特許第5792283号(P5792283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5792283ネットワークにおける低オーバーヘッド通信のための中継
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792283
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ネットワークにおける低オーバーヘッド通信のための中継
(51)【国際特許分類】
   H04L 1/16 20060101AFI20150917BHJP
   H04J 11/00 20060101ALI20150917BHJP
   H04J 99/00 20090101ALI20150917BHJP
   H04W 28/06 20090101ALI20150917BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20150917BHJP
   H04W 28/04 20090101ALI20150917BHJP
【FI】
   H04L1/16
   H04J11/00 Z
   H04J15/00
   H04W28/06
   H04W72/04 133
   H04W28/04 110
【請求項の数】16
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2013-505067(P2013-505067)
(86)(22)【出願日】2011年4月12日
(65)【公表番号】特表2013-528988(P2013-528988A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】US2011032174
(87)【国際公開番号】WO2011130316
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2012年12月12日
(31)【優先権主張番号】61/323,434
(32)【優先日】2010年4月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/323,326
(32)【優先日】2010年4月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595020643
【氏名又は名称】クゥアルコム・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】ヨング、ローレンス・ダブリュ.・ザ・サード
(72)【発明者】
【氏名】カタル、スリニバス
【審査官】 谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−011407(JP,A)
【文献】 特開2004−015136(JP,A)
【文献】 特開2003−008540(JP,A)
【文献】 特開2006−066948(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0250293(US,A1)
【文献】 特開昭59−226536(JP,A)
【文献】 特開2001−156699(JP,A)
【文献】 特開2008−060951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/16
H04J 11/00
H04J 99/00
H04W 28/04
H04W 28/06
H04W 72/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共用媒体上を局間で通信するための方法であって、
宛先局において、発信局から発信された、元の第1の波形のペイロードの1つまたは複数のセグメントを含む再送信された第1の波形を受信すること、前記1つまたは複数のセグメントは、前記発信局によって前記共用媒体上で送信され、中継局によって前記宛先局に再送信されており、前記再送信された第1の波形は、前記中継局によって正しくデコードされなかった前記ペイロードのセグメントを示す中継情報を含む、と、
前記宛先局において、前記ペイロードのうちのどのセグメントが前記中継局または前記宛先局のいずれかによって正しくデコードされていないのかを特定する肯定応答情報を生成すること、前記肯定応答情報は、前記中継情報に少なくとも部分的に基づく、と、
前記共用媒体上で前記宛先局から第2の波形を送信すること、前記第2の波形が前記肯定応答情報を含む、とを備える、方法。
【請求項2】
前記ペイロードの各セグメントが、所定のシンボル長を有する少なくとも1つのシンボルを備え、各シンボルの周波数成分のキャリア周波数が、前記シンボル長の逆数によって決定される周波数インターバルの整数倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の波形中に含まれる前記肯定応答情報は、前記発信局から前記宛先局に前記1つまたは複数のセグメントを送信するために使用されたよりも少ない中継局を使用して、前記宛先局から前記発信局に送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記宛先局から前記発信局に前記肯定応答情報を送信するための第1のスループットが、前記発信局から前記宛先局に前記中継局を介して前記1つまたは複数のセグメントを送信するための第2のスループットよりも低い、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記元の第1の波形が、前記発信局によって前記共用媒体上で送信され、複数の中継局を介して再送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記中継情報は、前記ペイロードのうちのどのセグメントが少なくとも1つの中継局によって正しくデコードされていないのかを特定し前記中継情報は、前記元の第1の波形が前記複数の中継局を介して再送信されると、蓄積される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の中継局のうちの第1の中継局によって正しくデコードされていないセグメントは、前記複数の中継局のうちの第2の中継局に送信される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の中継局のうちの前記第1の中継局によって正しくデコードされていない前記セグメントは、前記ペイロードのうちのどのセグメントが少なくとも1つの中継局によって正しくデコードされていないのかを特定する情報を備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
共用媒体上を局間で通信するためのシステムであって、
複数のセグメントを有するペイロードを含む元の第1の波形を送信するように構成される発信局と、
前記元の第1の波形の前記ペイロードから1つまたは複数のセグメントを含む再送信された第1の波形を送信するように構成される少なくとも1つの中継局、前記再送信された第1の波形は、前記少なくとも1つの中継局によって正しくデコードされなかった前記ペイロードのセグメントを示す中継情報を含む、と、
宛先局であって、
前記再送信された第1の波形を受信すること、
前記ペイロードの前記セグメントのうちのどれが前記少なくとも1つの中継局または前記宛先局によって正しくデコードされなかったのかを特定する肯定応答情報を生成すること、前記肯定応答情報は、前記中継情報に少なくとも部分的に基づく、と、
前記共用媒体上で前記宛先局から第2の波形を送信すること、前記第2の波形は前記肯定応答情報を含む、と、を行うように構成される前記宛先局と、
を備える、システム。
【請求項10】
前記ペイロードの各セグメントは、所定のシンボル長を有する少なくとも1つのシンボルを備え、
各シンボルの周波数成分のキャリア周波数は、前記シンボル長の逆数によって決定される周波数インターバルの整数倍である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第2の波形中に含まれる前記肯定応答情報は、前記発信局から前記宛先局に前記1つまたは複数のセグメントを送信するために使用されたよりも少ない中継局を使用して、前記宛先局から前記発信局に送信される、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記宛先局から前記発信局に前記肯定応答情報を送信するための第1のスループットは、前記発信局から前記宛先局に前記中継局を介して前記1つまたは複数のセグメントを送信するための第2スループットよりも低い、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記元の第1の波形は、前記発信局によって前記共用媒体上を送信され、複数の中継局を介して再送信される、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記中継情報は、前記ペイロードのうちのどのセグメントが少なくとも前記複数の中継局のつによって正しくデコードされていないのかを特定し、前記中継情報は、前記元の第1の波形が、前記複数の中継局を介して再送信されると、蓄積される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数の中継局のうちの第1の中継局によって正しくデコードされていないセグメントは、前記複数の中継局のうちの第2の中継局に送信される、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記複数の中継局のうちの前記第1の中継局によって正しくデコードされていない前記セグメントは、前記ペイロードのうちのどのセグメントが少なくとも前記複数の中継局の前記つによって正しくデコードされていないのかを特定する情報を備える、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2010年4月12日に出願された米国仮特許出願第61/323,326号、およびその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2010年4月13日に出願された米国仮特許出願第61/323,434号に優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ネットワークにおける低オーバーヘッド通信のための中継に関する。
【背景技術】
【0003】
ネットワークにおいて通信するためのいくつかの技法は、共用される媒体上を送信される信号上にデータを変調することに関与する。たとえば、離散マルチトーン(DMT:Discrete Multi Tone)としても知られる直交周波数分割多重(OFDM)は、媒体の利用可能な帯域幅が、いくつかの狭帯域、低データレートチャネル、または「キャリア」に再分割されるスペクトル拡散信号変調技法である。高いスペクトル効率を取得するために、キャリアのスペクトルは互いに重なり、直交する。データは、所定の持続時間を有し、いくつかのキャリアを包含するシンボルの形態で送信される。これらのキャリア上で送信されるデータは、2位相シフトキー(BPSK:Binary Phase Shift Key)、4位相シフトキー(QPSK:Quadrature Phase Shift Key)、またはmビット直交振幅変調(m−QAM:m-bit Quadrature Amplitude Modulation)などの変調方式を使用して振幅および/または位相で変調され得る。代替的に、他の変調技法も使用され得る。
【0004】
多くの有線ラインおよび無線(ワイヤレス)ネットワーク技術は、プリアンブル、ヘッダ、およびペイロード部分を含む物理プロトコルデータユニット(PPDU:Physical Protocol Data Unit)フォーマットを使用する。プリアンブルは、一般に、PPDU検出の開始およびヘッダをデコードするための初期チャネル推定のために使用される(たとえば、1つまたは複数のOFDMシンボル上で送信される)所定の信号からなる。ヘッダは、ペイロードを適切にデコードするために、受信側についてのネットワーク管理情報(たとえばトーンマップインデックス)を与える。さらに、ヘッダは、適切なネットワーク動作のための情報(たとえば、仮想キャリア感知)を与え得る。PPDUには、通常、PPDUの受信者からの肯定応答を与える後続の短いPPDUが続く。雑音の多い有線ラインおよびワイヤレスメディアでは、プリアンブル、ヘッダ、および肯定応答は、一般に様々なチャネル状態の下で動作するように設計され、したがって、信頼可能であるために持続時間が比較的長い傾向がある。ただし、これらのアイテムは、ペイロードを搬送する送信の一部分に対してオーバーヘッドを追えることになる。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、一般的にいって、共用媒体上を局間で通信するための方法は、宛先局において、
複数のセグメントのシーケンスで発信局から発信されたペイロードの1つまたは複数のセグメントを含む第1の波形を受信すること、
第1の波形中に含まれる1つまたは複数のセグメントは、発信局によっておよび1つまたは複数の中継局の各々によって共用媒体上で送信されており、
第1の波形は、複数のセグメントのシーケンスのうちのどれが中継局のうちの少なくとも1つによって正しくデコードされなかったのかを示す、と、
第1の波形に基づいて、複数のセグメントのシーケンスのうちのどれが宛先局によって正しくデコードされたのかを特定する肯定応答情報を生成することと、
共用媒体上で宛先局から第2の波形を送信すること、第2の波形は肯定応答情報を含む、と、
を備える。
【0006】
態様は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0007】
ペイロードの各セグメントは、所定のシンボル長を有する少なくとも1つのシンボルを備え、各シンボルの周波数成分のキャリア周波数は、シンボル長の逆数によって決定される周波数インターバルの整数倍である。
【0008】
第2の波形中に含まれる肯定応答情報は、発信局から宛先局に1つまたは複数のセグメントを送信するために使用されたよりも少ない中継局を使用して、宛先局から発信局に送信される。
【0009】
宛先局から発信局に肯定応答情報を送信するためのスループットは、発信局から宛先局に1つまたは複数のセグメントを送信するためのスループットよりも低い。
【0010】
第1の波形は、発信局によっておよび複数の中継局の各々によって共用媒体上で送信される。
【0011】
複数のセグメントのシーケンスのうちのどれが、少なくとも1つの中継局によって正しくデコードされていないのかを特定する情報は、複数の中継局による複数の送信にわたって蓄積される。
【0012】
複数の中継局のうちの第1の中継局によって正しくデコードされていないセグメントは、複数の中継局のうちの第2の中継局に送信される。
【0013】
複数の中継局のうちの第1の中継局によって正しくデコードされていないセグメントは、複数のセグメントのシーケンスのうちのどれが少なくとも1つの中継局によって正しくデコードされていないのかを特定する情報を備える。
【0014】
別の態様では、一般的にいって、共用媒体上を局間で通信するためのシステムであって、
複数のセグメントのシーケンスを有するペイロードを含む波形を送信するように構成された発信局と、正しくデコードされたペイロードのセグメントを少なくとも含む波形を送信するように構成された少なくとも1つの中継局と、宛先局とを備える。
【0015】
宛先局は、
ペイロードの1つまたは複数のセグメントを含む波形を受信すること、
受信された波形は、複数のセグメントのシーケンスのうちのどれが中継局のうちの少なくとも1つによって正しくデコードされなかったのかを示す、と、
受信された波形に基づいて、複数のセグメントのシーケンスのうちのどれが宛先局によって正しくデコードされているのかを特定する肯定応答情報を生成することと、
共用媒体上で宛先局から波形を送信すること、送信される波形は肯定応答情報を含む、と、
を行うように構成される。
【0016】
態様は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0017】
ペイロードの各セグメントは、所定のシンボル長を有する少なくとも1つのシンボルを備え、各シンボルの周波数成分のキャリア周波数は、シンボル長の逆数によって決定される周波数インターバルの整数倍である。
【0018】
第2の波形中に含まれる肯定応答情報は、発信局から宛先局に1つまたは複数のセグメントを送信するために使用されたよりも少ない中継局を使用して、宛先局から発信局に送信される。
【0019】
宛先局から発信局に肯定応答情報を送信するためのスループットは、発信局から宛先局に1つまたは複数のセグメントを送信するためのスループットよりも低い。
【0020】
第1の波形は、発信局によっておよび複数の中継局の各々によって共用媒体上を送信される。
【0021】
複数のセグメントのシーケンスのうちのどれが少なくとも1つの中継局によって正しくデコードされていないのかを特定する情報は、複数の中継局による複数の送信にわたって蓄積される。
【0022】
複数の中継局のうちの第1の中継局によって正しくデコードされていないセグメントは、複数の中継局のうちの第2の中継局に送信される。
【0023】
複数の中継局のうちの第1の中継局によって正しくデコードされていないセグメントは、複数のセグメントのシーケンスのうちのどれが少なくとも1つの中継局によって正しくデコードされていないのかを特定する情報を備える。
【0024】
本発明の多くの利点(そのうちのいくつかは、それの様々な態様および実装形態のうちのいくつかにおいてのみ実現され得る)の中には以下のことがある。
【0025】
それぞれのフレーム内のデータのパケットを通信する通信システムでは、様々なファクタが、任意の所与のフレームのための最小サイズを決定する。
【0026】
OFDM変調を使用するシステムなど、いくつかのシステムは、所定のシンボル長(または複数の所定のシンボル長のうちの1つ)のいくつかのシンボルを含むフレームを使用する。フレームの長さは、フレームを構成するシンボルの数に依存する。シンボルは、遅延拡散などのチャネル特性による、タイミングにおける不確実性を考慮するために、追加の巡回拡張を有し得る。したがって、N個の隣接するシンボルのシーケンスは、シンボル長のN倍よりも長くなり得る。OFDM変調の場合、キャリア周波数インターバルは、シンボル長の逆数によって決定される周波数インターバルの整数倍であるので、より密に間隔があけられたキャリアは、より長いシンボル長に対応する。
【0027】
それぞれのフレーム内のパケットを送信する効率および全体的なスループットは、何らかの形態のオーバーヘッド(たとえば、フレーム検出およびチャネル推定の開始のためのプリアンブル、ペイロード内のパケットデータを含むフレーム内のフレーム制御データ、肯定応答パケットなどのパケットデータを含まないフレーム、およびフレーム間時間遅延)にささげられる帯域幅の、パケットデータを搬送するペイロードにささげられる帯域幅に対する比によって決定される。場合によっては、フレームは、フレームの開始に同期させるための1つまたは複数のプリアンブルシンボルで開始し、それがまたオーバーヘッドに加わる。フレームは、送られるデータがシンボルの断片(fraction)の中に収まる場合でも、シンボル長の倍数である必要があるので、フレーム内で少量のデータが送られる場合(たとえば、フレーム制御データのみを有し、ペイロードを有しないフレーム)、より長いシンボル長は、スループットを減らすことができる。大量のデータが送られ、シンボル当たりのビット数が増加する場合、より長いデリミタシンボル長は、また、スループットを減らすことができ、ビット単位での所与のサイズのペイロードをより少数のシンボルの中に収まるようにさせる。
