(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施の形態に係るカプセル型医療装置、位置検出装置、及びカプセル型医療システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、カプセル型医療装置の一形態として、被検体内に経口にて導入されて被検体内(管腔内)を撮像するカプセル型内視鏡を例示するが、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。即ち、本発明は、例えば被検体の食道から肛門にかけて管腔内を移動するカプセル型内視鏡や、被検体内に薬剤等を配送するカプセル型医療装置や、被検体内のPHを測定するPHセンサを備えるカプセル型医療装置など、カプセル型をなす種々の医療装置に適用することが可能である。
【0026】
また、以下の説明において、各図は本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。従って、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。なお、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るカプセル型医療システムの一構成例を示す模式図である。
図1に示すように、実施の形態1におけるカプセル型医療システム1は、被検体2の管腔内に導入されるカプセル型医療装置として、被検体内を撮像することにより取得した撮像信号を無線送信するカプセル型内視鏡10と、該カプセル型内視鏡10の被検体2内における位置を検出する位置検出装置20とを備える。
【0028】
図2は、
図1に示すカプセル型内視鏡10の内部構造の一例を示す模式図である。
図2に示すように、カプセル型内視鏡10は、被検体2の管腔内に導入し易い大きさに形成されたカプセル型をなす筐体101と、該筐体101内に収納され、被検体2内を撮像して撮像信号を取得する撮像ユニット110と、撮像ユニット110を含むカプセル型内視鏡10の各部の動作を制御すると共に、撮像ユニット110により取得された撮像信号に対して所定の信号処理を施す制御部120と、信号処理が施された撮像信号を無線送信する送信部130と、カプセル型内視鏡10の各部に電力を供給する電源部140と、カプセル型内視鏡10の位置検出用の交番磁界を発生する磁界発生部150とを備える。なお、
図2においては、筐体101の断面を示している。
【0029】
筐体101は、円筒状をなす胴部102と、該胴部102の両端にそれぞれ設けられたドーム部103、104とを有する外装ケースからなる。胴部102は、可視光に対して略不透明な有色の部材によって形成されている。また、ドーム部103、104の少なくとも一方(
図2においては撮像ユニット110側であるドーム部103)は、可視光等の所定の波長帯域の光に対して透明な光学部材によって形成されている。なお、
図2においては、カプセル型内視鏡10に撮像ユニット110を1つのみ設けているが、撮像ユニット110を2つ設けても良く、この場合、他方のドーム部104も透明な光学部材によって形成される。このような筐体101は、撮像ユニット110、制御部120、送信部130、電源部140、及び磁界発生部150を液密に内包する。
【0030】
撮像ユニット110は、被検体2に関する情報として撮像信号を取得する情報取得手段であり、LED等の発光素子及び該発光素子を駆動する駆動回路(図示せず)を含む照明部111と、集光レンズ等の光学系112と、CMOSイメージセンサ又はCCD等の撮像素子及び該撮像素子を駆動する駆動回路(図示せず)を含む撮像部113とを有する。照明部111は、撮像部113の撮像視野に白色光等の照明光を照射し、ドーム部103を介して撮像視野v内の被検体2を照明する。光学系112は、光軸Laが筐体101の長軸と一致するように配置され、撮像視野v内の被検体2からの反射光を集光し、撮像部113の撮像面に結像する。撮像部113は、撮像面に結像された被検体2の像を表す光信号を光電変換処理することにより、撮像信号を生成する。
【0031】
なお、撮像ユニット110を2つ設ける場合には、2つ配置される光学系の両方の光軸が共に筐体101の長軸と一致するように、撮像ユニット110を筐体101の両端のドーム部103側及びドーム部104側にそれぞれ配置する。また、撮像ユニット110を1つのみ設ける場合、撮像ユニット110が配置されない側の筐体101の端部は、必ずしもドーム状にしなくても良い。この場合、ドーム部104の代わりに、例えば円盤状の部材で胴部102の端部を封止しても良い。
【0032】
制御部120は、所定の周期(撮像フレームレート)で撮像部113を動作させると共に、この撮像フレームレートと同期して、照明部111を発光させる。また、制御部120は、撮像ユニット110が生成した撮像信号に対し、A/D変換や、その他所定の信号処理を施して画像データを生成する。さらに、制御部120は、電源部140から磁界発生部150に電力を間欠的に供給させることにより、磁界発生部150から交番磁界を間欠的に発生させる。交番磁界の発生パターンについては後述する。
【0033】
送信部130は、図示しない送信アンテナを備え、制御部120によって信号処理が施された画像データ及び関連情報を取得して変調処理を施し、送信アンテナを介して外部に順次無線送信する。
【0034】
電源部140は、例えばボタン型をなす電池と磁気スイッチ等のスイッチ部とによって実現される。電源部140は、外部から印加された磁界によって磁気スイッチが切り替わることにより自身のオンオフ状態を切り替え、オン状態の間、カプセル型内視鏡10の各部に電源を供給する。また、電源部140は、オフ状態の間、カプセル型内視鏡10の各部への電力供給を停止する。
【0035】
磁界発生部150は、電流が流れることにより磁界を発生する送信コイル15aと、該送信コイル15aと共に共振回路151を形成するコンデンサ15bとを含み、所定の周波数の交番磁界を発生する。送信コイル15aの配置は、撮像部113の視界を妨げることがなければ、特に限定されない。実施の形態1においては、送信コイル15aの中心軸を筐体101の長軸と平行に配置し、胴部102の内周に沿って送信コイル15aを巻回している。
【0036】
送信コイル15aの形態として、好ましくは、送信コイル15aの有効面積をできるだけ大きく取ると良い。また、送信コイル15aの駆動効率の低下を防ぐため、送信コイル15aの内部空間には電源部(電池)140や送信部(送信アンテナ)130を配置しないことが好ましい。例えば、2つの撮像ユニット110を筐体101の長軸の両端にそれぞれ設ける場合には、これらの撮像ユニット110の中間に送信コイル15aを配置すると良い。
【0037】
図3は、磁界発生部150の構成をより詳細に示す図である。
