(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モーメンタリスイッチは、前記加工部の起動を指示するための起動ボタンから片手では操作することができないとされる所定の距離以上離れて前記照明装置に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下に説明する実施形態は、本発明を例示するものに過ぎない。
【0017】
(1)工作機械の構成:
図1〜8は、本発明に係る工作機械をNC(Numerical Control)旋盤1に適用した例を示している。
図1では、所定位置にNC装置10が設けられたNC旋盤1の外観の一例を正面から簡易的に示している。NC装置10は、操作受付部20や表示部30を備えるコンピュータであり、加工部122の動作を数値制御する際の制御主体となる。NC装置10は、インターロック条件成立時に加工部122の動作を制限又は禁止するインターロック手段U1を備える。また、NC装置10は、モーメンタリスイッチ(イネーブルスイッチSW1,SW2)のモーメンタリ動作時にインターロック手段U1による制限又は禁止の少なくとも一部を解除可能な解除手段U2を備える。
【0018】
NC旋盤1は、外装110に略全体が覆われている。外装110の内部には、加工室120が形成されている。外装110は、加工室120の上側を開閉可能な可動式保護ガード(扉)130を有している。
図1に示すガード130は、加工室120を閉鎖した状態(閉状態)であり、NC旋盤1の一部を上から覆う箱状の蓋体とされている。ガード130には、把手130aが形成されている。
なお、ガードに覗き窓を取り付けると、この覗き窓を通して目視確認しながら作業を行うことができる。
【0019】
加工室120内には、ワークW1を加工するための加工部122が収容されている。この加工部122を照らすため、照明装置150がNC旋盤1に設けられている。
【0020】
図2は、照明装置150の外観の一例を示す正面図である。この照明装置150は、固定部151、アーム部152、ヘッド部153、ランプ(光源)154、を備えたアーム式とされている。照明装置をアーム式にしてフレキシブルに照射位置を調整できるようにするのは、設置の都合もあるが、部分的に加工領域の視認性を高めるためである。また、照明装置150には、イネーブルスイッチ(モーメンタリスイッチ)SW1が設けられている。モーメンタリスイッチは、作業者が力を加えている間だけモーメンタリポジションとなり、作業者が手を離した瞬間に元のポジションに復帰するスイッチである。イネーブルスイッチは、インターロック機能を解除したときに作業者が駆動装置を緊急停止させるイネーブル機能を実現させる。
【0021】
なお、イネーブルスイッチには、機械本体とケーブルで繋がったハンドグリップ式スイッチや、操作受付部に設けられる押しボタンスイッチ等もある。しかし、これらのモーメンタリスイッチは、コストが掛かるうえ、加工室手前の外装のスペースをとられ、作業の邪魔になり易い。これらの不都合を解消するため、イネーブルスイッチSW1は照明装置150に設けられている。
【0022】
固定部151は、略鉛直に向いた回転軸AX1を中心としてアーム部152をスイベル(略水平に回動)させる回動機構151aを有し、NC旋盤1に取り付けられている。
図1では、NC装置10の上面に固定部151が固定されていることが示されている。アーム部152は、長尺なアーム152a,152b及び関節部152c,152d,152eを備えている。第一のアーム152aの一端は、第一の関節部152cを介して固定部151に取り付けられている。第一の関節部152cは、回動機構151aで定まる水平角の方向にアーム152aをチルト(傾動)させる。このアーム152aの他端は、第二の関節部152dを介して第二のアーム152bの一端が取り付けられている。第二の関節部152dは、回動機構151aで定まる水平角の方向にアーム152bをチルトさせる。このアーム152bの他端は、第三の関節部152eを介してヘッド部153が取り付けられている。第三の関節部152eは、回動機構151aで定まる水平角の方向にヘッド部153をチルトさせる。ヘッド部153は、軸部材153aを中心として回動可能とされている。従って、ヘッド部153を手で持ってランプ154の照射方向を三次元に変更可能である。
