特許第5792447号(P5792447)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792447
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】フローリングセットの梱包方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/04 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   E04F15/04 601A
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2010-203576(P2010-203576)
(22)【出願日】2010年9月10日
(65)【公開番号】特開2012-57417(P2012-57417A)
(43)【公開日】2012年3月22日
【審査請求日】2013年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】平林 洋二
(72)【発明者】
【氏名】江村 賢
(72)【発明者】
【氏名】水島 邦具
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−065164(JP,A)
【文献】 特開2007−009489(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0159066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00−15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方向性を有する特徴のある柄を1乃至数カ所に有し、幅方向に三等分割した時に方向性を有する特徴のある前記柄が多くともその2枚に現れるような化粧柄が600〜1500mmで繰り返し連続的に印刷された3尺幅の印刷化粧シートを用意し、
前記印刷化粧シートを長手方向に並べた、3尺×6尺サイズの木質基板に貼着し、
前記印刷化粧シートが貼着された前記木質基板をひとつおきに前後反転させた後、前記木質基板を長手方向に沿って切断して幅方向に三等分割し、続いて実加工を施して1尺×6尺サイズのフローリング材を形成し、前後反転した、特徴のある柄を有するフローリング材または特徴のある柄を有しないフローリング材、および、前後反転していない、特徴のある柄を有するフローリング材または特徴のある柄を有しないフローリング材を前後の向きを変えることなく単位枚数だけ順に取り出して梱包することを特徴とするフローリングセットの梱包方法。
【請求項2】
方向性を有する特徴のある柄を1乃至数カ所に有し、幅方向に三等分割した時に方向性を有する特徴のある前記柄が多くともその2枚に現れるような化粧柄が600〜1500mmで繰り返し連続的に印刷された3尺幅の印刷化粧シートを用意し、
前記印刷化粧シートを長手方向に並べた、3尺×6尺サイズの木質基板に貼着し、
記印刷化粧シートが貼着された前記木質基板を長手方向に沿って切断して幅方向に三等分割して1尺×6尺サイズのシート付切断木質基板を形成した後、同一の前記木質基板から切り分けられた前記シート付切断木質基板を1セットとして、各セットひとつおきに前後反転させ、然る後、前記シート付切断木質基板に実加工を施してフローリング材とし、 前後反転した、特徴のある柄を有するフローリング材または特徴のある柄を有しないフローリング材、および、前後反転していない、特徴のある柄を有するフローリング材または特徴のある柄を有しないフローリング材を前後の向きを変えることなく単位枚数だけ順に取り出して梱包することを特徴とするフローリングセットの梱包方法。
【請求項3】
方向性を有する特徴のある柄を1乃至数カ所に有し、幅方向に三等分割した時に方向性を有する特徴のある前記柄が多くともその2枚に現れるような化粧柄が600〜1,500mmで繰り返し連続的に印刷されており、化粧柄が互いに異なる3尺幅の複数種類の印刷化粧シートを用意し、
複数種類の前記印刷化粧シートを長手方向に並べた、3尺×6尺サイズの木質基板に貼着し、
複数種類の前記印刷化粧シートが貼り付けられた前記木質基板をそれぞれひとつおきに前後反転させた後、長手方向に沿って切断して幅方向に三等分割し、続いて実加工を施して1尺×6尺サイズのフローリング材を形成し、前後反転した、特徴のある柄を有するフローリング材または特徴のある柄を有しないフローリング材、および、前後反転していない、特徴のある柄を有するフローリング材または特徴のある柄を有しないフローリング材を、前後の向きを変えることなく単位枚数だけ順に取り出して梱包することを特徴とするフローリングセットの梱包方法。
