特許第5792439号(P5792439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792439
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】インクジェット用非水系インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20150928BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20150928BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C09D11/36
   B41M5/00 E
   B41J2/01 501
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2010-181796(P2010-181796)
(22)【出願日】2010年8月16日
(65)【公開番号】特開2011-127091(P2011-127091A)
(43)【公開日】2011年6月30日
【審査請求日】2013年7月9日
(31)【優先権主張番号】特願2009-262702(P2009-262702)
(32)【優先日】2009年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】細谷 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】林 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】守永 真利絵
(72)【発明者】
【氏名】部田 尚亨
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/125917(WO,A1)
【文献】 特開2001−239752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/36
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録用の非水系インク組成物であって、該組成物重量の0.01〜10重量%の、(A)第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、及び、脂肪酸及び/又はアルキル燐酸エステルとアミン化合物の組合わせからなる群より選ばれる少なくとも一種のイオン性物質、
0.1〜20重量%の、(B)アルキル(メタ)アクリレート共重合体であって、該アルキル基の炭素数が12〜25であり、該共重合体の1〜40重量%のウレタン結合部を備える、アルキル(メタ)アクリレート共重合体、
0.1〜20重量%の(C)顔料、及び
(D)有機溶剤、
を含む非水系インク組成物。
【請求項2】
(A)イオン性物質が、下記式(1)で示される第四級アンモニウム塩である、請求項1記載の非水系インク組成物。
【化1】

(式(1)中、R、R、R及びRのうちの2もしくは3個はメチル基で、その他は炭素数12〜24のアルキル基、もしくは炭素数6〜10のアリール基である、又は、R、R、R及びRの全てが炭素数3〜5のアルキル基である。)
【請求項3】
(A)イオン性物質が、炭素数1〜6のアルキル基を有するテトラアルキルホスホニウムハライド及び炭素数6〜10のアリール基を有するテトラアリールホスホニウムハライドから選ばれる、請求項1記載の非水系インク組成物。
【請求項4】
(A)イオン性物質が、炭素数14〜22の脂肪酸酸及び/又は炭素数6〜22のモノアルキルリン酸エステルと炭素数4〜26の脂肪族アミンの組合わせである、請求項1記載の非水系インク組成物。
【請求項5】
(B)アルキル(メタ)アクリレート共重合体が、下記式(4)で表される繰り返し単位を含む主鎖と、下記式(5)で表される繰り返し単位を含む、鎖又は架橋部を有する請求項1〜のいずれか1項記載の非水系インク組成物。
【化2】

【化3】

(ここで、Rは水素もしくは炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数12〜25のアルキル基、R10は炭素数6〜16の2価の炭化水素基、R11は炭素数2〜20のアルキレン基もしくはオキシアルキレン基である。)
【請求項6】
(B)アルキル(メタ)アクリレート共重合体の重量平均分子量が、8000〜30,000である、請求項1〜のいずれか1項記載の非水系インク組成物。
【請求項7】
(B)アルキル(メタ)アクリレート共重合体が、β−ジケトン基またはβ−ケト酸エステル基をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項記載の非水系インク組成物。
【請求項8】
