(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記介護者が介護作業をする介護者用スペースと、前記被介護者が介護を受ける被介護者用スペースとが、前記胴補助部を挟んだ両側に対峙して設けられており、該介護者の前記胴部の前面に当接する該胴補助部の支持面が該介護者用スペースに向かって設けられている請求項1に記載の介護者補助装置。
前記介護者用スペースには前記介護者が足裏を前記床面に接地可能とされた接地領域が設けられていると共に、前記被介護者用スペースには前記被介護者が乗るステップ部が前記台車部に設けられている請求項2に記載の介護者補助装置。
前記胴補助部には前記介護者の前記胴部の前面に当接する支持面が設けられていると共に、該支持面の傾斜角度が変化するようにされている請求項1〜3の何れか一項に記載の介護者補助装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、簡単且つコンパクトな構造で容易に使用可能であると共に、介護作業に際して介護者に有効な補助力を与えることができる、新規な構造の介護者補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0008】
すなわち、本発明の第一の態様は、
介護者と該介護者による動作補助を受ける被介護者との間に配されて、該被介護者に対する
該介護者の介護作業を補助する介護者補助装置であって、床面を移動可能とされた台車部を備えており、該台車部上には前記介護者の胴部の前面に当接して該胴部を支える胴補助部が
該介護者側に向けて設けられていると共に、該胴補助部を該台車部に対して昇降可能とするアクチュエータが設けられていることを、特徴とする。
【0009】
このような第一の態様に記載された介護者補助装置によれば、介護者は、胴部前面を胴補助部に重ね合わせて、アクチュエータで胴補助部を昇降させることにより、被介護者を抱き抱えた前傾姿勢から上体を起こす、或いは上体を起こした姿勢から前傾姿勢に上体を倒す介護作業時に、胴部を胴補助部によって支えられる。これにより、介護者が介護作業に要する力が低減されて、介護作業をスムーズに行うことができると共に、介護者が介護作業時の負荷によって腰部などの関節を痛めるといった不具合も回避される。
【0010】
しかも、介護者補助装置は、介護者を補助するものであって、従来の介護と同様に、被介護者には介護者が触れて介護作業を行うことができる。それ故、被介護者に痛みや傷を与えることなく、機械的には実現し難い介護者の繊細な力加減や人体の柔軟さを生かした介護作業が可能である。なお、健常者である介護者は、被介護者に比して身体的に強健であることから、胴部に介護者補助装置の胴補助部が当接しても、痛みや傷は問題にならない。
【0011】
また、本発明の介護者補助装置は、介護者の体に装着する必要がなく、着脱の手間が不要であることから、日常的に行われる移乗などの介護作業に対して、手軽に且つ速やかに使用することができて、介護の作業時間が著しく長くなるのも回避される。更に、簡単な構造でコンパクトに実現することも可能であることから、保管時の省スペース化が図られると共に、使用時には装置を容易に移動させることができる。また、介護者が介護者補助装置によって拘束されないことから、例えばバッテリー切れや停電などの理由で作動が停止した場合などにも、介護者が介護者補助装置から容易に離れることが可能であり、より安全に使用することができる。
【0012】
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された介護者補助装置において、前記介護者が介護作業をする介護者用スペースと、前記被介護者が介護を受ける被介護者用スペースとが、前記胴補助部を挟んだ両側に対峙して設けられており、該介護者の前記胴部の前面に当接する該胴補助部の支持面が該介護者用スペースに向かって設けられているものである。
【0013】
第二の態様によれば、頻度の高い介護作業の一つである介護者が被介護者と向かい合わせで対峙しながらの抱起しなどを、介護者補助装置によって有効に補助することができる。
【0014】