【請求項4】
方向性を有する特徴のある柄を1乃至数カ所に有し、幅方向に三等分割した時に方向性を有する特徴のある前記柄が多くともその2枚に現れるような印刷された化粧柄が互いに異なる3尺幅の複数種類の印刷化粧シートを1尺×6尺の大きさに切断して切断化粧印刷シートを用意し、
3尺×6尺の木質基板を長手方向に沿って幅方向に三等分割に切断して1尺×6尺の切断木質基板を形成し、
複数種類の切断化粧印刷シートを前記切断木質基板に貼着してシート付切断木質基板を形成した後、同一の前記木質基板から切り分けられた前記シート付切断木質基板を1セットとして、各セットひとつおきに前後反転させ、然る後、前記シート付切断木質基板に実加工を施してフローリング材とし、前後反転した、特徴のある柄を有するフローリング材または特徴のある柄を有しないフローリング材、および、前後反転していない、特徴のある柄を有するフローリング材または特徴のある柄を有しないフローリング材を前後の向きを変えることなく単位枚数だけ順に取り出して梱包することを特徴とするフローリングセットの梱包方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築物における床材として用いられる、表面に化粧シートが取り付けられたフローリングセットの梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図9(a)に示すように、例えば、3尺×6尺サイズで厚さが11.7mmの合板やMDF等からなる木質基板1の表面に、化粧柄が連続して印刷されてロール状に巻回された化粧シート2を貼り付け、然る後、これを幅方向に三等分割し、木口端面に実(さね)加工することによって構成された、長さ6尺×幅1尺×厚さ12mmであって幅方向に3枚ワンセットの化粧柄を有するフローリング材4が最も一般的に知られており、このフローリング材4を単位枚数分(通常は6枚のフローリング材=1坪単位)梱包してフローリングセット5が構成される。
【0003】
ところで、フローリング材4の化粧シート2の化粧柄は、予めデザインされた木目や幾何学模様等の柄をグラビア輪転印刷技術等で繰り返し連続的に印刷することによって構成されており、例えば、市場一般に流通しているシート印刷柄は、印刷設備の合理性等の理由で600〜1500mm単位長さで連続的に印刷されている(つまり、上述した化粧シート2の表面には、印刷柄が600〜1500mmごとに繰り返し表れることになる。)。
【0004】
特に木目がデザインされた化粧柄の場合、天然の材木の木目により似せるために、節、色、ヤニ、あるいは照り等といった「特徴のある柄X」を適宜配置したり、あるいはその他の手段(たとえば、特許文献1)を用いるといった、意匠性を向上させる工夫がなされており、このような「特徴のある柄X」を化粧柄に取り入れた場合、上述のような6尺長さのフローリング材4であれば、その表面に1〜2箇所の「特徴のある柄X」が現れることになる。
【0005】
このため、単位枚数分(例えば6枚)のフローリング材4を梱包して構成されたフローリングセット5には、同じ「特徴のある柄X」が描かれたフローリング材4が複数枚(上述の1坪梱包=6枚のフローリング材4であれば2枚)収容されることになる。
【0006】
このようなフローリングセット5を内装工事現場で複数セット用いてそのまま床面施工すると、規則的に繰り返して現れる(3枚ごとに1〜2箇所)「特徴のある柄X」が他のおとなしい部分に対して目立ってしまい、床面全体として不自然な印象を与えることになる問題が生じていた(図9(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−130200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みて開発されたものであり、本発明の主たる課題は、施工現場で梱包を解いて、フローリング材を順番に床面に配設したとき、化粧シートに印刷された「同一の特徴のある柄」が床面に規則正しく表れる頻度を下げるとともに、「特徴のある柄」同士を適度に離間させて配置することにより、床面に表れる化粧柄の見た目をより自然にすることのできるフローリングセットの梱包方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載した発明は、
