特許第5792285号(P5792285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792285
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ショベル及びショベルの制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20150917BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   E02F9/22 J
   E02F9/20 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-507752(P2013-507752)
(86)(22)【出願日】2012年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2012058479
(87)【国際公開番号】WO2012133705
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2014年7月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-76254(P2011-76254)
(32)【優先日】2011年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 公則
(72)【発明者】
【氏名】白谷 竜二
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−299102(JP,A)
【文献】 特開2005−344431(JP,A)
【文献】 特開2010−133235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/22
F15B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体を旋回駆動する旋回用電動機と、
前記旋回体又は前記旋回用電動機に機械的に連結された旋回ブレーキ用油圧モータとを有するとともに、
前記旋回体を旋回操作するための旋回操作手段が操作されていない状態において、旋回以外の操作を行なうための操作手段が操作されているときに、前記旋回ブレーキ用油圧モータを用いて前記旋回体にブレーキをかけ、かつ、前記旋回体を機械的に固定するための機械式ブレーキ装置のブレーキ動作を解除していることを特徴とするショベル。
【請求項2】
請求項1記載のショベルであって、
前記旋回ブレーキ用油圧モータの吸入口と吐出口とを遮断する油圧回路を更に有することを特徴とするショベル。
【請求項5】
請求項2記載のショベルであって、
前記油圧回路は前記旋回ブレーキ用油圧モータの吐出側を常に遮断し、前記旋回体と前記旋回ブレーキ用油圧モータとの間に断続機が設けられたことを特徴とするショベル。
【請求項6】
請求項5記載のショベルであって、
前記断続機は、前記旋回体を旋回操作するための旋回操作手段が操作されていない状態において、前記旋回ブレーキ用油圧モータを前記旋回体又は前記旋回用電動機に連結することを特徴とするショベル。
【請求項7】
請求項2記載のショベルであって、
前記油圧回路は切換弁を含み、該切換弁により前記旋回ブレーキ用油圧モータの吸入口と吐出口とを遮断することを特徴とするショベル。
【請求項8】
請求項7記載のショベルであって、
前記旋回体の旋回操作を行なうための旋回操作手段が操作されているときは、前記切換弁により前記旋回ブレーキ用油圧モータの吸入口と吐出口が接続されて閉回路が形成され、
前記旋回体の旋回操作を行なうための旋回操作手段が操作されていない状態となると、前記切換弁により前記旋回ブレーキ用油圧モータの吸入口と吐出口とを遮断することを特徴とするショベル。
【請求項9】
旋回体を旋回駆動する旋回用電動機と、
前記旋回体又は前記旋回用電動機に機械的に連結された旋回ブレーキ用油圧モータとを有するショベルの制御方法であって、
前記旋回体を旋回操作するための旋回操作手段が操作されていない状態において、旋回以外の操作を行なうための操作手段が操作されているときに、前記旋回ブレーキ用油圧モータを用いて前記旋回体にブレーキをかけ、かつ、前記旋回体を機械的に固定するための機械式ブレーキ装置のブレーキ動作を解除していることを特徴とするショベルの制御方法。
【請求項10】
請求項9記載のショベルの制御方法であって、
前記旋回体にブレーキをかける際に、前記旋回ブレーキ用油圧モータの吸入口と吐出口とを遮断することを特徴とするショベルの制御方法。
【請求項11】
請求項10記載のショベルの制御方法であって、
前記旋回ブレーキ用油圧モータの吐出側を常に遮断し、前記旋回体と前記旋回ブレーキ用油圧モータとの間を断続機により断続することを特徴とするショベルの制御方法。
【請求項12】
請求項11記載のショベルの制御方法であって、
前記断続機は、前記旋回体を旋回操作するための旋回操作手段が操作されていない状態において、前記断続機を操作して前記旋回ブレーキ用油圧モータを前記旋回体又は前記旋回用電動機に連結することを特徴とするショベルの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動機を用いて旋回体を電動駆動するショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、掘削作業等を行なうショベルには旋回体が設けられ、掘削作業を行なうためのブーム、アーム及びバケットが旋回体に設けられる。旋回体を旋回させることで、バケットをショベルの周囲の任意の位置に移動する。旋回用油圧モータで旋回体を旋回駆動することを油圧旋回と称する。また、旋回用電動モータで旋回体を旋回駆動することを電動旋回と称する。
