(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動倉庫においては、移動台車の走行位置を検出するため、ロータリエンコーダを備えた位置検出装置を設けている。この場合、最も単純な構造は、移動台車に、その走行によってレール上を転動する検知用ローラを設けて、このローラの回転をロータリエンコーダで微小なパルスとしてカウントし、そのパルス数から移動台車の走行距離を演算するものである。
【0003】
しかし、レールの凹凸や撓み変形、或いは移動台車の揺動等のためにローラがレールから離れることがあり、このため、ローラをレールに当てただけの単純な構造では、走行位置を正確に検出できない場合があった。
【0004】
そこで、検出精度を向上させた走行位置検出装置として、例えば特許文献1に開示された走行位置検出装置がある。
【0005】
この走行位置検出装置は、移動台車に設けた固定ブラケットに、2つのばねで垂直方向下向きに押された昇降式ブラケットを取付け、昇降式ブラケットにシーソー状に回動する揺動ブラケットを取付ける。揺動ブラケットに前後一対のローラを設け、ギア を介して両ローラと同期して回転する連動軸を、ロータリエンコーダのロータに接続する構成を採用している。
【0006】
この走行位置検出装置は、レールに凹凸や撓み変形があっても、一対のローラのうち少なくともいずれか一方のローラがレールに当っているため、走行位置の検出精度の向上を図っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の走行位置検出装置において、一対のローラへの付着物を取り除く等の理由から、手動により一対のローラをレールから持ち上げる必要性がある。
【0009】
この際、2本のばねに抗して平行にバランス良く、垂直方向上方に昇降式ブラケットを持ち上げる必要があるため、持ち上げ時に2つのばねをこじり易く、スムーズに行うことが極めて困難である。
【0010】
したがって、昇降式ブラケット(一対のローラ)の持ち上げ時に2つのばねの少なくとも一つがこじれた結果、ばねの弾性力等の特性の劣化の影響で位置検出装置自体の耐久性が悪くなり、経時変化と共に検出精度が劣化してしまうという問題点があった。
【0011】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、長期間において高い検出精度を維持することができる走行位置検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る請求項1記載の走行位置検出装置は、自動倉庫における移動台車に用いられる走行位置検出装置であって、移動台車の走行に伴って回転するようにレールの表面に転動自在に当接した複数のローラを備え、前記複数のローラは、レールの同じ面に当接しかつレールの長手方向に離反するように配置されており、互いに噛合した状態が保持されているギア群を介して前記複数のローラに同期して回転する連動軸と、前記連動軸の回転を検出するロータリエンコーダと、前記移動台車に、前記レールと直交した方向から見てシーソー状に回動し得ると共にばねで下向きに付勢された揺動ブラケットとをさらに備え、前記揺動ブラケットのうちその回動中心を挟んだ両側に、レールの表面に転動自在に当接するように前記複数のローラが設けられ、所定の回転軸を中心とした第1の回転方向に沿った回転動作を伴って前記揺動ブラケットを持ち上げることにより、前記複数のローラを前記レールから離反させることが可能な回転機構をさらに備え、前記第1の回転方向は、前記ばねの付勢力によって前記回転機構に加えられる回転方向である第2の回転方向と反対方向に設定され
、前記回転機構による前記第1の回転方向に沿った回転動作は、前記所定の回転軸と前記揺動ブラケットとの間にモーメントアームを有する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の本願発明は、回転機構によって、所定の回転軸を中心とした
第1の回転方向に沿った回転動作によって揺動ブラケットを持ち上げることにより、複数のローラをレールから離反させることが可能である。
この際、上記第1の回転方向は、ばねの付勢力によって回転機構に加えられる回転方向である第2の回転方向と反対方向に設定される。
【0014】
したがって、昇降式ブラケットを持ち上げる動作を、モーメントアームを利用した回転動作によって行うことができるため、持ち上げる動作時に揺動ブラケットを下向きに付勢するばねをこじらせることはなく、スムーズに行うことができる。
【0015】
その結果、請求項1記載の本願発明である走行位置検出装置は、揺動ブラケットの持ち上げ動作によってばねの特性を劣化させる可能性を確実に回避することにより、耐久性は影響を受けず、高い検出精度を維持することができる効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は実施の形態である走行位置検出装置が用いられる自動倉庫の一端部の概略を示す斜視図である。
図2は自動倉庫の部分的な概略を示す斜視図である。自動倉庫は、格納庫1と、格納庫1の一端部の近傍に設けた入出庫部2とを備えている。
