特許第5792397号(P5792397)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5792397近距離通信システムにおける接続確立のための電力消費の削減
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792397
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】近距離通信システムにおける接続確立のための電力消費の削減
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/02 20090101AFI20150928BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20150928BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   H04W52/02
   H04W84/10 110
   H04B5/02
【請求項の数】26
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-543478(P2014-543478)
(86)(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公表番号】特表2015-503282(P2015-503282A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】US2012062747
(87)【国際公開番号】WO2013081762
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年2月27日
(31)【優先権主張番号】61/564,238
(32)【優先日】2011年11月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/664,342
(32)【優先日】2012年10月30日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595020643
【氏名又は名称】クゥアルコム・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】ハベリネン、アンッシ・カレバ
【審査官】 川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−130310(JP,A)
【文献】 特開2006−246343(JP,A)
【文献】 特開2010−130242(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01798867(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 − 99/00
H04B 5/00 − 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イニシエータデバイスとの近距離通信(NFC)接続を確立するようにターゲットデバイスを動作させる方法であって、
前記イニシエータデバイスから第1の搬送波信号を受信することと、ここで、前記第1の搬送波信号はポーリングコマンドを含む、
前記ポーリングコマンドが能動通信モードまたは受動通信モードを要求したかを判定することと、
前記ポーリングコマンドに応じて前記ターゲットデバイスにおけるNFCクロック生成器を選択的に使用可能にすることと
を備える、方法。
【請求項2】
前記NFCクロック生成器は、使用可能であるとき、前記ターゲットデバイスから第2の搬送波信号を送信することに関連したクロック信号を生成するためのものである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択的に使用可能にすることは、
前記ポーリングコマンドが前記受動通信モードを要求したときに、前記NFCクロック生成器を使用不可の状態に維持することと、
前記ポーリングコマンドが前記能動通信モードを要求したときに、前記NFCクロック生成器を使用可能にすることと
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ターゲットデバイスは、前記ポーリングコマンドを復号した後にのみ前記NFCクロック生成器を使用可能にするためのものである、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
使用可能な前記NFCクロック生成器によって生成されたクロック信号を使用して前記ターゲットデバイスから第2の搬送波信号を送信することをさらに備える、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ポーリングコマンドへの応答を前記第2の搬送波信号に変調することをさらに備える、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ターゲットデバイスは、前記能動通信モードの要求を受信した後の延長時間期間の間、前記第1の搬送波信号を受信し続けるためのものであり、前記延長時間期間は、前記NFCクロック生成器がクロック信号を安定化させる時間に対応する、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
近距離通信(NFC)デバイスであって、
イニシエータデバイスから第1の搬送波信号を受信するための手段と、ここで、前記第1の搬送波信号はポーリングコマンドを含む、
前記ポーリングコマンドが能動通信モードまたは受動通信モードを要求したかを判定するための手段と、
前記ポーリングコマンドが前記受動通信モードを要求したときに、NFCクロック生成器を使用不可の状態に維持するための手段と、
前記ポーリングコマンドが前記能動通信モードを要求したときに、前記NFCクロック生成器を使用可能にするための手段と
を備える、NFCデバイス。
【請求項9】
前記NFCクロック生成器は、使用可能であるとき、前記NFCデバイスから第2の搬送波信号を送信することに関連したクロック信号を生成するためのものである、
請求項8に記載のNFCデバイス。
【請求項10】
前記NFCデバイスは、前記ポーリングコマンドを復号した後にのみ前記NFCクロック生成器を使用可能にするためのものである、
請求項8に記載のNFCデバイス。
【請求項11】
使用可能な前記NFCクロック生成器によって生成されたクロック信号を使用して前記NFCデバイスから第2の搬送波信号を送信するための手段をさらに備える、
請求項8に記載のNFCデバイス。