【0003】
電動旋回を採用したショベルでは、旋回用電動モータを駆動しないときには旋回用電動モータは自由に回転できる状態にあるので、旋回体に機械的にブレーキをかけて固定しておく。機械的にブレーキをかけるブレーキ装置は、摩擦力を用いて旋回体を固定するものであり、摩擦力を発生させる部品が摩耗するという問題を有している。ショベルの作業時には旋回体に大きな外力が作用するため、この大きな外力に抗してブレーキ力(摩擦力)を維持しなければならない。したがって、ブレーキ装置に加わる負荷が大きく、ブレーキ装置の摩擦力を発生する部分が短時間で摩耗してしまい、ブレーキ装置の寿命が短いという問題がある。
【0004】
そこで、旋回用電動モータをゼロ速度制御することで旋回体を停止状態に維持することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ゼロ速度制御とは、旋回用電動モータを常に駆動状態としておき、旋回用電動モータが外力により回転しようとしたら回転速度がゼロになるように、反対向きに回転するように駆動して回転速度をゼロに維持するという制御である。旋回用電動モータの回転速度をゼロに維持するということは、旋回用電動モータを回転させないことであり、したがって旋回体は一定の位置に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−299102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
旋回用電動モータをゼロ速度制御することで旋回体を停止状態に維持する制御では、旋回用電動モータを駆動して、旋回体に加わる外力を打ち消すような旋回力を発生させる。このため、旋回用電動モータを常時駆動しなければならず、旋回体を固定しておくために旋回用電動モータに電力を供給する必要がある。したがって、蓄電装置から多量の電力を旋回用電動モータに供給しなければならず、蓄電装置の充電率が急速に減少するおそれがある。また、作業を行なうためではなくブレーキをかけるためだけに旋回用電動モータで電力を消費するため、省電力の観点から好ましくない。
【0007】
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、機械式ブレーキ以外のブレーキ装置により旋回体を停止状態に維持することができ、且つブレーキ力を発生するために多量の電力を必要としないショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、旋回体を旋回駆動する旋回用電動機と、該旋回体又は該旋回用電動機に機械的に連結された旋回ブレーキ用油圧モータとを有することを特徴とするショベルが提供される。
【0009】
上述のショベルは、該旋回ブレーキ用油圧モータの吸入口と吐出口とを遮断する油圧回路を更に有することが好ましい。該旋回体を旋回操作するための旋回操作手段が操作されていない状態において、旋回以外の操作を行なうための操作手段が操作されたときに、該旋回ブレーキ用油圧モータを用いて該旋回体にブレーキをかけることとしてもよい。また、該旋回体を旋回操作するための旋回操作手段が操作されていない状態において、旋回以外の操作を行なうための操作手段が操作されたときに、該旋回体を機械的に固定するための機械式ブレーキ装置のブレーキ動作を解除することとしてもよい。
【0010】
また、該油圧回路は該旋回ブレーキ用油圧モータの吐出側を常に遮断し、該旋回体と該旋回ブレーキ用油圧モータとの間に断続機が設けられることとしてもよい。該断続機は、該旋回体を旋回操作するための旋回操作手段が操作されていない状態において、該旋回ブレーキ用油圧モータを該旋回体又は該旋回用電動機に連結することとしてもよい。また、該油圧回路は切換弁を含み、該切換弁により該旋回ブレーキ用油圧モータの吸入口と吐出口とを遮断することとしてもよい。また、該旋回体の旋回操作を行なうための旋回操作手段が操作されているときは、該切換弁により該旋回ブレーキ用油圧モータの吸入口と吐出口が接続されて閉回路が形成され、該旋回体の旋回操作を行なうための旋回操作手段が操作されていない状態となると、該切換弁により該旋回ブレーキ用油圧モータの吸入口と吐出口とを遮断することとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
上述の発明によれば、機械式ブレーキ以外のブレーキ装置により旋回体を停止状態に維持することができ、且つブレーキ力を発生するために多量の電力を消費することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ハイブリッド式ショベルの側面図である。
図2】第1実施形態によるハイブリッド式ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。
図3】蓄電系の構成を示すブロック図である。
図4】油圧によるブレーキ力を発生させるための旋回ブレーキ用油圧モータを有する旋回駆動系の構成を示すブロック図である。