本発明の第三の態様は、第二の態様に記載された介護者補助装置において、前記介護者用スペースには前記介護者が足裏を前記床面に接地可能とされた接地領域が設けられていると共に、前記被介護者用スペースには前記被介護者が乗るステップ部が前記台車部に設けられているものである。
【0015】
第三の態様によれば、介護者は床面に直接立つことで、強く踏ん張りながら作業することが可能になると共に、介護者補助装置が介護作業中に不意に移動するのを防止することができる。更に、介護者が、被介護者を抱き抱えながら介護者補助装置を押して移動させることで、被介護者を容易に移動させることが可能とされている。特に、台車部には、被介護者の足を置くためのステップ部が設けられていることから、移動時に被介護者の足が床面に接触するのを防ぐことができる。
【0016】
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか一つの態様に記載された介護者補助装置において、前記胴補助部には前記介護者の前記胴部の前面に当接する支持面が設けられていると共に、該支持面の傾斜角度が変化するようにされているものである。
【0017】
第四の態様によれば、例えば、介護者の上体の前傾角度が変化するのに合わせて、胴補助部の傾斜角度を変更することにより、介護者の胴部前面に対する胴補助部の当接位置や当接面積が保たれて、胴補助部の当接によって介護者が痛みを感じるなどの不具合が回避される。
【0018】
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか一つの態様に記載された介護者補助装置において、前記胴補助部の両側方には前記介護者の腕部を支える一対の腕補助部が設けられているものである。
【0019】
第五の態様によれば、介護者の腕部を腕補助部で支えることにより、介護者は抱き抱えた被介護者を小さな腕力で保持することができる。
【0020】
本発明の第六の態様は、第五の態様に記載された介護者補助装置において、前記一対の腕補助部が前記アクチュエータによって前記胴補助部と一体的に昇降可能とされているものである。
【0021】
第六の態様によれば、腕補助部がアクチュエータによって胴補助部と一体的に昇降可能とされていることで、簡単な構造によって、介護者の上体だけでなく腕部も支えながら上下に移動させることができる。それ故、被介護者の座位から立位への移行や抱上げなどが、より小さな腕力で実現されて、介護作業を一層有効に補助することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、介護者の胴部を支える胴補助部がアクチュエータによって昇降されるようになっていることから、アクチュエータの出力が胴補助部を介して介護者の上体に補助力として及ぼされる。これにより、被介護者を抱き抱えた介護者が、前傾姿勢から起立姿勢へ、或いは起立姿勢から前傾姿勢へ移行する際に、小さな力で姿勢を変えることができると共に、身体への負荷が低減されることで腰痛などの不具合も回避される。
【0023】
しかも、胴補助部を介護者の胴部前面に当接させる簡単な構造であることから、使用時の着脱に手間と時間を要することがなく、容易に使用可能である。加えて、介護者の姿勢変更を補助する装置であることから、介護者補助装置を用いた介護作業においても被介護者に直接触れるのは介護者の体であって、被介護者に痛みや傷などを与えることなく、快適な介助を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1〜4には、本発明の第一の実施形態としての介護者補助装置10が示されている。介護者補助装置10は、後述する介護者52が、同じく後述する被介護者54に対して、姿勢の変化や移動などの介護作業を行う際に補助する装置であって、台車部12に補助手段14が取り付けられた構造とされている。なお、以下の説明において、特に説明がない限り、上下方向とは鉛直上下となる
図2中の上下方向を、前後方向とは
図4中の左右方向を、左右方向とは
図3中の左右方向を、それぞれ言う。
【0027】
より詳細には、台車部12は、上下方向視で略H字形状を呈するフレーム16を有しており、フレーム16の前後四つの端部に設けられた車輪18によって、図示しない床面(地面)を自在に移動可能とされている。なお、本実施形態では、