【0023】
ヘッド部153は、ランプ154を収容する空間SP1を有するハウジングである。
図2に示すヘッド部153は、外形略円柱状に形成され、一端(正面とする。)がランプ154の照射面とされている。
図2に示すランプ154は、複数の砲弾型白色LED(発光ダイオード)とされている。むろん、ランプ154は、単数でもよいし、表面実装型LEDなど砲弾型以外の形状でもよいし、白色以外の色でもよいし、白熱電球、蛍光灯、等でもよい。
【0024】
図2に示すイネーブルスイッチSW1は、ヘッド部153の背面に取り付けられ、傾動操作するためのつまみSW1aが設けられている。このイネーブルスイッチSW1は、ランプ154をオンオフするためのランプオンオフスイッチとは別のスイッチでもよいし、ランプオンオフスイッチと共用したスイッチでもよい。イネーブルスイッチSW1は、照明装置150にあればよく、ヘッド部153の側面や正面に取り付けられてもよいし、アーム152a,152bなどアーム部152に取り付けられてもよいし、固定部151に取り付けられてもよい。
【0025】
図3(a)〜(c)に示すように、電源端子150aは照明装置150外においてNC旋盤1の電源140のプラス側に接続され、電源端子150bは該電源140のマイナス側に接続される。
【0026】
図3(a)は、照明装置150(例えばヘッド部153)にランプスイッチ155とイネーブルスイッチSW1とを別々に組み付けた例を示す電気回路図である。ランプスイッチ155は、オルタネイト動作型の1極2ポジションのスイッチである。onポジションの入力端子は、電源端子150a、すなわち、電源140のプラス側に対して電気的に接続されている。offポジションの入力端子は、オープンとされている。ランプスイッチ155の出力端子155cは、ランプ154のアノード側に接続されている。ランプ154のカソード側は、電源端子150b、すなわち、電源140のマイナス側に接続されている。従って、ランプスイッチ155をonポジションにするとランプ154が点灯し、ランプスイッチ155をoffポジションにするとランプ154が消灯する。
【0027】
イネーブルスイッチSW1は、モーメンタリ動作型の1極2ポジションのスイッチであり、つまみSW1aの傾動操作によりonポジションからoffポジションへモーメンタリ動作する。onポジションの入力端子は、電源端子150a、すなわち、電源140のプラス側に対して電気的に接続されている。offポジションの入力端子は、オープンとされている。イネーブルスイッチSW1の出力端子からのNC(PLC)入力信号は、NC装置10に入力される。従って、イネーブルスイッチSW1をonポジションにするとランプ154の状態に関係無くハイレベル(通電状態)の信号がNC装置10に伝えられ、イネーブルスイッチSW1がoffポジションに自動復帰するとオープン状態の信号がNC装置10に伝えられる。
【0028】
図3(b)は、照明装置150(例えばヘッド部153)にイネーブルスイッチSW1を組み付け、照明装置150外にリレー156を設けた例を示す電気回路図である。リレー156は、例えば、操作受付部20に設けられる照明オンオフボタンB5の押し操作に応じてオンオフし、オン指令時に接点が閉じ、オフ指令時に接点がひらく。リレー156の入力側は、電源端子150a、すなわち、電源140のプラス側に対して電気的に接続されている。リレー156の出力端子156cは、ランプ154のアノード側に接続されている。従って、リレー156がonポジションになるとランプ154が点灯し、リレー156がoffポジションになるとランプ154が消灯する。一方、
図3(b)に示すイネーブルスイッチSW1は、
図3(a)に示したイネーブルスイッチSW1と同じである。
【0029】
