(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792507
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】セメント成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 3/00 20060101AFI20150928BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20150928BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
B28B3/00 C
C04B24/38 A
C04B28/02
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-102133(P2011-102133)
(22)【出願日】2011年4月28日
(65)【公開番号】特開2012-232467(P2012-232467A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2014年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】山本 敦史
(72)【発明者】
【氏名】水野 素行
(72)【発明者】
【氏名】西浦 靖裕
(72)【発明者】
【氏名】木村 公洋
【審査官】
末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−363206(JP,A)
【文献】
特開平04−363205(JP,A)
【文献】
特開平08−164509(JP,A)
【文献】
特開平08−323721(JP,A)
【文献】
特開平09−029715(JP,A)
【文献】
特開平01−294570(JP,A)
【文献】
特開平09−314528(JP,A)
【文献】
特開昭63−256562(JP,A)
【文献】
特開平07−290424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
B28B 3/00−5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント及び水を含有するセメント材料を成形型でプレス成形するセメント成形品の製造方法であって、
前記成形型の成形面の温度を前記セメント材料に配合された増粘剤のゲル化温度よりも10℃〜20℃高い温度に設定し、この温度でプレス成形することを特徴とするセメント成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された発明において、前記増粘剤がメチルセルロースであることを特徴とするセメント成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載された発明において、成形型に離型剤を不使用であることを特徴とするセメント成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント材料をプレス成形して得られるセメント成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、成形型(型枠)を用いてセメント材料を連続してプレス成形することが行われている。このようなプレス成形の工程で、同じ成形型にて何度もプレス成形すると、成形型にセメント材料が付着し、製品の意匠を損なってしまうことがあった。このように成形型からのセメント成形品の離型は、生産時の不良率の低減や成形型のメンテナンス回数の低減等、製造面や品質面において大きな影響を与える技術であり、成形型へのセメント材料の付着を防止するものとして、成形型へ離型剤を塗布することが一般的であり、よく知られた技術である。また、成形型を熱し、離型する技術も公知であり(例えば、特許文献1参照)、離型技術の一つと言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−363206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、成形型へ離型剤を塗布する技術は、一回のプレス成形毎に成形型に離型剤を塗布する必要があり、生産性の低下を招くおそれがあった。
【0005】
また、成形型を高温化し、離型する技術は、設定温度範囲の根拠もなく、実際に温度が低いと成形型にセメント材料が付着してしまい、上手く離型できないことがあった。また、適正温度以上に成形型を暖めると、製品表面にシワ(材料切れ)等の成形不良が発生してしまい、製品として成り立たないことがあった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、生産性を低下させることがほとんどなく、成形不良を低減することができるセメント成形品の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るセメント成形品の製造方法は、セメント及び水を含有するセメント材料を
成形型でプレス成形するセメント成形品の製造方法であって、
前記成形型の成形面の温度を前記セメント材料に配合された増粘剤のゲル化温度よりも
10℃〜20℃高
い温度
に設定し、こ
の温度でプレス成形することを特徴とするものである。
【0009】
本発明において、前記増粘剤がメチルセルロースで
あることが好ましい。
【0010】
本発明において、成形型に離型剤を不使用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、生産性を低下させることがほとんどなく、成形不良を低減することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0014】
本発明のセメント成形品の製造方法は、セメント及び水を含有するセメント材料をプレス成形して所望の形状に成形し、この後、所望の形状に成形されたセメント材料を硬化させてセメント成形品を製造する方法である。
【0015】
上記のセメントとしては、例えば、ポルトランドセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、アルミナセメントなどが挙げられる。複数種類のセメントを併用することもできる。
【0016】
上記のセメント材料には増粘剤が配合される。増粘剤はセメント材料に粘性を付与し、プレス成形後のセメント材料の表面を平滑する作用を有するものである。増粘剤としては、メチルセルロース(MC)などのセルロース誘導体などを用いることができる。
