(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
液体よりも比重の大きい固体粒子を混合した液体中では、時間が経過するにつれ固体粒子が沈降して均一な混合状態を保つことが難しい。均一な混合状態を保つには、攪拌装置を設け、固体粒子混合液体を貯留した容器内で攪拌し続けることが必要である。
【0003】
攪拌装置には、モータ動力軸に接続したロッドの先端に羽根状部材を設け、これを固体粒子混合液体中で回転させて混合を行うモータタイプや、磁石や磁性体を内設した攪拌子を固体粒子混合液体中に入れ、これを容器の外から磁力の作用により回転させて混合を行う磁力タイプなどがよく用いられる。
【0004】
ところで、前述の固体粒子混合液体を容器から定量的に吐出、分配する際には、液体材料の吐出、分配に一般的に用いられている吐出装置を用いる。固体粒子混合液体を扱う吐出装置においても、均一な混合状態を保つには、前述の各種タイプの攪拌装置を設けることが必要である。攪拌を行わなければ、不均一な状態で吐出されたり、或いは吐出口が詰まって吐出できないといった事態が発生する。
【0005】
吐出装置に攪拌装置を設けている例として、特許文献1のような装置がある。特許文献1には、容器と、液体を攪拌する攪拌子と、攪拌子を磁力により回転させる攪拌子回転手段とを具備した吐出装置であって、容器に貯留された液体を吐出する吐出装置の容器内底部に攪拌子を配置し、攪拌子には上下面を貫通する貫通孔が穿設され、上面に突起が設けられ、外周面と貫通孔とを連通する溝が下面に形成されている吐出装置が開示されている。
【0006】
また、攪拌装置の別の例として、特許文献2のような装置がある。特許文献2には、駆動回転体と、駆動回転体に対向して設けられる従動回転体と、駆動回転体の対向する面上に設けられる駆動磁石と、従動回転体の対向する面上に設けられる駆動磁石と同数の従動磁石と、を備えた磁気駆動装置において、駆動磁石及び従動磁石は略同形状で、周側面の一面全面を一方の磁極とし、周側面の他面全面を他方の磁極とする両面2極磁石でそれぞれ構成され、駆動磁石の対向面を通る中央延長線と、従動磁石の対向面を通る中央延長線とが平行になるようそれぞれの回転体に取り付け、駆動回転体を回転させると、磁力により、従動回転体が回転することを特徴とする磁気駆動装置及び該磁気駆動装置が攪拌槽内部の液体を攪拌する手段として用いられる攪拌装置、が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に固体粒子は沈降することから、対流を発生させて容器内の攪拌を促進するためには、特許文献1の装置のように、攪拌子を容器底部に設けるのがよい。しかしながら、特許文献1の装置では、容器底部に配置した攪拌子を容器外下方から磁力によって回転させているため、自重および磁石による引力の働きで攪拌子が容器底面に押しつけられるような状態となる。このような状態になると、摩擦が大きくなり、(1)回転するためのエネルギーの損失、(2)攪拌子底面および軸支部分の摩耗、(3)摩耗による塵埃の液体への混入、(4)摩擦による騒音の発生など様々な問題が生じる。
【0009】
また、攪拌子に底部から磁力を作用させる構成の場合、攪拌子の下方側で好ましい撹拌作用を得ることは難しかった。特許文献1では、攪拌子下面に溝を設けることにより容器の底部中央に向かう流れを生じさせているが、屈曲部を有する溝内に固体粒子混合液体を通過させると粒子が塊を生じやすく、吐出に悪影響を与えるという問題がある。
【0010】
一方、特許文献2の装置では、容器底部に攪拌機構を設けるものにおいて、駆動力が増大してもスラスト、即ち、回転軸方向下向きの力が低減するよう磁石の配置等に工夫をしている。しかしながら、攪拌子(従動回転体)をマイナスのスラスト(浮力)で支えるために、支持軸を容器底部に設けたり(同文献
図4、5)、超電導磁石を採用したり(同文献
図6から
図8)しなければならず、それらに伴って、容器底部形状が複雑になったり、大がかりな付属装置(低温にするための装置)が必要になるなど、吐出装置への応用には適さない。
【0011】