図3に示すように、磁界発生部150は、送信コイル15a及びコンデンサ15bからなる共振回路151に加え、信号発生部152及び駆動部153を備える。以下において、共振回路151の共振周波数(即ち、交番磁界の周波数)をF
0とする。
【0038】
信号発生部152は、印加された電圧に応じた周波数で発振する振動子を含む発振器である。なお、該振動子には、共振周波数F
0の整数倍と略等しい周波数で発振させる電圧が印加される。
【0039】
駆動部153は、信号発生部152から発生した信号に基づいてコイル15aに電圧を印加して駆動することにより、コイル15aから交番磁界を発生させる。
【0040】
再び
図1を参照すると、位置検出装置20は、カプセル型内視鏡10から発生した交番磁界を検出する磁界検出部21と、該磁界検出部21が検出した交番磁界に基づいて、被検体2内におけるカプセル型内視鏡10の位置を検出する位置検出装置本体22とを備える。
【0041】
磁界検出部21は、各々が交番磁界を受信して検出信号を出力する複数の受信コイル21aを有する。これらの受信コイル21aは検査中の被検体2の近傍に、所定の配置で並べられる。
図1において、受信コイル21aは、被検体2が横たわる載置台30の下方に配置されている。
【0042】
位置検出装置本体22は、当該位置検出装置本体22に対する種々の情報や命令の入力に用いられる入力部23と、当該位置検出装置本体22によって処理された種々の情報等を表示する出力部24と、カプセル型内視鏡10から無線送信された撮像信号をアンテナ25aを介して受信する受信部25と、各受信コイル21aから出力された検出信号に対して種々の信号処理を施して磁界情報を生成する信号処理部26と、記憶部27と、位置検出装置本体22の各部の動作を制御すると共に、受信部25から入力された撮像信号や、信号処理部26から入力された磁界情報に対して所定の演算処理を実行する制御部28とを備える。
【0043】
入力部23は、各種ボタン、スイッチ、キーボード等の入力デバイスや、マウス、タッチパネル等のポインティングデバイス等によって実現され、ユーザによる入力操作に応じて、各種情報を制御部28に入力する。
【0044】
出力部24は、液晶や有機EL等の各種ディスプレイを含み、入力部23から入力された各種情報や、被検体2の体内画像や、体内画像の撮像時におけるカプセル型内視鏡10の位置情報等を画面表示する。
【0045】
被検体2の体表には、カプセル型内視鏡10から無線送信された撮像信号を受信する複数のアンテナ25aが貼り付けられている。受信部25は、これらのアンテナ25aのうち、撮像信号に対して最も受信強度の高いアンテナ25aを選択し、選択したアンテナ25aを介して受信した撮像信号に対して復調処理等を行うことにより、被検体2の体内画像に対応する画像データを取得する。
【0046】
信号処理部26は、磁界検出部21から出力された検出信号の波形を整形するフィルタ部261と、増幅器262と、検出信号にA/D変換処理を施して検出データを生成するA/D変換部263とを有する。
【0047】
記憶部27は、フラッシュメモリ又はハードディスク等の書き換え可能に情報を保存する記憶媒体及び読取装置を用いて実現される。記憶部27は、制御部28が位置検出装置本体22の各部を制御するための各種プログラムや各種パラメータ、カプセル型内視鏡10によって撮像された被検体2の体内画像の画像データ、被検体2内におけるカプセル型内視鏡10の位置情報等を記憶する。
【0048】
制御部28は、例えばCPU(Central Processing Unit)等を用いて構成され、記憶部27からプログラムを読み出し、位置検出装置本体22を構成する各部に対する指示やデータの転送等を行って位置検出装置本体22の動作を統括的に制御する。また、制御部28は、受信部25から入力された画像データに対してホワイトバランス処理、デモザイキング、ガンマ変換等、平滑化(ノイズ除去等)等の所定の画像処理を施す画像処理部281と、カプセル型内視鏡10の位置を表す情報(位置情報)を取得する位置情報生成部282とを有する。
【0049】
位置情報生成部282は、A/D変換部263から出力された検出データに高速フーリエ変換処理(以下、FFT処理という)を施すことにより、交番磁界の振幅及び位相等の磁界情報を抽出するFFT処理部282aと、FFT処理部282aによって抽出された磁界情報に基づいてカプセル型内視鏡10の位置を算出する位置算出部282bとを有する。
【0050】
これらの各部のうち、信号処理部26及び位置情報生成部282が、磁界検出部21が出力した検出信号に基づいてカプセル型内視鏡10の位置を算出するための処理を実行する処理手段を構成する。
【0051】
次に、カプセル型医療システム1の動作について説明する。
図4は、カプセル型医療システム1の動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS1において、カプセル型内視鏡10の電源部140をオンして被検体2内に導入する。
【0052】
続くステップS2において、カプセル型内視鏡10は、電源部140から磁界発生部150に電力を間欠的に供給し、磁界発生部150から交番磁界を間欠的に発生させる。
図5は、送信コイル15aの駆動周期に応じた電流レベルを示す図である。
図5に示すように、実施の形態1においては、送信コイル15aに対し、電流値I
Cの電流を周期T
0(=τ
1+τ
2)且つ所定のデューティ比(τ
1/T
0)で流す。以下、周期T
0を送信コイル15aの駆動周期、即ち、交番磁界の発生周期とする。また、期間τ
1は、交番磁界の発生期間(送信コイル15aの駆動期間)であり、期間τ
2は、交番磁界のオフ期間(送信コイル15aの駆動停止期間)である。
【0053】
ここで、カプセル型内視鏡10の位置検出精度は、カプセル型内視鏡10から発生する交番磁界を磁界検出部21が検出する精度、即ち、検出信号のS/N比に依存する。例えば、検出信号のS/N比が6dB向上すると、カプセル型内視鏡10の位置検出精度が2倍に向上する。そして、検出信号のS/N比は、カプセル型内視鏡10の送信コイル15aが発生する交番磁界のノイズと、この交番磁界を検出した位置検出装置20側の検出回路(磁界検出部21及び信号処理部26)におけるノイズとのうち、大きい方のノイズに依存する。
【0054】
また、送信コイル15aが発生する交番磁界の強度は、ビオ=サバールの法則により、送信コイル15aに流れる電流に比例する。一方、磁界発生部150における消費電力は、一般に、送信コイル15aに流す電流に比例するため、磁界発生部150が発生する交番磁界の強度とも比例関係にある。従って、磁界発生部150が発生する交番磁界の強度を抑制すると、それに伴って、交番磁界のノイズ強度も小さくなることが予想される。この場合、検出信号のS/N比に対し、交番磁界そのもののノイズよりも、位置検出装置20側におけるノイズの影響の方が大きくなる。