「方向性を有する特徴のある柄29を1乃至数カ所に有し、幅方向に三等分割した時に方向性を有する特徴のある前記柄が多くともその2枚に現れるような化粧柄28が600〜1500mmで繰り返し連続的に印刷された3尺幅の印刷化粧シート14を用意し、
前記印刷化粧シート14を長手方向に並べた、3尺×6尺サイズの木質基板12に貼着し、
前記印刷化粧シート14が貼着された前記木質基板12をひとつおきに前後反転させた後、前記木質基板12を長手方向に沿って切断して幅方向に三等分割し、続いて実加工を施して1尺×6尺サイズのフローリング材を形成し、前後反転した、特徴のある柄29を有するフローリング材10a1または特徴のある柄を有しないフローリング材10b1、10b3、および、前後反転していない、特徴のある柄29を有するフローリング材10a2または特徴のある柄を有しないフローリング材10b2、10b4を前後の向きを変えることなく単位枚数だけ順に取り出して梱包することを特徴とするフローリングセット32の梱包方法」である。
【0010】
また、請求項2に記載した発明は、
「方向性を有する特徴のある柄29を1乃至数カ所に有し、幅方向に三等分割した時に方向性を有する特徴のある前記柄が多くともその2枚の現れるような化粧柄28が600〜1,500mmで繰り返し連続的に印刷された3尺幅の印刷化粧シート14を用意し
前記印刷化粧シート14を長手方向に並べた、3尺×6尺サイズ木質基板12に貼着し、
前記印刷化粧シート14が貼着された前記木質基板12を長手方向に沿って切断して幅方向に三等分割して1尺×6尺サイズのシート付切断木質基板12aを形成した後、同一の前記木質基板12から切り分けられた前記シート付切断木質基板12aを1セットSとして、各セットSひとつおきに前後反転させ、然る後、前記シート付切断木質基板12aに実加工を施してフローリング材10とし、前後反転した、特徴のある柄29を有するフローリング材10a1または特徴のある柄を有しないフローリング材10b1、10b3、および、前後反転していない、特徴のある柄29を有するフローリング材10a2または特徴のある柄を有しないフローリング材10b2、10b4を前後の向きを変えることなく単位枚数だけ順に取り出して梱包することを特徴とするフローリングセット32の梱包方法」である。
【0011】
請求項1および2に記載した発明によれば、「方向性を有する特徴のある柄29」を有する印刷化粧シート14を長手方向に並べた木質基板12に貼着した後、当該木質基板12をひとつおきに前後反転させ(請求項1)、あるいは当該「印刷化粧シート14が貼着された木質基板12」を長手方向に沿って切断してシート付切断木質基板12aを形成した後、同一の木質基板12から切り分けられたシート付切断木質基板12aを1セットSとして、各セットSひとつおきに前後反転させ(請求項2)、然る後、実加工を施して、「方向性を有する特徴のある柄29の有無」および「前後反転の有無」の点で互いに異なるフローリング材10を形成し、前後の向きを変えることなくこれらフローリング材10を単位枚数だけ順に取り出して梱包し、フローリングセット32を形成している。
【0012】
これにより、床面の施工現場でこのフローリングセット32の梱包を解いて各フローリング材10を順に床面に配設したとき、「方向性を有する特徴のある柄29」は、非反転状態、反転状態の順で配設されることになり、非反転あるいは反転状態の「方向性を有する特徴のある柄29」が同じ柄として把握し難くなることから、当該「方向性を有する特徴のある柄29」が常に同じ向きで配設される場合に比べて、より自然な状態となる。
【0013】
請求項3に記載した発明は、「方向性を有する特徴のある柄29A、29Bを1乃至数カ所に有し、幅方向に三等分割した時に方向性を有する特徴のある前記柄が多くともその2枚の現れるような化粧柄28A、28Bが600〜1500mmで繰り返し連続的に印刷されており、化粧柄が互いに異なる3尺幅の複数種類の印刷化粧シート14A、14Bを用意し
複数種類の前記印刷化粧シート14A、14Bを長手方向に並べた木質基板12に貼着し、
複数種類の前記印刷化粧シート14A、14Bが貼り付けられた前記木質基板12をそれぞれひとつおきに前後反転させた後、長手方向に沿って切断して幅方向に三等分割し、続いて実加工を施して1尺×6尺サイズのフローリング材を形成し、前後反転した、特徴のある柄29A、29Bを有するフローリング材10Aa1、10Ba1または特徴のある柄を有しないフローリング材10Ab1、10Ab3、10Bb1、10Bb3、および、前後反転していない、特徴のある柄29A、29Bを有するフローリング材10Aa2、10Ba2または特徴のある柄を有しないフローリング材10Ab2、10Ab4、10Bb2、10Bb4を、前後の向きを変えることなく単位枚数だけ順に取り出して梱包することを特徴とするフローリングセット32の梱包方法」である。
