(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792341
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】浄水発生土の処理計画システム、及び浄水発生土の処理計画プログラム
(51)【国際特許分類】
C02F 11/00 20060101AFI20150917BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20150917BHJP
【FI】
C02F11/00 C
G06Q50/06ZAB
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-48551(P2014-48551)
(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公開番号】特開2015-171681(P2015-171681A)
(43)【公開日】2015年10月1日
【審査請求日】2014年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】597033085
【氏名又は名称】岡山市
(73)【特許権者】
【識別番号】512033383
【氏名又は名称】テクノ矢崎株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲原 龍吾
(72)【発明者】
【氏名】青江 洋典
(72)【発明者】
【氏名】平山 紀克
【審査官】
目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−230147(JP,A)
【文献】
特開2005−149448(JP,A)
【文献】
特開2004−105888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄水場における浄水処理によって発生する浄水発生土を処理する第1処理チャンネル及び第2処理チャンネルがあり、前記第1及び第2処理チャンネルの処理実績量が需要に応じて変動し、前記第2処理チャンネルが前記第1処理チャンネルに対して単位量当りの損益が高く、かつ単位期間当りの処理実績量の変動が大きい場合において、前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を決定する浄水発生土の処理計画システムであって、
前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルにおける前記浄水発生土の
過去の処理実績量を記憶する記憶手段と、
前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの
過去の処理実績量に基づいて、
次の式(1)で表される前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量の分散
Var(XY)が最小になるように、生成した前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を設定する割当量設定手段とを有することを特徴とする浄水発生土の処理計画システム。
ここで、Var(X)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Var(Y)は、過去の前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Cov(XY)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量及び前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の共分散、Aは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第1処理チャンネルへの割当量の割合であり、Bは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第2処理チャンネルへの割当量の割合である。
【請求項2】
前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量に基づいて前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルのそれぞれの上限割当量を設定する上限設定手段を更に有し、
前記割当量設定手段は、前記上限割当量以下の範囲で、前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を設定することを特徴とする請求項1に記載の浄水発生土の処理計画システム。
【請求項3】
前記浄水発生土を処理する第3処理チャンネルがあり、前記第3処理チャンネルは、処理実績量が任意に設定する割当量と等しくなり、前記第1処理チャンネルに対して単位量当りの損益が低い場合において、
割当量設定手段は、前記浄水発生土の生成量から前記第1処理チャンネルの上限割当量及び前記第2処理チャンネルの上限割当量を差し引いた量を予め前記第3処理チャンネルに割り当て、残りの前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の浄水発生土の処理計画システム。
【請求項4】
浄水場における浄水処理によって発生する浄水発生土を処理する第1処理チャンネル及び第2処理チャンネルがあり、前記第1及び第2処理チャンネルの処理実績量が需要に応じて変動し、前記第2処理チャンネルが前記第1処理チャンネルに対して単位量当りの損益が高く、かつ単位期間当りの処理実績量の変動が大きい場合において、前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を決定する浄水発生土の処理計画プログラムであって、
過去の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量に基づいて、