図3に示すように、後方の二つの車輪18にストッパ20が設けられており、車輪18による台車部12の移動をストッパ20によって制限可能とされている。
【0028】
さらに、フレーム16の中央連結部22を挟んだ後方には、介護者52が介護作業をするための介護者用スペース24が設けられており、介護者52が足裏を床面に直接接地できる接地領域26が、介護者用スペース24におけるフレーム16で囲まれた領域に設けられている。一方、フレーム16の中央連結部22を挟んだ前方には、被介護者54が介護を受けるための被介護者用スペース28が設けられており、被介護者54を乗せるための板状のステップ部30が、被介護者用スペース28におけるフレーム16で囲まれた領域に広がって設けられている。
【0029】
また、台車部12のフレーム16の中央連結部22には、補助手段14が設けられている。補助手段14は、アクチュエータ32に支持部34が取り付けられた構造とされている。
【0030】
アクチュエータ32は、電動式や空気圧式、油圧式などといった公知の機構を有するものであって、伸縮によって長さ方向に出力する直動タイプとされている。そして、アクチュエータ32の下端が台車部12のフレーム16の中央連結部22に固定されており、アクチュエータ32が上下方向に伸縮可能となるように台車部12上に立設されている。
【0031】
さらに、フレーム16の中央連結部22には、左右一対のフットペダル36が設けられている。フットペダル36は、アクチュエータ32の昇降を操作するためのペダルであって、アクチュエータ32を挟んだ左右両側に介護者用スペース24に向かって設けられている。そして、介護者52が一方のフットペダル36を踏むことでアクチュエータ32が伸長すると共に、介護者52が他方のフットペダル36を踏むことでアクチュエータ32が収縮するようになっている。なお、フットペダル36の操作を止めることで、アクチュエータ32の長さが電動モータのディテントトルクなどによって保持される。
【0032】
一方、支持部34は、上方に向かって三つ又状に分岐する連結部材38を備えており、連結部材38の中央分岐部40に胴補助部42が取り付けられていると共に、連結部材38の左分岐部44と右分岐部46に一対の腕補助部48,48の各一方が取り付けられている。
【0033】
胴補助部42は、例えば、合成樹脂や金属で形成された硬質プレートの表面を発泡樹脂などの緩衝材で被覆した構造とされており、上面が介護者52の胴部前面に当接する支持面50とされている。この胴補助部42は、連結部材38の中央分岐部40に対して、水平から傾斜した状態で固定されており、本実施形態では下部が下方に向かって次第に狭幅となっている。
【0034】
腕補助部48は、上方に開口しながら前後に延びる横転略半円筒形状とされており、胴補助部42と同様に、硬質とされた半円筒プレートの表面が緩衝材で被覆された構造とされている。更に、腕補助部48の下面の一部には、図示しない嵌合凸部が設けられており、連結部材38の左右の分岐部44,46に形成された図示しない嵌合凹所に嵌合されることで、腕補助部48が連結部材38の左右の分岐部44,46に取り付けられていると共に、腕補助部48の連結部材38に対する傾動が嵌合凸部の中心軸周りで許容されている。
【0035】
そして、連結部材38がアクチュエータ32の上端部に取り付けられることで、胴補助部42と一対の腕補助部48,48を有する支持部34がアクチュエータ32に取り付けられており、胴補助部42と一対の腕補助部48,48が、アクチュエータ32の伸縮作動によって、一体的に昇降せしめられるようになっている。
【0036】
なお、以上からも明らかなように、介護者用スペース24と被介護者用スペース28が、胴補助部42を含む支持部34を挟んだ前後各一方の側に設けられて、互いに対峙するように配置されている。そして、胴補助部42は、介護者用スペース24に向かって次第に下傾するように傾斜して配置されており、支持面50が介護者用スペース24に向かって設けられている。
【0037】
