(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の実施形態の説明
定義
本明細書における元素周期表への全ての参照は、2003年にCRC Press,Inc.によって出版され著作権保護された元素周期表を参照するものとする。同様に、1種又は複数の族に対するいずれの参照も、族に番号をつけるためにIUPACシステムを使用しているこの元素周期表に反映された1種又は複数の族に対するものとする。特に別の記載があったり、文脈から黙示的であったり、又は当技術分野で習慣的である場合を除いて、全ての部及びパーセントは、重量に基づく。米国特許の実務の目的で、本明細書で参照されるいずれの特許、特許出願、又は刊行物の内容も、特に、合成技術、定義(本明細書に提供されたいずれの定義とも矛盾しない程度まで)及び当技術分野における一般的知識の開示に関して、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている(又はそれらの同等の米国版が参照により同様に組み込まれている)。
【0012】
用語「含む」及びその派生語は、同じことが本明細書に開示されているか否かに関わらず、任意の追加の成分、ステップ又は手順の存在を排除しないよう意図されている。疑問を避けるために、用語「含む」の使用による本明細書で特許請求の範囲に記載されている全ての組成物は、特に断りのない限り、任意の追加の添加剤、アジュバント、又はポリマーか否かに関わりなく化合物を含み得る。対照的に、用語「本質的に〜からなる」は、実施に不可欠でないものを除いて、いずれの続きの詳説の範囲からも、いずれの他の成分、ステップ又は手順も排除する。用語「からなる」は、明確に詳述されていないか列挙されていない、いずれの成分、ステップ又は手順も排除する。用語「又は」は、特に指定のない限り、個別に及び任意の組合せで列挙された要素を意味する。
【0013】
用語「ポリマー」には、通常のホモポリマー、すなわち、単一のモノマーから調製される均質なポリマー、及び少なくとも2種のモノマー或いは単一のモノマーから形成される場合でも化学的に差別化されたセグメント又はブロックをその中に含有するものの反応によって調製されるポリマーを意味するコポリマー(本明細書で互換的にインターポリマーと呼ばれる)の両方が含まれる。
【0014】
より具体的に、用語「ポリエチレン」には、エチレンのホモポリマー並びにエチレンが少なくとも50モルパーセントを構成するエチレン及び1種又は複数のC
3〜8αオレフィンのコポリマーが含まれる。
【0015】
用語「ポリプロピレン」には、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンなどのプロピレンのホモポリマー、並びにプロピレンが少なくとも50モルパーセントを構成するプロピレン及び1種又は複数のC
2、4〜8αオレフィンのコポリマーが含まれる。好ましくは、ポリマー中の少なくとも1種のブロック又はセグメントの複数の重合したモノマー単位(結晶性ブロック)は、好ましくは少なくとも90モルパーセント、より好ましくは少なくとも93モルパーセント、最も好ましくは少なくとも95モルパーセントのプロピレンを含む。異なるαオレフィン、例えば4−メチル−1−ペンテンなどから主として作られたポリマーは、同様に命名される。
【0016】
用語「結晶性」は、使用される場合、示差走査熱量測定法(DSC)又は同等の技術で測定して一次転移又は結晶融点(Tm)を有するポリマー又はポリマーブロックを意味する。この用語は、用語「半結晶性」と互換的に使用され得る。
【0017】
用語「結晶化可能な」は、得られるポリマーが結晶性になるよう重合し得るモノマーを意味する。結晶性エチレンポリマーは、それだけには限らないが、0.89g/ccから0.97g/ccまでの密度及び75℃から140℃までの融点を一般的に有する。結晶性プロピレンポリマーは、それだけには限らないが、0.88g/ccから0.91g/ccまでの密度及び100℃から170℃までの融点を一般的に有する。
【0018】
用語「非晶質」は、結晶融点を欠くポリマーを意味する。
【0019】
用語「アイソタクチック」は、
13C−NMR分析で測定して少なくとも70パーセントのアイソタクチックペンタッド(pentad)を有するポリマー繰り返し単位として定義される。「高度にアイソタクチックな」は、少なくとも90パーセントのアイソタクチックペンタッドを有するポリマーとして定義される。
【0020】
用語「ブロックコポリマー」又は「セグメント化コポリマー」は、直線的に接合した(join)2種以上の化学的に異なった領域又はセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマー、すなわち、ペンダント又はグラフトした形ではなく、重合した官能基に関して末端と末端が接合した(共有結合した)化学的に差別化された単位を含むポリマーを意味する。好ましい一実施形態において、ブロックは、組み込まれるコモノマーの量若しくはタイプ、密度、結晶性の量、結晶性のタイプ(例えば、ポリエチレン対ポリプロピレン)、このような組成のポリマーに起因する微結晶サイズ、立体規則性(アイソタクチック若しくはシンジオタクチック)のタイプ若しくは程度、位置規則性若しくは位置変則性、長鎖分岐若しくは超分岐を含む分岐の量、均質性、又は任意の他の化学的若しくは物理的特性において異なる。本発明のブロックコポリマーは、好ましい一実施形態において、触媒(複数可)と組み合わせた可逆的連鎖移動剤(複数可)の作用のための、ポリマー多分散性(PDI又はMw/Mn)及びブロック長分布の両方の独特な分布によって特徴付けられる。
【0021】
用語「結晶性ブロック複合体」(CBC)は、結晶性エチレン系ポリマー(CEP)、結晶性α−オレフィン系ポリマー(CAOP)、並びに結晶性エチレンブロック(CEB)及び結晶性α−オレフィンブロック(CAOB)を有するブロックコポリマーを含む本発明の新規なポリマーを意味し、ここで、ブロックコポリマーのCEBは、ブロック複合体中のCEPと本質的に同じ組成であり、ブロックコポリマーのCAOBは、ブロック複合体のCAOPと本質的に同じ組成である。さらに、CEP及びCAOPの量の間の組成分割(compositional split)は、ブロックコポリマー中の対応するブロックの間の組成分割と本質的に同じである。ブロックコポリマーは、直鎖又は枝分かれであってよい。より具体的に、それぞれのブロックセグメントの各々は、長鎖分岐を含むことができるが、ブロックコポリマーセグメントは、グラフト又は分岐ブロックを含むこととは反対に実質的に直鎖である。連続法で生成された場合、結晶性ブロック複合体は、望ましくは、1.7から15まで、好ましくは1.8から10まで、好ましくは1.8から5まで、より好ましくは1.8から3.5までのPDIを有する。
【0022】
CAOBは、その中に、モノマーが、90モル%を上回る、好ましくは93モルパーセントを上回る、より好ましくは95モルパーセントを上回る、好ましくは96モルパーセントを上回る量で存在する、重合したα−オレフィン単位の高度に結晶性なブロックを意味する。言い換えれば、CAOB中のコモノマー含有率は、10モルパーセント未満、好ましくは7モルパーセント未満、より好ましくは5モルパーセント未満、最も好ましくは4モルパーセント未満である。プロピレンの結晶性を有するCAOBは、80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは115℃以上、最も好ましくは120℃以上である対応する融点を有する。いくつかの実施形態において、CAOBは、全て又は実質的に全てプロピレン単位を含む。一方、CEBは、その中で、コモノマー含有率が、10モル%以下、好ましくは0モル%及び10モル%の間、より好ましくは0モル%及び7モル%の間、最も好ましくは0モル%及び5モル%の間である、重合したエチレン単位のブロックを意味する。このようなCEBは、好ましくは75℃以上、より好ましくは90℃、及び100℃以上である対応する融点を有する。
【0023】
重合方法
本発明の結晶性ブロック複合体ポリマーは、好ましくは、付加重合条件下で付加重合性モノマー又はモノマーの混合物を、少なくとも1種の付加重合触媒、共触媒及び可逆的連鎖移動剤を含む組成物と接触させるステップを含むプロセスによって調製され、前記プロセスは、定常状態の重合条件下で作動中の2個以上の反応器中又はプラグフロー重合条件下で作動中の反応器の2個以上のゾーン中の差別化されたプロセス条件下での生長しているポリマー鎖の少なくともいくつかの形成によって特徴付けられる。
【0024】
本発明の結晶性ブロック複合体を生成する上で有用である好適なこうした方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれている、2008年10月30日に公開された米国特許出願公開第2008/0269412号に見出すことができる。特に、重合は、触媒成分、モノマー、及び場合によって溶媒、アジュバント、スカベンジャー、及び重合助剤が、1個若しくは複数の反応器又はゾーンに連続的に供給され、ポリマー生成物が連続的にその中から除去される連続重合、好ましくは連続溶液重合として実施されることが望ましい。これに関連して使用される用語「連続」及び「連続的」の範囲に含まれるのは、短い定期又は不定期の間隔で反応物の断続的な付加及び生成物の除去が存在し、従って、時間がたてば、全体のプロセスは、実質的に連続であるプロセスである。さらに、上記に説明のとおり、可逆的連鎖移動剤(複数可)は、第一反応器若しくはゾーン、第一反応器の出口若しくは出口の直前又は第一反応器若しくはゾーン及び第二若しくは任意の後続の反応器若しくはゾーンの間を含む重合中のいずれの時点においても添加することができる。直列に接続された少なくとも2個の反応器又はゾーンの間の重合条件における、モノマー、温度、圧力における差異又はその他の差異によって、同じ分子内において、コモノマー含有量、結晶化度、密度、立体規則性、位置規則性、又は他の化学的若しくは物理的差異などの異なる構成のポリマーセグメントが、異なる反応器又はゾーンにおいて形成される。各セグメント又はブロックのサイズは、連続ポリマー反応条件によって決定され、好ましくはポリマーサイズの最確分布(most probable distribution)である。
【0025】
直列の各反応器は、高圧重合、溶液重合、スラリー重合、又は気相重合条件下で操作することができる。複数ゾーン重合において、全てのゾーンは、溶液重合、スラリー重合、又は気相重合などの同じタイプの重合下であるが、異なるプロセス条件において作動する。溶液重合プロセスは、ポリマーが使用される重合条件下で可溶である液体希釈剤中の触媒成分の均質な分散液を使用することが望ましい。通常、金属錯体又は共触媒がいずれも難溶性であるこのような均質な触媒分散液を生成するために超微粒子シリカ(extremely fine silica)又は同様の分散剤を使用する一つのこのようなプロセスが、US−A−5,783,512に開示されている。高圧法は、通常、100℃から400℃までの温度及び500bar(50MPa)を上回る圧力において実施される。スラリー法は、一般的に、不活性炭化水素希釈剤及び0℃から、得られるポリマーが該不活性重合媒体中で実質的に可溶性になる温度直下の温度までの温度を使用する。スラリー重合において好ましい温度は、30℃から、好ましくは60℃から、115℃まで、好ましくは100℃までである。圧力は、一般的に、大気圧(100kPa)から500psi(3.4MPa)までの範囲に及ぶ。