【0014】
請求項4に記載した発明は、「方向性を有する特徴のある柄29A、29Bを1乃至数カ所に有し、3尺幅で幅方向に三等分割した時に方向性を有する特徴のある前記柄が多くともその2枚に現れるような印刷された化粧柄28A、28Bが互いに異なる3尺幅の複数種類の印刷化粧シート14A、14Bを1尺×6尺の大きさに切断して切断化粧印刷シートYA、YBを用意し、
3尺×6尺の木質基板12を長手方向に沿って幅方向に三等分割に切断して切断して1尺×6尺の木質基板Zを形成し、
複数種類の切断化粧印刷シートYA、YBを前記切断木質基板Zに貼着してシート付切断木質基板12aを形成した後、同一の前記木質基板12から切り分けられた前記シート付切断木質基板12aを1セットSとして、各セットSひとつおきに前後反転させ、然る後、前記シート付切断木質基板12aに実加工を施してフローリング材10とし、前後反転した、特徴のある柄29A、29Bを有するフローリング材10Aa1、10Ba1または特徴のある柄を有しないフローリング材10Ab1、10Ab3、10Bb1、10Bb3、および、前後反転していない、特徴のある柄29A、29Bを有するフローリング材10a2、10Ba2または特徴のある柄を有しないフローリング材10Ab2、10Ab4、10Bb2、10Bb4を前後の向きを変えることなく単位枚数だけ順に取り出して梱包することを特徴とするフローリングセット32の梱包方法」である。
【0015】
請求項3および4に記載した発明によれば、請求項1に記載の梱包方法に加えて、さらに、「方向性を有する特徴のある柄29」を有するそれぞれの化粧柄28A、28Bが互いに異なる複数種類の印刷化粧シート14A、14Bを使用しているので、これらの梱包方法に基づいて構成したフローリングセット32の梱包を解いて各フローリング材10を順に床面に配設したとき、「同一の『方向性を有する特徴のある柄29』」が「同じ向き」で配置される頻度がさらに低くなることから、床面等に配置された化粧柄28をさらに自然な状態にすることができる。
【0016】
削除
【0017】
この発明では、1セットのフローリングセット32は6枚のフローリング材10で構成されており、1枚の木質基板12からは3枚のフローリング材10が切り出されることになる。つまり、1セットのフローリングセット32は、反転の有無において相違するフローリング材10(請求項1または2の場合)、あるいは化粧柄28A、28Bが互いに異なる2種類の印刷化粧シート14A、14Bが使用され、かつ、反転の有無で相違するフローリング材10(請求項3または4の場合)で構成されることになり、「同一の『方向性を有する特徴のある柄29』」が「同じ向き」で1つのフローリングセット32に梱包されることがなくなる。これにより、床面の施工現場で、1つのフローリングセット32から「同一の『方向性を有する特徴のある柄29』」が「同じ向き」で繰り返して配設される可能性がなくなるので、「方向性を有する特徴のある柄29」がより自然な状態で配置されることになる。
【0018】
削除
【0019】
削除
【発明の効果】
【0020】
本発明のフローリングセットの梱包方法によれば、施工現場で張り合わせた時に、「同一の『方向性を有する特徴のある柄』」が「同じ向き」で床面に表れる頻度が低下するとともに、これら「方向性を有する特徴のある柄」が連続して「同じ向き」で配設されることがなくなって互いに適度に離間して配置される。これにより、床面等に表された化粧柄の見た目をより自然にすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】フローリング材を示す断面斜視図である。
図2】フローリング材の他の実施例を示す断面図である。
図3】化粧柄の例を示す図である。
図4】第1の実施例に係るフローリングセットの梱包手順を示す図(a)、および当該フローリングセットを用いて施工した床面の柄を示す図(b)である。
図5】第2の実施例に係るフローリングセットの梱包手順を示す図である。
図6】第3の実施例に係るフローリングセットの梱包手順を示す図である。
図7】第3の実施例に係るフローリングセットを用いて施工した床面の柄を示す図である。
図8】第4の実施例に係るフローリングセットの梱包手順を示す図である。
