特許第5792321号(P5792321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ルブリゾル コーポレイションの特許一覧

<>
  • 特許5792321-超音波測定 図000002
  • 特許5792321-超音波測定 図000003
  • 特許5792321-超音波測定 図000004
  • 特許5792321-超音波測定 図000005
  • 特許5792321-超音波測定 図000006
  • 特許5792321-超音波測定 図000007
  • 特許5792321-超音波測定 図000008
  • 特許5792321-超音波測定 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792321
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】超音波測定
(51)【国際特許分類】
   G01B 17/02 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   G01B17/02 Z
【請求項の数】18
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-548458(P2013-548458)
(86)(22)【出願日】2012年1月3日
(65)【公表番号】特表2014-507643(P2014-507643A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】US2012020047
(87)【国際公開番号】WO2012094298
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2014年12月16日
(31)【優先権主張番号】61/430,229
(32)【優先日】2011年1月6日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591131338
【氏名又は名称】ザ ルブリゾル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】スミス, オリバー
(72)【発明者】
【氏名】サットン, マイケル アール.
(72)【発明者】
【氏名】ペプロー, ミッチェル
【審査官】 神谷 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−286441(JP,A)
【文献】 特開昭63−075512(JP,A)
【文献】 特開昭61−104276(JP,A)
【文献】 特開昭61−215908(JP,A)
【文献】 特開平07−027551(JP,A)
【文献】 特開平10−219323(JP,A)
【文献】 特開2000−028582(JP,A)
【文献】 特開2004−053266(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0143681(US,A1)
【文献】 米国特許第7246522(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0030629(US,A1)
【文献】 特開昭62−046282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00− 7/34
G01B 17/00−17/08
G01S 1/72− 1/82
G01S 3/80− 3/86
G01S 5/18− 5/30
G01S 7/52− 7/64
G01S 15/00−15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩耗の影響を決定する超音波測定の方法であって、前記方法は、
超音波信号(i)を、摩耗に曝されるアイテム(12)の中に伝送するステップと、
超音波信号(r)を前記アイテムから受信するステップであって、前記受信され信号は、前記アイテムの境界(28)からの前記伝送され信号の反射を含む、ステップと、
特定の期間において、前記伝送するステップおよび前記受信するステップを複数回反復するステップと、
各受信され信号から、所定の特徴を抽出し、前記超音波信号(r)の受信の間に前記所定の特徴が受信された時刻と、前記超音波信号(i)の伝送の間に前記所定の特徴が伝送された時刻との間の比較に基づいて、飛行時間値を決定するステップと、
前記複数の受信され信号から抽出され前記複数の飛行時間値を組み合わせることより、前記特定の期間にわたる前記アイテムの寸法を示す複合飛行時間値を生成するステップと
を含み、
前記複合飛行時間値を生成することは、統計的演算を行うことを含み、
前記所定の特徴は、前記反射された信号(r)のゼロ振幅が生じる時刻に対応している、方法。
【請求項2】
複数の飛行時間値を含む集合が生成され、前記集合内の各飛行時間値は、それぞれの受信され信号(r)に対応している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記統計的演算は、前記飛行時間値の平均をとることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記複合飛行時間値を生成することは、複数の飛行時間下位値を生成するステップと、前記飛行時間下位値を組み合わせて、前記複合飛行時間値を生成するステップとを含む、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複合飛行時間値に基づいて前記アイテムの前記寸法に対する値を生成するステップをさらに含み、前記複合飛行時間値は、平均飛行時間を示す、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記伝送するステップおよび前記受信するステップは、前記特定の期間にわたって、1000〜100,000回、反復される、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記伝送するステップおよび前記受信するステップは、0.2秒の間にわたって、4005回、反復される、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アイテム(12)は、金属、合金、プラスチック、コンクリート、セラミック、コーティングされた材料、コーティング、複合材料、鋼鉄、アルミニウム、銅、真鍮、スズ、鉛、ビスマス、酸化アルミニウム、およびケイ酸アルミニウムを含む群から選択される材料を含む、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記受信するステップは、前記伝送され信号の第1の反射(r)を受信することを含む、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記受信するステップは、高次反射を受信することを含む、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
摩耗の影響を決定する超音波測定のための装置(10)であって、前記装置(10)は、
超音波信号(i)を、摩耗に曝されるアイテム(12)の中に伝送するように動作可能な超音波送信機(18)と、
超音波信号(r)を前記アイテムから受信するように動作可能な超音波受信機(18)と
を備え、
前記受信され信号は、前記アイテムの境界(28)からの前記伝送され信号の反射を含み、
前記送信機および前記受信機は、特定の期間において、複数回伝送および受信するように動作可能であり、
前記受信機は、各受信され信号から、所定の特徴を抽出し、前記超音波信号(r)の受信の間に前記所定の特徴が受信された時刻と、前記超音波信号(i)の伝送の間に前記所定の特徴が伝送された時刻との間の比較に基づいて、飛行時間値を決定するように動作可能であり、
前記受信機は、前記複数の受信され信号から抽出された前記複数の飛行時間値を組み合わせることより、前記特定の期間にわたる前記アイテムの寸法を示す複合飛行時間値を生成し、かつ、統計的演算を行うことにより、前記複合飛行時間値を生成するように動作可能であり、
前記所定の特徴は、前記反射された信号(r)のゼロ振幅が生じる時刻に対応している、装置(10)。
【請求項12】
前記超音波送信機および前記超音波受信機を提供する超音波送受信機(18)を備える、請求項11に記載の装置(10)。
【請求項13】
前記装置は、制御システム(20)を備え、前記制御システム(20)は、電気信号を前記超音波送受信機(18)に供給することにより、前記超音波送受信機に前記超音波信号(i)を伝送させるように動作可能である、請求項12に記載の装置(10)。
【請求項14】
前記制御システム(20)は、前記超音波送受信機(18)に、特定の期間において、複数の超音波信号(i)を伝送させるように動作可能である、請求項13に記載の装置(10)。
