(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の医療機器として、内視鏡本体内に起上台ユニットを内装する内視鏡装置の全体構成例を示す図である。
図2には、内視鏡本体に内装された起上台ユニットの概念的に構成を示し、
図3A、3Bは、挿入部の先端部分の外観構成を示し、
図3Cは、挿入部の先端部分の起上台が起き上がった時の外観構成を示している。
【0011】
本実施形態の内視鏡装置は、大別して、内視鏡本体1と、移動可能なトロリー2に搭載された種々の外部装置となる内視鏡用機器7とで構成される。以下の説明については、軟性鏡を例として説明するが、硬性鏡においても同様に搭載することができる。
【0012】
内視鏡本体1は、観察対象となる体腔内に挿入される挿入部(可撓管)4と、挿入部4の先端側に設けられた湾曲部5及び後述する先端部6と、基端側に設けられた湾曲部5を湾曲動作させる内視鏡操作部3と、で構成される。以下の説明において、湾曲部5側を先端側とし、操作部3側を基端側と称する。
【0013】
内視鏡用機器7は、観察対象部位に照射する照明光を生成する光源装置8と、撮像された映像信号に所定の画像処理を施すビデオプロセッサ9と、映像信号を観察画像として表示するモニタ10と、入力部であるキーボード11等を有している。
さらに、トロリー2には、洗浄等に用いられる液体(洗浄液:例えば、生理食塩水等の水を主とする液体)を貯留するボトル12が着脱可能に取り付けられている。また、内視鏡用機器7には、送気ポンプユニット(図示せず)が含まれている。さらに、トロリー2の棚には、体腔内で後述する洗浄ノズルから体腔内に噴出された液体や気体及び粘液等を吸引する吸引ユニット13が収容されている。
【0014】
内視鏡本体1と光源装置8は、ユニバーサルケーブル14を介してコネクタ15で接続されている。ユニバーサルケーブル14は、光ファイバーからなるライトガイドの他に、映像信号等を伝送する複数の信号線、チューブからなる気体及び液体の供給路(送気送液チャンネル)と排出路を含んでいる。ユニバーサルケーブル14の内視鏡用機器7側に接続するコネクタ15は、信号線とチューブとライトガイドに分岐して、それぞれの機器に接続している。内視鏡操作部3には、湾曲部5を挿入方向に対して互いに直行する、例えば、上下及び左右方向に湾曲させるための湾曲操作部16と、送気送水ボタン17aと、吸引操作ボタン17bと、後述する起上台操作レバー31と、が設けられている。挿入部4の基端側で内視鏡操作部3との間には、チャンネル開口部6aから挿入部4内部を貫通する鉗子チャンネルの挿入口部18が配設されている。
【0015】
内視鏡本体1の先端部6は、硬質部材により円筒形状に形成され、
図3Aに示すように、先端から周面の一部分が切り欠かれて、一部に平坦面41を有し、残りの部分がチャンネル開口部6aとして開口されている。平坦面41には、照明光を照射する照明窓42と、観察対象部位を観察するための観察窓43と、流体を噴出するノズル44が配置されている。照明窓42は、光学レンズで構成され、光源装置8から光ファイバーを通じて導光された照明光を観察対象部位に照射する。観察窓43を通過した観察像は、光ファイバー等を通じて、内視鏡操作部3内に設けた撮像素子(図示せず)に導光してもよいし、先端部6内で観察窓43(対物レンズ)の下方に撮像素子(図示せず)を配置して結像してもよい。撮像素子は、例えば、CCDやCMOS等を用いて、画像処理回路基板と一体的に設けられ、光電変換により観察像から映像信号を生成して、ビデオプロセッサ9に出力している。
【0016】
ノズル44は、気体(空気等)や液体(ボトル12の貯留水等)をそれぞれ単体又は混合させた流体を、照明窓42及び観察窓43の表面に当たるように吹き付けて、それぞれの窓の汚れを落としている。この操作は、前述した送気送水ボタン17aを押下することによって、ノズル44から選択的に気体と液体とが噴出される。また、吸引操作ボタン17bが押下されると、図示しないポンプが駆動して、挿入部4内を貫通する処置具挿通用チャンネルを通じて、先端部6のチャンネル開口部6aから吸引力を作用させ、体腔内の不要な流体等を吸引回収する。