【0026】
前述のプロセスの全てにおいて、連続重合条件又は実施的に連続な重合条件が使用されることが好ましい。このような重合条件、特に連続溶液重合法の使用によって、高収率且つ高効率で本発明の結晶性ブロック複合体の経済的生産をもたらす高温反応器温度の使用が可能になる。溶液法は、触媒及び可逆的連鎖移動剤が、自由に混合及び反応し、例えばスラリー反応器又は気相反応器において起こり得るものに比べて、より容易なポリマー連鎖移動反応を可能にするのでとりわけ有利である。
【0027】
触媒は、その中で重合が行われる溶媒又は最終的な反応混合物と相溶性のある希釈剤への必要な金属錯体又は複合錯体の添加によって均質な組成物として調製され得る。所望の共触媒又は活性化剤及び、場合によって、可逆的連鎖移動剤を、触媒と重合すべきモノマー及び任意の追加の反応希釈剤との混合の前、それと同時、又はその後に、触媒組成物と混合することができる。
【0028】
常に、個別の成分及びいずれの活性触媒組成物も、酸素、水分及び他の触媒毒から保護されなければならない。従って、触媒成分、可逆的連鎖移動剤及び活性化された触媒は、酸素及び水分を含まない雰囲気中で、好ましくは乾燥した窒素などの不活性気体下で調製及び貯蔵されなければならない。
【0029】
本発明の範囲を決して制限することなく、このような重合方法を実施するための一手段は以下のとおりである。溶液重合条件下で作動している1個又は複数の十分に撹拌されたタンク又はループ反応器において、重合すべきモノマーを、反応器の一部分に、任意の溶媒又は希釈剤と一緒に連続的に導入する。反応器は、モノマーと共に任意の溶媒又は希釈剤及び溶解したポリマーから実質的に構成される比較的均質な液相を収容している。好ましい溶媒には、C
4〜10炭化水素又はそれらの混合物、特にヘキサンなどのアルカン又はアルカンの混合物、及び重合に使用されるモノマーの1種又は複数が含まれる。好適なループ反応器の例及び直列に作動する複数ループ反応器の使用を含むそれらの使用のための種々の好適な操作条件が、USP5,977,251、USP6,319,989及びUSP6,683,149に見出される。
【0030】
共触媒及び場合によって可逆的連鎖移動剤と一緒に触媒が、少なくとも1つの位置において反応器液相又はそのいずれかの再循環部分に連続的又は断続的に導入される。反応器温度及び圧力は、溶媒/モノマー比、触媒添加速度を調節することによって、及び冷却又は加熱コイル、ジャケット又は両方の使用によって制御され得る。重合速度は、触媒添加の速度によって制御される。ポリマー生成物中の所与のモノマーの含有率は、反応器中のモノマーの比率によって影響され、これは、これらの成分の反応器へのそれぞれの供給速度を操作することによって制御される。ポリマー生成物の分子量は、場合によって、温度、モノマー濃度などの他の重合変数を制御することによって、又は前述の可逆的連鎖移動剤、若しくは当技術分野でよく知られている水素などの連鎖停止剤によって制御される。ポリマー鎖の大部分は、可逆的連鎖移動剤との結合によって休止状態にあり、第二反応器においてさらに生長する可能性を有するように、場合によって導管又は他の運搬手段を用いて、反応器の排出に接続されているのは、第二反応器である。第一及び第二反応器の間に、少なくとも1つのプロセス条件の差異が設定される。2種以上のモノマーのコポリマーの形成における使用のために好ましくは、上記差異は、1種又は複数のコモノマーの存在若しくは不存在又はコモノマー濃度の差異である。直列に第二反応器と同様にそれぞれ配置された追加の反応器も提供することができる。ひと続きの最後の反応器を出る際に、流出液を、水、蒸気若しくはアルコールなどの触媒停止剤(catalyst kill agent)又はカップリング剤と接触させる。
【0031】
2個の反応器又はゾーンで結晶性エチレンブロック(CEB)及び結晶性α−オレフィンブロック(CAOB)を有するブロックポリマーを生成する場合、第一反応器若しくはゾーンでCEBを生成し、第二反応器若しくはゾーンでCAOBを生成すること又は第一反応器若しくはゾーンでCAOBを生成し、第二反応器若しくはゾーンでCEBを生成することが可能である。新鮮な可逆的連鎖移動剤を添加して第一反応器又はゾーンでCEBを生成することは、より有利である。CEBを生成する反応器又はゾーンにおけるエチレンの増加されたレベルの存在は、一般的に、CAOBを生成するゾーン又は反応器中に比べてその反応器又はゾーン中でより高い分子量をもたらす。新鮮な可逆的連鎖移動剤は、CEBを生成する反応器又はゾーン中のポリマーのMWを減少させ、CEB及びCAOBセグメントの長さの間のより良い全体的なバランスをもたらす。
【0032】
直列で反応器又はゾーンを操作する場合、一方の反応器がCEBを生成し、他方の反応器がCAOBを生成するように様々な反応条件を維持する必要がある。溶媒及びモノマー再循環システムによる(直列にされた)第一反応器から第二反応器へ又は逆に第二反応器から第一反応器へ戻るエチレンの繰り越しは、最小化されることが好ましい。このエチレンを除去するための多くの可能な単位操作があるが、エチレンが高級α−オレフィンより揮発性が高いため、一つの簡単な方法は、未反応エチレンの多くを、CEBを生成する反応器の流出液の圧力を減少させエチレンを蒸発分離(flash off)することによる蒸発ステップによって除去することである。より好ましいアプローチは、追加の単位操作を避け、CEB反応器でのエチレンの転換率が100%に近づくようにエチレン対高級α−オレフィンの格段により大きな反応性を使用することである。反応器でのモノマーの全転換率(overall conversion)は、α−オレフィン転換率を高レベル(90から95%)に維持することによって制御することができる。
【0033】
得られるポリマー生成物は、減圧において残留モノマー又は希釈剤などの反応混合物の揮発性成分を蒸発分離し、必要ならば、脱蔵押出機などの装置でさらなる脱蔵(devolatilization)を行うことによって回収することができる。連続法において、反応器中の触媒及びポリマーの平均滞留時間は、一般的に、5分から8時間までであり、好ましくは10分から6時間までである。
【0034】
別法として、前述の重合は、その異なるゾーン又は領域の間に、モノマー、触媒、可逆的連鎖移動剤、温度又は他のグラジエントを設定し、場合によって触媒及び/又は可逆的連鎖移動剤の別々の添加を伴い、断熱又は非断熱重合条件下で操作するプラグフロー型反応器(plug flow reactor)で実施することができる。触媒、モノマー、又は可逆的連鎖移動剤は、プラグフロー型反応器の出発点でもっぱら、又は反応器の長さに沿った様々なポイントで導入することができる。
【0035】
触媒組成物は、先に開示されたように、不活性無機又は有機の微粒子化(particulated)固体上に必要成分を吸着することによって不均質系触媒として調製し使用することもできる。好ましい一実施形態において、不均質系触媒は、金属錯体並びに不活性無機化合物及び活性水素含有活性化剤の反応生成物、特にトリ(C
1〜4アルキル)アルミニウム化合物及びヒドロキシアリールトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのアンモニウム塩、例えば(4−ヒドロキシ−3,5−ジターシャリーブチルフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのアンモニウム塩などの反応生成物を共沈させることによって調製される。不均質系又は担持型に調製された場合、触媒組成物は、スラリー重合又は気相重合に使用され得る。実際的な制限として、スラリー重合は、ポリマー生成物が実質的に不溶性である液体希釈剤中で起こる。好ましくは、スラリー重合のための希釈剤は、5個未満の炭素原子を有する1種又は複数の炭化水素である。必要に応じて、エタン、プロパン又はブタンなどの飽和炭化水素は、希釈剤として全体的又は部分的に使用し得る。溶液重合と同様に、αオレフィンコモノマー又は様々なαオレフィンモノマーの混合物は、希釈剤として全体的又は部分的に使用し得る。最も好ましくは、希釈剤の少なくとも大部分が、重合すべき1種又は複数のαオレフィンモノマーを含む。
【0036】
好ましい一実施形態において、本発明の結晶性ブロック複合体は、ブロック長の最確分布を有するブロックポリマーの画分を含む。本発明による好ましいブロックポリマーは、2又は3種のブロック又はセグメントを含有するブロックコポリマーである。3種以上のセグメント(すなわち区別できるブロックで分離されたブロック)を含有するポリマーにおいて、各ブロックは、同一であるか化学的に異なってよく、特性の分布によって一般的に特徴付けられる。ポリマーを作る一方法において、可逆的連鎖移動が、ポリマー鎖の寿命を延ばして、ポリマー鎖の十分な画分が、可逆的連鎖移動剤で停止されたポリマーの形態で、実質的にプラグフロー条件下で作動している複数反応器の連続の少なくとも第一反応器又は複数ゾーンを有する反応器の第一反応器ゾーンを出るようにする方法として使用される。後続の反応器又はゾーンにおける可逆的連鎖移動剤から触媒へ戻るポリマー鎖の移動において、ポリマー鎖の生長が異なる重合条件下で起こる。それぞれの反応器又はゾーンにおける異なる重合条件には、異なるモノマー、コモノマー、若しくはモノマー/コモノマー(複数可)比、異なる重合温度、圧力若しくは種々のモノマーの分圧、異なる触媒、異なるモノマー勾配、又は区別できるポリマーセグメントの形成をもたらす任意の他の差異の使用が含まれる。従って、ポリマーの少なくとも一部は、2種、3種、又はそれ以上の、好ましくは2種又は3種の、直鎖状に配列した差別化されたポリマーセグメントを含む。
【0037】