また、攪拌子に底部から磁力を作用させる構成の場合、所望数の攪拌子を所望の位置に設けることが難しかった。そのため、上下に長さのある容器においては容器内全体撹拌することができなかった。
【0012】
そこで本発明は、容器と攪拌子の摩擦による問題を解消し、攪拌子の下方にも循環流を生じさせることができ、しかも所望の位置に所望数の攪拌子を配置することができる攪拌装置およびそれを備える吐出装置並びに吐出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
容器底面から攪拌子に磁力を作用させる従来構成においても、例えば同極同士が相向かうように磁石を配置することでシリンジ底面から攪拌子を浮かせることも考えられる。しかし、かかる構成では、容器底面中心に吐出流路を設けることは難しい。そこで、発明者は、側面から攪拌子に磁力を作用させることの着想を得、本発明の創作をなした。
【0014】
第1の発明は、磁石を有する攪拌子と、攪拌子に側方から磁力を作用させることにより、攪拌子を位置規定する攪拌子保持機構と、攪拌子保持機構を回転させる回動機構と、を備え、
前記攪拌子は、回転時に液体に流れを生じさせる最も広い第1作用面および前記第1作用面に隣接し、回転時に液体に流れを生じさせる第2作用面を有する翼を備え、前記第1作用面には、上端に向けて細身になるようにテーパーが形成され、前記第2作用面には、下端に向けて細身になるようにテーパーが形成されており、前記回動機構により
前記攪拌子保持機構を回転させることにより、
前記攪拌子を回転させることを特徴とする攪拌装置である。
第2の発明は、第
1の発明において、前記攪拌子が、その上半部に向かって拡径する切り欠き部を有することを特徴とする。
【0015】
第
3の発明は、第1
または2の発明において、前記攪拌子が、その下半部に切り欠き部を有することを特徴とする。
第
4の発明は、第
3の発明において、前記攪拌子が、前記切り欠き部と連通する回転軸と同心の貫通孔を有することを特徴とする。
第
5の発明は、第1ないし
3のいずれかの発明において、前記攪拌子が、二翼型であることを特徴とする。
第
6の発明は、第1ないし
3のいずれかの発明において、前記攪拌子が、四翼型であることを特徴とする。
【0016】
第
7の発明は、第1ないし
6のいずれかの発明に係る攪拌装置と、前記攪拌子保持機構が装着される液体貯留容器と、液体貯留容器と連通するノズルと、圧縮気体源と、圧縮気体源から供給される圧縮気体を所望の圧力へ調整して供給する吐出制御装置と、を備える吐出装置である。
第
8の発明は、第
4の発明に係る攪拌装置と、前記攪拌子保持機構が装着される液体貯留容器と、液体貯留容器と連通するノズルと、液体貯留容器内に配置されたプランジャと、プランジャを往復動させるプランジャ駆動機構と、を備える吐出装置である。
【0017】
第
9の発明は、第
7または
8の発明において、前記液体貯留容器の内部空間が、下端に向けて先細り形状であり、前記攪拌子の外側面が、前記液体貯留容器の底部内壁と一定の隙間ができる先細り形状であることを特徴とする。
第
10の発明は、第
7ないし
9のいずれかの発明において、前記攪拌子が、複数の攪拌子からなり、前記攪拌子保持機構が、複数の攪拌子を位置規定することを特徴とする。
【0018】
第
11の発明は、第
7ないし
10のいずれかの発明に係る吐出装置を用い、前記攪拌子を一定速度で回転させながら、液体をノズルから吐出することを特徴とする吐出方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、容器内の所望位置に攪拌子を配置することができるので、容器と攪拌子の摩擦による問題を解消することができる。
また、攪拌子の下方にも循環流を生じさせることができる。
さらには、所望の位置に所望数の攪拌子を配置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための形態例を説明する。
《第一実施形態》
(1)攪拌装置
図1には第一実施形態の攪拌装置を備えた吐出装置の要部断面図、
図2には
図1の攪拌装置部分を拡大した断面図、
図3には
図2内のA−A矢視図をそれぞれ示す。また、
図4に本実施形態の攪拌装置で用いる攪拌子を示す。
