特許第5792322号(P5792322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5792322ビタミンDおよびメトホルミン含有医薬組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792322
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ビタミンDおよびメトホルミン含有医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/593 20060101AFI20150917BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20150917BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20150917BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150917BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   A61K31/593
   A61K31/155
   A61P1/00
   A61P35/00
   A61P43/00 121
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-552817(P2013-552817)
(86)(22)【出願日】2011年8月17日
(65)【公表番号】特表2014-505079(P2014-505079A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】CN2011078514
(87)【国際公開番号】WO2012106947
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2013年8月16日
(31)【優先権主張番号】201110036080.2
(32)【優先日】2011年2月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513204274
【氏名又は名称】グアンドン タイヘー メディスン サイエンス アンド テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG TAIHE MEDICINE SCIENCE & TECHNOLOGY CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ファン,フーリン
【審査官】 磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−302447(JP,A)
【文献】 特表2007−508298(JP,A)
【文献】 特表2009−508847(JP,A)
【文献】 特表2007−507552(JP,A)
【文献】 G. I. Research,2004年,12(1),41-48
【文献】 Cancer Science,2010年,101(7),1695-1700
【文献】 Cancer Science,2008年,99(11),2136-2141
【文献】 日本消化器病学会雑誌,2009年,106,A839
【文献】 日本癌学会学術総会記事,2009年,68th,74
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/592
A61K 31/155
A61K 31/593
A61P 1/00
A61P 35/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分(a)であるビタミンDと、
活性成分(b)であるメトホルミン又はその薬学的に許容される塩と、
(c)薬学的に許容される担体と、
からなり、
活性成分(a)と活性成分(b)の比率(U:mg)が、1:12〜15:2であることを特徴とする、大腸ポリープと大腸癌を治療及び/又は予防するための医薬組成物。
【請求項2】
メトホルミンの薬学的に許容される塩が、メトホルミン塩酸塩であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
