特許第5792280号(P5792280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5792280トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを同時生産するための統合されたプロセス
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  • 特許5792280-トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを同時生産するための統合されたプロセス 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792280
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを同時生産するための統合されたプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20150917BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20150917BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150917BHJP
【FI】
   C07C17/25
   C07C21/18
   !C07B61/00 300
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-503759(P2013-503759)
(86)(22)【出願日】2011年3月17日
(65)【公表番号】特表2013-523812(P2013-523812A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2011028798
(87)【国際公開番号】WO2011126692
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2014年3月7日
(31)【優先権主張番号】12/754,070
(32)【優先日】2010年4月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】マーケル,ダニエル・シー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】トゥン,シュー・スン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ハイユー
(72)【発明者】
【氏名】ポクロフスキー,コンスタンティン・エイ
【審査官】 松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−509942(JP,A)
【文献】 特表2002−504528(JP,A)
【文献】 特開平10−087523(JP,A)
【文献】 特表2007−500127(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/035748(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/25
C07C 21/18
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(a)1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンをフッ素化触媒の存在下でフッ化水素と反応させて、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび1−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロパンを同時生産し;そして
(b)工程(a)で形成された1−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロパンを脱塩化水素してトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生産する
工程を含む、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの形成のためのプロセスであって、
前記脱塩化水素工程(b)が、バルクもしくは担持された形の一価または二価の金属ハロゲン化物からなる群から選ばれる1以上の触媒の存在下で行われる、プロセス
【請求項2】
その脱塩化水素工程が液相中で苛性溶液との接触により行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
その脱塩化水素工程が気相中で脱塩化水素触媒を用いて行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
その脱塩化水素工程がさらに塩化水素を生成する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
工程(a)の反応が過剰なフッ化水素を用いて液相反応器中で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
工程(a)の反応がTiCl、SnCl、TaCl、SbCl、AlCl、SbCl、およびそれらの混合物からなる群から選択される比較的弱いフッ素化触媒を用いて行われる、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
その触媒が部分的にフッ素化されている、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
その触媒が完全にフッ素化されている、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
工程(a)の反応が非腐食性条件下で行われ、それにより金属または合金の反応器を用いることができる、請求項5に記載のプロセス。
【請求項10】
そのプロセスが、単に以下のもの:作動条件;反応物の濃度;および液相反応器中で用いられる触媒の内の1つ以上を調節することにより、異なる量のそれぞれの化合物の生産における柔軟性を可能にする、請求項5に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
化合物トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを同時製造するための完全に統合されたプロセスを記述する。
【背景技術】
【0002】