図5】上部旋回体の旋回を停止しながら作業を行なう場合の制御処理のフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態による旋回ブレーキ用油圧モータを有する旋回駆動系の構成を示すブロック図である。
図7】シリーズ型ハイブリッド式ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。
図8】電気式ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明が適用されるハイブリッド式ショベルを示す側面図である。
【0015】
ハイブリッド式ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端に、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端にバケット6が取り付けられている。ブーム4,アーム5及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
【0016】
なお、本発明が適用可能なショベルは、ハイブリッド式ショベルに限られない。電動旋回を採用したショベルであれば、例えば外部電源から充電電力が供給される電気駆動式ショベルにも本発明を適用することができる。
【0017】
図2は、本発明の第1実施形態によるハイブリッド式ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は実線でそれぞれ示されている。
【0018】
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
【0019】
コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。
【0020】
電動発電機12には、インバータ18Aを介して、蓄電器としてのキャパシタを含む蓄電系(蓄電装置)120が接続される。蓄電系120には、インバータ20を介して電動作業要素としての旋回用電動機21が接続されている。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回変速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。旋回用電動機21と、インバータ20と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回変速機24とで負荷駆動系が構成される。ここで、旋回用電動機21が上部旋回体3を旋回駆動するための旋回用電動モータに相当し、メカニカルブレーキ23が上部旋回体3に機械的にブレーキをかけておくブレーキ装置に相当する。
【0021】
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。
【0022】
図3は蓄電系120の構成を示すブロック図である。蓄電系120は、蓄電器としてのキャパシタ19と昇降圧コンバータ100とDCバス110とを含む。第2の蓄電器としてのDCバス110は、第1の蓄電器としてのキャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。キャパシタ19には、キャパシタ電圧値を検出するためのキャパシタ電圧検出部112と、キャパシタ電流値を検出するためのキャパシタ電流検出部113が設けられている。キャパシタ電圧検出部112とキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電圧値とキャパシタ電流値は、コントローラ30に供給される。
【0023】
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値を一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。DCバス110は、インバータ18A及び20と昇降圧コンバータ100との間に配設されており、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を行う。
【0024】
図2に戻り、コントローラ30は、ハイブリッド式ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
【0025】
コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるために操作装置26を操作した場合の操作量を表す信号に相当する。
【0026】
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータ100を駆動制御することによるキャパシタ19の充放電制御を行う。コントローラ30は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりキャパシタ19の充放電制御を行う。また、コントローラ30は、後述のようにキャパシタ19に充電する量(充電電流又は充電電力)の制御も行なう。
【0027】
この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、キャパシタ電圧検出部112によって検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電流値に基づいて行われる。
【0028】