【請求項12】
前記ポーリングコマンドへの応答を前記第2の搬送波信号に変調するための手段をさらに備える、
請求項11に記載のNFCデバイス。
【請求項13】
前記NFCデバイスは、前記能動通信モードの要求を受信した後の延長時間期間の間、前記第1の搬送波信号を受信し続けるためのものであり、前記延長時間期間は、前記NFCクロック生成器がクロック信号を安定化させる時間に対応する、
請求項8に記載のNFCデバイス。
【請求項14】
プログラム命令を記憶するコンピュータ読取可能記憶媒体であって、前記プログラム命令が近距離通信(NFC)デバイスのプロセッサによって実行されるとき、前記NFCデバイスに、
イニシエータデバイスから第1の搬送波信号を受信することと、ここで、前記第1の搬送波信号は能動通信モードまたは受動通信モードのいずれかを要求するポーリングコマンドを含む、
前記ポーリングコマンドを復号することに応じてNFCクロック生成器を選択的に使用可能にすることと
を行わせる、コンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項15】
前記NFCクロック生成器は、使用可能であるとき、前記NFCデバイスから第2の搬送波信号を送信することに関連したクロック信号を生成するためのものである、
請求項14に記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項16】
前記NFCクロック生成器を選択的に使用可能にするための前記プログラム命令の実行は、前記NFCデバイスに、
前記ポーリングコマンドが前記受動通信モードを要求したときに、前記NFCクロック生成器を使用不可の状態に維持することと、
前記ポーリングコマンドが前記能動通信モードを要求したときに、前記NFCクロック生成器を使用可能にすることと
を行わせる、
請求項14に記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項17】
前記NFCデバイスは、前記ポーリングコマンドを復号した後にのみ前記NFCクロック生成器を使用可能にするためのものである、
請求項16に記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項18】
前記プログラム命令の実行はさらに、前記NFCデバイスに、
使用可能な前記NFCクロック生成器によって生成されたクロック信号を使用して前記NFCデバイスから第2の搬送波信号を送信することを行わせる、
請求項16に記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項19】
前記プログラム命令の実行はさらに、前記NFCデバイスに、
前記ポーリングコマンドへの応答を前記第2の搬送波信号に変調することを行わせる、
請求項18に記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項20】
前記プログラム命令の実行はさらに、前記NFCデバイスに、
前記能動通信モードの要求を受信した後の延長時間期間の間、前記第1の搬送波信号を受信し続けることを行わせ、前記延長時間期間は、前記NFCクロック生成器がクロック信号を安定化させる時間に対応する、
請求項14に記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項21】
近距離通信(NFC)デバイスであって、
イニシエータデバイスから第1の搬送波信号を受信するための受信機と、ここで、前記第1の搬送波信号はポーリングコマンドを含む、
前記ポーリングコマンドが能動通信モードまたは受動通信モードを要求したかを判定することと、
前記ポーリングコマンドに応じて前記NFCデバイスにおけるNFCクロック生成器を選択的に使用可能にすることと
を行うためのプロセッサと
を備える、NFCデバイス。
【請求項22】
前記NFCクロック生成器は、使用可能であるとき、前記NFCデバイスから第2の搬送波信号を送信することに関連したクロック信号を生成するためのものである、
請求項21に記載のNFCデバイス。
【請求項23】
前記プロセッサは、
前記ポーリングコマンドが前記受動通信モードを要求したときに、前記NFCクロック生成器を使用不可の状態に維持することと、
前記ポーリングコマンドが前記能動通信モードを要求したときに、前記NFCクロック生成器を使用可能にすることと
によって、前記NFCクロック生成器を選択的に使用可能にするためのものである、
請求項21に記載のNFCデバイス。
【請求項24】
前記プロセッサは、前記ポーリングコマンドを復号した後にのみ前記NFCクロック生成器を使用可能にするためのものである、
請求項23に記載のNFCデバイス。
【請求項25】
前記プロセッサはさらに、
使用可能な前記NFCクロック生成器によって生成されたクロック信号を使用して前記NFCデバイスから第2の搬送波信号を送信するためのものである、
請求項23に記載のNFCデバイス。
【請求項26】
前記プロセッサはさらに、
前記ポーリングコマンドへの応答を前記第2の搬送波信号に変調するためのものである、
請求項25に記載のNFCデバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
[0001] 本願は、USC第35条第119項(e)に基づき、2011年11月28日に出願された「REDUCING POWER CONSUMPTION FOR CONNECTION ESTABLISHMENT IN NEAR FIELD COMMUNICATION SYSTEMS」と題する、同時係属および所有者共通の米国特許仮出願第61/564,238号の利益を主張し、その全てが参照によってここに組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
[0002] 本実施形態は、概して、近距離通信(NFC)に関し、具体的にはNFCデータ交換中の電力消費を削減することに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] NFC技術は、数センチメートル以下の範囲にわたる2つのNFC使用可能なデバイス(NFC-enabled devices)間の簡略化されたワイヤレスデータ交換を可能にする。例えば、NFC使用可能なモバイル電話、またはNFC/RFIDタグを有するスマートカードは、(例えば、販売所の端末または別のモバイルデバイスの)NFCリーダを用いてデータを交換することができるため、顧客が硬貨を交換せずに、または物理的にクレジットカードをスワイプ(swiping)せずに、商品またはサービスを購入することを可能にする。NFC技術はまた、ソーシャルネットワーク、連絡先の共有、および/または他のワイヤレス接続(例えば、Bluetooth(登録商標)またはWiFi)の確立を容易にするためにも使用されうる。