【0017】
図2及び、
図3A乃至
図3Cを参照して、起上台ユニット20について説明する。
起上台ユニット20は、大別して、起上台操作機構30と、起上管路部材(又は、起上管路)25と、ガイドチューブ23、起上台21とで構成される。内視鏡本体1の基端側の内視鏡操作部3内に、起上台操作機構30が収容され、先端部6に開口されたチャンネル開口部6a内に、起上台21が設けられている。ガイドチューブ23は、内視鏡挿入部4の基端側から先端部6まで挿嵌され、そのチューブ内には、起上台操作機構30と起上台21とを連結する起上ワイヤ24が配設されている。起上台21は、先端部6に開口されたチャンネル開口部6a内で回動可能に設けられている。
【0018】
起上台21は、
図2及び
図3Cに示すように、表面21aが凹陥状を成し、湾曲させるガイドワイヤ等の処置具に係合し易くしている。起上台21は、回動支点22がチャンネル開口部6aの底部に形成された支持部材に軸支され、起上台21の中程に起上ワイヤ24の一端が連結されている。起上ワイヤ24の他端は、水密性(又は、気密性)を有する後述する密閉性確保機構を備える起上管路25に連結されている。
【0019】
起上管路25は、起上ワイヤ(牽引部材)24の他端が連結する金属材料等により形成される棒形状のワイヤ固定部(ワイヤ止め)27と、ワイヤ固定部27を覆う筒形状の外周部材26とで構成される。尚、ワイヤ固定部27は、金属材料に限定されるものではなく、金属材料と同等な剛性を有していればよく、例えば、硬質樹脂等の別の材料により形成されてもよい。起上ワイヤ24とワイヤ固定部27との連結は、接着剤により接続してもよいし、ワイヤ固定部27が金属製であれば、半田、絞り又は、カシメて、起上ワイヤ24を固定してもよい。ワイヤ固定部27の断面形状は、特に限定されるものはないが、円形状が好適する。
【0020】
起上台操作機構30は、リンク部材(リンク機構)28と、内視鏡操作部3内に回動可能に軸支され、ノブを外部に露出する起上レバー31と、で構成される。
外周部材26内において、ワイヤ固定部27と外周部材26とは、後述する各実施形態による水密性又は気密性を有する密閉性確保機構が設けられている。外周部材26から延出したワイヤ固定部27の基端側には、リンク部材28の一端が取り付けられている。また、外周部材26の基端側には、斜め方向から洗浄液を流入するために洗浄開口部26aが開口され、洗浄チューブ32が接続される。また、内視鏡操作部3の筐体には、洗浄チューブ32と外部の洗浄液供給チューブ(図示せず)と着脱可能に連結するための洗浄口金32aが設けられている。
【0021】
起上レバー31には、リンク部材28の他端を回動可能に軸支する突起部29aが設けられている。リンク部材28は、起上レバー31とワイヤ固定部27を連結することで、リンク機構を構成し、起上レバー31のレバー操作に応じて、ワイヤ固定部27が挿入部の長手軸方向に進退(前後)方向に移動する。つまり、ワイヤ固定部27が移動されることにより、一体的に起上ワイヤ24が移動して、起上台21が回動する。
【0022】
図3Bに示すように、鉗子チャンネルの挿入口部18から差し入れられた処置具(例えば、ガイドワイヤ40)は、チャンネル開口部6aから延出し、起上台21の表面21a上をガイドワイヤ40が通過している。その際に、起上レバー31を操作して、起上ワイヤ24を牽引させると、起上台21は、
図2に点線で示すように、起上台21が回動支点22を中心に起き上がるように回動する。その際に、表面21aの凹陥した底部分でガイドワイヤ40をガイドした状態で起上台21が起き上がり、
図3Cに示すように、ガイドワイヤ40を湾曲させる。