以上のような構成において、アシストモータである電動発電機12が発電した電力は、インバータ18Aを介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。旋回用電動機21が回生運転して生成した回生電力は、インバータ20を介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。
【0029】
旋回用電動機21の回転速度(角速度ω)はレゾルバ22により検出される。また、ブーム4の角度(ブーム角度θB)はブーム4の支持軸に設けられたロータリエンコーダ等のブーム角度センサ7Bにより検出される。コントローラ30は、旋回用電動機21の角速度ωに基づいて推定旋回回生電力(エネルギ)を演算で求め、また、ブーム角度θBに基づいて推定ブーム回生電力(エネルギ)を演算で求める。そして、コントローラ30は、演算で求めた推定旋回回生電力と推定ブーム回生電力とに基づいて、SOCの回生見込み目標値を演算により求める。コントローラ30は、キャパシタ19のSOCを、求めた回生見込み目標値に近づけるようにハイブリッド式ショベルの各部を制御する。
【0030】
上述のような構成のハイブリッド式ショベルによる作業では、上部旋回体3を一定の旋回位置に保持しながらブーム4、アーム5、バケット6を駆動して掘削作業等を行なうことがある。このときは、上部旋回体3が外力により旋回してしまわないように、メカニカルブレーキ23によりブレーキがかけられる。メカニカルブレーキ23は、操作装置26の旋回用操作レバー(例えば、レバー26A)が一定時間操作されないと、自動的に作動され、旋回用操作レバーが操作されると直ちに解除される。
【0031】
本実施形態では、メカニカルブレーキ23によりブレーキをかけながらブーム4、アーム5、バケット6による作業を行なう状態とならないようにする。すなわち、上部旋回体3を停止しながら作業を行なうときにはメカニカルブレーキ23を解除し、その代わりに油圧を利用してブレーキ力を発生して上部旋回体3にブレーキをかけて停止した状態にする。油圧によるブレーキ力を発生させるための油圧機器として、本実施形態では、例えば油圧ポンプが用いられる。
【0032】
図4は油圧によるブレーキ力を発生させるための旋回ブレーキ用油圧モータを有する旋回駆動系の構成を示すブロック図である。図4において、図2に示す構成部品と同等の部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0033】
本実施形態では、旋回用電動機21の出力軸に旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸が機械的に連結される。旋回ブレーキ用油圧モータ40は、ポート40aとポート40bとを有する油圧ポンプである。旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸が一方向に回転駆動されると、ポート40aが吸入ポートとなりポート40bが吐出ポートとなって、作動油をポート40aからポート40bの方向に流そうとする。旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸が反対方向に回転駆動されると、ポート40bが吸入ポートとなりポート40aが吐出ポートとなって、作動油をポート40bからポート40aの方向に流そうとする。
【0034】
ここで、ポート40aとポート40bを閉鎖して作動油が流れないようにしておくと、旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸は回転することができない。旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸は旋回用電動機21の出力軸に機械的に連結されているので、旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸が回転できなくなると、旋回用電動機21の出力軸も回転できなくなり、上部旋回体3も旋回できなくなる。したがて、旋回ブレーキ用油圧モータ40のポート40aとポート40bを閉鎖して作動油が流れないようにすることで、上部旋回体3にブレーキがかけられた状態となり、上部旋回体3を停止状態に維持することができる。
【0035】
旋回ブレーキ用油圧モータ40には油圧回路50が接続されており、油圧回路50により作動油の流れが制御される。油圧回路50は切換弁60を有している。切換弁60は、旋回ブレーキ用油圧モータ40のポート40aに繋がる油路50aとポート40bに繋がる油路50bとを接続した状態と、油路50aと油路50bとを遮断した状態のいずれかに切換える弁である。切換弁60の動作は、コントローラ30からの切換信号により制御される。図4には、切換弁60により油路50aと油路50bとを遮断した状態が示されている。油路50aと油路50bとを遮断することは、旋回ブレーキ用油圧モータ40のポート40aとポート40bを閉鎖することに相当する。したがって、切換弁60により油路50aと油路50bとを遮断することで、上部旋回体3にブレーキをかけて停止状態に保持することができる。
【0036】
一方、切換弁60により油路50aと油路50bとを接続した状態にすると、油路50aから旋回ブレーキ用油圧モータ40のポート40aに流れた作動油は、旋回ブレーキ用油圧モータ40に吸い込まれ、ポート40bから吐出される。ポート40bから吐出された作動油は油路50bを流れて再び切換弁60に戻り、油路50aを流れて旋回ブレーキ用油圧モータ40のポート40aに吸い込まれる。このように、切換弁60により油路50aと油路50bとを接続して閉回路を形成することで、旋回ブレーキ用油圧モータ40を空回りさせた状態で駆動することができる。この状態では、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキが解除された状態であり、上部旋回体3を旋回駆動することができる。すなわち、上部旋回体3を旋回させるときには、切換弁60を作動して、油路50aと油路50bとを接続した状態にする。