【0028】
専用のプリアンブルシンボルによって与えられるいくつかの機能を実行し、また、他の場合、個別のシンボルの中で送られているいくつかのデータ(例えば、フレーム制御データ、または、短いペイロードの一部分でさえ)をエンコードするデリミタシンボルでフレームを開始することは、短いペイロードがしばしば通信され得る場合、オーバーヘッドを減らし、したがってスループットを増大することができる。デリミタシンボルは、また、チャネル特性の推定を与える機能を実行することができる。
【0029】
プリアンブルまたはフレーム制御に影響を及ぼすインパルス雑音は、ペイロードの復元に負の影響を及ぼす。短いデリミタシンボルは、それの低減された持続時間により、一般に、インパルス雑音または雑音スパイクに対して脆弱ではない。プリアンブルおよびフレーム制御の持続時間を減らすこと(たとえば、場合によっては、110マイクロ秒から約50マイクロ秒に)により、ペイロードをデコードすることの失敗が減る結果となる。場合によっては、これは、より短いデリミタシンボルではより少なくなる、プリアンブル検出および/またはフレーム制御検出の損失の結果となるインパルス雑音イベントの可能性に起因する。
【0030】
本発明の他の特徴および利点は、詳細な説明、図面、および特許請求の範囲において見出される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、ネットワーク構成の概略図である。
図2図2は、通信システムのブロック図である。
図3図3は、エンコードモジュールのブロック図である。
図4A図4Aは、様々な伝送方式に関係するタイミング図である。
図4B図4Bは、様々な伝送方式に関係するタイミング図である。
図4C図4Cは、様々な伝送方式に関係するタイミング図である。
図4D図4Dは、様々な伝送方式に関係するタイミング図である。
図4E図4Eは、様々な伝送方式に関係するタイミング図である。
図4F図4Fは、様々な伝送方式に関係するタイミング図である。
図4G図4Gは、様々な伝送方式に関係するタイミング図である。
図4H図4Hは、様々な伝送方式に関係するタイミング図である。
図4I図4Iは、様々な伝送方式に関係するタイミング図である。
図4J図4Jは、様々な伝送方式に関係するタイミング図である。
図4K図4Kは、様々な伝送方式に関係するタイミング図である。
図4L図4Lは、様々な伝送方式に関係するタイミング図である。
図4M図4Mは、様々な伝送方式に関係するタイミング図である。
図5A図5Aは、デリミタシンボルを処理するための手順に関するフローチャートである。
図5B図5Bは、デリミタシンボルを処理するための手順に関するフローチャートである。
図5C図5Cは、デリミタシンボルを処理するための手順に関するフローチャートである。
図5D図5Dは、デリミタシンボルを処理するための手順に関するフローチャートである。
図5E図5Eは、デリミタシンボルを処理するための手順に関するフローチャートである。
図6図6は、デコードモジュールにおける例示的な動作を示すフローチャートである。
図7A図7Aは、OFDMシンボルのための例示的なエンコード方式を示す概略図である。
図7B図7Bは、OFDMシンボルのための例示的なエンコード方式を示す概略図である。
図7C図7Cは、OFDMシンボルのための例示的なエンコード方式を示す概略図である。
図8A図8Aは、受信機におけるチャネル推定中の例示的な動作を示すフロー図である。
図8B図8Bは、受信機におけるチャネル推定中の例示的な動作を示すフロー図である。
図9A図9Aは、雑音の多い信号を示す図である。
図9B図9Bは、窓機能を示す図である。
図9C図9Cは、フィルタ処理された信号を示す図である。
図10図10は、反復送信を含む方式に関係するタイミング図である。
図11A図11Aは、遅延された肯定応答に関係するタイミング図を示す。
図11B図11Bは、遅延された肯定応答に関係するタイミング図を示す。
図11C図11Cは、遅延された肯定応答に関係するタイミング図を示す。
図12A図12Aは、デリミタフィールドを設定する例のタイミング図を示す。
図12B図12Bは、デリミタフィールドを設定する例のタイミング図を示す。
図13図13は、デリミタフィールドを設定する例のタイミング図を示す。
図14A図14Aは、デリミタフィールドを設定する例のタイミング図を示す。
図14B図14Bは、デリミタフィールドを設定する例のタイミング図を示す。
図15A図15Aは、少なくとも1つの中継器を使用した局(中継局)による送信の例示的な手順の概略図である。
図15B図15Bは、反復送信および遅延された肯定応答を含む方式に関係するタイミング図を示す。
図16図16は、反復送信および遅延された肯定応答を含む方式に関係するタイミング図を示す。
図17図17は、反復送信および遅延された肯定応答を含む方式に関係するタイミング図を示す。
【詳細な説明】
【0032】
本発明の多数の可能な実装形態があり、その多さゆえにこの中で記載することはできない。現時点で好ましいいくつかの可能な実装形態が以下に記載される。ただし、これらは本発明の実装例の記載であって、本発明の記載ではなく、このセクションにおいて記載される具体的な実装例に限定されず、特許請求の範囲においてより広い用語で記載されるものである。
【0033】
図1に示すように、ネットワーク構成100は、いくつかの通信局102A〜102E(たとえば、コンピューティングデバイス、またはオーディオビジュアルデバイス)が互いに通信するための共用される(共用)通信媒体110を与える。通信媒体110は、たとえば、同軸ケーブル、非シールドツイストペア、電力線、または(送信アンテナと受信アンテナとの間で伝搬する電磁波を使用する)ワイヤレスチャネルなどの物理的通信媒体の1つまたは複数のタイプを含むことができる。ネットワーク構成100はまた、ブリッジまたは中継局などのデバイスを含むことができる。通信局102A〜102Eは、ネットワークインターフェースモジュール106によって使用される所定の物理(PHY)レイヤおよびメディアアクセス制御(MAC)レイヤ通信プロトコルを使用して、互いに通信する。MACレイヤはデータリンクレイヤのサブレイヤであり、たとえば、開放型システム間相互接続(OSI)ネットワークアーキテクチャモデルに従って、PHYレイヤへのインターフェースを与える。ネットワーク構成100は、様々なネットワークトポロジー(たとえば、バス、ツリー、スター、メッシュ)のいずれかを有することができる。
【0034】
いくつかの実装形態では、局は、ネットワーク上でのフレーム内のデータ送信の効率を増加させるために、以下に記載する低オーバーヘッドデリミタ技法を使用する。低オーバーヘッドデリミタは、シングルシンボルデリミタ(SSD:single symbol delimiter)と呼ばれることもある。SSDは、フレームの開始(SOF:start of frame)デリミタとしてOFDMシステムにおいて使用され得る。いくつかの実装形態では、SSDは、肯定応答(たとえば、ACK/SACK)または送信/クリア要求など、(RTS/CTS)波形を送るために、他の波形のためのデリミタとしても使用され得る。デリミタシンボルは、通常、フレームを構成するシンボルのシーケンスの前に送信される。いくつかの実装形態では、デリミタシンボルは、推定到着時間の近くでフレームの存在を確認するパイロットシーケンスでエンコードされたキャリアを含むことができる。パイロットシーケンスはプリアンブルとも呼ばれる。デリミタシンボルは、また、デリミタに続くシンボルのシーケンスのためのサンプリング時間を調整するためのタイミング基準として働き、チャネル特性(たとえば、インパルス応答および/または周波数応答)の推定を与えることができる。いくつかの実装形態では、デリミタシンボルは、また、オーバーヘッドデータおよび/またはペイロードデータでエンコードされたデータキャリアを含む。たとえば、フレーム制御データキャリアは、MACレイヤプロトコルにおいて使用されるデータでエンコードされ得、ペイロードデータキャリアは、上位レイヤパケットなど、フレームのペイロードの少なくとも一部分でエンコードされ得る。フレーム制御情報は、ヘッダとも呼ばれる。いくつかの実装形態では、デリミタシンボルのために、短いフレームが使用され得る。場合によっては、短いフレームは、フレーム制御データで変調されたデリミタシンボル(たとえば、前のフレームが受信されていることを示す肯定応答フレーム)か、またはフレーム制御データと、デリミタシンボル内に収まる短いペイロードの両方で変調されたデリミタシンボルを含むことができる。場合によっては、デリミタシンボル内のパイロットキャリアは、デリミタシンボルの他のキャリア上でエンコードされた非パイロットデータをデコードするための初期チャネル推定のために使用され得る。そして、パイロットキャリアと非パイロットデータキャリアの両方は、デリミタシンボルに続くシンボルからデータをデコードするためのより正確なチャネル推定を形成するために使用され得る。
【0035】
いくつかの実装形態では、ネットワーク構成100は、「中央コーディネータ」(CCo:central coordinator)局を使用する。任意の局(たとえば、102B)は、特定のネットワーク構成においてCCo局として働くように指定され得る。CCoは、ネットワーク構成100における他の局の少なくともいくつかに、ある協調機能を与える通信局である。単一のCCoの協調の下で動作する1組の局は、基本サービスセット(BSS:Basic Service Set)と呼ばれる。CCoによって実行される機能は、BSSに入る時の局の認証、局のための識別子の提供、ならびに媒体アクセスのスケジューリングおよびタイミングのうちの1つまたは複数を含むことができる。いくつかの実装形態では、CCoは、BSSの中の局がスケジューリングおよびタイミング情報を判断することができる反復(繰り返される)ビーコン送信をブロードキャストする。このビーコン送信は、通信を協調させるために局によって使用される情報を搬送するフィールドを含むことができる。反復されるビーコン送信の各々のフォーマットは実質的に同様であるが、コンテンツは、一般に、各送信において変化する。ビーコン送信は、ほぼ周期的に繰り返され、いくつかの実装形態では、通信媒体110の特性に同期される。場合によっては、CCoから「隠れている」局(たとえば、CCoから、信頼性をもって信号を受信しない局)を管理するためにプロキシコーディネータ(PCo:Proxy Coordinator)が使用され得る。
【0036】
いくつかの実装形態では、ネットワークインターフェースモジュール106は、ネットワーク構成100が、変化する送信特性を呈する通信媒体110を含むときに性能を改善するための特徴を含む、プロトコルを使用する。たとえば、通信媒体110は、家屋中のAC電力ラインを含み、場合によっては、他の媒体(たとえば、同軸ケーブル線)に結合され得る。
【0037】
電力線通信システムは、情報を交換するために、既存のAC配線を使用する。AC配線は、低周波数送信のために設計されることにより、データ送信のために使用されるより高い周波数において、変化するチャネル特性を与える。たとえば、チャネル特性は、使用される配線と実際のレイアウトとに応じて変化し得る。様々なリンク間のデータレートを増加させるために、局は、それらの送信パラメータを動的に調整し得る。このプロセスは、チャネルアダプテーション(アダプテーション)と呼ばれる。チャネルアダプテーションは、各リンク上で使用され得る1組の送信パラメータを指定するアダプテーション情報を与えることを含む。アダプテーション情報は、使用される周波数、変調パラメータ、および前方誤り訂正(FEC)方式などのパラメータを含むことができる。
【0038】
通信媒体110によって与えられる任意の2つの局間の通信チャネルは、雑音特性と周波数応答とにおける周期的変化など、変化するチャネル特性を呈し得る。変化するチャネル特性の存在下で、性能とQoS安定性とを改善するために、局はチャネルアダプテーションをACラインの周波数(たとえば、50または60Hz)と同期させることができる。一般的に言うと、ACラインサイクルの位相および周波数は、局所的な雑音および負荷の変化とともに、ACラインを生成する発電プラントに依存する変化を呈する。ACラインの周波数との同期は、局が、ACラインサイクルの特定の位相領域に対して最適化された、合致するチャネルアダプテーションを使用することを可能にする。そのような同期の一例は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2006年1月23日に出願された米国特許出願第11/337,946号に記載されている。
【0039】
変化するチャネル特性によって生じる潜在的な減損を緩和する別の態様は、OFDMなどのロバスト(頑強)な信号変調フォーマットを使用することに関与する。OFDM変調を使用する例示的な通信システムについて以下で説明する。
【0040】
様々な通信システムアーキテクチャのいずれかは、通信媒体上で送信される信号波形へ、および信号波形からデータを変換するネットワークインターフェースモジュール106の部分を実装するために使用され得る。局上で実行しているアプリケーションのための通信プロトコルは、フレームのペイロード内で搬送されるセグメントまたは「パケット」中で、ネットワークインターフェースモジュール106へ、および、ネットワークインターフェースモジュール106からデータを提供および受信する。「MACプロトコルデータユニット」(MPDU)は、MACレイヤがPHYレイヤに搬送するように依頼したフレームである。MPDUは、送信されているデータのタイプに基づいて、様々なフォーマットのいずれかを有することができる。「PHYプロトコルデータユニット(PPDU)」は、電力ライン上を送信されるMPDUを表す変調された信号波形を指す。
【0041】
OFDM変調では、データは、OFDM「シンボル」の形で送信され、フレームは、1つまたは複数のシンボルから構成される。各シンボルは、所定の持続期間またはシンボル時間Tsを有する。各シンボルは、互いに直交し、OFDMキャリアを形成するN個の正弦波キャリア波形の重ね合わせから生成される。各キャリアは、シンボルの始端から測定された、ピーク周波数fiと位相Φiとを有する。これらの相互に直交するキャリアの各々について、正弦波形の整数個の周期は、シンボル時間Ts内に含まれる。すなわち、各キャリア周波数は、周波数インターバルΔf=1/Tsの整数倍である。キャリア波形の位相Φiおよび振幅Aiは、結果として得られた変調された波形の直交性に影響を及ぼすことなく、(適切な変調方式に従って)独立して選択され得る。キャリアは、OFDM帯域幅と呼ばれる周波数f1とfNとの間の周波数範囲を占有する。
【0042】
図2を参照すると、通信システム200は、通信媒体204上で、受信機206に信号(たとえば、OFDMシンボルのシーケンス)を送信するための送信機202を含む。送信機202および受信機206は、両方とも、各局においてネットワークインターフェースモジュール106に組み込まれ得る。通信媒体204は、ネットワーク構成100の通信媒体110を介した、ある局から別の局への経路を表す「チャネル」を与える。
【0043】
送信機202において、PHYレイヤを実装するモジュールは、MACレイヤからMPDUを受けとる。送信機202は、エンコードモジュール220と、マッピングモジュール222と、変調モジュール224と、後処理モジュール226と、アナログフロントエンド(AFE)モジュール228とを含む。送信機202は、以下でより詳細に記載されるように、シーケンス(「シンボルセット」と呼ばれる)のはじめにデリミタシンボルを含む、通信媒体204上を送信されることになるシンボルのシーケンスを形成する。
【0044】
MPDUは、スクランブリング、畳み込みコーディング、インターリービング、およびダイバーシティコピー(diversity copying)などの処理を実行するために、エンコードモジュール220において処理される。図3を参照すると、例示的なエンコードモジュール220は、スクランブラ300と、符号器302と、インターリーバ304と、ダイバーシティコピア(diversity copier)306とを含む。
【0045】
スクランブラ300は、(たとえば、0または1の長いストリングの可能性を減らすために)MPDUによって表される情報に、よりランダムな分布を与える。いくつかの実装形態では、次式などの生成多項式を使用して、データは、繰り返す擬似雑音(PN)のシーケンスと「排他的論理和」をされる。
【数1】
【0046】
スクランブラ300中の状態ビットは、MPDUを処理することの開始時に所定のシーケンス(たとえば、すべて1)に初期化される。スクランブラ300からのスクランブルされた情報ビットは、様々なコーディング技法のいずれか(たとえば、畳み込み符号)を使用する符号器302によってエンコードされ得る。符号器302は、データビットのストリームと、場合によっては、パリティビットの1つまたは複数のストリームなどの付帯情報とを生成することができる。たとえば、符号器302は、m個の入力情報ビットの各ブロックについて、入力情報を示すm個の「データビット」のブロック(d)と、情報ビットに対応するn/2個の「パリティビット」の第1のブロック(p)と、情報ビットの既知の並び換え対応するn/2個のパリティビットの第2のブロック(q)とを生成するために、ターボコードを使用することができる。併せて、データビットおよびパリティビットは、潜在的な誤りを訂正するために使用され得る冗長情報を与える。この方式は、m/(m+n)のレートでコードを生じる。
【0047】
インターリーバ304は、符号器302から受けとられたビットをインターリーブする。インターリービングは、たとえば、MPDUの所定の部分に対応するブロック上で実行され得る。インターリービングは、(たとえば、時間および/または周波数において局地的な)局地的な信号干渉により発生する誤りを訂正する能力を与えるために、情報の所与のブロックに係る冗長データとパリティビットとが、周波数において(たとえば、異なるキャリア上で)、および時間において(たとえば、異なるシンボル上で)分散されることを保証する。インターリービングは、限られた帯域幅の干渉がキャリアのすべてを破損する可能性がないように、MPDUの所与の部分についての冗長情報が、OFDM帯域幅にわたって一様に分散されたキャリア上に変調されることを保証することができる。インターリービングは、また、帯域は広いが持続時間は短い干渉がシンボルのすべてを破損する可能性がないように、冗長情報が、1つより多くのシンボル上に変調されることを保証し得る。
【0048】
ROBOモードと呼ばれるいくつかの通信モードでは、ダイバーシティコピア306は、出力データストリームにおいて、増加された冗長性を生成するために、追加の処理を実行する。たとえば、ROBOモードは、エンコードモジュール220の出力において、各エンコードされたビットを複数のビットによって表すために、異なるサイクリック(巡回)シフトで複数回、バッファ位置を読み取ることによって、さらなる冗長性を導入することができる。
【0049】
MPDUの各部分が、変調されたキャリアのすべてよりも少ないキャリア、または変調されたシンボルのすべてよりも少ないシンボルから復元されることを可能にするように冗長性を与える、他のタイプの符号器、インターリーバ、および/またはダイバーシティコピアが使用され得る。
【0050】