次の式(1)で表される前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量の分散
Var(XY)が最小になるように、生成した前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を設定するステップを有することを特徴とする浄水発生土の処理計画プログラム。
ここで、Var(X)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Var(Y)は、過去の前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Cov(XY)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量及び前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の共分散、Aは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第1処理チャンネルへの割当量の割合であり、Bは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第2処理チャンネルへの割当量の割合である。
【請求項5】
浄水場における浄水処理によって発生する浄水発生土を処理する第1処理チャンネル及び第2処理チャンネルがあり、前記第1及び第2処理チャンネルの処理実績量が需要に応じて変動し、前記第2処理チャンネルが前記第1処理チャンネルに対して単位量当りの損益が高く、かつ単位期間当りの処理実績量の変動が大きい場合において、前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を決定する浄水発生土の処理計画プログラムであって、
過去の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量に基づいて前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルのそれぞれの上限割当量を設定するステップと、
過去の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量に基づいて、前記上限割当量以下の範囲で、
次の式(1)で表される前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量の分散
Var(XY)が最小になるように、生成した前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を設定するステップとを有することを特徴とする浄水発生土の処理計画プログラム。
ここで、Var(X)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Var(Y)は、過去の前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Cov(XY)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量及び前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の共分散、Aは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第1処理チャンネルへの割当量の割合であり、Bは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第2処理チャンネルへの割当量の割合である。
【請求項6】
浄水場における浄水処理によって発生する浄水発生土を処理する第1処理チャンネル、第2処理チャンネル及び第3処理チャンネルがあり、前記第1及び第2処理チャンネルの処理実績量が需要に応じて変動し、前記第2処理チャンネルが前記第1処理チャンネルに対して単位量当りの損益が高く、かつ単位期間当りの処理実績量の変動が大きく、前記第3処理チャンネルは、処理実績量が任意に設定する割当量と等しくなり、前記第1処理チャンネルに対して単位量当りの損益が低い場合において、前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル、前記第2処理チャンネル及び前記第3処理チャンネルへの割当量を決定する浄水発生土の処理計画プログラムであって、
過去の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量に基づいて前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルのそれぞれの上限割当量を設定するステップと、
前記浄水発生土の生成量から前記第1処理チャンネルの上限割当量及び前記第2処理チャンネルの上限割当量を差し引いた量を予め前記第3処理チャンネルに割り当てるステップと、
過去の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量に基づいて、前記上限割当量以下の範囲で、
次の式(1)で表される前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量の分散
Var(XY)が最小になるように、前記第3処理チャンネルに割り当てた残りの前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を設定するステップとを有することを特徴とする浄水発生土の処理計画プログラム。
