特許第5792401号(P5792401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリンパス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000002
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000003
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000004
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000005
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000006
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000007
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000008
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000009
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000010
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000011
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000012
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000013
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000014
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000015
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000016
  • 特許5792401-オートフォーカス装置 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792401
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】オートフォーカス装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/28 20060101AFI20150928BHJP
   G02B 7/36 20060101ALI20150928BHJP
   G02B 7/30 20060101ALI20150928BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20150928BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20150928BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20150928BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20150928BHJP
   G02B 7/34 20060101ALI20150928BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   G02B7/28 N
   G02B7/36
   G02B7/30
   G02B7/28 J
   G02B21/00
   G02B23/24 B
   H04N5/232 H
   H04N5/225 C
   G02B7/34
   A61B1/00 300Y
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-559024(P2014-559024)
(86)(22)【出願日】2014年5月21日
(86)【国際出願番号】JP2014063496
(87)【国際公開番号】WO2014208224
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2014年12月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-131723(P2013-131723)
(32)【優先日】2013年6月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】塩田 敬司
【審査官】 小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−041103(JP,A)
【文献】 特開昭63−017416(JP,A)
【文献】 特開平08−005905(JP,A)
【文献】 特開2001−203883(JP,A)
【文献】 特開2001−092968(JP,A)
【文献】 特開2000−102040(JP,A)
【文献】 特開2009−014445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28
A61B 1/00
G02B 7/30
G02B 7/34
G02B 7/36
G02B 21/00
G02B 23/24
H04N 5/225
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
右目用及び左目用の光学像を結像する対物レンズを有する対物光学系と、
前記対物光学系により結像された前記右目用及び左目用の光学像を撮像して右目用の映像信号及び左目用の映像信号を生成する撮像部と、