得られるポリマーの以下の数学的処理は、理論的に導かれるパラメーターに基づき、そのパラメーターは、特に生長するポリマーが曝露される異なる重合条件を有する直列に接続された2種以上の定常状態の、連続反応器又はゾーンにおいて、各反応器又はゾーンに形成されるポリマーのブロック長は、以下のように導かれる最確分布に一致するように適用し、そのことを証明すると考えられる(ここで、piは、触媒iからのブロック配列に関する反応器中のポリマー生長の確率である)。理論的な処理は、鎖長又はブロック長によって影響されない質量作用反応速度式の使用を含む、当技術分野で知られており分子構造に対する重合速度論の影響を予想することに使用される標準の仮定及び方法、並びにポリマー鎖の生長は、平均の反応器滞留時間に比べて非常に短時間に完了するという仮定に基づく。このような方法は、先にW. H. Ray、J. Macromol. Sci., Rev. Macromol. Chem., C8、1 (1972)並びにA. E. Hamielec及びJ. F. MacGregor、「Polymer Reaction Engineering」、K.H. Reichert及びW. Geisler、編、Hanser、Munich、1983に開示されている。さらに、所与の反応器における可逆的連鎖移動反応の発生毎に、単一のポリマーブロックの形成がもたらされるが、可逆的連鎖移動剤によって停止されたポリマーの異なる反応器又はゾーンへの移動及び異なる重合条件への曝露によって、異なるブロックの形成がもたらされると考えられる。触媒iについて、反応器において生成されている長さnの配列の画分は、Xi[n]で与えられ、ここで、nは、ブロック中のモノマー単位の総数を表す1から無限大の整数である。
Xi[n]=(1−pi)pi(n−l) ブロック長の最確分布
【0039】
1種超の触媒が反応器又はゾーンに存在する場合、各触媒は、生長の確率(pi)を有し、従って、その反応器又はゾーンにおいて作られるポリマーについて独自の平均ブロック長及び分布を有する。最も好ましい一実施形態において、生長の確率は、各触媒i={1,2...}について次のとおり定義される。
【0040】
【数2】
ここで、
Rp[i]=触媒iによるモノマー消費の局所速度、(モル/L/時間)、
Rt[i]=触媒iについての連鎖移動及び停止の合計速度、(モル/L/時間)、並びに
Rs[i]=休止ポリマーの可逆的連鎖移動の局所速度、(モル/L/時間)。
【0041】
所与の反応器について、ポリマー生長速度、Rp[i]は、合計モノマー濃度、[M]を乗じ、触媒iの局所濃度、[Ci]を乗じた見かけ速度定数、
【0042】
【数3】
を使用して次のとおり定義される。
【0044】
連鎖移動、停止、及び可逆的連鎖移動速度は、水素への連鎖移動(H2)、ベータ水素化物脱離、及び可逆的連鎖移動剤(CSA)への連鎖移動の関数として求められる。量[H2]及び[CSA]は、モル濃度であり、各添字付きk値は、反応器又はゾーンの速度定数である。
Rt[i]=kH2i[H2][Ci]+kβi[Ci]+kai[CSA][Ci]
【0045】
休止ポリマー鎖は、ポリマー部分がCSAに連鎖移動する時に作られ、反応する全てのCSA部分は、休止ポリマー鎖とそれぞれペアを組むと考えられる。触媒iによる休止ポリマーの可逆的連鎖移動の速度は、次のように与えられ、ここで、[CSAf]は、CSAの供給濃度であり、量([CSAf]−[CSA])は、休止ポリマー鎖の濃度を表す。
Rs[i]=kai[Ci]([CSAf]−[CSA])
【0046】
前述の理論的処理の結果として、得られるブロックコポリマーの各ブロックについての全体のブロック長分布は、触媒iについての局所ポリマー生成速度で加重値を与えられたXi[n]で先に与えられたブロック長分布の合計であることが理解することができる。これは、少なくとも2つの異なるポリマー生成条件下で作られたポリマーは、それぞれ最確ブロック長分布を有する少なくとも2種の区別できるブロック又はセグメントを有することを意味する。
【0047】
モノマー
本発明の結晶性ブロック複合体の調製における使用に好適なモノマーには、エチレン、プロピレン、又は結晶性ポリマーを生成する任意の他のオレフィン、及び任意の付加重合可能なコモノマーが含まれる。重合可能なコモノマーは、好ましくは、任意のオレフィン又はジオレフィンコモノマー、より好ましくは、任意のαオレフィンコモノマーである。好適なコモノマーの例には、2から30個、好ましくは2から20個の炭素原子の直鎖又は分枝αオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−l−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−l−ペンテン、3−メチル−l−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン及び1−エイコセンなど;3から30個、好ましくは3から20個の炭素原子のシクロオレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、及び2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなど;ジ−及びポリ−オレフィン、例えばブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、及び5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンなど;芳香族ビニル化合物、例えばモノ−又はポリ−アルキルスチレンなど(スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン及びp−エチルスチレンを含む)、及び官能基を含む誘導体、例えばメトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、メチルビニルベンゾエート、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、3−フェニルプロペン、4−フェニルプロペン及びα−メチルスチレン、ビニルクロリド、1,2−ジフルオロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、及び3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンが含まれ、但し、モノマーは、使用される条件下で重合可能であることを条件とする。
【0048】
本明細書で少なくとも1種のCSAと組み合わせた使用のために好ましいモノマー又はモノマーの混合物には、エチレン;プロピレン;プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、及びスチレンからなる群から選択される1種又は複数のモノマーとエチレンの混合物;エチレン、プロピレン及び共役又は非共役ジエンの混合物が含まれる。
【0049】
触媒及び可逆的連鎖移動剤
本発明における使用のために好適な触媒及び触媒前駆体には、WO2005/090426に開示されたものなどの金属錯体、特に、20頁、30行に始まり53頁、20行までに開示されたものが含まれ、これは、参照により本明細書に組み込まれている。好適な触媒は、US2006/0199930;US2007/0167578;US2008/0311812;US7,355,089 B2;又はWO2009/012215にも開示されており、これらは、触媒に関して参照により本明細書に組み込まれている。
【0050】
特に好ましい触媒は、次の式のものである
【0051】
【化1】
(ここで、
R
20は、水素を数に入れず5から20個までの原子を含む芳香族若しくは不活性的に置換された芳香族基、又はそれらの多価誘導体であり;
T
3は、水素を数に入れず1から20個までの原子を有するヒドロカルビレン若しくはシラン基、又はそれらの不活性的に置換された誘導体であり;
M
3は、第4族金属、好ましくはジルコニウム又はハフニウムであり;
Gは、アニオン性、中性又はジアニオン性配位基;好ましくは水素を数に入れず20個までの原子を有するハロゲン化物、ヒドロカルビル又はジヒドロカルビルアミド基であり;
gは、このようなG基の数を示す1から5までの数であり;
結合及び電子供与相互作用は、それぞれ線及び矢印で表されている)。
【0052】
好ましくは、このような錯体は、次式に対応する
【0053】
【化2】
(式中、T
3は、水素を数に入れず2から20個までの原子の二価の架橋基、好ましくは置換又は非置換、C
3〜6アルキレン基であり;
Ar
2は、出現毎に独立に、水素を数に入れず6から20個の原子のアリーレン又はアルキル−若しくはアリール−置換されたアリーレン基であり;
M
3は、第4族金属、好ましくはハフニウム又はジルコニウムであり;
Gは、出現毎に独立に、アニオン性、中性又はジアニオン性配位基であり;
gは、このようなX基の数を示す1から5までの数であり;
電子供与相互作用は、矢印で示されている)。
【0054】
前述の式の金属錯体の好ましい例には、次の化合物が含まれる
【0055】
【化3】
(ここで、M
3は、Hf又はZrであり;
Ar
4は、C
6〜20アリール又は不活性的に置換されたその誘導体、特に3,5−ジ(イソプロピル)フェニル、3,5−ジ(イソブチル)フェニル、ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル、又はアントラセン−5−イルであり、
T
4は、出現毎に独立に、C
3〜6アルキレン基、C
3〜6シクロアルキレン基、又は不活性的に置換されたその誘導体を含み;
R
21は、出現毎に独立に、水素、水素を数に入れず50個までの原子のハロ、ヒドロカルビル、トリヒドロカルビルシリル、又はトリヒドロカルビルシリルヒドロカルビルであり;
Gは、出現毎に独立に、水素を数に入れず20個までの原子のハロ又はヒドロカルビル又はトリヒドロカルビルシリル基であり、或いは2個のG基は、一緒になって、前述のヒドロカルビル又はトリヒドロカルビルシリル基の二価誘導体である)。
【0056】
特に好ましいのは、次式の化合物である
【0057】
【化4】
(式中、Ar
4は、3,5−ジ(イソプロピル)フェニル、3,5−ジ(イソブチル)フェニル、ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル、又はアントラセン−5−イルであり、
R
21は、水素、ハロ、又はC
1〜4アルキル、特にメチルであり、
T
4は、プロパン−1,3−ジイル又はブタン−1,4−ジイルであり、
Gは、クロロ、メチル又はベンジルである)。
【0058】
他の好適な金属錯体は、次式のものである。
【0060】
前述の多価ルイス塩基錯体は、第4族金属の供給源及び中性多官能性配位子源を必要とする標準のメタレーション及びリガンド交換手法によって好都合に調製される。さらに、上記錯体は、アミド除去及び対応する第4族金属テトラアミド及びトリメチルアルミニウムなどヒドロカルビル化剤から出発するヒドロカルビル化法を用いても調製することができる。他の技術も使用し得る。これらの錯体は、とりわけ、米国特許第6,320,005号、6,103,657号、WO02/38628、WO03/40195、及びUS04/0220050の開示から知られている。
【0061】
好適な共触媒は、WO2005/090426に開示されたもの、特に、54頁、1行から60頁、12行までに開示されたものであり、これは、参照により本明細書に組み込まれている。
【0062】
