(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のポリシクロペンタジエン化合物と、式IIのポリシクロペンタジエン化合物のエポキシド基と反応性である1個または複数個の水素原子を含む水素含有化合物とから調製される付加物であって、ここで、前記水素含有化合物が、ジフェノール、ポリフェノール、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、ジメルカプタン、ポリメルカプタン、ジアミン、ポリアミン、一級モノアミン、スルホンアミド、アミノフェノール、アミノカルボン酸、フェノール性ヒドロキシル含有カルボン酸、スルファニルアミド、単官能性リン化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、付加物。
前記水素含有化合物が、ジメルカプタン化合物、ポリメルカプタン化合物、ジアミン化合物、ポリアミン化合物、アミン化合物、一級モノアミン化合物、スルホンアミド化合物、アミノフェノール化合物、アミノカルボン酸化合物、フェノール性ヒドロキシル含有カルボン酸化合物、スルファニルアミド化合物、アンモニア化合物、単官能性リン化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の付加物。
前記式Iのポリシクロペンタジエン化合物のオリゴマーと、1個または複数個の反応性水素原子が前記式IIのポリシクロペンタジエン化合物のエポキシド基と反応性である前記水素含有化合物とからさらに調製される、請求項4又は5に記載の付加物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、硬化性組成物においてエポキシド樹脂としておよび/または付加物として有用であり得るポリシクロペンタジエン化合物を提供する。本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、硬化性組成物において用いられるとき、高レベルの官能価を付与することができる。本開示のポリシクロペンタジエン化合物および/または付加物によって形成される硬化性組成物はまた、向上したガラス転移温度(Tg)を有する硬化組成物を提供することもできる。加えて、本開示のポリシクロペンタジエン化合物および/または付加物は、硬化組成物の耐湿性および耐食性の両方の改善、ならびに電気特性、特に散逸係数の強化も提供することが予想される。
【0010】
本明細書において用いられるとき、「1つの(a)」「1つの(an)」「該(the)」「少なくとも1つの(at least one)」および「1つまたは複数の(one or more)」は、互換的に用いられる。用語「含む(include)」および「含む(comprise)」ならびにこれらの変形は、これらの用語が明細書および特許請求の範囲において見られる場合、限定的な意味を有さない。
【0011】
用語「および/または」は、列挙した項目の1つ、1つもしくは複数、または全てを意味する。
【0012】
終点による数値範囲の列挙は、該範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0013】
別途記述されない限り、材料、化合物、または成分についての言及は、材料、化合物、または成分自体、ならびに他の材料、化合物、または成分との組み合わせ、例えば化合物の混合物および組み合わせを含む。
【0014】
本明細書において用いられるとき、用語「付加物」は、2種以上の異なる分子の直接付加による生成物を意味し、結果として単一の反応生成物を生ずる。得られる反応生成物または付加物は、反応体と異なる分子種と考えられる。
【0015】
用語「熱硬化性」は、本明細書において用いられるとき、加熱されたときに不可逆的に固化するまたは「固まる」ことができるポリマーを称する。
【0016】
用語「硬化性(curable)」「硬化(cured)」「熱硬化可能な(thermosettable)」および「熱硬化性(thermoset)」は、全体を通して同義語として用いられ、組成物が硬化したまたは熱硬化性の状況または状態にされる条件に付され得ることを意味する。用語「硬化(cured)」または「熱硬化性(thermoset)」は、L.R.WhittingtonによってWhittington's Dictionary of Plastics (1968)の239頁に以下のように定義されている:「完成品としての最終状態において実質的に不溶融性および不溶性である樹脂またはプラスチック化合物。熱硬化性(thermosetting)樹脂は、その製造または加工におけるある段階においては液体であることが多く、熱、触媒作用または他のある化学的手段によって硬化される。熱硬化性樹脂は、完全に硬化された後、熱によって再軟化され得ない。通常は熱可塑性であるいくつかのプラスチックは、他の材料との架橋によって熱硬化性(thermosetting)となり得る。」
【0017】
用語「Bステージ」は、本明細書において用いられるとき、生成物がアルコールまたはケトンなどの溶媒に完全ないし部分的な溶解性を有するようにAステージを超えて熱的に反応した熱硬化性樹脂を称する。
【0018】
用語「アルキル基」は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどを含めた、飽和の、直鎖状または分岐状の一価炭化水素基を意味する。
【0019】
用語「アルコキシ基」は、少なくとも1個の炭化水素アルキル基が酸素に結合している基を称する。例えば、式−O−Rまたは−O−R−O−R:式中、Rは炭化水素アルキル基である;によって表される基が、アルコキシ基である。
【0020】
用語「アルケニル基」は、1個または複数個のオレフィン性不飽和基(すなわち、炭素−炭素二重結合)、例えばビニル基を有する不飽和の、直鎖状または分岐状の一価炭化水素基を意味する。
【0021】
用語「アルケニルオキシ基」は、少なくとも1個の炭化水素アルケニル基が酸素に結合している基を称する。
【0022】
以下の詳細な説明において、本開示の具体的な実施形態を、好ましい実施形態と関連して記載する。しかし、以下の説明が本技術の特定の実施形態または特定の使用に特異的である限りにおいて、説明目的のみであることが意図され、および例示的な実施形態の簡潔な説明を提供するのみである。したがって、本開示は、本明細書に記載されている具体的な実施形態に限定されず、むしろ本開示は、添付の特許請求の範囲の真の範囲内にある全ての変更、変形および等価物を含む。
【0023】
種々の実施形態では、本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、式Iの構造を有し:
【化6】
式中、Xは、式IIの構造であり:
【化7】
式中、各R
1は、独立して、水素またはメチル基であり、nは、0〜20の平均値を有し;各mは、0〜3の値を独立して有し;各pは、0〜20の値を有し;各Rは、独立して、ハロゲン、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、またはアルケニルオキシ基であり、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、およびアルケニルオキシ基は、1〜約6個の炭素原子をそれぞれ独立して含有し、各Qは、独立して、水素、または1〜約6個の炭素原子を含有するアルキル基である。
【0024】
種々の実施形態では、本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、式IIIの構造によっても表され:
【化8】
式中、X、n、m、およびRは、本明細書において提示されている通りであり、各Qは、独立して、水素、1〜約6個の炭素原子を含有するアルキル基、または式IVの構造である:
【化9】
【0025】
種々の実施形態では、ポリシクロペンタジエン化合物のハロゲンは、フッ素、塩素、臭素およびこれらの組み合わせからなる群から好ましくは選択される。種々の実施形態ではまた、nが0〜約8の平均値を有してもよいことも提供する。好ましくは、pは0〜5の値を有し、より好ましくは、pは0〜1の値を有する。種々の実施形態では、アルキル基および/またはアルコキシ基は、好ましくは1〜約4個の炭素原子、より好ましくは1〜約2個の炭素原子を含有し得る。種々の実施形態では、アルケニル基およびアルケニルオキシ基は、1〜約3個の炭素原子を好ましくは含有する。種々の実施形態では、Qは、アルキル基であるときには1〜約4個の炭素原子を好ましくは含有し、より好ましくは、1〜約2個の炭素原子を含有する。好ましくは、アルキル基および/またはアルコキシ基は、ハロゲン原子によって置換されている。種々の実施形態では、アルキル基およびアルコキシ基、またはこれらのいずれかにおけるハロゲン原子は、塩素、臭素およびこれらの組み合わせからなる群からそれぞれ独立して選択される。
【0026】
種々の実施形態では、mが0以外の値を有するとき、Qに結合した炭素
【化10】
は、−OX基に対して好ましくはオルト位および/またはパラ位にある。−OX基に対してオルト位およびパラ位の両方に、Qに結合した炭素を有する化合物の混合物が可能であることが認識される。−OX基に対してメタ位にQに結合した炭素
【化11】
を有することも可能である。
【0027】
ポリシクロペンタジエンポリフェノールの調製
種々の実施形態では、ポリシクロペンタジエンポリフェノールは、本開示のポリシクロペンタジエン化合物を調製する際に用いられ得る。種々の実施形態では、ポリシクロペンタジエンポリフェノールは、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドおよび/またはポリシクロペンタジエンジケトンから生成され得る。種々の実施形態では、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドは、例えば、G.LongoniらによってJ.of Molecular Catalysis 68、7-21 (1991)に、またはより一般にはKirk-Othmerにおいて、ENCYCLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGY、Fifth Edition、Vol.10、347-470頁(2010)に記載されている方法を用いて、合成ガス、ホスフィン配位子、および遷移金属(第3〜10族)触媒を用いて、ポリシクロペンタジエン、特に、ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化を介して生成され得る。このプロセスには、極性/非極性混合溶媒を用いることで触媒の再利用および生成物の分離の問題を軽減する方法(米国特許第6307108B1号)を含めた種々の変形例が存在する。得られるポリシクロペンタジエンジアルデヒドは、次いでフェノールと縮合して、ポリシクロペンタジエンポリフェノールを形成することができる。ポリシクロペンタジエンは、Kirk-Othmerによって、ENCYCLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGY、Fifth Edition、Vol.8、223頁(2010)に開示されているように、100℃を超える温度にシクロペンタジエンを加熱することによって調製され得る。上記参照文献の全ては、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
種々の実施形態では、ヒドロホルミル化は、1〜250気圧(atm)および20℃〜250℃の温度で起こり得る。種々の実施形態では、合成ガスは、種々の量の一酸化炭素(CO)、水素(H
2)および必要に応じて不活性ガスを含有し得る。該反応はまた、200〜350atmの高い合成ガス圧であっても、米国特許第7,321,068号に開示されている配位子を有さないロジウム触媒を用いて行うこともできる。好適な配位子の例として、一酸化炭素配位子、および一般式PR
1R
2R
3:式中、各R
1、R
2、およびR
3は、置換または非置換アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、ハロゲン化物、またはこれらの組み合わせである;を有する有機ホスフィン配位子が挙げられる。具体例として、限定されないが、n−ブチルジフェニルホスフィンが挙げられる。好適な触媒の例として、限定されないが、Rh(CO)
2(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0029】
ヒドロホルミル化の間に、部分または全飽和ポリシクロペンタジエンモノアルデヒドの全反応生成物のうち少量、典型的には5〜25重量(wt.)パーセント(%)以下が、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドと併せて生成されてもよい。飽和シクロペンタン環を有するこれらの飽和ポリシクロペンタジエンモノアルデヒドの例は、以下の式Vによって表され、式中、nは、本明細書に記載されている通りである:
【化12】
【0030】
ポリシクロペンタジエンモノアルデヒドは、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドから部分的または全体的に分離され得る。例えば、蒸留プロセスは、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドからポリシクロペンタジエンモノアルデヒドを分離するのに用いられ得る。
【0031】
さらなる実施形態において、種々の重量%の、飽和シクロペンタン環を有するポリシクロペンタジエンモノアルデヒドはまた、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドと混合され得る。ポリシクロペンタジエンモノアルデヒドとポリシクロペンタジエンジアルデヒドとの混合物を用いることで、得られる硬化性組成物の官能価のレベルの制御を可能にし得る。例えば、ノボラック化学は、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドからポリシクロペンタジエンポリフェノールを形成するのに用いられ得る一方で、ノボラック化学は、ポリシクロペンタジエンモノアルデヒドからポリシクロペンタジエンジフェノールを形成するのにも用いられ得る。飽和シクロペンタン環を有するポリシクロペンタジエンジフェノールの例は、以下の式VIによって表される:
【化13】