クロロフルオロカーボン類またはハイドロクロロフルオロカーボン類の発泡剤(foam−blowing agent)としての使用は、それらの放出がオゾン層に損害を与えるという懸念のため禁止されてきた。さらに最近では、HFC−245faの使用により発泡(すなわち、揮発性物質をポリマー性混合物に添加して、断熱または緩衝価値を与える泡立った母材を生じさせること)が成し遂げられた;しかし、この物質の地球温暖化係数(GWP)に関して懸念が生じている。
【0003】
発泡剤としてHFC−245faに取って代わる1つの候補は液体のトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであり、HCFO−1233zd(E)としても知られている。この物質は溶媒、熱伝達組成物、消化/鎮火組成物、膨張剤(blowing agent)、および相溶化剤(compatabilizing agent)としての使用の可能性も有する。例えば、米国特許第6,844,475号参照。
【0004】
単一構成要素発泡剤としての適用のための第2の候補は、ガスであるトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであり、HFO−1234ze(E)としても知られている。例えば、米国特許第7,230,146号および第7,485,760号参照。
【0005】
これらの2種類の化合物は、次世代の発泡剤を代表するものである。いくつかの特許がこれらの個々の化合物の生産に関するプロセスに向けて発行されているが、本発明は、単一の塩素化炭化水素供給原材、すなわち1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)から出発して両方の化合物を経済的に同時生産する統合された製造プロセスを開示する。
【0006】
本発明の化合物は、次世代の低い地球温暖化係数の物質に関する継続的な探究の一部である。そのような物質は、低い地球温暖化係数および実質的ではないオゾン破壊係数により判定される低い環境への影響を有していなければならない。
【0007】
本発明の好ましい化合物は環境に許容でき、地球の成層圏のオゾン層の破壊に著しく寄与しない。本発明の化合物および組成物は実質的ではないオゾン破壊係数(ODP)、好ましくは約0.5より大きくないODP、さらにもっと好ましくは約0.25より大きくないODP、最も好ましくは約0.1より大きくないODP;約150より大きくない地球温暖化係数(GWP)、さらにもっと好ましくは50より大きくないGWPを有する。
【0008】
本明細書で用いられる際、ODPは本明細書に援用する世界気象機関の報告“オゾン破壊の科学的評価、2002”において定義されている。
本明細書で用いられる際、GWPは二酸化炭素のGWPと比較して100年の対象期間にわたって定義され、上記で言及したODPに関するものと同じ参考文献において定義されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,844,475号
【特許文献2】米国特許第7,230,146号
【特許文献3】米国特許第7,485,760号
【発明の概要】
【0010】
(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd(E))およびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(E))の形成のための経済的なプロセスを見つけることは、当技術において認識されている問題であった。ここで、これらの2種類の化合物を、単一の塩素化炭化水素、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)を用いて出発する統合された製造プロセスにより、継続的および経済的に同時生産することができることを見出した。
【0011】
従って、本発明の1態様は、以下の工程を含む、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの形成のためのプロセスである。
【0012】
(a)1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)、1,1,3,3−テトラクロロプロペン、または1,1,1,3−テトラクロロプロペンを、単独または組み合わせで、フッ素化触媒の存在下でフッ化水素と反応させて、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパンを同時生産し;そして
(b)工程(a)で形成された3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパンを脱ハロゲン化水素し、主にトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、主に1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、または両方の化合物の組み合わせを(その異なる化合物に関する市場の需要に応じて)生産する。
【0013】
特定の態様において、その脱塩化水素工程は液相中で苛性溶液との接触により行われる。他の態様において、その脱塩化水素工程は気相中で脱塩化水素触媒を用いて行われる。いずれの場合でも、その脱塩化水素工程はさらに塩化水素を生成し、それは後者の場合において取り出して精製することができる。
【0014】
好ましくは、そのフッ素化反応は過剰なフッ化水素を用いて液相反応器中で行われる。好ましい態様において、その反応は、TiCl、SnCl、TaCl、SbCl、AlCl、SbCl、およびそれらの混合物からなるグループから選択される比較的弱いフッ素化触媒を用いて行われる。特定の態様において、その触媒は部分的にフッ素化されている。他の態様において、その触媒は完全にフッ素化されている。
【0015】
好都合なことに、そのフッ素化反応は比較的非腐食性の条件の下で行われ、それにより金属または合金の反応器を用いることができる。加えて、本発明のプロセスは、単に以下のもの:作動条件;反応物の濃度;および第1液相反応器中で用いられる触媒の内の1つ以上を調節することにより、異なる量のその望まれる化合物の生産に関する操作上の柔軟性を提供する。これらのプロセス制御の例を下記で提供する。
【0016】
やはり好都合なことに、1種類の設備投資から2種類の生産物が生産され、それは費用をより安くする。加えて、単にそのプロセス条件または触媒の選択を変更することにより、その生産物の比率を市場の状況に合うように調節することができる。
【0017】
本発明の別の態様は、組み合わせた液相フッ素化反応および精製操作を含む、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパンの生産のための、以下の工程を含む統合された製造プロセスである:
(a)1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)、1,1,3,3−テトラクロロプロペン、または1,1,1,3−テトラクロロプロペンを、単独または組み合わせで、液相触媒反応器中で過剰量の無水HFと反応させ、それによりトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパンを生産し;そして
(b)工程(a)で生産された化合物を分離する。
【0018】
特定の態様において、このプロセスはさらにその3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパンを脱塩化水素してトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生産する工程を含む。この工程はさらに塩化水素を生成し、それは単離および精製することができる。特定の態様において、その脱塩化水素工程は液相中で苛性溶液との接触により行われる。他の態様において、そのその脱塩化水素工程は気相中で脱塩化水素触媒を用いて行われる。
【0019】
場合により、このプロセスはさらに、生産物の需要に応じてその3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパンの少なくとも一部を1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに脱フッ化水素する工程を含む。この工程はさらにフッ化水素を生成し、それを単離して再循環させてそのフッ素化反応器に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、この発明の統合されたプロセスに従う1233zd(E)および1234ze(E)の同時生産のために用いられる処理装置の好ましい配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記で記述したように、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd(E))および3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244fa)は、1種類のハイドロクロロカーボンの供給を用いて同じ液相反応器中で同時生産することができる。その反応は比較的弱いフッ素化触媒を用いて、および比較的非腐食性の条件において行われ、従って金属または合金の反応器を用いることができる。これは、異なる前駆体1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン HFC−(245fa)からトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生産するための既知のプロセスを超える処理上の利点を提供し、それはその試薬が非常に腐食性であるためフルオロポリマー(例えばTeflon(登録商標))で内側を覆われた反応器を必要とする。その既知のプロセスは、より大量のより強いフッ素化触媒も必要とする。
【0022】
HFC−245faの代わりにHCFC−244fa前駆体からトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造することには、追加の経済的利点が存在する。それらは共に同じハイドロクロロカーボンから生産されるが、245faは、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生産するためにHFとして除去されるためだけに最初のハイドロクロロカーボン供給原材に付加された余分なフッ化物イオン(F)を有する。そのフッ化物イオン(F)はHFに由来し、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生産するためにHFC−245faを用いることは、生産されるトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの1モルにつき1モルのHFを無駄にする。一方で、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンはHCFC−244faから、最初のハイドロクロロカーボン供給原材から最後に残っている塩化物イオン(Cl)を(HClの形で)除去することにより生産される。従って、そのHClは必要に応じて回収することができるため、無駄がない。
【0023】
本発明のプロセスは、単にその第1液相反応器における作動条件または反応物および/または触媒の濃度を調節することにより異なる量のそれぞれの化合物の生産における大きな柔軟性を可能にする点においても利点を有する。
【0024】
本発明の統合された製造プロセスは、それには未反応の出発物質を再利用して原材料の利用および生産物の収量を最大化する能力も含まれるため、既知のプロセスとは異なる。それは副産物、主にHClを単離する能力も提供し、それは商業的価値のために売ることもできる。
【0025】
プロセス工程:
全体として、その同時生産プロセスは2つの工程を有する。その化学は以下を含む:
(1)主にトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(加えて副産物であるHCl)を同時生産する、液相触媒反応器中での、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)、1,1,3,3−テトラクロロプロペン、または1,1,1,3−テトラクロロプロペンの、単独または組み合わせでの、過剰量の無水HFとの反応;ならびに
(2)工程(1)で生産された3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパンを続いて脱塩化水素して、望まれる第2生産物であるトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生産する。場合により、工程(1)で生産された3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパンを続いて脱ハロゲン化水素して、望まれる第2生産物であるトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび望まれる第1生産物であるトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを生産することができる。
【0026】
工程1
望まれる反応:
【0027】
【化1】
【0028】
工程2
望まれる反応(単数または複数):
【0029】
【化2】
【0030】
場合により:
【0031】
【化3】
【0032】
プロセスの記述
その製造プロセスは、以下の7個の主な単位操作からなる。これらの操作の相対的な位置を図1において示す。
【0033】
(1)液相フッ素化触媒の調製(四塩化チタン);