【0023】
図4Aは、第1の実施形態に係る密閉性確保機構を備えた起上管路の構成であり、起上台の倒置の時の状態を示す断面図を示し、
図4Bは、起上台が起き上がった時の状態を示す断面図である。
本実施形態の起上管路25は、筒形状の外周部材26の一方(基端側)には、底部(基端部材)が設けられて、底部には、貫通孔26cが開口されている。さらに、外周部材26の周囲側から中心側に向かう斜め方向に洗浄液用開口部26bが形成されている。洗浄液用開口部26bは、洗浄チューブ32が接続できるように、突起した形状の接続口金を有している。
【0024】
貫通孔26cの表面には、筒状にシール固定部材34が設けられ、シール固定部材34内とワイヤ固定部27との間には隙間が設けられている。このため、シール固定部材34内では、小さい摺動抵抗でワイヤ固定部27が移動可能となる。さらに、隙間によって起上管路25の外部とシール部材33の内部とが連通し、空気の出入りが可能となる。従って、起上ワイヤ24が牽引されてシール部材33が収縮した状態になっても、シール部材33の内部の圧力は変化せず、シール部材33が膨らむことはない。また、例えば、シール固定部材34の表面に細かな複数の凹凸を形成して、ワイヤ固定部27の外周面と点で接するように工夫してもよい。勿論、この当接部分と体腔内とは、後述するシール部材33により、空間的に分離されているため、グリス等の潤滑剤を利用してもよい。
【0025】
外周部材26の内部エリア26aには、ワイヤ固定部27と起上ワイヤ24の接続部分が収容され、先端側から起上ワイヤ24が延出している。起上管路25の先端側には、起上ワイヤ24を貫通させて支持するパイプ36と、パイプ36を嵌装する管路先端部35とが設けられている。管路先端部35は、外周部材26の先端側に環形状の固定部材38により固定されている。
【0026】
さらに、管路先端部35の設けられた凹部に嵌め込まれた固定部材37により、内視鏡操作部3内に固定されている。この構成により、起上管路25は、外周部材26内を起上ワイヤ24とワイヤ固定部27とが、一体的に移動可能になる。
【0027】
さらに、ワイヤ固定部27の外周面とシール固定部材34の外周面には、両端33a,33bが水密又は気密に接着される、蛇腹状の複数の襞を有するシール部材33がワイヤ固定部27を被覆するように設けられている。シール部材33は、例えば、ゴム、合成ゴム、樹脂等の弾性を有する材料、薄い金属材料により形成され、その厚さや強度は、液体又は気体の透過や浸透が発生せず、伸縮による破れ等の損傷が発生しない範囲内であれば、厚さはなるべく薄く、小さい弾性力であることが好ましい。
【0028】
本実施形態においては、
図4Aに示すように、起上台21が起き上がっていない状態(倒置状態:
図3B)の時には、起上レバー31により、起上ワイヤ24が牽引されていない状態であり、シール部材33は、自然長の状態となっている。
図4Bにおいては、起上レバー31が操作されて、起上ワイヤ24が牽引された状態であり、
図4Aに比べて、ワイヤ固定部27がm方向に移動して、シール部材33が収縮した状態となっている。
【0029】
また、シール部材33が自然長の状態の時に、洗浄チューブ32から開口部26bに洗浄液又は、気体を斜め方向に流入させることにより、その流体が外周部材26の長手軸方向と交差する種々の方向に流れる。このため、洗浄液の水流及び気体は、シール固定部材34に掛かるシール部材33の端部から洗浄を開始して、延びた襞の底面にも入り込み、汚れを洗い流して又は、吹き飛ばして管路先端部35に達する。さらに、汚物を含む流体は、管路先端部35のパイプ36を通り、鉗子チャンネル内に流出して伝わり、チャンネル開口部6aから外部に排出される。
【0030】