図3(c)は、照明装置150(例えばヘッド部153)に2極3ポジションのイネーブルスイッチSW2を設けた例を示す電気回路図である。イネーブルスイッチSW2は、つまみの傾動操作によりP3ポジションからP2ポジションへモーメンタリ動作し、P1ポジションとP2ポジションとの切り替え時はオルタネイト動作する。第1極のP1ポジションの入力端子は、オープンとされている。第1極のP2,P3ポジションは、電源端子150a、すなわち、電源140のプラス側に対して電気的に接続されている。第1極の出力端子は、電源端子150a、すなわち、電源140のプラス側に対して電気的に接続されている。
【0030】
第2極のP1,P2ポジションの入力端子は、オープンとされている。第2極のP3ポジションの入力端子は、電源端子150a、すなわち、電源140のプラス側に対して電気的に接続されている。
従って、イネーブルスイッチSW2がP1ポジションであるとき、ランプ154は消灯状態であり、NC装置10にオープン状態の信号が伝えられる。イネーブルスイッチSW2をP2ポジションにすると、ランプ154は点灯するが、NC装置10に伝えられる信号はオープン状態のままである。イネーブルスイッチSW2をP3ポジションにすると、ランプ154は点灯したままであり、NC装置10に伝えられる信号はハイレベル(通電状態)となる。むろん、イネーブルスイッチSW2がP2ポジションに自動復帰すると、ランプ154は点灯したままであり、NC装置10に伝えられる信号はオープン状態となる。
【0031】
なお、モーメンタリスイッチの極数は、3極以上でもよい。操作受付部に設けられる照明オンオフボタンの押し操作に応じて照明装置をオンオフさせる場合、1極について、全ての入力端子を電源に接続し出力端子をランプに接続してもよい。この場合、NC装置からオン指令のときにランプは常時点灯する。この態様は、別途端子台を設けたくないとき等に効果がある。
また、モーメンタリスイッチのポジション数は、4以上でもよい。
【0032】
本態様は、照明装置150が点灯している場合、且つ、イネーブルスイッチSW2のモーメンタリ動作時に、インターロック手段U1による制限等の少なくとも一部が解除される。ワークW1を含む加工部122においてワーク加工状態を観察したり、工具交換等の段取り作業を行ったりする等の場合、加工部122を照らすと照らさない場合と比べて加工部122が見易くなり、作業性が向上する。このため、照明装置150が点灯している場合に限定してイネーブル機能を有効にすることには利点がある。従って、本態様は、加工部122の動作の制限等を解除するのに好適である。また、照明装置をオンオフするスイッチとインターロック機能を解除するスイッチとを共用しているので、インターロック機能を解除するモーメンタリスイッチを別途設ける必要が無い。
【0033】
図4は、NC旋盤1の側面を例示し、ガード130を開けた状態の一例を二点鎖線で示している。
図4に示す連結部材130bは、ガード130と外装110とを連結している。連結部材130bは、伸縮可能とされ、両端がガード130の側面と外装110の側面とに対して回転可能に軸支されている。作業者は、閉状態のガード130の把手130aを手前側から上方奥側へ引き上げることにより、ガード130を二点鎖線で示される開状態にすることができる。むろん、ガード130の近傍のNC旋盤1に開閉用スイッチを設け、この開閉用スイッチが操作されたときにNC旋盤1がガード130を自動的に開閉してもよい。ガード130を開けることにより、作業者は、加工室120内の加工部122を直接視認することができ、各種調整のために加工部122に直に触れることもできる。なお、ガード130の形状や開閉の仕方は限定されない。例えば、ガード130は、左右にスライドして外装110の一部を開閉する引き戸でもよい。
【0034】
図1に示す操作受付部20は、起動ボタンB1やモード選択ボタンB2といった各種ボタン、キー、等を備える。操作受付部20は、表示部30上のタッチパネルを含むものであってもよい。起動ボタンB1は、加工部122への起動指示を受け付ける(起動指示を行う)ための操作部である。起動ボタンB1が押し操作される(オンにされる)と、数値制御に基づく加工部122の動作が開始され、ワークW1に対する加工が行われる。起動ボタンB1がオンにされた動作状態を「全自動モード」とする。