活性成分(a)と活性成分(b)の比率(U:mg)が、1:45:2であることを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
活性成分(a)と活性成分(b)の比率(U:mg)が、1:4、5:6又は5:2であることを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
活性成分(a)と活性成分(b)の合計含有量が、組成物の1〜99wt%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
活性成分(a)と活性成分(b)の合計含有量が、組成物の5〜99wt%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
組成物の剤型が経口剤型であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
大腸ポリープと大腸癌を治療及び/又は予防する医薬を製造するための使用であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項9】
(i)第1容器、および該第1容器に入れた活性成分(a)であるビタミンD又は活性成分(a)含有薬物と、
(ii)第2容器、および該第2容器に入れた活性成分(b)であるメトホルミン又はその薬学的に許容される塩又は活性成分(b)含有薬物と、
(iii)活性成分(a)と活性成分(b)を併用して投与することにより、大腸ポリープと大腸癌を治療及び/又は予防することに関する説明が記載された取扱書と、
を含み、活性成分(a)と活性成分(b)の比率(U:mg)が、1:12〜15:2であることを特徴とする、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬分野に関し、さらに具体的には、ビタミンD又はその誘導体と、ビグアナイド系薬剤とを含む医薬組成物、ならびに大腸ポリープの発生、増殖、再発および大腸癌などの疾患の予防と治療における前記組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
大腸ポリープとは、粘膜表面から腸管へ突起する隆起性病変であり、有茎であっても無茎であってもよい。大腸ポリープのうち、一部は腫瘍性ポリープであって、一部は非腫瘍性ポリープである。そのなかでも、腫瘍性ポリープは70%〜80%を占め、大腸癌と密接に関与する。
【0003】
大腸ポリープの治療は、ポリープが発見されたら直ちに摘出するということで行われ、現在は主に、内視鏡下で摘出することで行われる。大腸ポリープの患者の多くには、症状がなく又は顕著ではない症状しかないので、臨床上では、大腸癌を重視しているが、大腸ポリープの早期の発見や治療には気を配ることができなく、ひいては無視することが多い。しかしながら、大腸ポリープは、悪変が多発する傾向があり、大腸癌の発症の要因の一つである。大腸ポリープの予防により大腸癌を予防することは、検討する価値がある。西洋先進国では、50歳以上の無症状の健常人に対して大腸内視鏡検査を行い、大腸ポリープを早期に発見し摘出することが普及されており、これは、今まで唯一の寿命を延ばせる検査手段であると考えられる。
【0004】
大腸癌は結腸癌と直腸癌の総称であり、結腸直腸癌や結直腸癌とも言われる。大腸癌とは、大腸粘膜上皮が環境や遺伝などの多種の発癌要因の作用により発生した悪性の病変・予後不良のことであり、死亡率が高い。大腸癌は、大腸粘膜上皮由来の悪性腫瘍であって、最もよく見られる消化管悪性腫瘍の一つである。近年の研究によれば、その進展ルートは「正常粘膜―異常腺窩巣―大腸ポリープ腺腫―腺癌」である。
【0005】
全世界においては、我国は大腸癌発症率の低い領域であるが、近年、大腸癌は肺癌と同様に、発症率が迅速に上昇する傾向にある。大腸癌は他の悪性腫瘍と同様に、その病因はいまだに明確ではないが、環境要素、遺伝要素、大腸腺腫、慢性大腸炎などに関与する可能性がある。大腸癌の治療手段としては、手術による腫瘍摘出が一番であり、放射線による治療、化学療法薬による治療および漢方薬による治療なども補助手段として行われる。
【0006】
しかしながら、今まで、大腸ポリープと大腸癌に対しては、まだ満足できる治療薬がないため、本分野では、大腸ポリープと大腸癌の治療及び/又は予防に適用できる新規な薬物が切望されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、大腸ポリープと大腸癌を有効に治療及び/又は予防できる新規な医薬組成物を提供することにある。