(2)HFを用いるフッ素化反応(連続またはセミバッチ方式)、ならびに副産物HClならびに同時生産物1233zd(E)および244faの同時取り出し;
(3)副産物HClの分離および精製;
(4)過剰なHFを分離して(2)へと戻す;
(5)最終生産物1233zd(E)の精製;
(6)244faの1234ze(E)への脱塩化水素(副産物HClは(3)において回収することができる);ならびに
(7)最終生産物1233zd(E)の精製。
【0034】
液相フッ素化触媒の調製
その反応は、望まれる反応を優先的に達成するための適切な強度の液相触媒を用いる。本出願者は、無水HFの作用により部分的に、または完全にフッ素化されている四塩化チタン(周囲条件下で液体)からなる触媒は、望まれない揮発性副産物を形成することなく望まれる程度の変換を達成することを見出した。
【0035】
その触媒のフッ素化は、四塩化チタンを攪拌され温度制御された反応容器に入れ、HFを徐々に流すことにより添加することにより実施される。その操作において、中程度の量のHClが生成されるであろう。その反応条件には、10°から50℃までの範囲の温度および約0から100psigまでの範囲の圧力が含まれる。
【0036】
用いることができる追加のフッ素化触媒には、単独または組み合わせのどちらかでのSnCl、TaCl、SbCl、AlCl、SbCl(全て無水HFの作用により部分的に、または完全にフッ素化することができる)が含まれる。
【0037】
反応およびストリップ塔
本発明のプロセスへの1つの鍵は、図1において図説されている設備配置である。両方の供給材料のその液体触媒との接触のための攪拌され温度制御された反応器、ならびに生産物が(副産物HCl、微量の軽い有機物質[主に1234ze(E+Z)である]、およびその共沸混合物を形成するのに十分な無水フッ化水素(AHF)と共に)出ることを可能にする一方でHFの大部分、加えてフッ素化が不十分な、および2量体化した有機物質、加えて触媒を保持する統合蒸留塔(ストリップ方式で作動する)が鍵である。
【0038】
好ましくは、その反応器はHFおよび触媒の腐食作用に耐性である材料、例えばHastelloy−C、Inconel、Monel、Incoloyから構成されており、またはフルオロポリマーで内側を覆われた鋼鉄製容器である。そのような液相フッ素化反応器は、当技術で周知である。
【0039】
一度その触媒を調製したら、その反応をすぐに開始することができる。触媒の調製のためのHFの流れを中断する必要はない。追加の量のHFをその反応器に添加してその反応器をそれの容積の約20%から90%まで満たし、一方でその反応器を約85°から95℃の温度まで加熱して攪拌する。
【0040】
次に、ハイドロクロロカーボン(単数または複数)(単独または組み合わせでの1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)、1,1,3,3−テトラクロロプロペン、または1,1,1,3−テトラクロロプロペン)の添加をすぐに開始して継続的な反応を引き起こすことができ、一方でそのHFの流れを、望まれる生産物を生産するために十分な量に加えてその統合蒸留塔の上部を出る1233zd(E)/HFおよび244fa/HFの共沸組成物による喪失を説明するための過剰な量において維持する。その反応はHFに富む条件の下で行われて、その反応の同時生成物である1233zd(E)および244faを生成する。冷却剤(下記で論じる)の適切な温度制御および十分な還流作用が、そのストリップ塔が有効であるために必要である。
【0041】
我々がその反応およびストリッピングに関してうまく働くことを見出した一般的な作動条件は、以下の通りである:そのストリッパー塔から出る流れに対する制御弁により維持される、約80から140psigまでの作動圧力;主にその反応器の外装(jacket)中への蒸気の流れにより供給される、約85°から115℃までの反応器温度;還流を誘導するための、そのストリッパー塔の上部における熱交換器への−40〜30℃のブライン冷却の適用;そのストリッパー塔の中心部分における温度は、その反応器中の温度より約10°から40℃まで下の範囲であるべきである;そのHF蒸気供給を高圧蒸気で約120°から150℃までに過熱することによる、追加の熱の入力;反応器およびストリッパーの条件を維持するためのHFの供給速度。
【0042】
HClの取り出し
その反応の間継続的に形成されるHClは、その揮発性の性質により反応器から取り出され、取り付けられた蒸留塔を凝縮することなく通って流れる。次いでその物質を、低温HCl蒸留塔を用いることにより、売却のために(またはさらなる精製のために)精製および収集することができる。高純度HClが単離され、それを売却のために脱イオン水中に濃HClとして吸収させることができる。
【0043】
過剰なHFを分離および再循環させて(2)に戻す
1233zd(E)および約30重量%HFの粗製生産物の混合物を含有する、反応器ストリッパー塔(2)からのオーバーヘッド流を、この混合物からHFを取り出すために硫酸抽出装置(sulfuric extractor)または相分離装置に供給する。HFはその硫酸またはその有機性混合物から分離された相のどちらかの中に溶解している。HFをその硫酸/HF混合物からストリップ蒸留により脱着し、再循環させてその反応器に戻す。その硫酸抽出装置のオーバーヘッドからの有機性混合物は、それを次の単位操作(5)に供給する前に微量のHFを取り出すための処理(ガス洗浄(scrubbing)または吸着のどちらか)を必要とする可能性がある。
【0044】
最終生産物1233zd(E)の精製
最終生産物1233zd(E)の精製は、2つの連続的に作動する蒸留塔からなる。第1の塔を用いて1233zd(E)から軽質留分を取り出し、第2の塔を用いてより重い構成要素、主に244faを取り出し、それを(6)においてさらに反応させる。ある時点においてこの流れからの重い副産物のパージも必要とされるであろうことを認識するべきである。
【0045】
HCFC−244faのHFO−1234ze(E)への脱塩化水素
(5)における第2の塔からの残液流(bottoms stream)を、触媒気相反応器に供給し、そこでそのHCFC−244faは脱塩化水素されて望まれるHFO−1234ze(E)生産物およびHClを生成する。(7)からのHFC−245faも脱フッ化水素により反応して望まれる生産物を形成するであろう。その反応器の流出液は再循環されてHCl回収塔(3)に戻される。
【0046】
最終生産物HFO−1234ze(E)の精製
最終生産物HFO−1234ze(E)の精製は、連続的に作動する蒸留塔からなる。その供給流は実際には(5)における第1蒸留塔からの軽質留分である。そのHFO−1234ze(E)は留出物として回収され、より重い構成要素、主にHFC−245fa、HFO−1234ze(E)、およびHCFO−1233zd(E)は下部を出て反応器(6)の中に同時供給される。ある時点においてその塔の上部からの軽い副産物のパージも必要とされる可能性があることを認識するべきである。
