【実施例1】
【0017】
図1〜
図6は、本発明の実施例1に係るワーク昇降装置を説明するための図である。
【0018】
図において、1はワークWを水平の傾転軸A回りに傾転可能とするためのワーク傾転装置であり、該ワーク傾転装置1内に、ワークWを垂直のB方向に昇降可能に構成されたワーク昇降装置2が搭載されている。
【0019】
前記ワーク傾転装置1は、ワーク昇降装置2に固定されたワークWを機械加工に適した角度位置等の最適状態に該ワーク昇降装置2ごと傾転させ、該角度位置に位置決めする。この状態で図示しない工作機械により、ワークWに各種の機械加工が施される。
【0020】
前記ワーク傾転装置1は、左,右の支持壁部1a,1a内に駆動部1b,1bを回転割り出し位置決め可能に配設した概略構造のものである。なお、1cは機体カバーである。
【0021】
前記ワーク昇降装置2は、左,右一対の側壁部3a,3aと、該両側壁部3a,3aの下端部同士に架け渡して固定された底壁部3bとからなるフレーム3を有し、該フレーム3の左,右の側壁部3a,3aが前記ワーク傾転装置1の前記駆動部1b,1bに固定されている。
【0022】
前記フレーム3の前記左,右の側壁部3a,3a間には、ワーク台4が前記B方向に昇降可能に配置されている。このワーク台4には、回転運動を昇降運動に変えて該ワーク台4を昇降させる左,右(第1,第2)のリンク機構5,5が連結されており、該リンク機構5,5は左,右(第1,第2)の伝達ロッド6,6を介して共通の駆動機構7により回転駆動される。
【0023】
前記ワーク台4は、平面視で矩形枠状のもので、前記ワークWの搭載に対応した形状,大きさに設定されている。なお、符号16は、ワークWを前記ワーク台4上に固定するためのクランプ装置である。
【0024】
前記ワーク台4の左,右縁部には左,右の支持部材4a,4aが固定されており、該支持部材4a,4aの前,後端部(
図2の上,下端部)には支持プレート4b,4bの一端部が固定されており、該各支持プレート4bの他端部にはガイド筒4cが固定されている。該各ガイド筒4cは前記B方向に延びるガイドロッド4dによりスライド可能に支持されている。該各ガイドロッド4dは前記フレーム3の左,右の側壁部3aの前,後縁部に固定されている。このようにして前記ワーク台4は前記B方向に昇降可能となっている。
【0025】
前記各リンク機構5は、回転アーム8と、該回転アーム8の先端部に取り付けられたカムフォロア9と、該カムフォロア9が転動するカム溝10aを有するカムプレート10とを有する。
【0026】
前記回転アーム8の基端部は回転軸8aに固定されている。この回転軸8aは、前記フレーム3の側壁部3aの内側面に固定されたギヤボックス11a内に挿入され、図示しない軸受により回転自在に支持されている。この回転軸8aには、後述するウォームギヤ機構12のはす歯歯車12aが形成されている。
【0027】
前記カムプレート10の前記カム溝10aは前記昇降方向と直交する水平方向に延びるように形成されている。そしてこのカムプレート10は、前記ワーク台4の左,右の支持部材4aの外面に固定されている。これにより前記ワーク台4は、水平方向に向けて前記左,右のカムプレート5,5に架け渡されていることとなる。
【0028】
前記伝達ロッド6,6は、前記ガイドロッド4dと平行に、かつ回転可能に配置されている。該各伝達ロッド6の上端部は前記ギヤボックス11a内に挿入され、図示しない軸受により回転可能に支持されている。また該伝達ロッド6の上端部にはねじ歯車が形成され、該ねじ歯車12bは前記はす歯歯車12aに噛合しており、これにより伝達ロッド6の回転を該ロッド6に直交する回転軸8aに伝達するウォームギヤ機構12が構成されている。前記伝達ロッド6の下端部は、軸受ボックス11bにより回転可能に支持されており、該軸受ボックス11bから下方への突出部にはスプロケット6aが装着されている。なお、前記軸受ボックス11bは前記フレーム3の底壁部3bにブラケットを介して固定されている。