【0017】
上記のセメント材料には、必要に応じて、セメント成形品の機械的強度などの物理的特性を向上させるために補強材を配合することができる。具体的には、繊維状補強材として、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維等の合成繊維や、炭素繊維、ガラス繊維、パルプなどを用いることができる。また、粒子状補強材として、砂利、パーライト、シラスバルーン、ガラス粉、アルミナシリケートなどの無機粒子を使用することができ、この場合、多孔質状あるいは中空状の無機粒子を使用することもできる。これらの他に、セメント材料には、必要に応じて、混和材、軽量骨材、分散剤などを配合することもできる。
【0018】
そして、セメントと増粘剤と補強材及び水、並びにその他の材料とを配合して混合することによって、セメント材料を調製することができる。この場合、各成分の配合量(配合割合)は適宜設定することが可能であるが、例えば、セメント50〜80質量部、増粘剤0.1〜5質量部、補強材0〜5質量部、水20〜35質量部、混和材0〜40質量部、軽量骨材0〜10質量部、分散剤0〜5質量部とすることができる。
【0019】
このセメント材料は、プレス成形により所望の形状に成形されたり、表面に凹凸模様が付与されたりする。また、プレス成形の前に、セメント材料を押出成形により平板等の所望の形状に成形し、押出成形後のセメント材料にプレス成形を施しても良い。また、プレス成形は、複数のセメント材料に対して連続的に行うことができ、また、長尺のセメント材料の複数箇所に連続的に行うようにすることもできる。
【0020】
そして、本発明では、プレス成形時の成形型の成形面(成形時にセメント材料と接触する面)の温度をセメント材料に配合した増粘剤のゲル化温度によって規定するものである。すなわち、増粘剤のゲル化温度よりも所定温度だけ高い温度を上限プレス温度とし、この上限プレス温度以下の温度に成形型の成形面を調整してプレス成形するものである。これにより、成形型の成形面からのセメント材料の離型性が向上し、製品表面にシワ(材料切れ)等の成形不良が発生しにくくなるものである。また、成形型に離型剤を塗布しておく必要もなく、生産性を向上させることができるものである。
【0021】
ここで、増粘剤としてメチルセルロースを用いた場合、そのゲル化温度が約60〜80℃のものが想定される。また、上限プレス温度としてはゲル化温度よりも20℃高い温度を設定することが好ましい。従って、上限プレス温度は約80〜100℃となり、この温度以下でプレス成形するものである。
【0022】
また、プレス成形時の成形型の成形面の温度は下限プレス温度よりも高い温度に設定するのが好ましい。下限プレス温度は、セメント材料に配合した増粘剤のゲル化温度よりも高い温度で、上限プレス温度よりも低い温度である。これにより、成形型の成形面からのセメント材料の離型性が向上し、製品表面にシワ(材料切れ)等の成形不良が発生しにくくなるものである。また、成形型に離型剤を塗布しておく必要もなく、生産性を向上させることができるものである。増粘剤としてメチルセルロースを用いた場合、そのゲル化温度が約60〜80℃のものが想定されるので、下限プレス温度は60〜80℃よりも高い温度となる。
【0023】
尚、プレス成形時の成形圧力は0.5〜10MPa、成形時間は0.1〜30秒間とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0024】
上記のようにしてプレス成形した後のセメント材料を養生硬化することによって、セメント成形品を製造することができる。ここで、養生硬化の条件としては、温度が約90℃で時間が約24時間とすることができるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0026】
セメント80質量部と、増粘剤であるメチルセルロース0.5質量部と、水27.5質量部と、補強材である有機繊維2質量部の割合で混合してセメント材料を調製した。次に、このセメント材料100gをプレス成形した。プレス成形は、
図1に示すように、上側のプレス板1と下側のプレス板2との間に成形型3として、厚さ1mmの上下一対のステンレス鋼板(SUS板)を配置し、この上下の成形型3、3の間にセメント材料4を配置した。また、下側のプレス板2の上面には高さ8mmのスペーサ5を配置した。そして、上側のプレス板1をスペーサ5の上面に接触するまで下動させ、この状態で10秒間保持した。プレス成形時の成形圧力は1MPaとした。尚、離型剤は使用していない。次に、プレス成形した後、成形後のセメント材料を脱型し、温度90℃で24時間養生硬化してセメント成形品を製造した。
【0027】
このようなセメント成形品の製造方法において、ゲル化温度の異なる三種類のメチルセルロースを用いると共に成形温度(成形型3の成形面の温度)を50〜110℃で10℃ずつ変えた。そして、セメント材料の成形型からの離型性とプレス成形後のセメント材料の表面のシワの発生状況を評価した。
【0028】
セメント材料の成形型からの離型性は、成形型にセメント材料が付着せずに離型できたものを○、成形型にセメント材料がほとんど付着せずに離型できたものを△、成形型にセメント材料が付着して離型できなかったものを×とした。
【0029】
プレス成形後のセメント材料の表面のシワの発生状況は、シワが無いものを◎、シワが極少のものを○、シワが少ないものを△、シワが多いものを×とした。
【0030】
結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1から明らかなように、離型性及びシワの発生状況の両方が良好なものは、増粘剤のゲル化温度が60℃で成形温度が70℃(ゲル化温度よりも10℃高い温度)、増粘剤のゲル化温度が70℃で成形温度が80〜90℃(ゲル化温度よりも10〜20℃高い温度)、増粘剤のゲル化温度が80℃で成形温度が90℃(ゲル化温度よりも10℃高い温度)の場合であった。
【0033】
増粘剤がゲル化温度60℃〜80℃のメチルセルロースの場合は、下限プレス温度をゲル化温度より高く、且つ上限プレス温度をゲル化温度から20℃高い温度より低く設定するのが最適である。このようにプレス温度を設定することで、離型剤を用いなくても容易に離型することができ、しかも材料表面にシワが発生するのを抑制することができる。なお、成形型表面が非常に複雑な形状の場合には、補助的に離型剤を併用してもよいものである。