尚、本実施形態では、起上台21が起き上がらない状態(倒置時)の時に、シール部材33が自然長となっている構成例であるが、これに限定されず、倒置時に、シール部材33が収縮された状態となるように構成してもよい。起上台21が倒置時に、シール部材33が収縮された状態となるように組み付けた場合には、起上台21が倒置する方向に常に弾性力が掛かる状態となるため、移動時や洗浄時でも起上台21がチャンネル開口部6a内に押し付けられた状態を保持して、ばたつきや外部へはみ出すことがなく、揺れによる損傷や他の機器への衝突を防止することができるという利点を有している。
【0031】
以上のように本実施形態によれば、起上レバー31の操作の際に、Oリングで水密を実現する従来の機構に比べて、ワイヤ固定部27に掛かる摺動抵抗が少なく、起上レバー31を軽負荷(小さい操作力量)で操作することができ、処置具の起き上がり角度を微調整する際に操作しやすくなる。
【0032】
洗浄時に外周部材26内に流入された流体(洗浄液及び気体等)により、内部圧力が上昇した際に、シール部材33は、内径側、即ちワイヤ固定部27側に変形するが、ワイヤ固定部27の存在により、大きく変形することはなく、損傷を抑制している。
【0033】
洗浄チューブ32を接続させる開口部26bを外周部材26の基端部側に設けているため、ワイヤ固定部27やリンク機構の動作に拘わらずに、洗浄チューブ32が不動状態に固定されており、洗浄チューブ32の劣化や弛み又は外れが防止される。さらに、斜め方向から洗浄用の流体を外周部材26内に流入するため、外周部材26内の全体に洗浄液や気体を行き渡らせて、好適な洗浄を実現することができる。
【0034】
起上台21が倒置状態の時には、シール部材33が自然長となるため、シール部材33に加わる負荷が軽減され、製品寿命を縮めずに済む。また、内視鏡本体の保管時においても、起上台21が倒置状態であるため、保管中にシール部材33に掛かる負荷が軽減される。尚、シール部材33を自然長では無く、伸長させて組み付けた場合には、伸長させた分だけ、シール部材33のストロークを長くできる。即ち、自然長から収縮できる分のストロークに、自然長から伸張させた分のストロークが加わるため、同じシール部材でも長いストロークをとることができる。また、必要なストロークが短いシール部材で得られるため、シール部材の全長を短くできる。
【0035】
次に、
図5A、5Bは、第1の実施形態の第1の変形例に係る密閉性確保機構のシール部材の一部分の断面構成を示す図である。この例では、
図5Aは、起上台が倒置時のシール部材の状態を示し、
図5Bは、起上台が起き上がった時のシール部材の状態を示している。
図5Aに示すように、第1の実施形態では、シール部材33が、平面と折り目の交互により構成される蛇腹形状であったが、本変形例では、角部分を丸めた円弧41a,41bの組み合わせによる波型形状を有するシール部材41である。
【0036】
図5Aは、
図4Aと同様に、起上台が倒置された時の自然長のシール部材51の状態を示している。また、
図5Bは、
図4Bと同様に、起上台が置き上がった時の収縮されたシール部材51の状態を示している。この時、自然長のシール部材51は、振幅r1であった場合、収縮により振幅r1よりも高い振幅r2となるが、それぞれの頂部(山)51aは、円弧状に縮み、それぞれの襞間に隙間が生じた状態となっている。
【0037】
本変形例によれば、波型形状のシール部材51が収縮時に、襞間が閉じずに円弧状に隙間を空けているため、洗浄した際に、襞内51bまでの全体的に洗浄液や気体が行き渡れ、襞内51bの付着物を容易に除去することができる。また、屈曲した折り目がないため、伸び縮みに対して、より耐久性を有している。
【0038】
次に、
図6A、6Bは、第1の実施形態の第2の変形例に係る密閉性確保機構のシール部材の一部分の断面構成を示す図である。この例では、
図6Aは、起上台が倒置時のシール部材の状態を示し、
図6Bは、起上台が起き上がった時のシール部材の状態を示している。
【0039】
本変形例では、角部分を丸めた円弧の山部52aと、平坦な谷部52bの交互の組み合わせによる波型形状を有するシール部材52である。本変形例は、