【0018】
(概要)
格納庫1は、通路を挟んだ両側に多段に配置した多数の棚板3と、各段の棚板3に対応して水平上に配置した多数対のレール4と、各レール4を走行する移動台車5とを備えている。各棚板3は、通路側に位置した内側縦フレーム6と外側に位置した外側縦フレーム7、隣り合った外側縦フレーム6の間に差し渡し固定した水平状のリヤフレーム8で支持されている。
【0019】
レール4は内側縦フレーム6に固定されており、各段の内側縦フレーム6と棚板3とは同じ高さに設定されている。また、隣合った外側縦フレーム7は筋交い9で補強している。
【0020】
入出庫部2は、各段の棚板3から延長した状態に配置された棚板コンベヤ10と、支柱11に沿って自在に昇降する一対のリフトコンベヤ12とを備えている。各リフトコンベヤ12は平面視で棚板コンベヤ10と一直線状に延びるように配置されている。
【0021】
また、入出庫部2の近傍には、各リフトコンベヤ12と平面視で直列上に延びる入出庫用の搬送コンベヤ13を設けている。
図1に一点鎖線で示すように、上段に搬送コンベヤ14を設けても良い。なお、符号Wは荷物を示す。
【0022】
図3は移動台車5の平面図である。同図に示すように、移動台車5は、型鋼等で形成した平面視矩形状の本体枠16と、車軸17で連結された前後一対の車輪18と、一方の車輪18を駆動するモータ19と、走行方向と直交した方向に延びる固定式及び可動式のピッキング装置20及び21と、可動式ピッキング装置21を固定式ピッキング装置20に向けて移動調節するためのモータ22を備えている。モータ19,22は上面板23に取付けられている。
【0023】
両ピッキング装置20,21には、棚3に向けて進退動自在な復動式の移動アーム(図示せず)を内蔵しており、移動アームの両端には、荷物Wを押し引きするためのピッカー24を水平回動自在に取り付けている。ピッキング装置20,21は荷物Wが乗る載置板25を備えており、両載置板25は部分的に重なり合っている。
【0024】
(位置検出装置)
さらに、移動台車5内のモータ19及び車輪18の近傍に、本実施の形態に係る位置検出装置27を設けている。この点を
図4以下の図面に基づいて説明する。
図4は位置検出装置27の平面図、
図5は
図4のV−V視断面図、
図6は
図5のVI-VI視断面図、
図7は
図5のVII−VII視断面図、
図8は作用を示す説明図である。
【0025】
位置検出装置27は、移動台車5の本体枠16における上面板23上に設けられたベース板28上に載置された回転軸用支持台60に一対のホルダーアームプレート59の一端部が回転可能に取付けられている。以下、この点を詳述する。
【0026】
主として
図4及び
図5に示すように、回転軸用支持台60内に設けられた図示しない中空軸内に回転自在に回転軸58が挿入されており、回転軸58の両端に一対のホルダーアームプレート59それぞれの一方端がボルト57によって固定されている。したがって、ホルダーアームプレート59は回転軸58を回転軸として回転可能に設けられている。
【0027】
そして、ホルダーアームプレート59の他方端が昇降式ブラケット31の側面上部から上面の端部にかけて密着させながら、昇降式ブラケット31と一体形成されている。昇降式ブラケット31は下向き開口コ字状を呈している。
【0028】
昇降式ブラケット31には、側面視逆T字状に形成された左右一対の揺動ブラケット36が、その前後中央部を中心にしてシーソー状に回動するように一対の中空軸37によって取付けられている。
【0029】
左右の揺動ブラケット36には、その回動中心を挟んだ前後両側に、レール4に当接する一対のローラ38を、軸39によって回転自在に取付けている。両ローラ38には主動ギア40を一体に設けている一方、中空軸37に回転自在に嵌め入れた連動軸41に、主動ギア40に噛合する従動ギア42を一体に設けている(
図7参照)。なお、これらの図では表示していないが、ローラの外周面には摩擦を大きくするためにゴム層を設けている。
【0030】
さらに、昇降式ブラケット31に、移動台車5の方に向けて突出する平面視コ字状のブラケット43を固着し、このブラケット43にロータリエンコーダ44を取付け、ロータリエンコーダ44のロータ44aと連動軸41とを継手(カップリング)45で接続している。
【0031】
ブラケット43の平面視コ字状の開口部近傍の両側面に一対のばね取付部51が引っ掛けることによりばねを取付可能に形成されており、回転軸用支持台60上のブラケット43の側面付近に平面視一対のばね取付部51とY方向が一致するように一対のばね取付部52が設けられる。そして、一対のばね取付部51,一対のばね取付部52間に一対のばね50が設けられる。
【0032】
以上の構成において、前後のローラ38は上下逆向きに動き、しかもばね50の弾性復元力に伴う付勢力によって昇降式ブラケット31に下向きの力が加わるため、
図8に誇張して示すように、例えばレール4が凹んでいたり撓み変形したりすることによって一方のローラ38がレール4から浮いても、他方のローラ38は逆にレール4に向けて押し付けられることになる。したがって、少なくともいずれか一方のローラ38がレール4に当接するため、移動台車5の走行位置を正確に検出することができる。