式中、n、m、RおよびQは、本明細書に記載されている通りである。ポリシクロペンタジエンジフェノール中にオリゴマーが存在していてもよい。したがって、ポリシクロペンタジエンジフェノールとポリフェノールとの混合物が、本開示のさらなる実施形態として生成されてよい。そのため、ポリシクロペンタジエンポリフェノールに関与する使用および反応に関する議論は、ポリシクロペンタジエンジフェノール、およびポリシクロペンタジエンポリフェノールとジフェノールとの混合物にも適用されることが認識される。
【0032】
種々の実施形態では、本開示において有用なポリシクロペンタジエンジケトンは、多段階合成、例えばTetrahedron Letters、28、769(1987);Tetrahedron Letters、27、3033(1986); Tetrahedron Letters、27、933(1986);Journal of the American Chemical Society、107、7179(1985); およびJournal of the Chemical Society: Chemical Communications、1040(1983)に示されている化学を経て生成され得る。ここで言及されている参照文献の全ては、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
ヒドロホルミル化は、Longoniによって記載されているように、少量の異性体ケトンも生成し得る。これらのケトンは、H
2/CO圧が低い(約1atm)とき、主要生成物であり得る。これらのケトンは、生成物混合体中に存在する場合、フェノールと縮合されて式VIIのポリフェノール:式中、n、m、およびRは、本明細書に記載されている通りである;を形成し得る。
【化14】
【0034】
本明細書において付与されているように、ポリシクロペンタジエンモノアルデヒド、ジアルデヒド、およびケトンの混合物を用いることで、所与の硬化性組成物中の官能価のレベルに対する制御を可能にし得る。そして、例えば、本開示の硬化性組成物の架橋密度は、該組成物において用いられるポリシクロペンタジエンポリフェノールおよびポリシクロペンタジエンジフェノールの相対量を基準にして調整(例えば、低減または増大)され得る。このように官能価のレベルを調整することで、硬化組成物の特性、例えばガラス転移温度(Tg)を所望のレベルに合わせること、および/または硬化組成物の他の特性(例えば、靱性)との均衡を保つことを可能にし得る。
【0035】
さらに、本開示のポリシクロペンタジエンジアルデヒド中のジシクロペンタジエン部位および/またはポリシクロペンタジエン部位の量を制御することが可能であり得る。ジシクロペンタジエンおよび/またはポリシクロペンタジエンは、シクロペンタジエンを用いたディールス−アルダー化学を経て形成され得、ここで、本明細書において議論されているように、式Iのnについての平均値は0〜20であり得る。そして、例えば、本開示のポリシクロペンタジエンジアルデヒド中のポリシクロペンタジエン部位は、オリゴマーである場合には平均で2〜5のn値の分布を有し得る。他の実施形態では、nは、0または1の値を有し得る。ポリシクロペンタジエンジアルデヒド中のジシクロペンタジエン部位および/またはポリシクロペンタジエン部位を制御する能力は、硬化組成物の潜在的な耐湿特性を保持またはさらには増大させつつ、硬化性組成物の架橋密度を制御および/または適合させる能力も可能にし得る。
【0036】
ポリシクロペンタジエンモノアルデヒドおよびケトンのいずれかと併せて得られるポリシクロペンタジエンジアルデヒドは、次いでノボラック反応を受けて、本開示に関するポリシクロペンタジエンポリフェノールおよび/またはジフェノールを形成することができる。種々の実施形態では、ノボラック反応は、フェノールおよび酸触媒の使用を伴う。例えば、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドおよび溶融フェノールは、窒素雰囲気下および酸触媒の存在下に撹拌により65℃〜70℃の温度で反応し得る。いずれかのポリシクロペンタジエンモノアルデヒドと併せて得られるポリシクロペンタジエンジアルデヒドは、次いでノボラック反応を受けて、本開示に関するポリシクロペンタジエンポリフェノールおよび/またはジフェノールを形成することができる。ノボラック調製の一般的な説明は、Kirk-Othmerにおける、ENCYCLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGY、2010、Peter W.Kopfによる「フェノール性樹脂」章において見出され得る。
【0037】
種々の実施形態では、本開示に関するポリシクロペンタジエンポリフェノールは、ポリシクロペンタジエンジアルデヒド(およびあらゆるポリシクロペンタジエンモノアルデヒド)対フェノールならびに/または、例えば、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、1−ナフトール、および2−ナフトールを含めた置換フェノールのモル比が1:20〜1:6、好ましくは1:15〜1:8の縮合反応を介して;使用されるフェノールまたは置換フェノール化合物の量を基準にして好ましくは0.1〜2、より好ましくは0.1〜1重量%である酸触媒の存在下にて調製される。1:20より高い、フェノールまたは置換フェノールのモル比が使用されてもよいが、そうすることで、過剰のフェノールまたは置換フェノールを回収および再利用するためのさらなるエネルギー、したがって費用が必要となることがある。
【0038】
大過剰のフェノールおよび/または置換フェノールを使用する縮合反応は、低い多分散性および重量平均分子量を有するポリシクロペンタジエンポリフェノールに有利であることが見出されている。同様に、フェノールおよび/または置換フェノールの量が低下するに従い、ポリシクロペンタジエンポリフェノールのオリゴマーが増加し得、重量平均分子量を増加させる。オリゴマー含量の増加は、ある一定の最終用途には高度に有益であり得る、1分子あたりのより高いヒドロキシル官能価に有利であり、例えば、より高い粘度を犠牲にしてTgを増加させる。このように、非常に大過剰のフェノールおよび/または置換フェノールが用いられ得る一方で、本開示は、一実施形態において、先に付与されたモル比を使用して、ポリシクロペンタジエンポリフェノールが豊富でオリゴマーが少ない生成物を生成する。
【0039】
種々の実施形態では、本開示のポリシクロペンタジエンポリフェノールを形成する縮合反応はまた、溶媒の使用を場合により含んでもよい。これらの実施形態では、溶媒は、反応体および形成される反応生成物に対して実質的に不活性であり得る。好適な溶媒の例として、限定されないが、トルエンまたはキシレンが挙げられる。溶媒は、縮合反応からの水の共沸除去のための因子としてさらに機能し得る。より高い溶融粘度を有するある一定のフェノール性反応体については、1種または複数の溶媒の使用が、好適な反応媒体を維持するために有益である場合がある。
【0040】
好適な酸触媒として、プロトン酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸;金属酸化物、例えば、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム;有機酸、例えば、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸およびこれらの組み合わせが挙げられる。種々の実施形態では、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸が、好ましい酸触媒または共触媒である。驚くべきことに、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸は、ポリシクロペンタジエンポリフェノールを形成するにおいて非常に高度に活性かつ選択性であるため、反応生成物から水を共沸除去する必要性がないことが見出された。それどころか、該水は、ノボラック反応をクエンチすることなく、反応器内に残存する。
【0041】
反応温度および時間は変動するが、約5分〜約48時間であり得、約20℃〜約175℃の反応温度が使用され得る。好ましくは、反応温度および時間は、15分〜36時間および30℃〜約125℃の反応温度であり得る。最も好ましくは、反応温度および時間は、30分〜24時間および35℃〜約75℃の反応温度であり得る。
【0042】
反応の終わりに、酸性触媒は、例えば、中和によって、および/または水での洗浄もしくは抽出などによって除去されてよい。同様に、反応の終わりに、過剰のフェノールが、例えば蒸留または抽出によってノボラック生成物から除去されてよい。
【0043】
種々の実施形態では、本開示のポリシクロペンタジエンポリフェノールは、1〜5、より好ましくは1.2〜2.5の多分散性指標を有し得、最も好ましくは、1.2〜1.8である。例えば、ポリシクロペンタジエンポリフェノールの多分散性指数(所与のサンプルにおける分子量の分布の測定)は、1.3〜1.4であり得る。これらの種の結果は、本開示に関するポリシクロペンタジエンポリフェノールのそれぞれのn値およびp値の両方が、非常に均一であることを示している。この結果は、驚くべきことである、なぜなら、ノボラック反応は、多くの場合、はるかに大きな多分散性(例えば、2〜5)を有する生成物を生成するからである。本開示に関するポリシクロペンタジエンポリフェノールについて均一な鎖長を有することで、本開示の硬化性組成物の粘度においてより望ましい粘度予測性を可能にする。
【0044】
本開示のポリシクロペンタジエンポリフェノールのある一定のものについての多分散性値は、Mwの実質的な増大を伴わず官能価のレベルが増大することを示している。高い官能価および結果としての高い架橋密度は、非常に望ましい高いTgを提供し得る。
【0045】
種々の実施形態では、ポリシクロペンタジエンジアルデヒドから開始することで、化合物のMwの大幅な増大を伴わずに、得られるポリシクロペンタジエンポリフェノールにおいて達成される官能価のレベルを高くすることを可能にする。これは、高いレベルの官能価を有するポリフェノールを形成するためのこれまでの試みには当てはまらない。例えば、本開示の実施形態は、ヒドロキシル当量あたり約133gという低いヒドロキシル当量で約4の官能価を付与する。本開示の実施形態はまた、硬化性組成物の分子量および粘度の大幅な増大を伴わずに達成される官能価のレベルにおいて測定可能な進歩を可能にすることもできる。
【0046】
種々の実施形態では、本開示の化合物を調製するのに使用され得る好適なポリシクロペンタジエンポリフェノールとして、以下の式VIIIの化合物によって表されるものが挙げられる:
【化15】
式中、R、m、Q、n、およびpは、本明細書に記載されている通りである。本明細書において議論されているように、ポリシクロペンタジエンジフェノールおよび/またはオリゴマーはまた、ポリシクロペンタジエンポリフェノールと共に存在していてもよい。
【0047】
ポリシクロペンタジエン化合物の調製
種々の実施形態では、ポリシクロペンタジエンポリフェノール、ポリシクロペンタジエンジフェノールおよび/またはそのオリゴマーは、エピハロヒドリンとの反応を通して本開示のポリシクロペンタジエン化合物に形成され得る。種々の実施形態では、該反応は、好適な塩基性作用物質の存在下、触媒の存在または非存在下および溶媒の存在または非存在下にて起こり得る。
【0048】
種々の実施形態では、該反応は、好ましくは約20℃〜約120℃の温度において、より好ましくは約30℃〜約85℃の温度において、最も好ましくは約40℃〜約75℃の温度において起こる。種々の実施形態では、該反応はまた、好ましくは約30mmHg真空〜約690KPaの圧力において、より好ましくは約30mmHg真空〜約345KPaの圧力において、最も好ましくは約60mmHg真空〜約101KPa(約1気圧)の圧力において起こる。種々の実施形態では、該反応は、反応を完了させるのに十分な時間、好ましくは約1〜約120時間、より好ましくは約3〜約72時間、最も好ましくは約4〜約48時間で起こり得る。
【0049】
種々の実施形態では、該反応はまた、フェノール性ヒドロキシ基あたり約1.1:1〜25:1、好ましくは約1.8:1〜約10:1、最も好ましくは約2:1〜約5:1モルのエピハロヒドリンを用いる。この初期反応は、触媒が、化学量論以上の量で使用されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物でない限り、ハロヒドリン中間体を生成し、次いで塩基性作用物質と反応して隣接するハロヒドリン基をエポキシド基に変換する。得られる生成物はグリシジルエーテル化合物である。エポキシ樹脂の調製に関する詳細は、米国特許第5,736,620号;LeeおよびNevilleによるHandbook of Epoxy Resins、McGraw-Hill(1967);Journal of Applied Polymer Science、volume 23、1355〜1372頁(1972);ならびに米国特許第4,623,701号に示されており;これらの全ては、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
種々の実施形態では、本開示の組成物を調製するのに使用され得る好適なエピハロヒドリンとして、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、メチルエピクロロヒドリン、メチルエピブロモヒドリン、メチルエピヨードヒドリンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。エピハロヒドリンとして最も好ましいのはエピクロロヒドリンである。
【0051】
好適な塩基性作用物質は、本開示のポリシクロペンタジエン化合物を調製するのに使用される。好適な塩基性作用物質として、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩および重炭酸塩、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。特に好適な化合物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化マンガン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸リチウム、重炭酸カルシウム、重炭酸バリウム、重炭酸マンガンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。最も好ましくは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。ポリシクロペンタジエンポリフェノールおよび/またはジフェノールとアルカリ金属水素化物との反応、その後のエピハロヒドリンとの反応を伴うプロセスについては、好適なアルカリ金属水素化物として、例えば、水素化ナトリウムおよび水素化カリウムが挙げられ、水素化ナトリウムが最も好ましい。