再び図2を参照すると、エンコードされたデータはマッピングモジュール222に供給され、マッピングモジュール222は、現在のシンボルのために使用されるコンスタレーション(たとえば、BPSK、QPSK、8QAM、16QAMコンスタレーション)に応じてデータビットのグループ(たとえば、1、2、3、4、6、8、または10ビット)を取り出し、それらのビットによって表されるデータ値を、現在のシンボルのキャリア波形の同相(I)および直交位相(Q)成分についての対応する振幅上にマッピングする。これは、結果として、実数部が、ピーク周波数fiをもつキャリアのI成分に対応し、虚数部がQ成分に対応する、対応する複素数Ci=Ai exp(jΦi)に関連付けられる各データ値を生じる。代替的に、データ値を変調されたキャリア波形に関連付ける任意の適切な変調方式が使用され得る。
【0051】
マッピングモジュール222は、また、「トーンマスク」に従って情報を送信するために、OFDM帯域幅内のキャリア周波数f1、...、fN(または「トーン」)の中のどれが、システム200によって使用されるかを決定する。たとえば、特定の領域(たとえば、北米)中の認可エンティティに干渉する可能性があるいくつかのキャリアが回避され得、それらのキャリア上では電力は放射されない。所与の領域中で販売されるデバイスは、その領域用に構成されたトーンマスクを使用するようにプログラムされ得る。マッピングモジュール222は、また、「トーンマップ」に従って、トーンマスクにおいてキャリアの各々上で使用されるべき変調のタイプを決定する。トーンマップは、(たとえば、複数の局の間の冗長ブロードキャスト通信のための)デフォルトトーンマップ、または(たとえば、2つの局間のより効率的なユニキャスト通信のための)通信媒体204の特性に適合されている、受信局によって決定されるカスタマイズされたトーンマップとすることができる。トーンマスクの中のキャリアは(たとえば、フェージングまたは雑音により)使用に適していないと、局が(たとえば、チャネルアダプテーション中に)決定した場合、トーンマップは、そのキャリアがデータを変調するために使用されるべきでないが、代わりに、そのキャリアのための擬似ランダム雑音(たとえば、擬似雑音(PN)シーケンスからのバイナリ値で変調されたコヒーレントなBPSK)を使用することができることを指定することができる。2つの局が通信するために、それらの局は、信号が適切に復調され得るように、同じトーンマスクとトーンマップとを使用するか、または少なくとも、他のデバイスがどんなトーンマスクとトーンマップとを使用しているかを知っているべきである。
【0052】
MPDUにおける第1のシンボルは、通常、デリミタシンボルと呼ばれるシンボルである。そのようなデリミタシンボルにおけるいくつかのキャリアは、パイロットキャリアとして使用され得る。パイロットキャリアは、受信機に既知である所定の振幅および位相で変調され得る。そのようなパイロットキャリアは、様々な目的で受信機によって使用され得る。たとえば、受信機は、デリミタシンボルが予想されるタイムスロットの中で送られたかどうかを決定するために、(たとえば、マッチドフィルタを使用して)パイロットキャリアの存在を検出することができる。デリミタシンボルの予想される到着時間からの到着時間の偏差は、次のシンボルがいつサンプリングされるべきかを予測または推定するために使用され得る。パイロットキャリアは、また、たとえば、チャネルのインパルス応答、および、パイロットキャリアの既知の位相へのチャネルの影響を含む、チャネルの特性を推定するために使用され得る。パイロットキャリアは、使用されるスペクトル領域の一部分にわたって一様に分散され得る。たとえば、4番目ごとのキャリアがパイロットキャリアとして使用され得る。(データキャリアまたは非パイロットキャリアとも呼ばれる)パイロットキャリアとして使用されない残りのキャリアは、フレーム制御データと、場合によっては、ペイロードデータとを含むデータをエンコードするために使用され得る。データをエンコードするためにデリミタシンボルの少なくともいくつかのキャリアを使用することは、デリミタシンボルによるオーバーヘッドを低減し、それにより、システムのスループットを改善する。
【0053】
変調モジュール224は、ピーク周波数f、...、fを有するN個の直交キャリア波形上への、マッピングモジュール222によって決定された、結果として得られたN個の複素数の組(そのうちのいくつかは未使用のキャリアのための0であり得る)の変調を実行する。変調モジュール224は、次式のように書くことができる(サンプリングレートfについての)離散時間シンボル波形S(n)を形成するために、逆離散フーリエ変換(IDFT)を実行する。
【数2】
【0054】
上式で、時間インデックスnは1からNへ進み、AiおよびΦiは、ピーク周波数f=(i/N)fをもつキャリアの振幅および位相であり、j=√−1である。いくつかの実装形態では、離散フーリエ変換は、Nが2の累乗である高速フーリエ変換(FFT)に対応する。
【0055】
後処理モジュール226は、連続する(潜在的に重なる)シンボルのシーケンスを、通信媒体204上で連続ブロックとして送信され得る「シンボルセット」に合成する。(たとえば、システム200および/または通信媒体204における不完全性による)シンボル間およびキャリア間干渉を緩和するために、後処理モジュール226は、各シンボルの一端を、該シンボルの他端のコピーである巡回エクステンション(たとえば、プレフィックス)を用いて拡張することができる。後処理モジュール226は、また、(たとえば、2乗余弦窓(raised cosine window)または他のタイプのパルス整形窓を使用して)シンボルセット内のシンボルのサブセットにパルス整形窓を適用すること、およびシンボルサブセットを重ねることなどの他の機能を実行することができる。
【0056】
変調モジュール224または後処理モジュール226は、(たとえば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2006年12月21日に出願された米国出願第11/614,729号に記載されている)「振幅マスク」に従って、変調されたシンボルを含む信号のスペクトルをさらに変形するスペクトル整形モジュールを含むことができる。トーンマスクは、ネットワーク中の局の間でメッセージを交換することによって変更され得るが、振幅マスクは、それらの局の間でメッセージを交換する必要なしに、局がいくつかのキャリア上で送信された電力を減衰させることを可能にする。したがって、スペクトル整形モジュールは、干渉を生じ得るキャリアの振幅を調整することによりスペクトル制約を変更することに応答した、動的スペクトル整形を可能にする。場合によっては、スペクトル整形モジュールは、認可エンティティからの送信を検出することなどのイベントに応答して、周波数成分の振幅を所定の制限以下に設定する。振幅は、結果として生じる放射電力が他のデバイスに干渉しないように、(たとえば、所定のコンスタレーションに従って)情報を変調するために通常使用される、所定のレベル以下に設定され得る。振幅マスクは、また、キャリアが完全にヌリングされること、すなわち、対応する振幅がゼロに設定されることになることを示し得る。減衰したキャリアは、変調およびエンコード方式が維持されるように、それらのキャリアがゼロ振幅で送信される場合でも、受信局によってさらに処理される。
【0057】
一般的にいって、2つの通信している局は、必ずしも、他の局がどんな振幅マスクを使用しているか(または、他の局が少しでも振幅マスクを使用しているかどうか)を知る必要があるとは限らない。したがって、そのような場合、振幅マスクがキャリアを部分的にまたは十分に減衰する(すなわち、オフにする)ために使用される場合、送信機と受信機との間で変調方式の変更は不要である。場合によっては、受信局は、減衰したキャリア上で不十分な信号対雑音比を検出し、それらのキャリアを更新されたトーンマップ(トーンマスク内のキャリアがどのように変調されるかを決定する)から除外し、それにより、それらのキャリアがデータを変調するために使用されていないことを示し得る。場合によっては、受信機が送信機によって使用された振幅マスクを知っていることは有利である。たとえば、受信機がチャネルのより良い推定を生成(たとえばキャリアごとに)するために平滑化(たとえば、雑音エネルギーを低減するための周波数領域におけるフィルタ処理)を使用するとき、各キャリア上の送信振幅の知識は、ひずみを加えることなしに推定を適切にフィルタ処理するために使用され得る。
【0058】
いくつかの実装形態では、スペクトル整形モジュールは、たとえば、信号中の1つまたは複数の狭い周波数帯域の振幅を低減するプログラマブルノッチフィルタとして後処理モジュール226中に含まれ得る。
【0059】
AFEモジュール228は、シンボルセットの連続時間(たとえば、低域フィルタ処理された)バージョンを含んでいるアナログ信号を通信媒体204に結合する。通信媒体204上での波形S(t)の連続時間バージョンの送信の影響は、通信媒体上での送信のインパルス応答を表す関数g(τ;t)を用いた畳み込みによって表され得る。通信媒体204は、妨害者によって放出されるランダム雑音および/または狭帯域雑音であり得る雑音n(t)を付加し得る。
【0060】
受信機206において、PHYレイヤを実装するモジュールは、通信媒体204から信号を受信し、MACレイヤのためのMPDUを生成する。シンボル処理モジュール230は、各シンボルについてのタイミング情報と、チャネル推定情報と、サンプルド信号値とを復調器/デコードモジュール232に与えるために、デリミタ検出、時間同期、およびチャネル推定などの機能を実行する。復調器/デコードモジュール232は、(NポイントDFTを実行することによって)エンコード値を表すN個の複素数のシーケンスを抽出するために、離散フーリエ変換(DFT)を実行する。復調器/デコードモジュール232は、対応するビットシーケンスを取得し、それらのビットの適切なデコード(デインターリーブと、誤り訂正と、逆スクランブルとを含む)を実行するために、複素DFT値を復調する。
【0061】
復調は、また、送信信号上のチャネルの影響を除去するために、(たとえば、DFT値が取得された後に)受信信号を処理することを含む。キャリアの位相および振幅上のチャネルの影響(たとえば、チャネルの位相敏感周波数応答)を表す「コヒーレント基準」は、送信されたパイロットキャリアが受信機によって知られているので、デリミタシンボルの一部として受信されたパイロットキャリアから推定され得る。パイロットキャリアは、デリミタシンボルの中で使用されるキャリアの小部分のみを表すので、(必ずしも受信機によって知られているとは限らない)データキャリア上の影響は、パイロットキャリアに基づいて補間され得る。以下でより詳細に説明するように、どんなデータが元々送信されたかについて、復調器/デコードモジュール234から取得された情報は、コヒーレント基準の精度を高めるためにシンボル処理モジュール230にフィードバックされ得る。
【0062】
シンボル処理モジュール230は、(たとえば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2006年1月24日に出願された米国出願第11/339,293号に記載されているように)1つまたは複数の他の局のクロックに同期されている局部ローカルクロックの値などのタイミング情報と、場合によっては、ネットワークがCCo局を含む場合、以前に受信されたビーコン送信とに基づく予測されたデリミタ到着時間に、通信媒体204からの値をサンプリングし始める。タイミング基準が、受信されたビーコン送信に基づいて判断されるときでも、送信局および受信局の各々とCCo局との間の相対的な伝搬遅延は知られていないことがあるので、所与の局からのフレームの到着時間には依然として不確実性があり得る。いくつかの実装形態では、デリミタは、始端においておよび/または終端において巡回エクステンションを与えられ得る。そのような巡回エクステンションを用いると、デリミタの予想される開始時間の精度に関して自由度がある。デリミタシンボルの始めまたは最後において発生する信号値のサンプルは、それらの値がデリミタシンボルの最後と始めの両方において繰り返されるので、(デリミタシンボルのサンプリングが遅くまたは早く開始した場合)除外され得る。いくつかの実装形態では、デリミタが(たとえば、フレーム制御および/またはペイロード、あるいは肯定応答情報からの)データで変調されたキャリアを含む場合、既知のプリアンブル情報と未知のデータとを搬送するキャリアが直交したままであることを保証するために、信号のサンプリングは、ある許容差内で、デリミタの予想される開始時間に関してより正確に時間合わせされる。
【0063】
シンボル処理モジュール230は、また、デリミタシンボルの中のパイロットキャリアからタイミング情報を取得することができる。復調器/デコードモジュール232は、デリミタシンボルの到着時間の予測における不確実性を補償するために、そのようなタイミング情報を使用することができる。たとえば、サンプリングが遅くまたは早く開始した場合、情報が失われなくても、時間オフセットは、DFT値の予想される位相の変化を引き起こし得る。復調器/デコードモジュール232は、(時間領域における時間シフトは、周波数領域における線形位相シフトと等価であるので)パイロットキャリアに対応するDFT値から少なくとも部分的に導出される時間オフセットを補償するために、DFT値のすべてを位相シフトすることができる。時間オフセットは、また、後続のフレームのためのデリミタシンボルが受信機に到着することになる時間のより正確な予測を決定するために使用され得る。後続のシンボルのために使用される巡回エクステンション(または他の形態のガードインターバル)の長さは、残存するタイミングの不確実性をなくすのに十分大きくすることができる。
【0064】
デリミタシンボルのサンプルが収集され、初期コヒーレント基準が取得された後、シンボル処理モジュール230は、デリミタシンボルの存在を確認するために「デリミタ検出」を実行することができる。復調器/デコードモジュール232は、初期コヒーレント基準を使用して、データキャリア上にエンコードおよび変調されたデータを、場合によっては、デリミタ検出と同時に、復調およびデコードすることができる。(たとえば、保全性検査値によって確認されるように)データが正しくデコードされた後、そのデータは、デリミタシンボル全体の再構成を取得するために再エンコードされ、再構成は、次いで、デリミタシンボルに続く残りのペイロードシンボルを復調およびデコードするためにより正確なコヒーレント基準として使用され得る(補間は不要であるので)。
【0065】
場合によっては、複数の(漸進的により正確な)コヒーレント基準が、相互的に生成され得る。たとえば、デリミタシンボルの中のいくつかのデータキャリアがフレーム制御データのために使用され、いくつかのデータキャリアがペイロードデータのために使用される場合、フレーム制御データのみが、既知のパイロットキャリアを再生成し、デリミタシンボルのそれぞれのキャリア上にフレーム制御データを再エンコードするために、第1のパスにおいて復調およびデコードされ得る。結果として再生成されたシンボルは、残りの未知のペイロードデータキャリアのための何らかの補間(たとえば、フィルタ処理または平滑化を使用する)をさらに使用する。しかしながら、そのような場合、初期コヒーレント基準の場合におけるよりも、少数のキャリアが補間を必要とする。そして、別の新しいコヒーレント基準は、再生成されたデリミタシンボルから取得され、残りのペイロードデータキャリアを復調およびデコードするために使用され得る。いくつかの実装形態では、このプロセスは、どのキャリアのためにも補間を使用しない再生成されたデリミタシンボルから取得される、第3の、なお一層正確なコヒーレント基準を生成することによって継続し得る。そのようなコヒーレント基準は、次いで、デリミタシンボルに続くシンボルを復調およびデコードするために使用され得る。デリミタシンボル上で実行され得る処理の量は、デリミタシンボルのサンプリングの終わりと、次のシンボルのサンプリングの始まりとの間に存在する時間量によって制限され得る。
【0066】
送信機202または受信機206におけるモジュールを含む通信システム200のモジュールのいずれも、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組合せで実装され得る。
【0067】
ネットワーク技術が次世代に進むにつれて、より上位の物理レイヤデータレートの利益は、プリアンブル、ヘッダおよび肯定応答信号によるオーバーヘッドを低減することによって、より良く実現され得る。
【0068】
図4Aに、OFDMシンボルの概略図を示す。次に図4Bを参照すると、HomePlug AVにおいて使用されるPPDUフォーマットの例示的な概略図が示されている。この例では、AVプリアンブルは、トータルの長さが合計51.21マイクロ秒になる、複数の5.12マイクロ秒のOFDMシンボルである。AVフレーム制御(AVFC)OFDMシンボルは、長さが59.28マイクロ秒である。AVプリアンブルとAVFCとを加えて、長さが合計約110.5マイクロ秒になる。残りのOFDMシンボルはペイロードを含んでいる。
【0069】
図4Cに示すように、PPDUには、ペイロードを持たないAVプリアンブルとAVFCとを含む追加の短いPPDUを介して送信される選択的肯定応答(SACK)が続く。PPDUと短いPPDUとの間の応答フレーム間空間(Response Inter-Frame Space)(RIFS_AV)は、この例では80マイクロ秒である。したがって、ユーザデータグラムプロトコル(UDP)ペイロードの総オーバーヘッドは、RIFS_AV+2*(AVプリアンブル長+AVFC長)=301マイクロ秒である。表1に、20,000バイトのデータのペイロードと、100Mbps、500Mbpsおよび1,000Mbpsの3つの異なるチャネル物理レイヤ(PHY)データレートとを仮定して、有効UDPスループットおよび効率を示す。
【表1】
【0070】
伝送制御プロトコル(TCP)の場合、PPDUがTCP肯定応答を戻し、それにより、さらなるオーバーヘッドを追加するので、オーバーヘッド問題はさらに複合化される。HomePlug AVでは、双方向バーストと呼ばれるPPDUフォーマットが、TCP肯定応答に関連するオーバーヘッドのいくつかを低減するために使用される(たとえば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2008年5月9日に出願された米国出願第12/118,613号に記載されている)。図4Dは、そのようなフォーマットの一例を示す。図4Dに示す例では、TCP肯定応答は、長さが48.52マイクロ秒である単一のOFDMペイロードシンボルに収まる。この例では、TCPペイロードのトータルオーバーヘッドは、2*RIFS+3*(AVプリアンブル長+AVFC長)+OFDMペイロードシンボル=540マイクロ秒である。
【0071】
表2に、20,000バイトのデータのペイロードと、100Mbps、500Mbpsおよび1,000Mbpsの3つの異なるチャネル物理レイヤ(PHY)データレートとを仮定して、有効TCPスループットおよび効率を示す。
【表2】
【0072】
デリミタと、応答フレーム間空間と、TCP肯定応答を搬送するOFDMシンボルとの長さの低減は、(たとえば、100Mbpsよりも大きい)より高いPHYデータレートの利益を生じるのを助けることができる。一般的にいって、デリミタの長さを短縮することは、特に雑音の多い媒体において、デリミタの信頼性を損なう影響を及ぼし得る。デリミタは、それらが動作するチャネルに従って設計される。たとえば、HomePlug AVの場合、デリミタは、信号対雑音(SNR)比が0dBよりも低いチャネル上での信頼できる検出を与えながら、短くなるように設計される。一般的にいって、少なくとも1つのフルのOFDMシンボルが、ペイロードOFDMシンボルをデコードするためのチャネルの信頼できる推定を与えるために、HomePlug AVにおいて必要とされる。