図6Bに示すように、収縮した場合、山部51aの裾部分が狭まった状態となっても、谷部52bの間隔は、変わらずに維持されている。
【0040】
本変形例によれば、山部52a間において、平坦な谷部52bが存在しているため、収縮時にも襞間が閉じずに平坦な隙間を空けていて、洗浄した際に、襞の底部内までの全体的に洗浄液や気体が行き渡れ、襞内の付着物を容易に除去することができる。
次に、
図7は、第1の実施形態の第3の変形例に係る密閉性確保機構のシール部材の外観構成を示す図である。尚、シール部材53以外の構成部位は、前述した第1の実施形態と同等であり、ここでの説明は、省略する。
【0041】
本変形例は、シール部材53の蛇腹の山部がワイヤ固定部27の周囲上に連続的な螺旋状に形成された構成である。シール部材53の前述したシール部材33と同等な材料により形成されている。シール部材53の両端53a,53bが後端部材54が水密となるように接着して固定されている。また、
図7には示していないが、
図4Aに示したように、洗浄液用開口部26bが形成されている。この変形例では、洗浄液用開口部26bが第1実施形態と同様に、外周部材26の周囲側から中心側に向かう斜め方向に開口することに加えて、洗浄液用開口部26bの開口方向がシール部材53の螺旋状に沿って、洗浄液等の流体が流れるように、同じ螺旋方向に開口されている。尚、前述した第1の実施形態においても、本変形例と同様に、流体の流れが螺旋状に流れるように、螺旋方向に洗浄液用開口部26bを開口させてもよい。
【0042】
次に、
図8Aは、第2の実施形態に係る密閉性確保機構を備えた起上管路の構成であり、起上台の倒置の時の状態を示す断面図を示し、
図8Bは、起上台が起き上がった時の状態を示す断面図である。本実施形態の構成部位において、前述した第1の実施形態と同等の構成部位には、同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0043】
本実施形態の起上管路60において、筒形状の外周部材61の一方(基端側)は、ストレートに開放する開口端として形成され、他方(先端側)には、起上ワイヤ24を貫通させて移動可能に支持するパイプ36と、パイプ36を嵌装する管路先端部35とが設けられている。管路先端部35は、外周部材26の先端側に環形状の固定部材38により固定されている。パイプ36は、起上ワイヤ24との摩擦による負荷が軽減されるように、内表面に細かな凹凸を形成して、複数の点で起上ワイヤ24と接触するように構成してもよい。
【0044】
外周部材61の一方(基端側)には、開口端の断面形状と同形を成し、弾性体からなる筒状のシール部材63の一端(開放端)が密着するように嵌装され、線材からなる固定部材64により固定されている。また、シール部材63の他端(開放端)は、後端部材(接続部材)62の外周面に嵌装され、固定部材64により固定されている。後端部材62は、金属や硬質樹脂等の硬質部材により形成され、中央にはワイヤ固定部27が貫通孔62bに貫通されて水密(又は、気密)に固定されている。
【0045】
また、第1の実施形態と同様に、気体(例えば、空気)及び、液体(例えば、洗浄水)を外周部材26の内部空間65に導入するための洗浄液用開口部62aが設けられている。洗浄液用開口部62aの口金部分には、図示しない洗浄チューブが取り付けられている。外周部材61の内部空間65内では、ワイヤ固定部27と、パイプ36から差し込まれた起上ワイヤ24とが接続されている。よって、シール部材63により外周部材26の内部空間65と外部空間(操作部内3の空間)とが分離されて、外周部材26から操作部3内に液体等が漏れ出ることがない。
【0046】
この構成において、
図8Bに示すように、図示しない起上レバー31が操作されて、ワイヤ固定部27がm方向に牽引されて移動し、シール部材63がP方向に延伸する。この際に、弾性力が弱い材料によりシール部材63を形成することにより、レバー操作時の負荷を軽減させることができる。