【0047】
処理系−図1参照
液相反応器R1にまずTiCl、SnCl、TaCl、SbCl、AlCl、またはSbClを含むグループからの単独または組み合わせでのフッ素化触媒を装填する。TiClは最も好ましい触媒である。まずHFをその金属塩化物触媒を完全にフッ素化するための量で添加する;例えば、TiClを用いる場合、触媒に対して4:1より大きいモル比のHFを添加する。その触媒の調製は、その反応器が約10°から50℃までの温度にあり、約0から160psigまでの圧力にある間に行われる。触媒の調製の間にHClが生じ、それをその触媒ストリッパー塔CS−1の上部から出してその反応器の圧力をその反応器の意図される作動圧力で、またはそれより下に制御することができる。
【0048】
好ましくは、その反応器はHFおよび触媒の腐食作用に耐性である材料、例えばHastelloy−C、Inconel、Monel、Incoloyから構成されており、またはフルオロポリマーで内側を覆われた鋼鉄製容器である。そのような液相フッ素化反応器は、当技術で周知である。
【0049】
次いで追加のHFをR−1の中に、気化器HX−1を介して良好な攪拌が達成されるまで連続的に添加する;この供給はオンのままにしておくことができる。
次いでその反応器の内容物を攪拌しながら約85℃まで加熱し、その時点でHCC−240fa、1,1,3,3−テトラクロロプロペン、または1,1,1,3−テトラクロロプロペンの単独または組み合わせでの供給を開始し、ハイドロクロロカーボン(単数または複数)およびHFの間のフッ素化反応が開始される。HCC−240fa、1,1,3,3−テトラクロロプロペン、または1,1,1,3−テトラクロロプロペンの単独または組み合わせでの連続的な流れを反応器R−1の中に直接、加熱器HX−1を通さずに供給する。場合により、ハイドロクロロカーボン(単数または複数)をHX−1を介して反応器R−1に供給する。
【0050】
60から160psigまで、好ましくは80から140psigまでの作動圧力を、触媒ストリッパー塔CS−1から出る流れに対する制御弁により維持し、その反応器の温度を約80°から150℃まで、好ましくは85°から115℃までの範囲で保ち、それは主にその反応器の外装中への蒸気の流れにより供給される。触媒ストリッパー塔CS−1を反応器R−1に接続し、それは流れに乗った(entrained)触媒、一部のHF、部分的にフッ素化された中間体、および一部の未反応のハイドロクロロカーボン供給原材をさらなる反応のために叩き落して(knocking down)その反応器に戻す目的に役立つ。
【0051】
その液相フッ素化における作動条件または反応物および/または触媒の濃度を調節することにより、その反応が異なる量のそれぞれの望まれる同時生産物を生成するようにすることができる。
【0052】
未反応のHCC−240fa、部分的にフッ素化された中間体および副産物、過剰にフッ素化された副産物、HF、HCFO−1233zd(E+Z)、HCFC−244fa、およびHClからなる、触媒ストリッパーCS−1の上部を出る流れは、次いで再循環塔D−1に入り、そこで主に未反応のハイドロクロロカーボン供給原材、部分的にフッ素化された中間体、およびHFの大部分からなる流れがその再循環塔の下部を出て、再循環されて気化器HX−1を介して液相フッ素化反応器R−1に戻る。
【0053】
主にHCFO−1233zd(E)、HCFC−244fa、HF、およびHClからなる流れが再循環塔D−1の上部を出て、HCl塔D−2に入る。主にHCl副産物からなる流れがそのHCl塔の上部を出て、HCl回収系に供給される。その回収されたHCl副産物は、利益のために売却することができる。そのHCl塔の残液は主にHF、HCFO−1233zd(E)、およびHCFC−244faからなり、次いでそれをHF回収系の中に供給する。そのHF回収系は、その粗製のHCFO−1233zd/HCFC−244fa/HFの流れを熱交換器HX−2において気化させることで始まり、それをHF吸収塔A−1中に供給する。ここで、50〜80% HSOの液体の流れがそのガス状の1233zd/HFの流れと接触し、そのHFの大部分を吸収する。
【0054】
A−1の下部を出る流れはHF/HSO/HOからなり、それを熱交換器HX−3に供給し、そこでそれをそのHFの大部分を少量のHOおよびHSOと共にフラッシュさせるのに十分な温度まで加熱する。この流れをHF回収蒸留塔D−3に供給する。主にHSOおよびHO(0から2%までのHFを含む)からなる、HFがHX−3においてフラッシュして除かれた後に残っている液体を、HX−4中で冷却し、再循環させてHF吸収塔A−1に戻す。主にHSOおよびHOからなるHF回収塔D−3の残液流を再循環させて熱交換器HX−3に戻す。
【0055】
無水HFをそのHF回収塔D−3の上部から回収し、再循環させて気化器HX−1を介して反応器R−1に戻す。HF吸収塔A−1の上部を出る流れは主にHCFO−1233zd(E)からなり、HCFC−244fa(微量のHF)は仕上げ系A−2へと先に送られ、そこでそのガス状の流れを微量のHFを取り出すために水または苛性溶液と接触させ、続いて乾燥剤で乾燥させる。吸収装置A−2を出る酸を含まない粗製生産物は、3個の精製塔の1個目であるD−4へと送られる。
【0056】
塔D−4の上部を出る流れは主にHFO−1234ze(E)およびHCFO−1233zd(E)の沸点より低い沸点を有する反応副産物からなり、それをHFO−1234ze(E)生産物回収蒸留塔D−6に供給する。製品グレードのHFO−1234ze(E)が蒸留塔D−6の上部を出て生産物貯蔵所へと向かう。そのHFO−1234ze(E)生産物塔の残液は主にHFC−245fa、HFO−1234ze(Z)、およびHCFO−1233zd(E)からなる。この残液流を、1233zd(E)生産物回収塔D−5からの残液流と組み合わせた後、気化器HX−5に、次いで気相脱塩化水素反応器R−2に供給する。そのHFC−245fa不純物はR−2中である程度まで脱フッ化水素されて望まれるHFO−1234ze(E)生産物を生成するであろう。
【0057】
主にHCFO−1233zd(E+Z)、244faおよびより重い副産物からなる塔D−4の下部を出る流れをHCFO−1233zd(E)生産物回収蒸留塔D−5に供給する。製品グレードのHCFO−1233zd(E)が蒸留塔D−5の上部を出て生産物貯蔵所へと向かう。そのHCFO−1233zd(E)生産物塔の残液は主にHCFC−244fa、HCFO−1233zd(Z)およびHCFO−1233zd(E)の沸点より高い沸点を有する反応副産物からなる。この残液流を、HFO−1234ze(E)生産物回収塔D−6からの残液流と組み合わせた後、気化器HX−5に、次いで気相脱塩化水素反応器R−2に供給する。そのHCFO−1233zd(Z)不純物はR−2中である程度まで異性化して望まれるHCFO−1233zd(E)生産物を生成するであろう。