【0055】
そこで、実施の形態1においては、送信コイル15aに流す電流の強度を弱くするのではなく、電源部140から磁界発生部150に対して電力を間欠的に供給し、電流がゼロになる期間(駆動オフの期間)を設けることにより、磁界発生部150における消費電力を抑制している。一方、後述するように、位置検出装置20においては、駆動オフの期間に対応する検出信号を、カプセル型内視鏡10の位置算出に用いないこととする。
【0056】
送信コイル15aの駆動をオフにする期間を設けるためには、例えば、電源部140から磁界発生部150への電力供給を、固定周期且つ固定デューティ比でオン/オフを繰り返せば良い。この場合、駆動オンの期間においては、デューティ比の分だけ送信コイル15aに流す電流値を大きくしても良い。また、駆動周期T
0及びデューティ比は、一定でなくても良い。なお、磁界検出部21において送信コイル15aの駆動オフの期間を検出できるようにするため、送信コイル15aの駆動周期T
0を、位置検出装置20が1回の位置検出のために磁界を検出する期間(以下、検出期間という)T
1よりも短くすると良い。
【0057】
このように送信コイル15aに流す電流を制御した場合、磁界検出部21が出力する検出信号のS/N比は次のとおりとなる。
図6は、送信コイル15aを常時駆動する場合における電流レベルを示す図であり、比較のために示す。
【0058】
送信コイル15aの両端における電圧をV
Cとすると、
図6に示すように送信コイル15aに電流を流し続けた場合、磁界発生部150における消費電力W
C0は、次式(1)によって与えられる。
W
C0=V
C×I
C …(1)
【0059】
一方、デューティ比をD(0<D<1)とすると、
図5に示すように送信コイル15aに流す電流のオン/オフ(電流値I
0/0)を繰り返した場合、磁界発生部150における消費電力W
C1は、次式(2)によって与えられる。
W
C1=V
C×I
C×D …(2)
即ち、消費電力は、デューティ比Dの分だけ抑制される。
【0060】
上述したように、カプセル型内視鏡10の位置検出精度は、検出信号のS/N比に依存する。そこで、
図5及び
図6の各パターンで交番磁界を発生させた場合について、磁界検出部21におけるS/N比を以下のように算出する。
【0061】
まず、送信コイル15aに電流を常時流す場合、信号レベルをS
C0、ノイズレベルをN
C0とすると、S/N比は20×log(S
C0/N
C0)となる(logは常用対数)。
【0062】
一方、送信コイル15aに流す電流のオン/オフを切り替える場合、信号レベルをS
C1、ノイズレベルをN
C1とすると、電流がオフの期間における信号は位置算出に使用しないこととするため、信号レベルS
C1は、上記信号レベルS
C0に対してデューティ比Dの分だけ小さくなる。即ち、S
C1=S
C0×Dとなる。また、ノイズレベルN
C1の支配要因は、位置検出装置20側の検出回路にあるので、時間当たりのノイズレベルN
C1は上記ノイズレベルN
C0と変わらないが、帯域がデューティ比Dの分だけ狭まるのと同じ効果となるため、N
C2=N
C0×√Dとなる。従って、この場合、S/N比は、次式(3)によって与えられる。
【数1】
【0063】
即ち、送信コイル15aを間欠的に駆動する場合、消費電力はデューティ比Dの分だけ小さくなるが、S/N比は、デューティ比Dの平方根の分しか小さくならない。例えば、デューティ比を50%にすると、S/N比の低下は、20×log√D≒−3dB(≒71%)に留められる。即ち、この場合、送信コイル15aを駆動し続ける場合と比較して、消費電力当たりの位置検出精度が高くなり、駆動効率を向上させることができる。
【0064】
また、送信コイル15aの駆動オンの期間にデューティ比Dの分だけ送信コイル15aに流す電流を増加させる場合、消費電力W
C2は次式(4)によって与えられる。
W
C2=V
C×(I
C/D)×D=V
C×I
C…(4)
【0065】
この場合、電流値がゼロとなる期間における信号は位置算出に使用しないため、次式(5)に示すように、信号レベルS
C2は、送信コイル15aを駆動し続ける場合に対してデューティ比Dの分だけ低下する。
S
C2=(S
C0/D)×D=S
C0 …(5)
【0066】
一方、送信コイル15aに流す電流のオン/オフを切り替えるため、ノイズレベルN
C2は、N
C0×√Dとなる。
従って、この場合のS/N比は、次式(6)によって与えられる。
【数2】
式(6)において、0<D<1であるため、−log√D>0となる。即ち、送信コイル15aを間欠的に駆動し、且つ、デューティ比Dの分だけ送信コイル15aに流す電流を増加させる場合、送信コイル15aを駆動し続ける場合に対して消費電力は維持したまま、S/N比を向上させることができる。
【0067】
続くステップS3において、カプセル型内視鏡10から発生した交番磁界を磁界検出部21の各受信コイル21aにおいて検出し、各受信コイル21aから出力された検出信号を間欠的に信号処理部26に取り込む。
【0068】
図7〜
図9は、磁界検出部21から出力された検出信号を信号処理部26に取り込む取り込みタイミングを説明するための図である。ここで、カプセル型内視鏡10から発生する交番磁界に応じて磁界検出部21から出力される検出信号に対し、信号処理部26が非同期に検出信号を取り込むと、A/D変換部263やFFT処理部282aは、各々が処理対象とする検出信号の区間を検知することができなくなってしまう。
【0069】
そこで、実施の形態1においては、例えば
図7に示すように、信号処理部26において、所定の周期T
1+T
2で所定期間T
1の信号取り込み動作を実行することとし、交番磁界の発生期間τ
1内に少なくとも2回の取り込み期間T
1が含まれるように、交番磁界の発生期間τ
1、取り込み期間T
1、及び取り込み間隔T
2を設定する。即ち、τ
1≧2×T
1+T
2となるようにする。このように設定することにより、交番磁界が発生する前(磁界検出部21から検出信号が出力される前)に、信号処理部26が信号の取り込みを開始したとしても(例えば、タイミングt
1)、その次の取り込みタイミング(例えば、タイミングt
2)は必ず交番磁界の発生期間τ
1に含まれることになるので、確実な信号取り込みを行うことができる。
【0070】
或いは、
図8に示すように、交番磁界の発生開始をトリガとして、信号処理部26が検出信号の取り込みを開始しても良い。即ち、磁界検出部21における磁界の検出強度が一定期間、所定値以下である状態が続いた後、所定値を超えた際に、信号処理部26は検出信号の取り込みを開始する。その後、検出強度が所定値を下回るか、又は所定値を下回った期間が所定期間以上となった場合に、信号処理部26は、検出信号の取り込みを停止する。或いは、検出信号の取り込みを開始してから予め設定された所定期間の経過後に取り込みを停止しても良い。この場合の所定期間は、予め設定された交番磁界の発生期間τ