【請求項15】
前記制御システム(20)は、電圧パルスを前記超音波送受信機(18)に供給するように動作可能である、請求項14に記載の装置(10)。
【請求項16】
前記制御システム(20)は、前記電圧パルスを成形するように動作可能であるパルス発生モジュール(24)を含む、請求項15に記載の装置(10)。
【請求項17】
前記パルス発生モジュール(24)は、方形波、三角波、または正弦波を生成するように動作可能である、請求項16に記載の装置(10)。
【請求項18】
前記パルス発生モジュール(24)は、1〜100MHzの周波数で波を生成するように動作可能である、請求項17に記載の装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波測定に関し、特に、排他的ではないが、寸法の超音波測定のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの事例では、例えば、効率を改善するために、アイテムに及ぼす摩耗の影響を決定すること、または有意な摩耗が生じそうな箇所を見つけることが有用となり得る。例えば、使用において、別のアイテムと定期的に接触するアイテムは、接触によって摩耗するにつれて、経時的に、寸法が変化する場合がある。摩耗はまた、接触を伴わずに、例えば、腐食摩耗を通しても生じ得る。アイテムに及ぼす摩耗の影響を決定することは、アイテムが、故障または損傷を生じる前に、交換されることができるように、アイテムの予想寿命を計算する際、重要となり得る。摩耗の影響を理解することは、特に、車両エンジン構成要素または軸受等の機械構成要素において重要である。摩耗の影響を決定することはまた、潤滑剤等の関連する構成要素の性能を試験する際に有用であり得る。
【0003】
現在、出願人が知る限り、摩耗を測定するために、2つの主な方法が存在する。第1の摩耗を測定する方法は、例えば、座標測定システムを使用して、摩耗の影響に曝される前後に、当該アイテムの表面を分析することを要求する。この方法は、摩耗が既に生じていることを要求するため、理想的ではない。また、摩耗が経時的に生じている間、摩耗パターンの変化を検出することは不可能である。
【0004】
摩耗を測定する別の方法は、表面層活性化(SLA)または薄層活性化(TLA)としても知られる、放射性ヌクレオチド試験(RNT)である。この方法は、アイテムの表面層を照射することを含む。摩耗が生じるにつれて、照射された金属原子は、潤滑剤中に押し流され、次いで、シンチレーションカウンターを過ぎて循環される。検出される照射された原子の数は、したがって、摩耗の割合を示す。この方法は、ほぼリアルタイムで摩耗を測定することが可能であるが、金属原子が循環するためにかかる時間のため、僅かな時間遅延を伴う。しかしながら、この方法は、放射線の使用のため、制御された実験室環境においてのみ使用することができる。そのうちの一部が、制限された半減期を有する、放射線同位体の制限された可用性のため、複数の構成要素の摩耗を同時に測定することは困難である。さらに、測定された摩耗は、すべての取り除かれた原子が、必ずしも、循環されるわけではないため、多くの場合、実際の摩耗率と異なる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の側面によると、超音波測定の方法であって、
超音波信号をアイテムの中に伝送するステップと、
超音波信号をアイテムから受信するステップであって、受信される信号は、アイテムの境界から伝送される信号の反射を含む、ステップと、
複数回、特定の期間において、伝送するステップおよび受信するステップを反復するステップと、
各受信される信号から、アイテムの寸法を示す情報を抽出するステップと、
複数の受信される信号から抽出される情報を使用して、特定の期間にわたって、アイテムの寸法を示す単一の値を生成するステップと
を含む、方法が提供される。
【0006】
ステップは、必ずしも、前述の順序で生じる必要はなく、任意の好適な順序で実行される場合がある。
【0007】
単一の値が、アイテムの寸法の値である場合がある。単一の値は、飛行時間値である場合がある。
【0008】
アイテムは、金属、合金、プラスチック、コンクリート、セラミック、コーティングされた材料、および複合材料のうちの1つ以上を含み得る。アイテムが、金属を含むとき、金属は、鋼鉄、アルミニウム、銅、真鍮、スズ、鉛、ビスマス、および前述の合金から選択され得る。アイテムは、酸化アルミニウムおよび/またはケイ酸アルミニウムを備え得る。
【0009】
本方法は、それぞれの受信される超音波信号から抽出される情報から、飛行時間値を決定するステップを含み得る。複数の飛行時間値を含む集合が、生成され得る。集合内の各飛行時間値は、それぞれの受信される信号に対応し得る。
【0010】
寸法の値を生成することは、複数の飛行時間値を組み合わせることにより、複合飛行時間値を生成することを含み得、複合飛行時間値を使用して、アイテムの寸法値を決定することを含み得る。
【0011】
複合飛行時間値を生成することは、飛行時間値の平均、例えば、平均、中央値、またはトリム平均(典型的には、平均)をとる等、統計的演算を行うことを含み得る。
【0012】
複合飛行時間値を生成することは、複数の飛行時間下位値を生成するステップと、飛行時間下位値を組み合わせて、複合飛行時間値を生成するステップとを含み得る。各飛行時間下位値は、飛行時間値の下位集合から生成され得る。
【0013】
寸法値を生成することは、複数の受信される信号から抽出される情報から複合飛行時間値を生成することであって、複合飛行時間値は、平均飛行時間を示す、ことを含み得、複合飛行時間値を使用して、アイテムの寸法値を決定することを含み得る。
【0014】
伝送するステップおよび受信するステップは、1秒であり得る、あるいは1秒の何分の1、例えば、0.2秒、または0.5秒であり得る、特定の期間にわたって、2〜1,000,000回、反復され得る。伝送するステップおよび受信するステップは、特定の期間にわたって、2〜450,000回、反復され得、1000〜100,000回、反復され得る。期間が、3秒であるとき、伝送するステップおよび受信するステップは、40,000回、反復され得る。期間が、0.2秒であるとき、伝送するステップおよび受信するステップは、4005回、反復され得る。
【0015】
前述の範囲は、アイテムが金属を含む場合、適切であり得る。アイテムが、非金属を含む場合、伝送するステップおよび受信するステップの回数は、材料の音響特性に依存して、同一である、増加される、または減少され得る。例えば、伝送するステップおよび受信するステップの回数は、前述の範囲の半分であり得、あるいはその3分の1、4分の1、または5分の1まで減少され得る。
【0016】
方法はさらに、複数の複合寸法値を生成するために、間隔を置いて本方法を反復することを含み得る。間隔は、規則的間隔であり得、例えば、本方法は、1分に1回、または2分、10分、1時間等に1回、反復され得る。一実施形態では、測定されるアイテムが摩耗に曝され、該摩耗は、複数の寸法値を比較することによって評価される方法が採用され得る。
【0017】
飛行時間値を決定するステップは、反射される信号のゼロ振幅が生じる時を識別することを含み得る。ゼロ振幅は、切片ゼロ、例えば、ピーク振幅後のゼロを備え得る。ゼロは、第1の切片ゼロ含み得る。
【0018】
伝送するステップは、伝送される信号の第1の反射を受信することを含み得る。伝送するステップは、高次反射、例えば、第2の反射、第3の反射、または他の複数の反射を受信するステップを含み得る。
【0019】
方法はさらに、アイテム内の1つ以上の温度を測定するステップを含み得る。温度は、特定の期間にわたって、測定され得る。方法は、複合寸法値を調節し(必要に応じて)、値を温度に対して較正するステップを含み得る。
【0020】
本発明の第2の側面によると、アイテムの寸法を決定するための装置であって、本発明の第1の側面の方法を行うように動作可能である、装置が提供される。本装置は、任意の好適な順序において、本発明の第1の側面に関して前述で参照された方法のステップの任意の組み合わせを行うように動作可能であり得る。
【0021】
装置は、超音波信号をアイテムの中に伝送するように動作可能な超音波送信機と、超音波信号をアイテムから受信するように動作可能な超音波受信機とを備え得る。超音波送信機および超音波受信機は、一緒になって、超音波送受信機を構成し得る。超音波送受信機は、広帯域超音波パルス、あるいは周波数1〜100MHz、例えば、2〜50MHz、3〜50MHz、または5〜20MHzを有する超音波パルスのいずれかを生成するように動作可能であり得る。超音波送受信機は、実質的に20MHzの周波数を備え得る。超音波送受信機は、実質的に10MHzの周波数を備え得る。超音波送受信機は、圧電変換器を備え得る。
【0022】
