特許第5792647号(P5792647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792647
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/72 20060101AFI20150928BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20150928BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20150928BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20150928BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20150928BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20150928BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20150928BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20150928BHJP
   C11D 1/34 20060101ALI20150928BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20150928BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   B29C33/72
   C08L23/00
   C08L101/00
   C08K5/098
   C08K5/103
   C08K5/521
   B29C45/17
   C11D1/04
   C11D1/34
   C11D1/68
   C11D3/37
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-14737(P2012-14737)
(22)【出願日】2012年1月27日
(65)【公開番号】特開2013-154484(P2013-154484A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】501041528
【氏名又は名称】ダイセルポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直樹
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−046808(JP,A)
【文献】 特開2002−001734(JP,A)
【文献】 特開平08−027335(JP,A)
【文献】 特開2009−249559(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/090620(WO,A1)
【文献】 特開平04−239099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00− 33/76
B29C 45/00− 45/84
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C11D 1/00− 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オレフィン系樹脂、
(B)(A)成分のオレフィン系樹脂と相溶性のない熱可塑性樹脂、
(C)(A)オレフィン系樹脂と(B)成分の熱可塑性樹脂とを相溶化させるための熱可塑性樹脂、
(D)脂肪酸のアルカリ金属塩、
(E)ノニオン性界面活性剤及び
(F)酸性リン酸エステルの金属塩
を含有する成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物であって、
(F)成分の酸性リン酸エステル塩が、マグネシウムステアリルアシッドホスフェート、カルシウムステアリルアシッドホスフェート、亜鉛ステアリルアシッドホスフェート、アルミニウムステアリルアシッドホスフェートから選ばれるものである、成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
(D)成分と(E)成分の合計量中における(D)成分の含有割合が30〜70質量%、(E)成分の含有割合が70〜30質量%であり、
(F)成分の含有割合が、(D)成分と(E)成分の合計量100質量部に対して10〜100質量部である、請求項1記載の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
(E)成分のノニオン性界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上のものである、請求項1又は2記載の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分の熱可塑性樹脂が、AS樹脂、MS樹脂、メタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体及びPMMA樹脂から選ばれる1種以上のものである、請求項1〜のいずれか1項記載の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
(C)成分の熱可塑性樹脂が、EEA、EMA、EMMA、EBAから選ばれる1種以上のものである、請求項1〜のいずれか1項記載の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
(A)成分のオレフィン系樹脂が、HDPE、LDPE、LLDPE及びポリプロピレンホモポリマーから選ばれる1種以上のものである、請求項1〜のいずれか1項記載の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機、射出成形機等の成形加工機を洗浄するための成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の成形加工機用の洗浄剤として、ベース樹脂と他の成分を組み合わせたものが知られている。
特許文献1〜5には、ベース樹脂とアニオン界面活性剤を組み合わせた洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−95624号公報
【特許文献2】特開2010−95625号公報
【特許文献3】特開2011−46808号公報
【特許文献4】特開平10−279816号公報
【特許文献5】特開2007−21765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ベース樹脂と界面活性剤を組み合わせることによって、より洗浄性能が高められた成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ベース樹脂成分と界面活性剤を組み合わせる際、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤を組み合わせ、さらに酸性リン酸エステルの金属塩を組み合わせることによって、洗浄性能がより高められ、作業性も向上されることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明は、
(A)オレフィン系樹脂
(B)(A)成分のオレフィン系樹脂と相溶性のない熱可塑性樹脂、
(C)(A)オレフィン系樹脂と(B)成分の熱可塑性樹脂とを相溶化させるための熱可塑性樹脂、
(D)脂肪酸のアルカリ金属塩、
(E)ノニオン性界面活性剤及び
(F)酸性リン酸エステルの金属塩