【0052】
種々の実施形態では、本開示のポリシクロペンタジエン化合物を調製するのに使用され得る好適な触媒として、例えば、アンモニウムまたはホスホニウムハロゲン化物、例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヨージド、エチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージドおよびこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0053】
種々の実施形態では、本開示のポリシクロペンタジエン化合物を調製するのに使用され得る好適な溶媒として、脂肪族および芳香族炭化水素、脂肪族二級アルコール、ハロゲン化脂肪族炭化水素、脂肪族エーテル、脂肪族ニトリル、環状エーテル、ケトン、アミド、スルホキシド、およびこれらの組み合わせが挙げられる。特に好適な溶媒として、ペンタン、ヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、Ν,Ν−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、エチレンジクロリド、メチルクロロホルム、エチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、イソプロパノール、イソブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびこれらの組み合わせが挙げられる。溶媒は、例えば、真空蒸留などの従来の手段を用いて反応の完了時に除去されてよい。本開示のポリシクロペンタジエン化合物を調製するための1つの可能性のあるプロセスは、溶媒の非存在下に行われ、ここで、反応で用いられるエピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリンは、溶媒および反応体の両方として機能する量で用いられる。
【0054】
分析方法、例えば、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)は、中間体生成物、例えばハロヒドリン、および本開示の最終ポリシクロペンタジエン化合物の形成と同時にポリシクロペンタジエンポリフェノールおよび/またはジフェノールの反応をモニタリングするのに使用されてよい。
【0055】
本開示のポリシクロペンタジエン化合物の回収および精製は、種々の方法を用いて実施され得る。例えば、重力濾過、真空濾過、遠心分離、水での洗浄または抽出、溶媒抽出、デカンテーション、カラムクロマトグラフィ、真空蒸留、流下膜式蒸留、静電合体、および他の処理方法などが用いられ得る。真空蒸留は、より軽い沸騰留分、例えば、未使用のエピハロヒドリンの最も好ましい除去および回収方法である。これにより、エピクロロヒドリンが回収されて再利用される。
【0056】
オリゴマーもまた、本開示のポリシクロペンタジエン化合物に存在し得る。オリゴマーは、ポリシクロペンタジエンポリフェノールおよび/もしくはジフェノール前駆体に存在するオリゴマー性成分のエポキシド化から、または一部のグリシジルエーテル部位のインサイチュアドバンスメント反応(advancement reaction)から典型的には生ずる。アドバンスメントは、エポキシ樹脂生成物中の2−ヒドロキシプロピルエーテル連結(式IXの構造)の形成を特徴とする:
【化16】
【0057】
本開示のポリシクロペンタジエン化合物、およびこれらと従来のエポキシ樹脂とのブレンドは、アドバンストエポキシ(advanced epoxy)樹脂(熱硬化可能な樹脂)ならびに/またはビニルエステルおよびビニルエステル樹脂を調製するのに用いられ得る。例えば、本開示の実施形態は、本開示のポリシクロペンタジエン化合物と、ビスまたはポリ(マレイミド);ジまたはポリシアネート;ジまたはポリシアナミド;エポキシ樹脂;ビニルベンジルエーテル、アリルおよびアリルオキシ化合物を含めた重合性モノ、ジ、またはポリ(エチレン性不飽和)モノマーならびにこれらの組み合わせとのブレンド、部分的に重合した(Bステージの)生成物、または硬化した(熱硬化性)生成物を含むことができる。
【0058】
本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、他の樹脂、例えば、限定されないが、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂(例えば、本明細書に提供されている)、およびこれらの組み合わせと共に配合されてもよい。さらなる実施形態において、本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、他の熱硬化可能なモノマーとのコモノマーとして使用されてもよい。
【0059】
種々の実施形態では、本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、(a)エポキシ樹脂硬化剤、(b)熱硬化性ポリウレタン、ポリウレアウレタン、およびポリイソシアヌレートのための反応体、ならびに(c)ポリウレタン、ポリウレアウレタン、ポリイソシアヌレートの調製において有用なポリオールのための開始剤として有用な付加物を形成する際に用いられてもよい。
【0060】
本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、とりわけ、構造または電気積層体および/または複合体、多層電子回路、集積回路パッケージング(例えば「IC基板」)、フィラメントワインディング、成形体、カプセル封入物、鋳物、宇宙航空適用のための複合体、ならびに接着剤における使用のための硬化組成物を調製する際に有用であり得る。加えて、本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、例えば、コーティング、例えば、機能的な粉体コーティングおよび他の保護コーティングにおいて有用な、高官能性エポキシ樹脂の硬化剤としての実用性を見出すことができ、ここで、高いガラス転移温度、耐溶媒性、耐摩耗性および/または靱性の必要性が有益であり得る。本開示の硬化組成物はまた、シート、フィルム、ファイバの形態で、または他の形状の物品で用いられてもよい。
【0061】
ポリシクロペンタジエン化合物の付加物
本開示の実施形態は、本開示のポリシクロペンタジエン化合物を用いて調製される付加物をさらに含む。種々の実施形態では、本開示のポリシクロペンタジエン化合物を含む付加物を調製することで、ポリシクロペンタジエニル構造の物理的および機械的特性の利点、ならびに高程度の官能価によって付与される物理的および機械的特性の利点が付加物内で組み合わされることを可能にする。これにより、付加物が(エポキシまたはポリウレタンタイプの両方を含めた)熱硬化性樹脂の形成において用いられるとき、向上したガラス転移温度、耐高温性、改善された耐湿性および耐食性、ならびに電気特性、特に散逸係数の強化が、ポリシクロペンタジエニル構造の結果として予想される。
【0062】
種々の実施形態では、本開示の付加物は、1種または複数の本開示のポリシクロペンタジエン化合物(例えば、式I、式IIIの化合物、およびこれらの組み合わせ)と、エポキシド基、例えば、本開示のポリシクロペンタジエン化合物に含有されるエポキシド基と反応性である、1分子あたり1個または複数個の水素原子を有する1種または複数の水素含有化合物との反応によって調製され得る。
【0063】
付加物について提案されている最終用途として、ビスフェノールA不含性適用、エポキシ樹脂系コーティング、特に、装飾的および機能的な粉末コーティング、ならびに耐候性、耐溶媒性、耐湿性、耐摩耗性、および靱性を備えた他の保護コーティングのための硬化剤;エポキシ樹脂系電気または構造積層体または複合体のための硬化剤;フィラメントワインディング;成形体;鋳物;カプセル封入物;多層電子回路、集積回路パッケージング(例えば「IC基板」);航空宇宙のための複合体;接着剤;ならびに他の硬化剤、または樹脂ブレンド、例えば、1種または複数のエポキシ樹脂とのポリマレイミドおよびポリシアネートブレンドを含む組成物におけるものが挙げられる。
【0064】
本開示の付加物についてのさらなる提案されている用途として、セル状(フォーム)であっても非セル状であってもよく、例えば、充填剤、顔料、染料、流動性改良剤、増粘剤、強化剤、離型剤、湿潤剤、安定剤、難燃剤、界面活性剤およびこれらの組み合わせを含めた添加剤をさらに含んでいてよい、熱硬化性ポリウレタンの調製が挙げられる。本開示の付加物を用いて調製される熱硬化性ポリウレタンは、他の構造の中でも、鋳物、成形体 コーティング、ストラクチュラルフォーム、軟質フォーム、硬質フォーム、および絶縁体の調製において有用であり得る。ポリイソシアヌレートフォームは、本開示の付加物を用いて調製され得る特有の分類の硬質フォームを表す。ポリイソシアヌレートフォームは、ポリイソシアネートおよび本開示の付加物の触媒的三量体化によって一般に調製される。
【0065】
本開示の付加物は、ポリウレタン、ポリウレアウレタン、および/またはポリイソシアヌレートを調製する際に有用であるポリオールのための開始剤として用いられてもよい。加えて、付加物は、反応して、次いでポリオール開始剤を調製するのに用いられ得る組成物を提供することができる。
【0066】
水素含有化合物
式Iおよび/または式IIIのポリシクロペンタジエン化合物と反応して付加物を形成するために本開示において用いられる水素含有化合物は、1分子あたり1個または複数個の反応性水素原子を含む。反応性水素原子は、エポキシド基、例えば、式Iおよび式IIIのポリシクロペンタジエン化合物に含有されるエポキシド基(式II)と反応性である。
【0067】
用語「反応性水素原子」は、本明細書において用いられるとき、水素原子がエポキシド基と反応性であることを意味する。反応性水素原子は、付加物を形成する反応においてエポキシド基と非反応性である水素原子を含めた他の水素原子とは異なるが、1種または複数のエポキシ樹脂と共に付加物を硬化させる後のプロセスにおいてエポキシド基と反応性であってよい。
【0068】
種々の実施形態では、水素原子は、付加物を形成するプロセスにおいてエポキシド基と非反応性であり得るが、付加物を硬化する後のプロセスにおいてエポキシド基と反応性であり得る。例えば、後のプロセスにおけるかかる反応は、付加物を形成する反応において用いられる反応条件と比較して、用いられる硬化反応条件下にエポキシド基とより反応性である他の官能基を有するエポキシ樹脂との反応であってよい。例えば、水素含有化合物は、それぞれが少なくとも1個の反応性水素原子を有する2種の異なる官能基を有してよく、一方の官能基が、用いられる反応条件下に、他方よりもエポキシド基と本質的により反応性である。これらの反応条件は、一方の官能基の反応性水素原子(複数可)とエポキシド基との反応の方が、他方の官能基の反応性水素原子(複数可)とエポキシド基との反応よりも有利である触媒の使用を含み得る。
【0069】
他の非反応性水素原子は、付加物を生成するプロセスにおけるエポキシド開環反応の間に形成される二級ヒドロキシル基(式IX)中の水素原子も含み得る。しかし、熱硬化可能なポリウレタン組成物の調製における使用では、二級ヒドロキシル基が反応性水素原子とみなされる。
【0070】
1分子あたり1個または複数個の反応性水素原子を含む水素含有化合物は、水素含有化合物内に脂肪族、脂環式または芳香族基をさらに含んでいてよい。脂肪族基は、分岐状であっても非分岐状であってもよい。脂肪族または脂環式基はまた、飽和であっても不飽和であってもよく、反応体および生成物を含む本開示の付加物を調製するプロセスに対して不活性である(反応性でない)1個または複数個の置換基を含んでよい。置換基は、置換基の化学構造に応じて、末端炭素原子に結合していても、2個の炭素原子の間にあってもよい。かかる不活性置換基の例として、ハロゲン原子、好ましくは塩素もしくは臭素、ニトリル、ニトロ、アルキルオキシ、ケト、エーテル(−O−)、チオエーテル(−S−)、または三級アミンが挙げられる。芳香族環は、水素含有化合物構造内に存在する場合には、1個または複数個のヘテロ原子、例えば、N、O、Sなどを含んでよい。
【0071】
水素含有化合物の例として、化合物、例えば、(a)ジおよびポリフェノール、(b)ジおよびポリカルボン酸、(c)ジおよびポリメルカプタン、(d)ジおよびポリアミン、(e)一級モノアミン、(f)スルホンアミド、(g)アミノフェノール、(h)アミノカルボン酸、(i)フェノール性ヒドロキシル含有カルボン酸、(j)スルファニルアミド、(k)単官能性リン化合物および(l)かかる化合物の2種以上の組み合わせなどが挙げられ得る。
【0072】
ジおよびポリフェノール(a)の例として、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール);1,3−ジヒドロキシベンゼン(レソルシノール);1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン);4,4’−イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA);4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン;3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールA;4,4’−チオジフェノール;4,4’−スルホニルジフェノール;2,2’−スルホニルジフェノール;4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシド;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン;1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン;3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA;3,3’−ジメトキシビスフェノールA;3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニル;4,4’−ジヒドロキシビフェニル;4,4’−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベン;4,4’−ジヒドロキシベンズアニリド;4,4’−ジヒドロキシスチルベン;4,4’−ジヒドロキシ−α−シアノスチルベン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,4−ジヒドロキシ−3,6−ジメチルベンゼン;1,4−ジヒドロキシ−3,6−ジメトキシベンゼン;1,4−ジヒドロキシ−2−tert−ブチルベンゼン;1,4−ジヒドロキシ−2−ブロモ−5−メチルベンゼン;1,3−ジヒドロキシ−4−ニトロフェノール;1,3−ジヒドロキシ−4−シアノフェノール;トリス(ヒドロキシフェニル)メタン;ジシクロペンタジエンまたはそのオリゴマー、およびフェノールまたは置換フェノール縮合生成物、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0073】