【0058】
R−2において用いられる気相脱塩化水素触媒は、バルクもしくは担持された形の、金属ハロゲン化物、ハロゲン化金属酸化物、中性(またはゼロ酸化状態の)金属もしくは金属合金、または活性炭であってよい。金属ハロゲン化物または金属酸化物触媒を用いる場合、それらは好ましくは一、二価金属ハロゲン化物、酸化物、およびそれらの混合物/組み合わせである。
【0059】
場合により、望まれる生産物の混合に応じて、R−2において部分的に244faの脱フッ化水素により1233zd(E)生産物を生成するであろうより選択性の低い脱塩化水素触媒を用いてよい。これらには金属ハロゲン化物およびハロゲン化金属酸化物、好ましくは三価金属ハロゲン化物、酸化物、およびそれらの混合物/組み合わせも含まれる。
【0060】
構成要素金属にはCr3+、Al3+、Fe3+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Pd2+、Li、Na、K、およびCsが含まれるが、それらに限定されない。構成要素ハロゲン化物には、F、Cl、Br、およびIが含まれるが、それらに限定されない。有用な一または二価金属ハロゲン化物の例には、LiF、NaF、KF、CsF、MgF、CaF、LiCl、NaCl、KCl、およびCsClが含まれるが、それらに限定されない。有用な三価金属ハロゲン化物および金属酸化物の例には、Al、AlCl、AlF、Fe、Fe、FeCl、FeF、Cr、CrF、CrO3−2xが含まれる。その金属酸化物および/またはフッ化物および/または塩化物は、その反応の前または間に完全にまたは部分的に塩素化および/またはフッ素化されることができる。ハロゲン化処理には、先行技術において既知のハロゲン化処理のいずれか、特にHF、F、HCl、Cl、HBr、Br、HI、およびIをそのハロゲン化の源として用いるハロゲン化処理が含まれることができる。
【0061】
中性の、すなわちゼロ価の金属、金属合金およびそれらの混合物を用いる場合、有用な金属にはPd、Pt、Rh、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Cr、Mn、および前述のものの合金または混合物としての組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。その触媒は担持されていてよく、または担持されていなくてよい。金属合金の有用な例には、SS 316、Nickel、Monel 400、Incoloy 825、Inconel 625、Inconel 600が含まれるが、それらに限定されない。
【0062】
好ましい触媒には、活性炭、ステンレス鋼(例えばSS 316)、オーステナイト性ニッケルに基づく合金(例えばInconel 625)、ニッケル、フッ素化10% CsCl/MgO、および10% CsCl/MgFが含まれる。その反応温度は好ましくは約300°から550℃までであり、その反応圧力は好ましくは約0から150psigまでである。
【0063】
R−2からの反応器流出液を再循環させてHCl回収蒸留塔D−2に戻し、そこでそのHClを回収する。
場合により、蒸留塔D−5およびD−6の下部を出る流れを組み合わせて液相攪拌反応器中に苛性溶液と共に供給して、HCFC−244faおよびHFC−245faを脱ハロゲン化水素し、244faの一部が脱塩化水素され、一部が脱フッ化水素されると考えられるため、望まれる生産物1234ze(E)および1233zd(E)の両方を生成することができる。
【実施例】
【0064】
実施例1
この実施例は、HCC240faが連続的にハロゲン化チタン触媒およびHFの装填の中に供給される連続的な反応を説明する。
【0065】
汚れのない空の、10ガロンの外装付きのHastelloy C構成の攪拌反応器を用意した。この反応器を、充填材料(ストリッパー)を含有する直径2インチの縦型のPTFEで内側を覆ったパイプに接続し、それを今度はオーバーヘッド熱交換器に接続する。その熱交換器に胴(shell)側において−40℃のブラインの循環を供給する。このストリッパーを出る蒸気を、温度制御された希薄な水酸化カリウム水溶液を循環させたガス洗浄装置(scrubber)を通して処理する。このストリッパーを出る蒸気を、重さを量り、冷却した(−40℃)円筒、続いてドライアイス浴中で冷却したより小さい円筒中で順次集める。
【0066】
最初に約1200グラムのTiClを触媒として添加し、続いてすぐに28ポンドのHFを添加した。その反応器の内容物を攪拌しながら約85℃まで加熱し、それは触媒のフッ素化後のHClの形成後は120psigの圧力にあった。その反応器へのHFの供給を、蒸気加熱された交換機を通して気化した後、1.0ポンド/hrの速度で継続した。次いでHCC−240faの連続的な供給を1.0ポンド/hrで開始した。その反応器を約85°から87℃までの範囲の温度および120psigの圧力に保った。触媒ストリッパー塔の上部を出る反応器流出液の有機性部分の試料を、GCを用いて分析した。結果は、約55GC面積%のHCFC244faおよび約42GC面積%のHCFO−1233zd(E)を示した。その反応器を連続的に56時間この条件で動かし、非常に一貫した結果が得られた。
【0067】
実施例2
この実施例は、HCC240faがハロゲン化チタン触媒およびHFの装填の中に連続的に供給されるセミバッチ反応を説明する。
【0068】
実施例1と同じ反応器を用いた。その反応器に2600グラムの新しいTiCl触媒を装填した。
そのプロセス(TiCl触媒の存在下でのHCC−240+HFの反応)を、G240のその反応器中での滞留時間を低減させ、それにより過剰にフッ素化された種である244faの形成を低減させることを望んで、完全にバッチ式のプロセスから半連続的なプロセスに変更した。その反応器に最初に50ポンドのHFを、続いて13ポンドのG240を装填し、その反応器の温度をゆっくりと上昇させ、約80°から85℃までの範囲の温度で反応を観察した。その反応を数時間進行させ、より軽い構成要素を連続的に触媒ストリッパー塔のオーバーヘッドでガス洗浄装置へと取り出し、ドライアイスで冷やしたトラップ(DIT)中で生産物を集めた。
【0069】
次いでそのHCC−240の供給を連続的に開始し、その反応器の蒸気空間中に添加した。そのオーバーヘッド取り出し系を、一定量の物質がキャットストリッパー(catstripper)から取り出されるように修正し、G240の供給速度をその速度と調和するように調節した。その生産運転の間に数回その反応器を停止して、さらなるHFを添加し、前回のように再度始動させた。
【0070】