装置は、電気信号を超音波送受信機に印加し、超音波送受信機に、超音波信号を伝送させるように動作可能である、制御システムを備え得る。制御システムはさらに、電気信号を超音波送受信機から受信するように動作可能であり得、受信される電気信号は、アイテムの寸法を示す情報を含む。
【0023】
制御システムは、超音波送受信機に、特定の期間において、複数の超音波信号を伝送させるように動作可能であり得、特定の期間において、複数の電気信号を超音波送受信機から受信するように動作可能であり得る。
【0024】
制御システムは、電圧パルスを超音波送受信機に供給するように動作可能であり得る。制御システムは、電圧パルスを供給するように動作可能なパルス発生モジュールを備え得る。電圧パルスは、成形され得、方形波、三角波、または正弦波、またはその一部を備え得る。広帯域(複数の周波数)波はまた、送受信機を励起するために使用することができる。波は、周波数1〜100MHz、例えば、2〜50MHz、3〜50MHz、または5〜20MHzを備え得る。波は、実質的に20MHzの周波数を備え得る。波は、実質的に10MHzの周波数を備え得る。
【0025】
電圧パルスは、200V未満のピーク振幅を有し得、ピーク振幅2〜100V、例えば、5〜20Vを有し得る。電圧パルスは、約10Vのピーク振幅を有し得る。
【0026】
パルス発生モジュールは、初期電圧パルスを発生させるように動作可能なパルス発生器と、初期電圧パルスを増幅し、増幅されたパルスを生成するように動作可能な増幅器とを備え得る。パルス発生モジュールはさらに、パルス発生器を増幅されたパルスから遮蔽するように動作可能な信号ブロッカーを備え得る。信号ブロッカーは、電界効果トランジスタを備え得る。信号ブロッカーは、増幅器が増幅されたパルスを伝送しているときのみ、信号ブロッカーが、動作可能であって、そうでなければ、動作不可能であるように、増幅器と同期され得る。
【0027】
超音波送信機および超音波受信機は、受信機を送信機によって提供される励起から隔離するように別個に具現化され得る。
【0028】
制御システムは、受信される超音波信号から、アイテムの寸法を示す情報を抽出するように動作可能であり得、複数の受信される信号から抽出される情報を使用して、特定の期間にわたるアイテムの寸法の単一の値を決定するように動作可能であり得る。制御システムは、それぞれの電気信号の飛行時間値を決定し、複数のそのような飛行時間値を組み合わせることにより、複合飛行時間値を生成するように動作可能であり得る。制御システムは、複合飛行時間値を使用して、寸法値を生成し得る。
【0029】
装置はさらに、1つ以上の熱電対を備え得る、1つ以上の温度センサを含み得る。制御システムは、温度センサによって提供される温度測定を使用して、寸法の値を較正するように動作可能であり得る。
【0030】
本発明の第3の側面によると、本発明の第2の側面による装置を備えている、アイテムが提供される。アイテムは、機械、例えば、車両であり得、または機械、例えば、車両構成要素(例えば、そのエンジン)内に構成され得る。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
超音波測定の方法であって、前記方法は、
超音波信号をアイテムの中に伝送するステップと、
超音波信号を前記アイテムから受信するステップであって、前記受信される信号は、前記アイテムの境界からの前記伝送される信号の反射を含む、ステップと、
特定の期間において、前記伝送するステップおよび前記受信するステップを複数回反復するステップと、
各受信される信号から、前記アイテムの寸法を示す情報を抽出するステップと、
前記複数の受信される信号から抽出される情報を使用して、特定の期間にわたる前記アイテムの寸法を示す単一の値を生成するステップと
を含む、方法。
(項目2)
前記方法は、それぞれの受信される超音波信号から抽出される情報から、飛行時間値を決定するステップを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
複数の飛行時間値を含む集合が生成され、前記集合内の各飛行時間値は、それぞれの受信される信号に対応している、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記寸法値を生成することは、前記複数の飛行時間値を組み合わせることにより、複合飛行時間値を生成することを含む、項目2または項目3に記載の方法。
(項目5)
前記寸法値を生成することは、前記複合飛行時間値を使用して、前記アイテムの寸法値を決定することを含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記複合飛行時間値を生成することは、統計的演算を行うことを含む、項目4または項目5に記載の方法。
(項目7)
前記統計的演算は、前記飛行時間値の平均をとることを含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記複合飛行時間値を生成することは、複数の飛行時間下位値を生成するステップと、前記飛行時間下位値を組み合わせて、前記複合飛行時間値を生成するステップとを含む、項目4〜項目7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
各飛行時間下位値は、前記飛行時間値の下位集合から生成される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記寸法値を生成することは、前記複数の受信される信号から抽出される情報から複合飛行時間値を生成することであって、前記複合飛行時間値は、平均飛行時間を示す、ことと、前記複合飛行時間値を使用して、前記アイテムの寸法値を決定することとを含む、項目1〜項目9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記伝送するステップおよび前記受信するステップは、前記特定の期間にわたって、2〜1,000,000回、反復される、項目1〜項目10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記伝送するステップおよび前記受信するステップは、前記特定の期間にわたって、2〜450,000回、反復される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記伝送するステップおよび前記受信するステップは、前記特定の期間にわたって、1000〜100,000回、反復される、項目11または項目12に記載の方法。
(項目14)
前記特定の期間は、1秒、1秒の何分の1、0.2秒、および0.5秒のうちの1つである、項目11〜項目13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記伝送するステップおよび前記受信するステップは、3秒の間にわたって40,000回、反復される、項目1〜項目14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記伝送するステップおよび前記受信するステップは、0.2秒の間にわたって、3000〜5000回、例えば、4005回、反復される、項目1〜項目15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記アイテムは、金属、合金、プラスチック、コンクリート、セラミック、コーティングされた材料、コーティング、複合材料、鋼鉄、アルミニウム、銅、真鍮、スズ、鉛、ビスマス、酸化アルミニウム、およびケイ酸アルミニウムから成る群から選択される材料を含む、項目1〜項目16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記伝送するステップおよび前記受信するステップの回数は、前記アイテムが作製される材料の音響特性に依存して選択される、項目1〜項目17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記方法は、複数の寸法値を生成するために、間隔を置いて前記方法を反復するステップをさらに含む、項目1〜項目18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記アイテムは、摩耗に曝され、前記摩耗は、前記複数の寸法値を比較することによって評価される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記間隔は、規則的間隔である項目19に記載の方法。
(項目22)