【0073】
いくつかの実装形態では、プリアンブル、フレーム制御、および選択肢として、ペイロードの少なくとも一部分は、デリミタによるオーバーヘッドを低減するために、OFDMシンボルデリミタの中でエンコードされ得る。そのようなエンコード方式の一例を図7Aに示す。そのような方式では、すべての送信はTDMAを使用し、十分に同期される。さらに、PPDUの開始は、通常、受信機において知られている。
【0074】
単一のOFDMシンボルデリミタが使用されるいくつかの実装形態では、PPDUの開始ポイントは正確に検出されなければならない。これは、たとえば、プリアンブルを検出することによって行われ得る。一般的にいって、PPDUの始まりは、CSMAなどの非同期送信の場合、受信機によって事前に知られていない。いくつかの実装形態では、単一のOFDMシンボルデリミタが使用される場合、あらかじめ規定された時間、たとえばHomePlug AVビーコン期間(図4Eに示す)と、ネットワーク時間ベースとが、PPDU検出およびデコードの信頼できる開始をサポートするための同期を与えるために用いられ得る。そのような同期は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2006年1月23日に出願された米国出願第11/337,946号、および米国特許第7,558,294号にも記載されている。
【0075】
いくつかの実装形態では、デリミタ(フレーム開始(SOF)デリミタとも呼ばれる)の持続時間は、たとえば、55マイクロ秒またはそれ以下に低減され得る。いくつかの実装形態では、SACKの持続時間も、たとえば、27マイクロ秒またはそれ以下に低減され得る。デリミタおよびSACKの持続時間におけるそのような低減は、短縮(たとえば、1/2またはそれより小さい長さの)されたOFDMシンボルを使用して達成され得る。短縮されたOFDMシンボルの長さは、チャネルに従って調整され得る。たとえば、長さを、良好なチャネルの場合はより短くし、不良チャネルの場合はより長くすることができる。そのような場合におけるビーコン送信に関し、より長いAVプリアンブルは、ネットワークの中のすべての局がビーコン送信を検出する可能性を高めるために使用され得る。
【0076】
UDPについて、遅延された肯定応答を使用して、たとえば20マイクロ秒に低減されたRIFSをもつ1/2シンボルのSACKを仮定すると、オーバーヘッドは、SOFデリミタ+RIFS+SACKである。本例では、オーバーヘッドは、102マイクロ秒に等しい。いくつかの実装形態では、RIFSは、20マイクロ秒よりも著しく短く(場合によっては、ゼロに近くさえ)することができ、(受信機によって指定された)送信機と受信機とに依存し、それらの間でネゴシエートされ得る。
【0077】
図4Fに示す例のような)TCPの場合、TCP肯定応答ペイロードをもつ1/2シンボル長のSACK、および、RIFSが、たとえば、20マイクロ秒に低減され得るような最後のPHYブロックに係る遅延された肯定応答、および、たとえば、次の送信のSOFまで遅延されたTCP ACKのための肯定応答を仮定すると、オーバーヘッドは、SOFデリミタ+RIFS+SACKのように計算され得る。この例では、したがって、オーバーヘッドは102マイクロ秒である。
【0078】
表3に、20,000バイトのデータのペイロードと、100Mbps、500Mbpsおよび1,000Mbpsの3つの異なるチャネル物理レイヤ(PHY)データレートとを仮定して、有効UDPおよびTCPスループットおよび効率を示す。表3から、スループットおよび効率は、短縮され、遅延されたSACKを使用することによって著しく高まり得ることがわかり得る。
【表3】
【0079】
<MIMOのための単一のOFDMシンボルデリミタ>
プリアンブルキャリアのセットが、N×M多入力/多出力(MIMO)システムにおいてN個の送信機の各々に割り当てられ得、Nは、送信機(または送信アンテナ)の数であり、Mは、受信機(または受信アンテナ)の数であり、Mは、一般にN以上である。MIMOシステムのための例示的なエンコード方式が図7Bに示されている。(電力線上の2×2のMIMOについての)この例では、プリアンブルキャリアの25%は、2つの送信機のうちの1つに割り当てられ、プリアンブルキャリアの別の25%は、他の送信機に割り当てられる。電力線媒体上で動作するためのMIMOシステムのいくつかの実装形態では、複数のアンテナが、電力線媒体の3つの導体(ライン、ニュートラル、接地)の異なるペアリングを使用して実装され得る。たとえば、局は、MIMO信号を送信および受信するために、第1のアンテナとしてライン−ニュートラル導体間に印加される電圧を使用し、第2のアンテナとしてライン−接地導体間に印加される電圧を使用し得る。チャネルのインパルス応答の長さがシングルシンボルデリミタ(SSD)のためのシンボル長の1/4よりも小さいことを仮定すると、受信機は、各送信機からのプリアンブルキャリアの各組からキャリアを補間することによって、すべてのキャリアのための完全なMIMOチャネル行列の正確な推定を得る。キャリアの25%が各プリアンブルのために使用されるので、チャネルインパルス応答がSSD長の1/4であるという仮定がなされる。この例では、別の仮定は、キャリア間隔がプリアンブルキャリアの各組について一様であることである。第2の仮定は、非MIMOシステムについても行われ得る。MIMO SSDは、フレーム制御キャリアとペイロードキャリアとをさらに含み得るが、一般的に言って、そのような非プリアンブルキャリアの数は、非MIMOシステムと比較された場合、より少ない。いくつかの実装形態では、MIMO SSDのために必要とされるプリアンブルキャリアの数は、キャリア間隔、チャネルのインパルス応答の長さ、および受信機におけるキャリアの信号対雑音比のうちの1つまたは複数に依存する。プリアンブル、フレーム制御およびペイロードに割り当てられるSSDキャリアの部分は、様々なチャネル状態に基づいて選択され得る。
【0080】
2×2の場合の完全なMIMOチャネル行列は、4つのステップで計算される。
【0081】
1.第1の送信機(TX1)によって送信され、第1の受信機(RX1)によって受信されるプリアンブルキャリアは、すべてのキャリアについての第1の行列要素 H11に係る推定を得るために、補間され、場合によっては、フィルタ処理される。
【0082】
2.TX1によって送信され、第2の受信機(RX2)によって受信されるプリアンブルキャリアは、すべてのキャリアについての第2の行列要素 H12の推定を得るために、補間され、場合によっては、フィルタ処理される。
【0083】
3.TX2によって送信され、RX1によって受信されるプリアンブルキャリアは、すべてのキャリアについての第3の行列要素 H21の推定を得るために、補間され、場合によってはフィルタ処理される。
【0084】
4.TX2によって送信され、RX2によって受信されるプリアンブルキャリアは、すべてのキャリアについての第4の行列要素 H22の推定を得るために、補間され、場合によってはフィルタ処理される。
【0085】
上記の4つのステップの各々は、他のステップとは独立して実行され得る。たとえば、それらのステップは、任意の順序でまたは並行してでも実行され得る。2×2のMIMOチャネル行列が計算されると、MIMOペイロードのデコードは、各送信機TX1およびTX2からの個々のフレーム制御および/またはペイロードストリームを分離するために、その行列を適用することによって実行される。
【0086】
フレーム制御は様々な方法でエンコードされ得る。いくつかの実装形態では、フレーム制御はエンコードされ、次いで、冗長性のためにコピーエンコードされる。エンコードは、また、FECエンコードなどの誤り制御符号化を含み得る。いくつかの実装形態では、エンコードされたフレーム制御ストリームは、送信機ごとに1つのデータストリームの、複数のデータストリームに分割される。コピーエンコードの場合、複数のストリームは、各ビットの異なるコピーについて周波数における分離を最大にするために、情報およびパリティビットがストリームごとに選択されるように、再分割され得る。受信機において受信されるデータをデコードすることは、複数の受信機(または受信アンテナ)の各々においてストリームを処理することと、コピーを合成することとを含む。デコードは、また、好ましくは、ターボ符号、低密度パリティチェック(LDPC)符号、または同様な誤り訂正符号を使用して、FECデコードを実行することを含み得る。
【0087】
いくつかの実装形態では、フレーム制御情報は、各送信機がエンコードされたフレーム制御キャリアの一部分を送るようにエンコードされる。そのような方式の例を図7Cに示す。フレーム制御をエンコードするためのそのような方式は、性能ならびにMIMOチャネル行列の推定を改善することができる。図7Cは、フレーム制御キャリアの1/2が送信機(または送信アンテナ)TX1によって送信され、他の1/2が送信機(または送信アンテナ)TX2によって送信される2×2のMIMOの例を示す。この例では、受信機(または受信アンテナ)RX1およびRX2における信号のデコードは、次のように実行される。
【0088】
1.完全な2×2のMIMOチャネル行列が、上記で説明したように推定される。
【0089】
2.TX1によって送信されたフレーム制御キャリアをデコードするために、H11はRX1で使用され、H12はRX2で使用される。
【0090】
3.TX2によって送信されたフレーム制御キャリアをデコードするために、H21はRX1で使用され、H22はRX2で使用される。
【0091】
4.フレーム制御キャリアの完全な組は、たとえば、FEC方式やコピー合成を使用して誤りを訂正することと、(たとえば、巡回冗長検査(CRC)を使用して)フレーム制御情報が正しくデコードされたことを検証することとを含めて、フレーム制御情報をデコードするために用いられる。
【0092】
5.フレーム制御のCRCが「正当(valid)」である場合、フレーム制御は、TX1およびTX2上のフレーム制御キャリアの送信状態を生成するために再エンコードされる(送信状態の再エンコードおよび再生成は、FECエンコードと、コピー生成と、変調の実行とを含み得る)。CRCが正当であると判断されたので、フレーム制御情報がFECデコードされる前にフレーム制御情報中に存在し得る誤りは、新たに再エンコードされたフレーム制御情報にはないことになり、これにより、最初に受信されたときに適切に復調するにはあまりに多くの雑音を搬送した可能性のあるキャリアについてでも送信状態を再生成することが可能になる。
【0093】
6.TX1によって送信され、RX1によって受信されたプリアンブルおよびフレーム制御キャリアは、すべてのキャリアについての第1の行列要素H11の修正された推定を得るために、補間され、場合によってはフィルタ処理される。
【0094】
7.TX1によって送信され、RX2によって受信されたプリアンブルおよびフレーム制御キャリアは、すべてのキャリアについての第2の行列要素H12の修正された推定を得るために、補間され、場合によってはフィルタ処理される。
【0095】
8.TX2によって送信され、RX1によって受信されたプリアンブルおよびフレーム制御キャリアは、すべてのキャリアについての第3の行列要素H21の修正された推定を得るために、補間され、場合によってはフィルタ処理される。
【0096】
9.TX2によって送信され、RX2によって受信されたプリアンブルおよびフレーム制御キャリアは、すべてのキャリアについての第4の行列要素H22の修正された推定を取得するために、補間され、場合によってはフィルタ処理される。
【0097】
上記の4つのステップ6.〜9.の各々は、他のステップとは独立して実行され得る。たとえば、それらのステップは、任意の順序ででも、または並行してでも実行され得る。
【0098】
別の手法では、キャリアの追加の組が、ペイロード情報でMIMOエンコードされ得、ステップ6.〜9.において決定されたMIMOチャネル行列を使用して、シンボル中の残りのキャリアの状態を決定するために、ペイロードセグメントがデコードされ、CRC検証され、再エンコードされ得る。連続する(または残りの)シンボルのMIMOエンコードされたペイロードをデコードするためのより正確なMIMOチャネル行列を推定するために、既知のプリアンブルと、既知のフレーム制御と、既知のペイロードキャリアとを使用して、さらなる処理が実行され得る。
【0099】
いくつかの実装形態では、チャネル推定中のフィルタ処理(あるいは平滑化および/または補間)は、時間領域において、推定されたインパルス応答を窓掛けすることの効果を達成するために、チャネルインパルス応答長よりも著しく長いシンボル長を活用することと、周波数領域においてキャリアの組をフィルタ処理する(たとえばFIRフィルタを使用して)こととを含む。場合によっては、これは雑音を低減する。たとえば、2乗余弦窓(raised cosine window)は、インパルス応答を窓掛けするために使用され得、窓の非ゼロ値はシンボル長の小部分であってよく、インパルス応答の推定の残りはゼロに設定される。いくつかの実装形態では、プリアンブルキャリアは、窓の中心を合わせる必要がある場合、インパルス応答中の位置を推定するために後処理される。一般に、窓掛けは、インパルス応答のピークを中心として位置づけられる。
【0100】
図8A図8Bに、チャネル推定プロセスにおける例示的な動作のフローチャートを示す。一般に、図8Aに示す動作は、図8Bに示す動作と実質的に同じ効果を達成する。図8Aでは、プリアンブルまたは基準キャリアからのチャネル推定は、周波数領域においてフィルタ(たとえばデジタルFIRフィルタ)を使用してフィルタ処理される。FIRフィルタは、対応する窓関数の周波数領域表現であり得る。図8Bでは、推定は、チャネルのインパルス応答の推定(図9A)を生成するために、IFFTなどの変換を使用して時間領域に変換される。いくつかの実装形態では、窓の中心を合わせる必要がある場合、インパルス応答中の位置を決定するために、プリアンブルキャリアのさらなる後処理が行われる。インパルス応答は、窓の範囲外の雑音がなくなるように、窓(図9Bに示すものなど)を乗じられ、チャネルのインパルス応答の雑音フィルタ処理された推定(図9C)の結果を得る。雑音フィルタ処理された推定値は、FFTなどの別の変換を使用して、周波数領域に戻るよう変換され得る。
【0101】
いくつかの実装形態では、フレーム制御上のCRCチェックが、正当な信号が存在するかどうかを判断するために使用される。CRCが正当であると判断された場合、それはPPDUの正しい開始の存在を確かにする。いくつかの実装形態では、プリアンブルキャリアの訂正は、また、PPDUの正しい開始の存在を確かにするために使用され得る。
【0102】
<雑音の多いチャネルにおける高速(短時間の)キャリア検知>
一般的に言うと、単純なエネルギー検知のキャリア検出は、極めて低いSNR状態のために、電力線上で容易には使用され得ない。そのような状態の下で、チャネル上のエネルギーの変化は極めて小さく、インパルス雑音は一般に大きい。そのような状態は、一般に、多数のフォールスネガティブとフォールスポジティブとの両方を生じる。HomePlug AVなど、そのような低いSNR状態の下で動作するシステムは、キャリア検知のためにプリアンブル信号の相関ベースの検出に依存する。
【0103】
一般的に言って、HomePlug AVなどのシステムのための競合スロット時間は、フレーム制御シンボル時間またはデータOFDMシンボル時間よりも著しく少ない。たとえば、HomePlug AVは、プリアンブルのための5.12μS OFDMシンボルを使用することによって、キャリア検知に係るプリアンブルを検出する。これは、一般に、フレーム制御およびペイロードのために使用されるOFDMシンボルの長さの1/8である。
【0104】
デリミタシンボル中のキャリアが、プリアンブルに加えてフレーム制御およびペイロードデータのうちの1つまたは複数でエンコードされるいくつかの実装形態では、シンボル全体がサンプリングされない限り、プリアンブル信号は信頼性をもっては検出され得ない。シンボル全体がサンプリングされ、プリアンブルキャリアがFFTなどの変換を通じて抽出されたときのみ、プリアンブルの存在が確かにされ得る。また、デリミタシンボル中のキャリアが非プリアンブルデータでエンコードされるとき、デリミタ内のいくつかのキャリア上のデータ(したがって、デリミタのコンテンツ全体として)は受信機に知られない。そのような場合、デリミタの時間領域信号パターンが受信機に知られていないので、受信機は、デリミタの時間領域相関(またはマッチドフィルタ処理)ベースの検出を実行することができない。いくつかの実装形態では、これは、デリミタシンボルの少なくとも一部分をコピーすることと、デリミタ自体を送信する直前に、デリミタの拡張として、コピーされた部分を送信することとによって対処される。いくつかの実装形態では、拡張は、場合によっては固定オフセットをつけて、デリミタOFDMシンボルの最初の短い部分のコピーである。これは、図4Gに一例として示されている。そのような場合、受信機は、キャリア感知検出のために拡張をデリミタシンボルの始端とキャリア感知検出のために拡張をデリミタシンボルの始めと比較するために相関を使用する。キャリア検知が競合スロット中で検出された場合、局は送信を延期することになる。いくつかの実装形態では、この拡張はまた、自動利得制御(AGC)を設定するために使用され得る。いくつかの実装形態では、拡張および/またはデリミタシンボルの窓掛けは、スペクトルノッチ(たとえば、アマチュア帯域などの制限された帯域への放射を低減するために使用されるノッチ)を維持するために必要である。この拡張は、SACKまたはTDMAを使用して送られるPPDUには不要である。
【0105】
いくつかの実装形態では、拡張は、所定のオフセットによってデリミタから分離されている。オフセットの長さ、コピーの長さ、および競合スロットの長さは、1つまたは複数のファクタに基づいて選択され得る。たとえば、プリアンブル検出(キャリア検知)は、適切なCSMA動作を求めてバックオフするために、1つの競合スロット(信号サンプリング+ハードウェアレイテンシ)内で行われなければならない。そのような場合、コピー+オフセットの長さは競合スロット時間よりも小さくなければならない。しかしながら、コピーおよびオフセットの長さは、予想されるチャネル状態の下で十分に信頼できる信号検出をサポートするのに十分長くなければならない。いくつかの実装形態では、信号検出信頼性に関する窓掛けの効果も考慮される。いくつかの実装形態では、コピーは、(時間同期およびチャネル推定のための)プリアンブルと、フレーム制御と、存在する場合にはペイロードとを検出するためにデリミタ信号をサンプリングするより前にAGCが安定するのに十分に長くなっている。
【0106】
高速キャリア検知機構は、競合スロット時間の持続時間を低減して、CSMAの性能を改善することを可能にする。高速キャリア検知がない場合、信号の存在を決定(すなわち、キャリア検知)するために、SSD全体が処理されなければならない。これは、可能性としてSSDよりも大きい競合時間の結果となり、また、増加した処理のために追加のレイテンシを必要とする。たとえば、HomePlug AVでは、OFDMシンボル持続時間は40.96マイクロ秒であり、競合スロット時間は35.84マイクロ秒である。HomePlug AVベースのシステムにおいて高速キャリア検知なしにSSDを使用することは、競合スロット時間を40.96マイクロ秒よりも多くする。高速キャリア検知を使用することは、競合スロット時間を35.84マイクロ秒に維持するか、または場合によっては、それをさらに低減する。