図4において(a)は斜視図、(b)は(a)内において矢印Bで示した方向から見た図である。以下では、説明の便宜上、
図1のストローク調整機構54側を上側、ノズル50側を下側と呼ぶ場合がある。
本実施形態の攪拌装置1は、攪拌子保持機構2と、回動機構11と、攪拌子22を主要な構成要素とする。
【0022】
(攪拌子保持機構)
本実施形態に係る撹拌子保持機構2は、容器カバー4と、外筒5と、磁石7を主要な構成要素とする。
図1および2に示すように、固体粒子混合液体32が充填される容器3は、その外側は円筒状の容器カバー4で覆われている。容器3および容器カバー4は、容器カバー4と同心の外筒5に挿入される。外筒5と容器カバー4との間は一定の隙間が設けられており、外筒5の回転時に互いに擦れないようにされている。外筒5は、回動機構支持部材16に設けられたベアリング6に支持され、外筒5の上部外周に形成された溝に掛けられたベルト19により動力発生機12からの回転力が伝えられて回転する。外筒5の下部に対向して設けられた開口には、一対の磁石7が嵌設されている。
【0023】
図3に示すように、磁石7は、その一方の端面が外筒5の内面と同一面となるように外筒5の開口に嵌設されている。磁石7のほぼ半分は外筒5の周壁に嵌設され、磁石7の残りの部分は外筒5の外側に締結部材10により固定される磁石支持部材8に嵌設されている。磁石7の外側の端面には磁石固定板9が設けられている。磁石固定板9は、締結部材10により着脱自在に固定されているので、磁石7などの部品を簡単に取り付けおよび取り外しすることが可能である。また、磁石支持部材8および磁石固定板9は磁性体でできており、磁石を引きつけるよう作用して磁石が内側へ移動しないようにしている。
【0024】
容器3の内部空間は、先細り形状となっている。より詳細には、内部空間の大部分が円柱状であるが、ノズル50と連通する吐出流路71とつながる部分は円錐状となっている。この円錐状の部分には、一対の磁石23を有する攪拌子22が配設される。磁石7は、容器3内に配設された攪拌子22の磁石23に対応する位置に配置される。言い換えると、磁石7と攪拌子22の磁石23とが容器3の中心軸を通る一つの直線上に並ぶように配置される。また、磁石7,23の極性は、
図3に「S」と「N」で示すように、磁石7と磁石23とが互いに引き合うよう(引力が作用するよう)な関係となるような配置とする。こうすることで、磁力により攪拌子22を容器3内で吊り下げるような状態で所望の位置に保持することができる。このため、攪拌子22と容器3の底部斜面との間に隙間を空け、互いに接触すること無く攪拌子22を回転させることができる。これにより、前述の課題に挙げたような摩擦による弊害を防ぐことができる。
【0025】
攪拌子22と容器3底部斜面との間の隙間は、例えば、容器3の内径の約1/10〜1/5の隙間を空けることが好ましい。これにより、攪拌子22により生起される下側へ向かう流れを混合に利用することができる。本実施形態の攪拌装置1は、側方から磁力を作用させるため、攪拌子22と容器3底部斜面との間の隙間を自由に設定することが可能である。粘度の高い液体を混合しようとする場合には、強磁力の磁石を攪拌子22および外筒5に設ける。
【0026】
(回動機構)
回動機構11について
図1および
図2を参照しながら説明する。
本実施形態に係る回動機構11は、回動力発生機12と、動力軸13と、カップリング14と、回転軸15と、プーリ18と、ベルト19を主要な構成要素とする。
回動力発生機12は、支柱21により回動機構支持部材16に固定されている。回動力発生機12としては、例えば、サーボモータやステッピングモータなどの電動機(モータ)、圧縮空気の作用により回転するエアモータ、超音波の作用により回転する超音波モータなどを用いることができるが、これらに限定されない。ここで、回動力発生機12は、後述の吐出制御装置58とは別の攪拌制御装置20により動作を制御する。
【0027】