【0035】
モード選択ボタンB2は、NC旋盤1の動作状態を「非全自動モード」にするための操作部である。「非全自動モード」は、「全自動モード」ではないが限定的に動作可能な状態とし、手動モードや半自動モードを含む概念とする。モード選択ボタンB2には、ジョグボタンB3とハンドル送りボタンB4の少なくとも一方が設けられてもよい。ジョグボタンB3は、手動モードの一種であるジョグモードにするためのボタンであり、押し操作される(オンにされる)と、送りボタンB6の操作入力が受け付けられ、送りボタンB6が押されている間、選択された加工部122が選択された方向へ移動する。送りボタンB6には、正面主軸台45をZ軸の+方向へ移動させる+Zボタン、正面主軸台45をZ軸の−方向へ移動させる−Zボタン、刃物台44をX軸の+方向へ移動させる+Xボタン、等が含まれる。ハンドル送りボタンB4は、手動モードの一種であるハンドル送りモードにするためのボタンであり、押し操作される(オンにされる)と、軸選択ボタンB7の操作入力が受け付けられ、いずれかの軸選択ボタンB7が押し操作されたとき、選択された加工部122がハンドルH1の回転操作に応じて移動する。軸選択ボタンB7には、正面主軸台45をZ軸方向へ移動させるZ軸ボタン、刃物台44をX軸方向へ移動させるX軸ボタン、等が含まれる。選択された加工部122は、ハンドルH1が一方の回転方向(例えば右回り)へ回転操作されると+方向へ移動し、ハンドルH1が他方の回転方向(例えば左回り)へ回転操作されると−方向へ移動する。ジョグボタンB3やハンドル送りボタンB4は、NC旋盤1の動作状態を手動モードにするための操作部である。
【0036】
表示部30は、作業者が操作受付部20で操作入力した各種数値や設定の内容、NC旋盤1に関する各種情報、等を表示するディスプレイを備える。表示部30の表示内容は、NC装置10によって制御される。
【0037】
図5は、NC旋盤1を構成する各部の電気的な接続関係をブロック図により簡易的に示している。NC装置10は、CPU(Central Processing Unit)10a、RAM(Random Access Memory)10b、ROM(Read Only Memory)10c、機械機構部用のインターフェイス(I/F)10d、操作受付部20、表示部30、等が互いに接続されたコンピュータとされている。RAM10bには、加工プログラムPや各種データDが記憶される。ROM10cには、アプリケーションプログラムAPLが書き込まれている。CPU10aは、これらのプログラムP,APLに従って機械機構部を数値制御する。
【0038】
I/F10dには、サーボアンプ40、正面主軸用アンプ60、背面主軸用アンプ70、ガードスイッチ(ドアスイッチ)80、各種アクチュエータ90、上記ランプ154、上記イネーブルスイッチSW1、等が接続されている。
【0039】
サーボアンプ40は、接続されているX軸サーボモータ41、Y軸サーボモータ42、及び、Z軸サーボモータ43に対して電力を供給する。X軸サーボモータ41及びY軸サーボモータ42は、供給される電力を動力に変換し、接続されている刃物台44をX軸方向及びY軸方向へ移動させる。Z軸サーボモータ43は、供給される電力を動力に変換し、接続されている正面主軸台45をZ軸方向へ移動させる。
【0040】
正面主軸用アンプ60は、接続されている正面主軸モータ61に電力を供給する。正面主軸モータ61は、供給された電力を回転動力に変換し、接続されている正面主軸62を回転させる。正面主軸62は、正面主軸台45に搭載されている。
背面主軸用アンプ70は、接続されている背面主軸モータ71に電力を供給する。背面主軸モータ71は、供給された電力を回転動力に変換し、接続されている背面主軸72を回転させる。背面主軸72は、背面主軸台53に搭載されている。
【0041】
ガードスイッチ80は、ガード130が閉状態であるか開状態であるかの開閉状況を検知し、検知した開閉状況に応じた検知信号をNC装置10へ伝える。
図1に示すガードスイッチ80は、外装110の内側面に取り付けられている。ガードスイッチ80は、例えば、ガード130が