図9】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施態様について図面を用いて説明する。なお、本明細書では、各符号に関し、各構成要素を上位概念で示す場合にはアルファベット(およびアラビア数字)の枝番をつけずアラビア数字のみで示し、各構成要素を区別する必要がある場合(すなわち下位概念で示す場合)にはアルファベットの枝番をアラビア数字に付して区別する。
【0023】
最初に、フローリング材10について図1を用いて説明すると、フローリング材10は、大略、木質基板12と、印刷化粧シート14と、クリア樹脂層16とで構成されている。
【0024】
木質基板12は、合板、LVL、MDF、集成材、パーティクルボード、ストランドボード、単板等の木質材料からなる短冊状の板材であり、その幅方向一方端面および長手方向一方端面には、矩形状断面を有する雄実部20が突設されており、また、幅方向他方端面および長手方向他方端面には、別のフローリング材に形成された雄実部20が嵌め込まれる雌実部22が凹設されている。なお、雄実部20および雌実部22の形状は、これに限られるものではなく、図2(a)に示すように、雄実部20の下面側に切除幅の大きい嵌合空間部24を形成し、雌実部22の下部に当該嵌合空間部24に係合する幅広の突出部26を形成してもよいし、図2(b)に示すように、木質基板12における幅方向一方端面の上半部側に雄実部20を形成し、幅方向他方端面にはその下半部側に雄実部20を突設するようにしてもよい。いわゆる、本実加工、あいじゃくり実加工、やとい実加工等の実加工形状は上記実施例に限られるものではないが、本発明の効果は、施工時の雄実あるいは雌実が予め決められている(すなわち、フローリング材10同士が互いに隣接する)本実加工やあいじゃくり実加工等において特に有効である。
【0025】
印刷化粧シート14は、図3に示すように、化粧柄28としてケヤキの木目模様がその表面に印刷された、例えば秤量25g/m2程度の薄葉紙であり(もちろん、印刷化粧シート14の材質はこれに限られるものではなく、晒クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙等の紙、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等のプラスチックフィルム、あるいは、鉄、アルミニウム、銅等の金属箔を用いることができる。また、秤量もこの限りではない。)、木質基板12の表面に例えば樹脂系接着剤を用いて貼着されている。また、印刷化粧シート14の表面に印刷される化粧柄28としては、上述したケヤキに代表される木目模様に限られることはなく、他品種の樹木の木目模様であってもよいし、幾何学模様等であってもよい。
【0026】
化粧柄28には、例えば木目模様であれば、節、ヤニスジ、ヤニツボ、入り皮、濃色部分等といった「方向性の有る特徴のある柄29」が適宜配置されている(図示実施例では、この内、「方向性の有る特徴のある柄29」として「節」が描かれている場合を示している。)。
【0027】
クリア樹脂層16(図1)は、フローリング材10表面の耐傷性、耐摩耗性、耐水性、耐汚染性等の表面保護性能を向上させるため、当該表面にアクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アミノ樹脂系、ポリエステル樹脂系等の透明合成樹脂塗料を塗布して形成されている。クリア樹脂層16は、床面に配設される前段階の個々のフローリング材10表面に塗布してもよいし、クリア樹脂層16形成前に複数のフローリング材10を床面に配設し、全てのフローリング材10を配設し終わってから、床面全体に上記クリア樹脂層16を形成してもよい。
【0028】
また、化粧柄28の表面に予めクリア樹脂層16が一体に形成された印刷化粧シート14を使用してもよい。印刷化粧シート14の表面に予めクリア樹脂層16を設ける場合は、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、オレフィン系樹脂等の透明樹脂シートを接着剤で積層一体化してもよいし、加熱一体化してもよい(もちろん、塗装により設けてもよい)。
【0029】
次に、このフローリング材10を製造するとともに、単位枚数のフローリング材10をまとめてフローリングセット32を構成する「フローリングセットの梱包方法」に係る第1の実施例について説明する。
【0030】
(第1の実施例)