【0029】
前記駆動機構7は、前記フレーム3の底壁部3bとワーク傾転装置1の底部1dとの間に配置されており、具体的には、前記底壁部3bの下面に回転軸13aを下方に向けて配置固定された油圧モータ(駆動源)13と、該油圧モータ13の左,右近傍に回転軸14aを下方に向けて配置固定されたガイドボックス14,14とを備えている。なお、前記駆動機構7は、前記底壁部3bの下面に取り付けられたカバー7aにより囲まれている。
【0030】
前記油圧モータ13の回転軸13aに固定された駆動スプロケット13bと、ガイドボックス14で軸支されたガイド軸14aに固定されガイドスプロケット14b,14bと、前記左,右の伝達ロッド6,6の伝達スプロケット6a,6aとには無端状の駆動チェーン15が巻回されている。なお、前記ガイドスプロケット14b,14bは、前記駆動スプロケット13bの巻き掛け角度を確保するためのものである。
【0031】
なお、図示していないが、前記油圧モータ13への油圧供給通路は、前記ワーク傾転装置1の駆動部1b,1bを貫通し、前記フレーム3の側壁部3aから底壁部3bを通るように形成されている。
【0032】
本実施例のワーク昇降装置2では、油圧モータ13の回転が駆動チェーン15から伝達ロッド6,ウォームギヤ機構12を介して回転アーム8に伝達される。該回転アーム8は、これのカムフォロア9をカムプレート10のカム溝10a内を転動させつつ回転することで該カムプレート10ひいてはワーク台4を、
図6に示すように昇降させる。
【0033】
前記昇降動作において、
図3に示すように、右側の回転アーム8は反時計回りに回動するのに対し、左側の回転アーム8は時計回りに回動する。即ち、平面視で、左,右のカムフォロア9,9による左,右のカムプレート10,10の支持ポイントは、前記傾転軸Aの前,後に振り分けられている。そのためワーク台4を安定して支持することができる。
【0034】
本実施例1では、駆動機構7により伝達ロッド6を介して回転アーム8を回転させ、該回転アーム8の回転運動をカムフォロア9とカムプレート10とによりワーク台4の昇降運動に変えるように構成したので、回転アーム8の長さの2倍の昇降ストロークを確保できることから、前記従来のシリンダ機構による装置に比較して機械全体の大型化を抑制することができる。
【0035】
また本実施例では、回転アーム8の回転中心高さが固定されており、該回転中心の下側と上側との間でワーク台4を昇降させるようにしているので、ワークW の昇降による重心移動を抑制でき、機械全体の重心バランスが良好となる。
【0036】
また、2つのリンク機構5,5を、該両リンク機構の中間に設けた1つの共通の油圧モータ13により駆動チェーン15及び伝達ロッド6を介して駆動するようにしたので、両リンク機構5,5の動作を容易確実に同期させることができ、さらに上述のように左,右のリンク機構5,5によるワーク台4の支持ポイントが振り分け配置されていることから、ワーク台4の支持状態を安定させることができる。
【0037】
また2つのリンク機構5,5を1つの駆動源で駆動するので、コストの上昇を抑制できる。
【0038】
また本実施例では、ワーク昇降装置2を、ワーク傾転装置1に搭載し、前記駆動機構7をワーク昇降装置2のフレーム3の底壁部3bとワーク傾転装置1の底部との間の空間を利用して配置したので、ワーク昇降装置2を設けたことにより装置全体の高さ方向の寸法が拡大するのを回避できる。
【0039】
またワーク昇降装置2をワーク傾転装置1に搭載したので、ワーク昇降装置2に搭載されたワークWをワーク傾転装置1の傾転によりそのまま機械加工に適した状態に位置決めして直ちに機械加工を施すことができる。そして機械加工が終了したワークWをワーク昇降装置2により直ちにワーク搬送位置に上昇させることができ、その結果、ワークWを機械加工し、次工程に移動するという一連の動作に必要な時間を短縮することができる。