ここで、Var(X)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Var(Y)は、過去の前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Cov(XY)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量及び前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の共分散、Aは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第1処理チャンネルへの割当量の割合であり、Bは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第2処理チャンネルへの割当量の割合である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水発生土の処理計画システム、及び浄水発生土の処理計画プログラムに関し、詳細には浄水発生土の各処理チャンネルへの割当量を決定するシステム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場における表流水の浄水処理は、河川から取水された原水(表流水)を沈砂池において土、砂等を取り除く工程と、着水井において塩素等を注入して殺菌・酸化を行うと共にアルカリ剤を注入してpH調整を行う工程と、混和池において原水に凝集剤を注入して撹拌する工程と、フロック形成池において凝集剤が添加された原水中のシルトや病原虫等の濁質を凝集させ、微細なフロックを形成する工程と、沈殿池において原水中のフロックを沈殿させ、取り除く工程と、濾過池においてフロックが取り除かれた原水から更に微粒子を取り除く工程とを有し、微粒子が除去された水は配水池に貯留され、浄水として各需要家に供給される(例えば、特許文献1)。
【0003】
この浄水処理の沈殿池と濾過池から発生したフロックは汚泥となって濃縮槽で濃縮された後、固液分離によって脱水ケーキとして水から分離される。固液分離の方法としては、天日乾燥と機械加圧脱水がある(例えば、特許文献2)。天日乾燥は、乾燥池に上記汚泥を投入して太陽熱によって水分を蒸発させ、脱水ケーキを形成する。機械加圧脱水は、脱水機の圧搾室内に汚泥を圧入し、圧搾によって汚泥から脱水ケーキの形成する。これらの天日乾燥方式及び機械加圧脱水方式の脱水によってフロックから形成された脱水ケーキを浄水発生土という。
【0004】
浄水発生土は、従来、費用を支払い産業廃棄物業者に産業廃棄物として引き取ってもらうのが一般的であった。しかしながら、浄水発生土は、河川の水に含まれる肥沃な成分を含む土であり、透水性や通気性に優れて軽く、例えば、鹿沼土に類するものである。そのため、浄水発生土は、植物育成培地等の有価物として、農業、園芸、緑化等の分野での利用が可能である。現在、一部の浄水場では、浄水発生土を一般消費者に販売している例がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−34411号公報
【特許文献2】特開2007−70818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般消費者に浄水発生土を販売する場合、需要変動が比較的大きく、処理実績量を安定させることが難しい。この問題を解決するために、一般消費者に販売する処理チャンネルに加えて、例えば企業等に販売する他の処理チャンネルを構築し、両処理チャンネルを用いて販売することによって、処理実績量(販売量)の変動を抑制することが考えられる。例えば、浄水発生土を原料として園芸用や建築用の資材を製造する企業であれば、大量購入を期待することができると共に、購入量の変動が一般消費者よりも小さくなることが期待される。しかしながら、企業に販売する場合、大量購入を期待することができる反面、一般消費者に販売する場合よりも単位量当りの利益額は小さくなることが予想される。そのため、一般消費者販売の処理チャンネル及び企業販売の処理チャンネルへの浄水発生土の割当を適切に行うことが重要となる。特に、一般消費者販売用及び企業販売用に浄水発生土の加工を要する場合、割当量が適切でないと加工費用が不要なコストとして更に加わり、損益が悪化することになる。
【0007】
本発明は、以上の背景を鑑み、浄水場における浄水発生土の処理チャンネルが2種ある場合に、処理実績量の変動を抑制し、損益を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、浄水場(1)における浄水処理によって発生する浄水発生土を処理する第1処理チャンネル(CH1)及び第2処理チャンネル(CH2)があり、前記第1及び第2処理チャンネルの処理実績量が需要に応じて変動し、前記第2処理チャンネルが前記第1処理チャンネルに対して単位量当りの損益が高く、かつ単位期間当りの処理実績量の変動が大きい場合において、前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を決定する浄水発生土の処理計画システム(20)であって、前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルにおける前記浄水発生土の
過去の処理実績量を記憶する記憶手段(22)と、前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの
過去の処理実績量に基づいて、
次の式(1)で表される前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量の分散
Var(XY)が最小になるように、生成した前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を設定する割当量設定手段(27)とを有することを特徴とする。
ここで、Var(X)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Var(Y)は、過去の前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Cov(XY)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量及び前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の共分散、Aは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第1処理チャンネルへの割当量の割合であり、Bは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第2処理チャンネルへの割当量の割合である。
