし本開示によれば開示されたシステムおよび方法は符号分割多元接続、TDMA、GSM(登録商標)、シングルバンド他など、セルラデバイスの任意の構成で使用され、一般に本明細書では受信機と呼ばれ得る。受信機は、RFフィルタに結合されたアンテナ101と共に示されている。例を挙げると、RFフィルタはチップセット106に結合された出力を備えた無線周波数の表面弾性波(SAW)であってよい。チップセット106の内部は、適応フィルタ110に結合され得る低雑音増幅器(LNA)であるが、適応フィルタ110は必要ではない。適応フィルタ110は、RFバンドパスフィルタであってよい。適応フィルタ110にはミキサ112が結合され、発振器114がミキサ112に結合されている。ミキサの出力は、例を挙げると約0Hzであり得る。ノードは、プログラマブル可変減衰器を伴うミキサ112の出力から分岐し、プログラマブル可変減衰器は例を挙げると40dBパッドであって、ノードの後にではあるが、妨害波検出器118前に置かれてよい。妨害波検出器118の出力は、設定された電圧しきい値で比較器120またはアナログディジタル変換器に結合される。比較器の電圧しきい値は、例を挙げると40dB結合では30mVであってよい。プログラマブル可変減衰器は、妨害波検出器118からどんな信号も漏れてミキサ112へと戻らないようにする。ミキサ112の出力は、ローパスフィルタ(LPF)122にも結合される。この構成によって、妨害波検出器118はLPF 122がRF信号から妨害要素をフィルタリングする前にRF信号中の妨害の存在を検出することができる。RF信号および受信機内の干渉は、RF信号中の妨害と定義され得るが、本開示はRF信号中の妨害の存在を検出する妨害波検出器を使用する。
【0033】
図
4Aにおいて、妨害波検出器420は受信機400が低直線性受信モードにあるべきか、それとも高直線性受信モードにあるべきか判断できる処理装置422に結合される。上述されたように、通信信号中の妨害の存在は、LNA 402がどちらの直線性受信モード(高または低)を用いるかの根拠として使用することができる。具体的には、LNA 402は、妨害が検出される場合は高利得の低直線性モードとすることができ、または妨害が検出されない場合は低利得の高直線性モードとすることができる。処理装置422は、妨害波検出器420の出力に基づいて決定を行うことができ、モード間の遷移を制御することができる。
【0034】
本技術の一構成によれば、処理装置422はディジタル信号プロセッサ(DSP)であってよい。さらに、処理装置422は処理システム202の少なくとも一部に対応することがあり、または別個のプロセッサに対応し得る。
【0035】
図5は、
図4AのLNA 402の例示的な回路を示す概念ブロック図である。
図4Aの増幅器404は、通信信号の高利得増幅のために
図5のボックス404に含まれた回路で実装され得る。
図5の下部に、差動増幅器404がある。差動対増幅器404は、2つの入力と回路402に入力される信号を受け取る各トランジスタ414,415のゲートとを有する。入力トランジスタ414および415は、それぞれ入力信号VRF+およびVRF−を受け取る。V
RF+が小さい値の場合、i
RF+=g
mn1*V
RF+である。差動対増幅器404は、小信号用の線形増幅器として使用され得る。差動対は、差動モードまたは差動信号に応答する。また、回路404は2つの入力NMOS増幅器がそのソースを(
図5のグラウンドに接続されたインダクタを介して)互いに接続させており、入力がそのゲートであるので、ソース接地差動増幅器として知られている。差動アーキテクチャを使用することの1つの利点は、理想的にコモンモード信号が拒否されるということである。コモンモード信号が両方のゲートに現れるので、その差は0であり、それらは拒否される。トランジスタ回路408は、LNA 402の入力に接続された増幅器404とは異なり、LNA402の出力に接続される。トランジスタ回路408は、トランジスタ回路404用の差動カスコード段である。トランジスタ回路408は、それぞれ差動出力Vout+,Vout-に結合されたバイアストランジスタ409,411からなる。トランジスタ409,411の入力またはゲートは、バイアス電圧Vbias+,Vbias-に接続される。トランジスタ409および411はコモンゲート構成で接続され、トランジスタ414および415について低いインピーダンスを提供する。カスコードは、しばしば2つのトランジスタから構築される。カスコードは、出力から入力への直接の結合がないので、入出力アイソレーション(または逆伝送)を改善する。これはミラー効果を取り除き、従ってより高い帯域幅に寄与する。さらに、回路502,503内の左端のトランジスタのドレインは、受動ミキサ416に動作可能に接続された第1の出力135 Vout+に接続される。同様に、回路502,504内の右端のトランジスタのドレインは、受動ミキサ416に動作可能に接続された第2の出力136 Vout-に接続される。さらに、
図4Aの電流バッファ406は、
図5のボックス406内に含まれた回路で実装され得る。
図4Aのスイッチ410は、閉じている時は通信信号をミキサ416からそらす。この信号の方向転換は利得を減少させ、高直線性のより低い利得受信モード(例えば、受信機システム400のNFを劣化させる)に対応することが見られる。さらに、図
4Aの電流バッファ408は、上述された両方のシナリオで増幅器408からの電流が合計されるので、通信信号を低直線性受信モードまたは高直線性受信モードで処理するための
図5のボックス408内に含まれた回路で実装され得る。すなわち、408は常にオンである。もう一方で、スイッチ412が閉じており、スイッチ410が開いている場合、増幅器406からの電流は低直線性モードでしか合計されない。利得制御Vcontrolは、増幅器406がバイアスオンであるか、それともオフであるか判断する。Vcontrol「オン」でスイッチ410は閉じ、スイッチ412は開き、増幅器406からの電流はV