【0107】
<同期>
いくつかの実装形態では、競合スロットは、使用され、ビーコン期間と十分に同期がとられる優先度解決スロット(PRS:priority resolution slot)と競合解決スロット(CRS:contention resolutions slot)とを含む。これは、図4Hに一例として示されている。一般に、(SACKを除く)PPDUの送信は、CRS境界上で開始される。PRSは、以下でより詳細に説明するように、いくつかの局が優先度を主張することを可能にするために使用される。
【0108】
いくつかの実装形態では、受信機は、次のCRSの端部より前にキャリアを検出するために、信号をサンプリングし、処理する。キャリアが検知された場合、受信機は、一般に、第1のOFDMシンボル(デリミタ)をサンプリングし、(FFTなどの変換後に)周波数領域において相関を使用してプリアンブルを検出する。
【0109】
プリアンブルキャリアは、デリミタに続くペイロードOFDMシンボルをサンプリングし、フレーム制御をデコードするためにチャネルを推定するためのタイミングを推定するために使用される。いくつかの実装形態では、成功したFECデコードおよびCRCチェックの後に、フレーム制御は、デリミタの中のペイロードおよび/またはフレーム制御をデコードするためにチャネルのより良い推定を生成するべく、再エンコードされ、プリアンブルと合成される。いくつかの実装形態では、第1のデコードに成功したペイロードFECブロックは、後続のペイロードシンボルをデコードするために、チャネルのより良い推定を生成するべく、再エンコードされ、プリアンブルおよびフレーム制御キャリアと合成される。このプロセスは、図6に一例として概略的に示されている。
【0110】
いくつかの実装形態では、CRS境界に従って送信が行われるとき、受信機は、SSDを検出するために、どこでサンプリングするか(または、サンプリングを開始するか)をアプリオリに知っている必要があり得る。プリアンブル検出のために一般に使用される連続探索は、プリアンブルと、フレーム制御と、場合によってはペイロードとが単一のOFDMシンボル中で混合されるので、SSD検出において実際的ではない。そのような場合、受信機は、CRS境界に従って時間ベースに同期される。場合によっては、送信機と受信機との間の伝搬遅延を補償することが必要であり得る。この補償は、送信されているPPDUのタイミングおよび/または受信サンプリングのタイミングに適用される必要がある。この送信および/または受信伝搬遅延補償は、CSMA競合スロットの中のPPDU、TDMA割り当て、またはPPDUに対する即時のACK(SACK)に適用される必要があり得る。送信機および意図された(1つまたは複数の)受信機に加えて、伝搬遅延補償は、特にCSMAでは、ネットワーク中の他の局を考慮する必要があり得る。ブロードキャスト送信では、伝搬遅延補償は、意図された各受信機において調整される必要があり得る。
【0111】
<スロット同期>
いくつかの実装形態では、同期は、ネットワーク中の様々な局間のスロット同期または時間スロット整合を含む。いくつかの実装形態では、そのようなスロット整合は、ビーコン送信に関係し得る。いくつかの実装形態では、ビーコンは、CSMA競合を使用して送信され得る。そのような場合、ビーコン位置は、トラフィックに基づいて予測不可能に変化し得る。そのような場合、(場合によっては、ビーコン送信に含まれるスケジュールの中で通信される)ビーコン期間の論理的な開始点は、ビーコン位置自体の代わりに使用され得る。いくつかの実装形態では、ビーコン位置またはビーコン期間の論理的な開始点は、それ自体が外部信号に揃えられ得る。たとえば、HomePlug AVでは、ビーコン期間は、基礎をなすACラインサイクルに少なくとも近似的に揃えられる。
【0112】
いくつかの実装形態では、SSDは、また、ネットワーククロックまたは時間ベースに基づき得る。そのようなネットワーククロックまたはタイムベースは、一般的に言って、マスタノードにおいて維持される。マスタノードは、すべての局がネットワーククロックに正確に追従することを可能にするために、すべての局にマスタクロックのタイムスタンプを与える。いくつかの実装形態では、いくつかのビーコン送信を逃した場合でも、スロット境界はネットワーククロックから導出され得る。
【0113】
たとえば、HomePlug AVでは、マスタによって送信されたビーコンは、ネットワーク時間ベースのタイムスタンプとビーコン期間中の様々なインターバルについての割り当て情報(すなわち、スケジューリング情報)とを含む。ビーコン中のタイムスタンプは、ネットワーク時間ベースに同期するためにネットワーク中のすべての局によって使用され得る。スケジューリング情報は、TDMA割り当ておよびCSMA割り当ての開始および終了を決定するために使用され得る。いくつかの実装形態では、スケジューリング情報は、複数のビーコン期間にわたって「正当」であり得、したがって局は、それらが場合によってビーコン信号を逃した場合でも、それらの割り当てを使用することが可能である。ネットワーク中の局は、スロット境界を決定するためにスケジューリング情報の知識をネットワーク時間ベースと組み合わせることができる。たとえば、割り当ての第1のスロット境界は、割り当ての開始に揃えられ得、すべての後続のスロット境界は、スロット持続時間およびネットワーク時間ベースの知識に基づいて決定され得る。
【0114】
いくつかの実装形態では、CSMA送信は、優先度解決信号がどこで送信される必要があるかを決定するために、スロット境界を使用する。優先度解決信号は、局が、トラフィックの優先度を示すことを可能にし、したがって、より高い優先度トラフィックがより低い優先度トラフィックの前に送信されることを可能にする。優先度解決信号を送信するための優先度解決スロット(PRS)の後に、もっとも高い優先度のトラフィックを有する局がチャネルアクセスを求めて競合するCRSが続く。CRSは、また、他の局からの送信の開始を検出するためにスロット境界を使用する。
【0115】
いくつかの実装形態では、TDMA送信は、また、スロット境界を使用することができる。たとえば、TDMA割り当ての中の第1の送信は、TDMA割り当ての第1のスロット境界で始まることができる。TDMA割り当ての中のすべての後続の送信は、他のスロット境界で始まる。この手法は、1つまたは複数の送信を逃した受信機が、後続の送信を受信することを可能にする。
【0116】
いくつかの実装形態では、新しい局または最近追加された局は、スロット同期情報を得るためのメカニズムを有する。たとえば、新しい局は、様々な所定のスロットオフセットをもった、観測されたSSD信号を処理することによってスロット同期を自動的に導出し得る。いくつかの実装形態では、ネットワークのマスタは、検出されるためにスロット同期を必要としない特別な信号(たとえば、ビーコン)を送信し得る(たとえば、SSDを使用しないが、レガシー(従来)のプリアンブルとフレーム制御とを使用するビーコン送信)。そのような特別な信号は、新しい局がスロット揃い(整合)を迅速に決定することを可能にする。この情報は、また、既存の局によって、それらのスロット整合を維持するために使用され得る。
【0117】
<遅延選択的肯定応答>
いくつかの実装形態では、たとえばHomePlug AVなどのプロトコルでは、SACKは、以下のうちの1つまたは複数を送信機に示すために、PPDUの直後に送信される:
1)いくつかのセグメントが適切に受信されたこと、
2)衝突がないこと(CSMAの場合)、および、
3)トーンマップ(ビットローディング)の現在の組が、依然として適切である(たとえば、チャネルが実質的に変化していない)こと。
【0118】
いくつかの実装形態では、プリアンブルは、もはやSACK送信のコンテンツとは独立の固定された信号ではないので、SSDの使用は、SACK信号を生成するために、処理時間の短縮を可能にする。そのような場合、一般に利用可能であるものよりも長い応答フレーム間空間(Response InterFrame Space:RIFS)が、完全なエンコードされたSACK信号を生成するために要求され得る。たとえば、HomePlug AV1.1の将来のバージョン(HomePlug AV2.0と呼ばれる)においてSSDを使用する場合、プリアンブルは、もはや独立した信号ではないので、最後のセグメントをデコードし、RIFSとプリアンブル信号時間の両方が使用され得るHomePlug AV1.1の前のバージョンにおいて利用可能であったSACK全体を(既存のハードウェアを使用して)生成するために、利用可能な時間は、必要とされる時間よりも約50マイクロ秒少ない。いくつかの実装形態では、SACK信号全体が一般に利用可能なRIFS内で生成され得るよう、より高速な処理を行うためには、増加した複雑さ(およびコスト)をもったハードウェアが使用されることになる。いくつかの実装形態では、必要とされるRIFSを増大することを回避し、場合によってはRIFSを減縮することを可能にするために、PPDUの直後のSACKとして、部分SACK信号(すなわち、受信されたセグメントのサブセットに肯定応答するSACK)が使用され得る。そのような場合、部分SACK中で肯定応答されるセグメントの数は、セグメントのデコードとその多くのセグメントに対するSACK信号のエンコードが、利用可能なRIFS内で処理されるように決定され得る。そのような場合、いくつかのセグメント、たとえばPPDUの最後のOFDMペイロード(データ)シンボルの中で終了するセグメントが将来の送信まで肯定応答されないように、SACKプロトコルが変更される。そのような遅延SACK方式の例は、図4Iに概略的に示される。
【0119】
図4Iに示す例では、SACKを生成する処理時間は、RIFSと最後のOFDMペイロード(データ)シンボルの長さとを含む。いくつかの実装形態では、最後の2つ以上のOFDMペイロードシンボルの中で終了するセグメントは、ハードウェアがPPDUの直後のSACKを生成するために一層より多くの処理時間を与えるよう、将来のSACK中で肯定応答され得る。このメカニズムを使用すると、ハードウェア処理の適度の複雑さと速度で、RIFSはほぼゼロに低減され得る。図4Iに示す例では、即時のSACKの中で肯定応答されないセグメントは、将来のSACK中で肯定応答される。いくつかの実装形態では、送信機は、非肯定応答セグメントについての肯定応答情報を取得したいという要求を送り得る。たとえば、送信機が保留中のデータを有しない場合、送信機は、要求を送り得、受信機は保留中の肯定応答情報で応答する。
【0120】
非肯定応答セグメントを通信するために、他の手法も使用され得る。いくつかの実装形態では、受信機は、受信機が送信機に送る任意の送信の一部として、肯定応答情報を含めることができる。たとえば、受信機が送信機への保留中のデータを有する場合、受信機はそのような送信のフレーム制御の中に肯定応答情報を含めることができる。受信機は、また、肯定応答情報を含む制御フレームを送り得る。
【0121】
シングルシンボルデリミタ(single symbol delimiter:SSD)が使用されないときでも、遅延される肯定応答方式が使用され得る。たとえば、遅延肯定応答方式は、HomePlug AV中の応答フレーム間空間(RIFS)を低減するために使用され得る。遅延肯定応答方式は、また、HomePlug AV中のMPDUバーストと組み合わせられ得る。たとえば、送信機は、4つのMPDUのバーストを送り得、受信機は、それに応答して、最初の3つのMPDUの中のすべてのセグメントについてと、第4のMPDUの中のセグメントの一部分についてとの肯定応答情報を含むSACKを送信する。最後のMPDUの中の非肯定応答セグメントは、遅延された肯定応答方式を使用して、たとえば将来のSACKを使用することによって肯定応答され得る。
【0122】
いくつかの実装形態では、送信機は、遅延された肯定応答が異なる送信について使用され得るかどうかを決定することができる。たとえば、ボイスオーバインターネットプロトコル(VoIP)のような遅延に敏感なトラフィックの場合、送信機は、ペイロード全体についての肯定応答を直ちに与えるように受信機に要求することができる。いくつかの実装形態では、受信機への一貫した(consistent)トラフィックがある場合、遅延肯定応答のみが使用され得る。これは、肯定応答が遅延されるデータに関する肯定応答を得るためにのみ別個の送信を送る可能性を低減する。いくつかの実装形態では、送信機は、遅延肯定応答がペイロードについて使用され得るかどうかを、フレーム制御情報において示すことができる。いくつかの実装形態では、送信機は、また、遅延肯定応答が必要とされるペイロードの部分を通信することができる。たとえば、送信機は、最後のOFDMシンボルまたは最後の2つのOFDMシンボルの中のペイロードについて遅延された肯定応答が必要とされるかどうかを選定することができる。いくつかの実装形態では、送信機は、送信について遅延肯定応答が使用され得るかどうかを決定するために、ペイロードのバイト数および/または持続時間(たとえば、OFDMシンボルの数)を使用することができる。たとえば、送信機は、バイト数が所定のしきい値よりも大きいとき、遅延された肯定応答を使用することができる。
【0123】
いくつかの実装形態では、受信機は、また、遅延肯定応答を使用すべきかどうかを決定することができる。たとえば、受信機は、受信機がペイロードのある部分についての肯定応答を遅延させるかどうかを決定するために、ペイロード中のバイト数またはペイロードの持続時間を使用することができる。いくつかの実装形態では、送信機と受信機とは、遅延された肯定応答が使用される前に、(たとえば、管理メッセージを使用して)遅延肯定応答に関連するパラメータを互いにネゴシエートすることができる。
【0124】
いくつかの実装形態では、遅延される肯定応答は、特定の特性をもつトラフィックのために使用され得る。たとえば、遅延肯定応答は、高優先度トラフィックについてはオフにされ、低優先度トラフィックについてのみ使用され得る。これにより、高優先度トラフィックがより低いレイテンシで配信されることが可能になる。
【0125】
遅延肯定応答は、UDPトラフィックならびにTCPトラフィックで使用され得る。遅延肯定応答は、HomePlug AV中のTCPトラフィックの双方向バーストと組み合わせられ得る(たとえば、双方向バーストの例示的な実装形態は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2008/0279126号で説明されている)。図11Aに、遅延肯定応答を双方向バーストと組み合わせた例を示す。この例では、後にTCPデータが続くフレーム開始(SOF)デリミタが送信機によって送られる。TCPデータの一部分は、TCPデータの直後にくる逆フレーム開始(RSOF:Reverse Start of Frame)を使用して受信機によって直ちに肯定応答される(すなわち、MACレイヤ肯定応答を使用する)。残りのTCPデータについてのMACレイヤ肯定応答は、後続のRSOFの中に含まれる。RSOFの後にTCP肯定応答が続くことができる。この例では、TCP肯定応答には、直後に、送信機によるMACレイヤ肯定応答が続く。MACレイヤ肯定応答は、別個の選択肯定応答(SACK)デリミタを使用する。これは、破損されたTCP ACKが、MACレイヤSACKに応答して再送信されることを可能にする。
【0126】
図11Bに、遅延される肯定応答を双方向バーストと組み合わせた別の例を示す。この例では、TCPデータの一部分は、TCPデータの直後にくるRSOFを使用して受信機によって直ちに肯定応答される(すなわち、MACレイヤ肯定応答を使用する)。残りのTCPデータについてのMACレイヤ肯定応答は、後続のRSOFの中に含まれる。RSOFの後にTCP肯定応答が続く。TCP肯定応答のためのMACレベル肯定応答は、次のSOFデリミタの中で送信され得る。この手法は、TCP肯定応答のための肯定応答をSOFの中に含めることによって、媒体の使用をより効率的なものにする。
【0127】
上述の例では、SOF、RSOFおよびSACKは、SSDフォーマットまたは何らかの他のフォーマットを使用することができる。たとえば、SOFは、HomePlug AV1.1デリミタフォーマットを使用することができ、一方、RSOFは、SSDフォーマットを使用する。MACレベルの肯定応答は、選択肯定応答、通信肯定応答などを含む様々な手法を使用することができる。いくつかの実装形態では、TCP肯定応答のためのMACレベルの肯定応答は、また、遅延される肯定応答を使用することができる。
【0128】
局が、肯定応答が以前に遅延されたデータについての肯定応答を送信するとき、局は、送信機が肯定応答を対応するデータに明確にマッピングすることができることを確認しなければならないことがある。いくつかの実装形態では、データは、シーケンス番号を割り付けられる各セグメントをもって、セグメントに分割され得る。肯定応答を送信する局は、肯定応答が対応するセグメントのシーケンス番号を含めることができる。いくつかの実装形態では、各MPDUまたはMPDUのバーストは、それぞれ、MPDUシーケンス番号またはMPDUバーストシーケンス番号を含むことができる。局がMPDUまたはMPDUバーストについての肯定応答を送信するとき、局は、肯定応答が対応するMPDUまたはMPDUバーストを暗黙的にまたは明示的に示すことができる。これは、受信機が、肯定応答を対応するデータに正しくマッピングすることを可能にする。
【0129】
図11Cに、遅延される肯定応答を対応するデータにバインドすることを示す例を示す。この例では、送信機は、ペイロード中に7つのデータセグメントをもつSOFを送る。送信機は、このMPDUを識別するために1に設定されたバーストカウントフィールドを含める。第7のデータセグメントに続くSACKは、最初の5つのデータセグメントへの肯定応答を与える。データセグメント6および7についての肯定応答は遅延される。送信機は、少し後の時間に、バーストカウントが2に設定された別のMPDUを送る。この受信機は、バーストカウント=1のMPDUにおけるデータセグメント6および7についての遅延された肯定応答を含むSACKを送る。この例では、SACKを送信する局は、バーストカウント=NについてのSACKの中に、バーストカウント=N−1についての遅延肯定応答を自動的に含める。これは、対応するデータへの遅延肯定応答の適切なマッピングを可能にすることができる。たとえば、図11Cにおいて、バーストカウント=1のMPDUの直後に送信されたSACKが受信されない場合、送信機は、同じデータをバーストカウント=1で再送信することができる。これは、受信機が、これは再送信であることを知り、したがってバーストカウント=0のMPDUについての遅延肯定応答情報を含めるだけであることを可能にする。
【0130】
<伝搬遅延の補正>
SSDの信頼できる検出は、送信機からの信号が、予想される位置で、受信機において受信されることを必要とする。上記で説明したように、受信機および/または送信機での、スロット同期、またはスロット境界とのSSDの整合は、信頼性を以ってSSDを検出するために必要とされ得る。一般的に言って、信号によって生じる伝搬遅延は、受信機におけるスロット境界とのSSD整合に影響を及ぼす。いくつかの実装形態では、伝搬遅延は、送信機および受信機のうちの1つまたは複数において補正され得る。いくつかの実装形態では、送信機は、スロットの中でだが、タイミングを送信機に与える局からの伝搬遅延に基づいてより早く調整されたタイミングでもってSSD信号を送信することにより、伝搬遅延を補正する。そのような場合、スロットにおいて開始するすべての送信は同時に起こるが、各受信機において異なる時間に到着し得る。