(C)顔料が、DBP給油量が80cm/100g〜140cm/100g、且つ窒素吸着比表面積が100m/g〜200m/gのカーボンブラックである、請求項1〜のいずれか1項記載の非水系インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用非水系インク組成物に関し、詳細には、ウレタン結合を備える共重合体とイオン性物質を含み、ノズルプレートへの付着が少なく、高い濃度の画像を形成することができる、非水系インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷用の非水系インクは、有機溶剤、バインダー樹脂、及び顔料を主成分とする。該バインダー樹脂として、従来の樹脂に代えて、ポリ(メタ)アクリル酸C1−4アルキルエステルをコアとし、ポリ(メタ)アクリル酸C4−10アルキルエステルをシェルとして有する樹脂粒子を用いることが提案されている(特許文献1)。該樹脂粒子を用いれば、バインダー樹脂を溶剤に溶解して用いるのに比べて、低粘度で高固形分とすることができ、顔料の固着性が向上する。しかし、該樹脂粒子は顔料分散能を有していない。そのため、別途、顔料分散剤を用いる必要があるが、顔料分散剤を添加すると、ノズルプレートに対する濡れ性が向上するために、ノズルプレート上に顔料が残り、クリーニング時にワイピングするとノズルプレートを傷付けてワイピング耐久性を悪くする。また、顔料固着性も低下して、画像濃度が低下する。
【0003】
上記問題を解決するものとして、ポリ(メタ)アクリル酸C12−25アルキルエステルと、グリシジル基等の所定の基を有するアクリルモノマーとの共重合体樹脂粒子で、顔料分散能を備えるものが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−171032号公報
【特許文献2】特開2007−197500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願人は、上記共重合体樹脂粒子を含むインク組成物を向上すべく、所定量のウレタン結合部を備える共重合体樹脂粒子を含む非水系顔料インクを発明した(特願2008−294829号)。本発明は、該非水系顔料インクをワイピング耐久性等の点で、さらに改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、インクジェット記録用の非水系インク組成物であって、該組成物重量の0.01〜10重量%の、(A)第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、脂肪酸及び/又はアルキル燐酸エステルとアミン化合物の組合わせ、及びシナジストからなる群より選ばれる少なくとも一種のイオン性物質、
0.1〜20重量%の、(B)アルキル(メタ)アクリレート共重合体であって、該アルキル基の炭素数が12〜25であり、該共重合体の1〜40重量%のウレタン結合部を備える、アルキル(メタ)アクリレート共重合体、
0.1〜20重量%の(C)顔料、及び
(D)有機溶剤、
を含む非水系インク組成物である。
【発明の効果】
【0007】
上記本発明の非水系インク組成物(以下、単に「インク組成物」という場合がある)は、(A)イオン性物質と(B)アルキル(メタ)アクリレート共重合体の組合わせによって、顔料のノズルプレートへの付着を防止すると共に、顔料の紙への固着性を高めて高い濃度の画像を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<(A)イオン性物質>
本発明のインク組成物において、(A)イオン性物質は、イオン結合もしくは分極が大きい結合を含む物質であり、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、脂肪酸及び/又はアルキル燐酸エステルとアミン化合物の組合わせ、及びシナジストからなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0009】
第四級アンモニウム塩におけるカチオンとしては、炭素数1〜24の炭化水素基を4つ有するアンモニウム、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。また、アニオンとしては水酸イオン、炭酸イオン、カルボン酸イオン、Cl、Br等のハロゲンイオン、硫酸水素イオン(HSO)、リン酸イオンなどが挙げられる。
【0010】
好ましくは下記式(1)で示される第四級アンモニウム塩が使用される。
【化1】
【0011】
式(1)中、R、R、R及びRのうちの2もしくは3個はメチル基で、その他は炭素数12〜24のアルキル基、もしくは炭素数6〜10のアリール基である、又は、R、R、R及びRの全てが炭素数3〜5のアルキル基である。アリール基の例としては、フェニル基、ベンジル基などが挙げられる。Xは酢酸イオン、ハロゲンイオン、又は硫酸水素イオンである。
【0012】
