(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5792408
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】水準器
(51)【国際特許分類】
G01C 9/28 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
G01C9/28
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-51645(P2015-51645)
(22)【出願日】2015年3月16日
【審査請求日】2015年4月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113779
【氏名又は名称】マツ六株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】山根 佑介
(72)【発明者】
【氏名】森 勇信
【審査官】
▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−133742(JP,A)
【文献】
米国特許第07669342(US,B1)
【文献】
米国特許第05581900(US,A)
【文献】
米国特許第07555842(US,B1)
【文献】
特表2001−522452(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3171229(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 9/24−9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向の傾きを検出する気泡管及びこれと直交する第2の方向の傾きを検出する気泡管を配設した器体本体と、該器体本体を断面が円形をした部材に装着するための固定部材とからなり、該固定部材が、器体本体に対する第1の嵌着部と、断面が円形をした部材に対する第2の嵌着部とを備え、器体本体に着脱可能にされてなり、かつ、固定部材の第2の嵌着部の開閉度が、接続部を介して、第1の嵌着部の開閉度に逆作用するようにしてなることを特徴とする水準器。
【請求項2】
異なる大きさの第2の嵌着部を備えた2種以上の固定部材を、器体本体の複数箇所に形成した取付部に、選択的に取り付けるようにしてなることを特徴とする請求項1記載の水準器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺りや手摺りの支持部材等の棒状やパイプ状の断面が円形をした部材に装着して使用する水準器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築工事等において、構築部材等の検出対象の水平度や鉛直度を検出する際に使用される水準器として、器体本体に、密閉された小容器にわずかに気泡を存して液体を封入した構造の第1の方向の傾きを検出する気泡管と、これと直交する第2の方向の傾きを検出する気泡管とを配設したものが汎用されている(例えば、特許文献1参照。)
。
【0003】
ところで、上記従来の水準器は、器体本体に構築部材に対する装着手段を備えていないため、構築部材上に水準器を載置して使用するか、水準器を手に持って構築部材等の検出対象に沿わせて使用する必要があり、検出精度や操作性の点で問題があった。
【0004】
この問題点を解消するものとして、器体本体をクリップ構造とすることにより、棒状やパイプ状の断面が円形をした部材に装着して使用することができるようにした水準器が提案されている(特許文献2参照。)
。
この水準器は、水準器を載置して使用できない断面が円形をした部材に装着して使用することができる利点を有する反面、気泡管の配設箇所に制約があるため、気泡管の視認を行いにくく、また、水準器を断面が円形をした部材に着脱する際にはクリップをその都度挟持操作する必要があり、特に、太さが異なる部材を検出対象とする場合には、検出精度や操作性が悪くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−201057号公報
【特許文献2】特開2006−64492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の水準器の有する問題点に鑑み、水準器を載置して使用できない断面が円形をした部材に装着して使用することができるとともに、気泡管の配設箇所に制約がなく、また、検出精度や操作性のよい水準器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の水準器は、第1の方向の傾きを検出する気泡管及びこれと直交する第2の方向の傾きを検出する気泡管を配設した器体本体と、該器体本体を断面が円形をした部材に装着するための固定部材とからなり、該固定部材が、器体本体に対する第1の嵌着部と、断面が円形をした部材に対する第2の嵌着部とを備え、器体本体に着脱可能にされてな