【0008】
本発明のもう一つの目的は、大腸ポリープや大腸癌などの疾患の治療及び/又は予防における前記医薬組成物の使用を提供することにある。
【0009】
本発明の第一は、
活性成分(a)であるビタミンDと、
活性成分(b)であるメトホルミン又はその薬学的に許容される塩と、
(c)薬学的に許容される担体と、
を含有する医薬組成物を提供する。
【0010】
もう一つの好ましい例において、前記メトホルミンの薬学的に許容される塩は、メトホルミン塩酸塩である。
【0011】
もう一つの好ましい例において、前記ビタミンDは、ビタミンD2、ビタミンD3、アルファカルシドール、カルシフェジオール(25−ヒドロキシビタミンD)、カルシトリオール(1α,25−ジヒドロキシビタミンD)、ジヒドロタキステロール(DHT)又はそれらの組み合わせを含む。
【0012】
もう一つの好ましい例において、前記活性成分(a)と活性成分(b)の比率(国際単位U:ミリグラムmg)は1:100〜50:1であり、好ましくは1:12〜15:2であり、より好ましくは1:4〜5:2である。
【0013】
活性成分(a)と(b)の重量比は重量で、通常は0.00125〜0.125mgビタミンD:100〜5000mgメトホルミン塩酸塩、好ましくは0.0075〜0.075mgビタミンD:400−3600mgメトホルミン塩酸塩、より好ましくは0.0075〜0.025mgビタミンD:400−1200mgメトホルミン塩酸塩である。
【0014】
もう一つの好ましい例において、前記活性成分(a)と活性成分(b)の合計含有量は、組成物の1〜99wt%であり、好ましくは5〜90wt%である。
【0015】
もう一つの好ましい例において、前記医薬組成物はさらに、シスプラチン、パクリタキセル、或いは抗腫瘍の抗体などの腫瘍を治療する活性成分を含む他の薬物活性成分を含有してもよい。
【0016】
もう一つの好ましい例において、前記組成物の剤型は、錠剤、カプセル剤、フィルム剤、顆粒剤などを含み、さらに徐放錠剤や非徐放錠剤も含む経口剤型である。
【0017】
本発明の第二は、大腸ポリープと大腸癌を治療及び/又は予防する医薬を製造するための、本発明の第一に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0018】
もう一つの好ましい例において、前記治療又は予防は、大腸における異常腺窩巣の数を低減させることを含む。
【0019】
本発明の第三は、大腸ポリープと大腸癌を治療及び/又は予防する医薬を製造するための、活性成分(a)であるビタミンDと活性成分(b)であるメトホルミン又はその薬学的に許容される塩とからなる組み合わせ或いは混合物の使用を提供する。
【0020】
本発明の第四は、
(i)第1容器、および該第1容器に入れた活性成分(a)であるビタミンD又は活性成分(a)含有薬物と、
(ii)第2容器、および該第2容器に入れた活性成分(b)であるメトホルミン又はその薬学的に許容される塩又は活性成分(b)含有薬物と、
(iii)活性成分(a)と活性成分(b)を併用して投与することにより、大腸ポリープと大腸癌を治療及び/又は予防することに関する説明が記載された取扱書と、
を含むキットを提供する。
【0021】
もう一つの好ましい例において、前記第1容器と第2容器における薬物は、活性成分(a)含有単方製剤および活性成分(b)含有単方製剤である。
もう一つの好ましい例において、前記薬物の剤型は、経口剤型である。
【0022】
本発明の第五は、必要とする哺乳動物対象に、活性成分(a)であるビタミンDと活性成分(b)であるメトホルミン又はその薬学的に許容される塩とを投与する、或いは前記活性成分(a)と活性成分(b)を含む医薬組成物を投与する工程を含む、大腸ポリープと大腸癌を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0023】
もう一つの好ましい例において、前記投与は、同時投与と回分投与を含む。ただし、前記回分投与は、投与間隔?24時間、好ましくは投与間隔?12時間、より好ましくは投与間隔?6時間の条件下で、活性成分(a)と(b)の順で、或いは活性成分(b)と(a)の順で分けて投与することである。
もう一つの好ましい例において、前記哺乳動物はヒトを含む。
【0024】