0よりも短い期間とすれば良い。
【0071】
なお、この場合、交番磁界の発生開始から信号処理部26による検出信号の取り込み開始までに、タイムラグT
lagが生じる。そこで、磁界検出部21から出力される検出信号の全てを一時的に記憶するメモリを別途設け、信号処理部26が検出信号の取り込みを開始した後、タイムラグT
lagに対応する検出信号をメモリから遡って取得するようにしても良い。
【0072】
また、カプセル型内視鏡10側において、位置検出用の交番磁界に先立ち、特定のパターンで変化する交番磁界をトリガ信号として発生させても良い。例えば、
図9に示すように、2つのピークを有するトリガ信号を発生させる場合、磁界検出部21が当該2つのピークを検出した際に、信号処理部26は検出信号の取り込みを開始する。なお、トリガ信号のパターンは、位置検出用の交番磁界と同じ周波数の短期間のパターンであっても良いし、位置検出用の交番磁界とは異なる周波数で所定期間続くパターンであっても良い。また、トリガとなる信号の振幅を期間T
1での信号の振幅よりも小さくしてもよい。その後、検出強度が所定値を下回るか、又は所定値を下回った期間が所定期間以上となった場合に、信号処理部26は、検出信号の取り込みを停止する。或いは、検出信号の取り込みを開始してから予め設定された所定期間の経過後に取り込みを停止しても良い。この場合においても、所定期間は予め設定された交番磁界の発生期間よりも短い期間とすれば良い。
【0073】
なお、信号処理部26は、交番磁界の発生期間以外の期間(即ち、検出強度が所定値を下回る期間)における検出信号も取り込み、当該期間における検出信号の信号値をゼロに置換しても良い。この方法によっても、信号処理部26及び後段の位置情報生成部282において、交番磁界の発生期間における検出信号のみに基づく処理を実行することができる。
【0074】
続くステップS4において、信号処理部26は、磁界検出部21から取り込んだ検出信号に対して所定の信号処理、即ち、フィルタ部261による波形整形、増幅器262による増幅、及びA/D変換部263によるA/D変換を施すことにより、ディジタル変換された検出データを生成する。
【0075】
続くステップS5において、位置情報生成部282は、信号処理部26から出力された検出データを用いて、カプセル型内視鏡10の位置情報を生成する。より詳細には、まず、FFT処理部282aが検出データに対してFFT処理を施すことにより、交番磁界の強度及び位相を表す磁界情報を生成する。続いて、位置算出部282bは、該磁界情報に基づき、複数の受信コイル21aからカプセル型内視鏡10までの距離をそれぞれ推定し、これらの距離からカプセル型内視鏡10の位置を算出する。なお、FFT処理部282aが抽出した磁界情報に対し、さらにノイズカット等の処理を施した上で、該磁界情報を位置算出部282bに入力しても良い。
【0076】
ここで、
図10は、FFT処理部282aにおいて、FFT処理に先立って行われるFFT窓フィルタ処理を説明するための図である。実施の形態1においては、カプセル型内視鏡10から交番磁界を間欠的に発生させるため、交番磁界が連続的である場合と比較して、検出データにおける周波数分布が広がってしまう。従って、交番磁界を正しく検出するためには、受信帯域幅も相応に広げる必要があるが、逆にノイズの増加にもつながってしまう。
【0077】
このような場合、一般的には、包絡線を復元するため、交番磁界の発生周期T
0のうち、周波数F
0の交番磁界が発生する期間τ
1に対応する帯域(−1/τ
1)〜(+1/τ
1)、即ち、2/τ
1を最小限の必要帯域として通過させるフィルタが使用される。なお、帯域を完全にカットできるフィルタは存在しないので、実際には、ロールオフフィルタが使用される。
【0078】
しかしながら、カプセル型内視鏡10の位置検出のためには、包絡線の情報ではなく、搬送波成分の振幅を正確に検出することが要求されるため、むしろ、包絡線成分を排除した方が信号処理の効率を上げることができる。そこで、実施の形態1においては、FFT窓フィルタとして、周波数F
0を中心とし、帯域幅2/τ
1よりも狭い帯域を通過させるフィルタを用いる。
【0079】
図11(a)は、FFT窓フィルタの一例である窓関数(ハミングウィンドウ)の特性を示すグラフであり、
図11(b)は、FFT窓フィルタ処理後の信号に対するFFT処理により抽出された周波数スペクトルを示すグラフである。なお、
図11(b)の横軸においては、中心周波数F
0の座標を基準(=0)としている。
【0080】
搬送波成分の振幅を検出する際には、基本的に、交番磁界の周波数F
0の信号を取得すれば良いので、サンプリング周波数を周波数F
0に対して設定する。具体例として、サンプリング定理に倣って、サンプリング周波数を2F
0とすると、サンプル長はN/2F
0(Nは整数)となる。そして、検出データの取り込み開始の後、N=1.0の時点で取り込みをやめるようにすれば、周波数F
0の成分を効率よく取得することができる。即ち、サンプル長N/2F
0を駆動期間τ
1相当に設定すれば良い。なお、
図11(a)に示すハミングウィンドウを用いた場合、
図11(b)に示す周波数スペクトルでは、振幅−3dBにおける帯域幅は1.3/τ
1となる。
【0081】
なお、FFT窓は、本来は、非周期信号を無理やり切り取ったFFT解析を行うことによって生じる波形の不連続性に起因するスペクトルリークと呼ばれる誤検出を防ぐために用いられる。しかしながら、FFT窓は、入力信号の始まりと終わりをゼロにし、その間をなだらかにつなぐ時間波形にもなるため、
図11(a)に示すハミングウィンドウの他にも、間欠的な波形のうち、検出データにおける立ち上がり及び立ち下りの矩形部分の周波数情報を意図的に削除できるものであれば使用可能である。
【0082】
このようなFFT窓フィルタ処理を行うことにより、FFT処理によって必要な信号のみを無駄なく取り出すことができる。なお、このように帯域制限を行うフィルタ処理は、FFT処理の前段に限らず、信号処理部26において行っても良い。或いは、複数のブロックにおける合成処理によって行っても良い。また、
図10においては、駆動期間τ
1が駆動停止期間τ
2よりも短い場合について説明したが、反対に、駆動停止期間τ
2の方を短くしても良い。この場合、上記説明において、τ
1とτ
2とを読み替えれば良い。
【0083】
続くステップS6において、制御部28は、位置情報生成部282により生成されたカプセル型内視鏡10の位置情報を記憶部27に記憶させる。その後、カプセル型医療システム1の動作は終了する。
【0084】