【0004】
[0004] イニシエータデバイスおよびターゲットデバイス間にNFC接続を確立するために、両方のデバイスは多くのNFC標準規格に従う。そのようなNFC標準規格の例は、ISO/IEC 18092およびECMA−340標準規格を含み、それらは、NFC接続のための、変調方式、符号化および復号化方式、転送レート、フレームフォーマット、送信プロトコルなどを定義している。より具体的には、ターゲットデバイスとのNFC接続を開始するために、イニシエータデバイスは、能動RFガード時間(現在のところ、およそ5ミリ秒に設定)の間、非変調無線周波数(RF)搬送波信号を送信し、次いで、その搬送波信号を、能動通信モード(active communication mode)または受動通信モード(passive communication mode)のいずれかを要求するポーリングコマンド(例えば、要求フレーム)を組み込むように変調する。イニシエータデバイスが能動通信モードを要求した場合、イニシエータデバイスはポーリングコマンドを送信した後に搬送波信号の送信を終了し、次いで、ターゲットデバイスは、自身のRF搬送波を生成して変調することによってイニシエータデバイスにデータを送信する。反対に、イニシエータデバイスが受動通信モードを要求した場合、イニシエータデバイスは搬送波信号を送信し続け、ターゲットデバイスは、イニシエータデバイスの搬送波信号を負荷変調することによってイニシエータデバイスにデータを送信する。したがって、能動通信モードでは、電力消費がイニシエータデバイスとターゲットデバイスとの間で分配される(shared)が、一方で、受動通信モードでは、ターゲットデバイスは自身の搬送波信号を生成しないため、(あったとしても)ごく少量の電力しか消費しない。
【0005】
[0005] より具体的には、イニシエータデバイスがポーリングコマンドの中で能動通信モードを要求したとき、ターゲットデバイスは、イニシエータデバイスが搬送波信号の送信を終了した後、所定の応答時間までに自身の搬送波信号を生成して送信しなければならない。この能動モード通信の所定の応答時間は、能動遅延時間(active delay time)(TADT)と呼ばれることもあり、現在は、ISO 18092標準規格によって302マイクロ秒に設定されている。上述のように、例えば、イニシエータデバイスがターゲットデバイスから送信されたデータをターゲットデバイス自身の搬送波信号を介して受信することができるように、イニシエータデバイスは、通常、ターゲットデバイスにポーリングコマンドを送信した直後に搬送波信号を終了する。多くのクロック生成器(clock generators)が、NFC搬送波信号を生成して変調するのに適したクロック信号を生成して安定化させるために302マイクロ秒より更に長くかかるため、ターゲットデバイスは、通常、イニシエータデバイスから送信された最初の非変調搬送波信号を検出した直後に、クロック生成器を使用可能にし(enable)、および/または、イニシエータデバイスが搬送波信号を終了したと判定した後にのみ、自身の搬送波信号を生成する。この方法で、ターゲットデバイスは、能動遅延時間(TADT)内に、クロック生成器を使用可能にし、クロック信号を安定化させ、自身の搬送波信号を送信するために十分な時間を有することができる。しかしながら、ターゲットデバイスがクロック生成器を早まってまたは不必要に使用可能にした場合、電力消費は不必要に消費されうる。例えば、イニシエータデバイスがその後、受動通信モードを要求した場合、(例えば、能動RFガード時間(5ミリ秒)の間、非変調搬送波信号を送信した後に、ターゲットデバイスは自身の搬送波信号を生成して送信する必要はない)。この不必要な電力消費は、ターゲットデバイスが限られた電力供給を有するモバイルデバイス(例えば、小型電池によって電力供給されるスマートフォン)であるとき、特に懸念される。
【0006】
[0006] したがって、NFC使用可能なデバイス間にNFC接続を確立することに関連した電力消費を削減するための必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
[0007] この発明の概要は、発明の詳細な説明において以下でさらに説明される概念のセレクションを簡略化された形態で紹介するために提供される。この発明の概要は、本願の主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定するように意図されておらず、また本願の主題の範囲を限定するようにも意図されていない。
【0008】
[0008] NFCイニシエータデバイスおよびNFCターゲットデバイス間にNFC接続を確立することに関連した電力消費を削減する方法および装置が開示される。本実施形態にしたがって、イニシエータデバイスは、ターゲットデバイスとの能動モードNFC接続を要求したとき、延長した時間期間だけ搬送波信号の送信を選択的に延長することができるため、ターゲットデバイスに、自身の搬送波信号を生成して送信するために使用されるクロック生成器を使用可能にし、および/またはクロック信号を安定化させるための追加時間を与える。結果として、ターゲットデバイスは、(例えば、イニシエータデバイスからの最初の非変調搬送波信号の送信を検出してすぐに、クロック生成器を自動的に使用可能にするというよりは)イニシエータデバイスからのポーリングコマンドを受信して復号した後に、クロック生成器を選択的に使用可能にしうる。
【0009】
[0009] より具体的には、いくつかの実施形態では、イニシエータデバイスが能動モードNFC接続を要求した場合に、イニシエータデバイスは、ターゲットデバイスにポーリングコマンドを送った後(例えば、要求を搬送波信号に変調した後)、延長時間期間の間、搬送波信号を送信し続ける。いくつかの実施形態では、延長時間期間は、能動RF延長時間(active RF extended time)と呼ばれうる。能動モードNFC接続の要求に応じて、ターゲットデバイスはクロック生成器を使用可能にしてクロック信号を生成し、その後、自身の搬送波信号をイニシエータデバイスに送信する。イニシエータデバイスによって提供された延長時間期間は、クロック信号を安定化させ、能動モード応答時間(例えば、302マイクロ秒)内に自身の搬送波信号を送信するために十分な時間をターゲットデバイスに与える。反対に、ポーリングコマンドが受動モードNFC接続を要求した場合、ターゲットデバイスはクロック生成器を使用可能にせず、自身の搬送波信号を生成しないため、ターゲットデバイスにおける電力消費を削減する。いくつかの実施形態では、イニシエータデバイスは延長時間期間を示す1つまたは複数の値を記憶するルックアップテーブルを含む。少なくとも1つの実施形態では、イニシエータデバイスは、1つまたは複数の動作条件(例えば、干渉条件、イニシエータデバイスおよびターゲットデバイス間の予想される距離など)、および/またはターゲットデバイスの特性(例えば、クロック生成器の種類、電池の種類など)に応じて、延長時間期間のための適した値を選択しうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