好適な可逆的連鎖移動剤は、WO2005/090426に開示されたもの、特に、19頁、21行から20頁12行までに開示されたものであり、これは、参照により本明細書に組み込まれている。特に好ましい可逆的連鎖移動剤は、ジアルキル亜鉛化合物である。
【0063】
好ましくは、本発明のブロック複合体ポリマーは、重合形態のエチレン、プロピレン、1−ブテン又は4−メチル−1−ペンテン及び場合によって1種又は複数のコモノマーを含む。好ましくは、結晶性ブロック複合体のブロックコポリマーは、重合形態で、エチレン、プロピレン、1−ブテン、又は4−メチル−1−ペンテン及び場合によって1種又は複数のC
4〜20αオレフィンコモノマーを含む。追加の好適なコモノマーは、ジオレフィン、環状オレフィン、及び環状ジオレフィン、ハロゲン化ビニル化合物、及びビニリデン芳香族化合物から選択される。
【0064】
得られるブロック複合体ポリマーにおけるコモノマー含有率は、いずれの好適な技術を使用して測定してもよく、核磁気共鳴(NMR)分光学に基づく技術が好ましい。
【0065】
好ましくは、本発明の結晶性ブロック複合体ポリマーは、0.5から95wt%までのCEP、0.5から95wt%までのCAOP及び5から99wt%までのブロックコポリマーを含む。より好ましくは、結晶性ブロック複合体ポリマーは、0.5から79wt%までのCEP、0.5から79wt%までのCAOP及び20から99wt%までのブロックコポリマーを含み、より好ましくは、0.5から49wt%までのCEP、0.5から49wt%までのCAOP及び50から99wt%までのブロックコポリマーを含む。重量パーセントは、結晶性ブロック複合体の総重量に基づく。CEP、CAOP及びブロックコポリマーの重量パーセントの合計は、100%である。
【0066】
好ましくは、本発明のブロックコポリマーは、5から95重量パーセントまでの結晶性エチレンブロック(CEB)及び95から5重量パーセントまでの結晶性α−オレフィンブロック(CAOB)を含む。それらは、10wt%から90wt%までのCEB及び90wt%から10wt%までのCAOBを含んでよい。より好ましくは、ブロックコポリマーは、25から75wt%までのCEB及び75から25wt%までのCAOBを含み、一層より好ましくは、それらは、30から70wt%までのCEB及び70から30wt%までのCAOBを含む。
【0067】
本発明の結晶性ブロック複合体ポリマーは、通常の、ランダムコポリマー、ポリマーの物理的ブレンド、及び逐次モノマー付加により調製されるブロックコポリマーから差別化することができる。結晶性ブロック複合体は、結晶性ブロック複合体指数(crystalline block composite index)、より良い引張強さ、改善された破壊強さ、より微細なモルフォロジー、改善された光学的性質、及び低温でのより大きな衝撃強さなどの特性によってランダムコポリマー及び物理的ブレンドから差別化することができ;分子量分布、レオロジー、剪断減粘性、レオロジー比によって、及びブロック多分散性が存在する点において逐次モノマー付加により調製されるブロックコポリマーから差別化することができる。ブロックセグメント多分散性は、不混和性ポリマーの微細分散を形成するために有益であることが示されている(R. B. Thompson及びM. W. Matsen、Phys.Rev.Let.、2000、85(3)、670)。結晶性ブロック複合体の固有の特徴は、ブロックコポリマーの個別のブロックが結晶性であるので、それらは、キシレン分別、溶媒/非溶媒、又は昇温溶離分別又は結晶化溶離分別などの溶媒又は温度による通常の手段によって分別することができないことである。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明のブロック複合体は、ゼロより大きいが約0.4未満であるか約0.1から約0.3までである以下に定義される結晶性ブロック複合体指数(CBCI)を有する。他の実施形態において、CBCIは、約0.4より大きく最大で約1.0までである。いくつかの実施形態において、CBCIは、約0.1から約0.9まで、約0.1から約0.8まで、約0.1から約0.7まで又は約0.1から約0.6までの範囲にある。さらに、CBCIは、約0.4から約0.7まで、約0.5から約0.7まで、又は約0.6から約0.9までの範囲にあってよい。いくつかの実施形態において、CBCIは、約0.3から約0.9まで、約0.3から約0.8まで、又は約0.3から約0.7まで、約0.3から約0.6まで、約0.3から約0.5まで、又は約0.3から約0.4までの範囲にある。他の実施形態において、CBCIは、約0.4から約1.0まで、約0.5から約1.0まで、又は約0.6から約1.0まで、約0.7から約1.0まで、約0.8から約1.0まで、又は約0.9から約1.0までの範囲にある。
【0069】
さらに好ましくは、本発明のこの実施形態の結晶性ブロック複合体は、1,000から約2,500,000まで、好ましくは35000から約1,000,000まで、より好ましくは50,000から500,000まで、50,000から約300,000まで、好ましくは50,000から約200,000までの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0070】
本発明のポリマーは、合計組成物重量に対して5から約95パーセントまで、好ましくは10から60パーセントまで、より好ましくは20から50パーセントまでのプロセス油で油展することができる。好適な油には、油展EPDMゴム配合物の製造において通常使用される任意の油が含まれる。例には、精製されたナフテン系及びパラフィン系オイルの両方、及び重合した合成低分子量、非晶質ポリα−オレフィンが含まれ、パラフィン系オイルが好ましい。
【0071】
本発明のポリマーは、任意の好適な架橋剤によって架橋することができる。好適な架橋剤には、それだけには限らないが、フェノール樹脂、過酸化物、アジ化物、アルデヒド−アミン反応生成物、ビニルシラングラフト部分、ヒドロシリル化、置換尿素、置換グアニジン;置換キサンテート;置換ジチオカルバメート;硫黄含有化合物、例えばチアゾール、イミダゾール、スルフェンアミド、チウラミジスルフィド(thiuramidisulfide)、パラキノンジオキシム、ジベンゾパラキノンジオキシム、硫黄など;及びそれらの組合せが含まれる。米国特許第7,579,408号、31列、54行から34列、52行までに開示されたものなどの好適な架橋剤も使用することができ、この開示は参照により本明細書に組み込まれている。
【0072】
架橋は、電子線放射などの放射線の適用によっても達成し得る。
【0073】
本発明による組成物は、カーボンブラックを含み得る。好ましくは、カーボンブラックは、合計組成物重量に対して10から80パーセントまで、より好ましくは20から60パーセントまでの量で存在する。
【0074】
本発明に従って有用に使用される本配合物の追加の成分には、得られる組成物の性質を損なわない量で様々な他の成分が含まれる。これらの成分には、それだけには限らないが、酸化カルシウム又は酸化マグネシウムなどの活性化剤;ステアリン酸などの脂肪酸及びそれらの塩;炭酸カルシウム又は炭酸マグネシウム、シリカ、及びケイ酸アルミニウムなどの充てん剤及び補強剤;ジカルボン酸のジアルキルエステルなどの可塑剤;劣化防止剤;軟化剤;ワックス;並びに顔料が含まれる。
【0075】
ブレンドに適したHDPE/PP及びプロピレン系ポリマー
本発明のいくつかの実施形態は、98から0.5wt%までの結晶性ブロック複合体を含み、残りがポリエチレン、ポリα−オレフィン、及びそれらの組合せである組成物を含む。好ましくは、上記組成物は、50から0.5wt%までのCBC、より好ましくは15から0.5wt%までのCBCを含む。
【0076】
クロム触媒(広いMWD)、チーグラー・ナッタ(中程度のMWD)、又はメタロセン若しくはポストメタロセン触媒(狭いMWD)のいずれかを用いる気相法、溶液法、又はスラリー法によって生成されるものなどの任意の高密度ポリエチレン(HDPE)又は直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を、ポリエチレン成分として使用することができる。さらに、オートクレーブ又は管形反応器のいずれかにおいて高圧フリーラジカル重合によって生成される任意のLDPEホモポリマー又はコポリマーを使用することができる。本発明において使用されるポリエチレンは、0.90から0.98g/cm
3までの密度を有するHDPE又はLLDPEであってよい。さらに、ポリエチレンは、0.91から0.94g/cm
3までの密度範囲を有する低密度ポリエチレン(LDPE)ホモポリマーであってよく、又は酢酸ビニル、α,βエチレン性不飽和モノ−若しくはジカルボン酸、及びそれらの組合せ、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸エチル、若しくはアクリル酸ブチルなどの好適なコモノマーと共重合していてもよい。α,βエチレン性不飽和モノ−又はジカルボン酸を含有するLDPEのコポリマーは、ポスト重合プロセスにおいて、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び遷移金属;並びにそれらの組合せの金属イオン及び化合物によって中和することができる。特定のカチオン源には、それだけには限らないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、セシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、亜鉛、錫、希土類金属、及びそれらの組合せの金属イオン及び化合物が含まれる。ポリプロピレン又はプロピレンエラストマー若しくはプラストマー及び少なくとも1種の好適なブロック複合体とブレンドされた場合、それらが、該ポリプロピレン又はプロピレン系エラストマー若しくはプラストマーに比べてブレンド組成物の溶融強度を、少なくとも10%、好ましくは25%、最も好ましくは50%増加することを条件として、ポリエチレンブレンド成分のいずれの単体又は組合せも使用することができる。
【0077】
結晶性ポリα−オレフィンは、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリ(4−メチルペンテン)などの任意のこのようなポリマーであってよい。本発明において使用されるポリプロピレンポリマーは、当業者に知られている任意の手段によって作られる任意のポリプロピレンポリマー又はポリプロピレンポリマーブレンド、例えばホモポリマーポリプロピレン、ポリプロピレンのランダムエチレン若しくはブテンコポリマー、又は弾性のある(rubbery)エチレン−プロピレンコポリマーと組み合わされたホモポリマーポリプロピレン若しくはエチレン及びプロピレンの結晶性ランダムコポリマーのいずれかを含む耐衝撃性改質ポリプロピレンブレンドなどであってよい。
【0078】