ジおよびポリカルボン酸(b)の例として、4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン;テレフタル酸;イソフタル酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸;1,6−ヘキサンジカルボン酸;1,4−ブタンジカルボン酸;ジシクロペンタジエンジカルボン酸;トリス(カルボキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)シクロヘキサン;3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジカルボキシジフェニル;4,4’−ジカルボキシ−α−メチルスチルベン;1,4−ビス(4−カルボキシフェニル)−trans−シクロヘキサン;1,1’−ビス(4−カルボキシフェニル)シクロヘキサン;1,3−ジカルボキシ−4−メチルベンゼン;1,3−ジカルボキシ−4−メトキシベンゼン;1,3−ジカルボキシ−4−ブロモベンゼンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0074】
ジおよびポリメルカプタン(c)の例として、1,3−ベンゼンジチオール;1,4−ベンゼンジチオール;4,4’−ジメルカプトジフェニルメタン;4,4’−ジメルカプトジフェニルオキシド;4,4’−ジメルカプト−α−メチルスチルベン;3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジメルカプトジフェニル;1,4−シクロヘキサンジチオール;1,6−ヘキサンジチオール;2,2’−ジメルカプトジエチルエーテル;1,2−ジメルカプトプロパン;ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド;トリス(メルカプトフェニル)メタン;1,1−ビス(4−メルカプトフェニル)シクロヘキサンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0075】
ジおよびポリアミン(d)の例として、1,2−ジアミノベンゼン;1,3−ジアミノベンゼン;1,4−ジアミノベンゼン;4,4’−ジアミノジフェニルメタン;4,4’−ジアミノジフェニルスルホン;2,2’−ジアミノジフェニルスルホン;4,4’−ジアミノジフェニルオキシド;3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニル;3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニル;4,4’−ジアミノ−α−メチルスチルベン;4,4’−ジアミノベンズアニリド;4,4’−ジアミノスチルベン;1,4−ビス(4−アミノフェニル)−trans−シクロヘキサン;1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン;トリス(アミノフェニル)メタン;1,4−シクロヘキサンジアミン;1,6−ヘキサンジアミン;ピペラジン;エチレンジアミン;ジエチルトリアミン;トリエチレンテトラミン;テトラエチレンペンタミン;1−(2−アミノエチル)ピペラジン;ビス(アミノプロピル)エーテル;ビス(アミノプロピル)スルフィド;ビス(アミノメチル)ノルボルナン、2,2’−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0076】
一級モノアミン(e)の例として、アニリン;4−クロロアニリン;4−メチルアニリン;4−メトキシアニリン;4−シアノアニリン;2,6−ジメチルアニリン;4−アミノジフェニルオキシド;4−アミノジフェニルメタン;4−アミノジフェニルスルフィド;4−アミノベンゾフェノン;4−アミノジフェニル;4−アミノスチルベン;4−アミノ−α−メチルスチルベン;メチルアミン;4−アミノ−4’−ニトロスチルベン;n−ヘキシルアミン;シクロヘキシルアミン;アミノノルボルナンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
アンモニアは、本開示の特有の分類の水素含有化合物を表す。アンモニアは、液化アンモニア(NH
3)および/または水酸化アンモニウム(NH
4OH)の形態で使用されてよい。
【0078】
スルホンアミド(f)の例として、フェニルスルホンアミド;4−メトキシフェニルスルホンアミド;4−クロロフェニルスルホンアミド;4−ブロモフェニルスルホンアミド;4−メチルスルホンアミド;4−シアノスルホンアミド;2,6−ジメチフェニルスルホンアミド;4−スルホンアミドジフェニルオキシド;4−スルホンアミドジフェニルメタン;4−スルホンアミドベンゾフェノン;4−スルホニルアミドジフェニル;4−スルホンアミドスチルベン;4−スルホンアミド−α−メチルスチルベンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0079】
アミノフェノール(g)の例として、o−アミノフェノール;m−アミノフェノール;p−アミノフェノール;2−メトキシ−4−ヒドロキシアニリン;3,5−ジメチル−4−ヒドロキシアニリン;3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシアニリン;2,6−ジブロモ−4−ヒドロキシアニリン;5−ブチル−4−ヒドロキシアニリン;3−フェニル−4−ヒドロキシアニリン;4−(1−(3−アミノフェニル)−1−メチルエチル)フェノール;4−(1−(4−アミノフェニル)エチル)フェノール;4−(4−アミノフェノキシ)フェノール;4−((4−アミノフェニル)チオ)フェノール;(4−アミノフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタノン;4−((4−アミノフェニル)スルホニル)フェノール;4−(1−(4−アミノ−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモフェノール;N−メチル−p−アミノフェノール;4−アミノ−4’−ヒドロキシ−α−メチルスチルベン;4−ヒドロキシ−4’−アミノ−α−メチルスチルベンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0080】
アミノカルボン酸(h)の例として、2−アミノ安息香酸;3−アミノ安息香酸;4−アミノ安息香酸;2−メトキシ−4−アミノ安息香酸;3,5−ジメチル−4−アミノ安息香酸;3−シクロヘキシル−4−アミノ安息香酸;2,6−ジブロモ−4−アミノ安息香酸;5−ブチル−4−アミノ安息香酸;3−フェニル−4−アミノ安息香酸;4−(1−(3−アミノフェニル)−1−メチルエチル)安息香酸;4−(1−(4−アミノフェニル)エチル)安息香酸;4−(4−アミノフェノキシ)安息香酸;4−((4−アミノフェニル)チオ)安息香酸;(4−アミノフェニル)(4−カルボキシフェニル)メタノン;4−((4−アミノフェニル)スルホニル)安息香酸;4−(1−(4−アミノ−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモ安息香酸;N−メチル−4−アミノ安息香酸;4−アミノ−4’−カルボキシ−α−メチルスチルベン;4−カルボキシ−4’−アミノ−α−メチルスチルベン;グリシン;N−メチルグリシン;4−アミノシクロヘキサンカルボン酸;4−アミノヘキサン酸;4−ピペリジンカルボン酸;5−アミノフタル酸およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0081】
フェノール性ヒドロキシル含有カルボン酸(i)の例として、2−ヒドロキシ安息香酸;3−ヒドロキシ安息香酸;4−ヒドロキシ安息香酸;2−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸;3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸;3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ安息香酸;2,6−ジブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸;5−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸;3−フェニル−4−ヒドロキシ安息香酸;4−(1−(3−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)安息香酸;4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)安息香酸;4−(4−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸;4−((4−ヒドロキシフェニル)チオ)安息香酸;(4−ヒドロキシフェニル)(4−カルボキシフェニル)メタノン;4−((4−ヒドロキシフェニル)スルホニル)安息香酸;4−(1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモ安息香酸;4−ヒドロキシ−4’−カルボキシ−α−メチルスチルベン;4−カルボキシ−4’−ヒドロキシ−α−メチルスチルベン;2−ヒドロキシフェニル酢酸;3−ヒドロキシフェニル酢酸;4−ヒドロキシフェニル酢酸;4−ヒドロキシフェニル−2−シクロヘキサンカルボン酸;4−ヒドロキシフェノキシ−2−プロパン酸およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0082】
スルファニルアミド(j)の例として、o−スルファニルアミド;m−スルファニルアミド;p−スルファニルアミド;2−メトキシ−4−アミノ安息香酸;2,6−ジメチル−4−スルホンアミド−1−アミノベンゼン;3−メチル−4−スルホンアミド−1−アミノベンゼン;5−メチル−3−スルホンアミド−1−アミノベンゼン;3−フェニル−4−スルホンアミド−1−アミノベンゼン;4−(1−(3−スルホンアミドフェニル)−1−メチルエチル)アニリン;4−(1−(4−スルホンアミドフェニル)エチル)アニリン;4−(4−スルホンアミドフェノキシ)アニリン;4−((4−スルホンアミドフェニル)チオ)アニリン;(4−スルホンアミドフェニル)(4−アミノフェニル)メタノン、4−((4−スルホンアミドフェニル)スルホニル)アニリン;4−(1−(4−スルホンアミド−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモアニリン;4−スルホンアミド−1−N−メチルアミノベンゼン;4−アミノ−4’−スルホンアミド−α−メチルスチルベン;4−スルホンアミド−4’−アミノ−α−メチルスチルベンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0083】
(k)単官能性リン化合物の例として、中でも、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(別名DOP);1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−ヒドロキシ−5,5−ジメチル−;1,3,2−ジオキサホスホリナン;1,3,2−ジオキサホスホラン;1,3,2−ジオキサホスホラン、2−オキシド、5,5−ジメチル−;1,3,2−ベンゾジオキサホスホール、2−オキシド;1,3,2−ベンゾジオキサホスホール;1,3,2−ジアザホスホリジン、1,3−ジメチル−;1,3,2−ジアザホスホリジン、および1,3−ジメチル−,2−オキシドが挙げられる。単官能性リン化合物のさらなる例は、参照により本明細書に組み込まれる、Ganに対するWO2005/118604においても見出され得る。
【0084】
樹脂配合物
本開示の別の態様において、本開示の付加物は、(1)式Iおよび/または式IIIのポリシクロペンタジエン化合物のエポキシ、(2)水素含有化合物、および(3)樹脂化合物の少なくとも1種の反応生成物からさらに形成されてよく、ここで、樹脂化合物は、式Iおよび/または式IIIのポリシクロペンタジエン化合物以外の1種または複数のエポキシ樹脂を含む。
【0085】
本開示のポリシクロペンタジエン化合物以外の樹脂化合物として用いられ得るエポキシ樹脂は、1分子あたり平均1個を超えるエポキシド基を有するエポキシド含有化合物であり得る。エポキシド基は、−CO−O−基の炭素原子に結合した酸素、硫黄もしくは窒素原子または単結合の酸素原子に結合していてよい。酸素、硫黄、窒素原子、または−CO−O−基の炭素原子は、脂肪族、脂環式、多脂環式または芳香族炭化水素基に結合していてよい。脂肪族、脂環式、多脂環式または芳香族炭化水素基は、限定されないが、ハロゲン原子、好ましくはフッ素、臭素または塩素;ニトロ基を含めた不活性置換基によって置換されていてもよく;あるいは該基は、平均1個を超える−(O−CHR
a−CHR
a)
t−基を含有する化合物の末端炭素原子に結合していてもよく、ここで、各R
aは、独立して、水素原子、または1〜2個の炭素原子を含有するアルキルもしくはハロアルキル基であり、ただし、唯1つのR
a基がハロアルキル基であり得ることを条件とし、tは、1〜約100、好ましくは1〜約20、より好ましくは1〜約10、最も好ましくは1〜約5の値を有する。
【0086】