最初に、図4(a)に示すように、「方向性を有する特徴のある柄29」を有する、予め規定した寸法の化粧柄28を用意し、この化粧柄28をロールされた長尺のシートに対して繰り返し連続的に印刷してロールされた印刷化粧シート14を形成する。本実施例において、印刷化粧シート14の幅は、3尺に設定されている。
【0031】
また、これらとは別に、印刷化粧シート14の幅とほぼ同じ寸法か、やや狭い幅を有する木質基板12を複数用意する。本実施例において、木質基板12は、3尺×6尺の大判サイズに設定されている。
【0032】
次に、ロール状に巻回された印刷化粧シート14を引き出しながら当該印刷化粧シート14の裏面に樹脂系接着剤をナイフコーター、ロールコーター等の接着剤塗布設備で塗布し、印刷化粧シート14を木質基板12に貼着した後、一定時間圧締養生を行って、木質基板12上に化粧シート14を積層一体化する。
【0033】
然る後、印刷化粧シート14が貼着された木質基板12をひとつおきに前後反転させた後、これらを長手方向に沿って切断(本実施例では、幅方向に三等分割されている。したがって、分割後のサイズは、1尺×6尺サイズとなる。)し、図示しないが、続いて、切り出した木質基板12の側面に雄実部20および雌実部22を形成することにより、1尺×6尺サイズのフローリング材10が完成する。
【0034】
このとき、上述したように、「方向性を有する特徴のある柄29」は、それぞれの化粧柄28中に1カ所ないし数カ所描かれているだけであるから、印刷化粧シート14を貼着した木質基板12を切断して複数枚のフローリング材10を形成したとき、その表面に「特徴のある柄29」が存在するもの10a1、10a2と、存在しないもの10b1〜4とが生じることになる。
【0035】
これにより、前後反転した、「方向性を有する特徴のある柄29」を有するフローリング材10a1またはそうでない(「方向性を有する特徴のある柄29」を有さない)フローリング材10b1、10b3、および、前後反転していない、「方向性を有する特徴のある柄29」を有するフローリング材10a2またはそうでない(「方向性を有する特徴のある柄29」を有さない)フローリング材10b2、10b4を含む組30が構成される。
【0036】
なお、本明細書では、「方向性を有する特徴のある柄を有するフローリング材」と、「そうでない(「方向性を有する特徴のある柄29」を有さない)フローリング材」という表現を用いているが、ひとつの化粧柄28には複数種類の「方向性を有する特徴のある柄」を配置することも当然可能であり、上記表現はあくまで、ある特定の「特徴のある柄29」に着目した表現であってフローリング材10に他の種類の「特徴のある柄」が描かれていないことを意味するものではない。つまり、「そうでない(「方向性を有する特徴のある柄29」を有さない)フローリング材」にも「方向性を有する特徴のある柄29」とは別種類の「方向性を有する特徴のある柄」が含まれている可能性がある(後述する他の実施例でも同じ)。
【0037】
また、この状態(個々のフローリング材10がバラバラの状態)でフローリング材10の表面にクリア樹脂層16を形成してもよいし、全てのフローリング材10を床面に配設し終わった後、床面全体にクリア樹脂層16を形成してもよい。
【0038】
然る後、組30から、前後反転した、「方向性を有する特徴のある柄29」を有するフローリング材10a1またはそうでない(「方向性を有する特徴のある柄29」を有さない)フローリング材10b1、10b3、および、前後反転していない、「方向性を有する特徴のある柄29」を有するフローリング材10a2またはそうでない(「方向性を有する特徴のある柄29」を有さない)フローリング材10b2、10b4を、前後の向きを変えることなくそれぞれ単位枚数取り出して梱包する(本実施例では、6枚のフローリング材10=1坪を単位枚数として)ことにより、フローリングセット32が完成する。
【0039】
この実施例によれば、方向性を有する特徴のある柄29を有する印刷化粧シート14が貼着された木質基板12を、「ひとつおきに前後反転」させたうえで長手方向に切断して、「方向性を有する特徴のある柄29の有無」および「前後反転の有無」で互いに異なるフローリング材10を形成し、これらの前後の向きを変えることなく単位枚数だけ順に取り出して梱包しているので、図4(b)に示すように、床面の施工現場でこのフローリングセット32の梱包を解いて当該フローリング材10を順に床面に配設したとき、「方向性を有する特徴のある柄29」は、非反転状態、反転状態の順で配設されることになる。
【0040】