DDに短絡される。Vcontrol「オフ」でスイッチ410は開き、スイッチ412は閉じ、増幅器406からの電流は増幅器408からの電流と合計される。
【0036】
さらに、
図5のエレメント502はLNA 402の負荷に対応し得る。このブロック図では差動回路が示されているが、シングルエンド回路を使用することもできる。
図5の上部に、2つのPMOSトランジスタを含む回路502がある。トランジスタは、能動負荷である。回路502の2つのトランジスタは、ボックス404内の2つのNMOSデバイス414、415にバイアスをかける働きをする。ボックス502内の2つのトランジスタのソースは、供給電圧V
DDに接続される。回路502内の左端トランジスタ503のドレインは、トランジスタ409のドレインに接続される。同様に、回路502中の右端のトランジスタ504のドレインは、トランジスタ411のドレインに接続される。
【0037】
従って、受信機400のNFは妨害が存在する場合には劣化され得るが、妨害が不在の場合には低い雑音指数を達成することができる。受信機400は、妨害波が存在する場合にはより低いフロントエンド(しかし、依然としてIS−98規格などの規格に準拠する)利得を有して、より高い直線性を達成し、妨害が不在の場合にはより高いフロントエンド利得に切り換えて、低いNFを達成するように構成される。受信機400を再構成できることによって、段間SAWフィルタの使用をなくしつつ特定の規格(例えば、IS−98規格)の直線性および雑音指数の仕様にそれが準拠することを可能にする。
【0038】
図6は、低雑音増幅器(LNA)がLNAの入力部で通信信号を増幅するように構成される例示的な受信機システムを示す概念ブロック図である。LNA 602は、通信信号を低直線性受信モードまたは高直線性受信モードで増幅することができる。本技術のある構成によれば、受信機システム600は受信機206または
図3のアクセス端末104に対応し得る。受信機システム600は、受信機206またはアクセス端末104に限定されず、他のタイプの電子装置または他のタイプの受信機に対応し得ることに留意されたい。
【0039】
図6で見ることができるように、LNA 602は、セレクタ614に結合された増幅器606および608を含む。妨害信号の存在に基づく高直線性、低利得受信モードでは、セレクタ614は増幅器608に対応するブランチを選択することができ、電流は増幅器608を通ってミキサ616に向けられ得る。この構成は、受信機の雑音指数(NF)の劣化(例えば、NFが3dBから5dBに増加され得る)に対応すると見ることができる。従って、(例えば、増幅器608の使用による)低い利得および高い直線性を達成することができる。
【0040】
妨害信号の不在に基づく低直線性、高利得受信モードでは、セレクタ614は増幅器606に対応するブランチに設定され得、電流は増幅器606を通ってミキサ616に向けられ得る。従って、高い利得および低い直線性が達成され得る。増幅器606と608は、決して両方同時にはオンにならない。増幅器608がオンの時、増幅器606はオフである。これは利得状態G0、高直線性状態である。増幅器606がオンの時、増幅器608はオフである。これは利得状態G0、低直線性状態である。これは、
図7に示されている。
【0041】
従って、高直線性受信モードは低い利得および劣化したNFに対応することがあり、低直線性受信モードは高い利得に対応し得る。受信機システム600は、低いNFを達成できる限り、妨害波が不在の場合には劣化した直線性を有してよい。さらに、受信機システム600は高い直線性を達成できる限り、妨害波が存在の場合には劣化したNFを有してよい。換言すると、妨害波の有無が検出可能であれば、低いNFと高い直線性を必ずしも同時に達成する必要はない。信号中の妨害の有無検出は利得状態下で行うことができ、高直線性受信モードは低直線性受信モードの利得に比べてその利得状態でのより低い利得に対応し得る。
【0042】
例えば、妨害波が存在する場合(高直線性受信モードに対応する)、信号レベルを−110dBmから−90dBmに上げることができ、受信機NFは最大3dBから最大5dBへの増加が許される。しかし、低と高の両方の直線性受信モードにおいて、特定の規格(例えば、IS−98規格)の仕様に準拠できるほどの高い利得を依然として実現することができる。LNAの(出力ではなく)入力部で高直線性受信モードと低直線性受信モードの間の遷移を制御することによって、NFの緩和をうまく利用することができ、LNAおよびDnCミキサのTB IIP3を改善させることができることにも留意されたい。
【0043】
ミキサ616は、通信信号を復調するように構成され得、ベースバンドフィルタ618に結合され得る。ベースバンドフィルタ618は、復調された信号からベースバンド信号を提供するように構成される。ベースバンド信号は、受信機システム600の出力(例えば、Rx出力)に対応し得る。
【0044】
ミキサ616は、妨害波検出器620にも結合され得る。妨害波検出器620は、通信信号中の妨害の存在を検出するように構成される。
【0045】
妨害波検出器620は、受信機600が低直線性受信モードにあるべきか、それとも高直線性受信モードにあるべきか判断できる処理装置622に結合される。上述したように、通信信号中の妨害の存在はLNA 402がどちらの直線性受信モード(高または低)を用いるかの根拠として使用することができる。具体的には、LNA 602は妨害が検出される場合は低利得の高直線性受信モードとされ、妨害が検出されない場合は高利得の低直線性受信モードとされ得る。処理装置622は、妨害波検出器620の出力に基づいて決定を行うことができ、モード間の遷移を制御することができる。