さらに、本実施形態では、連結部材38がアクチュエータ32の上端部に対して前後に傾動可能に取り付けられており、支持面50を備える胴補助部42と一対の腕補助部48,48がアクチュエータ32に対して一体的に傾動可能とされている。本実施形態では、連結部材38がアクチュエータ32の上端部に軸支されることで、胴補助部42と一対の腕補助部48,48が、アクチュエータ32に対して常時前後方向の傾動を許容された状態で取り付けられている。
【0038】
このような構造とされた介護者補助装置10は、
図5に示すように、例えば、介護者52が端座位の被介護者54を対面で抱き起して立位に移行させる介助などに用いられる。即ち、
図5(a)に示すように、先ず、介護者52は、介護者補助装置10を押して床面上を移動させて、ベッド56の周縁部などに座った被介護者54に対して、被介護者用スペース28が被介護者54側となるように接近させる。そして、
図5(b)に示すように、被介護者54が被介護者用スペース28に位置するまで介護者補助装置10を移動させて、被介護者54の足をステップ部30上に乗せる。
【0039】
次に、
図5(c)に示すように、介護者52は、介護者用スペース24の接地領域26に立って、前傾姿勢になる。より詳細には、介護者52は、前傾させた胴部の前面を胴補助部42の支持面50に当接させると共に、左右の腕を一対の腕補助部48,48の各一方に乗せる。これにより、介護者52は、胴部前面を胴補助部42で支えられると共に、腕部下面を一対の腕補助部48,48で支えられた状態で、左右の腕を被介護者54の腋下に差し入れて、被介護者54を前方から抱える姿勢となる。なお、フットペダル36を操作してアクチュエータ32を伸縮させることで、介護者52および被介護者54の体格などに合わせて、胴補助部42および一対の腕補助部48,48の高さを調整することができる。
【0040】
このように被介護者54を抱えた介護者52が、一方のフットペダル36を足で踏み込むことにより、アクチュエータ32を伸長させて、
図6に示すように、胴補助部42を上昇させる。これにより、介護者52の胴部前面が胴補助部42の支持面50で上方に押圧されることから、前傾した介護者52の上体が胴補助部42によって起されて、
図5(d)に示すように、介護者52が起立姿勢に移行する。本実施形態では、胴補助部42がアクチュエータ32に対して傾動可能とされており、介護者52の上体が起きて傾斜角度が変化するのに従って、
図6に示すように、胴補助部42の支持面50の傾斜角度が追従して変化するようになっている。
【0041】
また、
図6に示すように、アクチュエータ32の伸長によって、一対の腕補助部48,48も胴補助部42と一体的に上昇する。これにより、
図5(d)に示すように、介護者52の腕部が一対の腕補助部48,48で上方に押し上げられて、被介護者54の腋下が差し入れられた介護者52の腕によって抱えられて持ち上げられる。本実施形態では、腕補助部48,48が胴補助部42と一体的に傾動可能とされており、介護者52の腕の角度が姿勢の変化に伴って変化せしめられることで、介護者52は、腕補助部48,48による腕への補助力を有効に得ながら、被介護者54を抱き抱えた状態で立ち上がることができる。
【0042】
そして、
図5(d)に示すように、被介護者54をステップ部30上に乗せて介護者52が被介護者54を向かい合わせで抱き抱えながら、介護者52が介護者補助装置10を押すなどして移動させることで、介護者補助装置10に乗った被介護者54を移動させることもできる。なお、介護者52が被介護者54を抱き抱えながら移動させることにより、被介護者54を介護者補助装置10上に安定して保持することができる。
【0043】
また、
図5を用いて説明したベッドや車椅子から介護者補助装置10への移乗手順を、逆順で実行することにより、被介護者54を介護者補助装置10からベッドや車椅子などの移乗先に移乗させることができる。具体的には、例えば、
図5(d)に示すように、被介護者54を乗せた介護者補助装置10をベッド56に接近させた後、
図5(c)に示すように、アクチュエータ32を収縮させて、介護者52が上体を倒して前傾姿勢になることにより、被介護者54を立位から座位に移行させて、ベッド56の周縁部に座らせる。その後、