【0131】
いくつかの実装形態では、受信機は、送信機からのSSD信号が既知の(または予測可能な)時間に受信されるようにタイミングを調整する。そのような場合、受信機は、SSDの検出信頼性を最大にするように、受信機のタイミングを連続的に(または必要に応じて)調整し得る。
【0132】
いくつかの実装形態では、上記の手法の組合せを使用することもできる。一般的に言って、送信機および受信機は、また、伝搬遅延を測定し、測定された情報を、それらの伝搬遅延補正技法の一部として使用し得る。
【0133】
いくつかの実装形態では、送信機は、それが、意図された受信機において、該受信機によって予想される時間に受信されることを保証するために、送信時間を調整する。そのような場合、送信機は、タイミングを与える局から送信機への伝搬遅延と、送信機から受信機への伝搬遅延との両方を補正する。
【0134】
いくつかの実装形態では、延長されたガードインターバル(GI:guard interval)は、スロット境界からのSSD信号のオフセットを受信機が許容することを可能にする。また、延長されたガードインターバルは、追加のオーバーヘッドが加え、したがってシグナリング効率を下げる。
【0135】
SSDがTDMA割り当てにおいて使用されるとき、単一の送信機と単一の受信機とがある場合、上記の手法のうちの1つまたは複数が使用され得る。たとえば、送信機は、チャネル変化および/または伝搬遅延推定誤差について適応するために、SSD上のいくつかの追加のGIとともに伝搬遅延補正を使用し得る。
【0136】
SSDがTDMA割り当てにおいて使用されるとき、および、単一の送信機と複数の受信機とがある場合、伝搬遅延は、一般的に言って、異なる受信機ごとに異なるので、送信機ベースの伝搬遅延補正は、それ自身では、十分でないことがある。そのような場合、受信機ベースの伝搬遅延補正を使用すること(各受信機がTDMAインターバルの開始についての到着時間を覚える場合)は、延長されたガードインターバルを最小限にする(またはなくす)ことを可能にする。
【0137】
SSDはまた、複数の局が送信することができる共用割り当てにおいて使用され得る。共用割り当ての一例は、局が媒体へのアクセスを得るためにバックオフアルゴリズムを使用して競合するようなCSMA/CA割り当てである。共用割り当てでは、受信機は、一般的に言って、送信機についてのアプリオリな知識を有しない。さらに、送信は、単一の受信機または複数の受信機(たとえば、ブロードキャスト送信)を対象とし得る。そのような場合、追加のSSD GIが必要とされ得る。ただし、SSD GIを低減するために、伝搬遅延ベースの補正が依然として使用され得る。たとえば、ネットワークにおける局の任意のペア間の伝搬遅延が1マイクロ秒〜3マイクロ秒の範囲にある場合、送信機は、SSD GIが少なくともより短くなるように(この例では、ただの2マイクロ秒)、最小の伝搬遅延(すなわち、1マイクロ秒)を補正し得る。代替的に、受信機は、それの位置に到着するPPDUの最小レイテンシと最大レイテンシとを覚え、最小到着時間と最大到着時間との中間をサンプリングすることができる。
【0138】
いくつかの実装形態では、特定の送信のロケーションは、アプリオリに知られ得る。たとえば、いくつかの技術(たとえば、HomePlug AV、802.11)では、受信機は、送信の直後に、送信の受信ステータスを肯定応答する。そのような場合、伝搬遅延ベースの補正が、肯定応答に対するSSD GIの必要を最小限にする(またはなくす)ために使用され得る。補正は、送信機または受信機のいずれかあるいは両方によって実行され得る。
【0139】
いくつかの実装形態では、送信機は、肯定応答のためにSSDフォーマットを使用すべきかどうかを選択することができる。そのような場合、伝搬遅延が推定され得るまで、送信機は、初めに非SSD肯定応答フォーマットを選択することができ、その後、送信機はSSD肯定応答を選定することができる。
【0140】
<例示的な伝搬遅延測定>
送信機と受信機とのペア間の伝搬遅延は、様々な技法を使用して測定され得る。たとえば、即時の肯定応答が使用されるシステムでは、送信機は、肯定応答の位置に基づいて伝搬遅延を測定することができる。
【0141】
図4Jに、局A(送信機)が選択的肯定応答(SACK)のロケーションに基づいて局B(受信機)への伝搬遅延を測定する例を示す。
【0142】
<CSMA/CA割り当てにおける例示的な伝搬遅延補正>
図4Kは、伝搬遅延補正が使用されない3つのノード(局A、局Bおよび局C)を有するネットワークの例を示す。この例では、SSDのガードインターバルは、最大伝搬遅延(すなわち、Δ2)を扱うのに十分に大きくなければならない。
【0143】
図4Lは、局AがΔ1だけ早くSSDを送信することによって伝搬遅延を補正した場合の、同じネットワークを示す。この例では、SSDのガードインターバルは、伝搬遅延の最大変化(すなわち、Δ2−Δ1)を扱うのに十分に大きくなければならない。
【0144】
いくつかの実装形態では、スロット境界は、ネットワーク中の単一の局(たとえば、CCo)によって設定される。CCoから他の局への伝搬遅延は、様々な局におけるスロット境界の位置の変動を生じ得る。すべての送信がスロット境界上で正確に開始するように、ネットワーク中の各局は、局とCCoとの間の伝搬遅延を補償するために、スロット境界位置を補正し得る。これが行われない場合、SSD GIは、ネットワーク内の最大伝搬遅延を超えて延長する必要がある。
【0145】
<レガシー局(すなわち、SSDをサポートしない局)でのSSD動作>
いくつかの実装形態では、SSDをサポートする局が、SSDをサポートしない局と媒体を共用する必要があり得る。たとえば、レガシー局(たとえば、HomePlug AV1.1局)と新しい局(たとえば、HomePlug AV2.0局など、SSDをサポートするHomePlug AV局の将来のバージョン)とが互いの干渉を与える範囲内にあるネットワークにおいて、SSDが使用される必要があり得る。そのような場合、SSDが、以下のように用いられ得る:
a.AV2.0局(すなわち、AV2.0送信機およびAV2.0受信機)に与えられるTDMA割り当ての間;
b.AV2.0局のみによって使用され得る特別なCSMA割り当ての間。
【0146】
SSDは、また、AV1.1とAV2.0との間で共用される割り当ての中で肯定応答を送信するために使用され得る。たとえば、共用CSMA割り当ての中で、SSD肯定応答が使用され得る。図4Mに、長いMPDUのためにAV1.0デリミタが使用され、肯定応答のためにSSDが使用されるような、AV1.0MPDUシーケンスと変更されたAV1.1MPDUシーケンスとを示す。この場合、AV1.0デリミタにおけるフレーム長は、AV1.1局とAV2.0局の両方が優先度解決シグナリング(PRS)スロットの開始について同じ解釈を有するように設定されなければならない。レガシー局の存在下では、レガシー局によって受信される必要がない送信のために、SSDが使用され得る。
【0147】
図12Aおよび図12Bは、レガシーHomePlug AV1.1局との適切な共存を可能にする、SSD肯定応答をもつSOFフィールドを設定する方法の一例を示す。図12Aは、SOFが送信され、その後にペイロードが続くAV2.0媒体アクティビティを示す。ペイロードは、後に応答フレーム間空間(RIFS_SSD)が続き、その後にSSD SACKと競合フレーム間空間(CIFS_SSD)とがそれぞれ続く。CIFS_SSDは、最後の送信(たとえば、SACK)の終了と、(CSMAにおける)競合の開始または(TDMAにおける)送信機会との間のギャップである。このギャップは、送信機が受信機ターンアラウンドすることを可能にする。たとえば、局がSACKを送信し、別のパケットを受信することを予期している場合、CIFS_SSDは、局が送信状態から受信状態に移行するようにそれのハードウェアを構成することを可能にする。CIFS_SSDの終了は、優先度解決シンボル(PRS)スロットに続く。レガシーAV1.1との互換性を可能にするために、SOFはAV1.1フォーマットを使用して送信される。さらに、SOFの中のフィールドの設定は、レガシーデバイスが仮想キャリア感知(VCS:virtual carrier sense)を適切に設定することを可能にする方法で行われ、VCSは、レガシーデバイスが次のPRSスロットのその開始を適切に決定することを可能にする。この例では、AV2局は、現在のMPDUがバーストの中の最後のMPDUであることと、受信機に逆方向許可(reverse grant)が与えられないこととをSOFの中で示す。これは、現在の送信が完了した後にPRSスロットが開始することを、レガシーAV1.1局に示す。AV2.0局は、さらに、図12Aに示される送信のフレーム長(FL_SSD)を示す。特に、AV2.0は、PRSスロットがいつ開始するかをレガシー局が知るように、フレーム長を設定する。図12Bは、レガシーAV1.1局によって解釈される媒体アクティビティを示す。AV2.0受信機は、SSD SACKの存在に気づいているので(たとえば、SSD SACKの存在を示すために、SOFの中の追加のフィールドが使用され得る)、受信機はペイロードの持続時間を次のように決定することができる。
【数3】
【0148】
いくつかの実装形態では、SSDデリミタは、また、レガシーAV1.1局の存在下で逆フレーム開始(Reverse Start of Frame:RSOF)の送信のために使用され得る。図13に、レガシーHomePlug AV1.1局との適切な共存を可能にするSSD RSOFをもつSOFフィールドを設定する方法の一例を示す。図13は、SOFが送信され、後にペイロードが続くAV2.0媒体アクティビティを示す。ペイロードは、後に応答フレーム間空間(RIFS_SSD)が続き、その後にSSD RSOFとそれのペイロードとが続く。SSD RSOFペイロードの後にはCIFS_SSDが続く。CIFS_SSDの後にはPRSスロットが続く。RSOFの存在およびRSOFペイロードの持続時間は、SOFの中のフィールドを使用して示され、レガシー局の挙動に実質的に影響を及ぼさない。
【0149】
図13に示す例では、SOFは、レガシーAV1.1システムとの互換性を可能にするためにAV1.1フォーマットを使用して送信される。さらに、SOFの中のフィールドの設定は、レガシーデバイスが仮想キャリア感知(VCS)を適切に設定することを可能にする方法で行われ、VCSは、レガシーデバイスが次のPRSスロットの開始を適切に決定することを可能にする。この例では、AV2局は、現在のMPDUがバースト中の最後のMPDUであることと、受信機に逆方向許可が与えられないこととをSOF中で示す。これは、現在の送信が完了した後にPRSスロットが開始することを、レガシーAV1.1局に示す。AV2.0局は、図13に示す送信のフレーム長(FL_SSD)をさらに示す。特に、レガシー局がPRSスロットの正確な開始を知るように、AV2.0局はフレーム長を設定する。レガシーAV1.1局による送信信号の解釈は、図12Bに関して上記で説明したものと実質的に同じである。この場合、AV2.0受信機はSSD RSOFおよびRSOFペイロードの存在に気づいているので、SOFペイロードの持続時間は次のように決定される。
【数4】
【0150】
いくつかの実装形態では、AV2.0局は、SSD RSOFペイロードの送信が終了した後に送信し続けることを希望し得る。図14Aおよび図14Bに、レガシーHomePlug AV1.1局がSSD RSOFペイロードの送信終了後に媒体にアクセスすることを延期し続けることを確かにするためにSOFフィールドを設定する方法の例を示す。図14Aは、SOFが送信され、その後にペイロードが続くAV2.0媒体アクティビティを示す。ペイロードは、後に応答フレーム間空間(RIFS_SSD)が続き、その後にSSD RSOFとSSD_RSOFペイロードとが続く。SSD RSOFペイロードは、後にCIFS_SSDが続く。CIFS_SSDの終端において、第1のSOFを送信する局は、媒体の制御を保持し、別のMPDUを送ることができる。この例では、局は第2のSOFを送る。RSOFの存在およびRSOFペイロードの持続時間は、SOFの中のフィールドを使用して、レガシー局の挙動に実質的に影響を及ぼさないことを示す。
【0151】
図14Aおよび図14Bに示す例では、SOFは、レガシーAV1.1との互換性を可能にするためにAV1.1フォーマットを使用して送信される。さらに、SOF中のフィールドの設定は、レガシーデバイスがVCSを適切に設定することを可能にする方法で行われ、VCSは、レガシーデバイスがSSD RSOFペイロードの終了後に媒体にアクセスすることを適正に延期することを可能にする。この例では、AV2局は、現在のMPDUがバースト中の最後のMPDUであることと、受信機に逆方向許可が与えられることとを、SOFの中で示す。これは、現在の送信が完了した後、別の送信が始まることをレガシーAV1.1局に示し、したがって、それらが媒体にアクセスすることを延期させる。AV2.0局は、さらに、図14Aに示される送信のフレーム長(FL_SSD)を示す。特に、フレーム長は、次の送信がいつ開始するのかをレガシー局が知るように設定される。図14Bは、レガシーAV1.1局によって解釈される媒体アクティビティを示す。AV2.0受信機は、SSD RSOFおよびRSOFペイロードの存在に気づいているので、SOFペイロードの持続時間は次のように決定され得る。
【数5】
【0152】
<送信電力の変化>
いくつかの実装形態では、SSDのキャリアの一部の送信電力レベルは、検出の信頼性を向上するように調整され得る。たとえば、プリアンブルキャリアは、より良好なプリアンブル検出性能とチャネル推定(コヒーレント基準)とを与えるのを助けるために、SSDの中の他のキャリアと比較して(または以降に続くOFDMシンボルのキャリアの電力レベルと比較して)2dBだけブーストされ得る。電力ブーストは、プリアンブル、フレーム制御、または場合によってはすべてのキャリアに適用され得、プリアンブルキャリアにはより多く、フレーム制御には中程度、およびペイロードキャリアには少ない量など、異なる量で適用され得る。SSDは比較的短いので、調整コンプライアンスにおいて使用されるRF検出器の特性の故に、著しく増大する放射レベルなしに、キャリアの一部または全部が少量(たとえば、2〜3dB)だけブーストされればよい。
【0153】
<SSDおよび中継(REPEATING)>
SSDは、中継器を使用する通信システムにおいて使用され得る。中継は、意図された(1つまたは複数の)宛先にデータが配信される前に複数の再送信を伴うので、SSDは、各中継に係るオーバーヘッドを低減することによって、性能を改善することができる。
【0154】
図10は、中継のためにSSDを使用する例示的な方式を示す。この例では、局Aからのデータは、それが宛先局Dに到着する前に局BおよびCによって中継される。局Bによって送信されたSSDは、局Aからの先の送信についての肯定応答情報を含んでいる。同様に、局Cによって送信されたSSDは、局Bからの先の送信についての肯定応答情報を含んでいる。局Cからの送信についての肯定応答情報は、局Dから送信されるSSDを使用して示される。この例は、SSDを使用することによって得ることができるオーバーヘッドの低減を示す。この手法は、RIFSによるオーバーヘッドを低減および/またはなくすために、遅延された肯定応答を使用することによってさらに拡張され得る(たとえば、図15A図15Bおよび図16ないし17を参照して以下で説明される)。
【0155】
図10に示される方式は、CSMAおよびTDMA割り当てにおいて使用され得る。CSMA割り当てでは、局Aは、送信後に、媒体の制御を局Bに渡すことができる。同様に、局Bは、局Cに制御を渡すことができ、局Cは局Dに制御を渡すことができる。局B、CおよびDはチャネルアクセスオーバーヘッドを生じない(すなわち、それらは媒体アクセスを求めて競合する必要がない)ので、この手法はチャネルアクセスのオーバーヘッドを低減することができる。局A、BおよびCからそれぞれ受信される送信についての局B、CおよびDによる肯定応答情報の指示は、局が、未配信のペイロードを将来の送信において再送信することを可能にする。この手法では、中間局(すなわち、局BおよびC)は、成功裡に配信されないペイロードデータを記憶し、将来の送信の一部として再送信する必要があり得る。いくつかの実装形態では、中間局が(たとえば、不十分なメモリにより)未配信のパケットを記憶または再送信することができない場合、図15Aおよび図15Bによって示される手法が使用され得る。
【0156】
図15Aに、局Aが局Bを中継器として使用して局Cにデータを送信する例を示す。言い換えれば、局Aがデータを局Bに送り、局Bが、受信したデータを局Cに送る。この例では、局Cは、選択的肯定応答(SACK)を直接局Aに送る。図15Bは、局Aから局Bへの送信がペイロードユニット{1,2,3,4,5,6}を含んでいることを示す。この例では、局Aから局Bへの送信中にペイロードユニット3が破損したと仮定する。例では、局Bがペイロードユニット{1,2,4,5,6}を再送信し、そのうちのペイロードユニット5が破損したとさらに仮定する。したがって、CからAへのSACKは、ペイロードユニット{1,2,4,6}が適正に受信されたことを示す。これにより、Aはペイロードユニット{3,5}を再送信することになる。局Cにおいて適正に受信されたペイロードユニット上の情報を局Aに通信するために、様々な手法が使用され得る。いくつかの実装形態では、ペイロードユニットの各々が識別シーケンス番号を有することができる。そのような実装形態では、局Cは、適切に受信されたペイロードユニットのシーケンス番号を示すことができる。いくつかの実装形態では、MPDU内のペイロードユニットの相対位置が、肯定応答のために使用され得る。そのような場合、局Cは、ペイロードユニット{1,2,3,4,5,6}の各々が局Cにおいて適正に受信されたかどうかを示すために、ビットマップを使用することができる。この手法では、局Bは、エラーとともに受信されたペイロードユニットを局Cに通知することができる。この情報は、たとえば、局Bから送信されるMPDUのSOFの中に含まれ得る。局Cは、その情報を使用し、局Aに示すべき正確なビットマップを決定することができる。この例では、局CのSACKビットマップは{G,G,B,G,B,G}であり、ここで、G(良好:Good)は、ペイロードユニットが適切に受信されたことを示し、B(不良:Bad)は、ペイロードユニットがエラーとともに受信されたことを示す。
【0157】
上述の例では、局Cは、SACKを直接局Aに送る。これは、局Cが直接局Aに通信することができるときのみ可能であり、局Bは、局Aと局Cとの間のより高いデータレートを達成するために使用される。SACK情報はデータと比較して相対的に小さいので、局Cから局AへのSACKの直接送信は、場合によってはより効率的であり得る。いくつかの実装形態では、局Cは、局B(または任意の他の好適な局)にSACK情報を送ることができ、次いで局Bは局AにSACK情報を再送信する。この手法は、局Cが局Aと直接通信することができないときに使用され得る。一般的に言って、発信局から宛先局に共用媒体上でデータを再送するために使用される局のシーケンスは、宛先局から発信局にSACKを中継するために使用される局のシーケンスのスループットよりも高いスループットを有し得るが、SACKのサイズと較べて、各中継器における処理のオーバーヘッドに因る再送がより少ないSACKを送信することは、依然として有利であり得る。
【0158】