【0009】
この構成によれば、第1処理チャンネル及び第2処理チャンネルにおける処理実績量の変動が小さくなり、各処理チャンネルへの割当量と実際の処理実績量との差が小さくなる。すなわち、各処理チャンネルにおける浄水発生土の残存量が少なくなる。そのため、浄水発生土を各処理チャンネルに応じた加工や運搬を含む準備を要する場合において、各処理チャンネルにおける無駄な準備費用を削減することができる。
【0010】
また、上記の発明において、前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量に基づいて前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルのそれぞれの上限割当量を設定する上限設定手段(26)を更に有し、前記割当量設定手段は、前記上限割当量以下の範囲で、前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を設定するとよい。
【0011】
この構成によれば、上限割当量を設定することによって、各処理チャンネルでの処理可能な範囲で割当量が設定されるため、各処理チャンネルへの割当量と実際の処理実績量との差が小さくなる。
【0012】
また、上記の発明において、前記浄水発生土を処理する第3処理チャンネル(CH3)があり、前記第3処理チャンネルは、処理実績量が任意に設定する割当量と等しくなり、前記第1処理チャンネルに対して単位量当りの損益が低い場合において、割当量設定手段は、前記浄水発生土の生成量から前記第1処理チャンネルの上限割当量及び前記第2処理チャンネルの上限割当量を差し引いた量を予め前記第3処理チャンネルに割り当て、残りの前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を設定するとよい。
【0013】
この構成によれば、第1処理チャンネルの処理可能量及び第2処理チャンネルの処理可能量を越えて浄水発生土が生成された場合には、第1処理チャンネル用の加工または第2処理チャンネル用の準備を行うことなく、第3処理チャンネルに割り当てられるため、不要な準備費用を削減することができる。
【0014】
また、本発明の他の側面は、浄水場における浄水処理によって発生する浄水発生土を処理する第1処理チャンネル及び第2処理チャンネルがあり、前記第1及び第2処理チャンネルの処理実績量が需要に応じて変動し、前記第2処理チャンネルが前記第1処理チャンネルに対して単位量当りの損益が高く、かつ単位期間当りの処理実績量の変動が大きい場合において、前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を決定する浄水発生土の処理計画プログラムであって、前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量に基づいて、
次の式(1)で表される前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量の分散
Var(XY)が最小になるように、生成した前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を設定するステップを有することを特徴とする。
ここで、Var(X)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Var(Y)は、過去の前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Cov(XY)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量及び前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の共分散、Aは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第1処理チャンネルへの割当量の割合であり、Bは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第2処理チャンネルへの割当量の割合である。
【0015】
また、本発明の他の側面は、浄水場における浄水処理によって発生する浄水発生土を処理する第1処理チャンネル及び第2処理チャンネルがあり、前記第1及び第2処理チャンネルの処理実績量が需要に応じて変動し、前記第2処理チャンネルが前記第1処理チャンネルに対して単位量当りの損益が高く、かつ単位期間当りの処理実績量の変動が大きい場合において、前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を決定する浄水発生土の処理計画プログラムであって、前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量に基づいて前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルのそれぞれの上限割当量を設定するステップと、前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量に基づいて、前記上限割当量以下の範囲で、
次の式(1)で表される前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量の分散
Var(XY)が最小になるように、生成した前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を設定するステップとを有することを特徴とする。