樹脂化合物として用いられ得るエポキシ樹脂のより具体的な例として、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール);1,3−ジヒドロキシベンゼン(レソルシノール);1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン);4,4’−イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA);4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン;3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールA;4,4’−チオジフェノール;4,4’−スルホニルジフェノール;2,2’−スルホニルジフェノール;4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシド;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン;1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン;3,3’−5,5’−テトラクロロビスフェノールA;3,3’−ジメトキシビスフェノールA;4,4’−ジヒドロキシビフェニル;4,4’−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベン;4,4’−ジヒドロキシベンズアニリド;4,4’−ジヒドロキシスチルベン;4,4’−ジヒドロキシ−α−シアノスチルベン;N,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタルアミド;4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼン;4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメチルアゾキシベンゼン;4,4’−ジヒドロキシジフェニルアセチレン;4,4’−ジヒドロキシカルコン;4−ヒドロキシフェニル−4−ヒドロキシベンゾエート;ジプロピレングリコール;ポリ(プロピレングリコール);チオジグリコールのジグリシジルエーテル;トリス(ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル;フェノールまたはアルキルもしくはハロゲン置換のフェノール−アルデヒド酸触媒による縮合生成物(ノボラック樹脂)のポリグリシジルエーテル;4,4’−ジアミノジフェニルメタン;4,4’−ジアミノスチルベン;N,N’−ジメチル−4,4’−ジアミノスチルベン;4,4’−ジアミノベンズアニリド;4,4’−ジアミノビフェニルのテトラグリシジルアミン;ジシクロペンタジエンまたはそのオリゴマーとフェノールまたはアルキルもしくはハロゲン置換のフェノールとの縮合生成物のポリグリシジルエーテル;およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0087】
樹脂化合物として用いられ得るエポキシ樹脂は、アドバンストエポキシ樹脂も含み得る。アドバンストエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂と芳香族ジおよびポリヒドロキシルまたはカルボン酸含有化合物とのアドバンスメント反応の生成物であってよい。アドバンスメント反応において用いられるエポキシ樹脂は、ジまたはポリグリシジルエーテルを含む樹脂化合物に好適な、1種または複数の上記エポキシ樹脂を含んでよい。
【0088】
芳香族ジおよびポリヒドロキシルまたはカルボン酸含有化合物の例として、ヒドロキノン;レソルシノール;カテコール;2,4−ジメチルレソルシノール;4−クロロレソルシノール;テトラメチルヒドロキノン;ビスフェノールA;4,4’−ジヒドロキシジフェニイメタン;4,4’−チオジフェノール;4,4’−スルホニルジフェノール;2,2’−スルホニルジフェノール;4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシド;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン;4,4’−ビス(4(4−ヒドロキシフェノキシ)−フェニルスルホン)ジフェニルエーテル;4,4’−ジヒドロキシジフェニルジスルフィド;3,3’,3,5’−テトラクロロ−4,4’−イソプロピリデンジフェノール;3,3’,3,5’−テトラブロモ−4,4’−イソプロピリデンジフェノール;3,3’−ジメトキシ−4,4’−イソプロピリデンジフェノール;4,4’−ジヒドロキシビフェニル;4,4’−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベン;4,4’−ジヒドロキシベンズアニリド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタレート;N,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタルアミド;ビス(4’−ヒドロキシビフェニル)テレフタレート;4,4’−ジヒドロキシフェニルベンゾエート;ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1,4−ベンゼンジイミン;1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;フロログルシノール;ピロガロール;2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルホン;トリス(ヒドロキシフェニル)メタン;ジシクロペンタジエンジフェノール;トリシクロペンタジエンジフェノール;テレフタル酸;イソフタル酸;4,4’−ベンズアニリドジカルボン酸;4,4’−フェニルベンゾエートジカルボン酸;4,4’−スチルベンジカルボン酸;アジピン酸およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
上記アドバンストエポキシ樹脂生成物の調製は、公知の方法、例えば、エポキシ樹脂と、1分子あたり平均1個を超える反応性水素原子を有する1種または複数の好適な化合物とのアドバンスメント反応を用いて実施されてよく、ここで、反応性水素原子は、エポキシ樹脂中のエポキシド基と反応性である。
【0090】
1分子あたり平均1個を超える反応性水素原子を有する化合物対エポキシ樹脂の比は、エポキシ樹脂中のエポキシド基1当量あたり、反応性水素原子が一般に約0.01:1〜約0.95:1、好ましくは約0.05:1〜約0.8:1、より好ましくは約0.10:1〜約0.5:1当量である。
【0091】
1分子あたり平均1個を超える反応性水素原子を有する化合物の例として、上記ジヒドロキシ芳香族およびジカルボン酸化合物に加えて、ジチオール、ジスルホンアミド、あるいは1個の一級アミンもしくはアミド基、2個の二級アミン基、1個の二級アミン基および1個のフェノール性ヒドロキシ基、1個の二級アミン基および1個のカルボン酸基、または1個のフェノール性ヒドロキシ基および1個のカルボン酸基を含有する化合物、ならびにこれらの組み合わせを挙げることもできる。
【0092】
アドバンスメント反応は、熱および混合を適用しながら溶媒の存在または非存在下に行われてよい。アドバンスメント反応は、大気圧、超大気圧または亜大気圧において、約20℃〜約260℃、好ましくは約80℃〜約240℃、より好ましくは約100℃〜約200℃の温度で行われてよい。
【0093】
アドバンスメント反応を完了させるのに必要とされる時間は、因子、例えば、使用される温度、使用される1分子あたり1個を超える反応性水素原子を有する化合物の化学構造、および使用されるエポキシ樹脂の化学構造に依る。温度が高くなると、必要とされる反応時間がより短くなり得る一方で、温度が低くなると、必要とされる反応時間がより長い期間となる。一般に、アドバンスメント反応を完了させるための時間は、約5分〜約24時間、好ましくは約30分〜約8時間、より好ましくは約30分〜約4時間の範囲であり得る。
【0094】
アドバンスメント反応において触媒が添加されてもよい。触媒の例として、ホスフィン、四級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物および三級アミンを挙げることができる。触媒は、エポキシ樹脂の全重量を基準にして約0.01重量%〜約3重量%、好ましくは約0.03重量%〜約1.5重量%、より好ましくは約0.05重量%〜約1.5重量%の量で使用されてよい。
【0095】
本開示の樹脂化合物のためのアドバンストエポキシ樹脂生成物を調製する際に有用なアドバンスメント反応に関する他の詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,736,620号ならびにHenry LeeおよびKris Nevilleによる上記のHandbook of Epoxy Resinsに提供されている。
【0096】
付加物
本開示の付加物は、本開示のポリシクロペンタジエン化合物、水素含有化合物、および場合により樹脂化合物の反応生成物である。
【0097】
本開示によると、十分量のポリシクロペンタジエン化合物および用いられる場合には樹脂化合物、ならびに過剰量の水素含有化合物が反応混合物において付与されて本開示の付加物を形成する。本開示の付加物を形成するための反応(「付加物形成反応」とも称される)の終わりに、本開示のポリシクロペンタジエン化合物中の本質的に全てのエポキシド基が、水素含有化合物中の反応性水素原子と反応する。未反応の水素含有化合物は、反応の終わりに部分的もしくは完全に除去されても、付加物生成物の一部として残存していてもよい。
【0098】
一般に、水素含有化合物とポリシクロペンタジエン化合物との比は、ポリシクロペンタジエン化合物と、用いられる場合には樹脂化合物とのエポキシド基1当量あたり、水素含有化合物中の反応性水素原子が約2:1〜約200:1、好ましくは約3:1〜約100:1、より好ましくは約4:1〜約50:1当量である。
【0099】
本開示の付加物を調製するのに触媒が使用されてよい。触媒の例として、ホスフィン、四級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、三級アミンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。触媒が使用される場合には、その量は、付加物を調製するのに用いられる特定の反応体および使用される触媒の種類に依る。一般に、触媒は、付加物の全重量を基準にして約0.01〜約1.5重量%、好ましくは約0.03〜約0.75重量%の量で用いられ得る。
【0100】
本開示の付加物形成反応において1種または複数の溶媒が存在していてよい。1種または複数の溶媒の存在は、反応体の溶解性を改善することができ、反応体が固体形態であるときには、固体反応体を他の反応体と容易に混合するように溶解することができる。溶媒の存在はまた、付加物形成反応を調節するために、例えば、付加物形成反応からの発生する熱を制御するために、または付加生成物の構造にひいては影響し得る、例えば、オリゴマー性成分をあまり含まない付加物をひいては生成し得る反応体の有効濃度を低下させるために、反応体の濃度を希釈することもできる。
【0101】
溶媒は、反応体、存在する場合には中間体生成物、および最終生成物に不活性であることを含めて、付加物形成反応に実質的に不活性であり得る。本開示において有用な好適な溶媒の例として、脂肪族、脂環式および芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族および脂環式炭化水素、脂肪族および脂環式二級アルコール、脂肪族エーテル、脂肪族ニトリル、環状エーテル、グリコールエーテル、エステル、ケトン、アミド、スルホキシドならびにこれらの組み合わせが挙げられる。溶媒の好ましい例として、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、エチレンジクロリド、メチルクロロホルム、エチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、イソプロパノールおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0102】
溶媒は、従来の手段、例えば真空蒸留などを用いて付加物形成反応の完了時に除去されてよい。代替的には、溶媒は、付加生成物中に残されて、例えばコーティングまたはフィルムの調製において後に用いられ得る、溶媒が含まれた付加物を提供してもよい。
【0103】
付加物形成反応条件は、因子、例えば、使用される反応体の種類および量、用いられる場合には触媒の種類および量、用いられる場合には溶媒の種類および量、ならびに使用される反応体の量の態様に応じて変動してよい。例えば、付加物形成反応は、大気圧(例えば、760mmHg)、超大気圧または亜大気圧において、約0℃〜約260℃、好ましくは約20℃〜約200℃、より好ましくは約35℃〜約160℃の温度で行われてよい。
【0104】
付加物形成反応を完了させるのに必要とされる時間は、上記因子だけでなく、使用される温度にも依る。温度が高くなると、必要とされる反応時間がより短い期間となる一方で、温度が低くなると、必要とされる反応時間がより長い期間となる。一般に、付加物形成反応を完了させるのに必要とされる時間は、好ましくは約5分〜約1週間、より好ましくは約30分〜約72時間、最も好ましくは約60分〜48時間である。
【0105】
付加物形成反応の時間および温度は、本開示の付加物の形成において成分の分布に大きく影響し得る。例えば、より高い反応温度、より長い反応時間では、水素含有化合物が1分子あたり2個しか反応性水素原子を有さない材料を含むときには、付加物形成反応は、オリゴマー性成分がより多い付加物の形成に有利である。水素含有化合物が1分子あたり2個を超える反応性水素原子を有する材料を含むときには、付加物形成反応は、より分岐または架橋した成分を含む付加物の形成に有利である。
【0106】
付加物形成反応を実施する際、本開示のポリシクロペンタジエン化合物は、水素含有化合物と一緒に直接混合されてもよいし、水素含有化合物に段階的に添加されてもよいし、連続的に添加されてもよい。また、ポリシクロペンタジエン化合物および水素含有化合物を混合する前に、1種または複数の溶媒がポリシクロペンタジエン化合物および/または水素含有化合物に最初に添加されてもよい。ポリシクロペンタジエン化合物の段階的添加が用いられるとき、全部または一部の添加段階を、次の段階の添加の前に反応させてよい。過剰量の水素含有化合物の範囲内で反応するポリシクロペンタジエン化合物の段階的添加は、オリゴマー性成分の量がより少ないまたはこれを含まない付加物の形成に一般に有利である。