【0046】
本技術の一構成によれば、処理装置622はディジタル信号プロセッサ(DSP)であってよい。さらに、処理装置622は処理システム202の少なくとも一部に対応することがあり、または別のタイプのプロセッサに対応し得る。
【0047】
図7は、
図6のLNA 602の例示的な回路を示す概念ブロック図である。
図7では、LNAの特徴は直線性を調整するように調整される。例えば、
図6のトランジスタ回路606は
図7のボックス606内に含まれた回路で実装されてよい。ボックス606内の回路は高直線性、低利得受信モード(例えば、受信機システム600のNFを劣化させる)に対応し得る。増幅器606は、それぞれ信号Vrf+およびVrf-を受け取る各トランジスタのゲート614,615を備えた2入力の差動対増幅器である。入力トランジスタ614,615は、それぞれ入力信号Vrf+およびVrf-を受け取る。また、回路606は2つの入力NMOS増幅器がそのソースを(
図5のグラウンドに接続されたインダクタL1を介して)互いに接続させており、入力がそのゲートであるので、ソース接地差動増幅器として知られている。2つの異なるインタクタ値LlおよびL2は、トランジスタ回路606および608の2つの異なる負荷を表す。トランジスタ614,627,615および619は、相互コンダクタンス(gm)段である。gmデバイスは、入力電圧および出力電流を入力する。(LNAへの入力は電圧であり、出力は電流である)。さらに、
図6の増幅器608は
図7のボックス608内に含まれた回路を用いて実装され得る。ボックス606内の回路は低直線性、高利得受信モードに対応し得る。増幅器608は、カスコード構成を各レッグが有する、異なる差動増幅器でもある。下部の2つの増幅器627,619のゲートは信号入力であり、上部の2つの増幅器621,623のゲートはバイアス入力である。トランジスタ621,623は「カスコード」デバイスの働きをし、トランジスタ614,627および619,605の低いインピーダンスを提供する。カスコードトランジスタ621のソースは、トランジスタ614および618のドレインに結合される。同様に、カスコードトランジスタ623のソースは、トランジスタ615および619のドレインに結合される。キャパシタ628および629は、結合キャパシタである。さらに、
図7のエレメント702はLNA 602の負荷に対応し得る。2つのPMOSトランジスタ712,713は、能動負荷の働きをし、それぞれカスコードトランジスタ621および623のドレインにバイアスをかける。上述したように、
図7で利得状態G0が示され述べられているが、任意の他の利得状態(例えば、G1,G2またはG3)を使用することができる。このブロック図では差動回路が示されているが、シングルエンド回路を使用することもできる。従って、増幅器606は利得状態0、低い直線性および高い利得の間にそれが電流を伝えていることを意味するG0−LLとマーキングされている。G0−LLモードでは、トランジスタ614および615はオンであり、627および619はオフである。トランジスタ614および615は、1/2 L1の縮退インダクタンスを見込む(614または615のソースから625、グラウンドへの経路を参照)。縮退インダクタンスが下がると、低い直線性、高い利得および良好なNFがもたらされる。増幅器608は利得状態0、高い直線性および低い利得の間にそれが電流を伝えていることを意味するG0−HLとマーキングされている。G0−HLモードでは、低い雑音指数を犠牲にして、またはそれと引き換えに良好な直線性が達成される。トランジスタ627および619はオンであり、トランジスタ614および615はオフである。G0−HLモードでは、トランジスタ回路614,615が低直線性増幅器であるので、トランジスタ回路614,615をオフにする。従って、トランジスタ回路608はオンであり、トランジスタ回路606はオフである。トランジスタ627および619は、高い縮退インダクタンス、L2プラス1/2 L1、624および1/2 625を見込む。縮退インダクタンスが高くなると、高い直線性、低い利得および劣ったNFがもたらされる。縮退インダクタンスを変更して、直線性を変化させる利得が変更される。
【0048】
従って、受信機600のNFは妨害が存在する場合には劣化され得るが(高い雑音指数)、妨害が不在の場合には低い雑音指数を達成することができる。受信機600は、妨害波が存在する場合にはより低いフロントエンド(しかし、依然としてIS−98規格などの規格に準拠する)利得を有してより高い直線性を達成し、妨害が不在の場合にはより高いフロントエンド利得に切り換えて低いNFを達成するように構成される。受信機600を再構成できることによって、段間SAWフィルタの使用をなくしながら、それが特定の規格(例えば、IS−98規格)の直線性および雑音指数の仕様に準拠することが可能となる。
【0049】
図8は、通信信号を増幅する異なるLNA構成を有する例示的な受信機システムを示す概念ブロック図である。
図8は、ミキサに適用される信号強度を制御することによって、低直線性受信モードと高直線性受信モードの間で遷移する3つの構成を示している。これらの3つの構成は、
図8にG0−HL 1〜3として示されている。
図8に示された回路は差動モードであり、回路の左側に関して述べられたG0−HL操作は、回路の右側に適用されることに留意されたい。このブロック図では差動回路が示されているが、シングルエンド回路を使用することもできる。さらに、上述したように
図8ではG0が示され述べられているが、他の任意の利得状態(例えば、G1,G2またはG3)を使用することができる。
【0050】