本発明の範囲内であれば、本発明の上記各技術的特徴および以下(例えば実施例)で具体的に開示される各技術的特徴は、互いに組み合わせて、新たな又は好ましい技術方案を構成してもよいことは理解されるべきである。ここでは便宜上、詳細な陳述を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】正常な腺窩を示す図である。
図2】異常腺窩巣ACF(AC=1)を示す図である。
図3】異常腺窩巣ACF(AC=2)を示す図である。
図4】異常腺窩巣ACF(AC=3)を示す図である。
図5】異常腺窩巣ACF(AC?4)を示す図である。
図6】粘膜の増殖を示す図である。
図7】大腸粘膜(正常)を示す図である。
図8】大腸粘膜(腫瘍発生)を示す図である。
図9】各実験群におけるACF総数を示す図である。図中、組分け#1〜#11はそれぞれ、ブランク対照群、モデル対照群、ビタミンD3低投与量群、ビタミンD3中投与量群、ビタミンD3高投与量群、メトホルミン低投与量群、メトホルミン中投与量群、メトホルミン高投与量群、併用投与群A、併用投与群B、併用投与群C(表3参照)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明者らは、幅広く深く検討・スクリーンしたところ、意外なことに、(a)ビタミンD又はその誘導体と、(b)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩との二つの活性成分は、相乗的で有効に大腸ポリープの発生、増殖、再発および大腸癌を予防、抑制ことができるということを見出した。この知見に基づき、本発明を完成した。
【0027】
ビタミンDおよびその誘導体
本発明にかかる組成物において、核心となる活性成分の一つは、ビタミンDおよびその誘導体である。
【0028】
ビタミンDおよびその誘導体(Vitamin D and Analogs)は従来からビタミン系薬剤に属し、主にビタミンD欠乏症の予防と治療に用いられるが、低カルシウム血症、低リン血症、くる病、骨軟化症および乳児テタニーなどの予防と治療にも用いられる。皮膚結核、皮膚および粘膜の各型のエリテマトーデス等にも大用量で用いられる。ビタミンDは、コレカルシフェロール(cholecalciferol)生物活性をもつステロイド誘導体であり、主にビタミンD2とビタミンD3を含む。ビタミンDはいずれも、異なるプロビタミンDが紫外線の照射によって生じた誘導体である。
【0029】
本文に用いられるように、用語「ビタミンD」は、ビタミンDのみならず、例えばアルファカルシドール、カルシフェジオール(25−ヒドロキシビタミンD)、カルシトリオール(1α,25−ジヒドロキシビタミンD)、ジヒドロタキステロール(DHT)などの、同様な臨床的・医学的作用を有する同族体、すなわちビタミンDのプロドラッグ又は誘導体も含む。それらの誘導体は生体内でビタミンD又はその類似物に転換することができ、かつビタミンD2やD3と同様又は類似の生物活性を有する。
【0030】
本発明にかかる複方医薬組成物(或いは単方医薬組成物)において、ビタミンDの含有量は通常、1錠(1剤)にあたり0.0075〜0.075mg(或いは300〜3000国際単位)であり、好ましくは1錠(1剤)にあたり0.0075〜0.025mg(或いは300〜1000国際単位)である。
【0031】
メトホルミン又はその薬学的に許容される塩
本発明にかかる組成物において、もう一つの核心となる活性成分は、メトホルミン又はその薬学的に許容される塩である。
【0032】
もう一種の常用のメトホルミンの薬学的に許容される塩は、メトホルミン塩酸塩である。メトホルミン塩酸塩(Metformin Hydrochloride)は、ビグアナイド系経口血糖降下薬に属し、2型糖尿病の臨床治療に長期間適用されてきた。
【0033】
本発明にかかる複方医薬組成物(或いは単方医薬組成物)において、メトホルミン又はその薬学的に許容される塩の含有量は通常、1錠(1剤)にあたり0.3〜3.0mgであり、好ましくは1錠(1剤)にあたり1〜1.5mgである。
【0034】
本発明において、前記活性成分(a)と活性成分(b)の比率(U:mg)は通常1:100〜50:1であり、好ましくは1:12〜15:2であり、より好ましくは1:4〜5:2である。
【0035】