ここで、Var(X)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Var(Y)は、過去の前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Cov(XY)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量及び前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の共分散、Aは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第1処理チャンネルへの割当量の割合であり、Bは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第2処理チャンネルへの割当量の割合である。
【0016】
また、本発明の他の側面は、浄水場における浄水処理によって発生する浄水発生土を処理する第1処理チャンネル、第2処理チャンネル及び第3処理チャンネルがあり、前記第1及び第2処理チャンネルの処理実績量が需要に応じて変動し、前記第2処理チャンネルが前記第1処理チャンネルに対して単位量当りの損益が高く、かつ単位期間当りの処理実績量の変動が大きく、前記第3処理チャンネルは、処理実績量が任意に設定する割当量と等しくなり、前記第1処理チャンネルに対して単位量当りの損益が低い場合において、前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル、前記第2処理チャンネル及び前記第3処理チャンネルへの割当量を決定する浄水発生土の処理計画プログラムであって、前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量に基づいて前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルのそれぞれの上限割当量を設定するステップと、前記浄水発生土の生成量から前記第1処理チャンネルの上限割当量及び前記第2処理チャンネルの上限割当量を差し引いた量を予め前記第3処理チャンネルに割り当てるステップと、前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量に基づいて、前記上限割当量以下の範囲で、
次の式(1)で表される前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルの処理実績量の分散
Var(XY)が最小になるように、前記第3処理チャンネルに割り当てた残りの前記浄水発生土の前記第1処理チャンネル及び前記第2処理チャンネルへの割当量を設定するステップとを有することを特徴とする。
ここで、Var(X)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Var(Y)は、過去の前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の分散、Cov(XY)は、過去の前記第1処理チャンネルにおける処理実績量及び前記第2処理チャンネルにおける処理実績量の共分散、Aは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第1処理チャンネルへの割当量の割合であり、Bは前記第1及び第2処理チャンネルへの割当量の総和に対する前記第2処理チャンネルへの割当量の割合である。
【発明の効果】
【0017】
以上の構成によれば、浄水場における浄水発生土の処理チャンネルが2種ある場合に、処理実績量の変動を抑制し、損益を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】浄水発生土の処理計画システムを示すブロック図
【
図3】浄水発生土の処理計画システムの処理手順を示すフロー図
【
図4】実施例における第1及び第2処理チャンネルの分散と分配比の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を浄水場における浄水発生土の各処理チャンネルへの割当量を設定する処理計画システムに適用した実施形態について説明する。
【0020】
図1に示すように、浄水場1は、原水から浄水を生成する装置として、沈砂池3、着水井4、混和池5、フロック形成池7、沈殿池8、濾過池9、及び配水池11を記載の順序で直列に有している。河川から取水された原水は、沈砂池3、着水井4、混和池5、フロック形成池7、沈殿池8、及び濾過池9を順に通過して浄水となり、配水池11に貯留され、各需要家に供給される。
【0021】
河川から取水された原水は、最初に沈砂池3に供給され、含まれる砂や土が沈殿により取り除かれる。沈砂池3を経た原水は、ポンプ等によって着水井4に供給される。沈砂池3で沈殿により取り除かれる砂や土は、浄水場1の保有処分場での処分や、外部の産業廃棄物業者での処分が行われる。着水井4は、流れを緩やかにして水位を一定に保ち、以降の工程における水位を一定に保つ。また、着水井4では、原水に塩素等の殺菌剤が添加され、殺菌が行われると共に、アルカリ剤が添加され、pHが調整される。
【0022】
原水は、着水井4から混和池5に送られる過程で、凝集剤が添加される。混和池5では、凝集剤が添加された原水が撹拌される。混和池5を経た原水は、フロック形成池7に供給され、ゆっくりと撹拌される。これにより、水に浮遊している微小な砂や土は、凝集剤によって寄り集められてフロックと呼ばれる塊を形成し、粒子が大きくなって沈殿し易くなる。
【0023】
フロック形成池7を経た原水は、沈殿池8に供給され、そこで砂や土からなるフロックが沈殿によって取り除かれる。フロックが取り除かれた原水は、濾過池9に送られ、濾過処理がなされる。これにより、沈殿池8では取り除かれなかった微小な砂や土が取り除かれる。沈殿池8を経て、微小な砂や土が取り除かれた水は、浄水として配水池11に貯留される。配水池11に貯留された浄水は、各需要家に供給される。
【0024】