VERSIFY Plastomer及びElastomer(The Dow Chemical Company)並びにVISTAMAXXポリマー(ExxonMobil Chemical Company)などのプロピレン系エラストマー(PBE)又はプラストマー(PBP)も、本発明において使用することができる。PBE又はPBPは、5wt%から95wt%まで、好ましくは10wt%から90wt%まで、より好ましくは30wt%から70wt%までの量で使用することができる。
【0079】
本発明の組成物は、成分A)及びB)を有しC)を欠く組成物と比べて改善された性質を提供する。特に、下記に詳述されたように測定された100mm/秒及び190℃における上記組成物の溶融強度は、C)を欠く組成物のものと比べて、少なくとも115%大きく、好ましくは少なくとも120%大きく、より好ましくは少なくとも130%大きく、最も好ましくは少なくとも140%大きい。さらに、上記組成物の下記に詳述されたように測定された平均粒径(mean particle size)は、C)を欠く組成物のものと比べて、少なくとも50%小さく、好ましくは少なくとも60%小さく、より好ましくは少なくとも70%小さく、最も好ましくは少なくとも80%小さい。
【0080】
本発明の組成物は、成型品、部品及び他のこのような用途に加えて、それだけには限らないが、大型部品の吹込み成形、熱成形、押出被覆、及びインフレートフィルム用途などの用途に使用することができる。
【0081】
試験方法
各レジンの全体的な組成を、DSC、NMR、GPC、DMS、及びTEMモルフォロジーによって決定する。HTLC分別を、下記に説明されるポリマーの結晶性ブロック複合体指数を予測するためにさらに使用する。ポリマーについて測定されるポリマーの物理的性質には、引張特性、光学的特性、及び溶融伸長特性が含まれる。
【0082】
引張試験
単軸引っ張りにおける応力−歪み挙動を、ASTM D1708微小引張試験片を使用して測定する。試料を、23℃において50mm/分でInstronを用いて引っ張る。破断点引張強さ及び破断点伸びを、5個の試験片の平均について記録する。
【0083】
光学的性質
ヘーズを、0.5mm圧縮成形フィルムを使用してASTM D1003に従って測定した。透明度を、0.5mm圧縮成形フィルムを使用してASTM D1746に従って測定した。ポリマーフィルムを、圧縮成形及びその後の急冷によって調製する。ポリマーを、1000psiにおいて190℃で1分間、前溶融し、次いで、5000psiにおいて2分間、圧縮し、次いで、冷却したプラテン(15〜20℃)の間で2分間、急冷する。
【0084】
圧縮成形条件
ポリマーフィルム及び試験片は(他に特に規定がなければ)、Carver Press(例えばModel #4095−4PR1001Rなど)を使用して、圧縮成形及びその後の急冷によって調製される。ポリマーを、1000psiにおいて190℃で1分間、前溶融し、次いで、5000psiにおいて2分間、圧縮し、次いで、冷却したプラテン(15〜20℃)の間で2分間、急冷する。
【0085】
示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定を、RCS冷却アクセサリー及びオートサンプラーを備えたTA Instruments Q1000 DSCで実施する。50ml/分の窒素パージガス流を使用する。試料を薄いフィルムに圧縮し、約230℃でプレス中において溶融し、次いで、室温(25℃)に空気冷却する。次いで、約3〜10mgの材料を切断し、正確に計量し、後で、かしめて閉じる軽いアルミニウムパン(約50mg)に置く。試料の熱挙動を、次の温度プロファイルを用いて調べる。試料を230℃に急速に加熱し、前の熱履歴を取り除くために3分間、定温に保つ。次いで、試料を、10℃/分の冷却速度で−90℃に冷却し、3分間、−90℃に保つ。次いで、試料を、10℃/分の加熱速度で230℃に加熱する。冷却曲線及び第二加熱曲線を記録する。
【0086】
高温液体クロマトグラフィー(HTLC)
HTLCを、それらの両方が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2010−0093964号及び2009年12月21日に出願された米国特許出願第12/643111号に開示されている方法に従って実施する。試料は、以下に記載された方法によって分析する。
【0087】
Waters GPCV2000高温SECクロマトグラフを、HT−2DLC装置を作るために再構成した。2つのShimadzu LC−20ADポンプを、2成分ミキサーを介してGPCV2000のインジェクターバルブに接続した。第一次元(D1)HPLCカラムを、インジェクター及び10ポートスイッチバルブ(Valco Inc)の間に接続した。第二次元(D2)SECカラムを、10ポートバルブ及びLS(Varian Inc.)、IR(濃度及び組成)、RI(屈折率)、及びIV(固有粘度)検出器の間に接続した。RI及びIVは、GPCV2000に内蔵されていた。IR5検出器は、スペイン、Valencia市、PolymerCharによって供給された。
カラム:D1カラムは、Thermo Scientificより購入した高温Hypercarb黒鉛カラム(2.1×100mm)であった。D2カラムは、Varianから購入したPLRapid−Hカラム(10×100mm)であった。
試薬:HPLCグレードのトリクロロベンゼン(TCB)を、Fisher Scientificより購入した。1−デカノール及びデカンは、Aldrichからであった。2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(Ionol)もAldrichから購入した。
試料の調製:0.01〜0.15gのポリオレフィン試料を、10mL Waters オートサンプラーバイアルに置いた。後で、200ppmのIonolを含む1−デカノール又はデカンのいずれかの7mLを、このバイアルに添加した。試料バイアルにヘリウムを約1分間散布した後、試料バイアルを、温度を160℃に設定した加熱振とう機に置いた。このバイアルを上記温度で2時間、振とうすることによって溶解が行われた。次いで、このバイアルを注入のためにオートサンプラーに移した。溶液の実際の体積は、溶媒の熱膨張のため7mLより大きかったことは留意されたい。
HT−2DLC:D1の流速は0.01mL/分であった。移動相の組成は、操作の最初の10分間は100%の弱い溶離液(1−デカノール又はデカン)であった。次いで、組成を、489分で60%の強い溶離液(TCB)に増加させた。生のクロマトグラムの継続時間として489分間、データを集めた。10ポートバルブが、3分毎に切り替わり、489/3=163SECクロマトグラムをもたらした。489分のデータの収集時間後、次回の操作のためにカラムを清掃し平衡させるために、操作後の勾配を使用した。
清掃ステップ:
1.490分:フロー=0.01分;//0から490分まで0.01mL/分の一定の流速を維持する。
2.491分:フロー=0.20分;//流速を0.20mL/分に増加する。
3.492分:%B=100;//移動相の組成を100%TCBに増加させる
4.502分:%B=100;//2mLのTCBを用いてカラムを洗う
平衡ステップ:
5.503分:%B=0;//移動相の組成を100%の1−デカノール又はデカンに変える
6.513分:%B=0;//2mLの弱い溶離液を用いてカラムを平衡させる
7.514分:フロー=0.2mL/分;//491から514分まで0.2mL/分の一定のフローを維持する
8.515分:フロー=0.01mL/分;//流速を0.01mL/分に低下させる。
ステップ8の後、流速及び移動相の組成は、操作の勾配の初期状態と同じであった。
D2の流速は、2.51mL/分であった。2つの60μLループを10ポートスイッチバルブに取り付けた。D1カラムからの30μLの溶離液が、バルブのスイッチ毎にSECカラムに送られた。
IR、LS15(15°における光散乱シグナル)、LS90(90°における光散乱シグナル)、及びIV(固有粘度)シグナルを、SS420Xアナログ−デジタル変換ボックスを通してEZChromによって収集した。クロマトグラムを、ASCIIフォーマットにエクスポートし、データ整理のために自社制作(home-written)MATLABソフトウェアにインポートした。分析すべきCAOB及びCEBポリマーと類似の性質であるポリマーの、ポリマー組成及び保持容量の適切な較正曲線を使用する。較正ポリマーは、組成(分子量及び化学組成の両方)が狭くあるべきであり、分析の間、目的の組成物を対象とするために適当な分子量範囲にわたるべきである。生データの分析を次のように計算し、第一次元HPLCクロマトグラムを、(カットの全IR SECクロマトグラムからの)各カットのIRシグナルを、溶離液体積の関数としてプロットすることによって再構成した。IR対D1溶離液体積を、全IRシグナルによって正規化して、重量分率対D1溶離液体積プロットを得た。IRメチル/測定値比が、再構成されたIR測定値及びIRメチルクロマトグラムから得られた。PPwt%(NMRによる)対SEC実験から得られたメチル/測定値の較正曲線を使用して、比を組成に変換した。MWが、再構成されたIR測定値及びLSクロマトグラムから得られた。PE標準を使用したIR及びLS検出器の両方の較正後に、比をMWに変換した。
【0088】
13C核磁気共鳴(NMR)
試料の調製
試料を、クロミウムアセチルアセトネート(緩和剤)中の0.025Mであるテトラクロロエタン−d2/o−ジクロロベンゼンの50/50混合物のおよそ2.7gを、10mm NMRチューブ中で0.21gの試料に添加することによって調製する。試料を、チューブ及びその内容物を150℃に加熱することによって溶解し均質化する。
【0089】
データ収集パラメーター
Bruker Dual DUL高温CryoProbeを備えたBruker 400 MHz分光計を使用してデータを集める。125℃の試料温度で、1データファイル当たり320トランジェント、7.3秒パルス反復遅延(6秒の遅延+1.3秒の収集時間)、90度のフリップ角、及び逆ゲート付デカップリングを使用してデータを獲得する。全ての測定は、固定された状態の回転していない試料に対してなされる。試料は、加熱された(130℃)NMRサンプルチェンジャーへの挿入の直前に均質化し、データ収集の15分前にプローブにおいて熱的に釣り合わせる。
【0090】
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)