【0107】
1)付加物の個々の成分の量の分布、2)付加物の反応性、および/または3)付加物の物理的特性を変更するために、本開示の付加物を調製するプロセスに種々の後処理が適用されてよい。
【0108】
例えば、ポリシクロペンタジエン化合物と(水素含有化合物としての)シクロヘキシルアミンとの間の反応から調製される付加物では、シクロヘキシルアミン由来の化学量論上大過剰量の一級アミン基が、ポリシクロペンタジエン化合物由来のエポキシド基と反応する場合、該反応は、オリゴマー性成分の含量が低い付加物の形成をもたらし得る。得られる付加生成物は、付加生成物の一部として、未反応の水素含有化合物として高濃度のシクロヘキシルアミンも含み得る。したがって、付加生成物の後処理、例えば真空蒸留は、未反応の水素含有化合物を取り除くのに使用できる。
【0109】
付加物の成分の分布を変更するのに用いられる他の後処理方法、例えば、再結晶、クロマトグラフィ分離、抽出、帯域精製、結晶精製、流下膜式蒸留、ワイプトフィルム蒸留(wiped film distillation)、回転蒸発を含めた単蒸留、選択的化学誘導体化(preferential chemical derivatization)、付加物の1種または複数の成分の除去、およびこれらの組み合わせなどが使用されてもよい。
【0110】
本開示によると、本開示の付加物を形成するための、ポリシクロペンタジエン化合物および/またはアドバンスメント生成物(advancement product)(オリゴマー)の1種または複数と、エポキシド基と反応性である水素原子を有する1種または複数の水素含有化合物との反応は、開環反応を伴う。開環反応の間に、エポキシ樹脂中のエポキシド基が水素含有化合物中の反応性水素原子と反応して、エポキシ樹脂の残基構造と水素含有化合物の残基構造との間の連結部としての特徴的な2−ヒドロキシルプロピル官能基を与える。
【0111】
本開示の付加物の例は、式Iおよび/または式IIIのポリグリシジルエーテルと(水素含有化合物としての)シクロヘキシルアミンとの反応生成物である。以下の理想的な式Xの付加物構造は、式Iのエポキシ樹脂の残基構造と水素含有化合物の残基構造との間の連結部としての2−ヒドロキシルプロピル官能基を示す:
【化17】
【0112】
水素含有化合物は、二重官能基(dual functional group)を有する化合物、例えば、(f)スルホンアミド、(g)アミノフェノール、(h)アミノカルボン酸、(i)フェノール性ヒドロキシル含有カルボン酸、および(j)スルファニルアミドから選択されてよい。これらの化合物は、エポキシ樹脂の硬化に関して異なる反応性を有する異なる官能基を含む付加物を付与するのに利用され得る。この種の付加物の例は、(水素含有化合物としての)アミノフェノール化合物、p−N−メチルアミノメチルフェノールと、式Iおよび/または式IIIのポリシクロペンタジエン化合物との反応生成物である。該反応は、(a)触媒を用いず、(b)低温で(例えば、約25℃〜約50℃)、(c)比較的長い反応時間の間、(d)化学量論大過剰の水素含有化合物へのポリグリシジルエーテルの段階的添加または徐々の連続添加を用いて、(e)ポリグリシジルエーテル(A)および水素含有化合物の両方が溶媒中にあることを含めた穏やかな条件下である場合、フェノール性ヒドロキシル末端基を含む付加物をもたらす。式Iのエポキシ樹脂を用いて調製された、以下の理想的な式XIの付加物構造は、フェノール性ヒドロキシル末端基を含む付加物を示す:
【化18】
【0113】
エポキシド基と一方の官能基との反応の方を別の官能基との反応よりも有利にする、触媒による反応も使用され得る。例えば、本開示の付加物を形成するのに、それぞれが少なくとも1個の反応性水素原子を有する少なくとも2種の異なる官能基を含む水素含有化合物が用いられる場合、一方の種の官能基の反応性水素原子(複数可)とエポキシド基との反応の方を、他方の種の官能基の反応性水素原子(複数可)とエポキシド基との反応よりも有利にする触媒が使用され得る。
【0114】
この付加物は、本開示の少なくとも2種の別個のポリシクロペンタジエン化合物からのエポキシド基と、エポキシド基のうちの1個が水素含有化合物中の反応性水素原子と既に反応しているそれぞれの各ポリシクロペンタジエン化合物との反応から誘導される少なくとも1種のオリゴマー性成分を含んでもよい。
【0115】
この種の付加物構造の例は、式Iのポリグリシジルエーテルと、式XIIの化合物によって示されるシクロヘキシルアミンとの反応生成物である。以下の理想的な式XIIの付加物構造は、オリゴマー性成分が、それぞれについてエポキシド基のうちの1個がシクロヘキシルアミンと既に反応している2種の別個のポリグリシジルエーテルからの少なくとも2個のエポキシド基に由来することを示す:
【化19】
【0116】
この付加物は、以下の反応:(1)エポキシ樹脂の別のエポキシド基において既に付加されている本開示のポリシクロペンタジエン化合物からのエポキシド基と、本開示の付加物からの2−ヒドロキシプロピル連結部のヒドロキシル基との反応;または(2)本開示の3種の別個のポリシクロペンタジエン化合物と、本開示の水素含有化合物からの3個の反応性水素原子との反応;のうちの一つから誘導される、少なくとも1個の分岐または架橋した付加物構造も含み得る。
【0117】
上記反応(1)の例は、式Iのポリシクロペンタジエン化合物のポリグリシジルエーテルとシクロヘキシルアミンとの付加物からのヒドロキシル基と、エポキシド基の1個にシクロヘキシルアミンが既に付加されている式Iの第2ポリシクロペンタジエン化合物からのエポキシド基との反応である。得られる反応生成物の化学構造は、式XIIIの化合物として以下のように示される:
【化20】
【0118】
上記反応(2)の例は、ジエチレントリアミンと式Iのポリシクロペンタジエン化合物との付加物のアミノ水素の反応であり、ここで、式Iのポリシクロペンタジエン化合物の第2のものからのエポキシド基は、ジエチレントリアミン部位中の別のアミノ水素と既に反応している。得られる反応生成物の部分的な化学構造は、以下の通り式XIVの構造として示される(グリシジルエーテル基とジエチレントリアミンとの反応の直後の構造のみが示される):
【化21】
【0119】
また、いくつかの非主要構造、例えば、エポキシ樹脂中のエポキシド基の加水分解に由来する1,2−グリコール基、またはエポキシ樹脂を形成するプロセスの間の、中間体ハロヒドリン分子のヒドロキシル基へのエピハロヒドリンの付加より誘導されるハロメチル基が、本開示の付加物に存在していてよい。
【0120】
他の非主要構造は、式Iのポリシクロペンタジエン化合物の付加物中のヒドロキシル基骨格の反応を介して形成され得る。例えば、二級ヒドロキシル基と特定の水素含有化合物に存在するカルボン酸基との反応は、結果として付加物中のエステル連結部骨格の形成を生じる。
【0121】
硬化性組成物
種々の実施形態では、本開示の硬化性組成物は、(a)本開示の付加物と、(b)1種または複数の樹脂化合物(複数可)、1種または複数の式Iおよび/もしくは式IIIのポリシクロペンタジエン化合物、またはこれらの混合物を含むエポキシ樹脂材料とを含み得る。本明細書において議論されているように、本開示の付加物は、(1)式Iおよび/または式IIIのポリシクロペンタジエン化合物の少なくとも1種の反応生成物と、(2)水素含有化合物と、場合により、(3)樹脂化合物とを含む。
【0122】
種々の実施形態では、本開示の硬化性組成物は、硬化性組成物を効果的に硬化させる量で、本開示の付加物をエポキシ樹脂材料と混合することによって調製され得、該量は、具体的な付加物および使用される樹脂化合物に依ることが理解される。
【0123】
種々の実施形態では、本開示の硬化性組成物のためのエポキシ樹脂材料として用いられ得るエポキシ樹脂は、1分子あたり平均1個を超えるエポキシド基を有するエポキシド含有化合物であってよい。エポキシ樹脂の例として、本明細書に記載されているように、樹脂化合物に好適であるエポキシ樹脂、ならびに式Iおよび/または式IIIのポリシクロペンタジエン化合物が挙げられる。
【0124】
一般に、本開示の付加物対エポキシ樹脂材料の比は、硬化に使用される条件において、エポキシ樹脂材料におけるエポキシド基1当量あたりに付加物に存在する反応性水素原子が約0.60:1〜約1.50:1、好ましくは約0.95:1〜約1.05:1当量である。
【0125】
本開示の好ましい硬化性組成物は、(1)本開示の付加物と、(2)エポキシ樹脂材料とを含み、ここで、エポキシ樹脂材料は、1種または複数のエポキシ樹脂を含み、例として、本明細書に記載されている式Iおよび/または式IIIのエポキシ樹脂に好適であるエポキシ樹脂が挙げられ、付加物は、本明細書において議論されているように、式Iおよび/または式IIIのポリシクロペンタジエン化合物と水素含有化合物との少なくとも1種の反応生成物を含む。水素含有化合物として、例えば、脂肪族もしくは脂環式ジアミン、脂肪族もしくは脂環式ポリアミン、脂肪族もしくは脂環式ジカルボン酸、または脂肪族もしくは脂環式アミノカルボン酸、ジアミノカルボン酸、アミノジカルボン酸、またはジアミノジカルボン酸およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0126】
硬化性組成物を硬化するためのプロセス条件
種々の実施形態では、本開示の硬化性組成物を硬化するプロセスは、大気圧(例えば、760mmHg)、超大気圧または亜大気圧において、約0℃〜約300℃、好ましくは約25℃〜約250℃、より好ましくは約50℃〜約200℃の温度で行われ得る。
【0127】
硬化を完了させるのに必要とされる時間は、使用される温度に依り得る。温度が高くなると、必要とされる反応時間が一般により短い期間となる一方で、温度が低くなると、必要とされる反応時間が一般により長い期間となる。一般に、硬化の完了に必要とされる時間は、約1分〜約48時間、好ましくは約15分〜約24時間、より好ましくは約30分〜約12時間である。
【0128】
本開示の硬化性組成物を部分的に硬化してBステージ生成物を形成し、続いて、後においてBステージ生成物を完全に硬化する働きもする。本開示の硬化性組成物はまた、硬化剤および/または硬化触媒を含んでいてもよい。
【0129】
硬化性組成物に有用な硬化剤および/または触媒の例として、脂肪族、脂環式、多脂環式または芳香族一級モノアミン、脂肪族、脂環式、多脂環式または芳香族一級および二級ポリアミン、カルボン酸およびその無水物、芳香族ヒドロキシル含有化合物、イミダゾール、グアニジン、尿素−アルデヒド樹脂、メラミン−アルデヒド樹脂、アルコキシ化尿素−アルデヒド樹脂、アルコキシ化メラミン−アルデヒド樹脂、アミドアミン、エポキシ樹脂付加物、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0130】
硬化剤の特に好ましい例として、メチレンジアニリン;4,4’−ジアミノスチルベン;4,4’−ジアミノ−α−メチルスチルベン;4,4’−ジアミノベンズアニリド;ジシアンジアミド;エチレンジアミン;ジエチレントリアミン;トリエチレンテトラミン;テトラエチレンペンタミン;尿素−ホルムアルデヒド樹脂;メラミン−ホルムアルデヒド樹脂;メチロール化尿素−ホルムアルデヒド樹脂;メチロール化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂;ビスフェノールとしてビスフェノールA;ビスフェノールF(ビス−4−ヒドロキシフェニルメタン);ビスフェノールS(ビス−4−ヒドロキシフェニルスルホン);TBBA(テトラブロモビスフェノールA);フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂;クレゾール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂;スルファニルアミド;ジアミノジフェニルスルホン;ジエチルトルエンジアミン;t−ブチルトルエンジアミン;ビス−4−アミノシクロヘキシルアミン;イソホロンジアミン;ジアミノシクロヘキサン;ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン;1−(2−アミノエチル)ピペラジン;2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジアミン;1,12−ドデカンジアミン;トリス−3−アミノプロピルアミン;およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0131】
硬化触媒の特に好適な例として、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテレート、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化亜鉛、四塩化ケイ素、塩化第二スズ、四塩化チタン、三塩化アンチモン、三フッ化ホウ素モノエタノールアミン錯体、三フッ化ホウ素トリエタノールアミン錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、ピリジン−ボラン錯体、ジエタノールアミンボレート、フルオロホウ酸亜鉛、金属アシレート、例えば、オクタン酸第一錫またはオクタン酸亜鉛およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0132】
種々の実施形態では、硬化触媒は、硬化性組成物を効果的に硬化する量で使用され得る。硬化触媒の量は、硬化性組成物において使用される、特定の付加物、エポキシ樹脂、および存在する場合には硬化剤に依ってもよい。
【0133】
一般に、硬化触媒は、全硬化性組成物の約0.001〜約2重量%の量で用いられ得る。また、硬化性組成物の硬化プロセスを加速させるまたはさもなければ変更するために1種または複数の硬化触媒が使用されてよい。
【0134】
硬化剤は、付加物と併せて使用されて、硬化性組成物を硬化することができる。合わされた硬化剤および付加物の量は、硬化剤および付加物をまとめた反応性水素原子が約0.60:1〜約1.50:1、好ましくは約0.95:1〜約1.05:1当量である。
【0135】
種々の実施形態では、硬化性組成物は、例えば、硬化促進剤、溶媒または希釈剤、改質剤、例えば流動性改質剤および/または増粘剤、強化剤、充填剤、顔料、染料、離型剤、湿潤剤、安定剤、難燃剤、界面活性剤およびこれらの組み合わせを含めた少なくとも1種の添加剤とブレンドされてもよい。