この構成において、
図8Aには、先端側に設けられた起上台(
図2参照)が倒置し、シール部材63が自然長となるように組み付けている。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、保管時、即ち、起上台が倒置の際には、シール部材63が自然長となっているため、シール部材63に掛かる負荷が軽減される。さらに、起上レバー31の操作によりワイヤ固定部27が牽引され、シール部材63が延伸した際に、元の径以上に外側に膨らむことない。これにより、シール部材63に近接した位置に他の部品が配置されたとしても接触することなく、コンパクトに配置することができる。また、シール部材63が、起上管の露出した位置に取り付けられているため、他の部品に干渉せず、単独で交換することが容易にできる。
【0048】
また、第2の実施形態の変形例として、
図11Aに示すように、起上台が倒置した時に、シール部材72が撓んだ状態となるように組み付けてもよい。
図2に示した起上レバー31の操作により、
図11Bに示すように、後端部材93がワイヤ固定部により、m方向に牽引されて、シール部材92が延伸した場合には、元の径以上に外側に膨らむことない。シール部材92は、弾性部材だけではなく、薄い樹脂膜であってもよい。
【0049】
本変形例によれば、保管時、即ち、起上台の倒置時に、シール部材92を撓んだ状態で、外周部材91と後端部材93との間に固定した場合には、不使用時や保管時に、シール部材92に掛かる負荷を軽減し、さらに、起上管路25の全長を短くでき省スペース化することができる。
【0050】
次に、
図9Aは、第3の実施形態に係る密閉性確保機構を備えた起上管路の構成であり、起上台の倒置の時の状態を示す断面図を示し、
図9Bは、起上台が起き上がった時の状態を示す断面図である。本実施形態の構成部位において、前述した第1の実施形態と同等の構成部位には、同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0051】
図9Aに示すように、本実施形態の起上管路は、異なる径による段差を有する筒形状の外周部材71と、外周部材71内を貫通して移動可能に配置される起上ワイヤ24及びワイヤ固定部27と、外周部材71とワイヤ固定部27に掛かるように固定されるシール部材73と、外周部材71の小径側(先端側)に設けられた起上ワイヤ24が貫通するパイプ72と、で構成される。
【0052】
外周部材71は、金属又は硬質樹脂等を用いて、大小の2つの異なる径の筒が段差を設けて一体的に形成された筒形状である。外周部材71の大径側(基端側)には、外周面から基端側(開口側)に向かう斜め方向に貫通孔72aが開口されている。貫通孔72aは、前述した口金を設けて、洗浄液用開口部として利用される。
【0053】
シール部材73は、一端73a側からワイヤ固定部27に差し入れて、ワイヤ固定部27に接着剤等で水密(又は、気密)に固定される。シール部材73は、他端(裏返し固定部)73bを折り返して拡げて、外周部材71の大径外周面(基端側)に被せて、接着して水密(又は、気密)に固定(裏返し固定)する。これらの固定は、前述した第2の実施形態と同様に、線材からなる固定部材により固定してもよい。
【0054】
このような構成により、シール部材73がワイヤ固定部27と外周部材71との間に塞ぐように配置され、外周部材71の内部空間と、外周部材71の外部空間(操作部3内部)とを分離する。シール部材73は、例えば、ゴム、合成ゴム、樹脂等の弾性を有する材料、薄い金属材料により形成され、その厚さや強度は、液体又は気体の透過や浸透が発生せず、折れ曲がりにより破れ等の損傷が発生しない範囲内であれば、厚さはなるべく薄く、小さい弾性力であることが好ましい。
【0055】