ゲル透過クロマトグラフシステムは、Polymer Laboratories Model PL−210又はPolymer Laboratories Model PL−220装置のいずれから構成される。カラム及びカルーセルコンパートメントは140℃で操作する。3個のPolymer Laboratories 10ミクロン Mixed−Bカラムを使用する。溶媒は1,2,4トリクロロベンゼンである。試料を、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む50ミリリットルの溶媒中の0.1グラムのポリマーの濃度で調製する。試料を、160℃で2時間、軽くかき混ぜることによって調製する。使用する注入体積は100マイクロリットルであり、流速は1.0ml/分である。
【0091】
GPCカラムセットの較正は、個別の分子量の間に少なくとも10の隔たりを有する6種の「カクテル」混合物に用意された580から8,400,000までの範囲にわたる分子量を有する21種の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて実施する。この標準は、Polymer Laboratories(英国、Shropshire市)から購入する。ポリスチレン標準は、1,000,000以上の分子量については50ミリリットルの溶媒中に0.025グラムで、1,000,000未満の分子量については50ミリリットルの溶媒中に0.05グラムで調製されている。ポリスチレン標準は、30分間、穏やかにかき混ぜながら80℃で溶解する。狭い標準の混合物は、最高の分子量成分を減らして分解を最小化するために最初に操作する。ポリスチレン標準のピーク分子量は、次の式(Williams及びWard、J.Polym.Sci.、Polym.Let.、6、621(1968)に記載されている)を使用してポリエチレン分子量に変換される。
M
ポリプロピレン=0.645(M
ポリスチレン)。
【0092】
ポリプロピレンの相当する分子量の計算は、Viscotek TriSEC ソフトウェア Version 3.0を使用して実施する。
【0093】
高速昇温溶離分別(F−TREF)
F−TREF分析において、分析すべき組成物を、o−ジクロロベンゼンに溶解し、温度を30℃にゆっくりと(0.4℃/分の好ましい速度で)減少させることによって、不活性な支持体(ステンレス鋼製ショット)を収容しているカラム中で結晶化させる。このカラムは、赤外線検出器を備えている。次いで、30から140℃まで溶離溶媒(o−ジクロロベンゼン)の温度をゆっくりと(1.5℃/分の好ましい速度で)増加させることによってカラムからの結晶化したポリマー試料を溶離することによって、F−TREFクロマトグラム曲線を作る。
【0094】
動的機械的分光法(DMS)
動的機械的測定(損失及び貯蔵弾性率対温度)を、TA instruments ARESで測定する。約2mmの厚さ、5mmの幅及び約10mmの長さの固体棒のねじりにおいて動的弾性率測定を実施する。10rad/sの一定の回転数及び5℃/分の加熱/冷却速度でデータを記録する。温度掃引を、5℃/分で−50から190℃まで実施する。
【0095】
透過電子顕微鏡法(TEM)
圧縮成形及び次いで急冷することによってポリマーフィルムを調製する。ポリマーを1000psiにおいて190℃で1分間、前溶融し、次いで5000psiで2分間、圧縮し、次いで冷却したプラテン(15〜20℃)の間で2分間、急冷する。
【0096】
圧縮成形されたフィルムを、断片がフィルムの中心近くで集められるように切り取って形を整える。切り取って形を整えた試料を、−60℃でブロックから断片を取り出すことによって染色前に低温研磨(cryopolish)し、エラストマー相の汚れを防ぐ。低温研磨したブロックを、周囲温度において3時間、2%水性ルテニウムテトラオキシド溶液の気相で染色する。染色溶液は、ねじ蓋付きガラス瓶中に0.2gmの塩化ルテニウム(III)水和物(RuCl
3×H
2O)を計り入れ、この瓶に10mlの5.25%水性次亜塩素酸ナトリウムを添加することによって調製する。試料を、両面接着テープを有するスライドガラスを用いてガラス瓶に置く。スライドガラスを、染色溶液の約1インチ上にブロックをつるすために瓶に置く。厚みがおよそ90ナノメートルの断片を、Leica EM UC6ミクロトーム上でダイヤモンドナイフを使用して周囲温度において集め、観察のために600メッシュの未使用TEMグリッド上に置く。
【0097】
画像収集−TEM画像を、100kVの加速電圧で操作されるJEOL JEM−1230で収集し、Gatan−791及び794デジタルカメラで収集する。
【0098】
溶融強度
190℃におけるRheotens及びARES Meltレオメーターを使用する動的EVFによって化合物を溶融強度について測定した。
【0099】
本明細書で使用される溶融強度(MS)は、33/秒(33 reciprocal seconds)(秒−1)の一定の剪断速度でキャピラリーレオメーターダイから押出されたポリマー溶融物の溶融フィラメントが、1cm/秒の初期速度から毎秒毎秒0.24センチメートル(cm/秒
2)の速度で該フィラメントを加速している一対のニップローラーによって延伸されているときに、該フィラメントに対して測定される最大引張力である。溶融フィラメントは、Instronキャピラリーレオメーターのバレルに詰めた10グラム(g)のポリマーを加熱し、このポリマーを190℃で5分間、平衡化させ、次いで0.21cmの直径及び4.19cmの長さを有するキャピラリーダイを通して2.54cm/分(cm/分)のピストン速度で、このポリマーを押出すことによって生成することが好ましい。引張力は、フィラメントがキャピラリーダイを出るポイントの直下10cmにニップローラーがあるように位置するGoettfert Rheotensで測定することが好ましい。
【0100】
粘度
伸張粘度の測定を、ARES−EVFアタッチメントを備えるARESレオメーター(TA instruments)を使用して行った。10mm幅及び0.3から1mmの間の厚みの寸法を有する圧縮成形試料を測定する。試験温度は190℃であり、適用したひずみ速度は0.1%であった。試料をドラムのクランプの間に取り付け、温度を約3分間安定させた。測定されるトルクを、伸長応力に変換し、これを、適用したひずみ速度で割って伸長粘度又は一軸伸長粘度を得る。固体密度は0.90g/ccであり、溶融密度は0.78g/ccであった。
【0101】
結晶性ブロック複合体指数(CBCI)の予測
これらのブロックコポリマーの組成は、結晶性ポリプロピレンから構成されるCAOP及びCAOB並びに結晶性ポリエチレンから構成されるCEP及びCEBを有するので、これらは、通常の手段によって分別することができない。CEB及びCAOBは、それぞれCEP及びCAOPと共結晶しているので、溶媒又は温度分別に基づく技術、例えば、キシレン分別、溶媒/非溶媒分離、昇温溶離分別、又は結晶化溶離分別を使用しても、ブロックコポリマーを溶解することはできない。しかし、混合された溶媒/非溶媒及び黒鉛カラムの組合せを使用してポリマー鎖を分離する高温液体クロマトグラフィーなどの方法を使用すると、ポリプロピレン及びポリエチレンなどの結晶性ポリマー種を、互いに分離し、ブロックコポリマーから分離することができる。
【0102】
例えば、以下に記載される結晶性ブロック複合体の実施例は、高温液体クロマトグラフィーで分離された場合、ポリプロピレン画分及びポリエチレン画分を示す(
図1を参照のこと)。この分析は、単離されたPPの量は、ポリマーが、iPPホモポリマー(この実施例ではCAOP)及びポリエチレン(この実施例ではCEP)の単純ブレンドであったと仮定した場合に比べて少ないことを示している。従って、ポリエチレン画分は、ポリマーが単純にiPP及びポリエチレンのブレンドであったなら、存在しないであろうかなりの量のプロピレンを含有する。この「余分なプロピレン」を明らかにするために、物質収支計算を実施して、ポリプロピレン及びポリエチレン画分の量並びにHTLCによって分離された画分のそれぞれに存在するプロピレンの重量%から結晶性ブロック複合体指数を予想することができる。結晶性ブロック複合体中に含まれるポリマーには、iPP−PEジブロック、非結合iPP、及び非結合PEが含まれ、ここで、個別のPP又はPE成分は、それぞれ少量のエチレン、又はプロピレンを含み得る。
【0103】
結晶性ブロック複合体の組成
式1によるポリマー中の各成分からのプロピレンの重量%の合計は、(ポリマー全体の)プロピレンの全重量%をもたらす。この物質収支式は、ジブロックコポリマー中に存在するiPP及びPEの量を定量化するために使用することができる。この物質収支方程式は、二元ブレンド中のiPP及びPEの量を定量化するためにも使用することができ、又は三元ブレンド、若しくはn成分ブレンドに広げることもできる。CBCについて、iPP又はPEの全量が、ジブロック並びに非結合iPP及びPEポリマー中に存在するブロック中に含まれる。
Wt%C3
全体=w
PP(wt%C3
PP)+w
PE(wt%C3
PE) 式1
ここで
w
PP=ポリマー中のPPの重量分率
w
PE=ポリマー中のPEの重量分率
wt%C3
PP=PP成分又はブロック中のプロピレンの重量パーセント
wt%C3
PE=PE成分又はブロック中のプロピレンの重量パーセント
プロピレン(C3)の全重量%は、ポリマー全体に存在するC3の合計量を表すC13 NMR又は他の組成測定法から測定されることが好ましいことを留意されたい。iPPブロック中のプロピレンの重量%(wt%C3
PP)は、100に設定するか、そのDSC融点、NMR測定、又は他の組成予測法から別に知られている場合は、その値をその代わりに置くことができる。同様に、PEブロック中のプロピレンの重量%(wt%C3
PE)は、100に設定するか、そのDSC融点、NMR測定、又は他の組成予測法から別に知られている場合は、その値をその代わりに置くことができる。
【0104】
結晶性ブロック複合体中のPPのPEに対する比の計算
式1に基づき、ポリマー中に存在するPPの全重量分率は、ポリマー中の測定された全C3の物質収支から式2を使用して計算することができる。別法として、重合中のモノマー及びコモノマー消費の物質収支から、それを予測することもできる。概して、これは、それが非結合成分中に存在するかジブロックコポリマー中に存在するかに関わらず、ポリマー中に存在するPP及びPEの量を表す。通常のブレンドについては、PPの重量分率及びPEの重量分率は、存在するPP及びPEポリマーの個別の量に対応する。結晶性ブロック複合体について、PPのPEに対する重量分率の比も、この統計ブロックコポリマー中に存在するPP及びPEの間の平均ブロック比に対応すると考えられる。
【0105】
【数5】
ここで
w
PP=ポリマー全体に存在するPPの重量分率
wt%C3
PP=PP成分又はブロック中のプロピレンの重量パーセント
wt%C3
PE=PE成分又はブロック中のプロピレンの重量パーセント
【0106】
結晶性ブロック複合体中のジブロックの量の予測