図1に示す全閉状態であるときに接触状態を表す閉状態信号を生成し、ガード130が少しでも開くと非接触状態を表す開状態信号を生成する。むろん、ガード130の開閉状況の検知は、非接触センサによってもよいし、ガード130の位置情報に基づいてもよい。
NC装置10に接続される各種アクチュエータ90には、例えば、正面主軸62や背面主軸72に設けられたコレット(把持手段)を開閉動作させる動力機構等がある。
【0042】
NC装置10は、起動ボタンB1の押下げを検知すると、加工プログラムPに従って加工部122を駆動し、ワークW1を加工する。数値制御は、例えばRAM10bに記憶された各種数値データDを参照して行われる。
【0043】
図6は、NC旋盤1内部の概略構成であって、主に加工室120に配置された加工部122を示している。加工部122は、正面主軸62を設けた正面主軸台45、背面主軸72を設けた背面主軸台53、ガイドブッシュ(GB)100、工具44aを装着した刃物台44、等が設けられている。なお、主軸(62,72)の軸方向であるZ軸方向は
図6の左右方向であり、Z軸方向と垂直なX軸方向は
図6の上下方向であり、Z軸方向及びX軸方向と垂直なY軸方向は
図6の紙面に対して垂直な方向である。
【0044】
正面主軸台45は、所定の高さ位置に搭載した正面主軸62の軸方向(Z軸方向)へ正面主軸62とともに移動可能である。正面主軸62は、例えば、正面主軸62の背後(
図6では左側)から供給される長尺な円柱状の素材(ワークW1)を解放可能に把持するコレット62aを先端部に備える。ここで、Z軸のプラス方向(
図6では右方向)を前進方向と呼ぶことにする。
GB100は、コレット62aに把持されて正面主軸62から前進方向へ突出したワークW1が中央の貫通孔に挿入され、Z軸方向へ摺動可能な状態でワークW1を保持する。GB100は、ワークW1を貫通させた状態で、正面主軸62と同じ回転軸を中心として回転可能である。
【0045】
GB100の上側に配置された刃物台44には、GB100から突出したワークW1の加工に用いられる工具44aが装着される。刃物台44には、正面加工用のバイト、突っ切り加工用のバイトといった複数種類の工具が同時に取り付けられてもよいし、これらの工具が交換可能に取り付けられてもよい。刃物台44は、工具44aとともにX軸方向及びY軸方向へ移動可能である。
【0046】
GB100を挟んで正面主軸台45に対向した背面主軸台53は、所定の高さ位置に搭載した背面主軸72の軸方向(Z軸方向)へ背面主軸72とともに移動可能とされてもよい。背面主軸72は、GB100から突出したワークW1を解放可能に把持するためのコレット72aを先端部に備える。なお、背面主軸72で把持されたワークW1を背面加工するための工具を装着した刃物台を上記刃物台44とは別に背面主軸台53近傍に配置してもよい。
また、加工部122の構成や移動方向は、上述した内容に限られない。
【0047】
(2)インターロック解除処理の説明:
インターロック機能を常時有効化していると、作業者の利便性を損なうことがある。本NC装置10は、ガード130が開状態である等の所定のインターロック条件成立時でも、所定の解除条件成立時には例外的にインターロック機能を解除し、加工部122を動作させることを可能としている。
【0048】
図7は、NC装置10(CPU10a)がアプリケーションプログラムAPLに従って行うインターロック解除処理をフローチャートにより示している。この処理は、NC旋盤1の電源がオンであるとき、マルチタスクにより他の処理(加工プログラムPに従った加工処理等)と並列して行われる。むろん、インターロック解除処理は、一部又は全部が加工プログラムPにより実現されてもよい。ここで、ステップS10,S16の処理を行うNC装置10は、インターロック手段U1を構成する。また、ステップS14,S18の処理を行うNC装置10は、解除手段U2を構成する。
【0049】