前記右目用の映像信号があらわす右目用画像と、前記左目用の映像信号があらわす左目用画像とのいずれか一方の画像に対して所定の大きさの基準領域を設定するとともに、他方の画像に対して前記基準領域よりも小さい大きさの比較領域を設定する領域設定部と、
前記基準領域内の映像信号及び前記比較領域内の映像信号を検波する検波部と、
前記基準領域の中から前記比較領域のサイズと等しい大きさに切り出した切り出し領域の検波結果と、前記比較領域の検波結果とを比較し、該比較結果が一致するまで前記切り出し領域を所定の移動方向に沿って移動させながら比較を行い、前記基準領域内の検波結果に一致させるために要した前記切り出し領域の移動量を前記右目用画像と左目用画像との位相差として算出する位相差演算部と、
前記位相差に基づいて前記対物レンズの合焦位置を算出する合焦位置演算部と、
前記対物レンズを駆動して前記合焦位置演算部によって算出された合焦位置に移動させる対物レンズ駆動部と、
を具備し、
前記領域設定部は、前記位相差演算部による演算結果によって前記基準領域の全範囲において前記比較領域との検波結果が一致しなかった場合、前記比較領域の前記移動方向における大きさを拡大させるように前記比較領域の大きさを設定することを特徴とするオートフォーカス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術等に際して術部を観察する装置として好適なオートフォーカス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、手術等の医療行為に際して術部を観察するための内視鏡や手術用顕微鏡等の医療用観察装置が普及している。例えば、脳神経外科などにおいては、術部を手術するために手術用顕微鏡が用いられる。脳神経外科の手術では、様々な重要組織を避けながら、腫瘍などを切り取る手術が行なわれている。このため、手術時には、手術用顕微鏡は様々な方向に移動される。
【0003】
ところが、手術用顕微鏡は、観察倍率が高く被写界深度が浅いことから、少しの移動でも簡単にピントがズレてしまうという問題がある。殆どの手術用顕微鏡には電動フォーカス機構が装備されており、術者は、顕微鏡の移動時には、フットスイッチまたはハンドスイッチを用いて電動フォーカス機構を駆動し、手動でピントを合わせ直すようになっている。
【0004】
このような煩雑なフォーカス操作を省略するために、オートフォーカス機能が組み込まれた手術用顕微鏡も開発されている。例えば手術用顕微鏡の移動終了時に自動的にオートフォーカス制御を行う装置が開示されている。
【0005】
ところで、通常、オートフォーカス制御は、日本国特開2013−25132号公報に開示されているように、観察画像中のいずれかのエリア(合焦領域)にピントを合わせるように制御が行われる。例えば、ユーザは観察範囲の中央等の位置を合焦領域として指定することができる。この場合には、ユーザが主要被写体を観察範囲の中央に位置させることで、合焦が行われる。
【0006】
また、観察範囲中に設けられた複数の合焦領域のうち、主要被写体があるであろうエリアを被写体のパターン認識によって推定して、そのエリアに自動的に合焦させるフォーカス制御が採用されることもある。また、複数の合焦領域のうち、観察範囲中の画像から人物の顔等の特定のパターンを検出して、このパターンが位置する合焦領域に自動的に合焦させるフォーカス制御が採用されることもある。
【0007】
ところで、被写体パターンや特定パターンの認識によって自動的に合焦させるオートフォーカス制御を採用するためには、被写体パターンや特定パターンの認識のためのデータベースが必要である。人物や顔等のデータベースは既に構築されており、人物や風景等を撮影する一般的なカメラのオートフォーカス制御に利用されている。しかしながら、手術の状況は診療科や施設毎に術式が異なるだけでなく同じ症例でも患者の個人差によって千差万別であり、常に関心領域にフォーカス制御を行うためには診療科毎または施設毎に膨大な手術データを解析してデータベースを作る必要があり、現時点ではそのような技術は確立できていない。また特定の鉗子などを認識して合焦させることも考えられるが、鉗子類は頻繁に改善が図られるために、常に最新の鉗子情報へのアップデートが必要となるなど、現実的ではない。
【0008】
また、ユーザが指定した合焦領域に合焦させるオートフォーカス制御を採用する場合には、術者は関心領域が当該合焦領域に位置するように、観察範囲を移動させる操作を行う。しかしながら、手術中は術部に血液等で濁った水が溜まっていたり、脳実質や骨など、コントラストが低い被写体が関心領域となるケースが多いため、精度良く合焦ができないケースが発生する。また、視野を移動した後に合焦領域の位置を設定し直すことも考えられるが、手術を行なっている時には両手が塞がっている場合が多く、設定作業が煩わしいという課題がある。
【0009】
本発明は、関心領域又はその近傍に自動的に確実に合焦させることができるオートフォーカス装置を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るオートフォーカス装置は、右目用及び左目用の光学像を結像する対物レンズを有する対物光学系と、前記対物光学系により結像された前記右目用及び左目用の光学像を撮像して右目用の映像信号及び左目用の映像信号を生成する撮像部と、前記右目用の映像信号があらわす右目用画像と、前記左目用の映像信号があらわす左目用画像とのいずれか一方の画像に対して所定の大きさの基準領域を設定するとともに、他方の画像に対して前記基準領域よりも小さい大きさの比較領域を設定する領域設定部と、前記基準領域内の映像信号及び前記比較領域内の映像信号を検波する検波部と、前記基準領域の中から前記比較領域のサイズと等しい大きさに切り出した切り出し領域の検波結果と、前記比較領域の検波結果とを比較し、該比較結果が一致するまで前記切り出し領域を所定の移動方向に沿って移動させながら比較を行い、前記基準領域内の検波