これに関して、G0−HL 1の構成は、LNAの入力部においてモード間で遷移することに対応する。高直線性受信モードでは、NMOSトランジスタ818 MN1および829 MN2は混変調(XMOD)積キャンセルのためにオンである。G0−HL 1でミキサ416に印加された電流は、NMOSトランジスタ818 MN1および829のMN2によって吸い上げられ、それによって直線性が高まる。低直線性受信モードでは、トランジスタ818 MN1はオフであり、トランジスタ829 MN2はオンであり、L1〜0.45(L1+L2)である。ミキサにより多くの電流が流れるにつれて、直線性が減少する。さらに、
図8のG0−HL 1は任意の周波数帯(例えば、450MHz周波数帯)で実装されてよい。
【0051】
G0−HL 2の構成は、LNAの出力部のモード間の遷移に対応する。G0−HL 2でミキサに印加された電流は吸い上げられ、それによって直線性が高まる。この構成では、PMOSトランジスタ805 MP2がオンの時、LNAは電流ブリーディングのために抵抗器808 R1を調整し、それと同時に何らかの利得デブーストを提供することによって低直線性受信モードから高直線性受信モードに遷移することができる。R1は、微調整を提供する。R1は、トランジスタ805から流出される電流を調整する。R1の値が高いほど、ミキサに流れる電流は大きくなり、ミキサの直線性は低下する。R1の値が低いほど、ミキサに流れる電流は小さくなり、ミキサの直線性は高まる。ミキサへの電流の流れを制御することによって、回路の直線性が制御されている。ミキサへの電流を減少させることによって、利得がデブーストされている。トランジスタ803 MP1は、
図8の右側の対応するトランジスタ806と共に、
図5のボックス502内のトランジスタに対応すると見ることができる。
図8の上部には、PMOSトランジスタ803および806を含む回路802がある。トランジスタは、能動負荷と称されることもある。回路802のトランジスタ803,806は、飽和領域で2つのNMOSデバイス818,819にバイアスをかける働きをする。ボックス802内のトランジスタ803〜806のソースは、供給電圧VDDに接続される。回路802内の左端のトランジスタ803,805のドレインは、トランジスタ821のドレインに接続される。同様に、回路802内の右端のトランジスタ804,806のドレインは、トランジスタ823のドレインに接続される。さらに、回路802内の左端のトランジスタ804,806のドレインは、受動ミキサ416に動作可能に接続される第1の出力Vout+,Vop,735に接続される。同様に、回路802内の右端のトランジスタ804,806のドレインは、パッシブミキサ416に動作可能に接続される第2の出力Vout-,Vom,736に接続される。
図8のG0−HL 2は、任意の周波数帯(例えば、450MHzの周波数帯)で実装されてよい。
【0052】
G0−HL 3の構成は、LNAの出力部においてモード間で遷移することに対応する。この構成では、LNAは分割カスコードトランジスタを使用し、ACC電流をVddに流出させることによって、低直線性受信モードから高直線性受信モードに遷移することができる。Vddに電流を流出させることによってミキサ416への電流が減少し、従って直線性が高まる。
図8のG0−HL 3は、
図5のボックス406内のトランジスタに対応すると見ることができる。
図9Aおよび9Bは、通信信号を増幅するさらなるLNA構成を有する例示的な受信機システムを示す概念ブロック図である。
図9Aの上部には、2つのPMOSトランジスタ903,904を含む回路902がある。トランジスタは「ダイオード接続」トランジスタであり、能動負荷と称されることもある。回路902の2つのトランジスタ903および903は、飽和領域で2つのNMOSデバイス915および920にバイアスをかける働きをする。ボックス902内の2つのトランジスタのソースは、供給電圧Vddに接続される。回路902内の左端のトランジスタ903のドレインは、トランジスタ930のドレインに接続される。同様に、回路902内の右端のトランジスタ904のドレインは、トランジスタ935のドレインに接続される。トランジスタ930および935は、それぞれトランジスタ915および920に対してカスコードトランジスタとして働く。トランジスタ915および920は、そのソースがそれぞれインダクタ906および909によってグラウンドに接続されているソース接地構成で配置される。バイアス電圧Vbは、カスコードトランジスタ930および935のゲートに接続される。さらに、回路902内の左端のトランジスタのドレインは、受動ミキサ416に動作可能に接続された第1の出力、出力ポジティブ(「Outp」)に接続される。同様に、回路902内の右端のトランジスタ904のドレインは、パッシブミキサ416に動作可能に接続される第2の出力、出力マイナス(「Outm」)に接続される。演算増幅器975は抵抗器965および970と共に、PMOSデバイス903,904にバイアスをかけるようにコモンモードフィードバックループを形成する。これによって、PMOSデバイス903,904の出力インピーダンスが向上する。トランジスタ945および950は、補助トランジスタである。主電流I
MAINの非線形性は、カスコードNMOSトランジスタ930によって感知される。より具体的には、カスコードNMOSトランジスタ930および935は、主トランジスタ915および920により、I
MAINの非線形性を感知する。この非線形性は、フィードフォワード(または補助)トランジスタ945および950に入力される。これらの補助トランジスタ945,950は、非線形入力に応答して電流I
AUXを生成する。実効電流I
SUMは、I
AUXとI
MAINの合計である。現在のI
AUXは、I