前記方法は、1秒、1分、2分、10分、および1時間から成る群から選択される間隔において、1回、実施される、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記飛行時間値を決定するステップは、前記反射される信号のゼロ振幅が生じる時を識別することを含む、項目1〜項目22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記ゼロ振幅は、切片ゼロを含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記ゼロは、第1の切片ゼロを含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記受信するステップは、前記伝送される信号の第1の反射を受信することを含む、項目1〜項目25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記受信するステップは、高次反射を受信することを含む、項目1〜項目26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記方法は、前記アイテムの温度を測定するステップをさらに含む、項目1〜項目27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記温度は、前記特定の期間にわたって、測定される、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記方法は、前記複合寸法値を調節し(必要に応じて)、前記値を温度に対して較正するステップを含む、項目1〜項目29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
アイテムの寸法を決定するための装置であって、前記装置は、項目1〜項目30のいずれか一項に記載の方法を行うように動作可能である、装置。
(項目32)
超音波信号をアイテムの中に伝送するように動作可能な超音波送信機と、超音波信号をアイテムから受信するように動作可能な超音波受信機とを備えている、項目31に記載の装置。
(項目33)
前記超音波送信機および前記超音波受信機は、一緒になって、超音波送受信機を構成する、項目32に記載の装置。
(項目34)
前記超音波送受信機は、1〜100MHzの周波数を有する超音波パルスを生成するように動作可能である、項目33に記載の装置。
(項目35)
前記超音波送受信機は、実質的に20MHzの周波数を有する超音波パルスを生成するように動作可能である、項目34に記載の装置。
(項目36)
前記超音波送受信機は、実質的に10MHzの周波数を有する超音波パルスを生成するように動作可能である、項目34に記載の装置。
(項目37)
前記超音波送受信機は、圧電変換器または複数の圧電変換器を備えている、項目33〜項目36のいずれか一項に記載の装置。
(項目38)
前記装置は、制御システムを備え、前記制御システムは、電気信号を前記超音波送受信機に印加することにより、前記超音波送受信機に前記超音波信号を伝送させるように動作可能である、項目33〜項目37のいずれか一項に記載の装置。
(項目39)
前記制御システムは、電気信号を前記超音波送受信機から受信するようにさらに動作可能であり、前記受信される電気信号は、前記アイテムの寸法を示す情報を含む、項目38に記載の装置。
(項目40)
前記制御システムは、前記超音波送受信機に、特定の期間において、複数の超音波信号を伝送させるように動作可能である、項目38または項目39に記載の装置。
(項目41)
前記制御システムは、電圧パルスを前記超音波送受信機に供給するように動作可能である、項目38〜項目40のいずれか一項に記載の装置。
(項目42)
前記制御システムは、前記電圧パルスを供給するように動作可能なパルス発生モジュールを備えている、項目41に記載の装置。
(項目43)
前記電圧パルスは、成形される、項目41または項目42に記載の装置。
(項目44)
前記電圧パルスは、方形波、三角波、または正弦波、あるいは他の成形波を備えている、項目43に記載の装置。
(項目45)
前記波は、1〜100MHzの周波数を備えている、項目44に記載の装置。
(項目46)
前記波は、実質的に20MHzの周波数を備えている、項目45に記載の装置。
(項目47)
前記波は、実質的に10MHzの周波数を備えている、項目45に記載の装置。
(項目48)
前記電圧パルスは、200V未満のピーク振幅を有する、項目41〜項目47のいずれか一項に記載の装置。
(項目49)
前記電圧パルスは、5〜20Vのピーク振幅を有する、項目48に記載の装置。
(項目50)
前記電圧パルスは、約10Vのピーク振幅を有する、項目49に記載の装置。
(項目51)
前記パルス発生モジュールは、初期電圧パルスを発生させるように動作可能なパルス発生器と、前記初期電圧パルスを増幅し、増幅されたパルスを生成するように動作可能な増幅器とを備えている、項目42、または、項目42に従属する項目43〜項目50のいずれか一項に記載の装置。
(項目52)
前記パルス発生モジュールは、前記パルス発生器を前記増幅されたパルスから遮蔽するように動作可能な信号ブロッカーをさらに備えている、項目51に記載の装置。
(項目53)
前記信号ブロッカーは、電界効果トランジスタを備えている、項目52に記載の装置。
(項目54)
前記信号ブロッカーは、前記増幅器と同期され、前記信号ブロッカーは、前記増幅器が前記増幅されたパルスを伝送しているときのみ動作可能であり、そうでなければ、動作可能ではない、項目52または項目53に記載の装置。
(項目55)
前記制御システムは、前記受信される超音波信号から、前記アイテムの寸法を示す情報を抽出するように動作可能であり、前記複数の受信される信号から抽出される情報を使用して、特定の期間にわたる前記アイテムの寸法の単一の値を決定するように動作可能である、項目38〜項目54のいずれか一項に記載の装置。
(項目56)
前記制御システムは、それぞれの電気信号の飛行時間値を決定し、複数のそのような飛行時間値を組み合わせることにより、複合飛行時間値を生成するように動作可能である、項目55に記載の装置。
(項目57)
前記制御システムは、前記複合飛行時間値を使用して、前記寸法値を生成する、項目56に記載の装置。
(項目58)
前記装置は、1つ以上の温度センサをさらに含む、項目31〜項目57のいずれか一項に記載の装置。
(項目59)
前記温度センサは、1つ以上の熱電対を備えている、項目58に記載の装置。
(項目60)
前記制御システムは、前記温度センサによって提供される温度測定を使用して、前記寸法値を較正するように動作可能である、最終的に項目38に従属する、項目58または項目59に記載の装置。
(項目61)
項目30〜項目60のいずれか一項に記載の装置を備えている、アイテム。
(項目62)
実質的に、付随の図面を参照して本明細書に説明されるような方法。
(項目63)
実質的に、付随の図面を参照して本明細書に説明されるような装置。
【図面の簡単な説明】
【0031】
次に、本発明は、付随の図面を参照して、単なる一例として説明される。
図1図1は、アイテムの寸法を測定するための装置の概略図である。
図2図2は、第1のアイテム(A)と第2のアイテム(B)との間の飛行時間の差異を図式的に図示する。
図3図3は、キャパシタバンクを含むシステムによって発生されたと考えられる信号と、理想的信号とを図式的に比較する。
図4図4は、異なる振幅の2つの反射される信号を図示する。
図5図5は、見掛けの厚さに及ぼす温度変化の影響を図示する。
図6図6は、アイテムの寸法を測定するための代替システムを図式的に示す。
図7図7は、寸法を測定するための方法を描写する、流れ図である。
図8図8は、異なる周波数を有するが、同一率でサンプリングされる、2つの超音波を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
最初に、図1を参照すると、超音波を使用して、アイテム12の寸法を測定するための装置10が示される。
【0033】
超音波は、ヒトの聴力を上回る、音の周波数スペクトルの一部を指し、典型的には、20kHzを上回る周波数を有する音を含むと見なされる。超音波パルスは、その材料特性によって決定される速度において、固体を通過する。超音波パルスは、典型的には、音響特性の変化が生じる場合、界面または境界から反射される。
【0034】
境界から反射される超音波信号は、その境界に関する情報を含む。例えば、境界までの距離に関する情報は、アイテムの中に伝送された超音波パルスが、境界までアイテムを通過し、反射として戻るためにかかる時間を測定することによって、決定することができる。この測定された時間から、反射波によって進行された距離を計算することが可能である(アイテムが作製される材料中の音速を知ることにより)。その距離は、アイテムの寸法、特に、境界までの距離を示す。境界が、表面である場合、寸法は、アイテムの厚さを示す。
【0035】
本方法は、図2により明確に図示される。図2Aは、アイテム12に結合された超音波送受信機18を示す。送受信機18が、好適な電気パルスによって励起されると、送受信機は、超音波信号iを放出する。その信号は、送受信機が固定される表面の平面に略垂直方向に、アイテムを通して伝送される。信号が、境界、例えば、アイテムの試験表面28に到達すると、信号の少なくとも一部が、反射される。反射される信号rは、超音波送受信機18において検出され、電気信号に変換される。