結果に一致させるために要した前記切り出し領域の移動量を前記右目用画像と左目用画像との位相差として算出する位相差演算部と、前記位相差に基づいて前記対物レンズの合焦位置を算出する合焦位置演算部と、前記対物レンズを駆動して前記合焦位置演算部によって算出された合焦位置に移動させる対物レンズ駆動部と、を具備し、前記領域設定部は、前記位相差演算部による演算結果によって前記基準領域の全範囲において前記比較領域との検波結果が一致しなかった場合、前記比較領域の前記移動方向における大きさを拡大させるように前記比較領域の大きさを設定する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明に係るオートフォーカス装置は、右目用及び左目用の光学像を結像する対物レンズを有する対物光学系と、前記対物光学系により結像された前記右目用及び左目用の光学像を撮像して右目用の映像信号及び左目用の映像信号を生成する撮像部と、前記右目用の映像信号があらわす右目用画像と、前記左目用の映像信号があらわす左目用画像とのいずれか一方の画像に対して所定の大きさの基準領域を設定するとともに、他方の画像に対して前記基準領域よりも小さい大きさの比較領域を設定する領域設定部と、前記基準領域内の映像信号及び前記比較領域内の映像信号を検波する検波部と、前記基準領域の映像信号の検波結果と、前記比較領域の映像信号の検波結果とに基づいて、前記右目用画像と左目用画像との位相差を算出する位相差演算部と、前記位相差に基づいて前記対物レンズの合焦位置を算出する合焦位置演算部と、前記対物レンズを駆動して前記合焦位置演算部によって算出された合焦位置に移動させる対物レンズ駆動部と、を具備する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係るオートフォーカス装置が組み込まれた医療用観察装置の概略構成を示す構成図である。本実施の形態はビデオ観察式の手術用顕微鏡に適用した例であるが、光学観察式の手術用顕微鏡や、内視鏡やその他の医療用の観察装置にも適用可能である。
【0014】
図1において、医療用観察装置1は、顕微鏡10、カメラコントロールユニット(以下、CCUという)20、3Dモニタ30及びAF制御部40によって構成される。顕微鏡10は、架台50のアーム51に支持されて、術野に移動自在に配置される。顕微鏡10は、観察画像を3D観察するためのものであり、観察部としての撮像部14R,14Lを有している。右目用及び左目用の観察画像は撮像部14R,14Lによって光電変換されて、右目用の画像及び左目用の画像が取得される。顕微鏡10は、3D観察を可能にするために、観察部位側から撮像部14R,14Lの撮像面に至る光軸上に、対物レンズ11、ズームレンズ12R,12L及び結像レンズ13R,13Lが配置された光学系を有する。
【0015】
対物レンズ11は、モータ15に駆動されて光軸方向に移動することで、フォーカス(合焦)状態を設定する。モータ(M)15は後述するモータドライバ46に制御されて回転することで、対物レンズ11を光軸方向に進退移動させる。
【0016】
対物レンズ11の近傍にはエンコーダ(E)16も配設されている。エンコーダ16は、対物レンズ11の可動領域内における位置(レンズ位置)を検出して、検出結果を後述するレンズ位置検出部44に出力するようになっている。
【0017】
ズームレンズ12R,12Lは、対物レンズ11を介して入射した観察画像を変倍制御するためのものであり、ズームレンズ12Rは右目用の観察画像のズーム変倍を行い、ズームレンズ12Lは左目用の観察画像のズーム変倍を行う。結像レンズ13R,13Lは、ズーム変倍された右目用及び左目用の観察画像を夫々撮像部14L,14Rの撮像面に導く。
【0018】
撮像部14R,14Lは、CCDやCMOSセンサ等の撮像素子によって構成され、夫々撮像面に入射した観察画像を光電変換して右目用画像及び左目用画像を得る。撮像部14R,14Lからの右目用及び左目用の画像信号は、CCU20に供給される。なお、本実施の形態においては、顕微鏡10として3D観察画像を取得する例を示しているが、2D観察画像を取得するものにも同様に適用可能である。
【0019】
CCU20は、入力された右目用及び左目用の画像信号に対し所定の画像信号処理を施して、標準的な3D映像信号に変換するようになっている。CCU20からの3D映像信号は3Dモニタ30に供給される。3Dモニタ30は、入力された3D映像信号に基づいて、表示画面上に顕微鏡観察画像を映出するようになっている。
【0020】
本実施の形態においては、CCU20からの映像信号は架台50内に配設されたAF制御部40にも供給される。AF制御部40は、顕微鏡10の撮像領域(観察視野範囲)中にユーザの設定に基づいて所定サイズの複数の合焦領域を設定可能であり、合焦領域の画像部分が自動的に合焦するように、フォーカス制御を行うものである。更に、本実施の形態においては、合焦領域を変更することで、確実なフォーカス制御を可能にする。
【0021】
AF制御部40の検波部41には、CCU20からの映像信号が入力される。検波部41は、合焦領域設定部42によって設定された合焦領域における映像信号の検波処理を行い、検波結果をコントラスト演算部43に出力する。コントラスト演算部43は、制御部49に制御されて、検波部41の検波処理結果に基づいて、合焦領域のコントラストを求める。
【0022】
また、コントラスト演算部43には、レンズ位置検出部44の出力も与えられる。レンズ位置検出部44は、顕微鏡10のエンコーダ16から対物レンズ11の可動領域内における位置の検出結果が与えられる。レンズ位置検出部44は、エンコーダ16の出力に基づいて、現在のレンズ位置を求めてレンズ位置情報をコントラスト演算部43に出力する。コントラスト演算部43は、図示しないメモリを有しており、対物レンズ11の各レンズ位置における合焦領域のコントラスト値をメモリに記憶させる。
【0023】