また、前記ビタミンDとメトホルミン又はその薬学的に許容される塩の含有量比(重量)は重量で、通常1:4.8×105〜3:1.6×104で、より好ましくは1:1.6×105〜1:1.6×104である。活性成分(a)と(b)の重量比は、通常0.00125〜0.125mgビタミンD:100〜5000mgメトホルミン塩酸塩、好ましくは0.0075〜0.075mgビタミンD:400−3600mgメトホルミン塩酸塩、より好ましくは0.0075〜0.025mgビタミンD:400−1200mgメトホルミン塩酸塩であることが好ましい。
【0036】
複方医薬組成物およびキット
本発明によれば、活性成分(a)であるビタミンDと、活性成分(b)であるメトホルミン又はその薬学的に許容される塩と、(c)薬学的に許容される担体と、を含有する複方医薬組成物を提供する。
【0037】
本発明にかかる複方医薬組成物の剤型および製造方法は特に限定されるものではなく、本分野で通常用いられる製法によって、錠剤、カプセル、顆粒剤、徐放剤、注射剤などの各種の剤型にすることができる。もう一つの好ましい剤型は、経口製剤である。
【0038】
本発明によれば、さらに、
(i)第1容器、および該第1容器に入れた活性成分(a)であるビタミンD又は活性成分(a)含有薬物と、
(ii)第2容器、および該第2容器に入れた活性成分(b)であるメトホルミン又はその薬学的に許容される塩又は活性成分(b)含有薬物と、
(iii)活性成分(a)と活性成分(b)を併用して投与することにより、大腸ポリープと大腸癌を治療及び/又は予防することに関する説明が記載された取扱書と、
を含む、大腸ポリープと大腸癌を予防又は治療するためのキットを提供する。
【0039】
もう一つの好ましい例において、前記薬物は、活性成分(a)含有単方製剤および活性成分(b)含有単方製剤である。
もう一つの好ましい例において、前記薬物の剤型は、錠剤のような経口剤型である。
【0040】
本発明にかかる製剤とキットは、大腸ポリープの発生、増殖や再発の予防及び治療、特に大腸における異常腺窩巣の数の低減に有用である。
本発明にかかる製剤とキットは、大腸癌の予防及び治療にも有用である。
【0041】
本発明にかかる製剤は、1日につき1回か2回投与してもよいし、或いは徐放の形態で1日おきに1回投与してもよい。患者にとって守りやすく、患者の服薬コンプライアンスを顕著に向上させることができるため、1日につき1回投与することが好ましい。
【0042】
投与時、大部分の症例では、1日に適用される合計投与量は通常、各薬物が独立で投与される場合の1日の常用投与量よりも少ない(或いは、少数の症例では同等又は多い)べきであり、つまり、大部分の症例では、ビタミンDの1日の投与量は、0.025mg(或いは1000単位)より少ないことが好ましく、メトホルミン又はその薬学的に許容される塩はの1日の投与量は、1200mg(60kgのヒトにとって)より少ないことが好ましい。適用される活性成分の有効投与量は、投与パターンや治療しようとする疾患の重篤度などによって変更することができるということはもちろんである。
【0043】
治療及び予防方法
本発明によれば、さらに、哺乳動物に、有効量の活性成分(a)であるビタミンDと活性成分(b)であるメトホルミン又はその薬学的に許容される塩とを投与する、或いは前記活性成分(a)と活性成分(b)を含む医薬組成物を投与する工程を含む、本発明にかかる二種類の活性成分又は相応の薬物によって大腸ポリープ及び/又は大腸癌を治療及び予防する方法を提供する。
【0044】
本発明にかかる二種類の活性成分は、上記用途に適用される場合、例えば溶媒、希釈剤などの一種又は多種の薬学的に許容される担体又は賦形剤と混合してもよく、しかも、錠剤、丸剤、カプセル剤、可分散の粉末、顆粒又は懸濁液(例えば約0.05〜5%の懸濁化剤を含有)、シロップ(例えば約10〜50%の糖を含有)、およびエリキシル剤(約20〜50%のエタノールを含有)のような形態で経口投与してもよく、或いは無菌で注射可能な溶液又は懸濁液(等張媒体中で約0.05〜5%の懸濁化剤を含有)の形態で非胃腸投与してもよい。例えば、それらの薬物製剤は、担体と混合した約0.01〜99%、より好ましくは約0.1%〜90%(重量)の活性成分を含有してもよい。
【0045】
本発明にかかる二種類の活性成分又は医薬組成物は、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮下、皮内、経口又は局所を含む通常の経路で投与することができるが、これらに限定されない。好ましい投与経路は、経口投与を含む。