【0036】
図2Aはまた、経時的に伝送されたパルスiおよび反射されたパルスrの振幅変動のグラフィカル例証30を示す。反射される信号は、伝送される信号と略類似形状を有するが、一部の信号エネルギーが損失されるため(減衰のため、および全信号が、必ずしも、反射されないため)、振幅が減少される。
【0037】
伝送されたパルスと受信したパルスとの間の時間31は、信号の「飛行時間」である。この飛行時間31は、信号によって進行された距離を示し、距離は、アイテムの厚さの2倍に等しい。
【0038】
図2Bは、図2Aに類似する状況を図示するが、アイテム112は、図2Aに示されるアイテム12より薄い。本実施例では、アイテム112は、ある程度の摩耗を被った後のアイテム12である。図2Bにおける発信iパルスと反射されたrパルスとの間の時間31は、進行された距離がより短いため、図2Aにおける同等時間未満であることが分かるであろう。
【0039】
寸法を測定すること、特に、寸法変化を測定し、リアルタイムで摩耗の指標を提供することに関する困難性の1つは、寸法測定が、必然的に、ある程度の不確実性を含むことである。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「不確実性」(また、Uとも称される)とは、厚さの単一測定(X)が、真の基礎となるサンプルの厚さの平均値の95%信頼間隔をX±Uが形成するような値であることを意味する。sは、短期間内に、一定温度において、定常状態(摩耗が生じない)における同一のサンプルの反復された厚さ測定の大きなサンプルから得られるであろう標準偏差とする。サンプリング手順は、測定が自己相関されないようなものであると仮定される。次いで、不確実性は、1.96・sとして定義される。
【0041】
また、サンプリング手順は、温度が、ランダムに選択され、測定が、独立するように選択されると仮定して、異なる温度において、摩耗が生じていない、同一のサンプルに関する測定間の標準偏差に基づいて、温度調節された厚さ測定と関連付けられた不確実性を定義することが可能である。この不確実性は、較正式のパラメータの推定に不確実性が存在するであろうため、一定温度からのものより大きくなるであろう。
【0042】
不確実性は、実行間の変動を意図的に考慮していないため、またはサンプル調製のため、方法の反復性と異なり、むしろ、不確実性は、測定における短期変動のため、特定の時間における特定の測定と関連付けられた不確実性である。
【0043】
摩耗測定の不確実性は、摩耗が生じる前後に、同一のサンプルに関する測定間の差異に対する95%信頼間隔の幅の1/2として定義され、1.96・s・√2に等しい。使用されるsの値は、必要に応じて、未処理または温度調節された厚さ測定に基づき得る。
【0044】
摩耗の有用な指標を提供するために、厚さの少量の変化(すなわち、少量の摩耗)が検出され得るように、非常に低い不確実性まで寸法を測定可能である必要がある。典型的には、1μm未満、好ましくは、10nm以下の不確実性を伴って、摩耗を検出可能であることが望ましい。例えば、1〜5nmの不確実性は、期間1秒にわたって測定される場合、望ましくあり得る。
【0045】
この程度の精度まで距離を決定することは、超音波パルスの飛行時間の測定をピコ秒以内まで要求するであろう。これは、現在、困難かつ高価であり、非実験室環境では、非実践的である。
【0046】
我々は、飛行時間の単一の非常に正確な測定から、寸法測定を生成するのではなく、低不確実性寸法測定が、複数の低正確飛行時間測定から生成可能であることを見出した。
【0047】
図1に示される装置10は、特定の期間にわたって(例えば、1秒)、飛行時間の複数の値を立て続けに測定するように動作可能である。それらの複数の値は、統計的に組み合わされ、その特定の期間において、アイテムの寸法の値を決定するために使用される、複合飛行時間値を生成する。
【0048】
示される実施例では、試験アイテム12は、第2のアイテム14と接触しており、矢印16によって図1に示されるように、2つのアイテム間に相対的運動が生じる。経時的に、アイテム12と14との間の相対的運動は、両アイテムに摩耗を生じさせる。潤滑剤、例えば、油系潤滑剤が、アイテム間に提供され、摩耗の影響を改変、特に、低減させ得る。
【0049】
装置10は、2つの主要構成要素、すなわち、超音波送受信機18および制御システム20を含む。超音波送受信機は、超音波パルスを試験アイテム12中に伝送することと、超音波パルスをアイテム12から受信することの両方が可能である、圧電変換器の形態をとる。超音波変換器は、例えば、変換器をアイテムの表面22に糊着することによって、またはアイテム上の原位置で変換器を形成する圧電結晶を蒸着させることによって、アイテム12に物理的に結合される。
【0050】
制御システム20は、超音波変換器と通信し、超音波変換器18に、超音波信号を放出させるように動作可能である。制御システム20はまた、変換器によって検出される超音波信号を解釈するように動作可能である。
【0051】
制御システム20は、パルス発生モジュール24およびコントローラモジュール26を含む。パルス発生モジュール24は、電気パルスを発生させ、コントローラモジュール26からの命令に応答して、超音波変換器を励起させるように動作可能である。電気パルスによって励起されると、超音波変換器は、超音波パルスを発生するようになる。
【0052】
パルス発生モジュール24はさらに、超音波変換器によって発生された電気信号を受信するように動作可能である。電気信号は、超音波が超音波変換器に入射すると発生される。パルス発生モジュールは、解釈および分析のために、受信される電気信号をコントローラモジュールに通信するように動作可能である。
【0053】
使用において、図1に示される装置は、試験アイテム12の寸法11の値を決定するために、図7に記載される方法を実装する。
【0054】
ステップS1では、超音波パルスが、試験アイテム12を通して伝送される。特に、コントローラモジュールは、パルス発生モジュールに、電圧パルスを発生させ、順に、超音波変換器に、超音波パルスを発生させる。超音波パルスは、超音波変換器が、アイテムに結合されている(本実施例では、恒久的に結合されている)ため、アイテム12中に伝送される。
【0055】
伝送された超音波パルスは、続いて、アイテムの試験表面28から反射され、反射されたパルスは、ステップS2において受信される。反射されたパルスは、オリジナルのパルスが伝送された同一の場所、特に、パルスが生じた超音波変換器で受信される。超音波パルスは、超音波送受信機によって、電気信号に変換され、解釈のために、コントローラモジュールに転送される。受信した超音波パルスおよび変換された電気信号は両方とも、表面までの距離に関する情報を含む。
【0056】
ステップS3では、パルスの飛行時間が、電気信号から決定される。典型的には、単一飛行時間値は、±1μmの不確実性まで決定することができるが、これは、一般に、摩耗を定量化する目的のためには、大き過ぎる不確実性である。装置10では、飛行時間値は、制御システム、特に、コントローラモジュールによって決定され、メモリ内に保存される。
【0057】
ステップS4では、ステップS1からS3が、十分な数の飛行時間値が収集されるまで反復される。本事例における「十分な」とは、超音波測定の変動性に基づいて、アイテムの厚さを所望の不確実性まで表すために十分なデータ点を指す。この数は、通常、事前決定されるが、必ずしも、そうある必要はない。反復回数は、1を上回る任意の自然数(例えば、2、10、100、1,000、10,000、1,000,000等)であり得る。一般に、収集される値の数が大きいほど、達成される精度は高くなる。
【0058】
例示的装置10では、制御システムは、ステップS1からS3を所定の回数反復させるように動作可能である。制御システムは、そのメモリが、所定の値の数に等しい一組の飛行時間値を備えているまで、メモリ内で決定される、複数の飛行時間値を記憶する。
【0059】
選択された数の値が収集されると、この方法は、ステップS5に進む。ステップS5では、複数の測定された飛行時間値は、組み合わせられ、複合飛行時間値を生成する。示される例示的方法では、値の正規分布を使用して、値を統計的に組み合わせ、平均値を決定する。算術平均からの標準偏差もまた使用し、算術平均の標準誤差を計算し得る。複合飛行時間値が生成されると、測定された個々の飛行時間値は、必要に応じて、破棄され得る(例えば、メモリから削除される)。
【0060】
ステップS6では、複合飛行時間値を使用して、複数の測定が生じた期間にわたって、超音波パルスの各々によって進行された平均距離を示す、単一寸法値を生成する。選択された期間は、極度の摩耗条件でも、物理的距離が、有意に変化する可能性が低いように十分に短い(例えば、1nm未満)。例えば、複数の測定は、同一秒内で行われる場合がある。