これにより、化粧柄28における「同一の『方向性を有する特徴のある柄29』」が「同じ向き」で床面に表れる頻度が低下するとともに、これら「方向性を有する特徴のある柄29」が連続して「同じ向き」で配設されることがなくなって互いに適度に離間して配置されることにより、非反転あるいは反転状態の「特徴のある柄29」が同じ柄として把握し難くなることから、床面等に表された化粧柄28の見た目をより自然にすることができる。
【0041】
(第2の実施例)
第2の実施例は、図5に示すように、基本的に第1の実施例と同じであるが、「前後反転」を行うタイミングが第1の実施例と異なる。
【0042】
すなわち、「方向性を有する特徴のある柄29」を有する化粧柄28が印刷された印刷化粧シート14(本実施例において、印刷化粧シート14の幅は、3尺に設定されている)を、当該印刷化粧シート14の幅とほぼ同じ寸法か、やや狭い幅を有する長尺の木質基板12(本実施例では、3尺×6尺の大判サイズに設定されている)に貼着した後、一定時間圧締養生を行って、木質基板12上に印刷化粧シート14を積層一体化する。
【0043】
然る後、印刷化粧シート14が貼着された木質基板12を長手方向に沿って切断(本実施例では、幅方向に三等分割されている。したがって、分割後のサイズは、1尺×6尺サイズとなる。)してシート付切断木質基板12aを形成し、同一の木質基板12から切り分けられたシート付切断木質基板12aを1セットSとして、各セットSひとつおきに前後反転させつつシート付切断木質基板12aを積み上げる。そして、図示しないが、続いて、積み上げたシート付切断木質基板12aの側面に雄実部20および雌実部22を形成してフローリング材10が完成する。
【0044】
このようにして完成したフローリング材10の組30は、上述した第1の実施例における組30と同じであるから、本実施例の作用効果については、第1の実施例で説明した作用効果を援用する。
【0045】
(第3の実施例)
第3の実施例は、互いに異なる化粧柄28A、28Bを有する印刷化粧シート14A、14Bを使用するものである。最初に、図6に示すように、「方向性を有する特徴のある柄29」を有する、予め規定した寸法の化粧柄28を複数種類用意し(本実施例では、2種類の化粧柄28A、28Bを用意した場合について説明するが、3種類以上の化粧柄を用意してもよい。)、これら複数種類の化粧柄28A、28Bを、それぞれロールされた長尺のシートに対して繰り返し連続的に印刷してロールされた印刷化粧シート14A(化粧柄Aが印刷されたもの)およびロールされた印刷化粧シート14B(化粧柄Bが印刷されたもの)を形成する(本実施例において、印刷化粧シート14A、14Bの幅は、3尺に設定されている。)。
【0046】
また、これらとは別に、印刷化粧シート14の幅とほぼ同じ寸法か、やや狭い幅を有する木質基板12(本実施例では、3尺×6尺の大判サイズに設定されている)を複数用意する。
【0047】
次に、複数種類の印刷化粧シート14A、14Bを、樹脂系接着剤等を用いてそれぞれ木質基板12に貼着した後、各木質基板12をそれぞれひとつおきに前後反転させ、然る後、各木質基板12を長手方向に沿って切断(本実施例では、幅方向い三等分割されている。したがって、分割後のサイズは、1尺×6尺サイズとなる。)し、図示しないが、切り出した木質基板12の側面に雄実部20および雌実部22を形成してフローリング材10を形成する。
【0048】
これにより、化粧柄28A、28Bが互いに異なる、前後反転した、「方向性を有する特徴のある柄29A、29B」を有するフローリング材10Aa1、10Ba1と、そうでない(「方向性を有する特徴のある柄29A、29B」を有さない)フローリング材10Ab1、10Ab3、10Bb1、10Bb3と、前後反転していない、「方向性を有する特徴のある柄29A、29B」を有するフローリング材10Aa2、10Ba2と、そうでない(「方向性を有する特徴のある柄29」を有さない)フローリング材10Ab2、10Ab4、10Bb2、10Bb4とを含む、全部で12種類のフローリング材10が得られる(化粧柄28Aを有するフローリング材10を組30A、化粧柄28Bを有するフローリング材10を組30Bとする。)。
【0049】
なお、この状態(個々のフローリング材10がバラバラの状態)でフローリング材10の表面にクリア樹脂層16を形成してもよいし、全てのフローリング材10を床面に配設し終わった後、床面全体にクリア樹脂層16を形成してもよいことは上述したとおりである。
【0050】