沈殿池8で沈殿した砂や土を含む汚泥、及び濾過池9で濾過された砂や土を含む汚泥は、乾燥工程13に送られ、水分が取り除かれ、脱水ケーキとなる。乾燥工程13における乾燥は、天日乾燥や機械加圧脱水によって行われるとよい。天日乾燥は、水分を含む汚泥を乾燥池に供給し、太陽光によって水分を蒸発させ、脱水ケーキを形成する。機械加圧脱水は、脱水機の圧搾室内に汚泥を圧入し、圧搾によって汚泥から水分を取り除き、脱水ケーキを形成する。乾燥工程13によって形成された脱水ケーキを浄水発生土という。浄水発生土は、河川水である原水中に含まれる砂や土である。
【0025】
本実施形態に係る浄水場1は、浄水発生土の処理チャンネルとして第1処理チャンネルCH1、第2処理チャンネルCH2、及び第3処理チャンネルCH3の3つの処理チャンネルを有する。
【0026】
第1処理チャンネルCH1及び第2処理チャンネルCH2は、販売チャンネルであり、需要に応じて処理実績量が変動する。ここで、処理実績量とは、割当量(供給量)と異なり、実際にその処理チャンネルで処理された(販売された)量である。第1処理チャンネルCH1は、第2処理チャンネルCH2に対して処理実績量が大きくなるチャンネルであり、第1処理チャンネルCH1は大口販売、第2処理チャンネルCH2は小口販売といえる。また、第1処理チャンネルCH1は、大口販売であり、第2処理チャンネルCH2よりも所定の期間における処理実績量の変動量が小さい。また、第1処理チャンネルCH1は、大口販売であるためボリュームディスカウントの点から第2処理チャンネルCH2よりも単量当りの損益が低い(利益が小さい)ものとする。
【0027】
第1処理チャンネルCH1は、例えば浄水発生土を園芸用土や建材に加工して販売する企業販売である。第2処理チャンネルCH2は、例えば地域住民等の一般消費者に直接に浄水発生土を販売する消費者販売である。
【0028】
第3処理チャンネルCH3は、産業廃棄物処理業者に引き取ってもらう産廃処理である。第3処理チャンネルCH3は、浄水場1が産業廃棄物処理業者に処理費用を支払うため、損益はマイナスとなり、第1処理チャンネルCH1及び第2処理チャンネルCH2それぞれの損益よりも低い。第3処理チャンネルCH3は、浄水場1が指定する割当量を全て処理するのに十分な能力があり、処理実績量は浄水場1が指定する割当量と等しくなる。第3処理チャンネルCH3は、複数の産廃処理業者によって構成されてもよい。
【0029】
浄水発生土は、第1処理チャンネルCH1で処理されるために、第1処理チャンネルCH1用の準備工程15(以下、第1準備工程)を経る。第1準備工程15は、例えば、購入先企業の要望に応じて、粉砕処理による粒度調整や乾燥等による水分量調整、梱包、運搬等を含む。そのため、浄水発生土を第1処理チャンネルCH1用に準備すると、準備に応じた費用が発生する。第1処理チャンネルCH1での単位量当りの損益は、第1処理チャンネルCH1での単位量当りの販売額から第1準備工程15に係るコストを差し引いた額になる。
【0030】
浄水発生土は、第2処理チャンネルCH2で処理されるために、第2処理チャンネルCH2用の準備工程16(以下、第2準備工程16)を経る。第2準備工程16は、例えば、粉砕処理による粒度調整や乾燥等による水分量調整、梱包や運搬等を含む。そのため、浄水発生土を第2処理チャンネルCH2用に準備すると、準備に応じた費用が発生する。第2処理チャンネルCH2での単位量当りの損益は、第2処理チャンネルCH2での単位量当りの販売額から第2準備工程16に係るコストを差し引いた額になる。第2準備工程16は、第1準備工程15と異なり、購入先企業の要望に応じて粒度や水分等を設定するのではなく、浄水場1が設定した所定値に粒度や水分量を設定し、梱包や運搬も場合によっては省略するため、第1準備工程15よりもコストが抑制されている。
【0031】
浄水発生土は、第3処理チャンネルCH3で処理されるために、第3処理チャンネルCH3用の準備工程17(以下、第3準備工程という)を経る。第3準備工程17は、浄水発生土の産業廃棄物業者への運搬等を含む。
【0032】
乾燥工程13を経て生成された浄水発生土は、浄水発生土の処理計画システム20によって、各処理チャンネルへの割当量計画がなされ、各処理チャンネルへの割当量D1、D2、D3が設定される。処理計画システム20の詳細については後述する。
【0033】
第1処理チャンネルCH1及び第2処理チャンネルCH2の割当量D1、D2は、販売計画量に相当し、第1処理チャンネルCH1及び第2処理チャンネルCH2の需要量、すなわち実際の販売量(処理実績量)を上回ることがある。この場合には、割当量と処理実績量の差(売れ残り)は、第3処理チャンネルCH3に回されることになる。この場合、第1準備工程15に要する費用、又は第2準備工程16に要する費用が発生した上で、第3処理チャンネルCH3において処理されるため、不要な費用が発生することになる。
【0034】
図2に示すように、処理計画システム20は、CPU等を含む演算部21(演算手段)と、各種メモリを含む記憶部22(記憶手段)と、キーボードやタッチパネル等を含む入力部23と、液晶ディスプレイ等を含む出力部24とを含むハードウェアとして構成されている。処理計画システム20は、公知のパーソナルコンピュータに、処理計画プログラムを実装することによって実現されてもよい。
【0035】
記憶部22には、過去の浄水発生土の単位期間毎の生成量、第1処理チャンネルCH1における浄水発生土の単位期間毎の処理実績量、第2処理チャンネルCH2における浄水発生土の単位期間毎の処理実績量、第3処理チャンネルCH3における浄水発生土の単位期間毎の処理実績量が記憶されている。単位期間は、任意であってよく、例えば日、月、3ヶ月、半年、年等であってよい。本実施形態では、月毎の浄水発生土の生成量及び各処理チャンネルにおける処理実績量が、少なくとも過去12ヶ月分のデータが記憶されている。記憶部22へのデータの記憶は、入力部23の操作によって行われる。
【0036】
演算部21は、上限設定部26と割当量設定部27とを有している。上限設定部26は、過去の第1処理チャンネルCH1及び第2処理チャンネルCH2の処理実績量に基づいて第1処理チャンネルCH1及び第2処理チャンネルCH2のそれぞれの上限割当量M1、M2を設定する。上限割当量M1、M2は、各処理チャンネルCH1、CH2の設定可能な割当量D1、D2の上限値である。上限割当量M1、M2は、各処理チャンネルCH1、CH2で処理可能な割当量の目安であり、割当量D1,D2が過去の処理実績を明らかに越えて設定されることを抑制する。上限割当量M1、M2が設定されることによって、各処理チャンネルCH1、CH2に割り当てられた割当量D1、D2と処理実績量との差が比較的小さな範囲に抑制される。
