【実施例1】
【0037】
図1並びに
図2の(a)及び(b)には、通常運針状態S1にある本発明の好ましい一実施例の針合わせ機構1を備えるアナログ時計2の一部が示されている。この通常運針状態S1では、巻真3がA1方向に押込まれた位置すなわち巻真ゼロ段目位置P1を採る。なお、アナログ時計2の針合わせ機構1が、針合わせ状態S2にあって、巻真3がA2方向に引出された位置すなわち巻真一段目位置P2を採る場合については、
図3並びに
図4の(a)及び(b)に示されている。
【0038】
アナログ時計2は、
図1に加えてその一部を拡大した
図2の(a)及びその断面の端面を表す
図2の(b)に示したように、地板10及び輪列受17等に支えられた運針用輪列6を備える。電池5により給電された時計用モータ7で駆動される運針用輪列6は、時車(筒車)20と、分車(二番車)30と、秒車(四番車)23と、時車20と分車30とをつなぐ日の裏車27と、分車30と秒車23とをつなぐ三番車40と、時計用モータ7のロータ歯車部7aと秒車23とをつなぐ歯車部19a及びかな部19bを備えた五番車19とを含む。
【0039】
概ね厚板状の地板10は、中央に二番真挿通孔としての貫通孔部11を備え、地板10の主面部としての裏蓋18側の平面状表面10aのうち中央孔部11の概ね円筒状の周壁部12が裏蓋18側に突出している。この円筒状凸部ないし円筒状周壁部12はL1程度の高さを有すると共に、その周方向の一部に扇形の切欠部13を有する。切欠部13は、円筒状周壁部12の径方向に見た場合、その内周面部12aから外周面部12bまでの全領域が切欠かれてなる横断面が扇形で高さがL1の空間Vからなる。
【0040】
中心軸線Cのまわりで回転自在な筒車20は、地板10の文字板8側に位置する筒歯車部21と、先端に時針20aが取付けられた大径筒状部22とを含む。
【0041】
中心軸線Cのまわりで回転自在な分車30は、地板10の裏蓋18側に位置する二番歯車部31と、その更に裏蓋18側に位置する二番かな部32と、二番歯車部31及び二番かな部32と一体的で且つ地板10の中央孔部11内を回転自在に貫通して文字板8側に突出した二番真としての中径筒状部33とを含む。中径筒状部33の突出端には、分針30aが取付けられている。中径筒状部33のうち地板10の円筒状周壁部12を貫通する長手方向部分34は、円筒状周壁部12の切欠部13に対面する周方向領域35で、露出している。この露出領域35となる部位ないし長手方向部分34は、三番かな部42と噛合する二番歯車部31及び日の裏歯車部28と噛合する二番かな部32として機能する歯部になっていない部分であれば、摩擦係合され易いように粗面化されていても、該粗面形状が比較的大きい凹凸によって実現されていてもよい。なお、露出される部位35が粗面化されることなく比較的滑らかな面になっていてもよい。いずれの場合であっても、部位34の横断面は実際上円形である。
【0042】
中心軸線Cのまわりで回転自在な秒車23は、輪列受17に隣接する部位に位置する四番歯車部24と、その地板10側に位置する四番かな部25と、一端で輪列受17に回転自在に支持され四番歯車部24及びかな部25と一体的で筒状の二番真33を回転自在に貫通して文字板8側に突出している四番真26とを含む。四番真26の突出端には秒針23aが取付けられている。
【0043】
日の裏車27は、日の裏歯車部28で二番かな部32に噛合され、日の裏かな部(図示せず)で筒歯車部21に噛合されている。
【0044】
一方、三番車40は、三番歯車部41で四番かな部25に噛合されていて、三番かな部42で二番歯車部31に対して係脱可能ないし離脱可能に噛合される。三番歯車部41及び三番かな部42と一体的な三番真43は、文字板8側の端部44において可動な軸受部90で支持されている。三番真43の裏蓋18側の端部は輪列受18の軸受部18aで回転自在に支持されている。
【0045】
針合わせ機構1は、巻真3によって作動される作動レバーとしての規正レバーないし規制レバー4を備える。なお、この規制レバー4は電池5の一方の端子に電気的に接続された金属製板状体からなり、リセットレバーとしても働く。
【0046】