MAINの非線形成分をキャンセルし、それによって回路全体の変調間性能が向上する。補助トランジスタ対補助デバイス945および950は、I
MAINの非線形性を最適にキャンセルするように、弱反転領域でバイアスがかけられる。トランジスタ930のソースの電圧は、トランジスタ915からの非線形電流に応答する。この非線形電流による電圧の変化は、補助トランジスタ945によって感知され、出力ノードで合計される誤差電流をフィードフォワードする。主差動対デバイス915,920および補助装置945,950は、最適な相互変調性能に適した領域でバイアスがかけられる。
【0053】
図9Aを参照して、gm入力でのデブーストによって、より高い直線性主経路を提供することができ、混変調積XMODを補助経路からキャンセルさせることがより容易となり得る。しかし、gm入力でのデブーストにはDC消費の増加が必要となり得ることに留意されよう。トランジスタ930,935は、注入電流を提供する。トランジスタ920および933へのバイアスがオンの時、高い直線性状態G0HLが達成される。追加される電流によって、縮退インダクタ906がより大きくみえるようになる。縮退インダクタタの調整は、トランジスタ915,945および920,950からの不所望の電流、例えば干渉のキャンセルをもたらすことができる。よって、よりクリーンな信号をもたらし、従って直線性が向上する。トランジスタ920および933へのバイアスがオフの時、低い直線性状態G0LLが達成される。
図9Bに関して、NFは初期LNA相互コンダクタンスgmがより強力であることによって、gm出力におけるデブーストの実施により適し得る。トランジスタ980,985は、注入電流を提供する。追加された電流によって、縮退インダクタ922がより大きくみえるようになる。縮退インダクタタの調整は、トランジスタ916,995および921,998からの不所望の電流、例えば、干渉のキャンセルをもたらすことができる。これは、よりクリーンな信号をもたらし、従って直線性が高まる。
図9AのG0−HLは、
図7のG0−HLの変化に対応すると見ることができ、
図9BのG0−HLは、
図5のボックス406内のトランジスタに対応すると見ることができる。上述されたように、
図9Aおよび
図9BではG0が示され述べられているが、他の任意の利得状態(例えば、G1,G2またはG3)を使用することもできる。これらのブロック図では差動回路が示されているが、シングルエンド回路を使用することもできる。
【0054】
図10は、通信信号を増幅する異なるLNA構成を有する例示的な受信機システムを示す概念ブロック図である。
【0055】
図6は、LNA 110をさらに詳細に示す回路図である。LNA 110は、2つの差動入力信号端子200,201と、DCバイアス回路M 202と、DCバイアス回路C 203と、M1_main電界効果トランジスタ(FET)204と、M2_main FET 205と、M1_cancel FET 206と、M2_cancel FET 207と、2つのFET 209,210を含む第1のカスコード回路208と、2つのFET 212,213を含む第2のカスコード回路211と、2つのキャパシタ214および215と、第1の縮退インダクタL1 216と、第2の縮退インダクタL2 217と、2つのインダクタ219,220を含むLNA負荷218と、キャパシタ221と、2つの差動出力信号ノード222,223とを含む。全てのトランジスタ204〜207,209,210,212および213は、NチャネルFETである。インダクタ216,217,219および220、キャパシタ214,215および221は、半導体製造プロセスを使用してRFトランシーバ集積回路103上で形成された集積部品である。
【0056】
図示されるように、回路M 202にバイアスをかけると、カスコードFET 209および213のゲート上にDCバイアス電圧VBIAS1が供給される。また回路M 202にバイアスをかけると、主FET 204のゲート上にDCバイアス電圧VBIAS3が供給され、主FET 205のゲート上にDCバイアス電圧VBIAS4が供給される。これらのバイアス電圧は、主FET 204および205に飽和動作領域でバイアスがかけられるように設定される。回路C 203にバイアスをかけると、カスコードFET 210および212のゲート上にDCバイアス電圧VBIAS2が供給される。また回路C 203にバイアスをかけると、キャンセルFET 206のゲート上にDCバイアス電圧VBIAS5が供給され、キャンセルFET 207のゲート上にDCバイアス電圧VBIAS6が供給される。これらのバイアス電圧は、キャンセルFET 206および207が、そのしきい値下の動作領域でバイアスがかけられるように設定される。しきい値下の動作領域は、弱反転動作領域とも呼ばれる。
図6の例では、カスコードトランジスタ209,213,210および212にバイアスをかけるのに用いられる2つのバイアス電圧があるが、他の実施形態では全てのカスコードトランジスタのゲートは共に接続され、単一のDCのバイアス電圧を使用して、全てのカスコードトランジスタにバイアスをかける。
【0057】
図10は、LNAを高直線性受信モードと低直線性受信モードの間で遷移する2つの構成を示している。これらの2つの構成は、
図10ではG0−HL 1および2として示されている。また、
図10によってG0が示され述べられているが、他の任意の利得状態(例えば、G1,G2またはG3)を使用することができる。このブロック図では差動回路が示されているが、シングルエンド回路を使用することもできる。
【0058】