図16は、再送の他の例示的な方式を示す。この例では、局Bは、エラーをもってペイロードユニット3を受信し、正しく受信されたペイロードユニットとともに、誤ったペイロードユニットを局Cに再送信する。局Cは、ペイロードユニットを、エラーをもった{3,5}とともに受信する。局Bによる誤ったペイロードユニットの再送は、局Bが、局Aと同じペイロードユニットの相対順序を維持することを可能にする。これは、MPDUの中のどのペイロードが正しく受信されたかを示すために、局Cがビットマップなどの指示子を使用するSACKを生成することを可能にする。この例では、局Cは、ビットマップ{G,G,B,G,B,G}をもつSACKを送信することができる。
【0159】
HomePlug AVは、MPDUに対するペイロードユニットの受信ステータスを示すビットマップ(たとえば、ビットマップの中の最初のビットは、MPDUにおける最初のペイロードユニットの受信ステータスを示す)をもつSACKを使用するシステムの例である。いくつかの実装形態では、図16に記載される手法は、HomePlug AVに基づくシステムにおける中継送信のために使用され得る。上記で説明した手法はまた、MPDUバーストと組み合わせられ得る。いくつかの実装形態では、MPDUバーストの中のすべてのペイロードユニットは、SACKを示すために連続であるものとして扱われ得る。たとえば、局Aが2つのMPDUをバーストの中で局Bに送り、バースト中の第1のMPDUがペイロードユニット{1,2,3,4}を含んでおり、バースト中の第2のMPDUが{5,6}を含んでいる場合、局Bは、1つのMPDU中で受信されたすべてのペイロードユニットを、局Cに再送信し得る。局CからのSACK情報は、第1のビットがバーストの中の第1のペイロードユニットの受信ステータスを示す、等々の、ビットマップを含むことができる。ペイロードユニットの順序がバースト内の相対位置に基づくようなビットマップ化されたSACKフォーマットは、送信ごとに変化し得るバースト特性(すなわち、バーストの中のMPDUの数およびバースト当たりのペイロードユニットの数)へのSACK情報の依存性を除くことができる。
【0160】
伝送制御プロトコル(TCP)は、広く使用されているトランスポートレイヤプロトコルである。TCPは、データが宛先において適正に受信されることを確かにするためにTCP肯定応答を使用する。一般的に言って、TCP肯定応答は、TCPデータと比較して小さい。図17は、TCPが使用されたときの中継された送信のための手法を示す。この例では、局Aは、TCPデータを局Bに送る。局Bは、TCPデータを局Cに中継する。局Cは、TCP ACKをもつRSOFを、局Aに送信する。RSOFは、局Aから送信されたペイロードユニットの受信ステータスを示す選択的肯定応答情報を含む。局Cからの送信を受信した後、局Aは、TCP ACKの受信ステータスを示すためにSACKを送る。この例では、局Cは局Aに直接送信することができると仮定される。これが可能でないシナリオでは、局B(または任意の他の好適な局)が、局Cから局AにRSOFとTCP ACKとを送信するために、中継器として使用され得る。いくつかの実装形態では、局Aは、TCP ACKのための即時のSACKを送らなくてもよい。そのような場合、局Aは、後続のSOF送信において、TCP ACKについての肯定応答情報を組み合わせることができる。
【0161】
中継された送信は、デリミタを送信するためにSSDまたは他のフォーマットを使用することができる。たとえば、SOFは、HomePlug AV1.1フォーマットを使用して送信され得、一方、RSOFおよびSACKはSSDフォーマットを使用して送信される。中継の手法は、TDMAまたはCSMA割り当てにおいて使用され得る。
【0162】
<SSDおよび自動利得制御>
送信機からのSSDを受信するための自動利得制御(AGC)は、その送信機からの先の送信のために使用されるAGC設定を考慮に入れることができる。この手法は、受信機がそこから送信を受信することを予期している局に関する正確な知識を有しているときはいつでも使用され得る。たとえば、AGCは、SACKを受信するためなど、TDMA割り当てにおいて使用され得る。
【0163】
いくつかの実装形態では、受信機は、特定の送信機について、AGCを所定の値にプリセットし得る。
【0164】
<例示>
このセクションは、低オーバーヘッドデリミタの例示について説明する。このセクションに記載される例は、特定の実装形態を示しており、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。例は、1つのOFDMシンボルを含み、パイロット情報(プリアンブル情報と呼ばれることがある)と、フレーム制御(FC)情報(ヘッダ情報と呼ばれることがある)と、場合によっては第1のペイロードPHYブロック(PB)からのデータ(ペイロードセグメントと呼ばれることがある)を搬送するデリミタを記載する。情報は、逆シンボル長(inverse symbol length)に関係するキャリアスペーシングの整数倍で離間されたそれぞれのキャリア(トーンと呼ばれることがある)上で変調される。このデリミタでは、パイロットキャリアが、フレーム検出および同期を可能にし、FCデコードのためのコヒーレント基準の構築のためにも使用される。フレーム制御のために予約されたキャリアは、受信されたフレームを処理するために受信機によって使用される制御情報を搬送する。場合によっては、フレーム制御キャリアは、パイロットキャリアとともに、ペイロードをデコードするためのより正確なコヒーレント基準を得るために用いられる。
【0165】
<デリミタエンコード>
この例のデリミタエンコードは、パイロットキャリア、フレーム制御キャリア、および場合によってはデータキャリアを使用する。送信機から受信機への伝送媒体を介した経路(「チャネル」)の信号対雑音比(SNR)に応じて、異なるシグナリング方式が利用される。デフォルトの方式では、キャリアの1/4をパイロットとして予約し、キャリアの3/4をFCキャリアとして予約する。高いSNRを有するクリーンなチャネルでは、キャリアの1/4がパイロットのために使用され、キャリアの1/4がフレーム制御のために使用され、残りの半分がデータを送るために使用される。これらの2つの構成は、表4および表5に示されており、ここで、1行目はキャリア番号を示し、2行目はキャリア割り当てを与える。Xは、エンコード1トーンマスクによってマスクされたキャリアを示し、P、F、およびDは、それぞれパイロット、フレーム制御およびデータを表す。エンコード1トーンマスクとは、局所的な放射規則を満足するために、国または地域ごとに作成された、ハードコードされたマスクを指す。エンコード2トーンマスクは、媒体およびネットワークに固有であり、ユーザがさらなる冗長性を与えるために、エンコード1によってマスクされたトーンをオンにすることを可能にする。以下で説明するように、場合によっては、エンコード2によって有効化されたトーンは、エンコード1トーンマスクを使用する受信機がデリミタを十分に検出し、デコードすることができるような頑強なエンコードモードのための冗長情報をエンコードするために、パイロットおよびフレーム制御キャリアとして使用される。冗長的にはエンコードされなかったデータは、エンコード1トーンマスクを単独で利用する受信機について考慮に入れて、エンコード2トーンマスクによって有効化されたトーン上では、をエンコードされていない。
【表4】
【表5】
【0166】
場合によっては、キャリア93ないし97は、エンコード2によって有効化される。使用される対応のキャリア割り付けが、表6および表7に示される。
【表6】
【表7】
【0167】
<パイロット>
表4に示されるデリミタでは、4番目ごとのトーンがパイロットとして予約される。パイロットトーンは、0MHzから50MHzのキャリア(「チャネル1」)にわたる線形チャープ(chirp:超短パルス)信号から得られる位相基準表(後述)に従って変調される。同じ位相基準表が、50MHzから100MHzのキャリア(「チャネル2」)に対して使用される。場合によっては、位相基準表はπ/4の整数倍を含む。
【0168】
<チャネル1またはチャネル2上のエンコード>
位相基準表から、4番目ごとのトーンがパイロットのために使用され、それらのトーンから、トーンマスクのエンコード1およびエンコード2の中でマスクされていないもののみが、その目的のために変調される。使用されたパイロット変調は、式2に示されており、ここで、QAMScaleは836であり、電力はペイロードのそれより0.8dBだけ上方にブーストされる。
【数6】
【0169】
また、以下のように、この送信されるパイロットは、デリミタによって使用される巡回プレフィックス(CP)オフセット(CP_Offset)に対して位相修正された後、受信機のための基準として維持される。
【数7】
【0170】
ここで、FFT長(FFTLength)は4096である。CP_Offsetは後で説明される。デリミタのパイロット、フレーム制御およびペイロード部分をIFFT演算の前に合成されるので、スケーリングおよび位相基準は、最後に1回のみ適用される。
【0171】
<チャネル3上のエンコード>
チャネル3に対して、上方と下方のチャネル(それぞれ、チャネル1およびチャネル2)からのトーンマスクが合成されるが、ただし、パイロットトーンは、上方と下方の帯域上の同じ位相基準表を使用して同じように変調される。式4におけるFFT長(FFTLength)は8192に変更され、それに応じてパイロットトーンインデックスが変更されている。
【0172】
<フレーム制御(FC)>
デリミタ構成に応じて、トーンの3/4または1/4のいずれかが、FCキャリアとしてエンコードされる。フレーム制御フィールドは、128の情報ビットを含んでいる。場合によって、増加した冗長性のための追加のステップを用いて、図3に図示されたモジュールにおいて、エンコードが実行される。エンコードの後、説明された位相基準表に従って、FCサブキャリアがスケーリングされ、位相回転される。これが次の式5に示される。
【数8】
【0173】
パイロット生成と同様に、IFFTと電力スケーリングと位相基準とが、最後にのみ適用される。
【0174】
<チャネル1またはチャネル2上のエンコード>
FCは、トーンマスクのエンコード1において利用可能なトーンに基づいてエンコードされる。また、場合によっては、トーンマスクのエンコード2が、さらなるダイバーシティコピーを与えるために使用される。これは、エンコード2において利用可能なトーンの数に等しい長さの新しいダイバーシティコピア表(diversity copier table)を開始することによって、および、エンコード1セットのための表が終了されるように設定されたところからIおよびQのための最初の行を開始することによって、行われる。これは、表8および表9に示される。この実装形態では、エンコード2は、適正なデコードのために必要とはされないが、利用可能にされた場合に性能を向上する。
【表8】
【表9】
【0175】
<チャネル3上のエンコード>
チャネル3については、チャネル1およびチャネル2からのトーンマスクを合成される。それらのそれぞれのエンコード1マスクは、それらがマージされる前と同じまま残される。一般的に、新しいエンコード2マスクは異なる。受信機がチャネル1のみを見ることによって、チャネル3を使用する送信機のフレーム制御を検出することができるはずなので、チャネル3のチャネル1パート上でのエンコードは、上記したように存続する。一方、チャネル2は、チャネル1がエンコード1において終了するところから開始される。言い換えれば、エンコード1のための第1の行が、以下に示されるチャネル1のエンコード2の第1の行と同様であることを除いて、チャネル2は、先に記載されたと同じダイバーシティコピーの手法を使用してエンコードされる。エンコード2の表は、また、上記されたものと同じ表11に示される手続きに従う。
【表10】
【表11】
【0176】
<データ>
高いSNRをもつチャネルでは、ペイロードエンコードは、表5に示されるように、データのために予約された帯域中のトーンの半分(1つおきのトーン)をもつデリミタにおいて始まる。エンコード1トーンマスクにおいて有効化されたトーンは、データ搬送トーンである。エンコード2は、データのためには使用されない。
【0177】
データキャリアをエンコードするために、トーンマップは、データ搬送トーン上での変調を決定するために使用される。チャネルインターリービング動作に続いて、各データブロックに係るインターリーブされたビットが、デリミタから始まる各シンボルに割り付けられる。この割り付けは、デリミタシンボル生成の前になされる。各シンボルに割り付けられたビットは、トーンマップに従って適切なデータキャリアにマッピングされる。場合によっては、マッピングは、デリミタとペイロードとについて別個に実行される。
【0178】
情報ビットは、後続のシンボル上でエンコードされ、変調される。チャネル1またはチャネル2上でデータをエンコードすることは、チャネル3では上方と下方の帯域が合成され、より多数のトーンの結果となることを除いて、チャネル3上でデータをエンコードすることと同様である。
【0179】
<デリミタシンボル生成>
周波数領域中のすべてのキャリア上の変調が知られると、それらは式6に示されるように位相基準で乗算される。IFFT演算および後続のスケーリング調整に続いて、デリミタ電力が、ペイロードシンボル上で0.8dBだけブーストされる。次に、時間サンプルの終わりから固定数のサンプルが取られ、(たとえば、図4に示されるように)拡張されたOFDMシンボルを作成するために、IFFTインターバルの前に巡回プレフィックスとして挿入される。デリミタの巡回プレフィックスは、ロールオフインターバル(RI:rolloff interval)およびガードインターバル(GI)を含む。GI長は、告知された開始位置の不確実性に適応するように選定される。言い換えれば、RI=4.96μsおよびGI=6.96μsを仮定すると、フレームが探索開始シンボル境界の+/−1μs以内に到着する場合、受信機は、依然として、(非重複)デリミタ全体を受信機のFFTで処理することができる。これは、受信された波形を、
(GI+RI)/2のCPオフセットとして、
PacketStartLocation+RI+(GI−RI)/2
で処理することによって行われる。
【数9】
【0180】
この例では、実数の4096点のIFFTがチャネル1またはチャネル2上で送信するために使用され、実数の8192点のIFFTが合成されたトーンをもつチャネル3の場合に使用される。また、同じ位相基準が、チャネル3の上方向と下方向の帯域部分に使用される。
【0181】
<デリミタ検出およびデコード>
受信機は、フレームを正常に検出および処理するために、フレーム到着時間の推定を決定する。デリミタの巡回プレフィックスは、予想される開始位置の精度に関してある程度の柔軟性(たとえば、GI長に依存した許容範囲内)を許す。デリミタのサンプルを取得した後、受信機におけるデリミタ検出プロセス(すなわち、パイロットトーンを使用してデリミタの存在を確認し、それの開始位置を決定すること)とFCデコードプロセスとが同時に実行される。ペイロードのコヒーレント基準が決定されると、(利用可能な場合)デリミタのデータ部分がデコードされる。
【0182】
<検出>
受信機が(非重複)デリミタ全体を受信機のFFTで処理するために、受信機は、受信した波形を、
PacketStartLocation+RI+(GI−RI)/2
で処理する: 上式で、PacketStartLocationは予想される開始位置、RIは重複するサイズ、および、GIはガードインターバル長である。チャネル1およびチャネル2上のデリミタを検出するために、受信機は同じアルゴリズムを使用し、一方、チャネル3については、(チャネル3はより多くのキャリアを有しているので)より大きいサイズのFFTとIFFTが使用される。
【0183】
<チャネル1またはチャネル2上の検出>
パイロットトーンは、すべての使用されるキャリアのうちの1/4にのみ存在する。トーンマスクのエンコード1を単独で使用することにより、デリミタが検出される。ただし、エンコード2も利用可能である場合、エンコード1およびエンコード2におけるトーンの合成された組を使用することによって、受信機の性能はさらに改善される。これに加えて、場合によっては、振幅マップについての知識が、振幅マップにしたがってゼロの振幅を有する受信パイロットトーンをマスクするために用いられ、したがって、検出器において特定のパイロットトーンを回避することになる。
【0184】
図5Aのフローチャートに示すように、検出が行行われた。4096点FFTの後の最初のステップは、(送信位相は送信機と受信機の両方によって知られているので)受信パイロット位相を式4からの送信位相で除算することによって、パイロットトーン上のチャネルによって課される位相回転を除去することである。次に、正規化されたチャネルインパルス応答が、その結果のIFFTを得ることによって取得される。これは式7によって表される。パイロットトーンは4つごとのキャリア上にのみ存在するので、使用された実部IFFTのサイズは1024である。
【数10】
【数11】
【0185】
上式で、kPは、合計 FFTSIZE/4=1024 個のキャリアのためのパイロットトーンのキャリア数であり、ΦRXは受信パイロットトーンの位相角であり、ΦTXは送信パイロットトーンの位相(式4から)である。また、UsedMaskは、長さFFTSIZE/4の長さである。インパルスピークのより良好な推定を得るために、雑音を低減し、チャネルによって拡散されたピークエネルギーを集めるのを助けるために、移動平均窓またはマッチドフィルタが使用される。移動平均手法では、検出器は、M個のサンプル(たとえばM=21)の幅のスライディング矩形窓(Win[ ])を使用する。最初に、ピークの位置が次式によって得られる。
【数12】
【0186】
上式で、nは0から(FFTSIZE/2−1)までの範囲である。
【0187】
上式で、PeakIdxはフレームの実際の開始からのサンプルの数である。それは、+FFTSIZE/4サンプルから−FFTSIZE/4サンプルまでの間で変えられる。必要とされるとき、このオフセット誤差は、それが知られたときに、コヒーレント基準ブロックに渡される。デリミタが検出されるかどうかを決定するために、次の演算を実行される。
【数13】
【0188】
上式で、雑音をフィルタ除去するために、Knoise=0.1が使用される。以下のように、矩形窓Win[ ]が、Xcut[n]で巡回畳み込みを実行することによってデータを平滑化するために使用される。
【数14】
【0189】
加算の回数を低減するために、畳み込みは、以下の範囲の中でのみ実行される: 環状形式(circular fashion)において、PeakIdx+WinLength/2 から PeakIdx−WinLength/2 まで。最後に、Cpeakと呼ばれるη[ ]のピーク値は、固定されたしきい値と比較され、より大きいとわかった場合、デリミタ検出が確認される。検出器の性能を改善するために、場合によっては、この手続きは、2つの矩形窓について同時に実行される。大きい幅をもつ窓は、マルチパスの状況において役立ち、より小さい窓がインパルスを除くために試される。
【0190】
ピークおよびその位置が得られると、ピーク値が要求される閾値を上回った場合、デリミタの存在が確認される。そして、ピークロ位置は、次のシンボルの開始を調整するために用いられる。パイロットは4つのトーンのうちの1つの中にのみ存在するので、4096/4、すなわち1024個のサンプル(+/−5.12μs)の最大フレーム開始誤差のみがあいまいさなしに検出され得ることに留意されたい。この最大限度を十分に利用するために、4.96μsのRIとすれば、15.2μsのGIが、クリーンな非重複信号を処理するために使用される。6.96μsのデフォルトGIを用いて、+/−1μsまでの誤差が、劣化なしに検出され得る。