【0061】
多くの測定の結果をこのように組み合わせることは、雑音効果が、平均化ステップにおいて打ち消されるため、試験寸法の不確実性のより低い値をもたらす。
【0062】
そのような方法およびシステムを使用して、アイテムの寸法、例えば、その厚さをリアルタイムで測定することができる。我々は、3秒間にわたって得られた一組の約40,000個の飛行時間値を使用して、10nm未満(典型的には、1〜5nmまたは2〜3nm)の不確実性を伴って、寸法を測定可能であることを見出した。
【0063】
複数の寸法値は、図7に記載される方法が、例えば、規則的間隔、例えば、0.2秒に1回、1秒に1回、1分に1回、または10分に1回の間隔で反復される場合、生成されることができる。複数の寸法値は、コントローラモジュールのメモリ内に記憶され、および/または必要に応じて、記憶および/または分析のために、遠隔場所に伝送され、したがって、摩耗率の変化を含む、経時的摩耗の割合の正確な指標を提供することができる。
【0064】
説明されるシステムおよび方法は、ロバストであり、現場ならびに実験室で使用することができる。システムは、厚さの極端な変化を測定することができ、薄い放射線活性表面層の摩耗の測定に限定されない。システムは、超音波パルスが伝送され得る任意の材料、例えば、金属、樹脂、およびプラスチックとともに使用することができる。さらに、任意の数の超音波変換器が、1つのシステム10内に提供される場合があり、または複数のシステム10が、並行して使用され得、所望に応じて、複数の測定を複数の異なる構成要素上で同時に行うことを可能にする。
【0065】
本明細書に説明される方法を実践的システムに実装する場合、我々は、いくつかの要因が、測定精度に影響を及ぼし得ることを見出したが、これらは、以下により詳細に論じられる。
【0066】
(超音波パルス発生)
伝送された超音波パルスが、低過ぎる振幅を有する場合、反射される戻り信号は、減衰損失および全信号が必ずしも反射されないという事実のため、背景雑音を克服して検出することは困難であり得る。低振幅の伝送されるパルスは、システムが、湿潤環境(例えば、油または他の潤滑剤等の液体が、試験表面上に存在する)で使用される場合、特に、問題となる。
【0067】
一般に、発信信号が強力であるほど、対応する反射される信号も強力となる。しかしながら、我々は、特に、前述の例示的システムにおけるように、反射される信号が、初期パルスを放出した同一の変換器によって検出される場合、高振幅発信パルスの放出が、必ずしも、最良結果をもたらさないことを見出した。
【0068】
電圧パルスの放出後、パルス発生器は、典型的には、「緩和」期間を被り、その間、有意な雑音が発生される。放出される電圧パルスが高いほど、この雑音量は大きくなり、消滅までの時間がかかる。この緩和期間が、大き過ぎる場合、信号が、雑音中に損失される可能性が高いため、戻ってくる超音波パルスの検出は、困難となり得る。
【0069】
パルス発生モジュールの励起電圧は、したがって、これらの対立を考慮して選択された。我々は、好適な電圧が、200V未満、例えば、1−100Vの範囲内、特に、範囲3−20Vの範囲内であることを見出した。以下に説明されるサンプルシステムは、10Vの電圧を使用する。
【0070】
我々はまた、発生される電圧パルス(ひいては、超音波パルス)が、反復可能形状を有するときに、良好な結果が達成されることを見出した。反復可能パルス形状の使用は、飛行時間の反復測定を簡略化し、また、複合飛行時間値に及ぼす雑音の影響を低減させる。加えて、パルス発生が、反復可能である(または、発生中の少なくとも任意の変動が、予測可能かつ最小限にされる)場合、システムは、温度に関連して、より容易に較正することができる(以下により詳述)。
【0071】
圧電超音波変換器は、電圧パルスを変換器に供給することによって励起することができる。そのような電圧パルスを発生させる方法の1つは、キャパシタの使用である。別の方法は、演算増幅器の使用である。両方法は、合理的に反復可能パルスを生成する。しかしながら、増幅器によって発生される信号の形状は、典型的には、キャパシタによって発生されるものより制御可能であり、波の特定の形状の発生を可能にする。特に、増幅器の使用は、正弦波の発生を可能にする(例えば、方形波、三角波、または正弦波として成形される電圧パルスを生成することによって)。
【0072】
超音波変換器は、概して、特定の周波数において、最も効果的に機能するように最適化され、本動作周波数またはその近傍での正弦波の形態における励起パルスのそのような生成は、より効率的であり得る。
【0073】
超音波パルス発生における第3の考慮は、超音波送受信機の周波数(したがって、超音波パルスの周波数)に関する。一般に、より低い周波数の信号ほど、伝送特性が良好である(例えば、減衰の低減)。しかしながら、我々は、より高い周波数の信号ほど、反復可能な方法において、分析が容易であることを見出した(以下により詳細に論じられる)。好適な周波数は、1−100MHzの範囲、特に、3−50MHzの範囲から選択される場合がある。前述のシステムは、10MHzの周波数を使用するが、最大30MHzの周波数、例えば、20MHzもまた、良好な結果をもたらすことが分かった。
【0074】
(飛行時間測定)
反射されたパルスの飛行時間は、反射波に関する所定の特徴が受信される時刻を認識することによって、測定することができる。この受信時刻は、飛行時間を決定するために、発信パルスに関する相当特徴が発生された時刻(測定される、または既知であるかのいずかであり得る)と比較することができる。
【0075】
測定が基づくべき特徴の選択は、いくつかの実践的考慮を要求する。典型的には、飛行時間は、伝送される信号のピーク振幅と戻り信号のピーク振幅との間の時間を測定することによって、計算される。しかしながら、試験表面との相互作用は、反射される信号の形状をゆがみさせ、シミュレートされた反射ピークと比較して、その予期される場所からの測定された反射信号のピークの移動をもたらし得る。この現象は、図3に示されており、34に、シミュレートされたまたは「理想的」反射の経時的振幅の変化が、破線で示され、実線の測定された反射との比較のために重ね合わされている。測定された反射の形状が、雑音のため、理想的信号に対してゆがみされるのが分かるであろう。特に、x−軸上で測定されるような、そのピークが生じる時刻を有するので、ピーク振幅が変更されている。
【0076】
反射されたピークの形状におけるゆがみは、必ずしも、測定毎に一貫していない(例えば、表面汚染は、経時的に拡散または増加し得る)。最大振幅を測定するとき、これらの振幅変動は、物理的寸法変化に対応しない、飛行時間において知覚される変動を導入し、不正確性をもたらし得る。
【0077】
我々は、より優れたアプローチが、2つのゼロ振幅点間の時間を比較することであることを見出した。しかしながら、このアプローチもまた、図3および4に図示される、複雑性を有する。
【0078】
論理的アプローチは、反射波の前縁を見つけることである場合がある。キャパシタバンクが、初期パルスを発生させるために使用されている場合、典型的には、パルス放出後、ゼロ振幅に到達する際、遅延が存在し、これは、第1の反射に影響を及ぼし得る。この影響は、反射が生じた時刻37(すなわち、伝送されたパルスの開始時刻35に相当する時刻)の分析を困難にする。図3は、理想的(雑音を伴わない)反射の開始時刻37が、詳細36において、どのように曖昧にされ得るかを図示する。飛行時間が、見掛けの「ゼロ」38に対して測定された場合、時間シフト誤差が、導入される。演算増幅器システムが使用され、ゼロ振幅への到達において遅延が存在しない場合、依然として、前縁閾値がトリガされた時を決定することにおいて問題がある。これは、図4に示されており、信号の背景雑音は、前縁が生じるゼロ振幅点の識別を困難にする。
【0079】
2つのパルスの発信時刻の測定における別の困難性は、データ分析において、波を識別する場合、典型的には、実際のゼロ点自体ではなく、閾値が探されることである。反射の振幅は、波毎に変化し得るため、この方法は、図4に図示されるように、さらに誤差を導入し得る。特に、より低いピーク振幅を有する反射(破線で示される)は、より高いピーク振幅を有する別の反射(実線で示される)より、閾値に到達するのに時間がかかり、実際には存在しない、2つの波間の飛行時間の見掛けの差異を導入する。
【0080】
反射波の前縁を曖昧にし得る雑音のため、代わりに、飛行時間が、切片ゼロ40に対して測定される。切片ゼロ40は、波が振幅軸を再交差する場所である(すなわち、ゼロ振幅であるが、パルスの開始時刻後の時刻を有する)。本明細書に説明されるシステムで使用される切片点40は、第1の切片ゼロ、または「第2のゼロ」であるが、後続切片点は、所望に応じて、使用され得る。
【0081】