【0037】
油圧回路50は、リリーフ弁52A,52B及び逆止弁54A,54Bを有する。リリーフ弁52A,52B及び逆止弁54A,54Bは、油路50a及び油路50b内の油圧が高くなり過ぎないように、油圧を逃がすために設けられる。例えば、上部旋回体3に作用する外力(旋回力)が非常に大きくなり、油路50b内の油圧が過度に上昇してリリーフ弁52Bのリリーフ圧を超えると、高圧の作動油はリリーフ弁52Bから流れ出て、逆止弁54Aを通り、油路50aに流れる。これにより、油路50b内の油圧は低下し、リリーフ弁52Bのリリーフ圧以下に保たれる。油路50a内の油圧が過度に上昇した場合も、同様に、リリーフ弁52Aのリリーフ圧以下に保たれる。このため、旋回駆動系を構成する部品の損傷を防止することができる。
【0038】
次に、上部旋回体3の旋回を停止しながら作業を行なう場合の制御について説明する。図5は上部旋回体3の旋回を停止しながら作業を行なう場合の制御処理のフローチャートである。
【0039】
まず、ステップS1において、全ての操作レバー(操作手段)が操作されていない状態であるか否かが判定される。全ての操作レバー(操作手段)が操作されていない状態では無いと判定されると(ステップS1のNO)、処理はステップS4へ進む(。一方、全ての操作レバー(操作手段)が操作されていない状態であると判定されると(ステップS1のYES)、処理はステップS2に進み、所定の時間(例えば、5秒間)が経過したか否かが判定される。掘削作業や地ならし作業等の作業中は、ステップS1からステップS4へと進む。
【0040】
ステップS2において所定の時間(例えば、5秒間)が経過していないと判定されると、処理はステップS1に戻る。一方、ステップS2において所定の時間(例えば、5秒間)が経過したと判定されると、処理はステップS3に進み、メカニカルブレーキ23(駐車ブレーキ)がONとされる。すなわち、上部旋回体3を旋回操作するための操作レバーが所定の時間(例えば、5秒間)操作されないと、上部旋回体3を停止させておくものと判断し、メカニカルブレーキ23を作動させてブレーキをかけ、上部旋回体3をその位置に固定する。
【0041】
続いて、ステップS4において、上部旋回体3を旋回操作するための操作レバー以外の操作レバーが操作されたか否かが判定される。上部旋回体3を旋回操作するための操作レバー以外の操作レバーが操作されていない場合(ステップS4のNO)、今回の処理は終了される。上部旋回体3を旋回操作するための操作レバー以外の操作レバーが操作されていないということは、上部旋回体3を停止した状態で、他の作業要素も操作されていないということであり、ショベルは何の作業も行なっていないと判断できる。したがって、メカニカルブレーキ23によりブレーキをかけた状態が維持される。
【0042】
一方、上部旋回体3を旋回操作するための操作レバー以外の操作レバーが操作された場合(ステップS4のYES)、処理はステップS5に進み、切換弁6を作動して油路50aと油路50bを遮断した状態とする(図4に示す状態)。すなわち、上部旋回体3が停止している状態で、上部旋回体3の旋回操作以外の操作が行なわれた場合、上部旋回体3を停止しながらバケット6等による作業を行なっていると判断し、旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸が回転できないようにして上部旋回体3にブレーキをかける。油路50aと油路50bを遮断した状態とすることにより作動油の流れが止められ、旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸は回転できなくなるため、旋回用電動機21の回転が阻止され、上部旋回体3の旋回も阻止される。
【0043】
旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキがかけられた後で、ステップS6においてメカニカルブレーキ(駐車ブレーキ)23の作動が解除される。すなわち、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキがかけられたので、メカニカルブレーキ23によるブレーキを解除しても上部旋回体3を停止させておくことができる。このため、メカニカルブレーキ23の摩擦部品(例えば、ブレーキライニング等)の摩耗が抑制され、メカニカルブレーキ23の摩擦部品が早期に磨耗することが防止される。これにより、メカニカルブレーキ23の耐用年数を延ばすことができる。そして、ステップS6でメカニカルブレーキが解除された後は、再度、ステップS1から処理が開始される。
【0044】
次に、第2実施形態について説明する。図6は、本発明の第2実施形態による旋回ブレーキ用油圧モータを有する旋回駆動系の構成を示すブロック図である。図6において、図4に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0045】