処理が開始すると、NC装置10は、所定のインターロック条件が成立しているか否かを判断する(ステップS10。以下、「ステップ」の記載を省略。)。インターロック条件は、(A)ガード(扉)130が開いた場合に成立することが好ましいものの、(B)「非全自動モード」(所定の動作モード)が選択されたときに成立してもよいし、(C)これらの場合の組合せ、例えば、ガード130が開いた場合又は「非全自動モード」が選択された場合に成立してもよい。ガードが開いた場合とは、ガードが開いている(閉まっていない)場合であってもよいし、ガードが開いてから閉じた後に操作受付部20でインターロック機能を解除する操作がされていない場合等であってもよい。場合によっては、ランプ154(照明装置150)が点灯している場合にインターロック条件が成立するようにしてもよい。
【0050】
(A)ガード開がインターロックの成立条件である場合、例えば、NC装置10は、ガードスイッチ80の検知信号の状態を読み取り、この状態に応じて処理を分岐すればよい。前記検知信号が非接触状態(開状態)であるときに条件成立と判断してS14へ処理を進め、前記検知信号が接触状態(閉状態)であるときに条件不成立と判断してS12へ処理を進めることができる。
また、ガード130が開いてから閉じた後に起動ボタンB1が押されていない場合にインターロック条件が成立する場合、例えば、NC装置10は、ガードスイッチ80の検知信号の状態と起動ボタンB1の押し操作状態との組合せにより処理を分岐すればよい。前記検知信号が非接触状態であるか、非接触状態から接触状態に切り替わったものの起動ボタンB1が押し操作されていないかの場合にはS14へ処理を進め、前記検知信号が非接触状態から接触状態に切り替わったうえで起動ボタンB1が押し操作された場合にはS12へ処理を進めることができる。
【0051】
(B)手動モード(非全自動モード)選択がインターロックの成立条件である場合、例えば、NC装置10は、モード選択ボタンB2が押し操作されたか否かにより処理を分岐すればよい。前記モード選択ボタンB2が押し操作されたときにはS14に処理を進め、前記モード選択ボタンB2が押し操作されていないときにはS12に処理を進めることができる。
(C)上記組合せがインターロックの成立条件である場合、例えば、NC装置10は、ガードスイッチ80の検知信号の状態とモード選択ボタンB2の押し操作状態との組合せにより処理を分岐すればよい。前記検知信号が非接触状態であるかモード選択ボタンB2が押し操作されたかしたときにはS14に処理を進め、前記検知信号が接触状態且つモード選択ボタンB2が押し操作されていないときにはS12に処理を進めることができる。
【0052】
条件不成立時、NC装置10は、加工室120内の全ての加工部122の運転を許可し(S12)、S10に処理を戻す。例えば、NC装置10は、全加工部122の運転が可能であることを示す所定の通常運転フラグをオンに設定する。NC装置10は、起動ボタンB1が押されたことを検知した際、通常運転フラグがオンに設定されていると加工プログラムPに従って加工部122を駆動させる。また、加工処理の開始後にインターロック機能により加工処理の一部又は全部が停止した場合、通常運転フラグがオンに設定されていることを確認すると加工処理を再開する。その結果、ワークW1に対する加工が行われる。
【0053】
一方、S14では、イネーブルスイッチがオン状態(モーメンタリ動作状態)であるか否かを判断する。
図3(a)〜(c)の例では、NC装置10は、イネーブルスイッチSW1,SW2からのNC(PLC)入力信号の状態を読み取り、この状態に応じて処理を分岐すればよい。前記NC(PLC)入力信号がHレベル(通電状態)であるときに条件成立と判断してS18へ処理を進め、前記NC(PLC)入力信号がオープン状態であるときに条件不成立と判断してS16へ処理を進めることができる。
【0054】
条件不成立時、NC装置10は、加工部122の動作を制限又は禁止し(S16)、S10に処理を戻す。すなわち、ガード開や手動モード(非全自動モード)といったインターロック条件が成立し、且つ、イネーブルスイッチが押されていない場合、作業者の安全を確保するため、加工部122の動作を制限等する。
【0055】