図10は、その利得、雑音指数および直線性が受信機全体の性能を最適化するようにシステム要件(例えば、利得モード)に応じて動的に調整可能である線形化LNAを示している。このLNAは2つを有する。その主要機能が入力信号を増幅すること(また主としてLNA雑音指数を定義すること)である主経路と、全体的なLNA直線性を向上させるために主経路のIM3電流をキャンセルするキャンセル(または線形化)経路である。主キャンセル経路は、デバイス1050,1052,1062および1064によって構成される。デバイスの残りは主経路に属し、または両方に共通である。
【0059】
主経路は、それぞれ異なる縮退インダクタを使用する、並列に接続された2つの差動入力対を有する。概念的には、一度にこれらの入力対のうちの1つだけがアクティブであるが、同時動作を可能にするように、このLNAを構成することが可能である。1016および1017によって構成された差動対は、より小さい縮退インダクタ(L3およびL4)を使用し、LNA直線性の低下を犠牲にしてより大きいLNA利得およびより低い雑音指数をもたらす。従って、この差動対は低直線性モード(G0−LL)で使用される。1014および1015によって構成された差動対は、より大きい縮退インダクタ(L1およびL2)を使用し、雑音指数の増加を犠牲にしてより小さいLNA利得および向上した直線性をもたらし、それはG0−HLで使用される。両方の差動対(1014−1015および1016−1017)に飽和領域でバイアスがかけられるが、そのバイアス電流はそれぞれ異なってよい。
【0060】
デバイス1050および1052の役割は、入力差動対(1014−1015または1016−1017)によって生成されたIM3電流をキャンセルするIM3電流を提供することによって、全体的なLNA直線性を向上させることである。この目的を達成するために、デバイス1050および1052は、しきい値下の領域でバイアスがかけられるが、入力差動対は飽和領域でバイアスがかけられる。主経路およびキャンセル経路からの信号電流およびIM3電流は、出力カスコードデバイス(1060、1064、1062および1066)のドレインで加算され、信号電流は構造的に(constructively)加算されるが、IM3電流はキャンセルされる結果、全体的なLNA直線性が向上する。1050および1052のバイアス電流およびサイズを適切に選ぶことによって、LNA直線性を最適化するようにIM3電流の大きさおよび位相を調整することが可能となる。
【0061】
デバイス1081および1086は、ブリーディング(bleeding)段を構成する。これらのデバイスは、オフの時はLNAの性能にほとんど影響を及ぼさない。しかし、オンの時はミキサ直線性によって全体的なRXチェーン直線性が制限されている場合に、LNAによってミキサに提供される電流の量を減少させるのにそれらを使用することができる。1060と1081(または1066と1086)の間のサイズ比によって、ミキサに最終的に送られる、入力差動対によって提供される電流量が制御される。
【0062】
G0−HL 1の構成は、LNAの入力部においてモード間で遷移することに対応する。この構成では、LNAは低直線性受信モードから高直線性受信モードに遷移することができる。その際、縮退インダクタは増加され得る。これは、NFの増加を犠牲にしてよりよい直線性を達成すると見られる。例えば、利得デブーストは5dBで行われてよい。さらに、インダクタ負荷については、NFは1.87dBから2.86dBになり得る。pチャネルMOSFET(PMOS)負荷については、NFは2.52dBから4.18dBになり得る。
図10のG0−HL 1は、
図7のG0−HLの変形に対応すると見ることができる。
【0063】
図10に見られるように、LlおよびL2ならびに対応するトランジスタは、高直線性受信モードで使用されてよい。さらに、L3およびL4ならびに対応するトランジスタは、低直線性受信モードで使用されてよい。
【0064】
G0−HL 2の構成は、LNAの出力部においてモード間で遷移することに対応する。この構成で、LNAは分割カスコードトランジスタを使用し、AC電流をVDDに流すことによって低直線性受信モードから高直線性受信モードに遷移することができる。観察される全体的なNF劣化は、
図10のG0−HL 1の構成のNF劣化に類似することがある。
図10のG0−HL 2は、
図5のボックス406内のトランジスタに対応すると見ることができる。
【0065】
図11は、受信機内の通信信号処理の例示的な操作を示す流れ図である。ステップ1102で、通信信号中の妨害の有無が検出される。ステップ1104で、通信信号を高直線性受信モードまたは低直線性受信モードで増幅することが、通信信号中の妨害の有無検出の出力に基づいて制御される。高直線性受信モードは、低直線性受信モードの利得に比べて、その利得状態でのより低い利得に対応する。
【0066】
図12は、受信機内で通信信号を処理するデバイスの機能性の一例を示す概念ブロック図である。デバイス1200は、通信信号中の妨害の有無を検出するモジュール1202を含む。デバイス1200は、通信信号中の妨害の有無検出の出力に基づいて通信信号を高直線性受信モードまたは低直線性受信モードで増幅するように制御するモジュールをも含む。高直線性受信モードは、低直線性受信モードの利得に比べて、その利得状態でのより低い利得に対応する。
【0067】
図2を参照すると、処理システム202はソフトウェア、ハードウェアまたは両方の組合せを使用して実装されてよい。例を挙げると、処理システム202は1つまたは複数のプロセッサで実装されてよい。プロセッサは汎用マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブル論理回路デバイス(PLD)、コントローラ、状態機械、ゲート制御論理、個別ハードウェアコンポーネント、あるいは計算または他の情報操作を実施できる他の任意の適切なデバイスであってよい。処理システム202は、ソフトウェアを格納する1つまたは複数の機械読取り可能媒体を含むこともできる。ソフトウェアはソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語または別のやり方で呼ばれようが、命令、データまたはその任意の組合せを意味すると広く解釈すべきである。命令は、コード(例えば、ソースコードフォーマット、2進符号フォーマット、実行可能コードフォーマット、または他の任意の適切なコードフォーマット)を含んでよい。