【0136】
種々の実施形態では、添加剤は、本開示の硬化性組成物の調製に用いられる前に、付加物もしくは樹脂化合物または付加物および樹脂化合物の両方とブレンドされてよい。添加剤は、機能的当量で添加されてよく、例えば、顔料および/または染料は、組成物に所望の色を付与する量で添加されてよい。一般に、添加剤の量は、硬化性組成物の全重量を基準にして約0〜約20重量%、好ましくは約0.5〜約5重量%、より好ましくは約0.5〜約3重量%であってよい。
【0137】
種々の実施形態では、本明細書において使用され得る硬化促進剤として、例えば、モノ、ジ、トリおよびテトラフェノール;塩素化フェノール;脂肪族もしくは脂環式モノまたはジカルボン酸;芳香族カルボン酸;ヒドロキシ安息香酸;ハロゲン化サリチル酸;ホウ酸;芳香族スルホン酸;イミダゾール;三級アミン;アミノアルコール;アミノピリジン;アミノフェノール;メルカプトフェノールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0138】
特に好適な硬化促進剤として2,4−ジメチルフェノール;2,6−ジメチルフェノール;4−メチルフェノール;4−第三級−ブチルフェノール;2−クロロフェノール;4−クロロフェノール;2,4−ジクロロフェノール;4−ニトロフェノール;1,2−ジヒドロキシベンゼン;1,3−ジヒドロキシベンゼン;2,2’−ジヒドロキシビフェニル;4,4’−イソプロピリデンジフェノール;吉草酸;シュウ酸;安息香酸;2,4−ジクロロ安息香酸;5−クロロサリチル酸;サリチル酸;p−トルエンスルホン酸;ベンゼンスルホン酸;ヒドロキシ安息香酸;4−エチル−2−メチルイミダゾール;1−メチルイミダゾール;トリエチルアミン;トリブチルアミン;N,N−ジエチルエタノールアミン;N,N−ジメチルベンジルアミン;2,4,6−トリス(ジメチルアミノ)フェノール;4−ジメチルアミノピリジン;4−アミノフェノール;2−アミノフェノール;4−メルカプトフェノールおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0139】
本明細書において使用され得る溶媒または希釈剤の例として、例えば、脂肪族および芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、脂肪族エーテル、脂肪族ニトリル、環状エーテル、グリコールエーテル、エステル、ケトン、アミド、スルホキシドならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0140】
特に好適な溶媒として、ペンタン、ヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、Ν,Ν−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン;1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、エチレンジクロリド、メチルクロロホルム、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、N−メチルピロリジノン;Ν,Ν−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、スルホラン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0141】
種々の実施形態では、改質剤、例えば増粘剤および流動性改質剤は、硬化性組成物の全重量を基準にして0〜約10重量%、好ましくは約0.5〜約6重量%、より好ましくは約0.5〜約4重量%の量で使用されてよい。
【0142】
本明細書において使用されてよい強化材料として、織布、マット、モノフィラメント、マルチフィラメント、一方向ファイバ、ロービング、ランダム繊維もしくはフィラメント、無機充填剤もしくはホイスカ、または中空球の形態の天然および合成ファイバが挙げられる。他の好適な強化材料として、ガラス、カーボン、セラミック、ナイロン、レーヨン、綿、アラミド、グラファイト、ポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0143】
種々の実施形態では、本明細書において使用されてよい充填剤として、例えば、無機酸化物、セラミック微小球、プラスチック微小球、ガラス微小球、無機ホイスカ、炭酸カルシウムおよびこれらの組み合わせが挙げられる。充填剤は、硬化性組成物の全重量を基準にして約0〜約95重量%、好ましくは約10〜約80重量%、より好ましくは約40〜約60重量%の量で使用されてよい。
【0144】
付加物は、例えばコーティング、特に、優れた耐溶媒性、耐湿性、耐摩耗性および耐候性を有する保護コーティングにおいて使用されてもよい。本開示の付加物の他の適用として、例えば、電気または構造積層体または複合体、フィラメントワインディング、成形体、鋳物、カプセル封入物などの調製が挙げられる。
【0145】
以下の実施例は、本開示の説明であるが、いかなる方法においてもその範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
【実施例】
【0146】
別途示さない限り、全ての部および%は重量基準である。別途特定しない限り、用いた全ての機器および化学薬品は、市販のものである。
材料
Rh(CO)
2(アセチルアセトネート)(Rh(CO)
2acac)、Strem Chemicals Incから入手可能。
n−ブチルジフェニルホスフィン、Organometallics,Inc(E.Hampstead、NH、USA)から入手可能。
ジシクロペンタジエン、Dow Chemical Co.から入手可能。
合成ガス、Airgas Great Lakes、Inc.から入手可能。
KBrプレート、Sigma−Aldrichから入手可能。
90%純度の3−メルカプトプロパン−1−スルホン酸、ナトリウム塩、Sigma−Aldrichから入手可能。
塩酸、Sigma−Aldrichから入手可能。
フェノール、Sigma−Aldrichから入手可能。
テトラヒドロフラン、Sigma−Aldrichから入手可能。
メタノール、Sigma−Aldrichから入手可能。
無水アセトン、Sigma−Aldrichから入手可能。
ジクロロメタン、Sigma−Aldrichから入手可能。
【0147】
参照例1
ジシクロペンタジエンポリフェノールの調製
A.ジシクロペンタジエンジアルデヒドの調製
ジシクロペンタジエン(70g)中Rh(CO)
2acac(35.1mg;0.136mmol)およびn−ブチルジフェニルホスフィン(0.33g;1.36mmol)(モル比L/Rh=10)の反応混合物を乾燥窒素下にパージボックスにおいて調製し、次いで150mLのParr反応器に置き、20℃で1:1の合成ガス(モル比1:1のCO:H
2)で3回散布した。次いで反応混合物を撹拌により90psiの圧力の合成ガスにおいて100℃まで加熱した。反応混合物からの生成物の形成をガスクロマトグラフィ(GC)[Agilent6890]によってモニタリングし、得られた混合物の最終的なGC分析により、ジシクロペンタジエンジアルデヒド(GCにおいて10.4〜10.7分(min)で87面積%)およびジシクロペンタジエンモノアルデヒド(GCにおいて5.6および6.0分で6面積%)が示された。ジシクロペンタジエン反応体を完全に消費させた。より長い保持時間(21〜22.5分)において、より高分子量の副生成物による非常に小さなシグナルも観察された。反応混合物のガスクロマトグラフ/質量スペクトル(GC/MS)分析[Agilent5973Mass Selective Detectorを備えたAgilent6890GC]により、所望のジシクロペンタジエンジアルデヒド(M
+=192)および飽和ジシクロペンタジエンモノアルデヒド(M
+=164)の形成が裏付けられた。
【化22】
【0148】
KBrプレート上のジシクロペンタジエンジアルデヒドの純フィルムのフーリエ変換赤外分光光度(FTIR、Nicolet Avatar3700DTGS FTIR(Thermo Electron Corporation))分析により、1720.4cm
−1において、予期された強いアルデヒドカルボニル伸縮が見られた。生成物を97.7gの量の褐色液体として得た。
【0149】
B.3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸触媒の調製
3−メルカプトプロパン−1−スルホン酸のナトリウム塩を濃塩酸(35.7%、水性、200mL)に添加し、これをガラスビーカーにおいて磁気撹拌した。大気の水分の取り込みを防止するためにParafilm「M」(American National Can、Greenwich、CT)のシートで被覆した後、得られた白色結晶性スラリーを5分間撹拌し、次いで、中度フリットガラス漏斗上で濾過した。濾液を回転蒸発させて、8.88gの薄黄色の粘着性固体生成物を生じ、これをさらに処理することなく触媒として用いた。
【0150】
C.フェノール化反応
セクションA(上部)からのジシクロペンタジエンジアルデヒド(48.06g、0.25モル、補正なし)および溶融したフェノール(470.5g、5.0モル)を1Lのガラス製三ツ口丸底反応器に添加した。反応器に、両方ともClaisenアダプタを介して反応器に装着された室温(22℃)冷却器および温度計、加えて、頂部の窒素入口、機械的撹拌を付与するための変速モータに接続されたTeflon(商標)(E.I.du Pont de Nemours)製撹拌機翼を備えたガラス製撹拌軸、およびサーモスタット制御の加熱マントルをさらに取り付けた。
【0151】
頂部の窒素流(0.5L/分)を開始し、続いて加熱、次いで撹拌した。20分後、温度が65℃に達し、澄んだ淡黄色に着色した溶液を形成した。このとき、撹拌溶液内への、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸(用いた触媒の合計は1.95gであり、ジシクロペンタジエンジアルデヒド反応体に対して0.05モル%)のアリコートの添加を開始した。触媒の最初のアリコート(0.39g)は、3分後に70℃までの最大発熱を誘発し、溶液を暗琥珀色にした。加熱マントルを反応器から除去し、ファンに係合させて、外部の反応器を65℃まで冷却した。3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸の第2アリコート(0.22g)を添加し、冷却を継続した。触媒の第2アリコートは添加の1分後に66℃までの発熱を誘発し、さらに2分後に65℃まで冷却した。このとき、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸の第3アリコート(0.35g)を添加し、2分後に68℃までの発熱を誘発した。さらに3分後、温度を65℃まで冷却し、冷却ファンを切った。3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸の第4アリコート(0.24g)を、反応温度を65℃に維持しながら添加した。5分後、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸の第5アリコート(0.37g)を、反応温度を65℃に維持し、続いて次の5分かけて62.5℃まで降下させながら添加した。このとき、外部の反応器の冷却を停止し、加熱マントルを反応器に戻して、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸の最終アリコート(0.38g)を暗琥珀色に着色した溶液に添加した。
【0152】
反応温度を次の22.25時間の間65℃〜66℃に維持し、この間、反応の過程を、HPLC分析[Eclipse(登録商標)(Agilent)XDB−C8分析ガードカラム(5μ、4.6×12.5mm)を備えたZorbax Eclipse(登録商標)(Agilent)XDB−C8分析カラム(5μ、4.6×150mm)を用いたHewlett Packard 1090 Liquid Chromatograph]を介して追随した。カラムをクロマトグラフオーブンにおいて40℃で維持した。アセトニトリルおよび水(0.05%のo−リン酸水溶液で処理)を溶離液として用い、1分あたり1.000mLの速度でポンプを介してそれぞれ70/30%の溶液として初めに送達し、5分後に90/10%の溶液に変化させ、次の15分間そこで保持した。用いたアセトニトリルは、189nmのUV切断で、HPLCグレードであり、(ガスクロマトグラフィにより)100.0%の純度であった。用いたo−リン酸は、名目上85%の純度(実際の評価は85.1%)であった。用いた水は、HPLCグレードであった。サンプル分析に使用するダイオードアレイ検出器を225nmに設定し、リファレンスを550nmに設定した。反応の1.6時間後、HPLC分析により、ジシクロペンタジエンジアルデヒドが生成物の分布に完全に変換されたことが明らかになり、その後、生成物にほとんど変化がなかった。
【0153】
反応時間の終わりに、反応器の内容物を、それぞれが3Lの磁気撹拌した脱イオン(DI)水を含有する1対のビーカーに等しく分配した。75分後に撹拌を停止し、ビーカーの内容物を一晩静置させた。次の日、各ビーカーを500mLの体積にデカントし、デカントした水性生成物を廃棄物として廃棄した。両方のビーカーを新たな脱イオン水で再び満たして全体積を3.5Lとし、撹拌および加熱を50℃に達するまでに開始し、粘性糸状物の赤みがかった琥珀色に着色した生成物を各ビーカーの底に形成させた。撹拌および加熱を停止し、ビーカーの内容物を一晩静置させた。次の日、各ビーカーをデカントし、水性生成物を除去して廃棄物として廃棄した。沸騰した脱イオン水(1.5L)を、各ビーカーに残存する暗黄橙色に着色した生成物に添加し、沸点まで加熱しながら磁気撹拌を再開した。沸点に達したら、生成物スラリーが20℃まで冷却されるように加熱を停止して撹拌を続けた。温度が20℃に達したら、固体を、フィルタ紙を通したデカンテーションによって収集した。固体をセラミック皿に添加し、真空オーブンにおいて100℃で16時間乾燥し、除去し、微粉末に粉砕し、真空オーブンにおいてさらに6.5時間乾燥し、119.79gのジシクロペンタジエンポリフェノールをからし色に着色した粉末として得た。
【0154】
KBrペレットのFTIR分光光度分析により、1610.9cm
−1(1595.7cm
−1にショルダー)および1510.0cm