[0010] 本実施形態は、例によって例示され、添付の図面の図によって限定されるようには意図されていない。
図1】いくつかの実施形態にしたがった、2つのNFC使用可能なデバイスを含むNFCシステムのブロック図。
図2】いくつかの実施形態にしたがった、NFCデバイスのブロック図。
図3】いくつかの実施形態にしたがった、イニシエータデバイスおよびターゲットデバイス間のNFC信号送信を表す例示的なタイミング図。
図4A】いくつかの実施形態にしたがった、イニシエータデバイスとして動作するNFCデバイスについての実例的な動作を表す例示的なフローチャート。
図4B】いくつかの実施形態にしたがった、ターゲットデバイスとして動作するNFCデバイスについての実例的な動作を表す例示的なフローチャート。
【0011】
[0016] 類似した参照番号は図面の図全体にわたる対応した部分を指す。
【発明の詳細な説明】
【0012】
[0017] 本実施形態は、2つのNFC使用可能なデバイス間に近距離通信(NFC)接続を確立するというコンテキストで以下に検討される。本実施形態が他のワイヤレス通信技術および/または標準規格に均等に適用可能であることが理解されるべきである。以下の説明では、本開示の完全な理解を提供するために、特定のコンポーネント、回路、ソフトウェア、およびプロセスの例といった多数の特定の詳細が記載される。また、以下の記述では、説明の目的で、本実施形態の完全な理解を提供するために特定の用語が記載される。しかしながら、これらの特定の詳細が本実施形態を実現するために必要とされないこともあるということは当業者にとって明らかであろう。他の実例では、本開示を曖昧にすることを避けるために、周知の回路およびデバイスがブロック図の形態で示される。ここで使用される「結合された」という用語は、直接接続されること、あるいは、1つまたは複数の介在するコンポーネントまたは回路を通じて接続されることを意味する。ここで使用される「NFC」という用語は、例えば、ISO/IEC 18092、ECMA−340、および/またはNFCフォーラムによって定義された標準規格を含む、様々なNFCプロトコルによって規定された(governed)様々な通信を指す。ここで使用される「NFCクロック生成器」という用語は、NFC接続中にデータを交換するために、NFC搬送波信号を生成、送信、および/または変調するように使用されるべきクロック信号を生成するクロック生成器を指す。
【0013】
[0018] 加えて、ここで使用される「イニシエータデバイス」という用語は、(例えば、ポーリングコマンドをもう一方のNFC使用可能なデバイスに送信することによって)NFC接続を開始するNFC使用可能なデバイスを指し、「ターゲットデバイス」という用語は、(例えば、能動モードNFC接続の要求に応じて自身の搬送波信号を送信すること、または受動モードNFC接続の要求に応じてイニシエータデバイスの搬送波信号を負荷変調することのいずれかによって)イニシエータデバイスからの要求に応答するNFC使用可能なデバイスを指す。
【0014】
[0019] 図1は、いくつかの実施形態にしたがった、2つのNFC使用可能なデバイスD1およびD2を含むNFCシステム100を示す。NFCデバイスD1およびD2はそれぞれ、他のNFCデバイスの他のNFCアンテナを用いて、近距離でワイヤレス通信信号を交換することができるNFCアンテナ110が装備されている。NFCデバイスD1およびD2のアンテナ110が、互いの近く(例えば、互いの数センチメートル内)に持ってこられると、それらは誘導結合になり、一旦誘導結合すると、NFCデバイスD1およびD2が近距離通信を互いに行うことを可能にする。いくつかの実施形態において、アンテナ110は、無線周波数(RF)送受信を可能にするループアンテナであるが、他の周知のアンテナを使用することができる。いくつかの実施形態では、NFCデバイスD1およびD2間の近距離通信は、1つまたは複数の標準規格(例えば、ISO/IEC 18092、ECMA−340、および/またはNFCフォーラムによって定義された標準規格)にしたがって行われる。
【0015】
[0020] NFCデバイスD1およびD2は、NFCプロトコルまたは標準規格にしたがってワイヤレスに互いに通信することができる任意の適したデバイスでありうる。例えば、いくつかの実施形態において、NFCデバイスD1およびD2の両方はモバイルデバイス(例えば、セルラ電話、携帯情報端末、または他のモバイルデバイス)である。他の実施形態において、NFCデバイスD1はモバイルデバイスであり、NFCデバイスD2はNFCタグ(例えば、受動無線周波数識別(FRID)タグ)である。さらに他の実施形態において、NFCデバイスD1は、例えば、キオスクまたは入場ゲートで適しているNFCリーダであり、NFCデバイスD2はモバイルデバイスまたはNFCタグである。いくつかの実施形態において、NFCデバイスD1は近接結合デバイス(PCD)であり、NFCデバイスD2は近接集積回路カード(PICC)(例えば、非接触スマートカード)である。
【0016】
[0021] 以下に説明される例示的な実施形態では、(図1に表されるように)NFCデバイスD1はイニシエータデバイスとして指定され、NFCデバイスD2はターゲットデバイスとして指定される。他の実施形態では、NFCデバイスD1はターゲットデバイスとして動作し、NFCデバイスD2はイニシエータデバイスとして動作しうる。
【0017】
[0022] 図2は、図1のNFCデバイスD1および/またはNFCデバイスD2の1つの実施形態であるNFCデバイス200を示す。NFCデバイス200は、周知の受信機/送信機回路210、プロセッサ220、NFCクロック生成器230、およびメモリ240を含む。アンテナ110、プロセッサ220、およびNFCクロック生成器230に結合された受信機/送信機回路210は、もう一方のNFC使用可能なデバイスに信号を送信し、そのもう一方のNFC使用可能なデバイスから信号を受信するために使用されうる。より具体的には、受信機/送信機回路210は、NFCクロック生成器230からクロック信号CLKを受信し、プロセッサ220とデータおよび制御信号(CTRL)を交換する。動作において、受信機/送信機回路210は、データを生成し、および/または、アンテナ110を介してもう一方のデバイスに送信されるべき搬送波信号にデータを変調するために使用され、アンテナ110によって受信された搬送波信号からデータを受信して復調するために使用されうるいくつかの実施形態では、受信機/送信機回路210はまた、(例えば、NFC受動モードで通信するときに)もう一方のデバイスから送信された搬送波信号にデータを負荷変調するために使用されうる。