図6に示すように、本実施形態では、油圧回路50は切換弁60を有していない。したがって、図7に示す油圧回路50では、旋回ブレーキ用油圧モータ40のポート40aとポート40bから作動油を吐出することができず、常に閉鎖状態となっている。すなわち、旋回ブレーキ用油圧モータ40は常にブレーキをかけた状態となっており、このままでは、上部旋回体3を旋回駆動することができない。そこで、本実施形態では、切換弁60の代わりに、旋回ブレーキ用油圧モータ40と旋回用電動機21との間に断続機70が設けられている。
【0046】
断続機70は、例えばクラッチのように、二つの部材を互いに係合させて回転力を伝達する状態と、二つの部材の係合を解除して回転力を伝達できない状態にする。すなわち、断続機70は、コントローラ30からの信号により、旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸と旋回用電動機21の出力軸とを連結した状態と、切り離した状態にすることができる。したがって、旋回ブレーキ用油圧モータ40でブレーキをかけるときには、旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸と旋回用電動機21の出力軸とを断続機70により連結した状態とする。一方、旋回用電動機21を駆動して上部旋回体3を旋回駆動するときには、旋回ブレーキ用油圧モータ40の駆動軸と旋回用電動機21の出力軸とを断続機70により切り離した状態とする。
【0047】
以上のように、本実施形態では、旋回ブレーキ用油圧モータ40を常にブレーキをかけた状態としておき、旋回ブレーキ用油圧モータ40によるブレーキが不要のときは、旋回ブレーキ用油圧モータ40を旋回用電動機21から切り離すことで対応している。
【0048】
上述の第1及び第2実施形態では、旋回ブレーキ用油圧モータ40を旋回用電動機21に連結することで、旋回用電動機21にブレーキをかけ、結果として上部旋回体3にブレーキをかけているが、旋回ブレーキ用油圧モータ40を上部旋回体3又は旋回機構2に直接連結してもよい。
【0049】
上述の実施形態では、エンジン11と電動発電機12とを油圧ポンプであるメインポンプ14に接続してメインポンプを駆動する、いわゆるパラレル型のハイブリッド式ショベルに本発明を適用した例について説明した。本発明は、図7に示すようにエンジン11で電動発電機12を駆動し、電動発電機12が生成した電力を蓄電系120に蓄積してから蓄積した電力のみによりメインポンプ14を駆動する、いわゆるシリーズ型のハイブリッド式ショベルにも適用することもできる。この場合、電動発電機12は、エンジン11によって駆動されることによる発電運転のみを行なう発電機としての機能を備えている。蓄電系120に蓄えられた電力は、インバータ18Bを介して、メインポンプ14を駆動する電動機400に供給される。電力が供給されると電動機400が駆動され、これによりメインポンプ14が駆動される。
【0050】
また、エンジンが搭載されずに電動機のみで油圧ポンプを駆動する電気式ショベルにも本発明を適用することができる。図8は電気式ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。電動機として機能する電動発電機12はメインポンプ14に接続され、メインポンプ14は電動発電機12のみにより駆動される。蓄電系120には、コンバータ410を介して外部電源500が接続され、蓄電系120の蓄電部(キャパシタ19)には、外部電源500から電力が供給されて、キャパシタ19は充電される。
【0051】
本発明は具体的に開示された上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変形例及び改良例がなされるであろう。
【0052】
本出願は、2011年3月30日出願の優先権主張日本国特許出願第2011−076254号に基づくものであり、その全内容は本出願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は電動機を用いて旋回体を電動駆動するショベルに適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 下部走行体
1A,1B 油圧モータ
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ
7A 油圧配管
7B ブーム角度センサ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10 キャビン
11 エンジン
12 電動発電機
13 変速機
14 メインポンプ
15 パイロットポンプ
16 高圧油圧ライン
17 コントロールバルブ
18A,18B,20 インバータ
19 キャパシタ
21 旋回用電動機
22 レゾルバ
23 メカニカルブレーキ
24 旋回変速機
25 パイロットライン
26 操作装置
26A,26B レバー
26C ペダル
26D ボタンスイッチ
27 油圧ライン
28 油圧ライン
29 圧力センサ
30 コントローラ
35 表示装置
40 旋回ブレーキ用油圧モータ
40a,40b ポート
50 油圧回路
50a,50b 油路
52A,52B リリーフ弁
54A,54B 逆止弁
60 切換弁
70 断続機
100 昇降圧コンバータ
110 DCバス
111 DCバス電圧検出部
112 キャパシタ電圧検出部
113 キャパシタ電流検出部
120 蓄電系
400 電動機
410 コンバータ
500 外部電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8