−1における強い芳香族環の吸収、3382.2cm
−1を中心とする幅広の強いヒドロキシルO−H伸縮、ならびに1226.7(1170.7にショルダー)cm
−1における幅広の強いC−O伸縮の出現と共に、1720.4cm
−1におけるアルデヒドカルボニル伸縮の完全な消失が見られた。HPLC分析により、得られたジシクロペンタジエンポリフェノールが、27.9、4.2、6.8、11.0、21.6および22.2面積%を含む6の主要成分による12の成分を含んだことが明らかになった。
【実施例1】
【0155】
ポリグリシジルエーテルへのジシクロペンタジエンポリフェノールの変換
1Lの三ツ口のガラス製丸底反応器に、先に議論したように調製したジシクロペンタジエンポリフェノール(53.27g、133.2の名目上のヒドロキシル当量を基準にして0.40ヒドロキシル当量)、およびエピクロロヒドリン(277.7g、3,0モル)を仕込んだ。反応器に、(0℃に維持された)冷却器、温度計、Claisenアダプタ、頂部の窒素入口(1L/分)、および撹拌アセンブリ(stirred assembly)(Teflon(商標)(E.I.du Pont de Nemours)パドル、ガラス軸、変速モータ)をさらに具備させた。水酸化ナトリウム(14.4g、0.36モル)を脱イオン水(57.6g)に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を形成した。水酸化ナトリウム水溶液をサイドアーム付きのベント式添加漏斗に添加し、次いで反応器に取り付けた。
【0156】
サーモスタット制御の加熱マントルを用いて加熱しながら、スラリーの撹拌を開始した。撹拌したスラリーが30℃になったら、撹拌および加熱を続けながらイソプロパノール(149.5g、用いたエピクロロヒドリンの35重量%)を添加した。38℃に達したら、溶液が形成され、脱イオン水(24.2g、用いたエピクロロヒドリンの8重量%)を迅速な滴加により添加した。50℃に達したら、サイドアーム付きのベント式添加漏斗からの水酸化ナトリウム水溶液の滴加を開始し、溶液を琥珀赤色に最初に転換させた。水性水酸化ナトリウムの滴加を50℃で続けると、琥珀赤色溶液が僅かに不透明になった。添加を50分かけて完了させた。後反応の25分後、撹拌を停止し、反応器の内容物を静置させた。エポキシド化反応の進行を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析によってモニタリングした。
【0157】
静置時間の終わりに、反応器の内容物を分離漏斗に添加した。水層を除去し、廃棄物として捨て、有機層を回収し、反応器に戻し添加した。再開した加熱および撹拌により、50℃の温度を再び確立させた。脱イオン水(25.6g)に溶解した第2部の水酸化ナトリウム(6.4g、0.16モル)の滴加を開始し、温度を50℃に維持しながら20分かけて完了させた。後反応の25分後、撹拌を停止し、反応器の内容物を分離漏斗において5分間静置させ、水層を生成物から除去し、僅かに不透明になった、淡橙色に着色した有機層を反応器に戻し添加し、サンプルをHPLC分析用に取出し、加熱および撹拌を再開して、50℃の温度を再確立させた。脱イオン水(8.0g)に溶解した第3部の水酸化ナトリウム(2.0g、0.05モル)を、それぞれ、10分かけて添加し、第2の水性水酸化ナトリウムの添加に使用した方法を用いて処理した。後反応、続いての最終の水性水酸化ナトリウム添加からの水層の除去の25分後、有機層をメチルイソブチルケトン(1L)で希釈し、第2部の脱イオン水(300mL)で洗浄した。水層を、遠心分離を介して生成物から分割した。脱イオン水による第3および第4洗浄(洗浄1回あたり300mL)を、第1洗浄(水層および有機層を分割するのに遠心分離を必要としなかった)に使用した方法を用いて完了させた。フィルタ床から濾液中に生成物を洗い流すのに必要に応じて用いられるメチルイソブチルケトンを用いて、回収した有機溶液を中度フリットガラス漏斗に充填された珪藻土の床上で真空濾過した。75℃の最大油浴温度を用いた有機層の回転蒸発により、揮発性物質のバルクを除去した。0.23mmHgの最終の真空まで150℃でさらに回転蒸発し、23℃への冷却の際に49.02gの僅かに濁った淡黄琥珀色(yellow amber)に着色した固体を生じた。
【0158】
ガスクロマトグラフィ(GC)分析[DB−1固定相を備えた60m×0.248mm×0.25μmのJ&W GCカラム、300℃で操作するフレームイオン化検出器、300℃の注入温度を用いたHewlett Packard 5890 Series II Gas Chromatograph、カラムを通るヘリウムキャリアガス流を1.1mL/分に維持し、最初の50℃のオーブン温度を12℃/分での加熱により300℃の最終温度にした]により、残りのエピクロロヒドリンを含めた本質的に全ての軽い沸騰成分が除去されたことが明らかになった。HPLC分析により、ポリグリシジルエーテルへのジシクロペンタジエンポリフェノールの完全な変換が明らかになった。生成物の1対のアリコートの滴定により、平均で20.39%がエポキシド(211.06のエポキシド当量)であることが実証された。エポキシ樹脂の滴定は、Jay、R.R.による「Direct Titration of Epoxy Compounds and Aziridines」、Analytical Chemistry、36、3、667-668(1964年3月)に記載されている。簡潔には、この方法の本発明者らの適合において、秤量したサンプル(サンプル重量は、小数第3位の精度を有するスケールを用いて0.1〜0.2gの範囲である)をジクロロメタン(15mL)に溶解し、続いて、テトラエチルアンモニウムブロミドの酢酸(15mL)溶液を添加した。結果として得られる、3滴のクリスタルバイオレット溶液(酢酸中0.1% w/v)で処理した溶液を、Metrohm665Dosimat titrator(Brinkmann)において、酢酸中0.1Nの過塩素酸で滴定した。ジクロロメタン(15mL)およびテトラエチルアンモニウムブロミドの酢酸(15mL)溶液からなるブランクの滴定により、溶媒のバックグラウンドに関する較正をもたらした。
【実施例2】
【0159】
ジシクロペンタジエンポリフェノールのポリグリシジルエーテルと4.4’−ジアミノジフェニルメタンとの熱誘導硬化
実施例1からのジシクロペンタジエンポリフェノールのポリグリシジルエーテル(0.5755g、0.002727エポキシド当量)および4,4’−ジアミノジフェニルメタン(0.1352g、0.002727−NH当量)をガラスバイアル内に秤量し、一緒に十分に粉砕して均質な微粉末とした。ブレンドの部分(8.30および8.50mg)の示差走査熱量測定(DSC)分析を、35cm
3/分で流れる窒素ストリーム下に25℃〜425℃まで7℃/分の加熱速度を用いて完了させた。エポキシド基と一級アミンの水素との反応に起因する発熱が観察され、平均開始値が84.1℃、最大値が145.7℃および終点が225.7℃であり、同時に平均エンタルピーが205.0ジュール/gであった。エポキシド基と得られた二級アミンの水素との反応に起因する第2発熱が観察され、平均開始値が247.9℃、最大値が368.6℃および終点が409.7℃であり、同時に平均エンタルピーが200.8ジュール/gであった。
【0160】
残りの硬化性ブレンドをオーブン内に置き、100℃で1時間維持し、次いで除去し、直ちに第2オーブン内に置き、150℃で1時間維持し、最後に除去し、直ちに第3オーブン内に置き、200℃で2時間維持し、続いて30分かけて室温までゆっくりと冷却した。熱硬化性樹脂は透明な淡緑色に着色した固体であった。ブレンドの部分(27.0mg)のDSC分析を、35cm
3/分で流れる窒素ストリーム下に25℃〜300℃まで10℃/分の加熱速度を用いて完了させた。232.2℃のガラス転移温度(Tg)が得られ、僅かな発熱シフトが274.0℃で始まった。上記条件を用いて第2走査を完了させ、残りの発熱が観察されることなく250.2℃のTgを得た。
【実施例3】
【0161】
ジシクロペンタジエンポリフェノールのポリグリシジルエーテルとジシアンジアミドとの熱誘導硬化
実施例1からのジシクロペンタジエンポリフェノールのポリグリシジルエーテル(0.7639g、0.00362エポキシド当量および粉末状の(促進されず)ジシアンジアミド(0.0318g、用いたポリグリシジルエーテルの4重量%)をガラスバイアル内に秤量し、一緒に十分に粉砕して均質な微粉末とした。ブレンドの一部分(8.60mg)のDSC分析を、35cm
3/分で流れる窒素ストリーム下に25℃〜350℃まで7℃/分の加熱速度を用いて完了させた。エポキシド基とジシアンジアミドとの反応に起因する発熱が観察され、開始値が160.5℃、最大値が197.2℃および終点が247.5℃であり、同時に平均エンタルピーが232.8ジュール/gであった。
【0162】
残りの硬化性ブレンドをオーブン内に置き、100℃で1時間維持し、次いで除去し、直ちに第2オーブン内に置き、150℃で1時間維持し、最後に除去し、直ちに第3オーブン内に置き、200℃で2時間維持し、続いて30分かけて室温までゆっくりと冷却した。熱硬化性樹脂は、濁った、黄色に着色した固体であった。ブレンドの一部分(21.4および24.0mg)のDSC分析を、35cm
3/分で流れる窒素ストリーム下に25℃〜300℃まで10℃/分の加熱速度を用いて完了させた。平均の実質的な発熱シフトが229.8℃で開始することが観察された。上記条件を用いて2回目の走査を完了させ、残りの発熱が267.6℃で開始することが観察され、214.8℃のTgを得た。上記条件を用いて3回目の走査を完了させ、残りの発熱が279.4℃で開始することが観察され、219.8℃のTgを得た。
【実施例4】
【0163】
ジシクロペンタジエンポリフェノールのポリグリシジルエーテルのエチレンジアミン付加物の合成
A.ジシクロペンタジエンポリフェノールのポリグリシジルエーテルの特性決定
ジシクロペンタジエンポリフェノールのポリグリシジルエーテルを、実施例1の方法を用いて調製した。エポキシ樹脂のアリコートの滴定は、20.88%がエポキシド(206.085のエポキシド当量)であることが実証された。
【0164】
B.付加物の合成
磁気撹拌棒を備えた1Lの三ツ口のガラス製丸底反応器に、エチレンジアミン(300.4g、20.0−NH当量)を仕込んだ。反応器に、冷却器、1L/分の窒素流を有する窒素入口および温度計をさらに具備させた。窒素雰囲気下での溶液の撹拌を、反応器下に配置したサーモスタット制御の加熱マントルを用いて加熱しながら開始した。撹拌した溶液が50℃に達したら、無水テトラヒドロフラン(50mL)に溶解した上記セクションAからのジシクロペンタジエンポリフェノールのポリグリシジルエーテル(4.12g、0.020エポキシド当量)の滴加を開始し、50℃の反応温度を維持しながらさらに6時間かけて完了させた。
【0165】
溶液を次の15.2時間の間50℃で保持した。室温まで冷却後、回収した溶液を、100℃の最大油浴温度を用いて12.8mmHgの最終真空まで回転蒸発させた。生成物を黄色に着色した僅かに粘着性の固体として回収した(5.39g)。付加物のアリコートの滴定により、アミンの水素の当量が71.65であることが明らかになった。
【実施例5】
【0166】
ジシクロペンタジエンポリフェノールのポリグリシジルエーテルのエポキシ樹脂とジシクロペンタジエンポリフェノールのポリグリシジルエーテルのエチレンジアミン付加物との硬化
A.硬化性(熱硬化可能な)ブレンドの調製
実施例4Aからのジシクロペンタジエンポリフェノールのポリグリシジルエーテル(0.3181g、0.001544エポキシド当量)と、実施例4Bからのジシクロペンタジエンポリフェノールのポリグリシジルエーテルのエチレンジアミン付加物(0.1106g、0.001544−NH当量)とを、4桁天秤を用いてガラスバイアル内に秤量した。次いで無水テトラヒドロフラン(2mL)および無水メタノール(1mL)を添加した。バイアルの内容物を穏やかに十分に撹拌し、均質な液体を得た。真空オーブンにおいて室温での脱揮発を完了させ、均質な、硬化性の粉末生成物を得た。
【0167】
B.硬化
ブレンドの一部分(8.70および9.50mg)の示差走査熱量測定(DSC)分析を、35cm
3/分で流れる窒素ストリーム下に20℃〜426℃まで7℃/分の加熱速度を用いて完了させた。配合物の硬化の間、1対の幅広の発熱に注意した:
【表1】
【0168】
上記条件を用いて2回目の走査を完了させ、230.02℃の平均Tgを得た。3回目の走査により、221.60℃の平均Tgを得た。第4走査により、225.91℃の平均Tgを得た。DSC分析の繰り返しにおいて、分解の証拠は観察されなかった。DSC分析から回収したサンプルは、不完全に融合された、透明の、金色に着色した固体であった。
【実施例6】
【0169】
4,4’−イソプロピリデンジフェノールのジグリシジルエーテルとジシクロペンタジエンポリフェノールのポリグリシジルエーテルのエチレンジアミン付加物とのエポキシ樹脂の硬化
A.硬化性(熱硬化可能な)組成物の調製
4,4’−イソプロピリデンジフェノールのジグリシジルエーテル(0.3533g、0.001955のエポキシド当量)と、実施例4Bからのジシクロペンタジエンポリフェノールのポリグリシジルエーテルのエチレンジアミン付加物(0.1401g、0.001955−NH当量)とを、4桁天秤を用いてガラスバイアル内に秤量した。用いた4,4’−イソプロピリデンジフェノールのジグリシジルエーテルは、Dow Chemical Company製のD.E.R.(商標)383であった。次いで無水メタノール(2mL)を添加した。バイアルの内容物を穏やかに十分に撹拌し、均質な液体を得た。真空オーブンにおいて室温での脱揮発を完了させ、均質な、硬化性の液体生成物を得た。
【0170】
B.硬化
ブレンドの一部分(10.1mg)の示差走査熱量測定(DSC)分析を、35cm
3/分で流れる窒素ストリーム下に0℃〜425℃まで7℃/分の加熱速度を用いて完了させた。配合物の硬化の間、1対の幅広の発熱に注意した:
【表2】
【0171】
上記条件を用いて2回目の走査を完了させ、267.43℃の弱いTgを得た。DSC分析において、分解の証拠は観察されなかった。DSC分析から回収したサンプルは、完全に融合された、透明の、琥珀色に着色した固体であった。
【0172】
C.室温硬化
室温(20℃)に保持した上記セクションAからのブレンドは、脱揮発後15分以内に架橋して、透明の、ゴム状の、淡黄色に着色した固体となった。20℃でさらに放置すると、固体生成物は剛性となった。