【0018】
[0023] NFCクロック生成器230は、NFC搬送波信号を生成、および/またはデータをNFC搬送波信号に変調する際の使用に適したCLKのようなクロック信号を生成する、任意の適した種類のクロック生成器またはクロック回路でありうる。例えば、NFCクロック生成器230は、電圧制御された発振器、水晶発振器、またはデジタルクロック生成器でありうる。さらに、図2の例示的な実施形態は、NFCクロック生成器230を、受信機/送信機210にクロック信号CLKを提供するための専用またはスタンドアロンのクロック生成器として表すが、他の実施形態では、クロック生成器230はNFCデバイス200上の他のリソースまたはモジュールと共用されうる。したがって、少なくとも1つの実施形態では、NFCクロック生成器230はNFCデバイス200の別の回路またはモジュール内で実装されうる。
【0019】
[0024] プロセッサ220に結合されたメモリ240は、任意の適したメモリエレメントまたはデバイスでありうる。メモリ240は、ポーリングコマンドが搬送波信号に変調された後にイニシエータデバイスのNFC搬送波信号の送信を継続することに関連した延長時間期間(TEXT)を示す1つまたは複数の値を記憶するルックアップテーブル242を含みうる。いくつかの実施形態では、延長時間期間TEXTは、(例えば、イニシエータデバイスの製造業者によって)予め決定され、テーブル242にプログラムされうる。他の実施形態では、テーブル242は、ポーリングコマンドをターゲットデバイスに送信するときに動的に選択されうる複数の延長時間期間TEXTを記憶しうる。例えば、複数の延長時間期間TEXTのうちのそれぞれは、例えば、現在の動作条件、所定の環境条件、ターゲットデバイスのNFCクロック生成器または電池の種類および/あるいは動作特性などを含む、1つまたは複数のパラメータに応じて選択されうる。
【0020】
[0025] メモリ240はまた、以下のソフトウェアモジュールを記憶することができる非一時的なコンピュータ読取可能媒体(例えば、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、ハードドライブなどのような、1つまたは複数の不揮発性メモリエレメント)を含みうる。
・ 例えば、図4Aの動作402、404、408、410、および/または412、ならびに図4Bの動作452、454、458、462、および/または464について説明されるような、NFCデータ交換に適したNFC搬送波信号の生成を容易にし、および/またはデータをNFC搬送波信号(例えば、ポーリングコマンド、要求、応答、およびもう一方のNFCデバイスと交換されるべきデータ)に変調するデータ交換ソフトウェアモジュール244、および、
・ 例えば、図4Bの動作457および/または460について説明されるような、電力条件を判定し、および/またはNFCクロック生成器230を選択的に使用可能および使用不可にして、NFCデバイス200の電力消費を削減する電力制御ソフトウェアモジュール246。
データ交換ソフトウェアモジュール244は、プロセッサ220によって実行されるとき、対応する機能をNFCデバイス200に行わせることができる命令を含む。電力制御ソフトウェアモジュール246は、プロセッサ220によって実行されるとき、対応する機能をNFCデバイス200に行わせることができる命令を含む。
【0021】
[0026] 受信機/送信機回路210、NFCクロック生成器230、およびメモリ240に結合されたプロセッサ220は、NFCデバイス200(例えば、メモリ240内)に記憶された1つまたは複数のソフトウェアプログラムのスクリプトまたは命令を実行することができる任意の適したプロセッサでありうる。例えば、プロセッサ220は、NFC搬送波信号の生成を容易にし、および/またはデータをNFC搬送波信号に変調するデータ交換ソフトウェアモジュール244を実行することができる。プロセッサ220はまた、電力条件を判定し、および/またはNFCクロック生成器230を選択的に使用可能および使用不可にして、NFCデバイス200の電力消費を削減する電力制御ソフトウェアモジュール246を実行することができる。
【0022】
[0027] メモリ240に記憶されたソフトウェアモジュールのうちの1つまたは複数の実行中、プロセッサ220は、受信機/送信機210にデータおよび/または制御信号を送り、受信機/送信機210からデータおよび/または制御信号を受信し、クロックイネーブル信号CLK_ENをNFCクロック生成器230に提供しうる。より具体的には、以下により詳細に説明されるように、プロセッサ220は、もう一方のNFCデバイスから受信されたポーリングコマンドが能動通信モードを要求していると判定するのに応じて、NFCクロック生成器230を使用可能にして、クロック信号CLKを生成して安定化させるように、CLK_ENを選択的にアサートしうる。プロセッサ220はまた、もう一方のNFCデバイスが(例えば、電力消費を削減するために)受動通信モードを要求しているとき、クロック信号CLKを生成することからNFCクロック生成器230を使用不可にするようにCLK_ENを選択的にデアサートしうる。
【0023】
[0028] 本実施形態において、NFCデバイス200はイニシエータデバイスD1またはターゲットデバイスD2のいずれかとして使用されうるが、NFCデバイス200がイニシエータデバイスD1またはターゲットデバイスD2として使用されるかどうかに依存して、NFCデバイス200の1つまたは複数のエレメントが省かれうることに留意されたい。1つの例では、NFCデバイス200が図1のイニシエータデバイスD1として使用されるとき、電力制御ソフトウェアモジュール246は省かれうる。別の例では、NFCデバイス200が図2のターゲットデバイスD2として使用されるとき、ルックアップテーブル242は省かれうる。
【0024】
[0029] 上述のように、イニシエータデバイスD1およびターゲットデバイスD2間にNFC接続またはリンクを確立するときに、イニシエータデバイスD1は、(例えば、イニシエータデバイスの搬送波信号に変調されたポーリングコマンドに要求を組み込むことによって)能動モードNFC接続または受動モードNFC接続のいずれかを要求しうる。能動モードNFC接続では、イニシエータデバイスD1およびターゲットデバイスD2はそれぞれ、自身の搬送波信号を生成し、(例えば、交代時間期間またはスロットの間に)データを自身の搬送波信号に変調することによって、データを他のデバイスに送信する。反対に、受動モードNFC接続では、イニシエータデバイスD1のみが自身の搬送波信号を生成して送信し、ターゲットデバイスD2は、イニシエータデバイスの搬送波信号を負荷変調することによって、データ(例えば、ポーリングコマンドへの応答)をイニシエータデバイスに送る。