コントラスト演算部43がメモリに記憶させた各レンズ位置における合焦領域のコントラスト値は、制御部49を介して合焦位置演算制御部45に与えられる。制御部49は、コントラスト値が所定の閾値(以下、合焦判定閾値という)を超えた場合にのみ、ピーク値が検出できるものと判定して、コントラスト演算部43からのコントラスト値及びレンズ位置の情報を合焦位置演算制御部45に与えるようになっている。また、制御部49は、コントラスト値のピーク値が合焦判定閾値以下であったか否かの範囲結果を合焦領域設定部42に与えるようになっている。
【0024】
モータドライバ46は、合焦位置演算制御部45に制御されて、モータ15を駆動し、対物レンズ11を進退移動させるようになっている。合焦位置演算制御部45は、このモータドライバ46を制御することで、対物レンズ11を所望の位置に進退移動させることができる。
【0025】
合焦位置演算制御部45は、制御部49に制御されて対物レンズ11を進退移動させると共に、各レンズ位置における合焦領域のコントラスト値に基づいて、いずれのレンズ位置の場合に合焦状態が得られるかを求める。例えば、合焦位置演算制御部45は、コントラスト値のピーク検出によって、合焦状態の対物レンズ11のレンズ位置(以下、合焦位置という)を求める。合焦位置演算制御部45は、合焦状態が得られるレンズ位置となるように、モータドライバ46を制御して対物レンズ11を移動させる。
【0026】
合焦領域設定部42は、コントラスト値のピーク値が合焦判定閾値以下であるか否かによって合焦領域を変更するか否かを決定する。即ち、合焦領域設定部42は、初期状態ではユーザが設定した領域を合焦領域に設定すると共に、フォーカス動作時に、メモリに記録されたコントラスト値が合焦判定閾値を超えない場合には、制御部49に制御されて合焦領域を変化させるようになっている。この場合には、合焦領域設定部42は、ユーザが設定した合焦領域に近接する位置に新たな合焦領域を設定する。また、合焦領域設定部42は、直前に設定している合焦領域を含む合焦領域を新たに設定してもよい。合焦領域設定部42は、コントラスト値が合焦判定閾値を超えるまで、合焦領域を変化させる。
【0027】
図2及び図3は合焦領域の設定を説明するための説明図である。図2は観察視野範囲61中にユーザが指定した合焦領域62を示している。図2の例は、ユーザが観察視野範囲61の中央に合焦領域を設定したことを示している。
【0028】
図3はコントラスト値が合焦判定閾値以下である場合に、合焦領域設定部42が、新たに設定する合焦領域を示している。合焦領域設定部42は、コントラスト値が合焦判定閾値以下である場合には、ユーザが設定した合焦領域62に近接した位置、図3では合焦領域の右又は左に隣接する位置に、新たな合焦領域63aを設定する。なお、合焦領域設定部42は、合焦領域62の左右の両側に新たに合焦領域63aを設定してもよく、左右の合焦領域63aの一方を先に設定し、その合焦領域のコントラスト値が合焦判定閾値以下であった場合に他方の合焦領域63aを設定するようにしてもよい。また、合焦領域設定部42は、合焦領域62,2つの合焦領域63aを含む領域を新たな合焦領域に設定してもよい。
【0029】
新たな合焦領域63aのコントラスト値が合焦判定閾値以下であった場合には、合焦領域設定部42は、合焦領域63aの左右に新たな合焦領域63bを更に設定する。この場合にも、合焦領域設定部42は、合焦領域63aの左右の両側に新たに合焦領域63bを設定してもよく、左右の合焦領域63bの一方を先に設定し、その合焦領域のコントラスト値が合焦判定閾値以下であった場合に他方の合焦領域63bを設定するようにしてもよい。また、合焦領域設定部42は、合焦領域62,2つの合焦領域63a及び2つの合焦領域63bを含む領域を新たな合焦領域に設定してもよい。
【0030】
以後同様にして、合焦領域設定部42は、コントラスト値が合焦判定閾値を超えるまで、合焦領域を変化させる。なお、図3では新たに設定する合焦領域を、ユーザが設定した合焦領域62の左右に広げる例を示したが、上下に広げるように合焦領域を設定してもよく、上下左右に広げるように合焦領域を設定してもよいことは明らかである。本実施の形態においては、ユーザが設定した合焦領域に近接する位置から離間する位置に向かって合焦領域を順次切換え又は広げるように変化させればよい。
【0031】
次にこのように構成された実施の形態の動作について図4乃至図8を参照して説明する。図4は合焦時の動作を説明するためのフローチャートである。図5及び図7は観察画像の一例を示す説明図である。また、図6及び図8はレンズ位置に対するコントラスト値の変化を示す説明図である。
【0032】
いま、顕微鏡10によって図5の観察視野範囲70が得られているものとする。観察視野範囲70は、例えば、脳外科手術等の術部であり、顕微鏡10によって観察視野範囲70における観察画像71が得られることを示している。観察画像71は、例えば脳実質72の一部に血管73が存在することを示している。なお、脳実質72は、一般的に、色及び凹凸の変化が乏しい。
【0033】
いま、観察視野範囲70の観察画像71が非合焦状態であるものとする。AF制御部40は、所定のタイミングで図4に示す合焦動作を実施する。また、AF制御部40は、所定の時間間隔で合焦動作を実行してもよい。
【0034】
ステップS1において、合焦領域設定部42は、ユーザによって予め指定されている合焦領域62を検波部41に設定する。検波部41は、ステップS2において、CCU20の出力のうち設定された合焦領域の映像信号を検波して検波結果をコントラスト演算部43に出力する。コントラスト演算部43には、レンズ位置検出部44から対物レンズ11の現在のレンズ位置の情報も与えられており、検波部41の検波結果からコントラスト値を求める(ステップS3)と共に、現在のレンズ位置とコントラスト値とを対応付けてメモリに記憶させる(ステップS4)。
【0035】