図5(b)に示すように、介護者52が胴補助部42から離れると共に、一対の腕補助部48,48から腕を抜き、
図5(a)に示すように、介護者補助装置10を引いて被介護者54から離れる方向に移動させることで、被介護者54のベッド56への移乗を完了する。
【0044】
このような本実施形態に従う構造とされた介護者補助装置10では、介護者52が対峙した被介護者54を抱き抱えながら前傾姿勢から起立姿勢に移行する場合や、被介護者54を抱き抱えながら起立姿勢から前傾姿勢に移行する場合に、介護者52の上体を胴補助部42によって支えることができる。しかも、胴補助部42がアクチュエータ32によって昇降可能とされていることから、介護者52の姿勢変化をアクチュエータ32の出力によって補助することができて、介護者52はより小さい力で被介護者54を抱き抱えながら姿勢を変えることができる。それ故、移乗介護などにおいて、介護者52の労力が低減されると共に、介護者52の体への負荷が低減されることで腰痛などの不具合も回避される。
【0045】
さらに、胴補助部42がアクチュエータ32に対して傾動可能とされていることから、介護者52の姿勢の変化に合わせて胴補助部42の傾斜角度を変化させることで、介護者52の胴部前面と胴補助部42の支持面50とを安定して当接状態に保つことができる。それ故、胴補助部42の当接位置のずれによる介護者52の擦過傷や、当接面積の減少による痛みなどが回避されて、良好な使用感を得ることができる。
【0046】
また、本実施形態の介護者補助装置10には、介護者52の両腕部を支える一対の腕補助部48,48も設けられていることから、被介護者54の腋下に腕を差し入れて抱き抱えた状態を容易に維持することができる。しかも、腕補助部48,48がアクチュエータ32によって胴補助部42と一体的に昇降可能とされていることから、介護者52が前傾姿勢と起立姿勢の間で姿勢を変える際に、胴部だけでなく腕部も支えられながら昇降せしめられて、被介護者54の移乗介護などをより小さな労力で行うことができる。
【0047】
さらに、腕補助部48,48がアクチュエータ32に対して傾動可能とされていることから、介護者52および被介護者54の姿勢の変化に応じて、被介護者54を抱き抱える腕の角度が変化するようになっている。これにより、姿勢が変化しても被介護者54を小さな力で安定して抱き抱えることができて、介護作業が容易になる。しかも、本実施形態では、腕補助部48,48が嵌合凸部の軸回りでの傾動を許容されていることから、介護者52の腕を必要以上に拘束することなく支えることができて、被介護者54の体型などに合わせた介護を、妨げることなく補助することができる。
【0048】
また、補助手段14を挟んだ後方に介護者用スペース24が設けられていると共に、前方に被介護者用スペース28が対峙して設けられていることから、介護者52が被介護者54を前から抱き抱えて行う介護作業が、介護者用スペース24と被介護者用スペース28の間に設けられた補助手段14によって有効に補助される。
【0049】
さらに、介護者用スペース24には接地領域26が設けられており、介護者52は接地領域26において足裏を床面に直接接触させることができる。これにより、介護時の安定感を高めることができると共に、車輪18のストッパ20が意図せずに解除されるなどして介護者補助装置10が不意に移動した場合にも、介護者52が容易に制止することができる。
【0050】
更にまた、被介護者用スペース28にはステップ部30が設けられており、被介護者54をステップ部30に乗せることができる。それ故、介護者52が被介護者54を抱き抱えながら介護者補助装置10を押して移動する際に、被介護者54の足が床面に接触するのを防ぐことができる。
【0051】
図7には、本発明の第二の実施形態としての介護者補助装置60が示されている。介護者補助装置60は、台車部62に補助手段64が設けられた構造とされている。以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。なお、
図7中の左下を前方として説明する。
【0052】