【0025】
[0030] したがって、能動モードNFC接続中は、電力消費がイニシエータデバイスD1とターゲットデバイスD2との間で分配されうるが、受動モードNFC接続中は、電力消費のうちの(全部ではないが)ほとんどがイニシエータデバイスD1に起因する。結果として、受動モードNFC接続は、ターゲットデバイスD2が限られた電力供給を有する環境(例えば、人が店またはレストランで商品を購入するためにNFC使用可能なスマートフォンを使用するとき)における使用に適している。ターゲットデバイスD2が、受動モードNFC接続中、(あったとしても)わずかな電力しか消費しない理由の1つは、ターゲットデバイスD2が自身のクロック生成器を使用可能にして動作させなくてもよく、自身の搬送波信号を生成して送信しなくてもよいからである。
【0026】
[0031] 現在のNFC標準規格によると、(例えば、ターゲットデバイスに送られるポーリングコマンドに示されるように)イニシエータデバイスD1が能動モードNFC接続を要求したとき、ターゲットデバイスD2は、イニシエータデバイスD1が自身の搬送波信号の送信を終了した後、302マイクロ秒(例えば、能動遅延時間TADT)までに、自身の搬送波信号の送信を始めなければならない。したがって、成功したNFC接続では、イニシエータデバイスD1からの搬送波信号送信と、ターゲットデバイスD2からの搬送波信号送信との間にわずか302マイクロ秒の時間遅延しかないことがある。しかしながら、上述のように、多くのクロック生成器(例えば、図2のクロック生成器230)は、NFC搬送波信号を生成するために使用されるべきクロック信号を生成して安定化させるのに302マイクロ秒よりさらに長くかかる。例えば、電圧制御された発振器(VCO)を使用して実装されたクロック生成器は、通常、使用可能になった後、NFC搬送波信号クロックを安定化させるために3ミリ秒以上必要とする。さらに、NFC搬送波信号の生成専用の水晶発振器のような、より洗練されたクロック生成器でも、使用可能になった後、NFC搬送波信号クロックを安定化させるために1.5ミリ秒もかかりうる。
【0027】
[0032] 結果として、従来のNFCターゲットデバイスは、通常、(例えば、能動遅延時間TADTによって提供される)302マイクロ秒の時間期間内に、(例えば、能動モードNFC接続のために)自身の搬送波信号を生成して送信する必要がある場合に、NFCクロック生成器を使用可能な状態に維持する。ターゲットデバイスのクロック生成器を使用可能な状態に維持することは、結果として不必要な電力消費をもたらしうるが(例えば、イニシエータデバイスが受動モードを要求した場合に、ターゲットデバイスが自身の搬送波信号を生成または送信する必要はない)、302マイクロ秒の時間期間の終了前にターゲットデバイスのNFC搬送波信号クロックを安定化できないことは、成功したNFC接続の確立を妨げうる。
【0028】
[0033] よって、本実施形態にしたがって、能動モードNFC接続を要求するポーリングコマンドを受信したことにのみ応じてNFCクロック生成器230を使用可能にするようにターゲットデバイスD2を構成することによって、ターゲットデバイスD2の電力消費は削減されうる。この方法では、イニシエータデバイスD1が受動モードNFC接続を要求した場合、ターゲットデバイスD2はNFCクロック生成器230を使用可能にしないか、または自身のNFC搬送波信号を生成しないため、NFCクロック生成器230、および/または、受信機/送信機210の送信機部分を使用可能にして動作させることに関連した電力消費を節約する。それに加えて、イニシエータデバイスD1が能動モードNFC接続を要求していると判定した後にのみNFCクロック生成器230を使用可能にすることによって、ターゲットデバイスD2が早まってNFCクロック生成器230を使用可能にしないため、さらにターゲットデバイスD2の電力消費を削減する。
【0029】
[0034] さらに、ターゲットデバイスD2が、302マイクロ秒の時間期間内に、NFC搬送波信号クロックを安定化させ、その後自身のNFC搬送波信号を送信することができることを確実にするために、イニシエータデバイスD1は、ポーリングコマンドを搬送波信号に変調した後に、延長時間期間(TEXT)の間、搬送波信号を送信し続けるように構成されうる。延長時間期間TEXTは、能動モードNFC接続の要求に応じて、NFCクロック生成器230を使用可能にし、NFC搬送波信号クロックを安定化させ、自身のNFC搬送波信号をイニシエータデバイスD1に送信するために十分な時間をターゲットデバイスD2に与える任意の適した値でありうる。例えば、イニシエータデバイスD1が、ターゲットデバイスD2に能動モードNFC接続の要求を送った後、7ミリ秒間NFC搬送波信号を送信し続けた場合、ターゲットデバイスD2は、ポーリングコマンドを復号する後までNFCクロック生成器230を使用可能にするのを待機しうるが、それでも302マイクロ秒の時間期間内にイニシエータデバイスD1に自身のNFC搬送波信号を返送することができうる。
【0030】
[0035] イニシエータデバイスD1およびターゲットデバイスD2間に能動モードNFC接続を確立するための例示的な動作は、図3の例示的なタイミング図300に関連して以下に説明される。タイミング図300は、イニシエータデバイスD1の搬送波信号クロックCLK_D1と、イニシエータデバイスD1から送信される第1のNFC搬送波信号CS1と、ターゲットデバイスD2から送信される第2のNFC搬送波信号CS2と、ターゲットデバイスD2のクロックイネーブル信号CLK_ENと、ターゲットデバイスD2の搬送波信号クロックCLK_D2とについての波形を表している。
【0031】
[0036] 最初に、イニシエータデバイスD1は、時刻t0で、そのNFCクロック生成器230を起動する。イニシエータデバイスD1の搬送波信号クロックCLK_D1は、時刻t1までに安定化され、その後イニシエータデバイスD1は、5ミリ秒またはそれ以上の間、非変調NFC搬送波信号CS1を送信する。時刻t2で、イニシエータデバイスD1は、属性要求フレーム(ATR_REQ)を含むポーリングコマンドをNFC搬送波信号CS1に変調する。時刻t3までに、ポーリングコマンドはターゲットデバイスD2に送信されている。
【0032】