回動力発生機12で生み出された回転力は、動力軸13を通じて動力軸13とカップリング14で連結された回転軸15へ伝えられる。回転軸15は、回動機構支持部材16に配設されたベアリング17により回転自在に支持されており、伝達された回転力は、回転軸15に固設されたプーリ18を回転させる。プーリ18が回転すると、プーリ18および外筒5の上部に掛けられたベルト19により回転力が外筒5へと伝えられる。そして、外筒5が回転することにより磁石7が回転し、磁力によって容器3の内部の攪拌子22が回転して、容器3内の固体粒子混合液体32の攪拌を実現する。
上記では、動力を伝達する仕組みについて、ベルト19とプーリ18を用いたものを示したが、チェーンとスプロケットによるものや、歯車によるものなどを用いることができる。
【0028】
(攪拌子)
攪拌子22は、その上方および下方に循環流を生じさせるような形状とする。上方に循環流を生じさせるためには、例えば、上方に向かって拡径する切り欠き部を上半部に設け、攪拌子が上端に向けて細身になるように回転時に液体に流れを生じさせる作用面(回転軸と容器内周壁と結ぶ線と平行な面であって、上下に延びる最広面)にテーパーを形成する。下方に循環流を生じさせるためには、例えば、容器3の底部斜面と対向する側面を容器3の底部斜面と同様の斜面とし、攪拌子が下端に向けて細身になるように回転時に液体に流れを生じさせる作用面(回転軸と容器内周壁と結ぶ線と平行な面であって、前述の最広面に隣接する上下に延びる面)にテーパーを形成する。以下に説明する本実施形態の攪拌子22は、上方および下方に循環流を生じさせる形状である。以下では、説明の便宜上、容器の内周壁と対向する面およびその対向する面を外側面と呼び、その外側面とほぼ直角に交わる面(回転軸と容器内周壁と結ぶ線と平行な面であって、上下に延びる各面)を正面と呼ぶ。
【0029】
図4(a)に示すように、本実施形態の攪拌子22は回転軸を挟んで二つの翼が設けられた二翼型であり、厚みを持った板状部材に、テーパー面24,25、上切り欠き面27、外側面26、下切り欠き部28、貫通孔30および孔31を設けて形成される。正面からみた攪拌子22は、
図1に示すように、矢羽根状である。回転時に液体に流れを生じさせる最も広い平面が上テーパー面24(回転軸を挟んで右半分または左半分が作用面となる)であり、その下方に隣接して設けられた平面が下テーパー面25(回転軸を挟んで右半分または左半分が作用面となる)である。外側面から見た攪拌子22は、急なテーパーが設けられた台形および緩やかなテーパーが設けられた台形の各長辺を外側面26bで接合したような形状となっている。このようなテーパー面24,25を設けたのは、テーパーを設けない場合に比べてより大きな流れを生起できるためである。また、テーパーの傾斜が急な方がより大きな流れを生起しやすいことから、混合する量の多い上テーパー面24を急な傾斜としている。正逆回転のいずれにも対応できるよう、背面にもテーパー面24,25を設け、外側面から見て左右対称な形状とすることが好ましい。
【0030】
攪拌子22の下部(外側面26bよりも下の部分)は、容器3の底部形状に合わせて、下方に向かうに従って外側面の幅を狭めてなる外側面26cを形成する。また、攪拌子22の下部の幅方向中央には、下端からほぼ半分の高さ(言い換えると、外側面26bの上端)まで、矩形状の下切り欠き部28を設けている。下切り欠き部28の幅は、貫通孔30の直径と同じかやや大きくする。こうすることで、プランジャ52と下切り欠き部28との間の隙間にも流れを生起させることができる。後述の第二実施形態が備えるストッパ66を設けてもよい。
一方、攪拌子22の上部(外側面26bよりも上の部分)には、上端から1/4程の位置に、水平面と平行な面である平坦部29を有する。平坦部29の中央には、貫通孔30が設けられている。そして、対向する平坦部29の各端部から外側面方向へ向かって上端まで斜めに、上切り欠き面27がそれぞれ設けられている。このような上部を有する攪拌子22は、容器3の内部により強い上昇流れを生起させることができる。
【0031】
貫通孔30は、後述する吐出装置46のプランジャ52が動作できる程度の直径であり、プランジャ径の約1.5〜2倍が好ましい。さらに、外側面26bの少し上の位置に、この貫通孔30に対して直角に、外側面から中心に向かって孔31が一対形成され、それぞれに磁石23が嵌設されている。磁石23の嵌設する孔31は、貫通孔30に達しない深さにする。また、磁石23の長さは、孔31の深さより短くし、孔31の余った部分を封止して固定する。この際、孔31のある外側面26aが平面となるように塞ぐことで、固体粒子が凹みなどに付着して固化することを防ぐことが好ましい。固体粒子混合液体32を攪拌子22の内部に侵入させず、洗浄等のメンテナンス作業を容易にすることができる。