制御部49は、合焦位置演算制御部45を制御して、対物レンズ11のレンズ位置を変化させながら(ステップS6)、コントラスト演算部43のメモリに記憶されたコントラスト値を読み出し、コントラスト値のピークを検出する。制御部49は、コントラスト値のピークが検出できない場合には、合焦位置演算制御部45を制御してステップS6における対物レンズの移動を繰り返し、コントラスト値のピーク検出ができると、ステップS7においてコントラスト値のピーク値が合焦判定閾値を超えたか否かを判定する。
【0036】
図6図5に対応したものであり、横軸に対物レンズ11のレンズ位置をとり縦軸にコントラスト値をとって、レンズ位置の変化に応じたコントラスト値の変化を示している。図5の観察視野範囲70においては、ユーザが予め指定した合焦領域62上を血管73が通っており、合焦領域62におけるコントラスト値は十分に高い。これにより、図6に示すように、コントラスト値は、合焦判定閾値を超えている。
【0037】
この場合には、制御部49は、コントラスト値及びレンズ位置の情報を合焦位置演算制御部45に出力する。合焦位置演算制御部45は、コントラスト値のピークが得られるレンズ位置となるように、モータドライバ46を駆動する。こうして、対物レンズ11は、合焦状態が得られるレンズ位置に進退駆動される(ステップS9)。
【0038】
次に、顕微鏡10によって図7の観察視野範囲80が得られているものとする。観察視野範囲80は、図6の観察視野範囲70から少しずれた範囲であり、その観察画像81は、血管73が観察視野範囲80の周辺領域に存在することを示している。
【0039】
この場合にも、AF制御部40の合焦領域設定部42は、ステップS1において、ユーザによって予め指定されている合焦領域62を検波部41に設定する。この合焦領域62において、ステップS2〜S6の処理が繰り返されて、コントラスト値及びレンズ位置が求められ、コントラスト値のピークが合焦判定閾値を超えたか否かが判定される(ステップS7)。
【0040】
合焦領域62上には血管73が通っておらず、脳実質72は色及び凹凸の変化に乏しいことから、この場合には、合焦領域62におけるコントラスト値は比較的低い。図8図7に対応したものであり、図6と同様の表記方法によってレンズ位置に対するコントラスト値の変化を示している。図8(a)は合焦領域62についてのコントラスト値の変化を示している。図8に示すように、いずれのレンズ位置においてもコントラスト値は低く、合焦判定閾値以下である。コントラスト値が合焦判定閾値以下である場合には、合焦位置の検出は困難であるものと考えられる。
【0041】
この場合には、制御部49は、コントラスト値が合焦判定閾値以下であることを合焦領域設定部42に通知して、合焦領域設定部42に合焦領域を変化させる(ステップS8)。合焦領域設定部42は、合焦領域63aを検波部41に設定する。こうして、合焦領域63aについて、ステップS2〜S6の処理が繰り返されて、コントラスト値及びレンズ位置が求められ、コントラスト値のピークが合焦判定閾値を超えたか否かが判定される(ステップS7)。
【0042】
図7の例では、合焦領域63a上にも血管73は通っておらず、合焦領域63aにおけるコントラスト値も比較的低い。即ち、この場合にも、コントラスト値の変化は、図8(a)と同様となり、いずれのレンズ位置においてもコントラスト値は合焦判定閾値以下となる。
【0043】
合焦領域設定部42は、合焦領域63aのコントラスト値が合焦判定閾値以下であることから、合焦領域を更に変化させ、検波部41に合焦領域63bを設定する(ステップS8)。こうして、合焦領域63bについて、ステップS2〜S6の処理が繰り返されて、コントラスト値及びレンズ位置が求められ、コントラスト値のピークが合焦判定閾値を超えたか否かが判定される(ステップS7)。
【0044】
図7の観察視野範囲80においては、合焦領域63b上を血管73が通っており、合焦領域63におけるコントラスト値は十分に高く、コントラスト値の変化は、例えば図8(b)に示すものとなる。即ち、この場合には、コントラスト値は合焦判定閾値を超える。こうして、合焦位置演算制御部45は、コントラスト値のピークが得られるレンズ位置となるように、モータドライバ46を駆動し、合焦状態が得られる(ステップS9)。
【0045】
このように本実施の形態においては、ユーザが予め指定した合焦領域において合焦位置が得られない場合には、ユーザが設定した合焦領域に近接する位置から離間する位置に向かって合焦領域を順次切換え又は広げるように変化させて、合焦位置を得るようになっている。これにより、術者が指定した例えば観察視野範囲中央の合焦領域に関心領域が位置しない場合でも、合焦領域が自動的に切換って合焦位置が得られる。また、術部等の関心領域に血液が溜まってコントラストが低い状態であっても、関心領域近傍の領域のコントラスト高い合焦領域において合焦位置が求められる。こうして、関心領域又はその近傍に自動的に確実に合焦させることが可能である。また、合焦動作は自動的に行われることから、手術等のように両手が塞がっている場合でも、確実な合焦が可能であり、利便性に優れている。また、合焦のために、被写体パターンや特定パターンの認識のためのデータベースは不要であり、比較的簡単な構成で、確実なオートフォーカス制御が可能である。
【0046】
ところで、図4の例は、合焦領域のコントラスト値のピークが合焦判定閾値以下である場合に合焦領域設定部42において合焦領域を変化させる例を示したが、複数の合焦領域についてコントラスト値を算出しておき、各合焦領域について求めたコントラスト値に応じて、フォーカス制御に用いる合焦領域を決定して、合焦位置を求めるようにすることも可能である。
【0047】
図9はこの場合の合焦動作を説明するためのフローチャートであり、図10は合焦領域の決定方法を説明するための説明図である。図9において図4と同一の手順には同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