上記式(1)で示される第四級アンモニウム塩の例としては、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロマイド、ジメチルジステアリルアンモニウムブロマイド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムアセテート(アルキル基は炭素数14、16及び18のものから選ばれた少なくとも1種)、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、及びベンジルトリブチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0013】
好ましくは、R、R、R及びRのうちの2個がメチル基で、その他は炭素数12〜24のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であるもの、例えば、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロマイド、ジメチルジステアリルアンモニウムブロマイド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、及び、R、R、R及びRの全てが炭素数3〜5のアルキル基であるもの、例えばテトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、から選ばれる少なくとも1種が使用される。
【0014】
第四級ホスホニウム塩は、一般式[RP](ここでRはアルキル基又はアリール基であり、Xは上述のとおりである)で表されるものが好ましく使用される。該第四級ホスホニウム塩の例としては、炭素数1〜6のアルキル基を有するテトラアルキルホスホニウムハライド、例えばテトラメチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド;炭素数6〜10のアリール基を有するテトラフェニルホスホニウムクロライド等のテトラアリールホスホニウムハライドが挙げられ、これらのうちテトラブチルホスホニウムブロマイドがより好ましい。
【0015】
脂肪酸及び/又はアルキル燐酸エステル(以下、まとめて「酸」という場合がある)とアミン化合物の組合わせは、本発明のインク組成物内で、アンモニウム塩の形態、又はアンモニウム塩と類似の形態を形成していると考えられる。これは、該組合わせによって、上記第四級アンモニウム塩等と同様の効果が奏されること、及び、後述する実施例で示すように、酸とアミン化合物のいずれか一方だけを配合しても本発明の効果は得られず、双方を配合することによって得られることから推測される。
【0016】
脂肪酸としては炭素数9以上、好ましくは12〜30、より好ましくは14〜22、のものが使用される。該脂肪酸の例としては、デカン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などが挙げられる。
【0017】
アルキルリン酸エステルとしては、たとえば、下記式(2)で示されるモノアルキルアシッドホスフェート又は下記式(3)で示されるジアルキルホスフェートが挙げられる。
【化2】
【化3】
【0018】
式(2)又は(3)において、R及びRは、炭素数6〜22、好ましくは8〜14、のアルキル基を示す。
【0019】
本発明では、油溶性アルキルリン酸エステルが好ましく使用される。斯かるルリン酸エステルの例としては、イソデシルアシッドホスフェート、2‐エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェートなどが挙げられる。
【0020】
アミン化合物としては、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミンが挙げられ、好ましくは脂肪族アミン、より好ましくはジアルキルアミン、トリアルキルアミンが使用される。最も好ましくは、該アルキル基の炭素数が1〜26、より好ましくは6〜18である。
【0021】
該ジアルキルアミン、及びトリアルキルアミンの例としては、ジオクチルアミン、ジラウリルメチルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミンなどが挙げられる。
【0022】
脂肪酸及び/又はアルキル燐酸エステルとアミン化合物は、モル当量比率[(脂肪酸及び/又はアルキル燐酸エステル)/アミン化合物]が0.1〜10.0、好ましくは0.3〜3、最も好ましくは0.8〜1.2で配合する。モル当量比率がこの範囲を外れると、本発明の効果が十分発揮されない場合がある。
【0023】
シナジストは、顔料骨格中に、極性基を導入した顔料誘導体である。顔料骨格としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、イソインドリン顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ピランスロン顔料、チオインジゴ顔料、及びキノフタロン顔料等の骨格が挙げられる。極性基としては、アルキルアミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、及びフタルイミド基等が挙げられる。これらのうち、フタロシアニン顔料、特に銅フタロシアニンブルーの骨格に、スルホン酸基、アミノ基等を導入したものが好ましく、例えば銅フタロシアニンスルホネート(ソルスパース5000、ソルスパース12000、ソルスパース22000;いずれもルブリゾール社製)が挙げられる。