【0037】
上限割当量M1、M2は、例えば、過去12ヶ月の各月の各処理チャンネルにおける処理実績量の最大値に1以上の係数を掛けることによって設定される。また、上限割当量M1、M2は、例えば、過去12ヶ月の各月の各処理チャンネルにおける処理実績量の平均値に1以上の係数を掛けることによって設定されてもよい。このように、上限割当量M1、M2は、過去の各処理チャンネルCH1、CH2における処理実績量の実績に基づいて設定されるとよい。
【0038】
割当量設定部27は、過去の第1処理チャンネルCH1及び第2処理チャンネルCH2の処理実績量と、浄水発生土の生成量T0と、上限設定部26で設定された各チャンネルの上限割当量M1、M2とに基づいて、第1処理チャンネルCH1及び第2処理チャンネルCH2の処理実績量の分散が最小になるように、生成した浄水発生土の第1処理チャンネルCH1、第2処理チャンネルCH2及び第3処理チャンネルCH3への割当量を設定する。
【0039】
上限設定部26及び割当量設定部27を含む演算部21の処理手順を
図3に示すフロー図を参照して説明する。最初に演算部21は、ステップS1において記憶部22から過去12ヶ月分の各月の第1処理チャンネルCH1の処理実績量及び第2処理チャンネルCH2の処理実績量を取得する。次に、ステップS2において、演算部21は、入力部23から入力される当月の浄水発生土の生成量T0を取得する。なお、演算部21は、当月の浄水発生土の生成量T0を、入力部23によって入力され、記憶部22に記憶された後に、記憶部22から取得してもよい。
【0040】
演算部21は、ステップS3において、過去12ヶ月分の各月の第1処理チャンネルCH1の処理実績量から、最大値を抽出し、その最大値に所定の係数(例えば、1.2)を掛けて第1処理チャンネルCH1の上限割当量M1を設定する。同様に、演算部21は、ステップS3において、過去12ヶ月分の各月の第2処理チャンネルCH2の処理実績量から、最大値を抽出し、その最大値に所定の係数(例えば、1.2)を掛けて第2処理チャンネルCH2の上限割当量M2を設定する。第1処理チャンネルCH1の上限割当量M1及び第2処理チャンネルCH2の上限割当量M2の設定方法は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
演算部21は、ステップS4において、第1及び第2処理チャンネルCH1、CH2への割当量の総和T1を設定する。第1及び第2処理チャンネルCH1、CH2への割当量の総和T1は、第1処理チャンネルCH1の上限割当量M1及び第2処理チャンネルCH2の上限割当量M2の和がT0未満の場合には、第1処理チャンネルCH1の上限割当量M1及び第2処理チャンネルCH2の上限割当量M2の和であり、第1処理チャンネルCH1の上限割当量M1及び第2処理チャンネルCH2の上限割当量M2の和がT0以上の場合にはT0となる(T1=M1+M2(T0>M1+M2の場合)、T1=T0(T0≦M1+M2の場合))。
【0042】
演算部21は、ステップS5において、第3処理チャンネルCH3への割当量D3を設定する。第3処理チャンネルCH3への割当量D3は、当月の浄水発生土の生成量T0から第1及び第2処理チャンネルCH1、CH2への割当量の総和T1を引いた量である(D3=T0−T1)。当月の浄水発生土の生成量T0と、第1及び第2処理チャンネルCH1、CH2への割当量の総和T1が等しい場合には、第3処理チャンネルCH3への割当量D3は0になる。
【0043】
演算部21は、ステップS6において、第1及び第2処理チャンネルCH1、CH2への割当量D1、D2の総和T1に対する第1処理チャンネルCH1への割当量D1の割合Aと、第2処理チャンネルCH2への割当量D2の割合Bとの設定可能範囲を設定する。第1処理チャンネルCH1への割当量D1の割合Aと、第2処理チャンネルCH2への割当量D2の割合Bとの和は1である(A+B=1)。割合Aを分配比という。
【0044】
第1処理チャンネルCH1の上限割当量M1に対応する第1処理チャンネルCH1の割合Amaxは、第1及び第2処理チャンネルCH1、CH2への割当量D1、D2の総和T1に対する第1処理チャンネルCH1の上限割当量M1の比(Amax=M1/T1)として設定される。第2処理チャンネルCH2の上限割当量M2に対応する第2処理チャンネルCH2の割合Bmaxは、第1及び第2処理チャンネルCH1、CH2への割当量D1、D2の総和T1に対する第2処理チャンネルCH2の上限割当量M2の比として設定される(Bmax=M2/T1)。第1処理チャンネルCH1の割合Aminは、第2処理チャンネルCH2の割合Bmaxを用いて1−Bmaxとして表される。これにより、割合Aの設定可能範囲(AminからAmax)は、1−M2/T1以上M1/T1以下になる。
【0045】
次に、演算部21は、過去の第1処理チャンネルCH1における処理実績量及び第2処理チャンネルCH2の処理実績量に基づいて、分配比Aを変化させたときの第1処理チャンネルCH1及び第2処理チャンネルCH2における処理実績量の分散Var(XY)を演算する。Var(XY)は、以下の数式1に基づいて算出される。
【数1】
ここで、Var(X)は、過去の第1処理チャンネルCH1における処理実績量の分散、Var(Y)は、過去の第2処理チャンネルCH2における処理実績量の分散、Cov(XY)は、過去の第1処理チャンネルCH1における処理実績量及び第2処理チャンネルCH2における処理実績量の共分散である。
【0046】
Var(XY)と分配比Aの関係は、分配比Aを横軸、Var(XY)を縦軸にグラフを記載すると、左側に凸の曲線となる(
図4参照)。Var(XY)は、分配比Aがある値のときに最小値をとり、分配比Aがその値から増加又は減少すると増加する。分配比Aは、ステップS6で設定したように設定可能範囲(AminからAmax)を有する。