り、かつ、固定部材の第2の嵌着部の開閉度が、接続部を介して、第1の嵌着部の開閉度に逆作用するようにしてなることを特徴とする。
【0008】
この場合において、異なる大きさの第2の嵌着部を備えた2種以上の固定部材を、器体本体の複数箇所に形成した取付部に、選択的に取り付けるようにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水準器によれば、第1の方向の傾きを検出する気泡管及びこれと直交する第2の方向の傾きを検出する気泡管を配設した器体本体を、断面が円形をした部材に装着するための固定部材が、器体本体に対する第1の嵌着部と、断面が円形をした部材に対する第2の嵌着部とを備え、器体本体に着脱可能にされてなるようにすることにより、水準器を載置して使用できない断面が円形をした部材に装着して使用することができるとともに、気泡管を配設する器体本体が固定部材と独立しているため、気泡管の配設箇所に制約がなく、また、押し操作するだけで、固定部材の第2の嵌着部を介して、水準器の器体本体を断面が円形をした部材に正確かつ簡易に装着し、引き操作するだけで、離脱させることができ、検出精度や操作性のよい水準器を提供することができる。
【0010】
そして、固定部材の第2の嵌着部の開閉度が、接続部を介して、第1の嵌着部の開閉度に逆作用するようにすることにより、第2の嵌着部を手で持って閉操作することによって、第1の嵌着部を開かせ、器体本体に対する嵌着を容易に行うことができるようにするとともに、第2の嵌着部を断面が円形をした部材に装着することによって、第1の嵌着部を閉じさせ、器体本体に対する嵌着状態を確固にして、検出精度を向上することができる。
【0011】
また、異なる大きさの第2の嵌着部を備えた2種以上の固定部材を、器体本体の複数箇所に形成した取付部に、選択的に取り付けるようにすることにより、1つの水準器で、太さが異なる部材を検出対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の水準器の一実施例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図、(d)は右側面から見た断面図、(e)は斜視図、(f)は固定部材の斜視図である。
【
図2】同水準器を示し、(a)は断面が円形をした部材の水平度を検出している状態を示す説明図、(b)は同鉛直度を検出している状態を示す説明図、(c)は収納状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の水準器の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜
図2に、本発明の水準器の一実施例を示す。
この水準器は、第1の方向の傾きを検出する気泡管2及びこれと直交する第2の方向の傾きを検出する気泡管3を配設した器体本体1と、この器体本体1を、手摺りW1や手摺りの支持部材W2等の棒状やパイプ状の断面が円形をした部材W1、W2に装着するための固定部材4A、4Bとからなり、固定部材4A、4Bが、器体本体1に対する第1の嵌着部41と、断面が円形をした部材W1、W2に対する第2の嵌着部42とを備え、器体本体1に着脱可能にされてなるようにする。
【0015】
器体本体1は、合成樹脂製のもので、第1の方向、具体的には、例えば、手摺りW1の水平方向の傾きを検出する気泡管2と、これと直交する第2の方向、具体的には、例えば、手摺りの支持部材W2の鉛直方向の傾きを検出する気泡管3とを嵌め込んで配設するようにした本体部11と、この本体部11に嵌着させることによって水平方向の傾きを検出する気泡管2を背面から固定する固定片12とからなる。
さらに、器体本体1の本体部11には、固定部材4A、4Bの第1の嵌着部41の固定部として、この第1の嵌着部41に形成された矩形状の凸部44が入り込む矩形状の凹部からなる取付部13、14、15を複数箇所(本実施例においては、3箇所。ここで、取付部13は、検出位置用のもので、取付部14、15は、収納位置用のものである。)に形成するようにしている。
また、器体本体1の本体部11には、紐等を取り付けるための小孔16を形成するようにしている。
【0016】
固定部材4A、4Bは、合成樹脂製のもので、手摺りW1や手摺りの支持部材W2等の棒状やパイプ状の断面が円形をした部材W1、W2に装着するためのもので、器体本体1に着脱可能にするために、器体本体1に対する第1の嵌着部41と、断面が円形をした部材W1、W2に対する第2の嵌着部42とを備えるようにしている。
ここで、器体本体1に対する第1の嵌着部41は、接続部43を介して、略コ字状をし、内面の対向する位置に矩形状の凸部44が形成され、器体本体1に着脱可能とされている。
また、断面が円形をした部材W1、W2に対する第2の嵌着部42は、接続部43を介して、先端がやや開いて湾曲した略U字状をし、接続部43の内面は、断面が円形をした部材W1、W2に沿うように凹ませて形成されている。