以上説明したように、実施の形態1によれば、カプセル型内視鏡10において、送信コイル15aから交番磁界を間欠的に発生させるので、位置検出装置20におけるカプセル型内視鏡10の位置検出精度を低下させることなく、電源部(電池)140の電力消費を抑えることができる。従って、カプセル型内視鏡10の動作時間を延ばすことが可能となる。また、送信コイル15aを駆動させるための磁界を外部から印加する必要もなくなるので、カプセル型医療システム1の大型化を防ぐことができる。
【0085】
また、実施の形態1によれば、位置検出装置20は、カプセル型内視鏡10から間欠的に発生する交番磁界に基づく検出信号のうち、交番磁界の発生時期に対応する期間の検出信号のみに基づいてカプセル型内視鏡10の位置算出を行うので、信号処理部26及び位置情報生成部282における処理量をトータルで低減し、処理の効率を向上させると共に、消費電力を抑制することが可能となる。
【0086】
(変形例1)
次に、実施の形態1の変形例1について説明する。
カプセル型内視鏡10において、送信コイル15aの駆動周期T
0を撮像部113及び送信部130の動作と同期させても良い。より詳細には、
図12に示すように、駆動周期T
0を撮像部113による撮像周期及び送信部130による画像データの送信周期と等しくし、撮像及び画像データの送信を行っている間は、送信コイル15aを駆動させないこととする。この場合、カプセル型内視鏡10における最大消費電力を抑制することができ、一般的な電池のように瞬間最大消費電流に制限があるデバイスにより電力を供給する場合であっても、カプセル型内視鏡10の各部に効率的に電力を供給することが可能となる。
【0087】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
上記実施の形態1においては、カプセル型内視鏡10から交番磁界を間欠的に発生し、位置検出装置20において、交番磁界の検出信号のうち、交番磁界がオンの期間における検出信号を用いてカプセル型内視鏡10の位置算出処理を行った。ところが、カプセル型内視鏡10と位置検出装置20とは互いに別体であり、共通のクロックで制御することができない。このため、送信コイル15aの駆動タイミング(交番磁界の発生タイミング)と位置算出処理の完了タイミングとの遅延時間が、そのときどきで変化してしまう場合がある。例えば、
図13に示すように、交番磁界の発生周期T
0と交番磁界の検出周期T
DTCとが異なる場合、位置算出の開始タイミングと磁界発生期間の終点との差が累積し、遅延時間T
DLが変化してしまう。なお、実施の形態2においては、交番磁界の1回の検出周期T
DTCの開始後、交番磁界の発生がオンとなってから(既に発生している場合には検出周期T
DTCの開始時から)、オフとなるまでの期間ΔTの中間時刻t
MIDにおける磁界情報に基づいて位置算出を行うこととし、中間時刻t
MIDとその後で開始された位置算出処理が終了する時刻との差を遅延時間T
DLとしている。
【0088】
しかしながら、位置検出装置20において算出したカプセル型内視鏡10の位置情報をフィードバックしてカプセル型内視鏡10の位置制御に用いる場合、このような遅延時間T
DLは一定で、且つ短い方が好ましい。また、カプセル型内視鏡10においては、撮像時刻に対する交番磁界の発生時刻の遅延も生じているため、やはり、位置検出装置20側における遅延時間T
DLにばらつきが生じたり、遅延時間T
DLが長くなったりすると、体内画像の撮像時におけるカプセル型内視鏡10の位置を正確に把握することができなくなってしまう。
【0089】
そこで、実施の形態2においては、磁界検出部21が出力した検出信号の信号値をもとに、交番磁界の発生タイミングと同期して検出信号の取り込みを行うことにより、遅延時間T
DLの一定化及び短縮化を図っている。
【0090】
図14は、実施の形態2に係る位置検出装置が備える信号処理部の構成を示すブロック図である。実施の形態2に係る位置検出装置は、
図1に示す位置検出装置本体22の信号処理部26の代わりに、
図14に示す信号処理部26−2を備える。なお、実施の形態2に係るカプセル型医療システム全体の構成、及びカプセル型内視鏡10の構成は、実施の形態1と同様である。
【0091】
信号処理部26−2は、フィルタ部261、増幅器262、及びA/D変換部263に加え、ディジタル変換された検出データを一時的に記憶するメモリ264、及び検出データに基づいて交番磁界の間欠タイミングを検出する間欠タイミング検出部265を備える。実施の形態2において、FFT処理部282aは、間欠タイミング検出部265の検出結果に基づき、交番磁界の発生タイミングと同期して、検出データから交番磁界の振幅及び位相等の磁界情報を抽出する。また、位置情報生成部282(
図1参照)は、信号処理部26−2から出力されたデータ(磁界情報)に基づき、カプセル型内視鏡10の位置を算出する。
【0092】
次に、間欠タイミング検出部265の動作について詳しく説明する。
(1)交番磁界の立ち上がりと同期して信号処理を行う場合
間欠タイミング検出部265は、磁界検出部21のうちの1つ以上の受信コイル21aから出力される検出信号の信号値が所定の閾値以上となった場合に、交番磁界の発生を検知する。
【0093】
続いて、間欠タイミング検出部265は、
図15に示すように、交番磁界の検出信号の立ち上がりタイミングと同期して、所定の検出期間T
DTCの間に取得された検出データをメモリ264に記憶させる。FFT処理部282aは、検出期間T
DTCの経過後、この間にメモリ264に蓄積された検出データに対してFFT処理を施すことにより交番磁界の磁界情報を抽出し、位置算出部282bは、抽出された磁界情報に基づいてカプセル型内視鏡10の位置を算出する。
【0094】
この場合、FFT処理を含む位置算出開始タイミングと交番磁界の発生期間の終点との差が一定になるため、遅延時間T
DLも安定する。なお、遅延時間T
DLの長さそのものは、検出期間T
DTCの長さに依存する。
【0095】
(2)交番磁界の立ち下がりと同期して信号処理を行う場合
この場合、A/D変換部263からの出力データは、メモリ264に順次記憶される。
間欠タイミング検出部265は、磁界検出部21の全ての受信コイル21aから出力される検出信号の信号値が、所定期間、所定の閾値未満(又は、略ゼロ)となった場合に、交番磁界の発生停止を検知する。この際の判断基準となる期間は、交番磁界の発生周期の1/4以上となるように予め設定しておく。それにより、交番磁界における位相がゼロとなった際の誤検出を回避する。
【0096】
続いて、間欠タイミング検出部265は、
図16に示すように、交番磁界の検出信号の立ち下がりタイミングと同期して、所定の検出期間T
DTC分の検出データをメモリ264から遡って読み出す。FFT処理部282aは、この間にメモリ264から読み出された検出データに対してFFT処理を施すことにより交番磁界の磁界情報を抽出し、位置算出部282bは、抽出された磁界情報に基づいてカプセル型内視鏡10の位置を算出する。