そのような切片点では、波は本質的に線形であり、点の場所は、他の雑音からの最小外乱を伴う、軸と交差する前後に行われた測定から反復的に補間することができる。この点は、本質的に、図3および4に示されるように、波の振幅変化によって影響を受けない。この点では、また、再び、誤差を加えるであろう、他の周波数からの「ショルダー」は信号内に存在しない。
【0082】
ゼロ振幅軸の両側の実際の測定された値間のこの線形補間を考慮すると、信号の周波数が大きいほど、線が急勾配となり、測定の誤差が小さくなる。しかしながら、前述のように、信号のために選択される周波数は、他のシステム要件、特に、信号が伝送される必要がある材料の深度と比較考量される必要がある。
【0083】
加えて、より高い周波数が使用される場合、データサンプリングレートを増加させる必要があり得る。図8は、異なる周波数を有するが、同一率でサンプリングされる、2つの超音波を図示する。図中、点線は、より高い周波数信号を表し、実線は、より低い周波数信号を表す。ゼロ軸との交差を補間するとき、高周波数線は、より急勾配であるが、勾配を表すデータは少ない。この例では、実線は、100MHzでサンプリングされた10MHz信号を表し、点線は、100MHzでサンプリングされた20MHz信号を表す。
【0084】
信号が、試験表面から反射されると、その信号の一部は、超音波変換器が結合されている表面から、試験表面に向かって、逆反射される。再反射される信号の一部は、次いで、再び、第2の反射として反射される。理論的には、そのような第2の反射(または、より高次の反射、例えば、第3、第5、またはさらに第20の反射)の飛行時間の測定は、そのような反射によって進行された距離がより大きいため、より正確な結果を生成するであろう。
【0085】
しかしながら、反射の次数の選択は、再び、反射される信号の品質および背景雑音と確実に区別されるべきその能力と比較考量される必要がある。高次反射を使用することが、より良いと考えられるであろうが、実験を通して、我々は、最良測定が、超音波が発生された時刻と第1の反射との間に現れると決定した。
【0086】
(統計分析)
前述のように、飛行時間測定の精度に影響を及ぼし得る、背景雑音を含む種々の源からの一連の誤差が存在する。これらの誤差を低減するいくつかの方法が上で論じられたが、各個々の測定は、非常に短い期間を測定することは困難であるため、それでもなお、精度が制限される。
【0087】
不確実性のより低い飛行時間値を生成するために、一連の測定された値(「サンプル」)が、集約され、統計的演算が、それらに関して行われ、材料の厚さの複合値を決定する。より多くのサンプルが組み合わせられるほど、結果として生じる複合値の不確実性は、低くなる。得られ得るサンプルの数は、第2の信号を伝送する前に、第1の反射される信号が受信される(可能性として、さらに反射が消滅する)まで待機する必要性のため、物理的に制限される。
【0088】
好適なサンプル集合は、1秒間にわたって、規則的間隔で得られる10,000〜80,000サンプルを含む場合がある。以下に説明される例示的システムは、3秒毎に約40,000サンプルのサンプルを収集するように動作可能である。
【0089】
本サイズのサンプル集合から、平均を計算すること(中央値または最頻値とは対照的に)は、計算集約的である。特に、我々は、計算速度の観点から、単一のより大きなデータ集合に関する統計ではなく、より小さいデータ集合を生成し、次いで、それらに関する統計を行うことの方が良いことを見出した。これは、小データ集合は、リアルタイムで処理することができるが、大きなデータ集合の処理は、概して、データの書込およびデータの読取を要求し、計算プロセスを減速させるためである。システムのバージョンの1つでは、複数の受信される信号から導出された情報を備えている集合は、複数の(特に、10個の)より小さい下位集合に分割される。各下位集合は、平均され、飛行時間「下位値」を生成し、得られた下位値は、次いで、組み合わせられ、複合値を生成する。この2段階統計分析は、個々の測定された飛行時間値の完全集合の平均を単に生成するより迅速かつ効率的に完了することができる。加えて、我々は、1秒間の継続的サンプリングが、1秒間にわたって、複数のサンプル集合を得る(例えば、0.2秒毎にサンプル集合を生成する)場合ほど正確ではないことを見出した。これは、温度変化が、より短い時間に対して、より小さくなる可能性が高いためである。
【0090】
各下位集合は、2〜100,000飛行時間値、例えば、2〜45,000、100〜10,000、または3000〜5000の範囲を伴うサンプルサイズを含む場合がある。以下に説明される例示的システムでは、4005個のサンプルが、各下位集合において得られる。この数は、0.2秒以内に得られる、離散サンプルの数として選択されている。理論上、より小さい下位集合の数が大きいほど、複合値をより迅速に決定可能にする場合がある。しかしながら、0.2sより短い期間に及ぶ下位集合を温度と同期してリンクさせることは困難である。
【0091】
したがって、一例示的システムでは、4005個の10の下位集合が、10回の連続0.2秒間(0.1秒離れている場合がある)にわたって生成される。飛行時間下位値は、各下位集合に対して生成される。それらの10個の下位値は、次いで、3秒間の飛行時間値を生成するために組み合わせられる。その複合飛行時間値は、約40,000個の個々の測定からのデータを含む。
【0092】
各下位集合の平均を計算する代替アプローチは、サンプルの下位集合をインタリーブし(例えば、最大20個の連続サンプルがインタリーブされる場合がある)、より正確な単一波を生成することであろう。これらのインタリーブされた波は、次いで、前述のように、統計的に組み合わせられ、複合値を生成し得る。
【0093】
(温度補償)
温度変化は、測定のいくつかの特性を変化させる。これらの特性として、とりわけ、以下が挙げられる。
・測定されている材料の拡張/収縮、したがって、記録される見掛けの厚さを変化させる。
・超音波変換器の応答特性を変化させる。
・糊線の拡張/収縮。
・糊および測定された材料を通る音速の変化。
・材料を通る音速の変化。
【0094】
前述の影響は、反復可能であり、大部分、温度に伴って線形である。したがって、寸法値を生成する場合、温度変化を補償することが可能である。これは、摩耗が生じていないが、温度が変動されている実験較正に基づいて、一次補正を使用して行うことができる。摩耗ではなく、温度変化に曝される試料を測定することによって、温度および厚さを関連させることが可能である。
【0095】
図5は、そのような較正の結果を示す。示されるグラフでは、データ点は、試料が加熱され、冷却されるが、摩耗には曝されない実験中に収集された。各データ点は、0.2秒で捕捉された厚さの4005回の測定の結果である。システムは、1分あたりに100回の収集で実行され、厚さが、温度に対してプロットされた。この点から、線形関係が、仮定され、適切な「直線」関数を計算した(但し、他の選択肢、例えば、スプライン関数、ルックアップテーブル、または多項式も利用可能である)。この関係は、次いで、(例えば、摩耗試験の間の)後続読取をオリジナルと同等と見なすために使用される。例えば、測定された厚さは、標準温度に逆較正される場合がある。
【0096】
温度変動は、測定された厚さ値を有意に改変し得る。したがって、超音波厚さ測定と実質的に同時に、正確な温度測定を取得し、寸法値を較正可能にすることが望ましくあり得る。正確なおよび反復可能な温度読取を得る方法の1つは、超音波センサの隣の試験アイテムの表面上に搭載された熱電対の使用である。また、他の場所から、例えば、アイテムの遠隔表面(例えば、摩耗に曝される表面)上またはアイテム内の別の深度において、追加の温度読取を提供することも有用であり得る。
【0097】
(実践的システム)
上記を考慮する超音波寸法測定システム100が、図6に図式的に描写される。システム100は、装置10と共通する多くの特徴を共有する。特に、システム100は、超音波送受信機118と、パルス発生モジュール124およびコントローラモジュール126を含む、制御システム120とを含む。
【0098】
超音波変換器118は、使用において、糊等の固定剤を使用して、試験アイテム(図示せず)に固定される、圧電変換器を備えている。所望に応じて、超音波変換器は、アイテムの表面上の原位置で蒸着される場合がある。選択される固定剤は、主に、アイテムと、使用において経験すると予期される条件とに依存するが、使用において予期される温度範囲にわたって、超音波信号の良好な伝送を可能にする必要がある。定位置に固定される場合、センサは、エポキシ樹脂裏材、例えば、鋼鉄補強エポキシ等、アイテムへの超音波信号の伝送を支援するように、裏材で被覆され得る。変換器118は、中心周波数約10MHzを有するが、前述のように、他の周波数も可能である。
【0099】