【0024】
(A)イオン性物質は、インク組成物総重量の0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%、配合される。脂肪酸及び/又はアルキル燐酸エステルとアミン化合物の組み合わせとして加える場合には、それらの合計が0.01〜10重量%、好ましくは、0.1〜3重量%、特に好ましくは0.3〜1.0重量%で、配合される。(A)イオン性物質の量が上記下限値未満では、十分な効果が得られず、上記上限値を超えると、印刷濃度が低下するおそれがある。
【0025】
<(B)アルキル(メタ)アクリレート共重合体>
アルキル(メタ)アクリレート共重合体は、下記式(4)で表される繰り返し単位を含む主鎖と、下記式(5)で表される繰り返し単位を含む、ウレタン構造の側鎖もしくは架橋部(以下「ウレタン結合部」という)を有する。
【化4】
【化5】
ここで、Rは水素もしくは炭素数1〜3のアルキル基、好ましくはメチル基、Rは炭素数12〜25のアルキル基、R10は炭素数6〜16の2価の炭化水素基、R11は炭素数2〜20のアルキレン基もしくはオキシアルキレン基である。
【0026】
アルキル(メタ)アクリレート共重合体は、炭素数12〜25の長鎖アルキル基を備える。該長鎖アルキル基により、(D)有機溶剤との親和性に優れる。該アルキル基としては、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコサニル基、ヘンイコサニル基、ドコサニル基、イソドデシル基、及びイソオクタデシル基等が挙げられ、これらは分岐を有していてよい。また、これらの複数種が含まれていてもよい。
【0027】
一方、上記ウレタン結合部は極性が高いので(C)顔料との親和性に優れると考えられる。
【0028】
アルキル(メタ)アクリレート共重合体は、以下の方法で得ることができる。第一段目において、式(4)のポリアルキル(メタ)アクリレート主鎖を、炭素数12〜25のアルキル基を備える(メタ)アクリレートモノマーをラジカル重合させて得る。該アルキル基の存在により、該共重合体は有機溶剤との親和性に優れる。該アルキル基としては、エチルヘキシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコサニル基、ヘンイコサニル基、ドコサニル基、イソドデシル基、及びイソオクタデシル基等が挙げられ、これらは分岐を有していてよい。また、これらの複数種が含まれていてもよい。
【0029】
第一段目において、コモノマーの一つとして、グリシジル基を有する(メタ)アクリル系単量体を用いてラジカル重合を行い、該グリシジル基を、式(5)のウレタン結合部と主鎖との連結部の調製に用いる。グリシジル基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、例えば、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらのうち、グリシジルメタアクリレートが好ましい。該グリシジル基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単量体総量の1〜30質量%で含まれていることが好ましく、より好ましくは3〜25質量%、最も好ましくは10〜20質量%である。
【0030】
さらに、コモノマーとして、β−ジケトン基(−C(=O)−C−C(=O)―)またはβ−ケト酸エステル基(−C(=O)−C−C(=O)OR、Rは炭化水素基)を有する(メタ)アクリル系単量体を用いると、より粘度が低いインク組成物を調製することが可能となる。これにより、インク組成物の溶剤を選択する際に、溶剤自身の粘度値に基づく制約が少なくなり、非水系溶剤の選択の幅を拡げることができる。また、必要に応じて定着用樹脂または添加剤などを配合する際の、配合成分によるインク粘度増加の許容範囲が広がり、インク処方の自由度を広げることも可能となる。さらに、β−ジケトン基またはβ−ケト酸エステル基が顔料の凝集を抑制し、裏抜けを抑制すると同時に印刷濃度の向上を実現できる。
【0031】
β−ジケトン基またはβ−ケト酸エステル基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート、ヘキサジオン(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を併用することができる。
【0032】
β−ジケトン基またはβ−ケト酸エステル基を有する(メタ)アクリル系単量体の配合量は、モノマー混合物中に3〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