例えば、NC装置10は、加工部122の全ての運転を禁止することを示す所定の運転禁止フラグをオンに設定する。NC装置10は、起動ボタンB1が押されたことを検知しても、運転禁止フラグがオンに設定されている場合は加工プログラムPに従った加工処理を開始しない。また、加工処理の開始後に運転禁止フラグがオンに設定されていることを確認した場合には、当該加工処理を停止する。また、直前に加工処理が停止していた場合には加工処理の停止を継続する。ガード130が開いている場合にインターロック条件が成立する場合、ガード130が開状態であり、且つ、イネーブルスイッチ(SW1,SW2)が操作されていない場合に、加工部122の全てに対してインターロック機能が働く。
【0056】
なお、S16では、加工部122の運転を完全には禁止せずに所定の制限の下で許容してもよい。ここで言う制限とは、例えば、作業者の安全性を確保するために予め設定された各加工部の速度に対する制限である。この速度制限には、正面主軸台45や背面主軸台53や刃物台44の移動速度に対する制限等がある。例えば、NC装置10は、ガード130が開状態であり、且つ、イネーブルスイッチ(SW1,SW2)が操作されていない場合に、当該制限以下の速度で各加工部を移動させる制御を行うことができる。また、加工部122の動作を制限することには、加工部122の全ての運転を禁止せずに一部の運転を許容することも含まれる。
【0057】
一方、イネーブルスイッチ(SW1,SW2)のモーメンタリ動作時、NC装置10は、インターロック手段U1による制限又は禁止の少なくとも一部を解除し(S18)、S10に処理を戻す。すなわち、ガード開や手動モード(非全自動モード)といったインターロック条件が成立し、且つ、イネーブルスイッチが押されている場合、インターロック手段U1による制限等の少なくとも一部を解除する。
【0058】
例えば、NC装置10は、ガード130が開状態であって且つ全加工部の運転が可能であることを示す所定の開状態運転フラグをオンに設定する。NC装置10は、起動ボタンB1が押されたことを検知した際、開状態運転フラグがオンに設定されている場合は通常運転フラグがオンに設定されている場合と同様に加工プログラムPに従って各加工部を駆動させる。また、加工処理の開始後に開状態運転フラグがオンに設定されていることを確認した場合には、当該加工処理を継続する。
【0059】
なお、S18では、インターロック機能を完全には解除せずに所定の制限の下で解除してもよい。例えば、NC装置10は、開状態運転フラグがオンに設定されている状況で各加工部を駆動させる場合は、通常運転フラグがオンに設定されている状況で各加工部を駆動させるときの各加工部の運転速度よりも遅い速度で各加工部を駆動させてもよい。また、インターロック機能を制限して解除することには、加工部122の全ての運転を許容せずに一部の運転を禁止することも含まれる。
【0060】
(3)工作機械の作用、及び、効果:
作業者が加工部122の動作の制限等を解除するのは、ワークW1を含む加工部122においてワーク加工状態を観察したり、工具交換等の段取り作業を行ったりする等の場合である。インターロック機能を解除するためのイネーブルスイッチに機械本体から独立しケーブルで機械本体と繋がったハンドグリップ式のモーメンタリスイッチを使用すると、コストが掛かるうえ、加工室手前等にイネーブルスイッチを保持するスペースが必要であり、作業の邪魔になり易い。また、モーメンタリ動作型の押しボタンスイッチ等を操作受付部に設けると、加工室からイネーブルスイッチが離れることになるため、その分、加工部を見ながらの作業がし難くなる。
【0061】
本実施形態の工作機械は、加工部122を照らすための照明装置150にモーメンタリスイッチ(SW1,SW2)が設けられているので、独立したイネーブルスイッチを別途用意しなくてもインターロック機能を解除して作業を行うことが可能である。また、作業者は加工室から離れたイネーブルスイッチを操作しなくても近くのイネーブルスイッチのつまみ(SW1a)を操作することにより動作制限等の少なくとも一部を解除することができる。さらに、動作制限等を解除するためのイネーブルスイッチを加工室手前の外装110に設ける必要も無く、イネーブルスイッチが作業の邪魔とならない。従って、作業性が向上する。