を含有する成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の洗浄用の熱可塑性樹脂組成物によれば、押出機、射出成形機器等の熱可塑性樹脂成形加工機器の内部を洗浄する際の洗浄性と作業性が良い。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<(A)成分>
(A)成分はオレフィン系樹脂である。
(A)成分のオレフィン系樹脂は、HDPE、LDPE、LLDPE及びポリプロピレンホモポリマー、エチレンとプロピレンの共重合体、エチレン及び/又はプロピレンとそれらと共重合できるモノマーとの共重合体等から選ばれる1種以上のものが好ましい。
【0009】
<(B)成分>
(B)成分は、(A)成分のオレフィン系樹脂と相溶性のない熱可塑性樹脂である。
(B)成分の熱可塑性樹脂は、AS樹脂、MS樹脂、メタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体及びPMMA樹脂から選ばれる1種以上のものが好ましい。
【0010】
<(C)成分>
(C)成分は、(A)オレフィン系樹脂と(B)成分の熱可塑性樹脂とを相溶化させるための熱可塑性樹脂である。
(C)成分の熱可塑性樹脂は、EEA、EMA、EMMA、EBAから選ばれる1種以上のものが好ましい。
【0011】
組成物中における(A)〜(C)成分の割合は、
(A)成分は30〜90質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましく、
(B)成分は8〜60質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましく、
(C)成分は2〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。
【0012】
<(D)成分>
(D)脂肪酸のアルカリ金属塩は、炭素数10〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のNa、K、Li、Cs塩が好ましい。脂肪酸は直鎖でもよいし、分岐していてもよい。
これらの中でも炭素数12〜18の脂肪酸(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸)のNa塩がより好ましい。
【0013】
組成物中における(D)成分の脂肪酸のアルカリ金属塩の含有割合は、(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して0.5〜10質量部であり、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは1〜6質量部である。
【0014】
<(E)成分>
(E)成分のノニオン性界面活性剤は、オキシエチレン鎖型界面活性剤、ソルビタンエステル型界面活性剤、グリセリセライド系(グリセリン(モノ、ジ)脂肪酸エステル類)界面活性剤、12−ヒドロキシステアリン酸エステル、プロピレングリコ−ル脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエ−テル、アルキルグルコシド等から選ばれるものを挙げることができる。
これらの中でも、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸エステルから選ばれる1種以上が好ましい。
【0015】
組成物中における(E)成分のノニオン性界面活性剤の含有割合は、(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して0.5〜10質量部であり、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは1〜6質量部である。
【0016】
(D)成分と(E)成分の合計量中における(D)成分の含有割合は30〜70質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましく、(E)成分の含有割合は残部割合である。
【0017】
<(F)成分>
(F)成分は、酸性リン酸エステルの金属塩である。(F)成分は、(D)成分と(E)成分を併用したとき、(F)成分に含まれるアルカリ金属の作用により(E)成分が分解されてガス(脂肪酸等を含むガス)を発生させることを防止するように作用する成分である。
【0018】
(F)成分は、例えば特開2010−189515号公報の段落番号0021〜段落番号0032に記載された一般式(I)又は(II)で表される酸性リン酸エステルの塩を使用することができる。
(F)成分としては、マグネシウムステアリルアシッドホスフェート、カルシウムステアリルアシッドホスフェート、亜鉛ステアリルアシッドホスフェート、アルミニウムステアリルアシッドホスフェート等が好ましい。
(F)成分としては市販品を使用することができ、例えば、亜鉛ステアリルアシッドホスフェート(堺化学工業(株)製LBT1830)、アルミニウムステアリルアシッドホスフェート(堺化学工業(株)製LBT1813)、カルシウムステアリルアシッドホスフェート(堺化学工業(株)製LBT1820)、マグネシウムステアリルアシッドホスフェート(LBT−1812)等を使用することができる。
【0019】
組成物中の(F)成分の含有割合は、(D)成分と(E)成分の合計量100質量部に対して10〜100質量部が好ましく、10〜80質量部がより好ましい。
【0020】
<その他の成分>
本発明の組成物は、さらに無機フィラーを含有することができる。無機フィラーとしては、周知のガラス繊維や金属繊維のほか、特開2006−257297号公報に記載の溶融スラグ、鉄鋼スラグ又はこれらの破砕物、人造鉱物繊維から選ばれるものを挙げることができ、繊維状のもの、非繊維状のもの(粉末状、粒状、破砕物等)を用いることができる。
【0021】
本発明の組成物は、さらに特開2006−257297号公報に記載のアルキレングリコール脂肪酸エステル、有機燐化合物、多価アルコール、金属石鹸を含有することができる。
【0022】
本発明の組成物は、上記各成分を、ヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダー、ニーダー等の混合機で予備混合した後、押出機で混練したり、加熱ロール、バンバリーミキサーで溶融混練したりすることによって製造する。
【実施例】
【0023】
実施例及び比較例
表1に示す組成の各成分をタンブラーブレンダーで混合後、押出機にて溶融混練し、ペレット状の樹脂組成物を得た。これらの組成物を使用し、下記の方法で洗浄試験を行った。結果を表1に示す。
【0024】
射出成形機(住友重機械工業社製「SH100」;シリンダー温度230℃)に、先行使用樹脂としてHDPEの赤色着色品(赤色色素濃度0.5%)1kgを射出成形した。
その後、表1の各組成物を用いて計量と射出の操作を繰り返し、赤色が消えた時点を洗浄終了として、それまでの組成物の使用量(kg)により洗浄性を評価した。
また洗浄終了後にAS樹脂(ダイセルポリマー株式会社製のセビアンN 050SF)を流したときに先行使用樹脂(前材であるHDPE)の赤色がでるかどうかで洗浄性(前材の残留の有無)を評価した。
【0025】
【表1】
【0026】
(A)成分
LLDPE:東ソー株式会社 ニポロン-L T240F
HDPE:東ソー株式会社 ニポロンハード 6000
(B)成分
PMMA:三菱レイヨン株式会社 アクリペットMF
MS:ダイセルポリマー株式会社 セビアンMAS30
(C)成分
EMA:三井・デュポン ポリケミカル株式会 エルバロイAC 1820
EBA:アルケマ株式会社 LOTRYL 30BA02
(D)成分
ステアリン酸Na
(E)成分
ノニオン界面活性剤1:ジグリセリンステアレート
ノニオン界面活性剤2:ソルビタンステアレート
(F)成分
酸性リン酸エステル塩:亜鉛ステアリルアシッドホスフェート(堺化学工業(株)製LBT−1830)