[0037] 本実施形態にしたがって、ポーリングコマンドが送信された後(例えば、要求フレームATR_REQの最終ビットが搬送波信号CS1に変調された後)、イニシエータデバイスD1は、時刻t4まで延長時間期間(TEXT)の間、NFC搬送波信号CS1を送信し続ける。対照的に、能動モードNFC接続を要求する従来のイニシエータデバイスは通常、(例えば、電力消費を削減するために、および/またはターゲットデバイスのNFC搬送波信号の受信の準備をするために)ポーリングコマンドを送信した直後に搬送波信号の送信を終了する。
【0033】
[0038] 時刻t3以前に、ターゲットデバイスD2は要求フレーム(ATR_REQ)を受信し、イニシエータデバイスD1が能動モードNFC接続を要求していると判定する。それに応じて、ターゲットデバイスD2は、NFCクロック生成器230を使用可能にするようにクロックイネーブル信号CLK_ENを、(例えば、論理ハイに)アサートする。ターゲットデバイスD2のクロック生成器230は、時刻t5までにウォームアップし、時刻t5の直後にNFC搬送波信号クロックCLK_D2を安定化させる。したがって、時刻t5の後に、ターゲットデバイスD2のクロック信号CLK_D2は、受信機/送信機210による使用のために利用可能になり、ターゲットデバイスD2のNFC搬送波信号CS2を生成する。次いで、時刻t6以前に、ターゲットデバイスD2は自身のNFC搬送波信号CS2を送信し、時刻t7にターゲットデバイスD2は属性応答フレーム(ATR_RES)をNFC搬送波信号CS2に変調する。
【0034】
[0039] 本実施形態では、イニシエータデバイスD1が時刻t4にNFC搬送波信号CS1を終了し、それが、イニシエータデバイスD1の要求フレームに応じて、ターゲットデバイスD2が自身のNFC搬送波信号CS2を送信しなければならない302マイクロ秒の時間期間の開始をトリガすることに留意されたい。ターゲットデバイスD2が、(ポーリングコマンドの要求フレームを復号するのに応じて)時刻t3にNFCクロック生成器230を使用可能にするようにCLK_ENをアサートするため、ターゲットデバイスD2は、時刻t6における302マイクロ秒の時間期間の終了前に、NFC搬送波信号クロックCLK_D2を安定化させ、自身のNFC搬送波信号CS2を送信することができる。
【0035】
[0040] 図4Aおよび4Bは、いくつかの実施形態にしたがった、イニシエータデバイスD1およびターゲットデバイスD2間にNFC接続を確立するための実例的な動作を表す例示的なフローチャート400および450である。最初に、図4Aについて言及すると、イニシエータデバイスD1は非変調NFC搬送波信号CS1を生成して送信する(402)。次に、イニシエータデバイスD1は、能動モードまたは受動モードのNFC接続のいずれかを選択し、選択された通信モードの要求を含むポーリングコマンドをNFC搬送波信号CS1に変調する(404)。その後、406でテストしたときに受動モードが選択された場合、イニシエータデバイスD1は、ポーリングコマンドをNFC搬送波信号CS1に変調した直後にNFC搬送波信号CS1の送信を終了する(408)。反対に、406でテストしたときに能動モードが選択された場合、イニシエータデバイスD1は、延長時間期間TEXTを判定するか、または(例えば、メモリ240から)延長時間期間TEXTを検索し(410)、ポーリングコマンドをNFC搬送波信号CS1に変調した後、延長時間期間TEXTの間、NFC搬送波信号CS1を送信し続ける(412)。
【0036】
[0041] ここで図4Bについて言及すると、ターゲットデバイスD2はイニシエータデバイスD1の搬送波信号CS1を検出し、イニシエータデバイスD1から送信されたポーリングコマンドを受信する(452)。ターゲットデバイスD2はポーリングコマンドに含まれた要求フレームを復号し、イニシエータデバイスD1が能動モードまたは受動モードのNFC接続を要求しているかを判定する(454)。456で調べたときにイニシエータデバイスD1が受動モードNFC接続を要求している場合、ターゲットデバイスD2は、使用不可の状態にNFCクロック生成器230を維持するようにクロックイネーブル信号CLK_ENをデアサートし(457)、その後、イニシエータデバイスD1の搬送波信号CS1を負荷変調することによってポーリングコマンドに応答する(458)。反対に、456で調べたときにイニシエータデバイスD1が能動モードNFC接続を要求している場合、ターゲットデバイスD2は、クロックイネーブル信号CLK_ENをアサートすることによってNFCクロック生成器230を使用可能にする(460)。次に、ターゲットデバイスD2は、NFCクロック生成器230によって提供されたクロック信号CLK_D2を使用して自身のNFC搬送波信号CS2を生成し、NFC搬送波信号CS2をイニシエータデバイスD1に送信する(462)。次いで、ターゲットデバイスD2は、応答フレーム(例えば、ATR_RES)をNFC搬送波信号CS2に変調することによってイニシエータデバイスD1に応答する(464)。
【0037】
[0042] 上述の明細書では、本実施形態が特定の例示的な実施形態に関して説明された。しかしながら、それに対するさまざまな修正および変更が、添付の特許請求の範囲に記載された本開示のより広い範囲から逸脱せずになされうることは明らかであろう。したがって、明細書および図面は、限定的な意味というよりむしろ例示的な意味で考慮されるべきである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
近距離通信(NFC)使用可能なイニシエータデバイスおよびNFC使用可能なターゲットデバイス間にNFC接続を確立するための方法であって、
前記イニシエータデバイスから第1の搬送波信号を送信することと、
ポーリングコマンドを前記第1の搬送波信号に変調することと、
前記ポーリングコマンドが受動通信モードを要求した場合、前記変調の完了後に前記第1の搬送波信号の送信を終了することと、
前記ポーリングコマンドが能動通信モードを要求した場合、前記変調後の延長時間期間の間、前記第1の搬送波信号の送信を継続することと
を備える、方法。
[C2]
前記延長時間期間は、前記ターゲットデバイスがクロック信号を安定化させる時間に対応する、
[C1]に記載の方法。
[C3]
前記イニシエータデバイスに提供されたルックアップテーブルに前記延長時間期間を示す1つまたは複数の値を記憶することをさらに備える、
[C1]に記載の方法。
[C4]
前記ターゲットデバイスにおいて前記ポーリングコマンドを受信することと、
前記ポーリングコマンドに応じて前記ターゲットデバイスにおけるNFCクロック生成器を選択的に使用可能にすることと
をさらに備える、[C1]に記載の方法。
[C5]