然る後、各組30A、30Bから、各フローリング材10を、前後の向きを変えることなく単位枚数だけ順に取り出して梱包する(例えば、6枚のフローリング材10=1坪を1単位枚数として)ことにより、フローリングセット32が完成する。
【0051】
各組30A、30Bから取り出したフローリング材10を積み重ねる順番はどのようなものであってもよいが、図示するように、各組30A、30Bから交互に取り出す(つまり、同じ組A、30Bから取り出されたフローリング材10が連続して積まれていない状態になる。)ことが好適である。
【0052】
この実施例によれば、第1あるいは第2の実施例における作用効果に加えて、「化粧柄28の違い」、「特徴のある柄29の有無」、および「前後反転の有無(向きの違い)」で互いに異なるフローリング材10が形成され、これらの前後の向きを変えることなく単位枚数だけ順に取り出して梱包しているので、図7に示すように、床面の施工現場でこのフローリングセット32の梱包を解いて当該フローリング材10を順に床面に配設したとき、「同一の『方向性を有する特徴のある柄29』」が「同じ向き」で配置される頻度がさらに低くなるとともに、これら「同一の『方向性を有する特徴のある柄29』」が連続して配設されることがなくなって互いに適度に離間して配置される。これにより、第1の実施例にて説明した作用効果と相俟って、床面等に表された化粧柄28の見た目をさらに自然にすることができる。
【0053】
(第4の実施例)
第4の実施例は、第3の実施例と同様に互いに異なる化粧柄28A、28Bを有する印刷化粧シート14A、14Bを使用するものであるが、木質基板12に印刷化粧シート14を貼着してから当該木質基板12を切断するのではなく、図8に示すように、所望するフローリング材10の大きさに木質基板12を予め切断しておいた切断木質基板Zに、予め印刷化粧シート14A、14Bを切断しておいた切断化粧印刷シートYA、YBを貼着する点が異なっている。
【0054】
すなわち、最初に、方向性を有する特徴のある柄29A、29Bを有しており、互いに異なる化粧柄28A、28Bが印刷された複数種類の印刷化粧シート14A、14Bを所定の大きさに切断して切断化粧印刷シートYA、YBを用意しておく。本実施例において、各切断化粧印刷シートYA、YBのサイズは、1尺×6尺に形成されている。
【0055】
また、木質基板12を長手方向に沿って切断して切断木質基板Zを形成する。本実施例において、各切断木質基板Zは、3尺×6尺の木質基板12を幅方向に三等分割して1尺×6尺に形成されている。
【0056】
次に、各切断化粧印刷シートYA、YBを切断木質基板Zに貼着してシート付切断木質基板12aを形成した後、同一の木質基板12から切り分けられたシート付切断木質基板12aを1セットSとして、各セットSひとつおきに前後反転させつつシート付切断木質基板12aを積み上げ、積み上げられたシート付切断木質基板12aに(図示しない)実加工を施す。
【0057】
これにより、第3の実施例と同様に、化粧柄28A、28Bが互いに異なる、前後反転した、「方向性を有する特徴のある柄29A、29B」を有するフローリング材10Aa1、10Ba1と、そうでない(「方向性を有する特徴のある柄29A、29B」を有さない)フローリング材10Ab1、10Ab3、10Bb1、10Bb3と、前後反転していない、「方向性を有する特徴のある柄29A、29B」を有するフローリング材10Aa2、10Ba2と、そうでない(「方向性を有する特徴のある柄29」を有さない)フローリング材10Ab2、10Ab4、10Bb2、10Bb4とを含む、全部で12種類のフローリング材10が得られる(化粧柄28Aを有するフローリング材10を組30A、化粧柄28Bを有するフローリング材10を組30Bとする。)。
【0058】
このようにして完成したフローリング材10の組30A、30Bは、上述した第3の実施例における組30A、30Bと同じであるから、本実施例の作用効果については、第3の実施例で説明した作用効果を援用する。
【0059】
なお、上記第1〜第4の実施例では、大判として3尺×6尺サイズの木質基板12を使用し、所定サイズとして1尺×6尺サイズのフローリング材10を形成した。
【符号の説明】
【0060】
10…フローリング材
12…木質基板
14…印刷化粧シート
16…クリア樹脂層
20…雄実部
22…雌実部
24…嵌合空間部
26…突出部
28…化粧柄
29…特徴のある柄
30…(フローリング材の)組
32…フローリングセット
X…切断化粧印刷シート
Z…切断木質基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9