より詳細には、台車部62は、上面視で略丁字形状を呈するフレーム66に、被介護者54が乗る一対のステップ部68,68を設けた構造とされている。更に、フレーム66の三つの端部には、それぞれ車輪70が設けられており、台車部62が床面上を任意の方向に移動可能とされている。
【0053】
また、補助手段64は、台車部62に下端を固定された支柱部72と、支柱部72の上方に配設される支持部74とを備えている。支柱部72には、図示しないアクチュエータが収容されており、アクチュエータの上端が支柱部72から露出して支持部74に取り付けられている。
【0054】
支持部74は、胴補助部76と一対の腕補助部78,78とを備えている。胴補助部76は、略中空箱状とされており、上面が左右外方に向かって次第に上傾する湾曲面で構成された支持面79とされている。また、胴補助部76には、電動モータなどで構成された図示しない傾動手段が設けられており、胴補助部76が傾動手段によってアクチュエータに対して能動的に傾動可能とされている。
【0055】
一対の腕補助部78,78は、上腕補助部80と下腕補助部82とを一体で備えている。上腕補助部80は、上面に傾斜面が設けられて、前方に向かって次第に薄肉となっている。下腕補助部82は、湾曲板形状とされており、上腕補助部80の前方に一体形成されて延び出している。そして、一対の腕補助部78,78は、胴補助部76の左右両側方に設けられており、胴補助部76の側面に取り付けられている。本実施形態では、一対の腕補助部78,78は、上腕補助部80が胴補助部76にボールジョイント等で取り付けられており、胴補助部76に対する傾動を許容されている。
【0056】
また、本実施形態では、一対の腕補助部78,78の胴補助部76に対する傾動によって、アクチュエータの伸縮作動が操作されるようになっている。即ち、一対の腕補助部78,78の胴補助部76に対する左右方向への傾動が、センサやリミットスイッチなどで検出されるようになっており、検出結果に応じてアクチュエータが伸縮せしめられるようになっている。
【0057】
このような構造とされた介護者補助装置60は、
図8に示すように使用される。即ち、介護者補助装置60の後方に設けられる介護者用スペース24の介護者52が、胴補助部76の支持面79に当接させると共に、左右の腕部の下面を一対の腕補助部78,78に載せることにより、前傾姿勢で腕を前方に差し出した姿勢で、胴補助部76および一対の腕補助部78,78によって胴部と両腕部を下方から支えられる。
【0058】
そして、
図5(c)のように、介護者52は、腕を被介護者54の腋下に差し入れた状態で、アクチュエータを操作して、胴補助部76と一対の腕補助部78,78を昇降させることにより、被介護者54を抱き起す或いは座らせることができる。更に、本実施形態では、アクチュエータによる胴補助部76および一対の腕補助部78,78の昇降に合わせて、胴補助部76および一対の腕補助部78,78を傾動させることにより、
図9に示すように、介護者52の前傾姿勢(a)から起立姿勢(b)へのよりスムーズな移行が実現される。
【0059】
また、本実施形態では、一対の腕補助部78,78を胴補助部76に対して左右に傾動させることで、アクチュエータの伸縮を簡単に操作できるようになっている。具体的には、例えば、
図10(a)に示すように、介護者52が両腕を相互に接近させて、一対の腕補助部78,78の胴補助部76に対する左右傾斜を小さくすることにより、アクチュエータが伸長するようになっている。一方、
図10(b)に示すように、介護者52が両腕を相互に離隔させて、一対の腕補助部78,78の胴補助部76に対する左右傾斜を大きくすることにより、アクチュエータが収縮するようになっている。なお、ここでは一対の腕補助部78,78の胴補助部76に対する左右の傾斜角度によってアクチュエータを制御する例を示したが、例えば、一対の腕補助部78,78が胴補助部76に対して相対変位可能に取り付けられて、一対の腕補助部78,78の胴補助部76に対する相対的な変位方向や変位量に基づいてアクチュエータが制御されるようにもできる。
【0060】
本実施形態に従う構造とされた介護者補助装置60によれば、第一の実施形態の介護者補助装置10と同様の効果を有効に得ることができる。
【0061】