投与しやすい点から見れば、好ましい医薬組成物は固形組成物、特に錠剤や固体充填又は液体充填カプセルである。
【0046】
また、本発明にかかる二種類の活性成分又は薬物はさらに、他の腫瘍を治療する薬剤(例えばシスプラチン、パクリタキセル、或いは抗腫瘍の抗体など)と併用してもよい。
【0047】
本発明の主な利点は以下の通りである。
(a)ビタミンDとメトホルミンの組み合わせの、大腸ポリープの発生、増殖、再発および大腸癌の予防に対する作用が開示され、かつ相応の医薬の製造における両者の組み合わせの使用が提供される。
(b)ビタミンDとメトホルミンはいずれも常用の薬物であり、安全性が高い。
(c)ビタミンDとメトホルミンの同時投与は、大腸癌の前癌病変(ACF)及び腫瘍のいずれにも、相乗的な抑制作用を有し、かつ医学的な有意差があり、薬物の使用量をさらに低減させることができる。
【0048】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常、通常の条件、或いはメーカーの薦めの条件で行われた。特に説明しない限り、百分率と部は重量基準である。
【0049】
実施例1
ビタミンDとメトホルミンの大腸癌に対する化学的予防作用
1.実験の目的
ジメチルヒドラジンで誘発されたWistarラットの大腸癌をモデルとして、ビタミンDとメトホルミン塩酸塩の併用投与の、大腸癌に対する化学的予防作用および大腸腫瘍に対する影響を検討した。
【0050】
2.動物と材料
2.1 実験動物
110匹のWistarラット、雄性、SPFグレード、体重80〜120g。南方医科大学実験動物センターから購入、合格証明書番号:SCXK粤2006−0015。
【0051】
2.2 薬品と試薬
ジメチルヒドラジン(1,2−Dimethylhydrazine dihydrochloride,DMH),東京仁成工業株式会社,ロット番号:EZC6C;ビタミンD注射液(Vitamin D),上海通用薬業株式会社,ロット番号:090812;メトホルミン塩酸塩(Metformin Hydrochloride,MF),鄭州?諾生物科技株式会社;大豆油,益海嘉里食品営業株式会社,ロット番号:20091027;メチレンブルー,天津市大茂化学試薬工場。
【0052】
3.方法
3.1 組分けと処理
実験動物は体重に基づいて、1群につき10匹でランダムに11群に分けられた。ブランク対照群、モデル対照群、ビタミンD低、中、高投与量群、メトホルミン低、中、高投与量群、及びビタミンDとメトホルミンの異なる投与量の三つの併用投与群とした。ブランク対照群を除き、各群においては、1週間につき1回ジメチルヒドラジンを皮下注射し、注射を18週間継続し、大腸癌モデルを誘発した。ジメチルヒドラジンを塩化ナトリウム注射液で溶解し、5%NaOH溶液を加えてpHを6.5〜7.0に調製し、1mlごとに20mgを含有する溶液を制作し、0.22μmフィルターでろ過し、使用しようとする時に配合する。
【0053】
ビタミンDを大豆油に入れて、1mlごとに10〜100Uを含有する溶液を制作し、1日に1回胃内投与した。メトホルミンを水に入れて、1mlごとに10〜100mgを含有する溶液を制作し、1日に1回胃内投与した。上記薬物は0日目から投与した。各実験群の投与量は表1に示す。
【0054】
各群の動物は、投与から18週目にすべて致死させた。実験期間には、1週間につき1回体重を記録し、体重に基づいて投与量を計算した。実験期間に死亡した動物は、解剖して観察した。
【0055】
【表1】
【0056】
3.2 結果の観察
3.2.1
動物の精神的活動、摂食、糞便、毛髪などの通常状況を毎日観察し記録した。
3.2.2
動物を致死させてから、直ちに大腸を分離し、生理食塩水で腸内容物を洗濯し、目視で腫瘍の数をカウントした。大腸全体を平らにして、両層のろ紙の間に挟み込んで、10%中性ホルムアルデヒドに入れて24〜48h固定した。固定された大腸組織を0.2%メチレンブルー溶液に入れて10s染色した。直ちに光学顕微鏡下で大腸全体における異常腺窩巣(ACF)を観察し、異常腺窩巣の数により1箇所、2箇所、3箇所、4箇所以上に分けて、それぞれカウントした。
【0057】
3.2.3
データ処理は、Excel 2003ソフトで統計学的解析を行い、得られたデータは平均値±標準偏差(mean±SD)で表される。P<0.05の場合は、両群の間に有意差があることを示す。
【0058】
4.結果
4.1 通常状況