規制レバー4は、一端部51において中心軸線BのまわりでB1,B2方向に回動自在に支持された概ね剛性の規制レバー本体部50と、該規制レバー本体部50の他端部52にB2方向弾性偏倚力を与えている反力生成ばね部としての作動レバーばね部ないし規制レバーばね部60と、規制レバー本体部50に対してB1方向弾性偏倚力を与える入力側ばね部70と、規制レバー本体部50と一体的で二番車30に回転規制力を与えるべく規制レバー本体部50の中間の一部位53から分岐して延びた二番車回転規制部80と、規制レバー本体部50の中間の別の一部位54において三番真42の端部ないしほぞ部44を回転自在に支持する三番真係合部としての軸受部をなす三番真ほぞ受部90とを有する。二番車回転規制部80と三番真ほぞ受部90とは、中心軸線Cについて直径方向の概ね反対側に位置する。なお、規制レバー4の本体部50の部位54においてほぞ受部90よりも文字板8側に三番真43のほぞ部44が突出する虞れがある場合には、
図2の(b)や
図4の(b)に示したように、地板10のうちほぞ受部90に対面する可能性のある領域において、地板10の表面10aに逃げとなる凹部10bが形成される。
【0047】
規制レバー4のばね部60は、規制レバー本体部50の端部52につながった基端部61から地板10のばね受14に係合する先端係合部62までU字状に延びたU字状ばね本体部63を備え、ばね受14からのB2方向弾性偏倚力を規制レバー本体部50の端部52に及ぼす。
【0048】
規制レバー4の入力側ばね部70は、規制レバー本体部4の端部51につながった基端部71から巻真3の先端部3aの側縁部3bに先端73で係合する剛性の被係合部74の基端部75まで概ね直線状に延びた直線状ばね本体部76を備え、巻真3がA2方向に押込まれた巻真ゼロ段目位置P1にある際に巻真3の先端部3aの側縁部3bに被係合部74の先端73で係合してB1方向偏倚力を受け(
図1及び
図2の(a))、巻真3がA1方向に引出された巻真一段目位置P2を採ると、巻真3が被係合部74から離れるので、被係合部74が巻真3から受けるB1方向回動力が解除される(
図3及び
図4の(a))。
【0049】
規制レバー4のうち入力側ばね部70の被係合部74以外の部分、即ち規制レバー本体部50、直線状ばね本体部76、及び規制レバーばね部60は、全体として、地板10の裏蓋18側平面10aに沿って延在する平板の形態である。但し、所望ならば部分的に非平板状であってもよい。
【0050】
規制レバー4の二番真係合部としての二番車回転規制部80は、規制レバー本体部50の部位53から概ね直線状に延びる基部側腕部81と、基部側腕部81の先端部82から、地板10の円筒状周壁部ないし円筒状凸部12の切欠部13に露出した二番真33の(露出)部分35に向かって、概ね直角な方向に延びた先端側腕部83とを有する。この例では、先端側腕部83の方が基部側腕部81よりも幅が広く、より剛性が高い。また、この例では、基部側腕部81と先端側腕部83とのなす角度は、90度以下である。基部側腕部81のばね力は、二番歯車の外周歯部を押えていた従来の規制部(
図6〜
図8の腕部134)のばね力よりもはるかに大きいけれども、規制レバーばね部60のばね力よりも小さい。
【0051】
巻真3がA1方向に押し込まれた通常運針位置(巻真ゼロ段目位置)P1を採る場合、規制レバーばね部60よりもばね力の強い入力側ばね部70のばね力の作用下で規制レバー4がB1方向に回動された通常運針位置Q1に設定されるので、二番車回転規制部80もB1方向に回動され、先端側腕部83の先端部84の端面85は、円筒状凸部12の切欠部13内で二番真33の筒状部34の露出部位35から遠ざかった離間位置Q11を採る(
図1並びに
図2の(a)及び(b))。
【0052】
一方、巻真3がA2方向に引き出された針合わせ位置(巻真一段目位置)P2を採る場合、規制レバーばね部60のばね力の作用下で規制レバー4がB2方向に回動された針合わせ位置Q2に設定されるので、二番車回転規制部80もB2方向に回動され、先端側腕部83の先端部84の端面85が円筒状凸部12の切欠部13内で二番真33の筒状部34の露出部位35に押付けられる二番真規制位置Q21を採る(
図3並びに
図4の(a)及び(b))。ここで、厳密には、二番車回転規制部80のうち先端側腕部83の先端部84の端面85が二番真係合部として働く。