図9のステップS11において、合焦領域設定部42は、ユーザが指定した合焦領域及びその周囲の1つ以上の合焦領域を検波部41に設定する。合焦領域設定部42が設定したこれらの複数の合焦領域について、ステップS2〜S6の処理が繰り返されて、コントラスト値及びレンズ位置が求められて記憶される。即ち、この場合には、レンズ位置毎に、全ての合焦位置のコントラスト値が求められて、最終的に合焦位置毎にピーク検出が行われる。
【0049】
全ての合焦領域についてのコントラスト値のピーク検出が終了すると、制御部49は、ステップS13において、コントラスト値のピーク値が合焦判定閾値を超えた合焦領域が存在するか否かを判定する。存在しない場合には、合焦領域設定部42は、ステップS11で設定した合焦領域の周囲に新たな合焦領域を設定するか又は広げて、合焦領域を再設定し(ステップS14)、ステップS2〜S6,S13の処理を繰り返す。
【0050】
コントラスト値のピークが合焦判定閾値を超えた合焦領域が存在する場合には、制御部49は、これらの合焦領域のうち、ユーザが予め設定した合焦領域に最も近い合焦領域を選択し、選択した合焦領域について求めたコントラストピークのレンズ位置を合焦位置演算制御部45に与える。これにより、合焦位置演算制御部45は、モータドライバ46を制御して対物レンズ11のレンズ位置を合焦位置に移動させる。
【0051】
例えば、顕微鏡10によって図10の観察視野範囲90が得られているものとする。観察視野範囲90は、図6の観察視野範囲70から少しずれた範囲であり、その観察画像91は、血管73が観察視野範囲90の中央から若干ずれた領域に存在することを示している。また、図10は合焦領域設定部42が、ステップS11において、ユーザにより指定された合焦領域62及びその周辺の8つの合焦領域92a〜92hを設定することを示している。
【0052】
図10の例では、合焦領域92d,92g,92hにおいて血管73が通過しており、これらの合焦領域92d,92g,92hのコントラスト値のみが合焦判定閾値を超えるものと考えられる。また、血管73の多くの部分が領域内を通過することから、合焦領域92dのコントラスト値が他の合焦領域92g,92hのコントラスト値よりも高いものと考えられる。しかしこの場合でも、合焦領域92gがユーザ設定の合焦領域62に最も近いので、制御部49は、ステップS15において合焦領域92gを選択し、合焦位置演算制御部45を制御して、合焦領域92gについて求めたコントラストピークのレンズ位置を用いて、合焦位置を決定させる。
【0053】
このように、図9の例では、全ての合焦領域のコントラスト値を同時に求めることができ、合焦動作における処理時間を短縮することができる。また、ユーザ設定の合焦領域からの距離によって合焦領域を選択しており、ユーザが意図した合焦状態を得やすい。
【0054】
(第2の実施の形態)
図11は本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。図11において図1と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。本実施の形態は、顕微鏡10が右目用及び左目用の観察画像を取得可能であることを利用して、位相差法によるフォーカス制御を行うものである。なお、顕微鏡が2次元用のものである場合でも、撮像部がオートフォーカス用のAF画素を有している場合や位相検出用のセンサを有していれば、本実施の形態を適用可能である。
【0055】
本実施の形態における医療用観察装置100は、合焦領域設定部42、コントラスト演算部43及び合焦位置演算制御部45に代えて夫々合焦領域設定部102、位相差演算部103及び合焦位置演算制御部105を用いたAF制御部101を採用した点が第1の実施の形態と異なる。
【0056】
本実施の形態においては、合焦領域設定部102は、右目用の観察画像と左目用の観察画像とで異なる合焦領域を検波部41に設定する。例えば、合焦領域設定部102は、右目又は左目用の観察画像のいずれか一方に対して、比較的広い合焦領域である基準合焦領域を設定すると共に、他方の観察画像に対して比較的狭い合焦領域である比較合焦領域を設定する。
【0057】
検波部41は、右目用及び左目用に夫々設定された基準及び比較合焦領域の映像信号を検波して検波結果を位相差演算部103に出力する。位相差演算部103は、比較合焦領域が設定された観察画像に対する検波結果(以下、比較検波結果という)を基準合焦領域が設定された観察画像に対する検波結果(以下、基準検波結果という)上でシフトさせながら、基準検波結果と比較検波結果との一致比較を行う。即ち、位相差演算部103は、比較検波結果が基準合焦領域のうちのいずれの領域の基準検波結果に一致するかを求め、一致した領域と比較合焦領域との位置のずれを位相差として検出する。なお、位相差演算部103は、例えば、輝度分布や色毎のレベル分布等によって一致を判定する。
【0058】
位相差演算部103が求めた位相差は、顕微鏡10のピントずれに対応する。位相差演算部103が求めた位相差の情報は、制御部49を介して合焦位置演算部104に与えられる。合焦位置演算制御部104は、位相差演算部103が求めた位相差に基づいて合焦位置を演算して求める。合焦位置演算制御部104は、モータドライバ46を制御して対物レンズ11を進退移動させて合焦位置に移動させる。これにより、顕微鏡10は合焦状態となる。
【0059】
ところで、位相差演算部103は、基準合焦領域及び比較合焦領域の両方の領域に、合焦に必要な特徴点を有する観察画像が含まれることによって、一致比較が可能である。しかし、比較合焦領域を比較的広い領域に設定した場合には、基準合焦領域及び比較合焦領域の両方に、似通った多くの特徴点を有する観察画像が含まれることとなり、一致比較が困難となる可能性がある。そこで、比較合焦領域については、比較的狭い領域に設定することで、比較合焦領域内に含まれる特徴点を少なくなるようにして、位相差の検出精度を向上させる。