実験期間には、各群のラットはいずれも、死亡した動物が一匹もなかった。精神的活動、摂食、糞便、毛髪などの他の状況は、有意差がなかった。18週目に、ブランク対照群の体重増加量は、ジメチルヒドラジンが注射した各群よりも多く、ジメチルヒドラジンが投与した各群の体重増加量が少なかった。各群のラットの体重状況は表2に示す。
各群のラットの腹膜、肝臓、脾臓などの臓器の全体観察では、顕著な異常巣が見られなかった。
【0059】
【表2】
【0060】
4.2 異常腺窩巣(ACF)の観察結果
実験の18週目の週末には、ブランク対照群ではACFが発見されなかったが、他の群ではいずれもACFが発見された。モデル対照群に比べて、各投与群における異なる腺窩巣数の各型のACFの数はいずれも低減し、ACFの総数は顕著に低減した。ビタミンD投与群では、投与量の増加に従って、ACFに対する抑制効果が高くなった。メトホルミン投与群でも、同様な傾向が見られた。
【0061】
意外なことに、ビタミンDとメトホルミンの併用投与の各群においては相乗的作用が見られ、中投与量で併用する群と低投与量で併用する群との二つの群では、ACFに対する抑制効果はいずれも、ビタミンD中投与量群またはメトホルミン中投与量群よりも高く、高投与量群と近かった。ビタミンDとメトホルミンの中投与量での併用は、その効果が本実験の各群の中でも一番高く、しかもビタミンD単独の高投与量での投与およびメトホルミン単独の高投与量での投与に比べて遥かに高かった。
実験の結果は図1〜8、ならびに表3および図9に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
4.3 腫瘍の発生と抑制率
実験の18週目の週末には、ブランク対照群では、腫瘍が発見されたラットが一匹もなかったが、モデル対照群では、すべてのラットに腫瘍が発生し、腫瘍数は平均で2.8個/匹であった。
【0064】
モデル対照群に比べて、各投与群における腫瘍数はいずれも低減した。ビタミンD投与群では、投与量の増加に従って、腫瘍に対する抑制率が高くなったが、モデル対照群に比べれば、中投与量群と高投与量群における腫瘍数が顕著に低減した(P<0.01)。メトホルミン投与群でも、腫瘍数が投与量の増加に従って低減した。
【0065】
ビタミンDとメトホルミンの併用投与の各群においては、中投与量で併用する群と低投与量で併用する群との二つの群では、腫瘍数が高投与量で単独投与する群と近かった。中投与量で併用する群は、腫瘍に対する抑制率が一番高く、腫瘍数がビタミンD単独の高投与量群およびメトホルミン単独の高投与量群よりも低かった(P<0.01)。これは、ビタミンDとメトホルミンの併用投与は相乗的な効果があることを示唆した。
【0066】
【表4】
【0067】
5.検討
大腸癌はよく見られる悪性腫瘍の一つであって、近年、我国における発症率が迅速に上昇する傾向にあり、その予後不良により、化学的予防は大腸癌の一つの防止経路として重視されている。ジメチルヒドラジン(DMH)は、動物特異性の腸管腫瘍、特に結腸腫瘍の誘発剤である。現在、ジメチルヒドラジンで誘発された大腸癌モデルは、大腸癌の予防・治療薬物のスクリーンに広く用いられる。Birdにより異常腺窩巣(ACF)という概念が提出された以来、ACFが結腸癌の前癌病変であることは国内外の学者に公認されており、その数は、腫瘍の発生率と著しいプラスの相関関係にある。
【0068】
ビタミンDとメトホルミンはいずれも常用の薬物であり、臨床上で長期間使用されてきた。。それらはぞれぞれ、ビタミンの補充と2型糖尿病の治療に用いられ、いずれも安全性の高い薬物である。
【0069】
本発明では、高、中、低投与量のビタミンDとメトホルミンの大腸癌に対する予防作用が検討された。特に、ビタミンDとメトホルミンの経口併用が検討され、両者の併用投与が相乗的作用を有するかどうかを観察した。結果から明らかなように、DMH処理されたラットでは、いずれも異なる程度のACFが形成されており、腫瘍の出現も観察された。ビタミンDとメトホルミン単独では、いずれもACFと腫瘍数を低減させることができ、投与量の増加に従って、効果が顕著になった。中投与量のビタミンDと低投与量のメトホルミンの併用、および低投与量のビタミンDと中投与量のメトホルミンの併用はいずれも、両者の中投与量での単独投与よりも効果が高く、高投与量の場合と近かった。両者の中投与量での併用は、効果が高投与量での単独投与よりも高かった。
【0070】
ビタミンDとメトホルミンの併用投与は、顕著な相乗的作用を示しており、大腸癌の化学的予防・治療の薬剤候補として用いられる。