【0068】
機械読取り可能媒体は、ASICの場合のように、プロセッサに組み込まれた記憶装置を含んでよい。機械読取り可能媒体には、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読出し専用メモリ(ROM)、プログラマブル読出し専用メモリ(PROM)、消去可能PROM(EPROM)、レジスタ、ハードディスク、取外し可能ディスク、CD−ROM、DVDまたは他の任意の適切なストレージデバイスなど、プロセッサの外部の記憶装置も含まれ得る。さらに、機械読取り可能媒体には、データ信号を符号化する伝送路または搬送波が含まれ得る。処理システム202の述べられた機能性を実施する最良のやり方が当業者には認識されよう。本開示の一態様によれば、機械読取り可能媒体は、命令で符号化されまたは格納されたコンピュータ読取り可能媒体であり、命令の機能性を実現させる、命令とシステムの残りの部分との間の構造上および機能上の相互関係を定義するコンピューティング要素である。命令は、例えば、アクセス端末または処理システムによって実行可能であってよい。命令は、例えば、コードを含むコンピュータプログラムであり得る。機械読取り可能媒体は、1つまたは複数の媒体を備えてよい。
【0069】
本明細書に述べられた様々な例示的なブロック、モジュール、エレメント、コンポーネント、方法およびアルゴリズムは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、または両方の組合せとして実装されてよいことが当業者には理解されよう。当業者は、述べられた機能性を特定の応用例ごとに異なるやり方で実施することができる。さらに、様々なコンポーネントおよびブロックは、全て本技術の範囲から逸脱せずに、それぞれ異なるやり方で配置され得る(例えば、異なる順序で配置し、または異なるやり方で分割することができる)。
【0070】
本技術の一態様では、LNAは増幅器を指し得る。主技術は、nチャネルMOSFET(NMOS)およびpチャネルMOSFET(PMOS)トランジスタ(すなわちCMOS)を使用して示されているが、他のタイプのトランジスタ(例えば、バイポーラトランジスタや、バイポーラとCMOSトランジスタの組合せ)を使用して実施することができる。MOSFETのゲート、ソースおよびドレインは、バイポーラトランジスタのベース、エミッタおよびコレクタに対応し得る。MOSFETのゲート、ソースおよびドレインは、
図10にそれぞれラベルG,SおよびDで示されている。
【0071】
開示されたプロセスの諸ステップの特定の順序または階層は、例示的な手法の一例であることが理解されよう。設計上の嗜好に基づいて、プロセスの諸ステップの特定の順序または階層を再配列できることが理解されよう。添付の方法クレームは、様々なステップの要素を、順序の一例で提示しており、提示された特定の順序または構造に限定されるものではない。
【0072】
情報および信号は、様々な異なる技術および技法のいずれかを使用して表され得ることが当業者には理解されよう。例えば、上記説明を通して参照することができるデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボルおよびチップは、電圧、電流、電磁波、磁界または粒子、光磁場または粒子、あるいはその任意の組合せによって表すことができる。
【0073】
上記説明は、本明細書に述べられた様々な構成を当業者が実施することを可能にするために提供されている。これらの構成への様々な変更が当業者には容易に明らかになり、本明細書に定義された一般的な原則は、他の構成に適用することができる。従って、特許請求の範囲は、本明細書に示された構成に限定されるものでないが、特許請求の範囲に一致する最大範囲が与えられるものであり、ある要素に単数形で言及することは、特にそのように述べられていない限り、唯一ではなく、「1つまたは複数」を意味するものである。特に指定のない限り、用語「いくつかの」は、1つまたは複数を指す。男性形の代名詞(例えば、彼の)は、女性形および中性形(例えば、彼女の、およびその)を含み、逆も同様である。見出しおよび小見出しは、もしあるならば、単に便宜上用いられており、本発明を限定するものではない。
【0074】
「例えば、(for example, for instance)」、「例(instance, example)」、「例を挙げると」、「など」など、本明細書で使用される用語は、限定するためではなく、例を挙げるために例示するものである。当業者に知られており、または後に知られるようになる、本開示全体を通して述べられた様々な構成の要素の構造上および機能上の等価物が、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。さらに、ここに開示されたいずれの内容も、こうした開示が特許請求の範囲に明示的に列挙されるかどうかに関係なく、公に供することは意図されていない。クレーム要素が「〜手段」という語句を用いて明示的に列挙されない限り、または方法クレームの場合には要素が「〜ステップ」という語句を用いて列挙されない限り、いずれの請求項の要素も、米国特許法第112条第6項の規定に従って解釈すべきでない。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1] 利得状態下で通信信号中の妨害の有無を検出するように構成された妨害波検出器と、