1233zdの生産に関するその反応の選択性は驚くほど低く、40〜50%であった。その主な副産物は、過剰にフッ素化された種である244faであった(50〜55%)。おそらく、触媒のG240に対するモル比が高すぎ、その選択性に悪影響を与えた。
【0071】
実施例3
この実施例は、金属塩化物触媒上での244faの脱ハロゲン化水素である。
実施例3において、一連の一、二、および三価金属塩化物を脱ハロゲン化触媒として用いて、ここで20mlの触媒が用いられた。244faをそれぞれの触媒の上を12g/hの速度で、350℃の温度において通過させた。
【0072】
表1において示したように、全てのその一および二価金属塩化物触媒は80%より高い1234ze(E+Z)選択性および20%より低い1233zd(E+Z)選択性を提供し、これはこれらの触媒が244faの脱塩化水素に関してそれの脱フッ化水素よりも有効であることを示している。
【0073】
比較すると、その一価金属塩化物触媒は二価金属塩化物触媒よりも選択的に1234ze(E+Z)を形成する。次の触媒上で、90%より高い244faの変換が達成された:10.0重量% LiCl/C、10.0重量% KCl/C、および10.0重量% MgC1/C。一方で、その三価鉄塩化物触媒は約9%の1234ze(E+Z)選択性および約61%の1233zd(E+Z)選択性を示し、それはこの触媒が244faの脱フッ化水素に関してそれの脱塩化水素よりも有効であることを示唆している。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例4
この実施例は、アルカリ金属塩化物でドープしたMgF触媒上での244faの脱ハロゲン化水素である。
【0076】
実施例4において、一連のアルカリ金属塩化物でドープしたMgF触媒を脱ハロゲン化水素触媒として用いて、ここで20mlの触媒が用いられた。244faをそれぞれの触媒の上を12g/hの速度で、350℃の温度において通過させた。
【0077】
表2において示したように、全てのそのアルカリ金属塩化物でドープしたMgF触媒は90%より高い1234ze(E+Z)選択性および5%より低い1233zd(E+Z)選択性を提供し、これはこれらの触媒が244faの脱塩化水素に関してそれの脱フッ化水素よりもはるかに有効であることを示している。
【0078】
【表2】
【0079】
実施例5
この実施例は、本発明の特定の好ましい態様に従う、HF、HCFO−1233zd、およびHCFC244faの混合物からの無水HFの回収を説明する。
【0080】
約30重量%のHCFO−1233zd(E)、40重量%のHCFC−244fa、および約30重量%のHFからなる混合物を気化させ、充填された塔の下部に1時間あたり約2.9ポンドの供給速度で約4時間供給した。その中に約2%のHFを溶解させた約80重量%硫酸(80/20 HSO/HO)の流れをその同じ充填された塔の上部に、1時間あたり約5.6ポンドの供給速度で、同じ時間フレームの間に供給した。その塔の上部を出るガス状の流れは、その中に1.0重量%未満のHFと共にHCFO−1233zd(E)およびHCFC244faを含む。その塔の下部の硫酸中のHFの濃度は、2.0重量%から約15重量%に増大する。
【0081】
硫酸および約15重量%のHFを含有するその塔の残液を集め、2ガロンのTeflon(登録商標)で内側を覆われた容器の中に装填した。その混合物を約140℃に加熱して、HF生産物を気化およびフラッシュさせて分離し、それを集めた。その集められたHF生産物は約6000ppmの水および500ppmの硫黄を含有していた。その硫酸は約500ppmのTOC(全有機性炭素)を含有していた。
【0082】
フラッシュ蒸留から集められたHFを蒸留塔で蒸留し、無水HFが回収された。その回収された無水HFは、50ppm未満の硫黄不純物および100ppm未満の水を含有していた。
【0083】
実施例6
この実施例は、図1における蒸留塔D−5による酸を含まない1233zd(E)粗製生産物の精製を実証する。
【0084】
実施例2において生成された92ポンドの酸を含まない1233zd/244fa粗製物質を、バッチ蒸留塔に装填した。その粗製物質は、約94GC面積%および6GC面積%の不純物を含有していた。その蒸留塔は10ガロンのリボイラー、2インチのID×10フィートのプロパック塔(propack column)ならびに胴管式凝縮装置で構成されていた。その塔は約30の理論段数を有していた。その蒸留塔は、温度、圧力、および差圧伝送器を備えていた。約7ポンドの軽質留分(lights cut)が回収され、それは主に1234ze(Z+E)、トリフルオロプロピン、245fa、および1233zd(E)で構成されていた。82ポンドの99.8+GC面積%の1233zd(E)が集められた。約3ポンドの量のそのリボイラーの残留物は、主に244fa、1233zd(Z)、1233zdの2量体、および1233zd(E)であった。99.8+GC面積%の純粋な1233zd(E)の回収率は94.8%であった。
【0085】
実施例7
この実施例は、図1における再循環塔D1の使用を実証する。
実施例2において決定したような、代表的な1233zd(E).244fa液相反応器流出液混合物を、バッチ蒸留塔の中に装填した。その蒸留塔は、10ガロンのリボイラー、2インチの内径×10フィート(長さ)のプロパック塔、および−40℃の冷却剤流量能力を有する胴管式凝縮装置で構成されていた。その塔は約30の理論段数を有していた。その蒸留塔は、温度、圧力、および差圧伝送器を備えていた。その蒸留塔の供給混合物は、約30重量%のHF、37重量%のHCl、および33%の1233zd(E)/244fa粗製物質であった。その蒸留を、約100psigの圧力および15〜20水柱インチの差圧(デルタP)で運転した。その留出物およびリボイラーの両方を定期的に試料採取し、有機物質、HF、およびHClに関してガスおよびイオンクロマトグラフィーを用いて分析した。
【0086】
最初に、HCl、有機物質、およびHFが両方の試料において観察された。より多くの物質が留出物として取り出されるにつれて、そのリボイラーの濃度が変化する。まず、HClの濃度がそれが検出できなくなるまで減少した。その蒸留を、リボイラーの試料中の有機物質の濃度がガスクロマトグラフィーを用いて分析した際にごく微量まで減少するまで進めた。その蒸留の終結時にそのリボイラー中に残っている物質は本質的に純粋なHFであった。次いでその回収されたHF(リボイラーの残液)を用いて、回収されたHFを再循環させて液相フッ素化反応器に戻して十分に働くことを実証した。
【0087】
実施例8
この実施例は、本質的にHFO−1234ze(E)、HFO−1234ze(Z)、およびHFC−245faからなる粗製の混合物の連続的な蒸留を説明する。
【0088】