式3から5までを適用して、HTLC分析によって測定された単離されたPPの量を、ジブロックコポリマー中に存在するポリプロピレンの量を求めるために使用する。HTLC分析で最初に単離又は分離された量は、「非結合PP」を表しており、その組成は、ジブロックコポリマー中に存在するPP硬質ブロックを表している。式3の左辺のポリマー全体のC3の全重量%、及び(HTLCから単離された)PPの重量分率及び(HTLCによって分離された)PEの重量分率を、式3の右辺に代入することによって、PE画分におけるC3の重量%を、式4及び5を使用して計算することができる。PE画分は、非結合PPから分離された画分として説明され、ジブロック及び非結合PEを含有する。単離されたPPの組成は、先に記載されたように、iPPブロック中のプロピレンの重量%と同じであると考えられる。
wt%C3
全体=w
PP単離(wt%C3
PP)+w
PE画分(wt%C3
PE画分) 式3
【0107】
【数6】
w
PE画分=1−w
PP単離 式5
ここで
w
PP単離=HTLCから単離されたPPの重量分率
w
PE画分=ジブロック及び非結合PEを含有する、HTLCから分離されたPEの重量分率
wt%C3
PP=PP中のプロピレンの重量%;これは、PPブロック中及び非結合PP中に存在するプロピレンと同量でもある
wt%C3
PE画分=HTLCによって分離されたPE画分中のプロピレンの重量%
wt%C3
全体=ポリマー全体におけるプロピレンの全重量%
【0108】
HTLCからのポリエチレン画分におけるC3のwt%の量は、「非結合ポリエチレン」中に存在する量を上回るブロックコポリマー画分中に存在するプロピレンの量を表す。
【0109】
ポリエチレン画分に存在する「追加の」プロピレンを説明するために、この画分にPPを存在させる唯一の方法は、PPポリマー鎖がPEポリマー鎖と結合することである(そうでないと、それは、HTLCによって分離されたPP画分と共に単離されていたはずである)。従って、PE画分が分離されるまで、PPブロックはPEブロック中に吸着されたままである。
ジブロック中に存在するPPの量は、式6を使用して計算する。
【0110】
【数7】
ここで
wt%C3
PE画分=HTLCによって分離されたPE画分におけるプロピレンの重量%(式4)
wt%C3
PP=PP成分又は(先に定義された)ブロックにおけるプロピレンの重量%
wt%C3
PE=PE成分又は(先に定義された)ブロックにおけるプロピレンの重量%
w
PPジブロック=HTLCによってPE画分と共に分離されたジブロックにおけるPPの重量分率
【0111】
このPE画分に存在するジブロックの量は、PPブロックのPEブロックに対する比は、ポリマー全体に存在するPPのPEに対する全体比と同じであると考えることによって予測することができる。例えば、ポリマー全体におけるPPのPEに対する全体比が1:1である場合、ジブロック中のPPのPEに対する比も1:1であると考えられる。従って、PE画分に存在するジブロックの重量分率は、ジブロック中のPPの重量分率(w
PPジブロック)に2を掛けたものである。これを計算する別の方法は、ジブロック中のPPの重量分率(w
PPジブロック)を、ポリマー全体におけるPPの重量分率で割ることによる(式2)。
【0112】
ポリマー全体に存在するジブロックの量をさらに予測するためには、PE画分におけるジブロックの予測量に、HTLCから測定されたPE画分の重量分率を掛ける。
【0113】
結晶性ブロック複合体指数を予測するために、ジブロックコポリマーの量を、式7によって求める。CBCIを予測するために、式6を使用して計算したPE画分におけるジブロックの重量分率を、(式2で計算した)PPの全重量分率で割り、次いで、これにPE画分の重量分率を掛ける。CBCIの値は、0から1までの範囲であり得、ここで、1は、100%ジブロックと等しく、ゼロは、従来のブレンド又はランダムコポリマーなどの物質に相当する。
【0114】
【数8】
ここで
w
PPジブロック=HTLCによってPE画分と共に分離されたジブロックにおけるPPの重量分率(式6)
w
PP=ポリマー中のPPの重量分率
w
PE画分=ジブロック及び非結合PEを含有する、HTLCから分離されたPEの重量分率(式5)
【0115】
CBCIは、合計で62.5wt%のC3を含有し、10wt%のC3を含むPEポリマー及び97.5wt%のC3を含むiPPポリマーを生成する条件下で作られ、PE及びPPの重量分率は、(式2を使用して計算して)それぞれ0.400及び0.600である。PEのパーセントは、40.0wt%であり、iPPは、60.0wt%であるので、PE:PPブロックの相対比は、1:1.5と表される。
【0116】
従って、当業者が、ポリマーのHTLC分離を実施し、28wt%のPP及び72wt%のPE画分を単離する場合、これは、予想外の結果であり、これは、ジブロックコポリマーの画分が存在したという結論をもたらす。PE画分のC3含有率(wt%C
3PE画分)が、その後、式4及び5から48.9wt%のC3であると計算される場合、追加のプロピレンを含有するPE画分は、0.556の重量分率のPEポリマー及び0.444の重量分率のPPポリマーを有する(式6を使用して計算されたw
PPジブロック)。
【0117】
PE画分は、0.444の重量分率のPPを含有するので、これは、1.5:1のiPP:PEブロック比に基づいて、追加の0.293の重量分率のPEポリマーに加えられるべきである。従って、PE画分に存在するジブロックの重量分率は、0.741であり、ポリマー全体に存在するジブロックの重量分率のさらなる計算値は0.533である。全体のポリマーについては、組成は、53.3wt%のiPP−PEジブロック、28wt%のPPポリマー、及び18.7wt%のPEポリマーと記載される。結晶性ブロック複合体指数(CBCI)は、ポリマー全体に存在するジブロックの予想重量分率である。上記の例については、結晶性ブロック複合体のCBCIは、0.533である。
【0118】
CBCIの計算例が、CBC1の計算例の表1に示されている。表1に同様に示されているのは、CAOP(iPPランダム)及びCEP(PEランダム)からなるCBC1と同じ組成を有するポリマーの同等ブレンドの計算である。CBCIの計算は、CBC及びブレンドにのみ適用されることは留意されたい。例示を目的として、PE画分にPPを有することが可能ではないので、個別のiPP又はPEランダムポリマーのCBCIの計算は、ゼロのCBCIをもたらす。従って、従来の目的で、個別のランダムコポリマーのCBCIは、この方法の意図に基づきゼロの値が指定されている。
【0120】
ジブロック中のCEBのCAOBに対する比は、結晶性ブロック複合体全体における結晶性エチレンの結晶性α−オレフィンに対する比と同じであるという想定の下に、結晶性ブロック複合体指数(CBCI)は、結晶性ブロック複合体中のブロックコポリマーの量の予測を提供する。個別の触媒反応速度及び本明細書に記載された可逆的連鎖移動触媒によるジブロックの形成のための重合メカニズムの理解に基づき、この想定は、これらの統計オレフィンブロックコポリマーに有効である。
【0121】
CBCIの計算は、遊離のCAOPの量は、重合で生成されたCAOPの合計量を下回るという分析的観察に基づく。CAOPの残りは、CEBに結合してジブロックコポリマーを形成している。HTLCによって分離されたPE画分は、CEP及びジブロックポリマーの両方を含むので、この画分のプロピレンの観測量は、CEPのそれを上回る。この違いは、CBCIを計算するために使用することができる。
【0122】
図2は、ポリマー中のCAOの重量分率とCBCIの間の関係の一般的グラフ表示を示している。
【0123】
重合統計の予備的知識をもたない分析的観察にもっぱら基づき、ポリマーに存在するブロックコポリマーの最少量及び最大量を計算して、結晶性ブロック複合体を、単純なコポリマー又はコポリマーブレンドから見分けることができる。
【0124】
結晶性ブロック複合体中に存在するブロックコポリマーの量の上限、
【0125】
【数9】
は、HTLCによって測定された非結合PPの画分を、式8におけるように1から差し引くことによって得られる。この最大値は、HTLCからのPE画分は、完全にジブロックであり、全ての結晶性エチレンは、結晶性PPに結合しており、非結合PEはないことを想定している。ジブロックではないCBC中の唯一の物質は、HTLCにより分離されたPPのその部分である。
【0127】
結晶性ブロック複合体中に存在するブロックコポリマーの量の下限、
【0128】
【数11】
は、少ししかPEが、乃至はまったくPEがPPに結合していない状況に相当する。この下限値は、HTLCによって測定された非結合PPの量を、式9に示されたように試料中のPPの全量から差し引くことによって得られる。
【0130】
さらに、結晶性ブロック複合体指数は、これらの2つの値:
【0131】
【数13】
の間におさまる。表2は、実施例のジブロック含有率の限界を示している。これらの実施例のそれぞれは、ゼロよりかなり大きいジブロック重量分率の下限、
【0132】
【数14】
を含むので、これらの試料の全ては、結晶性ブロック複合体である。
【0134】
結晶性ブロック複合体の生成のための重合メカニズムに基づき、CBCIは、複合体中のジブロックコポリマーの実際の割合の最良の予測を表す。未知のポリマー試料について、W
DBMinを使用して物質が結晶性ブロック複合体であるかを決定することができる。ホモポリマー、コポリマー又はブレンドへのこの分析の適用を考慮されたい。PE及びPPの物理的ブレンドについて、PPの全重量分率は、HTLCからのPPwt%のそれと一致すべきであり、ジブロック含有率の下限の式9はゼロである。この分析がPEを含まないPPの試料に適用される場合、PPの重量分率及びHTLCから得られるPPの量の両方とも100%であり、再び、ジブロック含有率の下限の式9はゼロである。最後に、この分析が、PPを含まないPEの試料に適用される場合、HTLCによって回収されるPPの重量分率及び重量分率PPの両方ともゼロであり、ジブロックの下限の式9はゼロである。これら3つのケースにおいてジブロック含有率の下限はゼロを上回ることはないので、これらの物質は結晶性ブロック複合体ではない。
【実施例】
【0135】
実施例
結晶性ブロック複合体
概要
触媒−1([[rel−2’,2”’−[(lR,2R)−l,2−シクロヘキサンジイルビス(メチレンオキシ−κO)]ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)−5−メチル[1,1’−ビフェニル]−2−オラト−κO]](2−)]ジメチル−ハフニウム)並びに共触媒−1、USP5,919,9883、実施例2に実質的に開示されている、長鎖トリアルキルアミン(Akzo−Nobel,Inc.から入手できるArmeen(商標) M2HT)、HCl及びLi[B(C
6F
5)
4]の反応によって調製される、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのメチルジ(C
14〜18アルキル)アンモニウム塩の混合物を、Boulder Scientificから購入し、さらに精製することなく使用する。