【0033】
その他、コモノマーとしては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系ポリマー;マレイン酸エステル、フマル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−オレフィン等が挙げられる。また、アルキル鎖長の炭素数が12未満のアルキル(メタ)アクリレート、たとえば2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート等を使用することもできる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
第一段目のラジカル重合は、(D)有機溶剤中で行うことが好ましい。また、分子量を調整するために、重合時に連鎖移動剤を併用することが有効である。連鎖移動剤としては、たとえば、n−ブチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタンなどのチオール類が用いられる。
【0035】
重合開始剤としては、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)等のアゾ化合物、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(パーブチルO、日本油脂(株)製)等の過酸化物など、公知の熱重合開始剤を使用することができる。その他にも、活性エネルギー線照射によりラジカルを発生する光重合型開始剤を用いることができる。溶液重合に用いる重合溶媒には、たとえば石油系溶剤(アロマフリー(AF)系)などを使用できる。この重合溶媒は、そのままインクの非水系溶剤として使用できる溶媒(後述)のなかから1種以上を選択することが好ましい。重合反応に際し、その他、通常使用される重合禁止剤、重合促進剤、分散剤等を反応系に添加することもできる。
【0036】
第二段目では、第一段目で得られた、グリシジル基を有するポリアルキル(メタ)アクリレート主鎖と、該グリシジル基と反応性の基とアルコール性水酸基とを有する化合物を反応させて、式(5)のウレタン結合部をアルキル(メタ)アクリレート主鎖に結合する連結部分を形成する。該グリシジル基と反応性の基及びアルコール性水酸基を有する化合物としては、アミノ基、又はカルボキシル基を有するアルコールが挙げられ、好ましくはアミノアルコールが使用される。アミノアルコールとしては、炭素数が2〜10のモノオールアミン、例えばモノメチルエタノールアミン、炭素数が4〜20のジオールアミン、例えばジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びこれらの混合物が挙げられ、なかでも、炭素数が4〜20のジアルカノールアミン、特にジエタノールアミンが好ましい。アミノアルコールは、上記グリシジル基1モルに対して、0.05〜1モル当量で反応させることが好ましく、0.1〜1モル当量で反応させることがより好ましい。
【0037】
第二段目の反応は、第一段目で得られる共重合体溶液にアミノアルコール及び/又は多価アルコールを添加して、不活性ガスを通気して攪拌しながら、加熱することによって行うことができる。
【0038】
第三段目では、第二段目で得られたアルコール性水酸基を有するポリ(メタ)アクリレート主鎖に、多価イソシアネートを反応させ、残ったイソシアネート基を多価アルコールと反応させて、ウレタン結合部を構成する。多価アルコールは、第二段目で添加しておいてもよい。該多価アルコールは、グリシジル基とはほとんど反応しないと考えられるが、多少、反応したとしても問題は無い。該多価アルコールとしては、炭素数2〜20のアルキレン基又はオキシアルキレン基を有する多価アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられる。多価アルコールは、該グリシジル基と反応性の基とアルコール性水酸基を有する化合物における、該グリシジル基と反応性の基1モルに対して、好ましくは水酸基が10モル以下になる量、より好ましくは1〜5モルになる量で用いる。
【0039】
第三段目の反応で使用される多価イソシアネート化合物としては、炭素数6〜16のアルキレン基等の脂肪族基、シクロアルキレン基等の脂環式基又はアリレーン基等の芳香族基を有する多価イソシアネート、例えば、1,6−ジイソシアナートへキサン、1,3−ビス(イソシアナートメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、及びこれらの混合物が挙げられる。該イソシアネート化合物は、未反応アルコール性水酸基が残らないようにするために、アルコール性水酸基に対してほぼ当量(0.98〜1.02モル当量)で反応させることが好ましい。
【0040】
第三段目の反応は、第二段目で得られる共重合体溶液に多価イソシアネート化合物を添加し、定法に従い錫触媒等の存在下で加熱して行うことができる。