図9Bに示すように、図示しない起上レバー(
図2参照)の操作により、ワイヤ固定部27がm方向に牽引されて、シール部材73がローラのように外部に引き出される。
本実施形態によれば、シール部材73の伸縮量が小さいため、シール部材73に掛かる負荷が軽減され、製品特性が長く維持される。ワイヤ固定部27が牽引された際に、シール部材73が外周方向に広がらずに機能するため、シール部材73の周辺に他部品を配置することができ、操作部のコンパクト化に寄与することができる。本実施形態の密閉性確保機構は、構造が簡易で部品点数が少なく、安価に実現することができる。
【0056】
次に、
図10A、10Bは、第3の実施形態の第1の変形例に係る密閉性確保機構のシール部材の部分的な断面構成を図である。
図10Aは、起上台の倒置時のシール部材の状態を示す断面図を示し、
図10Bは、起上台が起き上り時のシール部材の状態を示す断面図である。
【0057】
図10Aに示すように、シール部材72は、外周部材81の外周面に一端を接着して水密(又は、気密)に固定し、折り曲げ部分を形成して畳み込み、外周部材81内に配置されたワイヤ固定部27に他端を同様に接着する。外周部材81には、外周面から基端側(開口側)に向かう斜め方向に洗浄液用開口部として利用される貫通孔81aが開口されている。
【0058】
また、
図10Bに示すように、図示しない起上レバー(
図2参照)の操作により、ワイヤ固定部27がm方向に牽引されて、畳み込まれたシール部材82が延びて、外周部材81からワイヤ固定部27に掛かり、テーパー形状に広がる。シール部材82は、延びた際に、延伸させる構成であれば弾性体により形成し、延伸させない場合には、薄い樹脂膜により形成してもよい。
【0059】
また、シール部材82は、畳み込まれ易いように、折り曲げ部分の肉厚を他よりも薄く形成することで、撓みやすくし、同じ形状に折りたたまれるようにしてもよい。ワイヤ固定部27の移動に伴うシール部材82の形状変化は、外周方向に広がらずに、行われるため、シール部材83の周辺に他部品を配置することができ、操作部のコンパクト化に寄与することができる。
【0060】
次に、第2,3の実施形態に係る変形例について説明する。これらの例では、シール部材が外周方向に広がらずに形状変化するように構成されているが、この変形例は、さらに、ガイドを設けることでより安定したシール部材の形状変化を実現する。
【0061】
図12Aは、前述した
図8Aに示した円筒形状を成すシール部材102(
図8Aの符号63)の外側に、コイル状のバネガイド(円環状の粗線)101を嵌装した構成である。
図12Bに示すシール部材102は、
図11Aに示したように、図示しない起上台が倒置した時に、シール部材102が撓んだ状態となるように組み付けている。
図12Cは、図示しないワイヤ固定部により牽引されて、シール部材62が延伸した状態を示している。
【0062】
図12Cに示すように、シール部材102が撓んだ際に、バネガイド101で撓んだ部分が外周部に広がりでないように制限している。
本変形例によれば、保管から取り出した時、又は起上台が倒置した状態で持ち運んだ場合には、シール部材102が撓んだ状態であっても、周囲に配置された構成部位に接触することなく、シール部材が損傷することを防止することができる。また、シール部材102の形状変化の際に、外径が大きく変わることを防止するため、シール部材102の周辺に他部品を配置することができ、操作部のコンパクト化に寄与することができる。
医療機器に備えられた密閉性確保機構は、起上台操作機構と起上管路部とガイドチューブと起上台とで構成される起上台ユニットを有する。起上管路部は、外周部材内に挿通された起上ワイヤに接続するワイヤ固定部と外周部材とに水密又は気密に固定されたシール部材が設けられ、外周部材の開口部より供給された流体が起上管路の内周面とシール部材の外周面の間を流動し起上台操作機構と起上管路とを水密又は気密に分離する。