前記通信信号を高直線性受信モードまたは低直線性受信モードで増幅するように構成され、前記高直線性受信モードは前記低直線性受信モードの利得に比べて前記利得状態でのより低い利得に対応する増幅器と、
前記妨害波検出器に結合され、前記通信信号中の妨害の有無を検出する前記妨害波検出器の出力に基づいて前記通信信号を前記高直線性受信モードまたは前記低直線性受信モードで増幅するように前記増幅器を制御するように構成された処理装置と、
を備える受信機。
[C2] 前記処理装置は、前記妨害波検出器が前記通信信号中の妨害の存在を検出しない場合は前記通信信号を前記低直線性受信モードで増幅するように前記増幅器を制御するように構成されるC1に記載の受信機。
[C3] 前記処理装置は、前記妨害波検出器が前記通信信号中の妨害の存在を検出する場合は前記通信信号を前記高直線性受信モードで増幅するように前記増幅器を制御するように構成されるC1に記載の受信機。
[C4] 前記高直線性受信モードの前記増幅器の前記より低い利得は、前記受信機の劣化した雑音指数(NF)に関連するC1に記載の受信機。
[C5] 前記処理装置はディジタル信号プロセッサ(DSP)であるC1に記載の受信機。
[C6] 前記処理装置は、前記増幅器の入力部で前記通信信号を前記高直線性受信モードまたは前記低直線性受信モードで増幅するように前記増幅器を制御するように構成されるC1に記載の受信機。
[C7] 前記増幅器は2つの増幅器を備え、前記2つの増幅器は前記通信信号を前記高直線性受信モードまたは前記低直線性受信モードで増幅することに対応するC6に記載の受信機。
[C8] 前記処理装置は、前記増幅器の出力部で前記通信信号を前記高直線性受信モードまたは前記低直線性受信モードで増幅するように前記増幅器を制御するように構成されるC1に記載の受信機。
[C9] 前記増幅器は、高利得増幅器と、前記高利得増幅器に結合された2つの電流バッファと、前記電流バッファのうちの1つに結合された2つのスイッチと、コンバイナとを備え、前記2つのスイッチおよび前記2つの電流バッファは前記通信信号を前記高直線性受信モードまたは前記低直線性受信モードで増幅することに対応するC1に記載の受信機。
[C10] 前記増幅器から出力された信号をダウンコンバートするように構成されたミキサをさらに備えるC1に記載の受信機。
[C11] 前記ダウンコンバートされた信号をフィルタリングするように構成されたベースバンドフィルタをさらに備えるC10に記載の受信機。
[C12] 受信機内で通信信号を処理する方法であって、
利得状態下で前記通信信号中の妨害の有無を検出することと、
前記通信信号中の妨害の有無に基づいて前記通信信号を高直線性受信モードまたは低直線性受信モードで増幅することであって、前記高直線性受信モードは、前記低直線性受信モードの利得に比べて前記利得状態でのより低い利得に対応することと、を備える方法。
[C13] 前記通信信号を前記低直線性受信モードで増幅することは、前記通信信号中に妨害の存在が検出されない場合に行われるC12に記載の方法。
[C14] 前記通信信号を前記高直線性受信モードで増幅することは、前記通信信号中に妨害の存在が検出される場合に行われるC12に記載の方法。
[C15] 前記高直線性受信モードの前記より低い利得は、前記受信機の劣化した雑音指数(NF)に関連するC12に記載の方法。
[C16] 前記増幅することは、ディジタル信号プロセッサ(DSP)によって行われるC12に記載の方法。
[C17] 前記増幅された信号をダウンコンバートすることと、
前記ダウンコンバートされた信号をフィルタリングすることと、
をさらに備えるC12に記載の方法。
[C18] 受信機内で通信信号を処理する装置であって、
利得状態下で前記通信信号中の妨害の有無を検出する手段と、
前記通信信号中の妨害の有無検出の出力に基づいて前記通信信号を高直線性受信モードまたは低直線性受信モードで増幅する手段と、を備え、前記高直線性受信モードは前記低直線性受信モードの利得に比べて前記利得状態でのより低い利得に対応する装置。
[C19] 前記増幅する手段は、前記通信信号中に妨害の存在が検出されない場合は前記通信信号を前記低直線性受信モードで増幅するC18に記載の装置。
[C20] 前記増幅する手段は、前記通信信号中に妨害の存在が検出される場合は前記通信信号を前記高直線性受信モードで増幅するC18に記載の装置。
[C21] 前記高直線性受信モードの前記より低い利得は、前記受信機の劣化した雑音指数(NF)に関連するC18に記載の装置。
[C22] 前記増幅する手段は、ディジタル信号プロセッサ(DSP)であるC18に記載の装置。
[C23] 前記増幅された信号をダウンコンバートする手段と、
前記ダウンコンバートされた信号をフィルタリングする手段と、をさらに備えるC18に記載の装置。
[C24] 受信機内で通信信号を処理する処理システムであって、
利得状態下で前記通信信号中の妨害の有無を検出し、
前記通信信号中の妨害の有無の検出に基づいて前記通信信号を高直線性受信モードまたは低直線性受信モードで増幅するように構成されたモジュールを備え、前記高直線性受信モードは前記低直線性受信モードの利得に比べて前記利得状態でのより低い利得に対応する処理システム。
[C25] 受信機内で通信信号を処理するための命令で符号化された機械読取り可能媒体であって、前記命令は、
利得状態下の前記通信信号中の妨害の有無の検出に基づいて前記通信信号を高直線性受信モードまたは低直線性受信モードで増幅するように制御するコードを備え、前記高直線性受信モードは前記低直線性受信モードの利得に比べて前記利得状態でのより低い利得に対応する機械読取り可能媒体。