【0060】
しかしながら、基準合焦領域として十分広い合焦領域を設定することで合焦に必要な特徴点を有する観察画像が基準合焦領域内に含まれる可能性が高い一方、比較合焦領域は比較的狭い領域に設定されることから、合焦に必要な特徴点を有する観察画像が含まれない可能性がある。この場合には、位相差演算部103において正しい位相差を検出することができない。
【0061】
そこで、本実施の形態においては、制御部49は、位相差演算部103の演算結果が、比較合焦領域の全てのシフト位置において所定の閾値に到達しない場合には、位相差検出が不能であるものと判定して、判定結果を合焦領域設定部102に与えるようになっている。
【0062】
合焦領域設定部102は、位相差検出が不能であると判定された場合には、比較合焦領域をシフト又は広げることで、合焦に必要な特徴点を有する観察画像が比較合焦領域にも含まれるように制御するようになっている。
【0063】
次に、このように構成された実施の形態の動作について図12乃至図14を参照して説明する。図12は合焦動作を説明するためのフローチャートである。図13及び図14は位相差法による合焦動作を説明するための説明図である。図13は比較合焦領域に特徴点が含まれる場合の例を示している。
【0064】
図13(a)は左目用の観察視野範囲111Lを示しており、図13(b)は右目用の観察視野範囲111Rを示している。観察視野範囲111Lの観察画像112Lは、例えば脳実質113Lの一部に血管114Lが存在することを示している。同様に、観察視野範囲111Rの観察画像112Rは、例えば脳実質113Rの一部に血管114Rが存在することを示している。脳実質113L,113Rは相互に同一の観察物であり、血管114L,114Rも相互に同一の観察物である。観察視野範囲111L,111R上における各観察物の位置のずれ(位相差)が、ピントのずれ量に対応する。
【0065】
この位相差を検出するために、合焦領域設定部102は、図12のステップS21において、基準合焦領域及び比較合焦領域を設定する。図13の例では、左目用の観察視野範囲111Lに基準合焦領域115Lを設定し、右目用の観察視野範囲111Rに基準合焦領域115Rを設定した例を示している。
【0066】
検波部41は、これらの合焦領域115L,115Rの映像信号を検波して検波結果を位相差演算部103に出力する(ステップS22)。図13(c)は合焦領域115L,115Rの検波結果を画像によって示している。基準合焦領域115Lにおいては、略中央に血管114Lの画像部分114Laが含まれる。一方、比較合焦領域115Rにおいては、右端に血管114Rの画像部分114Raが含まれる。位相差演算部103は、ステップS23において、比較合焦領域115Rの検波結果を例えば画素単位でステップ移動させながら、同一サイズの基準合焦領域115Lの検波結果との一致比較を行う。
【0067】
図13(c)の破線に示す範囲に、比較合焦領域115Rの検波結果をステップ移動させることにより、同一サイズの基準合焦領域115Lの検波結果と一致する。この場合の移動量が位相差に相当する。位相差演算部103は求めた位相差を合焦位置演算制御部104に出力する。なお、制御部49は、一致演算の演算結果が所定の閾値に到達しなかった場合には、ステップS24において位相差が検出不能であるものと判定する。
【0068】
位相差が検出できた場合には、合焦位置演算制御部104は、位相差演算部103が求めた位相差からピントのずれ量を演算し合焦位置を求める(ステップS25)。合焦位置演算制御部104は、ステップS26において、モータドライバ46を制御して対物レンズ11を進退移動させて合焦位置に移動させる。こうして、顕微鏡10を合焦状態にすることができる。
【0069】
図13は合焦領域設定部102が最初に設定した比較合焦領域に血管等の特徴点の観察画像が含まれる例を示した。しかし、観察視野範囲や倍率によっては、基準合焦領域に特徴点が含まれていても比較合焦領域には特徴点が含まれないこともある。或いは、図13の状態から倍率を上げた場合には、比較合焦領域に特徴点が含まれなくなることもある。
【0070】
図14はこの場合の例を示しており、図14(a),(b)は図13(a),(b)の状態から倍率を高くした場合の観察視野範囲121L,121Rを示している。観察画像112Lは拡大されて観察画像122Lとなり、観察画像112Rは拡大されて観察画像122Rとなっている。また、拡大の結果、血管114Lは血管124Lとして観察され、血管114Rは血管124Rとして観察される。このため、基準合焦領域115Lには、血管124Lの特徴点が含まれる一方、比較合焦領域115Rには、血管124Rの特徴点が含まれなくなる。
【0071】
この場合には、位相差演算部103の演算結果は所定の閾値に到達せず、制御部49は、ステップS24において位相差検出が不能であるものと判定して、判定結果を合焦領域設定部102に出力する。合焦領域設定部102は、ステップS27において、比較合焦領域を拡大させる。
【0072】
図14(c)は、比較合焦領域115Rが比較合焦領域125Rに拡大されたことを示している。この比較合焦領域125Rには、血管124Rのエッジ部分が特徴点として含まれている。これにより位相差演算部103によって位相差の検出が可能となり、ステップS22,S23によって、位相差が検出され、ステップS25,S26において、合焦位置の演算及び合焦位置への対物レンズ11の移動が行われる。
【0073】
このように本実施の形態においては、位相差法を用いたフォーカス制御において、位相差検出のための合焦領域を設定すると共に、この合焦領域に特徴点が含まれるように合焦領域を次第に広げながら位相差検出を行うよう制御される。これにより、確実な位相差検出を可能にして、合焦状態を設定することが可能である。例えば、拡大倍率を高くした場合等においても、合焦領域が拡大されて位相差検出が行われるので、合焦状態を確実に維持することが可能である。また、位相差法による高速なフォーカス制御が可能であるという利点もある。