パルス発生モジュール124は、約10Vのピーク振幅を有する電圧パルスを発生させるように動作可能である。パルス発生モジュールは、パルス発生器140、増幅器142、および信号ブロッカー144を含む。パルス発生器は、反復可能な形状を有する実質的に、1Vの電圧パルスを発生させるように動作可能である。この実施例では、パルスは、実質的に10MHzの周波数を伴う正弦波を備え、パルス発生器140は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA1)等の第1のプログラマブル要素を備えている。伝送される初期パルスを発生させるだけではなく、FPGA 1は、反射される信号を受信するように動作可能である。
【0100】
増幅器142は、周波数を改変することなく、FPGA 1によって生成された成形された信号を約10Vパルスまで増幅するように動作可能である。そのような高電圧信号が、FPGA 1によって受信された場合、FPGA 1に損傷を及ぼすであろう。したがって、増幅器が、アクティブであるとき、この実施例では、電界効果トランジスタ(FET)である、信号ブロッカー144が、同時にアクティブとなり、10V信号のどんな部分も、FPGA 1に向かって逆伝送され得ないことを確実にする。増幅器が、10Vパルスを伝送するとすぐに、信号ブロッカー144は、反射される信号が、FPGA 1によって検出されることが可能となるように非アクティブにされる。
【0101】
コントローラモジュール126は、第2のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA 2)およびプロセッサ148等のプログラマブル要素146と、メモリ149とをさらに含む。FPGA 2は、試験アイテムの温度を測定するように配置される、熱電対等の温度センサ150から、温度データを収集するように動作可能である。
【0102】
プロセッサ148は、プログラマブル要素140および146の両方と信号通信し、信号データをFPGA 1から、温度データをFPGA 2から受信する。プロセッサは、受信される信号データおよび温度データを使用して、寸法測定を生成する。
【0103】
動作において、システム100は、実質的に同時に、プロセッサの制御下、以下の2つの動作集合を行う。
【0104】
最初に、プログラマブル要素140は、持続時間内に1Vパルス50nsを発生させる。信号ブロッカー144が、アクティブにされ、増幅器142が、1Vパルスを10Vに増幅させる。信号ブロッカーは、次いで、非アクティブにされる。10V信号は、ケーブルを経由して、超音波送受信機118に伝送される。超音波送受信機は、信号を超音波パルスに変換し、パルスを試験アイテムの中に伝送する。反射された超音波パルスは、続いて、超音波送受信機によって受信され、電気信号に変換され、プログラマブル要素140によって検出される。受信される信号(特に、一緒になって受信される信号の形状を示す離散測定の集合)を識別するデータは、分析/記憶のために、特に、飛行時間値の生成のために、プロセッサに伝送される。この動作集合は、特定の期間において、所定の回数反復され、この実施例では、0.2秒以内に、約4005回、反復される。
【0105】
超音波送受信機118は、別個に具現化される、超音波送信機および超音波受信機によって置換され得る。これは、受信機を送信機によって提供された励起から隔離するのに有用であって、信号ブロッカー144を不必要にするであろう。これは、送信機および別個の受信機の使用を示すために、送受信機118を通る破線によって、図6に示される。
【0106】
飛行時間データの前述の収集と同時に、プロセッサは、第2のプログラマブル要素146に、温度データを温度センサ150から収集するように命令する。測定された温度値(2つの測定から成る)は、FPGA 1が所定の数のサンプルを収集するまで、メモリ内に記憶される。これらの動作は、実質的に、同期して、開始および終了するように配置される。
【0107】
所定の数の測定に対する信号データが収集されると、プロセッサは、前述のように、第1の切片ゼロを特定することによって、各測定に対する飛行時間を決定する。飛行時間値の集合は、次いで、平均され、単一飛行時間値を生成し、これは、温度値を使用して較正される。温度独立寸法値が、次いで、計算される。その値は、測定動作が生じた0.2秒内における試験アイテムの厚さを示す。
【0108】
システムは、所定の回数、前述の動作を反復し、さらなる寸法値を生成し、次いで、組み合わせられ、より長い期間(例えば、1秒)にわたって平均されるより正確な複合寸法値を生成するように動作可能である。特に、システムは、前述の動作を10回(例えば、約0.5秒の間隔において)反復し、結果として生じる10個の寸法値を平均化し、5秒間の複合寸法値を生成するように配置される。
【0109】
方法全体(第2の平均ステップを含む)は、所望に応じた回数だけ、反復することができる。例えば、方法は、規則的間隔、例えば、1分毎または10分毎に反復され、複数の複合寸法値を生成する場合がある。そのような複合寸法値の記録、およびおそらく、それらそれぞれの測定回数は、記憶され(メモリ149または別の、可能性として、遠隔の場所内のいずれか)、経時的に寸法変化を示す記録を生成し得る(該当する場合)。
【0110】
前述のシステムおよび方法を使用して、材料、例えば、金属、プラスチック、または複合材等のさまざまな材料の寸法を測定することができ、材料特性および厚さは、生成される信号品質に影響を及ぼすであろう。典型的には、システムは、材料特性に応じて、3〜400mmまたは3〜300mm、より典型的には、3〜100または3〜30mmの初期寸法を伴う、アイテムの寸法変化を測定可能である。
【0111】
システムは、さまざまな条件の下で動作することができ、特に、実験室における使用に限定されない。例えば、本システムは、車両、例えば、自動車または船舶であり得る、試験機械内に設置され、車両を使用中、寸法の測定をリアルタイムで生成するために使用される場合がある。
【0112】
システムは、複数の超音波変換器を含み、同一の車両内の複数の構成要素を同時に測定可能にする場合がある。そのようなシステムでは、各超音波変換器は、それぞれの温度感知配置を備えているであろうが、単一プロセッサおよび単一パルス発生器を共有する場合がある。
【0113】
制御システムは、遠隔制御ハブと通信(例えば、無線通信)する場合がある。寸法測定とともに、他の測定されたデータ、例えば、時間および温度データが、無線伝送デバイスを使用して、制御システムによって、制御ハブに伝送される場合がある。システムによって取得されたデータは、したがって、実質的に、リアルタイムで、遠隔場所から分析することができる。
【0114】
種々の他の修正が、本発明の範囲から逸脱することなく、行われ得る。例えば、パルス発生の異なる手段が、使用される場合があり、温度測定の異なる方法が、使用される場合もある。図1および6に示される略図は、例証にすぎず、必ずしも、記載された構成要素の物理的場所を示すわけではないことを理解されるであろう。特に、第1のプログラマブル要素140は、第2のプログラマブル要素146を含む筐体に構成される場合があるが、これは、増幅器および信号ブロッカーを含む筐体と別個である場合がある。プロセッサ148は、プログラマブル要素と同一の筐体内に構成される場合があるか、またはシステムの残りから遠隔である場合がある。
【0115】
方法ステップは、任意の好適な順序で実施される場合があり、特に、信号を統計的に組み合わせるステップは、方法の任意の好適な段階で生じる場合があることを理解されるであろう。図6に関して述べたように、信号情報は、飛行時間値が、各受信される信号に対して生成された後に組み合わせられる。代わりに、受信される電気信号を表す飛行時間データは、複合飛行時間値をその組み合わせられた日付から生成する前に組み合わせられる場合があることを理解されるであろう。代替として、複数の個々の寸法値は、各反射される信号ごと、または反射される信号の下位集合ごとに1つ、生成される場合がある。それらの寸法値は、次いで、統計的に組み合わせられ、複合寸法値を生成する場合がある。
【0116】
適切な電圧、周波数、およびサンプル集合サイズは、試験材料のタイプ、材料の厚さ、センサのタイプ、および動作温度に応じて、変動し得ることを理解されるであろう。図6に関しする前述のシステムは、金属、例えば、鋼鉄とともに使用するために最適化された。しかしながら、他の材料は、論じられたものより大きいまたはより小さいサンプルサイズ、より高いまたはより低い電圧、およびより高いまたはより低い周波数を要求する場合がある。さらに、他の材料は、温度変化によって有意に影響されない場合があり、温度較正が、常に必要ではない場合がある。
【0117】
前述の明細書では、特に重要であると考えられる、本発明の特徴に注意を引き付けることに尽力したが、特定の強調が置かれているかどうかにかかわらず、以下に参照される、および/または図面に図示される、任意の特許性特徴あるいは特徴の組み合わせに関して、保護を主張することを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8