【0047】
ステップS8では、分配比Aの設定可能範囲において、Var(XY)が最も小さくなるときの分配比Aを設定する。そして分配比Aに基づいて、第1処理チャンネルCH1の割当量及び第2処理チャンネルCH2の割当量を設定する。
【0048】
このようにVar(XY)を設定することによって、第1処理チャンネルCH1及び第2処理チャンネルCH2の処理実績量の変動を小さくすることができる。第1処理チャンネルCH1及び第2処理チャンネルCH2の処理実績量の変動が小さくなることによって、割当量と処理実績量の差が小さくなる。これにより、第1準備工程15に投入される費用、及び第2準備工程16に投入される費用を削減することができる。
【0049】
また、上限割当量M1、M2を設定することによって、過去の実績から見て処理実績量が割当量に達する可能性が低い割当量(すなわち、売れ残る可能性が高い割当量)が設定されることが抑制される。また、上限割当量M1、M2に基づき、第1及び第2処理チャンネルCH1、CH2で処理することが難しいと考えられる量を予め第3処理チャンネルCH3に割当てることによって、第1準備工程15及び第2準備工程16の費用を抑制することができる。
【実施例】
【0050】
以下に本発明の処理計画システム20の実施例について説明する。記憶部22には表1に示すデータが記憶されている。表1に示すように、データは、浄水発生土の生成量、第1処理チャンネルCH1の処理実績量、第2処理チャンネルCH2の処理実績量、及び第3処理チャンネルCH3の処理実績量の月毎の集計値の過去12ヶ月分である。
【表1】
【0051】
演算部21は、
図3に示すフローに従って第1及び第2処理チャンネルCH1、CH2の割当量D1、D2を設定する。最初に、ステップS1において、記憶部22に記憶された過去12ヶ月分の各月の第1処理チャンネルCH1の処理実績量、及び第2処理チャンネルCH2の処理実績量を取得する。そして、ステップ2において、入力部23から入力される当月の浄水発生土の生成量T0(103t)を取得する。
【0052】
次に、上限設定部26は、ステップS3において、過去12ヶ月分の各月の第1処理チャンネルCH1の処理実績量から、最大値(69t、11月)を抽出し、最大値に係数1.2を掛け、第1処理チャンネルCH1の上限割当量M1を82.8tに設定する。同様に、上限設定部26は、過去12ヶ月分の各月の第2処理チャンネルCH2の処理実績量から、最大値(36t、12月)を抽出し、最大値に係数1.2を掛け、第2処理チャンネルCH2の上限割当量M2を43.2tに設定する。
【0053】
次に、割当量設定部27は、ステップS4において、第1及び第2処理チャンネルCH1、CH2への割当量の総和T1を設定する。ここでは、第1処理チャンネルCH1の上限割当量M1(82.8t)と第2処理チャンネルCH2の上限割当量M2(43.2t)との和が126.0tであり、浄水発生土の生成量T0(103t)よりも多いため、第1及び第2処理チャンネルCH1、CH2への割当量の総和T1はT0と同じ値になり、103tとなる。
【0054】
割当量設定部27は、ステップS5において、浄水発生土の生成量T0から第1及び第2処理チャンネルCH1、CH2への割当量の総和T1を引いた値(0)を第3処理チャンネルCH3への割当量D3を設定する。
【0055】
割当量設定部27は、ステップS6において、分配比Aの設定可能範囲を演算する。分配比Aの最大値Amaxは、上述したようにAmax=M1/T1で表されるため、82.8/103=80%である。分配比Aの最小値Aminは、上述したように、1−Bmaxで表されるため、1−(43.2/103)=59%である。そのため、分配比Aの設定可能範囲は59%以上80%以下になる。
【0056】
次に、演算部21は、ステップS7において、数式1に基づき、分配比Aを変化させたときのVar(XY)を算出する。ここで、Var(X)は、過去12ヶ月の第1処理チャンネルCH1における処理実績量から算出される分散であり、25.1、Var(Y)は、過去12ヶ月の第2処理チャンネルCH2における処理実績量から算出される分散であり、112.9、Cov(XY)は、過去12ヶ月の第1処理チャンネルCH1における処理実績量及び第1処理チャンネルCH1における処理実績量から算出される共分散であり、260.3である。ここでは、分配比Aを10%毎に変化させてVar(XY)を算出した。その結果は、次の表2のようになり、グラフで表すと
図4のようになる。
【表2】
【0057】
次に、演算部21は、ステップS7において、分配比Aの設定可能範囲内でVar(XY)が最小となるときの分配比Aを、設定値として決定する。ここでは、分配比Aは70%になる。分配比Aが70%に決定されることで、第1処理チャンネルCH1への割当量は72t、第2処理チャンネルCH2への割当量は31tに設定される。
【0058】
表3に定めるように、各処理チャンネルの1t当りの販売額(第3処理チャンネルCH3の場合は引取額)、1t当りのコスト、1t当りの損益が定まっているとすると、第1処理チャンネルCH1及び第2処理チャンネルCH2によって処理される浄水発生土の1t当りの損益は、B1×A+B2×(1−A)で表される。ここで、B1は第1処理チャンネルCH1の1t当りの損益であり、B2は第2処理チャンネルCH2の1t当りの損益である。分配比が70%である場合には、第1処理チャンネルCH1及び第2処理チャンネルCH2によって処理される浄水発生土の1t当りの損益は、110円になる。
【表3】
【0059】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…浄水場、3…沈砂池、4…着水井、5…混和池、7…フロック形成池、8…沈殿池、9…濾過池、11…配水池、13…乾燥工程、15…第1準備工程、16…第2準備工程、17…第3準備工程、20…処理計画システム、21…演算部、22…記憶部、23…入力部、24…出力部、26…上限設定部、27…割当量設定部、CH1…第1処理チャンネル、CH2…第2処理チャンネル、CH3…第3処理チャンネル