【0071】
実施例2〜6
ビタミンDおよびメトホルミン含有複方医薬組成物
製薬産業における通常の方法により、下記表1の処方に従って複方カプセルや糖衣錠剤を調製した。
【表5】
【0072】
ビタミンDは含有量が少ないため、調製時、まず適量の活性化セルロースなどの佐剤と混合しておき、所定の重量に希釈してから、メトホルミン塩酸塩と混合して錠剤やカプセルに調製した。
上記各複方カプセルや糖衣錠剤は、1日につき1回か2回、1回につき1〜2錠(又はカプセル)の形態で投与することができる。
【0073】
実施例7
ビタミンDおよびメトホルミン含有キット
(i)第1容器、および該第1容器に入れた10錠のビタミンD錠剤(0.025mg/錠)と、
(ii)第2容器、および該第2容器に入れた10錠のメトホルミン塩酸塩錠剤(1200mg/片)と、
(iii)ビタミンDとメトホルミン塩酸塩を併用して投与することにより、大腸ポリープと大腸癌を治療及び/又は予防することに関する説明が記載された取扱書と、
を含むキットを調製した。
【0074】
実施例8
ビタミンD類似物とメトホルミンの相乗的作用
ビタミンD3の代わりにカルシフェジオール(25−ヒドロキシビタミンD)を使用したとともに、各群の動物の数を8匹とした以外は、実施例1と同様にした。実験においては、異常腺窩巣(ACF)の数の観察のみを行った。
【0075】
結果から明らかなように、25−ヒドロキシビタミンDとメトホルミンの併用投与の各群(100U/kgの25−ヒドロキシビタミンD+40mg/kgのメトホルミン塩酸塩;30U/kgの25−ヒドロキシビタミンD+120mg/kgのメトホルミン塩酸塩;及び100U/kgの25−ヒドロキシビタミンD+120mg/kgのメトホルミン塩酸塩という三つの群)においても、相乗的作用を示した。ただし、中投与量で併用する群と低投与量で併用する群との二つの群では、いずれもACFに対する抑制効果が25−ヒドロキシビタミンD中投与量群(100U/kgの25−ヒドロキシビタミンD)又はメトホルミン塩酸塩中投与量群(+40mg/kgのメトホルミン塩酸塩)よりも高く、しかも25−ヒドロキシビタミンDの高投与量で単独投与する群と近かった。
【0076】
実施例9
ビタミンDとメトホルミンによる大腸癌の抑制及び治療
実験動物を1群につき8匹でランダムに11群に分けた以外は、実施例1と同様にした。ブランク対照群を除き、各群においては、1週間につき1回ジメチルヒドラジンを皮下注射し、注射を18週間継続し、大腸癌モデルを誘発した。ビタミンDを大豆油に入れて、1mlごとに10〜100Uを含有する溶液を制作し、1日に1回胃内投与した。メトホルミンを水に入れて、1mlごとに10〜100mgを含有する溶液を制作し、1日に1回胃内投与した。上記薬物は15日目(2週間後)から投与した。実験においては、腫瘍の発生と抑制率の観察のみを行った。
【0077】
実験の18週目の週末には、ブランク対照群では、腫瘍が発見されたラットが一匹もなかったが、モデル対照群では、すべてのラットに腫瘍が発生し、腫瘍数は平均で3.1個/匹であった。
【0078】
モデル対照群に比べて、各投与群における腫瘍数はいずれも低減した。ビタミンD投与群では、投与量の増加に従って、腫瘍に対する抑制率が高くなったが、モデル対照群に比べれば、中投与量群と高投与量群における腫瘍数が顕著に低減した(P<0.01)。メトホルミン投与群でも、腫瘍数が投与量の増加に従って低減した。
【0079】
ビタミンDとメトホルミンの併用投与の各群においては、中投与量で併用する群と低投与量で併用する群との二つの群では、腫瘍数が高投与量で単独投与する群と近かった。中投与量で併用する群は、腫瘍に対する抑制率が一番高く、腫瘍数がビタミンD単独の高投与量群およびメトホルミン単独の高投与量群よりも低かった(P<0.01)。これは、ビタミンDとメトホルミンの併用投与は、大腸癌の抑制及び治療に対して相乗的な効果があることを示唆した。
【0080】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、この分野の技術者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の様態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるべきである。
図1-3】
図4-6】
図7-9】