また、照明装置をオンオフするスイッチとインターロック機能を解除するスイッチとを共用すると、インターロック機能を解除するモーメンタリスイッチを別途設ける必要が無くなり、工作機械のコストが削減される。
【0062】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、本発明を適用可能な工作機械は、旋盤以外にも、研削盤、歯切り盤、等でもよい。
加工部を照らすための照明装置は、加工室天井等に組み込まれて固定されてもよい。固定式の照明装置にモーメンタリスイッチを設ける場合でも、作業者は加工室から離れたモーメンタリスイッチを操作しなくても動作制限等を解除することができる。
【0063】
図3(a)の回路において、イネーブルスイッチSW1のonポジションの入力端子を電源端子150aには接続せずランプスイッチ155の出力端子155cに接続してもよい。また、
図3(b)の回路において、イネーブルスイッチSW1のonポジションの入力端子を電源端子150aには接続せずリレー156の出力端子156cに接続してもよい。いずれの場合も、ランプ154が点灯していなければイネーブルスイッチSW1がモーメンタリ動作してもインターロック機能が解除されず、ランプ154が点灯しているときにのみイネーブルスイッチSW1がモーメンタリ動作するとインターロック機能が解除される。上述したように、加工部122においてワーク加工状態を観察したり、工具交換等の段取り作業を行ったりする等の場合、加工部122を照らすと照らさない場合と比べて加工部122が見易くなり、作業性が向上する。従って、これらの変形例は、加工部122の動作の制限等を解除するのに好適である。
【0064】
さらに、
図8の模式的な平面図に例示するように、加工部122の起動を指示するための起動ボタンB1から片手では操作することができないとされる所定の距離d1以上離してイネーブルスイッチSW1を前記照明装置150に設けてもよい。
図8の例では、回動機構151aがガード130側の180°の範囲でアーム部152をスイベル可能とされている。ヘッド部153に設けられたイネーブルスイッチSW1と操作受付部20に設けられた起動ボタンB1とが最も近付くのは、アーム部152を手前に回動させてイネーブルスイッチSW1を起動ボタンB1の方へ向けたときである。この場合でも、片手ではイネーブルスイッチSW1と起動ボタンB1とを同時に操作することができない距離d1がある。この距離d1は、例えば、260mm以上とすることができる。
【0065】
以上より、イネーブルスイッチSW1を操作するのと同時に起動ボタンB1を押し操作するためには、両手を使う必要がある。すなわち、イネーブルスイッチSW1を操作している手で起動ボタンB1を操作することができないので、不用意に加工部122が起動せず、イネーブルスイッチSW1と起動ボタンB1を片手で操作しながら残りの手を加工室に入れてしまうことを防ぐことができる。従って、本態様は、より高い安全性を確保することができる。
【0066】
なお、インターロック機能を解除するためのモーメンタリスイッチと加工部の起動を指示するための起動ボタンとを所定の距離d1以上とするためには、アーム部152の旋回範囲(角度)を制限する以外にも、以下の対応が可能である。
・アームの長さを調整すること。
・アーム部に関節がある場合には、複数のアームの長さをそれぞれ調整すること。
・照射部分(ヘッド部)の旋回範囲(角度)を制限すること。
【0067】
なお、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる工作機械等でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【0068】
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、作業性を向上させる技術等を提供することができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。