【0074】
(第3の実施の形態)
図15は本発明の第3の実施の形態を示す構成図である。図15において図1及び図11と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。本実施の形態は、第1の実施の形態におけるコントラスト法によるフォーカス制御と、第2の実施の形態における位相差法によるフォーカス制御を組み合わせたものである。
【0075】
本実施の形態における医療用観察装置130は、合焦領域設定部42,102の機能を有する合焦領域設定部132、コントラスト演算部43及び位相差演算部103の機能を有するコントラスト・位相差演算部133、合焦位置演算制御部45,105の機能を有する合焦位置演算制御部135を用いたAF制御部131を採用した点が第1及び第2の実施の形態と異なる。
【0076】
次にこのように構成された実施の形態の動作について図16のフローチャートを参照して説明する。
【0077】
本実施の形態においては、コントラスト法によるフォーカス制御時の動作は第1の実施の形態と同様であり、位相差法によるフォーカス制御時の動作は第2の実施の形態と同様である。本実施の形態においては、コントラスト法と位相差法とを図16のフローチャートに従って切換えるようになっている。
【0078】
位相差法においては、コントラスト法に比べて高速なフォーカス制御が可能である。一方、コントラスト法は、位相差法に比べて高い精度のフォーカス制御が可能である。そこで、本実施の形態においては、先ず位相差法を先に採用して高速なフォーカス制御を可能にする。位相差法による制御によって、対物レンズ11は、略コントラストピークが得られる位置近傍に位置することになり、この位置近傍のみで対物レンズ11を移動させてコントラスト法を採用することにより、比較的短時間に高精度のフォーカス制御が可能となる。
【0079】
先ず、ステップS31において、合焦領域設定部132は、例えば図10等で示したコントラスト法による複数の合焦領域を設定すると共に、図13等で示した位相差法による合焦領域を設定する。検波部41は設定された合焦領域の映像信号を検波し、検波結果をコントラスト・位相差演算部133に出力する。コントラスト・位相差演算部133は、ステップS33においてコントラスト値及び位相差を求める。なお、ステップS33では、コントラスト値については、所定の対物レンズ位置のコントラスト値のみが求まる。
【0080】
制御部49は、ステップS34においてコントラスト・位相差演算部133によって位相差が検出できたか否かを判定する。位相差が検出できなかった場合には、ステップS38,S39を経て、合焦領域設定部132は、図14に示したように、比較合焦領域を広げる。こうして、コントラスト・位相差演算部133において位相差が検出できると、ステップS34,S35を経てステップS36に処理が移行し、合焦位置演算制御部135は位相差に基づき合焦位置を算出し、ステップS37においてモータドライバ46を制御して、対物レンズ11を合焦位置に移動させる。
【0081】
このように、位相差法を採用することにより、レンズ位置を移動させることなく高速での合焦位置演算が可能となる。しかしながら、対物レンズ11の位置によっては、ピントのずれが大きく、画像が大きくボケて、合焦領域を広げても位相差を検出することができないことがある。
【0082】
この場合には、位相差法によるフォーカス制御から、コントラスト法によるフォーカス制御に切換える。即ち、処理はステップS34からステップS38,39,S45を経てステップS46に移行して、合焦位置演算制御部135は、対物レンズ11を移動させる。次いで、ステップS32,S33が繰り返される。
【0083】
なお、ステップS46の対物レンズ移動処理においては、直前のコントラスト値との比較からコントラスト値の変化方向が検出され、コントラスト値が増加する方向に対物レンズ11を移動させるように移動方向の制御が行われる。こうして、コントラスト法によって、対物レンズ11が合焦位置に近づくと、再び位相差が検出可能となることがある。この場合には、処理がステップS38からステップS40に移行して比較合焦領域を初期化して狭くした後、ステップS32,S33が繰り返される。こうして、再度、位相差法によるフォーカス制御が行われて、比較的高速に合焦状態に移行する。
【0084】
ステップS37において、位相差法によって合焦が得られた場合、或いはコントラスト法によるフォーカス制御途中で位相差検出可能にならなかった場合には、コントラスト法によるフォーカス制御が新たに又は継続して行われる。即ち、ステップS37,S35,S39から処理がステップS45に移行し、ピークが検出されるまで、対物レンズ11が移動制御される(ステップS46)。ピークが検出されると、合焦位置演算制御部135は、ステップS47においてコントラスト法による合焦位置演算を行い、モータドライバ46を制御して対物レンズ11を合焦位置に移動させる(ステップS48)。これにより、高精度のフォーカス制御が行われることになる。
【0085】
このように本実施の形態においては、第1及び第2の実施の形態と同様の効果が得られると共に、位相差法による高速なフォーカス制御と、コントラスト法による高精度のフォーカス制御とを組み合わせることで、高速且つ高精度のフォーカス制御を可能にすることができる。
【0086】
また、本発明は、上記各実施形態にそのまま限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素の幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0087】

本出願は、2013年6月24日に日本国に出願された特願2013−131723号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16