【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水溶性ポリビニルアセタール樹脂及び水を含有する防曇性樹脂組成物であって、
前記水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、平均重合度が
2200〜3500、水酸基量が65〜80モル%及びアセタール化度が4〜20モル%であり、かつ、アセタール化された全構成単位のうち、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が90%以上である防曇性樹脂組成物である。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は、防曇性樹脂組成物の構成樹脂として所定の構造を有する水溶性ポリビニルアセタール樹脂を用い、かつ、その平均重合度、水酸基量及びアセタール化度を所定の範囲内とすることにより、防曇性を維持しながら、優れた塗工性、耐水性及び接着性を実現することが可能な防曇性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の防曇性樹脂組成物は、平均重合度が1500〜3500、水酸基量が65〜80モル%及びアセタール化度が4〜20モル%であり、かつ、アセタール化された全構成単位のうち、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が90%以上である水溶性ポリビニルアセタール樹脂を含有する。
【0011】
本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、平均重合度の下限が1500、上限が3500である。上記平均重合度が1500未満であると、水溶性ポリビニルアセタール樹脂を含有する防曇性樹脂組成物の粘度が低下し、塗工する際に液垂れが生じたり、塗膜の表面平滑性が低下したりする。また、防曇性樹脂組成物の耐水性が低下して、塗膜の膨潤や溶解が生じる。
上記平均重合度が3500を超えると、塗工する際のレベリング性が低下して、塗膜の表面の凹凸が大きくなる。本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度の好ましい下限は1700、好ましい上限は3300である。
なお、本明細書において、水溶性ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は、原料である変性ポリビニルアルコールの平均重合度から求めることができる。また、本明細書において、変性ポリビニルアルコールの平均重合度とは、混合物である変性ポリビニルアルコールにおけるそれぞれの変性ポリビニルアルコールの重合度から求めた平均値を意味する。
【0012】
上記水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量の下限が65モル%、上限が80モル%である。上記水酸基量が65モル%未満であると、水溶性ポリビニルアセタール樹脂の吸水性が低下したり、防曇性樹脂組成物の粘度安定性が低下したりする。上記水酸基量が80モル%を超えると、水溶性ポリビニルアセタール樹脂の吸水性が高くなって安定性が低下する。上記水酸基量の好ましい下限は70モル%、好ましい上限は80モル%である。
【0013】
上記水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール化度の下限が4モル%、上限が20モル%である。上記アセタール化度が4モル%未満であると、吸水性は良いが、耐水性が悪く、充分な防曇性を得ることが出来ない。20モル%を超えると、防曇性樹脂組成物のガラス等の基材への密着性が低下する。
上記アセタール化度の好ましい下限は5モル%、好ましい上限は15モル%である。
【0014】
上記水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール化された全構成単位(全アセタール化度)のうち、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が90%以上である。これにより、低アセタール化度とした場合でも、吸水性、耐水性、透明性の良好な防曇性樹脂組成物が得られる。
上記芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が90%未満であると、耐水性が悪くなり、充分な防曇性を得ることができなくなる。
上記芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合の好ましい下限は90%、好ましい上限は100%である。
【0015】
上記芳香族アルデヒドとしては、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、その他のアルキル置換ベンズアルデヒド、クロルベンズアルデヒド、その他のハロゲン置換ベンズアルデヒド等が挙げられる。
また、芳香族環にヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基等の置換基を持った芳香族系アルデヒドを用いてもよい。なかでも、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒドが好ましい。
【0016】
上記水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、芳香族アルデヒドを含有するアルデヒドにより、ポリビニルアルコールを水中でアセタール化することによって得ることができる。
【0017】
上述した芳香族アルデヒド以外のアルデヒドは特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒド又はブチルアルデヒドを単独で用いるか、又は、アセトアルデヒド及びブチルアルデヒドを併用することが好ましい。
【0018】
本発明の防曇性樹脂組成物における上記水溶性ポリビニルアセタール樹脂の含有量の好ましい下限は3重量%、好ましい上限は20重量%である。上記範囲内とすることで、塗工時のムラがなく、防曇機能を発揮できる。
【0019】
本発明の防曇性樹脂組成物は、上記水溶性ポリビニルアセタール樹脂に加えて水を含有する。
上記水としては特に限定されないが純水等を用いることができる。
【0020】
本発明の防曇性樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、公知の各種添加剤を配合してもよい。上記添加剤としては、吸水性能を改善するためのグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、その他各種の界面活性剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、レベリング剤、チキソ付与剤、皮張り防止剤、可塑剤、増粘剤、希釈剤、反応性希釈剤、架橋剤、フィラー、色素(顔料、染料)、防腐、防かび剤等が挙げられる。
【0021】
上記界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性のいずれのものを使用してもよい。上記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、芳香族アミン系、硫黄系、リン系等が挙げられる。上記老化防止剤としては、例えば、アミン類、フェノール類等が挙げられる。
【0022】
本発明の防曇性樹脂組成物は、構成樹脂として所定の構造を有する水溶性ポリビニルアセタール樹脂を用い、かつ、その平均重合度、水酸基量及びアセタール化度を所定の範囲内とすることにより、防曇性を維持しながら、優れた塗工性、耐水性及び接着性を実現することができる。
本発明の防曇性樹脂組成物の用途は特に限定されないが、例えば、自動車のリアガラス、サイドガラス、フロントガラス、サンルーフ、ルームミラー等の各種ガラス、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の農業用被覆フィルム、ペットボトル、そのラベル等に使用される防曇剤等が挙げられる。また、本発明の防曇性樹脂組成物は、各種ガラスの防曇性被覆材にも使用することができる。
【0023】
本発明の防曇性樹脂組成物をガラスの防曇性被覆材として使用する場合、用いられるガラスとしては特に限定されず、一般に使用されている透明ガラスを使用することができる。具体的には例えば、フロートガラス、磨きガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入りガラス、着色されたガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。
本発明の防曇性樹脂組成物を塗工することにより防曇性被覆層を形成する場合、形成される防曇性被覆層の厚みは特に限定されないが、防曇性能を効果的に発現させるため、3〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。