【0097】
この場合、FFT処理を含む位置算出開始タイミングと交番磁界の発生期間の終点との差が一定(同時)になるため、遅延時間T
DLも安定する。また、交番磁界の検出信号の立ち下がりと同時に位置算出を開始することができるので、遅延時間T
DLは最短となる。
【0098】
なお、上記(1)及び(2)の場合において、交番磁界の検出信号の立ち上がり及び立ち下がりを判断する際の閾値は、磁界検出部21の出力信号におけるノイズレベルから決定すると良い。或いは、位置検出対象であるカプセル型内視鏡10が検出空間(磁界検出部21により磁界を検出可能な領域)に配置されていないときの磁界検出部21からの出力信号の最大値から決定しても良い。
【0099】
以上説明したように、実施の形態2によれば、交番磁界の検出信号の立ち上がり又は立ち下がりと同期して位置算出を行うので、磁界発生から位置算出処理の終了までの遅延時間T
DLを一定にすることができる。また、検出信号の立ち下がりと同期して処理を行う場合には、遅延時間T
DLを最短にすることができる。
【0100】
(変形例2−1)
次に、カプセル型内視鏡10において、送信コイル15aを間欠駆動する際のデューティ比を変化させる場合、即ち、
図17に示すように、交番磁界の発生期間T
a、T
b、T
cが互いに異なる場合について説明する。この場合、間欠タイミング検出部265は、検出信号の立ち下がりタイミングと同期して、所定の検出期間T
DTC分の検出データをメモリ264から読み出す。FFT処理部282aは、この間にメモリ264から読み出された検出データに対してFFT処理を施すことにより磁界情報を抽出し、位置算出部282bは、抽出された磁界情報に基づいてカプセル型内視鏡10の位置を算出する。
【0101】
ただし、この場合、デューティ比の変化に応じて、遅延時間T
DLが変化してしまう。そこで、
図18に示すように、間欠タイミング検出部265は、交番磁界の検出信号の立ち上がり及び立ち下がりの両方を検出して、デューティ比を算出し、各デューティ比に応じて位置算出結果の出力タイミングを遅延させることにより、遅延時間T
DLを一定にする。具体的には、FFT処理部282aから位置算出部282bへの磁界情報の出力タイミングを遅延させても良いし、位置算出部282bからの位置算出結果の出力タイミングを遅延させても良い。
【0102】
(変形例2−2)
カプセル型内視鏡10においては、送信コイル15aの間欠駆動タイミングを、撮像部113の撮像タイミングと同期させても良い。即ち、被検体2内の撮像と位置検出用の交番磁界の発生とを同時に行う。この場合、撮像部113による画像データの生成タイミングと、送信コイル15aから発生した交番磁界に基づく位置情報の算出タイミングとの遅延時間を短縮することができる。
【0103】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
カプセル型内視鏡10(
図2参照)においては、照明部111の発光素子(LED)を駆動すると、電源電圧が一時的に低下し、送信コイル15aから発生する交番磁界の出力が低下してしまう場合がある。ところが、位置検出装置20においては、所定期間内に検出された交番磁界の信号強度を平均化して用いるため、通常の出力と一時的に減少した出力との間において平均化を行うと、カプセル型内視鏡10の位置検出精度が低下するおそれがある。そこで、実施の形態3においては、カプセル型内視鏡10において電源電圧の低下が生じても、当該カプセル型内視鏡10の位置検出精度に影響を与えることがないように、電源部140から磁界発生部150への電圧の入力を制御部120が制御する。
【0104】
(制御例1)
図19は、本制御例1において用いられるカプセル型内視鏡の構成を示す模式図である。
図19に示すカプセル型内視鏡10Aは、
図2に示すカプセル型内視鏡10に対し、電源部140の電圧値を検出する電圧検出部160をさらに備える。電圧検出部160が検出した電源部140の電圧値(以下、電源電圧ともいう)は、制御部120に入力される。
【0105】
図20に示すように、LEDの発光(ON)により電源電圧(VCC)が低下し、この電源電圧が所定の閾値Th未満になった際に、制御部120は、磁界発生部150への電力供給をオフ(OFF)にする。また、電源電圧が閾値以上に回復した際に、制御部120は、磁界発生部150への電力供給をオン(ON)にする。
【0106】
それにより、位置検出装置20においては、交番磁界の発生期間内の安定した検出信号のみに基づいてカプセル型内視鏡10Aの位置算出を行うことができる。従って、カプセル型内視鏡10Aの位置を正確に検出することが可能となる。
【0107】
(制御例2)
制御部120は、
図21に示すように、LEDの発光タイミングと同期させて、磁界発生部150への電力供給のオン/オフを切り替える。即ち、LEDの発光により電源電圧が低下し始めるタイミングで、磁界発生部150への電力供給をオフにし、LEDの発光が終了して電源電圧が回復したタイミングで、磁界発生部150への電力供給をオンにする。
【0108】
この場合も、位置検出装置20においては、交番磁界の発生期間内の安定した検出信号のみに基づいてカプセル型内視鏡10Aの位置算出を行うことができ、カプセル型内視鏡10Aの位置を正確に検出することが可能となる。
【0109】
(制御例3)
図22に示すように、LEDの発光タイミングと電源電圧が低下するタイミングとは、互いに一致しているとは限らない。そこで、制御部120は、磁界発生部150への電力供給のオン/オフの切り替えを、LEDの発光タイミングと同期させると共に、電力供給オフの期間を、LEDの発光期間よりも長めに設定する。電力供給オフの期間は、LEDの発光開始後の所定期間としても良いし、LEDの発光期間及びその前後の所定期間を含めても良い。
【0110】
このように、交番磁界の出力オフの期間をLEDの発光期間よりも長めに取ることにより、位置検出装置20においては、より安定した検出信号のみに基づいて位置算出処理を実行することができる。
【0111】
(制御例4)
制御部120は、
図23に示すように、LEDの発光の立ち上がりを検出し、この立ち上がりタイミングに合わせて、磁界発生部150への電力供給をオフにする。その後、LEDの発光時間よりも長い所定時間が経過してから磁界発生部150への電力供給をオンにする。
【0112】
このように、LEDが実際に発光した期間はすべて、交番磁界の出力をオフにすることにより、位置検出装置20においては、より安定した検出信号のみに基づき、効率よく位置算出処理を実行することができる。
【0113】
(制御例5)
位置検出装置20側において、FFT処理部282aは窓関数を使用することによりFFT処理結果を最適化している。即ち、磁界発生部150が発生した交番磁界の検出信号の全てを用いて位置算出を行っているわけではない。そこで、