【0017】
そして、固定部材4A、4Bは、第2の嵌着部42の開閉度が、接続部43を介して、第1の嵌着部41の開閉度に逆作用、すなわち、第2の嵌着部42の開閉度が小さくなると、第1の嵌着部41の開閉度が大きくなり、逆に、第2の嵌着部42の開閉度が大きくなると、第1の嵌着部41の開閉度が小さくなるようにしている。
これにより、第2の嵌着部42を手で持って閉操作することによって、第1の嵌着部41を開かせ、器体本体1の取付部13、14、15に対する嵌着を容易に行うことができるようにするとともに、第2の嵌着部42を断面が円形をした部材W1、W2に装着することによって、第1の嵌着部41を閉じさせ、器体本体1に対する嵌着状態を確固にして、検出精度を向上することができるようにしている。
【0018】
また、固定部材4A、4Bは、異なる大きさの第2の嵌着部42を備えた2種以上の固定部材4A、4Bを、器体本体1の複数箇所に形成した取付部13、14、15に、選択的に取り付けるようにしている。
限定されるものではないが、本実施例においては、固定部材4Aは、φ32〜35の直径の断面が円形をした部材W1、W2に、固定部材4Bは、φ42〜45の直径の断面が円形をした部材W1、W2に、それぞれ適合した第2の嵌着部42の寸法(外側の幅方向の寸法が、35mmと46mm。)にそれぞれ形成するようにしている。
そして、固定部材4A、4Bには、上記適合した寸法の表示を、表示片45にするとともに、表示片45には、紐等を取り付けるための小孔46を形成するようにしている。
これにより、1つの水準器を用いて、太さが異なる部材W1、W2を検出対象とすることができる。
【0019】
次に、この水準器の使用方法について説明する。
この水準器は、断面が円形をした部材W1、W2の太さに適合した固定部材4A、4Bを選択し、一方の使用する固定部材4A、4Bを、第1の嵌着部41を介して、器体本体1の取付部13に取り付け、
図2(a)に示すように、断面が円形をした部材W1に第2の嵌着部42を介して装着して、当該部材W1の水平度を検出したり、
図2(b)に示すように、断面が円形をした部材W2に第2の嵌着部42を介して装着して、当該部材W2の鉛直度を検出するようにする。
このとき、他方の使用しない固定部材4A、4Bは、第1の嵌着部41を介して、器体本体1の取付部15(又は取付部14)に取り付けておくことができる。
【0020】
この水準器は、水準器を載置して使用できない断面が円形をした部材W1、W2に装着して使用することができるとともに、気泡管2、3を配設する器体本体1が固定部材4A、4Bと独立しているため、気泡管2、3の配設箇所に制約がなく、また、押し操作するだけで、固定部材4A、4Bの先端がやや開いた略U字状をした第2の嵌着部42を介して、水準器の器体本体1を断面が円形をした部材W1、W2に正確かつ簡易に装着し、引き操作するだけで、離脱させることができ、検出精度や操作性のよい水準器を提供することができる。
【0021】
また、水準器を使用しないときは、
図2(c)に示すように、固定部材4A、4Bを、第1の嵌着部41を介して、器体本体1の取付部14、15にそれぞれ取り付けることにより、コンパクトに収納することができる。
【0022】
以上、本発明の水準器について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の水準器は、水準器を載置して使用できない断面が円形をした部材に装着して使用することができるとともに、気泡管の配設箇所に制約がなく、また、検出精度や操作性がよいという特性を有していることから、手摺りや手摺りの支持部材等の棒状やパイプ状の断面が円形をした部材の水平度や鉛直度を検出する際に使用される水準器の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 器体本体
11 本体部
12 固定片
13 取付部(検出位置用)
14 取付部(収納位置用)
15 取付部(収納位置用)
16 小孔
2 気泡管
3 気泡管
4A、4B 固定部材
41 第1の嵌着部
42 第2の嵌着部
43 接続部
44 凸部
45 表示片
46 小孔
W1 手摺り(断面が円形をした部材)
W2 手摺りの支持部材(断面が円形をした部材)
【要約】 (修正有)
【課題】水準器を載置して使用できない断面が円形をした部材に装着して使用することができるとともに、気泡管の配設箇所に制約がなく、また、検出精度や操作性のよい水準器を提供する。
【解決手段】第1の方向の傾きを検出する気泡管2及びこれと直交する第2の方向の傾きを検出する気泡管3を配設した器体本体1と、この器体本体1を断面が円形をした部材W1、W2に装着するための固定部材4Aとからなり、固定部材4Aが、器体本体1に対する第1の嵌着部と、断面が円形をした部材W1、W2に対する第2の嵌着部とを備え、器体本体1に着脱可能にされてなる水準器。
【選択図】
図2