前記ターゲットデバイスは、前記ポーリングコマンドが前記能動通信モードを要求した場合にのみ前記NFCクロック生成器を使用可能にするためのものである、
[C4]に記載の方法。
[C6]
前記NFCクロック生成器は、前記ターゲットデバイスから第2の搬送波信号を送信することに関連したクロック信号を生成するためのものである、
[C4]に記載の方法。
[C7]
前記ターゲットデバイスは、前記ポーリングコマンドの最終ビットを受信した後にのみ前記NFCクロック生成器を使用可能にするためのものである、
[C4]に記載の方法。
[C8]
前記NFCクロック生成器によって生成されたクロック信号を使用して前記ターゲットデバイスから第2の搬送波信号を送信することをさらに備える、
[C4]に記載の方法。
[C9]
前記ポーリングコマンドへの応答を前記第2の搬送波信号に変調することをさらに備える、
[C8]に記載の方法。
[C10]
近距離通信(NFC)使用可能なイニシエータデバイスおよびNFC使用可能なターゲットデバイス間にNFC接続を確立するためのシステムであって、
前記イニシエータデバイスから第1の搬送波信号を送信するための手段と、
ポーリングコマンドを前記第1の搬送波信号に変調するための手段と、
前記ポーリングコマンドが受動通信モードを要求した場合、前記変調の完了後に前記第1の搬送波信号の送信を終了するための手段と、
前記ポーリングコマンドが能動通信モードを要求した場合、前記変調後の延長時間期間の間、前記第1の搬送波信号の送信を継続するための手段と
を備える、システム。
[C11]
前記延長時間期間は、前記ターゲットデバイスがクロック信号を安定化させる時間に対応する、
[C10]に記載のシステム。
[C12]
前記イニシエータデバイスに、前記延長時間期間を示す1つまたは複数の値を記憶するための手段をさらに備える、
[C10]に記載のシステム。
[C13]
前記ターゲットデバイスにおいて前記ポーリングコマンドを受信するための手段と、
前記ポーリングコマンドが前記能動通信モードを要求した場合にのみ前記ターゲットデバイスにおけるNFCクロック生成器を使用可能にするための手段と
をさらに備える、[C10]に記載のシステム。
[C14]
前記NFCクロック生成器は、前記ターゲットデバイスから第2の搬送波信号を送信することに関連したクロック信号を生成するためのものである、
[C13]に記載のシステム。
[C15]
前記ターゲットデバイスは、前記ポーリングコマンドの最終ビットを受信した後にのみ前記NFCクロック生成器を使用可能にするためのものである、
[C13]に記載のシステム。
[C16]
前記NFCクロック生成器によって生成されたクロック信号を使用して前記ターゲットデバイスから第2の搬送波信号を送信するための手段をさらに備える、
[C13]に記載のシステム。
[C17]
応答を前記第2の搬送波信号に変調するための手段をさらに備える、
[C16]に記載のシステム。
[C18]
プログラム命令を含むコンピュータ読取可能媒体であって、前記プログラム命令が近距離通信(NFC)システムにおけるイニシエータデバイスのプロセッサによって実行されるとき、前記イニシエータデバイスに、
搬送波信号をターゲットデバイスに送信することと、
ポーリングコマンドを前記搬送波信号に変調することと、
前記ポーリングコマンドが受動通信モードを要求した場合、前記変調の完了後に前記搬送波信号の送信を終了することと、
前記ポーリングコマンドが能動通信モードを要求した場合、前記変調後の延長時間期間の間、前記搬送波信号の送信を継続することと
を行わせる、コンピュータ読取可能媒体。
[C19]
前記延長時間期間は、前記ターゲットデバイスがクロック信号を安定化させる時間に対応する、
[C18]に記載のコンピュータ読取可能媒体。
[C20]
前記イニシエータデバイスが、
前記延長時間期間を示す1つまたは複数の値を記憶するルックアップテーブルをさらに備える、
[C18]に記載のコンピュータ読取可能媒体。
[C21]
プログラム命令を含むコンピュータ読取可能媒体であって、前記プログラム命令が近距離通信(NFC)システムにおけるターゲットデバイスのプロセッサによって実行されるとき、前記ターゲットデバイスに、
イニシエータデバイスからポーリングコマンドを受信することと、
前記ポーリングコマンドを復号することに応じて前記ターゲットデバイスにおけるNFCクロック生成器を選択的に使用可能にすることと
を行わせる、コンピュータ読取可能媒体。
[C22]
前記ターゲットデバイスは、前記ポーリングコマンドが能動通信モードを要求した場合にのみ前記NFCクロック生成器を使用可能にするためのものである、
[C21]に記載のコンピュータ読取可能媒体。
[C23]
前記ターゲットデバイスは、前記ポーリングコマンドの最終ビットを受信した後にのみ前記NFCクロック生成器を使用可能にするためのものである、
[C21]に記載のコンピュータ読取可能媒体。
[C24]
前記NFCクロック生成器は、前記ターゲットデバイスから搬送波信号を送信することに関連したクロック信号を生成するためのものである、[C21]に記載のコンピュータ読取可能媒体。
[C25]
近距離通信(NFC)デバイスであって、
第1の搬送波信号をもう一方のNFCデバイスに送信するための送信機と、ここで、前記第1の搬送波信号はポーリングコマンドを含む、
前記ポーリングコマンドが受動通信モードを要求した場合、前記ポーリングコマンドを前記もう一方のNFCデバイスに送信した後に前記第1の搬送波信号の送信を終了することと、
前記ポーリングコマンドが能動通信モードを要求した場合、前記ポーリングコマンドを前記もう一方のNFCデバイスに送信した後に延長時間期間の間、前記第1の搬送波信号の送信を継続することと
を行うためのプロセッサと
を備える、NFCデバイス。
[C26]
前記延長時間期間は、前記もう一方のNFCデバイスがクロック信号を安定化させる時間に対応する、[C25]に記載のNFCデバイス。
[C27]
前記延長時間期間を示す1つまたは複数の値を記憶するルックアップテーブルをさらに備える、
[C26]に記載のNFCデバイス。
[C28]
前記もう一方のNFCデバイスは、前記ポーリングコマンドを復号することに応じて、NFCクロック生成器を選択的に使用可能にするためのものである、
[C25]に記載のNFCデバイス。
[C29]
前記もう一方のNFCデバイスは、前記ポーリングコマンドが前記能動通信モードを要求した場合にのみ前記NFCクロック生成器を使用可能にするためのものである、
[C28]に記載のNFCデバイス。
[C30]
前記NFCクロック生成器は、前記もう一方のNFCデバイスから第2の搬送波信号を送信することに関連したクロック信号を生成するためのものである、
[C28]に記載のNFCデバイス。
図1
図2
図3
図4A
図4B