【0191】
<チャネル3上の検出>
上記されたように、受信機は、チャネル1を見ることのみによってチャネル3を使用する送信機のデリミタを検出することができるべきである。受信機によって両方のチャネルが使用される場合、同じ手続きが、ステップ4(図5A)の終了まで、チャネル1と2の上でのデリミタの存在を検出するために続けられる。場合によっては、2つのインパルス応答が、残りのステップが完了される前に結合される。さらに、場合によっては、2つの別個の4096のFFT演算の代わりに、1つの8192のFFT演算が、ステップ1(図5A)の開始時に実行される。
【0192】
<コヒーレント基準生成とフレーム制御デコード>
システム構成に応じて、デリミタの中のトーンの3/4または1/4がFCトーンとして使用される。フレーム制御がデコードされ得る前に、キャリアのそれぞれの振幅および位相へのチャネルの影響(たとえば、位相依存周波数応答:phase-dependent frequency response)を表すコヒーレント基準が推定される。これは、受信パイロットトーンと送信パイロットトーンとを使用して行われる。FCコヒーレント基準が取得されると、FCがデコードされる。次に、FCが再エンコードされ、ペイロードのための新しいコヒーレント基準が生成される。
【0193】
<チャネル1またはチャネル2>
フレーム制御は、一般的にいって、トーンマスクのエンコード1を単独で使用することによって処理される。ただし、エンコード2も利用可能である場合、受信機の性能は、キャリアのエンコード2の組の中で追加のダイバーシティコピーを使用することによってさらに改善される。これに加えて、場合によっては、振幅マップの知識は、ゼロの振幅を有する受信されたFCトーンをマスクするために使用され、それによって受信機における特定のトーンを回避する。
【0194】
FC処理における最初の段、コヒーレント基準生成、は、図5Bに関して説明された動作のシーケンスに従って実行される。使用されたトーンに基づく最初のチャネル基準は、(Rx FFT出力からの)受信パイロットキャリアを式4のパイロットキャリアで除算することによって取得される。そして、フレームの開始からのサンプルの中のオフセット誤差に起因する各トーン上の位相回転は、式12に示されるように補正される。
【数15】
【0195】
上式で、PilotRefはステップ1の出力であり、OffsetErrorは、式9によって与えられた、デリミタ検出器によって報告された誤差である。パイプライン遅延により、検出器の出力が未知であるときは、このステップはスキップされる。オフセット誤差が大きい場合(たとえば、>1μs)、エッジ周辺のあまり正確でないFCコヒーレント基準を時にもたらすノッチの間の中に若干の位相のあいまいさがある。ただし、FCがQPSKでエンコードされるので、影響は害を与えない。ステップ3において、パイロットトーン間ならびにノッチ間のギャップにおけるトーンについてのチャネル応答が推定される。ここで使用されるトーンマスクは、式8によって与えられるものである。まず第一に、最初および最後の有効なパイロットトーンは、それぞれDC、および、FFT長/2 にコピー拡張される。すなわち、最初/最後のマスクされないキャリアの前/後のすべてのキャリアは、最初/最後のマスクされないキャリアからそれらのデータ値をとる。その後、線形補間が、逃したトーンのチャネル推定を得るために、2つおきの有効なパイロットトーンの間で行われる。
【0196】
キャリアAおよびBが既知であり、AからLトーン離れ、BからHトーン離れたCを計算するために、これらの値の間で補間することを望んでいると仮定する。より正確であるために、位相と振幅とについて別々に補間が行われる。Cの振幅は、次のように決められる。
【数16】
【0197】
Cの位相は、同じ原理を使用し、位相が第1象限から第4象限に、またはその逆にまたがるときのAとBとの間の位相関係を考慮して決められる。AおよびBの位相は、0度から360度の間にあると仮定され、次のように計算される。
【数17】
【0198】
これは、Cの位相を計算するために、式15に続く。
【数18】
【0199】
場合によっては、これは、キャリアの実部と虚部とを別個に補間することによって行われる。キャリアAおよびキャリアBの絶対値の代わりに、実部または虚部が、それぞれ、キャリアCの実部および虚部に係る補間をするために使用だれることを除き、式13と同じ式が使用される。
【0200】
すべての逃したキャリアについてのチャネル応答推定が分かると、(平坦な中心をもつ)狭いハニング窓が、雑音低減のためのFIR平滑化フィルタを介する時間領域応答に適用される。次に、ステップ2をスキップされなかった場合は、オフセット誤差による位相回転が再び加得られる。この場合のステップ5のための式は、負の符号が外されることを除いて、実質的に式12と同じである。ステップ5の終了時に、FCコヒーレント基準は、使用される準備ができる。この特定のチャネルに係るペイロードコヒーレント基準があらかじめ記憶されるような場合、記憶された値は、より正確なコヒーレント基準を得るために、この新しい推定で平均化される。基準が平均化される前に、サンプルの数に関してそれらの間の潜在的な時間オフセットが推定される。位相相関器は、2つのステップにおいてこのサンプルシフトを決定するために用いられる: 第1に、1サンプルのステップにおいて粗い相関を実行することにより、および、第2に、粗い相関器から取得された範囲の中で0.01サンプルのステップでの微細な相関を実行することによる。オフセットが推定されると、以前のコヒーレント基準(PrevCohRef)は、平均化フィルタに入れられる前に、次のように調整される。
【数19】
【0201】
上式で、αは、0.75である。
【0202】
フレーム制御は、図5Cに示される一連の動作を使用してデコードされる。上記されたように、トーンマスクエンコード1は、たとえば、HomePlug AV規格に記載されているアルゴリズムを使用して、フレーム制御をデコードするために十分である。ただし、トーンマスクエンコード2も利用可能である場合、表9に示されるように、インターリーブされたビットのより多くのコピーが、デコードプロセスにおいて結合される。この段では、FCキャリアのみが、コヒーレント基準の中の対応するキャリアで除算される。ここで使用されるマスクは、有効なエンコード1とエンコード2とのトーンマスクとの結合された組合せである。また、図5Cのステップ2に示されるように、振幅マップは、送信機におけるIFFTの前にオフにされるトーンをマスクするために使用される。ステップ3および4は、式17によりさらに説明される。この例では、トーン当たりのSNRは、デリミタの中のコンスタレーション雑音から推定される。次に、キャリアについての雑音は、ソフトとハードの判定の間の差分の2乗として計算される。さらに、すべてのトーンにわたる平均SNRが、最終段で使用される平滑化フィルタタイプを決定するのを助けるために得られる。代替的に、以前のフレームから保存されたSNR履歴が、代わりに使用される。
【数20】
【0203】
段2においてフレーム制御がデコードされると、それは、送信されたFCキャリアを取得するために再エンコードされる。これは、図5Dに示されており、式5によっても説明される。次に、新しいコヒーレント基準は、合成された送信パイロットとFCキャリアとを使用することによって計算される。これは、ギャップがより少なく、より多くのキャリアが推定において使用され、後でペイロードをデコードするために使用されるので、より正確である。
【0204】
ペイロードコヒーレント基準の生成の最終段は、図5Eに示される一連のステップを使用して実行される。この場合、前と同じプロセスが繰り返されるが、今回は、結合されたパイロットキャリアとFCキャリアとが、残りのギャップを補間するために使用される。また、(すべてのトーンにわたる)平均SNRに応じて、狭いまたは広いハニングフィルタ係数のいずれかが、平滑化フィルタにおいて使用される。狭い窓は、低いSNRにおいてうまく動作し、一方、広い窓は、より高いSNRにおいてより良好な推定を与える。最終の結果は、ペイロードコヒーレント基準として使用される。場合によっては、図5Eのステップ2およびステップ5は、計算されるコヒーレント基準の品質を向上するために実装されることに留意されたい。場合によっては、デリミタ検出ブロックは、式12において使用されるオフセット誤差を与える。
【0205】
<チャネル3>
チャネル3は、チャネル1とチャネル2の周波数帯域を結合しており、フレーム制御における情報ビットの数は、依然として128ビットのままである。検出アルゴリズムと同様に、チャネル1のみを見る受信機は、この場合に、フレーム制御を正常にデコードすることができる。
【0206】
コヒーレント基準を生成し、チャネル3のためのフレーム制御をデコードするための手続きは、使用されるトーンの数が増加され、チャネル2の中に追加のダイバーシティコピーがあることを除いて、上記されたものと同様である。デコードは、それらのそれぞれのトーンマスクを使用する別個のエンティティとしてチャネル1と2とにおいて同時に行われるか、または合成されたトーンマスクを使用して1つのチャネルとして行われるかのいずれかである。それが別個に行われるとき、休止(pause)は、FCをデコードすることに進む前に、両方のチャネルからのダイバーシティコピーを正しく組み合わせるために、段2のステップ5において必要とされる。両方のチャネルからのコヒーレント基準が得られると、それらは、チャネル3の全体的なコヒーレント基準を形成するために組み合わされる。
【0207】
デコードが合成トーンマスクを使用して行われると、ダイバーシティ結合が、また、実行される。エンコード1部分におけるダイバーシティアドレッシングは連続的であり、合成トーンマスクの後に続く。エンコード2部分におけるダイバーシティアドレッシングは、表11に示されるように、下方帯域の終端において停止し、上方帯域の始端において異なるアドレスで再開する。先に説明されたように、これは、受信機が、より低い帯域を処理することにより、一方で、チャネル3帯域全体を処理するときに高いレベルのダイバーシティを与えることにより、FCをデコードすることを可能にする。
【0208】
<ペイロードのデコード>
デリミタは、チャネル状態が好適であるとき、データペイロードを搬送する。キャリア割り付けは、表5に示される構成に基づく。エンコード1トーンマスクによって有効化されたトーンのみが、非ロボ(non-Robo)パケットの中でデータを搬送するために利用される。以下の式に示されるように、フレーム制御と同様の様式で、ペイロードが復調される。
【数21】
【0209】
受信されたコンスタレーションを計算することに続き、キャリア上のエンコードされたデータビットについての対数尤度比(log likelihood ratios:LLR)が、トーンマップと受信されたコンスタレーションポイントとを使用して得られる。これに続いて、LLRは、後続のシンボルからのLLRとともに集められ、デインターリーブされ、ターボデコードされ、最終のデータビットがデスクランブルされる。
【0210】
<位相基準表>
位相基準は、線形チャープ(chirp:超短パルス)波形であり、各キャリアのための位相は、キャリアの位相角数にπ/4を乗算した値と定義される。位相角数は0〜7の整数である。表は、最初の有効なキャリア FC=75 および、最後の有効なキャリア LC=3277(8192長さのFFT) を用いて計算される。
【数22】
【0211】
上式で、KはFCからLCまでのキャリアを表しており、
PhaseAngle(LC)=7 であり、
PhaseTempは次式によって与えられる。
【数23】
【0212】
上式で、PhaseTempは最初は0であり、
KはFC−1からLC−2までであり、
Modはモジュロ演算を指し、
NumCarrsは次式によって与えられる。
【数24】
【0213】
上記された技法は、コンピュータシステム上での実行のためにソフトウェアを使用して実装され得る。たとえば、ソフトウェアは、各々が、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのデータ格納システム(たとえば、揮発性および不揮発性メモリおよび/または記憶素子を含む)と、少なくとも1つの入力デバイス(たとえば、キーボードおよびマウス)またはポートと、少なくとも1つの出力デバイス(たとえば、モニタ)またはポートとを含む、プログラムされているまたはプログラマ可能な1つまたは複数のコンピュータシステム(たとえば、デスクトップ、分散型、クライアント/サーバ型のコンピュータシステム)の上で実行する1つまたは複数のコンピュータプログラムにおけるプロシージャ(手続き/手順)を定義する。ソフトウェアは、より大きいプログラムの1つまたは複数のモジュールを形成してもよい。
【0214】
ソフトウェアは、汎用または特定用途のプログラム可能コンピュータによって読取り可能なCD−ROMなどのコンピュータ可読記憶媒体上に与えられ得るか、またはそれが実行されるコンピュータへのネットワークなどの媒体上を(たとえば、伝搬信号にエンコードされて)配信され得る。そのような各コンピュータプログラムは、好ましくは、記憶媒体がソフトウェアの手続きを実行するためによコンピュータシステムによって読み取られるとき、コンピュータシステムを構成し、動作させるために、汎用または特定用途プログラム可能コンピュータによって読取り可能な記憶媒体(たとえば、半導体メモリまたは媒体、あるいは、磁気または光媒体)上に記憶されるか、またはダウンロードされる。
【0215】
上記されたもの以外の本発明の多くの他の実装形態は、以下の特許請求の範囲によって定義されるような、本発明の範囲の中に入る。
以下に本願発明の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
共用媒体上を局間で通信するための方法であって、
宛先局において、複数のセグメントのシーケンスで発信局から発信されたペイロードの1つまたは複数のセグメントを含む第1の波形を受信すること、前記第1の波形中に含まれる前記1つまたは複数のセグメントは、前記発信局によっておよび1つまたは複数の中継局の各々によって前記共用媒体上で送信されており、前記第1の波形は、複数のセグメントの前記シーケンスのうちのどれが前記中継局のうちの少なくとも1つによって正しくデコードされなかったのかを示す、と、
前記第1の波形に基づいて、複数のセグメントの前記シーケンスのうちのどれが前記宛先局によって正しくデコードされたのかを特定する肯定応答情報を生成することと、
前記共用媒体上で前記宛先局から第2の波形を送信すること、前記第2の波形が前記肯定応答情報を含む、とを備える、方法。
[C2]
前記ペイロードの各セグメントが、所定のシンボル長を有する少なくとも1つのシンボルを備え、各シンボルの周波数成分のキャリア周波数が、前記シンボル長の逆数によって決定される周波数インターバルの整数倍である、C1に記載の方法。
[C3]
前記第2の波形中に含まれる前記肯定応答情報は、前記発信局から前記宛先局に前記1つまたは複数のセグメントを送信するために使用されたよりも少ない中継局を使用して、前記宛先局から前記発信局に送信される、C1に記載の方法。
[C4]
前記宛先局から前記発信局に前記肯定応答情報を送信するためのスループットが、前記発信局から前記宛先局に前記1つまたは複数のセグメントを送信するためのスループットよりも低い、C3に記載の方法。
[C5]
前記第1の波形が、前記発信局によっておよび複数の中継局の各々によって前記共用媒体上で送信される、C1に記載の方法。
[C6]
複数のセグメントの前記シーケンスのうちのどれが少なくとも1つの中継局によって正しくデコードされていないのかを特定する情報は、前記複数の中継局による複数の送信にわたって蓄積される、C5に記載の方法。
[C7]
前記複数の中継局のうちの第1の中継局によって正しくデコードされていないセグメントは、前記複数の中継局のうちの第2の中継局に送信される、C5に記載の方法。
[C8]
前記複数の中継局のうちの第1の中継局によって正しくデコードされていない前記セグメントは、複数のセグメントの前記シーケンスのうちのどれが少なくとも1つの中継局によって正しくデコードされていないのかを特定する情報を備える、C7に記載の方法。
[C9]
共用媒体上を局間で通信するためのシステムであって、
複数のセグメントのシーケンスを有するペイロードを含む波形を送信するように構成される発信局と、
正しくデコードされた前記ペイロードのセグメントを少なくとも含む波形を送信するように構成される少なくとも1つの中継局と、
前記ペイロードの1つまたは複数のセグメントを含む波形を受信すること、前記受信された波形は、複数のセグメントの前記シーケンスのうちのどれが前記中継局のうちの少なくとも1つによって正しくデコードされなかったのかを示す、と、
前記受信された波形に基づいて、複数のセグメントの前記シーケンスのうちのどれが前記宛先局によって正しくデコードされたのかを特定する肯定応答情報を生成することと、
前記共用媒体上で前記宛先局から波形を送信すること、前記送信された波形は前記肯定応答情報を含む、と、を行うように構成される宛先局と、を備える、システム。
[C10]
前記ペイロードの各セグメントは、所定のシンボル長を有する少なくとも1つのシンボルを備え、
各シンボルの周波数成分のキャリア周波数は、前記シンボル長の逆数によって決定される周波数インターバルの整数倍である、C9に記載のシステム。
[C11]
前記第2の波形中に含まれる前記肯定応答情報は、前記発信局から前記宛先局に前記1つまたは複数のセグメントを送信するために使用されたよりも少ない中継局を使用して、前記宛先局から前記発信局に送信される、C9に記載のシステム。
[C12]
前記宛先局から前記発信局に前記肯定応答情報を送信するためのスループットは、前記発信局から前記宛先局に前記1つまたは複数のセグメントを送信するためのスループットよりも低い、C11に記載のシステム。
[C13]
前記第1の波形は、前記発信局によっておよび複数の中継局の各々によって前記共用媒体上を送信される、C9に記載のシステム。
[C14]
複数のセグメントの前記シーケンスのうちのどれが少なくとも1つの中継局によって正しくデコードされていないのかを特定する情報は、前記複数の中継局による複数の送信にわたって蓄積される、C13に記載のシステム。
[C15]
前記複数の中継局のうちの第1の中継局によって正しくデコードされていないセグメントは、前記複数の中継局のうちの第2の中継局に送信される、C13に記載のシステム。
[C16]
前記複数の中継局のうちの第1の中継局によって正しくデコードされていない前記セグメントは、複数のセグメントの前記シーケンスのうちのどれが少なくとも1つの中継局によって正しくデコードされていないのかを特定する情報を備える、C15に記載のシステム。
図1
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図4A
図4B
図4C
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図4G
図4H
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図4J
図4K
図4L
図4M
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図5B
図5C
図5D
図5E
図6
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図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17