【0041】
該ウレタン結合部は、(B)アルキル(メタ)アクリレート共重合体中に、1〜40重量%、好ましくは1〜30重量%で、より好ましくは5〜20重量%で含まれる。該ウレタン結合部の重量は、反応に使用したアミノアルコール、多価アルコールとイソシアネート化合物の合計重量である。
【0042】
(B)アルキル(メタ)アクリレート共重合体は、GPCで測定される重量平均分子量が5000〜50,000、好ましくは8000〜30,000である。該分子量が前記下限値未満のものを使用すると、インク組成物の貯蔵安定性が悪くなる傾向があり、前記上限値を超えるものを使用すると、インク組成物の粘度が高く、インクジェット吐出安定性が悪くなる傾向がある。また、動的光散乱法で測定される平均粒径(D50)が50〜300nm、好ましくは70〜200nm、である。
【0043】
インク組成物中における(B)アルキル(メタ)アクリレート共重合体の含有量は、顔料分散性を確保する観点から0.1重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましい。一方、(B)アルキル(メタ)アクリレート共重合体の含有量が高すぎると、インクの粘度が高くなるばかりでなく、高温環境下での保存安定性が悪くなる恐れがあるため、20重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましい。最も好ましくは、3〜10重量%である。
【0044】
<(C)顔料>
本発明のインク組成物において、(C)顔料は任意のものであってよい。好ましくは、本発明の効果がより顕著である点で、黒色インク用の顔料が使用される。斯かる顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック類;銅、鉄、酸化チタン等の金属類または金属酸化物;オルトニトロアニリンブラック等の有機顔料を挙げることができる。これらは単独で、任意に混合して使用することができる。より高い印刷濃度を得られる点で、JIS K6221に従い測定されるジブチルフタレート(DBP)給油量が80cm/100g〜140cm/100g、且つJIS K6217に従い測定される窒素吸着比表面積が100m/g〜200m/gのカーボンブラック顔料が好ましい。
【0045】
顔料の平均粒径は、吐出安定性と保存安定性の観点から300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。ここで、顔料の平均粒径は、動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500(堀場製作所製)等により測定することができる。
【0046】
インク組成物中の顔料の含有量は、通常0.01〜20重量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から1〜15重量%であることが好ましく、5〜10重量%であることが一層好ましい。
【0047】
<(D)有機溶剤>
本発明のインク組成物は、非水系、即ち、顔料分散媒が(D)有機溶剤から成る。(D)有機溶剤は、安全性の観点から、50%留出点が150℃以上のものが好ましく使用される。50%留出点は、JIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定される、重量で50%の溶剤が揮発したときの温度を意味する。より好ましくは、50%留出点が160℃以上、最も好ましくは230℃以上のものを用いる。
【0048】
該有機溶剤の例には、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の非極性有機溶剤と、エステル系溶剤、アルコール系溶剤等の極性溶媒が包含される。脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤としては、たとえば、日本石油(株)製「テクリーンN−16、テクリーンN−20、テクリーンN−22、日石ナフテゾールL、日石ナフテゾールM、日石ナフテゾールH、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、日石アイソゾール300、日石アイソゾール400、AF−4、AF−5、AF−6、AF−7」、Exxon社製「Isopar(アイソパー)G、IsoparH、IsoparL、IsoparM、ExxsolD40、ExxsolD80、ExxsolD100、ExxsolD130、ExxsolD140」等を挙げることができる。芳香族炭化水素溶剤としては、日本石油(株)製「日石クリーンソルG」(アルキルベンゼン)、Exxon社製「ソルベッソ200」等を挙げることができる。
【0049】