図24に示すように、カプセル型内視鏡10Aにおいて、交番磁界の検出信号を位置算出に使用しないタイミングでLEDを発光させても良い。言い換えると、LEDの発光タイミングの前後の所定時間では、交番磁界の検出を行わないことにする。
【0114】
そのためには、例えば、交番磁界の信号レベルをカプセル型内視鏡10Aにおいて直接検知し、該信号レベルが所定レベル以下になったとき、又は信号レベルが所定レベル以下になった時間が所定の長さ続いたときにLEDを発光させても良い。或いは、カプセル型内視鏡10Aに外部から同期信号を別途送信し、該同期信号と同期してLEDを発光させても良い。これらの場合、位置検出装置20においては、磁界出力が安定している期間内の検出信号のみを用いて位置算出を行うことができるので、正確な位置情報を取得することが可能となる。
【0115】
なお、上記制御例1〜5においては、磁界発生部150への電力供給をLEDの発光タイミングと同期させたが、撮像部113における撮像タイミングや、送信部130からの無線信号の送信タイミングと同期させても良い。この場合、撮像素子の駆動や無線信号の送信に起因する電源電圧の低下による磁界出力の減少が位置算出処理に及ぼす影響を低減することができる。
【0116】
(変形例3)
実施の形態1〜3において説明したカプセル型内視鏡10、10Aにおける送信コイル15aの配置は、撮像部113の視界を妨げることなく、且つ送信コイル15aの有効面積を大きく取ることができれば、特に限定されない。
図25は、送信コイル15aの第1の配置例を示す側面図である。
図25に示すように、送信コイル15aの中心軸の方向を筐体101の長軸に合わせ、胴部102の外周に沿って送信コイル15aを巻回しても良い。この場合、一点鎖線で示す送信コイル15aの有効面積Sを、送信コイル15aを胴部102の内周に巻回する場合よりも大きくすることができ、コイルの効率を高くすることができる。
【0117】
図26は、送信コイル15aの第2の配置例を示す側面図である。
図26に示すように、送信コイル15aの中心軸が筐体101の長軸に対して斜めになるように、胴部102の外周に送信コイル15aを巻回させても良い。この場合、送信コイル15aの有効面積Sをさらに大きくすることができる。
【0118】
図27は、送信コイル15aの第3の配置例を示す側面図である。
図28は、送信コイル15aの第4の配置例を示す側面図である。送信コイル15aの中心軸が筐体101の長軸に対して斜めになるように送信コイル15aを巻回する場合、送信コイル15aが胴部102の両端のドーム部103、104にかかっても良い。この際、当該カプセル型内視鏡10、10Aの両端に撮像部113がそれぞれ設けられている場合、
図27に示すように、撮像部113の撮像視野vを妨げないように、ドーム部103、104の中心部近傍を避けて送信コイル15aを巻回すると良い。一方、カプセル型内視鏡の一方の端部(例えばドーム部103側)のみに撮像部113が設けられている場合、
図28に示すように、撮像部が配置されていないドーム部104側においては、ドーム部104の中心部を送信コイル15aで覆ってもかまわない。
【0119】
図29(a)は、送信コイル15aの第5の配置例を示す側面図であり、
図29(b)は、同斜視図である。ここで、送信コイル15aは、必ずしも同一平面上において巻回する必要はない。例えば、
図29に示すように、送信コイル15aを、胴部102の一端において外周に沿って半周だけ巻回させ、胴部102の中心軸方向に沿って他端まで延ばし、該他端において胴部102の上記一端側とは異なる側の外周に沿って半周だけ巻回させた後、胴部102の中心軸方向に沿って胴部102の一端まで延ばすといった巻回方法も可能である。この場合、送信コイル15aの有効面積Sをさらに大きくすることができる。
【0120】
図30(a)は、送信コイル15aの第6の配置例を示す側面図であり、
図30(b)は、同斜視図である。この配置例においては、第5の配置例と異なり、胴部102の両端において、送信コイル15aを同じ側に半周だけ巻回させている。この場合も、送信コイル15aの有効面積Sを広く取ることが可能となる。
【0121】
以上説明した実施の形態及び変形例は、本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、各実施の形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を生成することができる。本発明は、仕様等に応じて種々変形することが可能であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施の形態が可能であることは、上記記載から自明である。
【0122】
(付記1)
被検体内に導入されて使用され、位置検出用の磁界を発生するカプセル型医療装置と、前記磁界に基づいて前記カプセル型医療装置の位置を検出する位置検出装置とを備えるカプセル型医療システムにおいて用いられるカプセル型医療装置であって、
電池と、
前記電池から電力の供給を受けて磁界を発生する磁界発生手段と、
前記電池から前記磁界発生手段への電力供給を制御する制御手段と、
前記被検体内を照明する照明手段及び該照明手段により照明された前記被検体内を撮像する撮像手段とを有し、前記電池から電力の供給を受けて前記被検体内に関する情報を取得する情報取得手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記照明手段の動作に応じて、前記電池から前記磁界発生手段に間欠的に電力供給がなされるように制御を行う、
ことを特徴とするカプセル型医療装置。
【0123】
(付記2)
被検体内に導入されて使用され、位置検出用の磁界を発生するカプセル型医療装置と、前記磁界に基づいて前記カプセル型医療装置の位置を検出する位置検出装置とを備えるカプセル型医療システムにおいて用いられるカプセル型医療装置であって、
電池と、
前記電池から電力の供給を受けて磁界を発生する磁界発生手段と、
前記電池から前記磁界発生手段への電力供給を制御する制御手段と、
前記被検体内を撮像して画像データを生成する撮像手段を有し、前記電池から電力の供給を受けて前記被検体内に関する情報を取得する情報取得手段と、
前記撮像手段によって生成された画像データを無線送信する送信手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記撮像手段と前記送信手段との少なくとも一方の動作に応じて、前記電池から前記磁界発生手段に間欠的に電力供給がなされるように制御を行う、
ことを特徴とするカプセル型医療装置。
【0124】
(付記3)
被検体内に導入されて使用され、位置検出用の磁界を発生するカプセル型医療装置であって、
電池と、