【0033】
ところで、移動台車5の車輪18は常にレール4に当たっているため、レール4の撓み変形に関係なく、車輪18とレール4との相対的な高さ関係は一定であると言える。このため、本実施の形態のように車輪18の近傍に位置検出装置27を配置すると、位置検出装置27とレール4との相対的な高さをほぼ一定にすることができ、このため、ローラ38をレール4に当てた状態をより確実に保持して、検出精度をより向上させることができる。
【0034】
(昇降式ブラケット31の持ち上げ動作)
位置検出装置27において、昇降式ブラケット31に対し外部から何ら力を加えない通常時は、ばね50の付勢力によりホルダーアームプレート59が回転方向R2に力が加えられているため、昇降式ブラケット31に下向きに力が加えられる。
【0035】
実施の形態の走行位置検出装置27において、一対のローラ38への付着物を取り除く等の理由から、手動により昇降式ブラケット31を持ち上げて、一対のローラ38をレール4の表面から離反させる必要性がある。
【0036】
この場合、昇降式ブラケット31を把持しながら、昇降式ブラケット31を回転軸58を中心として回転方向R1に回転させることにより、ホルダーアームプレート59の長さ(回転軸58から昇降式ブラケット31との密着部分に相当する長さ)をモーメントアームとした力のモーメントが回転動作に作用する。このため、比較的弱い力でばね50の付勢力を抗して昇降式ブラケット31をスムーズに持ち上げて、一対のローラ38をレール4の表面から離すことができる。
【0037】
図9は従来の位置検出装置127における本実施の形態の
図6に対応する断面図である。なお、本実施の形態の位置検出装置27に対応する部分は同一符号を付すことにより説明を適宜省略する。
【0038】
同図に示すように、昇降式ブラケット31は、前後一対のロッド32を介して固定ブラケット30に昇降自在に取付いている。ロッド32には、外周に雄ねじを形成したブッシュ33が嵌まっており、ブッシュ33は固定ブラケット30にねじ込まれている。ブッシュ33にはロックナット34を設けている。ロッド32のうち昇降式ブラケット31とブッシュ33との間には一対のばね35が嵌まっている。
【0039】
したがって、従来の位置検出装置127において、一対のローラ38をレール4の表面から離反させる場合、この2本のばね35に抗して、昇降式ブラケット31の平行状態を維持させながら垂直方向上方に持ち上げる必要があるため、2つのばね35をこじり易く、スムーズに行うことが、本実施の形態の位置検出装置27に比較してかなり難しいことがわかる。
【0040】
このように、本実施の形態の位置検出装置27は、回転軸58を中心としホルダーアームプレート59を介して昇降式ブラケット31を回転させることにより、位置検出装置27における一対のローラ38のレール4の表面から離れるように、昇降式ブラケット31の持ち上げ動作を行うことができる。
【0041】
すなわち、実施の形態の位置検出装置27は、ボルト57、回転軸58、ホルダーアームプレート59及び回転軸用支持台60を主要構成とする回転機構によって、所定の回転軸である回転軸58を中心としたホルダーアームプレート59の腕の長さによるモーメントアームを有する回転動作を伴って揺動ブラケットである昇降式ブラケット31を持ち上げることにより、一対のローラ38をレール4の表面から離反させることが可能である。
【0042】
したがって、回転動作によって昇降式ブラケット31を持ち上げる際、ホルダーアームプレート59の長さをモーメントアームとして利用できるため、2本のばね50をこじらせることはなく、スムーズに昇降式ブラケット31を持ち上げることができる。
【0043】
その結果、本実施の形態の位置検出装置27は、昇降式ブラケット31の持ち上げ動作によって弾性力等のばね50の特性を劣化させる可能性を確実に回避することにより、耐久性は影響を受けず、高い検出精度を維持することができる効果を奏する。
【0044】
なお、レール4は棚3に近い部位ほど撓み変形しにくいため、位置検出装置27のローラ38もできるだけ棚3に近い部位でレール4に当接させるのが好ましい。
【0045】
複数のローラと連動軸とを同期して回転させる連動手段としてギアを使用すると、構造が簡単でしかも回転を正確に伝達できる利点がある。
【0046】
また、ローラはレールの上面に当接させることには限らず、側面や内面などに当接させても良い。また、連動軸とロータリエンコーダのロータとを一体化してもよい。
【0047】
なお、移動台車は図示の形態のものに限らず、荷物の出し入れのために走行するもの一般を指すもので、したがってスタッカクレーン等も含まれる。
【0048】
また、本実施の形態では、昇降式ブラケット31に下方向に力を加えるばねとして、斜め上方に傾けた形態の一対のばね50を示したが、一対のばねを垂直に設ける等、ばねの弾性復元力による付勢力によって通常時はローラ38がレール4に当接する状態にできれば他の態様で行っても良いことは勿論である。