しかも、本実施形態では、胴補助部76が傾動手段によって能動的に傾動可能とされていることから、介護者52の姿勢の変化に合わせて胴補助部76の支持面79を積極的に傾動させて、介護者52の胴部前面と支持面79との当接位置のずれや当接面積の変化による痛みや傷を防ぐことができる。
【0062】
また、介護者補助装置60では、腕補助部78が上腕補助部80と下腕補助部82とを備えており、介護者52の肘と上腕と下腕とが何れも支えられるようになっている。それ故、介護者52は、より小さな腕力で、被介護者54を座位から立位に抱き起したり、被介護者54をそのままの姿勢で抱き上げたりすることが可能であり、介護の労力が一層低減されると共に、大きな負荷によって肘を痛めることもない。
【0063】
また、腕補助部78の胴補助部76に対する傾斜角度によって、アクチュエータを操作できることから、床面から足を離すことなくアクチュエータを操作することができる。しかも、介護者52は、被介護者54を抱き抱えるために意識を集中し易い腕部によって、アクチュエータを直感的に操作することができる。
【0064】
また、本実施形態の台車部62は、丁字型のフレーム66を備えており、被介護者54側となる前方が左右に狭幅とされている。それ故、椅子に座った被介護者54に介護者補助装置60を接近させる場合などに、台車部62が椅子の脚に引っ掛かるといった不具合が回避されて、安定して被介護者54に接近させることができる。
【0065】
なお、胴補助部76を能動的に傾動させる構造は、特に限定されるものではなく、電動モータの回転駆動力を伝達することで傾動されるようにしても良いが、例えば、
図10の如き構造も採用され得る。
【0066】
すなわち、
図10(a)に示すように、胴補助部76がアクチュエータ32の上端部に取り付けられており、胴補助部76の一端が回転軸90を中心としてアクチュエータ32に対して傾動可能とされている。また、胴補助部76の中間部分には、傾動手段92が取り付けられている。傾動手段92は、直動型アクチュエータで構成されており、下端が台車部62に対して前後方向で傾動可能に軸支されていると共に、上端には胴補助部76が傾動可能に取り付けられている。
【0067】
そして、アクチュエータ32と傾動手段92を互いに同じ量ずつ伸縮されることにより、胴補助部76が所定の傾斜角度に保持されたままで昇降せしめられると共に、アクチュエータ32と傾動手段92が互いに異なる量ずつ伸縮されることにより、
図10(b)に示すように、胴補助部76の傾斜角度が変更設定される。
【0068】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、胴補助部および腕補助部の具体的な構造は、前記実施形態の例示によって限定されない。具体的には、棒状の胴補助部も採用され得る。
【0069】
また、胴補助部と腕補助部は、各別に昇降可能とされていても良く、より大きな自由度で介護者の介護動作を補助することが可能となる。同様に、胴補助部と腕補助部は、アクチュエータに対して互いに異なる傾斜角度となり得るように、各別に傾動可能とすることもできる。
【0070】
また、腕補助部は必須ではなく、省略することによって装置の更なる小型化や軽量化が図られ得る。
【0071】
また、アクチュエータの操作手段は、フットペダルの踏込や腕補助部の傾動によるものに限定解釈されず、例えば、昇降操作用のスイッチやタッチパネルを設けて、介護作業者や他の介護者がスイッチやタッチパネルを操作することで、アクチュエータの伸縮が制御されるようにしても良い。
【0072】
前記実施形態では、介護者補助装置の使用例として、端座位の被介護者を立位に移行させる介護作業を示したが、本発明に係る介護補助装置は、他の介護作業にも適用可能である。具体的には、例えば、下肢の関節が拘縮した被介護者の移乗介護などにおいて、被介護者を姿勢を維持したまま抱き上げることもできる。
【0073】
また、被介護者とは、ベッドと車椅子などの間での移乗を自力で行うことが困難で、他者(介護者)の介添を必要とする人を網羅的に言うものであって、傷病者などを含む。従って、本発明の介護者補助装置は、狭義の介護のみならず、医療現場での介添などを含む広義の介護において、好適に用いられ得る。