前記電池から電力の供給を受けて磁界を発生する磁界発生手段と、
前記電池から前記磁界発生手段への電力供給を制御する制御手段と、
前記電池から電力の供給を受けて前記被検体内に関する情報を取得する情報取得手段と、
を備えるカプセル型医療装置と、
前記磁界に基づいて前記カプセル型医療装置の位置を検出する位置検出装置であって、
前記磁界発生手段が発生した磁界を検出して、検出信号を出力する磁界検出手段と、
前記磁界検出手段が出力した前記検出信号に基づいて、前記カプセル型医療装置の位置を算出するための処理を実行する処理手段と、
を有する位置検出装置と、
を備え、
前記制御手段は、前記情報取得手段の動作と同期して、前記電池から前記磁界発生手段に間欠的に電力供給がなされるように制御を行う、
ことを特徴とするカプセル型医療システム。
【0125】
(付記4)
前記処理手段は、前記磁界検出手段により所定値以上の強度の磁界が検出された場合に、前記処理を実行する、ことを特徴とする付記3に記載のカプセル型医療システム。
【0126】
(付記5)
被検体内に導入されて使用されるカプセル型医療装置であって、
電池と、
前記電池から電力の供給を受けて磁界を発生する磁界発生手段と、
前記電池から前記磁界発生手段への電力供給を制御する制御手段と、
を有するカプセル型医療装置と、
前記カプセル型医療装置の位置を検出する位置検出装置であって、
前記磁界発生手段が発生した磁界を検出して、検出信号を出力する磁界検出手段と、
前記磁界検出手段が出力した前記検出信号に基づいて、前記カプセル型医療装置の位置を算出するための処理を実行する処理手段と、
を有する位置検出装置と、
を備え、
前記制御手段は、前記電池から前記磁界発生手段に間欠的に電力供給がなされるように制御を行い、
前記処理手段は、前記磁界検出手段が所定の強度を超える磁界を検出した際に、前記処理を開始し、前記磁界検出手段が出力した検出信号のうち、強度が所定値以上である検出信号を用いて前記処理を実行する、
ことを特徴とするカプセル型医療システム。
【0127】
(付記6)
被検体内に導入されて使用されるカプセル型医療装置であって、
前記カプセル型医療装置は、
電池と、
前記電池から電力の供給を受けて磁界を発生する磁界発生手段と、
前記電池から前記磁界発生手段への電力供給を制御する制御手段と、
前記被検体内に関する情報を取得する情報取得手段と、
を有するカプセル型医療装置と、
前記カプセル型医療装置の位置を検出する位置検出装置であって、
前記磁界発生手段が発生した磁界を検出して、検出信号を出力する磁界検出手段と、
前記磁界検出手段が出力した前記検出信号に基づいて、前記カプセル型医療装置の位置を算出するための処理を実行する処理手段と、
を有する位置検出装置と、
を備え、
前記制御手段は、前記情報取得手段が動作していない間に、前記電池から前記磁界発生手段に電力を間欠的に供給させる、
ことを特徴とするカプセル型医療システム。
【0128】
(付記7)
被検体内に導入されて使用されるカプセル型医療装置であって、
前記カプセル型医療装置は、
電池と、
前記電池から電力の供給を受けて磁界を発生する磁界発生手段と、
前記電池から前記磁界発生手段への電力供給を制御する制御手段と、
前記被検体内に関する情報を取得する情報取得手段と、
を有するカプセル型医療装置と、
前記カプセル型医療装置の位置を検出する位置検出装置であって、
前記磁界発生手段が発生した磁界を検出して、検出信号を出力する磁界検出手段と、
前記磁界検出手段が出力した前記検出信号に基づいて、前記カプセル型医療装置の位置を算出するための処理を実行する処理手段と、
を有する位置検出装置と、
を備え、
前記制御手段は、前記情報取得手段が動作している間に、前記電池から前記磁界発生手段に電力を間欠的に供給させる、
ことを特徴とするカプセル型医療システム。
【0129】
(付記8)
前記情報取得手段は、前記被検体内を撮像して画像データを生成する撮像手段を含み、
前記カプセル型医療装置は、前記撮像手段が生成した画像データを無線送信する送信手段をさらに有することを特徴とする付記6又は7に記載のカプセル型医療システム。
【0130】
(付記9)
被検体内に導入されて使用されるカプセル型医療装置であって、
前記カプセル型医療装置は、
電池と、
前記電池から電力の供給を受けて交番磁界を発生する磁界発生手段と、
前記電池から前記磁界発生手段への電力供給を制御する制御手段と、
を有するカプセル型医療装置と、
前記カプセル型医療装置の位置を検出する位置検出装置であって、
前記磁界発生手段が発生した交番磁界を検出して、検出信号を出力する磁界検出手段と、
前記磁界検出手段が出力した前記検出信号に基づいて、前記カプセル型医療装置の位置を算出するための処理を実行する処理手段と、
を有する位置検出装置と、
を備え、
前記制御手段は、前記電池から前記磁界発生手段に間欠的に電力供給がなされるように制御を行い、
前記処理手段は、前記検出信号に対し、前記交番磁界の中心周波数を含む所定の帯域幅を有する周波数帯域の信号を通過させるフィルタ手段を含む、
ことを特徴とするカプセル型医療システム。
【0131】
(付記10)
前記処理手段は、前記検出信号に対して高速フーリエ変換処理を施すFFT処理手段を含み、
前記フィルタ手段は前記FFT処理手段の前段に設けられた窓関数フィルタであり、
前記交番磁界の1周期あたりの発生期間をτ
1とするとき、前記窓関数フィルタにおける窓関数の周波数帯域は2/τ
1よりも狭いことを特徴とする付記9に記載のカプセル型医療システム。
【0132】
(付記11)
被検体内に導入されて使用され、内蔵する電池から電力供給を受けて磁界を発生するカプセル型医療装置の位置を検出する位置検出装置であって、
前記カプセル型医療装置は前記磁界を間欠的に発生し、
前記カプセル型医療装置から発生した磁界を検出して、検出信号を出力する磁界検出手段と、
前記磁界検出手段が出力した前記検出信号に基づいて、前記カプセル型医療装置の位置を算出するための処理を実行する処理手段と、
を備え、
前記処理手段は、間欠的に発生する前記磁界に応じた前記検出信号の立ち上がりタイミングと立ち下がりタイミングとの少なくとも一方を検出して、前記処理を開始する、
ことを特徴とする位置検出装置。
【0133】
(付記12)
前記処理手段は、前記検出信号の立ち上がりタイミングを検出した後に続く所定期間内に前記磁界検出手段から出力された検出信号を用いて前記処理を実行する、ことを特徴とする付記11に記載の位置検出装置。
【0134】
(付記13)
前記磁界検出手段から出力された検出信号を記憶する記憶手段をさらに備え、
前記処理手段は、前記検出信号の立ち下がりタイミングを検出した後、該立ち下がりタイミングから所定期間分だけ前の期間の検出信号を前記記憶手段から遡って取得し、取得した検出信号を用いて前記処理を実行する、
ことを特徴とする付記6に記載の位置検出装置。