エステル系溶剤としては、ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ラウリル酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルなど;アルコール系溶剤としては、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどが挙げられる。これらの溶剤の2種以上を混合して用いることができる。好ましくはエステル系溶剤、なかでもパルミチン酸イソオクチル、ラウリル酸ヘキシルが使用される。
【0050】
<任意成分>
本発明のインクは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、任意の成分を含むことができる。たとえば、上記(B)成分以外の樹脂として、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エチレン−酢ビ系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、塩酢ビ系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等を含むことができる。
【0051】
ノズルの目詰まり防止剤、酸化防止剤、導電率調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤などを適宜添加することもできる。これらの種類は、特に限定されることはなく、当該分野で使用されているものを用いることができる。
【0052】
本発明のインク組成物は、ビーズミル等の分散機に、(A)成分、(B)成分と(D)成分の混合物、及び(C)成分、インク組成物の粘度を調整するための追加の(D)成分、所望により任意成分、を一括又は分割して加えて攪拌・混合し、所望により、メンブレンフィルター等によりろ過することによって得られる。
【0053】
インクの粘度は、インクジェット記録システムの吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5〜30mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましく、約10mPa・s程度であることが、最も好ましい。ここで粘度は、23℃において0.1Pa/sの速度で剪断応力を0Paから増加させたときの10Paにおける値を表す。
【0054】
本発明のインク組成物を適用するインクジェット記録装置は、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよい。インクジェット記録装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから本発明に係るインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を記録媒体に付着させるようにすることが好ましい。
【実施例】
【0055】
<(B)アルキル(メタ)アクリレート共重合体の調製>
300mlの四つ口フラスコに、AF−7(ナフテン系溶剤;新日本石油(株)製)75gを入れ、窒素ガスを通気し、攪拌しながら110℃まで昇温した。次いで、温度を110℃に保ちながら、該四つ口フラスコに、表1に示す単量体混合物を入れ、そこへ16.7gのAF−7と4gのパーブチル O(t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート;日本油脂(株)製)との混合物を3時間かけて滴下した。その後、110℃に保ちながら1時間および2時間後に、パーブチル Oを各0.2g添加した。さらに110℃で1時間熟成を行い、12.7gのAF−7で希釈して、不揮発分50%の無色透明の共重合体(「比較メタクリレート共重合体」とする)溶液を得た。
【表1】
【0056】
500mLの四つ口フラスコに、上記共重合体溶液200g(固形分100g)、パルミチン酸イソオクチル(IOP、日光ケミカルズ(株)製)111g、プロピレングリコール4.0g、ジエタノールアミン2.8gを仕込み、窒素ガスを通気し攪拌しながら、110℃まで昇温し、該温度で1時間保った。得られた反応物に、ジブチル錫ジラウレートを0.2g添加し、7.3gのタケネート 600(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、三井化学ポリウレタン(株)製)と、65.7gのIOPの混合物を1時間かけて滴下した。滴下後、温度を120℃に昇温して6時間反応させ、冷却して、AF−7(ナフテン系溶剤;新日本石油(株)製)を70g加え、固形分25%のウレタン変性メタクリレート共重合体(「ポリマーa」とする)分散液を得た。得られたポリマーaのウレタン結合部は、共重合体の約12重量%である。また、GPCで測定された該ポリマーaのポリスチレン換算の重量平均分子量は20200であった。また、動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500(堀場製作所製)により測定したポリマーa分散液中のポリマーaの平均粒径(D50)は188nmであった。
【0057】