【0136】
CSA−1(ジエチル亜鉛又はDEZ)及び共触媒−2(変性メチルアルモキサン(MMAO))を、Akzo Nobelから購入し、さらに精製することなく使用した。重合反応用の溶媒は、ExxonMobil Chemical Companyから入手できる炭化水素混合物(ISOPAR(登録商標)E)であり、使用前に13−Xモレキュラーシーブのベッドを通して精製する。
【0137】
本実施例の結晶性ブロック複合体をCBC1、CBC2及びCBC3と指名する。
【0138】
CBC1、CBC2及びCBC3を、直列に接続した2つの連続撹拌槽型反応器(CSTR)を使用して調製する。各反応器は、液体で満たされており(hydraulically full)、定常状態条件で作動するよう設定してある。モノマー、溶媒、触媒−1、共触媒−1、及びCSA−1を、表3に概略を記載したプロセス条件に従って第一反応器に流す。表1に記載された第一反応器の内容物を、直列にされた第二反応器に流す。追加の触媒−1及び共触媒−1、及びスカベンジャーとしての少量のMMAOを第二反応器に添加する。CBC1のための第一反応器における水素流れは、12sccmであり、CBC2及びCBC3は10sccmである。DEZ溶液の濃度を、30000ppmに維持し、第一反応器のみに添加する。CBC1のための第一反応器のための共触媒−1の濃度は、149ppmであり、CBC2及びCBC3は50ppmである。CBC1のための第一反応器のための共触媒−2の濃度は、1993ppmであり、CBC2及びCBC3は1500ppmである。
【0139】
【表3】
表4は、CBC1、CBC2、及びCBC3の分析特性を示している。
【0140】
【表4】
表5は、CBC1、CBC2、及びCBC3におけるiPPのPEに対する比並びに予測される結晶性ブロック複合体指数を示している。
【0141】
【表5】
【0142】
図3は、CBC1のDSCプロファイルを示している。DSCプロファイルは、CAOP及びCAOBを示す127℃並びにCEP及びCEBに相当する110℃における溶融ピークを示している。観測された溶融エンタルピーは96J/gであり、ガラス転移温度は0及び−24℃において観察された。結晶化温度は90℃において測定された。驚くべきことに、CBC1の結晶化温度は、CAOPよりCEPのそれにより近い。
【0143】
図1は、CBC1のTREF分析を示している。TREF溶離プロファイルは、CBC1は非常に結晶性であることを示し、DSC溶融プロファイルと対照的に、CEP及びCAOP又はブロックコポリマーの分離を少ししか示さないか全く示さない。わずか2.4wt%のパージしか測定されず、このことも、CBC1の成分の極めて高い結晶性を示している。
【0144】
図4は、CBC1のHTLC分析を示している。HTLCによるCBC1の溶離プロファイルは、1〜2mLの間の28wt%の初期の溶離ピーク及び3〜6mLの間の72wt%の後期の溶離ピークが溶離されることを示した。濃度及び組成の測定から、初期の溶離ピークは、CAOPでありCAOBを示す単離されたPPであったことが決定された。これは、存在するC3のwt%の組成プロファイルによって示されている。第二ピーク及び後期の溶離ピークは、C2が豊富であり、C3の勾配を示している。このピークは、PE相であり、ブロックコポリマー及びCEPを含むと解釈され得る。組成勾配は、ブロックコポリマーは初期に溶離され、CEPは最後に溶離されることを示している。
【0145】
図5は、2μmの分解能でCBC1のモルフォロジーを示すTEM顕微鏡写真である。
図6は、0.5μmでのモルフォロジーを示しており、
図7は、100nmでのモルフォロジーを示している。施した染色に基づき、より暗い領域はPEであり、より明るい領域はPPである。この組成物の非常に小さなPE領域サイズは、PP相及びPE相を相溶化するよう作用した高レベルのブロックコポリマーの存在を強く示唆している。球状でナノスケールの性質は、ブロックコポリマーは、PE領域を減少させる上で有効であることを示した。ポリプロピレン及びポリエチレンの標準のポリマー/ポリマーブレンドは、ひとけた大きい領域サイズを有する粗く分相したモルフォロジーを示している。
【0146】
ポリプロピレン及びポリエチレンのCBC1とのブレンド
ポリプロピレンH110−02N(PP)(The Dow Chemical Company)(0.900g/cc、2MFR)を、ブレンドにおけるポリプロピレン成分用に使用した。
【0147】
低密度ポリエチレン662I(LDPE1)(The Dow Chemical Company)(0.919g/cc、0.47 MFR)を、ブレンドにおけるポリエチレン成分として使用した。
【0148】
低密度ポリエチレン640I(LDPE2)(The Dow Chemical Company)(0.920g/cc、2.0 MFR)を、ブレンドにおけるポリエチレン成分として使用した。
【0149】
結晶性ブロック複合体CBC1を、ポリマーの総重量に対して5及び10wt%のレベルで添加する。
【0150】
ブレンドを、200グラムのボウルを使用するHaakeバッチミキサーで調製した。ブレンドを190℃において50rpmで15分間混合した。その間に、成分の溶融後にトルクが定常状態に到達することを確実にするために溶融トルクを監視した。
【0151】
表6は、配合処方を示しており、表7は、ブレンドの物理的性質を示している。表8は、ブレンドB及びブレンド4についての画像解析を示している。
【0152】
【表6】
【0153】
【表7】
【0154】
【表8】
【0155】
図8は、ブレンド4、CBC1 10wt%で相溶化されたPP 70wt%及びLDPE1 20wt%と比較したブレンドB、PP 80wt%及びLDPE1 20wt%のモルフォロジーを示している。LDPE1は、より黒い領域エリアとして示されている。LDPE1の領域サイズの減少は驚異的且つ劇的である。領域サイズは、0.88μmから0.14μmまで減少した。示されたように、ブレンド4の例に示されたLDPEの領域サイズは、210nm未満であり、140nmの平均同等直径である。ブレンドBに比較して、広い粒径分布が、0.2から2.25μmまでの範囲でLDPE領域について観測され、0.88μmの平均同等直径であった。
【0156】
図9は、比較のブレンドA並びにCBC1を5及び10wt%添加した相溶化されたブレンド1及び3の溶融強度を比較している。驚くべきことに、相溶化されたブレンドは、溶融強度において250〜300%の改善を示す。
【0157】
図10は、比較のブレンドB並びにCBC1を5及び10wt%添加した相溶化されたブレンド2及び4の溶融強度を比較している。驚くべきことに、これらの相溶化されたブレンドも、溶融強度において250〜300%の改善を示す。
【0158】
図11は、EVF ARESによって測定された190℃における伸長粘度を比較している。観測された伸長粘度は、ブレンドにおけるLDPE1の増加する濃度と共に増加する。相溶化されたブレンド、45%のPP、45%のLDPE1及び10%のCBC1を含むブレンド6は、LDPE 170A(The Dow Chemical Company)(0.923g/cc、0.6 MI)の伸長粘度挙動に似ていることが示されている。22.5%のPP H110N、67.5%のLDPE 662I、及び10%のCBC1を含む10%相溶化されたブレンドは、Profax PF814(Basell Polyolefins)(0.902g/cc、3.0 MFR)の伸長粘度挙動に似ている。
【0159】
図12は、ブレンドB並びにCBC1を10%添加した相溶化されたブレンド4、6及び7の溶融強度を比較している。LDPE1のレベルをブレンド中で67%まで増加すると、溶融強度を190℃において100mm/秒で20cNまで増加することができる。ブレンド中のLDPE1の増加するレベルと共に溶融強度の対応する増加が観測される。
【0160】
ポリエチレン及びプロピレン系プラストマー/エラストマーのブレンド
低密度ポリエチレン662I(LDPE1)(The Dow Chemical Company)(0.919g/cc、0.47 MFR)を、ブレンドにおけるポリエチレン成分として使用した。
【0161】
VERSIFY 2200 (PBP)(The Dow Chemical Company)(0.876g/cc、2.0 MFR)を、ブレンドにおけるプロピレン系プラストマーとして使用した。
【0162】
VERSIFY 2400(PBE)(The Dow Chemical Company)(0.859g/cc、2.0 MFR)を、ブレンドにおけるプロピレン系エラストマーとして使用した。
【0163】
結晶性ブロック複合体CBC1を、ポリマーの総重量に対して5及び10wt%のレベルで添加する。
【0164】
200グラムのボウルを使用するHaakeバッチミキサーでブレンドを調製した。ブレンドを、190℃において50rpmで15分間混合した。その時間に、溶融トルクを監視し、トルクが成分の溶融後に定常状態に達することを確実にした。配合処方については表9を参照されたい。表10はブレンドの物理的性質を示している。
【0165】
【表9】
【0166】
【表10】
【0167】
図13は、ブレンドC並びにCBC1を10wt%添加した相溶化されたブレンド8及び10の溶融強度を比較している。LDPE1 45wt%及びPBP 45wt%及びCBC1 10wt%を含むブレンド10は、100mm/秒における最も高い溶融強度を示した。ブレンド8をブレンドCに対して比較して、相溶化されたブレンドの溶融強度は、ブレンドCに比べてわずかに改善される。
【0168】
図14は、ブレンドD並びにCBC1を10wt%添加した相溶化されたブレンド9及び11の溶融強度を比較している。LDPE1 45wt%及びPBE 45wt%及びCBC1 10wt%を含むブレンド11は、100mm/秒における最も高い溶融強度を示した。ブレンド9及びブレンドDを比較して、相溶化されたブレンドの溶融強度は、ブレンドDに比べてわずかに改善される。
【0169】
本発明が、限定された数の実施形態に関して記載されたが、一つの実施形態の特定の特徴は、本発明の他の実施形態に帰されるべきではない。本発明の全ての態様を代表する単一の実施形態はない。いくつかの実施形態において、組成物又は方法は、本明細書に記載されていない多くの化合物又はステップを含み得る。他の実施形態において、組成物又は方法は、本明細書に列挙されていない任意の化合物又はステップを含まないか、実質的に含まない。記載された実施形態からの変形及び修正は存在する。最後に、「約」又は「およそ」という語句が数を記載する上で使用されているか否かに関わらず、本明細書に開示された任意の数は、近似を意味するものと解釈されるべきである。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲に入る全てのそれらの修正及び変形を含むことを意図している。