【0053】
なお、作動レバー4のうち三番真ほぞ受部90についていえば、巻真3が通常運針位置(巻真ゼロ段目位置)P1を採り規制レバー4がB1方向に回動された通常運針位置Q1を採る場合、規制レバー4の本体部50の部位54にある軸受部すなわち三番真ほぞ受部90で三番真43の端部44が支持された三番車40の三番かな部42は、二番歯車31に噛合された通常運針噛合位置Q12を採る(
図1並びに
図2の(a)及び(b))。ここで、三番かな部42が二番歯車31と噛合する部位は、二番真係合部として働く二番車回転規制部80の先端側腕部83の先端面85に対して概ね直径方向の反対側の部位である。
【0054】
一方、巻真3が引出された針合わせ位置(巻真一段目位置)P2を採り規制レバー4がB2方向に回動された針合わせ位置Q2を採る場合、三番車40の三番かな部42は、二番歯車31から離れて該二番歯車31との噛合が解除された噛合解除針合わせ位置Q22を採る(
図3並びに
図4の(a)及び(b))。
【0055】
以上の如く構成された本発明の好ましい一実施例の針合わせ機構1を備えた本発明の好ましい一実施例のアナログ時計2の針合わせ動作について、
図1〜
図4に加えて
図5を参照して、より詳しく説明する。
【0056】
巻真3がA1方向に押し込まれた通常運針位置(巻真ゼロ段目位置)P1を採る場合、規制レバーばね部60よりもばね力の強い入力側ばね部70のばね力の作用下で規制レバー4がB1方向に回動された通常運針位置Q1に設定されるので、規制レバー4の本体部50の部位54にある軸受部90で三番真43の端部44が支持された三番かな部42が二番歯車31と深く噛合した通常運針噛合位置Q12を採り、二番車回転規制部80の先端側腕部83の先端部84の端面85が、円筒状凸部12の切欠部13内で二番真33の筒状部34の露出部位35から遠ざかった離間位置Q11を採る(
図1、
図2の(a)及び(b)、並びに
図5の(d))。
【0057】
一方、巻真3がA2方向に引き出された針合わせ位置(巻真一段目位置)P2を採る場合、規制レバーばね部60のばね力の作用下で規制レバー4がB2方向に回動された針合わせ位置Q2に設定されるので、規制レバー4の本体部50の部位54にある軸受部90で三番真43の端部44が支持された三番かな部42が二番歯車31からB2方向に離れて該二番歯車31との噛合が解除された噛合解除針合わせ位置Q22を採る。このとき、二番車回転規制部80もB2方向に回動され、先端側腕部83の先端部84の端面85が円筒状凸部12の切欠部13内で二番真33の筒状部34の露出部位35に比較的強い力Fで押付けられる二番真規制位置Q21を採る(
図3、
図4の(a)及び(b)、並びに
図5の(a))。
【0058】
時計2の針合わせ機構1においては、巻真3についての巻真一段目位置ないし針合わせ位置P2すなわち規制レバー4についての針合わせ位置Q2では、巻真3の中心軸線EのまわりでのE1,E2方向の回転に応じて図示しないつづみ車や小鉄車を介して日の裏車27が回転され、該日の裏車27の回転に応じて時車(筒車)20及び分車(二番車)30が回転されて、時針20a及び分針30aが所定位置に設定される。
【0059】
より詳しくは、この状態S2では、規制レバーばね60の作用下で規制レバー4の本体部50が最大限B2方向に回動偏倚された位置Q23を採るので、二番車回転規制部80の弾性変形(実際上、基端側腕部81の弾性変形)がないとすると、先端側腕部83は、
図5の(a)において想像線83iで示したように、二番真33に対して深く入り込む位置を採るところ、基端側腕部81が押付力Fの反作用Fを受けて多少弾性変形された状態で、先端側腕部83の先端部84の端面85が二番真33の露出部35の円筒状周面36に強く押付けられる。ここで、二番真33の露出部35の周面36は、二番歯車31と一体的な二番真33の一部であるので、先端側腕部83の先端部84の端面85が一旦二番真33の露出部35の円筒状周面36に押付けられると、