下表2に示す量の単量体及び重合開始剤(パーブチル O)を用いたことを除き、ポリマーaの調製と同様の方法で、ポリマーb〜d、及び比較のための、長鎖アルキル基を欠くポリマーf(「C8メタクリレート共重合体」とする)を調製した。
【表2】
【0058】
<実施例1〜9、比較例1〜9>
表3及び4に示す処方(重量%)に従い、各成分をガラス容器に入れ、これにジルコニアビーズ(φ0.5mm)80gを入れ、ロッキングミル(セイワ技研製 RM05S型)を用いて周波数60Hzで2時間運転し、インク組成物を調製した。表3及び4において、商品名で示す物の詳細は以下のとおりである。
【0059】
MA−100:カーボンブラック、DBP吸油量100cm/100g、窒素吸着比表面積110m/g、三菱化学社製
MA−11:カーボンブラック、DBP吸油量64cm/100g、窒素吸着比表面積92m/g、三菱化学社製
ソルスパース28000:ポリマー分散剤、ルブリゾール社製
ソルスパース5000:シナジスト、ルブリゾール社製
AF−7:ナフテン系溶剤、新日本石油社製
得られたインク組成物について、以下の方法により評価を行った。結果を表3及び4に示す。
【0060】
(1)印刷物の濃度
各インク組成物を、インクジェットプリンター「HC5500」(商品名:理想科学工業(株)製)に装填し、普通紙(理想用紙薄口(商品名:理想科学工業(株)製)に黒ベタを印字して、印刷物を得た。得られたベタ画像の表面と裏面のOD値を、光学濃度計(RD920、マクベス社製)を用いて測定し、以下の基準で評価した。表面のOD値が高ければ画像濃度が高く、裏面のOD値が低ければ裏抜けが少ないために、それぞれ好ましい。
印刷濃度(表OD)
A:1.10以上、B:1.05〜1.09、C:1.04以下
印刷濃度(裏OD)
A:0.25以下、B:0.26〜0.30、C:0.31以上
【0061】
(2)インクの吐出安定性
インクジェットプリンター「HC5500」(商品名:理想科学工業(株)製)を用いて、主走査方向約51mm(ノズル600本分)×副走査方向260mmのベタ画像を、100枚連続して印刷した。インクの不吐出による非印字部分は白いスジとなって観察されるが、この白スジが100枚の印刷物(延べでノズル6万本に相当)中に何本発生するかによって、吐出安定性を以下のように評価した。
不吐出なし:A、5本未満:B、5本以上:C
【0062】
(3)ワイピング耐久性の評価
上記吐出安定性の試験後、ヘッドメンテナンスのノーマルクリーニングにより、ヘッドクリーニングを所定の回数実施し、ワイピングブレードが接した部分の撥インク性を目視評価した。
A :ワイピングブレードが接した全ての部分において、ヘッドクリーニング後、即座にインクが完全にはじかれた。
B:ワイピングブレードが接した全ての部分において、ヘッドクリーニング後、20秒以内インクが完全にはじかれた。
C:ワイピングブレードが接した一部分において、撥インク性が低下していた。
D:ワイピングブレードが接した全ての部分において、撥インク性が低下していた。
【0063】
(4)インクの貯蔵(保存)安定性(70℃)
各インクを密閉容器に入れて、70℃の環境下で4週間放置した後、インクの粘度変化および粒度変化を測定し、その測定結果を以下のように評価した。粒度は、動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500(堀場製作所製)により測定した。
粘度又は粒度変化率:
[(4週間後の粘度又は粒度値×100)/(粘度又は粒度の初期値)]−100(%)
粘度および粒度変化率がどちらも5%未満のものをA、粘度および粒度のどちらか一方でも変化率が5%以上10%未満のものをB、粘度および粒度のどちらか一方でも変化率が10%以上のものをCとした。
【表3】
【表4】
【0064】
表3及び4に示すように、(A)イオン性物質を欠く比較例1及び比較例9、及び、アミン化合物又は酸を欠く比較例4〜6では、顔料がノズルに付着して、ワイピング耐久性が悪かった。ウレタン結合部を欠く比較メタクリレート共重合体を含む比較例2及び長鎖アルキル基を欠くC8メタクリレート共重合体を含む比較例7では、裏抜けが起こり、貯蔵安定性及び吐出安定性にも劣った。また、(B)共重合体に代えて一般的に使用されるポリマー分散剤を含む比較例3及び8では、印刷濃度が低かった。これらに対し、本発明のインク組成物を含む実施例は、DBP給油量64cm/100g、窒素吸着比表面積92m/gの低ストラクチャーカーボンブラックを用いた実施例6では印刷濃度が、(B)共重合体の重量平均分子量が約4万であった実施例8では吐出安定性が、(B)共重合体の重量平均分子量が約7000であった実施例9では貯蔵安定性が、夫々、若干劣ったものの、いずれも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の非水系インク組成物は、ノズルプレートに付着して残ることがほとんど無いので、ノズルプレートのワイピング耐久性を向上することができ、長期間、高い濃度の画像を形成することができる。