その蒸留塔は、10ガロンのリボイラー、2インチの内径×10フィート(長さ)のプロパック塔、および胴管式凝縮装置で構成されていた。その塔は約30の理論段数を有していた。その蒸留塔は、リボイラーレベル指示器;温度、圧力、および差圧伝送器を備えていた。その蒸留を、約50psigの圧力および約17水柱インチの差圧で、連続方式で運転した。
【0089】
本質的にHFO−1234ze(E)、HFO−1234ze(Z)、HFC−245fa、および少量の不純物で構成される供給物(表3参照)を、その蒸留塔の下部の入口を経て約1.75lb/hrの速度で連続的に供給した。本質的にHFO−1234ze(E)および軽い不純物で構成されるその留出物(表3参照)をその凝縮装置の上部から約1.02lb/hrの速度で集めた。リボイラー中の物質のレベルを約40%で維持するため、本質的にHFC−245faおよびHFO−1234ze(Z)で構成されるその流れ(表3参照)をリボイラーの下部から約0.73lb/hrの速度で取り出した。その蒸留を約1000時間連続的に運転した。
【0090】
【表3】
【0091】
実施例9および10
これらの実施例は、244faの1234ze(E+Z)および1233zd(E+Z)への脱ハロゲン化水素を提供する。
【0092】
実施例9において、フッ素化Crを脱ハロゲン化水素触媒として用いて、20mlの触媒を直系3/4インチのmonel製反応器中に装填した。244faの供給物を、350℃の温度において12グラム/hourの速度でその触媒を通過させた。
【0093】
表4において示したように、そのフッ素化Cr触媒は約75%の1233zd選択性および約21%の1234ze選択性を提供し、これは1234zeおよび1233zdをこの触媒上での244faの脱ハロゲン化水素から同時生産することができることを示している。その反応の間に全ての244faが変換された。
【0094】
【表4】
【0095】
実施例10において、フッ化アルミニウムを脱ハロゲン化水素触媒として用いた。20mlの触媒を直系3/4インチのmonel製反応器中に装填した。244faの供給物を、350℃の温度において12グラム/hourの速度でそれぞれの触媒を通過させた。
【0096】
表5において示したように、そのAlF触媒は約77%の1233zd選択性および約22%の1234ze選択性を提供し、これは1234zeおよび1233zdをこの触媒上での244faの脱ハロゲン化水素から同時生産することができることを示している。その反応の間に全ての244faが変換された。
【0097】
【表5】
【0098】
実施例11
この実施例は、苛性溶液中でのHCFC244faの脱ハロゲン化水素が1234ze(E)および1233zd(E)の両方を生成することを実証する。
【0099】
539.5グラムの9.3重量%KOH溶液および135.4グラムの90.0GC面積%の純粋な3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244fa)を、1.0リットルのステンレス鋼の円筒に入れた。その他の主な構成要素は、9.2GC面積%の量のHCFO−1233xdであった。その円筒を75°〜80℃に加熱し、5(5)時間振盪した。蒸気空間の試料は、75.6面積%のHFO−1234zeトランス異性体、12.9面積%のHFO−1234zeシス異性体、8.5GC面積%のHCFC−244fa、および0.8GC面積%のHCFO−1223xdの存在を示した。有機性液相の試料は、24.4GC面積%のHFO−1234ze(E)、12.9GC面積%のHCFO−1233zd(E)異性体、44.2GC面積%のHCFC−244fa、および8.1GC面積%のHCFO−1223xdを示した。
【0100】
560.0グラムの水溶液がその実験後に集められ、それはその水層における20.5グラムの重量増加に等しい。この重量増加は244faの脱塩化水素の間に生成されたHClであったと仮定して、その反応の間にHCFC−244faのHFO−1234zeへの約60%の変換が起きたと計算された。
【0101】
前述の記述および実施例は本発明を説明するだけのものであることは理解されるべきである。当業者は、本発明から逸脱することなく様々な代替案および修正を考案することができる。従って、本発明は、添付された特許請求の範囲内に入る全てのそのような代替案、修正および変動を含むことを意図する。
本発明は以下の態様を含む。
[1] 以下の:
(a)1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンをフッ素化触媒の存在下でフッ化水素と反応させて、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび1−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロパンを同時生産し;そして
(b)工程(a)で形成された1−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロパンを脱塩化水素してトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生産する
工程を含む、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの形成のためのプロセス。
[2] その脱塩化水素工程が液相中で苛性溶液との接触により行われる、[1]に記載のプロセス。
[3] その脱塩化水素工程が気相中で脱塩化水素触媒を用いて行われる、[1]に記載のプロセス。
[4] その脱塩化水素工程がさらに塩化水素を生成する、[1]に記載のプロセス。
[5] その反応が過剰なフッ化水素を用いて液相反応器中で行われる、[1]に記載のプロセス。
[6] その反応がTiCl、SnCl、TaCl、SbCl、AlCl、SbCl、およびそれらの混合物からなるグループから選択される比較的弱いフッ素化触媒を用いて行われる、[5]に記載のプロセス。
[7] その触媒が部分的にフッ素化されている、[6]に記載のプロセス。
[8] その触媒が完全にフッ素化されている、[6]に記載のプロセス。
[9] その反応が非腐食性条件下で行われ、それにより金属または合金の反応器を用いることができる、[5]に記載のプロセス。
[10] そのプロセスが、単に以下のもの:作動条件;反応物の濃度;および液相反応器中で用いられる触媒の内の1つ以上を調節することにより、異なる量のそれぞれの化合物の生産における柔軟性を可能にする、[5]に記載のプロセス。
【符号の説明】
【0102】
A−1 HF吸収塔
A−2 仕上げ系
CS−1 触媒ストリッパー塔
D−1 再循環塔
D−2 HCl塔
D−3 HF回収蒸留塔
D−4 精製塔
D−5 HCFO−1233zd(E)生産物回収蒸留塔
D−6 HFO−1234ze(E)生産物回収蒸留塔
HX−1 気化器
HX−2 熱交換器
HX−3 熱交換器
HX−4 熱交換器
HX−5 気化器
R−1 反応器
R−2 気相脱塩化水素反応器
図1