図8に示したような平歯車の形態の二番歯車の外周歯部に押付けられる場合とは異なり、当該押付部において確実に二番真33の回転を規制し得る。また、先端側腕部83の先端部84の端面85が押付けられるのが、二番歯車部の如き薄くて大径の歯車部の外周縁と異なり円筒状ないし棒状の二番真33の外周部であるので、比較的大きな押付力Fで二番車30を規制し得るから、回転規制が確実に行われ得る。更に、この時計2の針合わせ機構1では、規制レバー4の本体部50の全体が二番車回転規制部80の腕部81,83を含めて同一平面上に位置する板状体の形態であるので、
図8のように二番真規制部が時計の厚さ方向に立ち上がった形状を有する場合と異なり、折曲部等の干渉を避けるための余分のスペースを要しないだけでなく、規制レバー4の力Fが該平面に沿って確実に二番真33に加えられ得るから、回転規制が確実に行われ得る。
【0060】
なお、
図5の(a)の通常運針状態S1から
図5の(d)の針合わせ状態S2に至る過程については、次の通りである。
【0061】
即ち、巻真3がA1方向に押し込まれた通常運針位置(巻真ゼロ段目位置)P1を採る通常運針状態S1(
図1、
図2の(a)及び(b)、並びに
図5の(d))から巻真3がA2方向に引出されるにつれて、巻真3の先端部3aの側縁3bと規制レバー4の入力側ばね部70との係合が浅くなって規制レバー4の本体部50が徐々にB2方向に回動されるから、該本体部50の部位53につながった二番車回転規制部80も少しずつB2方向に回動されて該二番車回転規制部80の先端側腕部83の先端部84の端面85が三番真33の露出部35に徐々に近付き、ついには、先端側腕部83の先端部84の端面85が三番真33の露出部35に当接する(
図5の(c))。一方、規制レバー4の本体部50のB2方向回動につれて、該本体部50の部位54の軸受部90で支持された三番真43の三番かな部42も少しずつB2方向に回動されて、三番かな部42と二番歯車部31との噛合いが徐々に浅くなるけれども、
図5の(c)に示したように、先端側腕部83の先端部84の端面85が三番真33の露出部35に当接した状態S3では、三番かな部42の歯46と二番歯車部31の歯37との係合ないし噛合いが僅かではあるけれども残っている。従って、二番車30の回転は、三番かな部42によって実際上規制されたままである。
【0062】
図5の(c)に示した状態S3からから巻真3が更にA2方向に引出されると、巻真3の先端部3aの側縁3bと規制レバー4の入力側ばね部70との係合が更に浅くなって規制レバー4の本体部50が更にB2方向に回動されるから、該本体部50の部位54の軸受部90で支持された三番真43の三番かな部42も少しずつB2方向に回動されて、三番かな部42の歯46と二番歯車部31の歯37との噛合いが徐々に浅くなって、ついには、
図5の(b)に示したように、歯46,37間の係合が実際上なくなる状態(歯46,37の頂点が当接する状態)S4に達する。
図5の(c)に示した状態S3から
図5の(b)に示した状態S4に至る間に、規制レバー4の本体部50が多少B2方向に回動され、二番車回転規制部80が剛体であればこの回動により二番車回転規制部80の先端側腕部83が
図5の(b)において想像線83iで示す位置に達すべきところ基端側腕部81の弾性変形により、先端側腕部83の先端部84の端面85が三番真33の露出部35の周面36に当接した状態に保たれる。なお、ここで生じた基端側腕部81の弾性変形に伴う押付力によって先端側腕部83の先端部84がその端面85で三番真33の露出部35の周面36に押付けられるので、歯車部42,31の噛合による規制はなくなっても、二番真33の回転は、それなりに規制され得る。
【0063】
この後、
図5の(b)の状態S4から
図5の(a)の状態S2に至るまで、歯車部42,31の噛合による規制はなく、先端側腕部83の先端部84の端面85が三番真33の露出部35の周面36に押付けられる押付力が増大することになる。
【0064】
以上のとおり、このアナログ時計2の針合わせ機構1では、
図5の(a)の針合わせ状態S2で針合わせを行った後、
図5の(c)のように係合が進んで二番車30の不測の自由回転が三番車自体により規制されるようになる(そのまま通常運針状態S1に入る直前)まで、二番車30の回転が作動レバー4の二番車回転規制部80によって規制されるので、針合わせの後通常運針が開始される前に分針の不測の振れが生じる虞れが最低限に抑えられ得る。