【0032】
(2)容器内の流れ
本実施形態の攪拌子を実際に回転動作させたときの容器内の流れを
図5に模式的に示す。(a)は、攪拌子正面から見たときの容器内の流れの模式図、(b)は攪拌子側面から見たときの容器内の流れの模式図である。なお、
図5の模式図は、コンピュータによる流れのシミュレーションの結果に基づいている。
【0033】
まず、攪拌子22の上方の流れを説明する。
図5(a)に示すように、攪拌子正面から見たとき、攪拌子22の上切り欠き面27上端近傍で生起された上昇流35は、容器3の内周壁を沿って上昇していき、そのまま一気に液面近くまで達する(符号36)。その後、流れ36は、容器3の中心側のプランジャ52近傍で下降流37となり、容器3の中心側を攪拌子22まで流れ下っていく(符号38)。
【0034】
図5(b)に示すように、攪拌子側面から見たとき、攪拌子22の外側面26b近辺(符号39)から生起された上昇流は、容器3の内周壁を沿って上昇していき、液面よりも少し下まで達する(符号40)。この高さは、攪拌子正面から見たときの中心側への流れ(符号37)が見られる高さとほぼ同じ高さである。その後、流れ40は、液面近傍の液体を巻き込みつつ、下降流となり(符号41)、攪拌子22の外側面26bの境界近辺(符号39)まで流れ下っていく。
【0035】
以上から、上切り欠き面27および上テーパー面24を有する攪拌子22により、攪拌子22の上方に循環する流れが生起されていることが分かる。この循環する流れにより、攪拌子22の上方にある固体粒子混合液体32を均一に混合することができる。
【0036】
次いで、攪拌子22の下方の流れを説明する。
図5(a)に示すように、攪拌子正面から見たとき、下切り欠き部28内には上昇流42が生起されており、吐出流路71内の一部の液体を引っ張るように上昇している(符号43)。これを補うように、攪拌子22と容器3の底部斜面との間に下降流44が生起される。
図5(b)に示すように、攪拌子側面から見たとき、攪拌子22の外側面26b近辺で下降流45が生起されている。点線で図示した上昇流42は前述の下切り欠き部28内の流れである。
【0037】
以上から、下切り欠き部28および下テーパー面25を有する攪拌子22により、攪拌子22の下方に循環する流れが生起されていることが分かる。また、攪拌子22と容器3の底部斜面との隙間もこの流れに寄与していることが分かる。この循環する流れにより、攪拌子22の下方にある固体粒子混合液体32を均一に混合することができる。
以上に説明した本実施形態の攪拌子22によれば、攪拌子の上方、下方いずれにも循環する流れを生起することができ、容器内の液体中に分散した固体粒子を均一な混合状態とすることができる。
【0038】
(3)吐出装置
本実施形態の攪拌装置1は、固体粒子混合液体32を容器3から定量的に吐出、分配する吐出装置46への適用に好適である。特に、プランジャ52の動作により吐出口を開閉することで液体を吐出するプランジャ式吐出装置に適している。
図1および
図2を参照しながら、本実施形態の攪拌装置1が設けられる吐出装置46の構成および動作を説明する。
【0039】
(構成)
吐出装置46は、固体粒子混合液体32を貯留する容器(シリンジ)3を備えている。シリンジ3の先端は、吐出流路71の一部を構成する流路を備える接続部材47と嵌合される。接続部材47の吐出流路71の先端となる部分には、バルブシート48および管状のノズル50が配設されている。バルブシート48およびノズル50は、ノズル固定部材51により支持されている。ノズル固定部材51は、シリンジ3を覆う容器カバー4に螺合することにより固定される。バルブシート48は、その中心に連通孔49を有しており、連通孔49によりシリンジ3とノズル50とが連通される。容器3の内部には、攪拌子22の貫通孔30を軸通するプランジャ52が設けられている。プランジャ52はプランジャ駆動機構53により進退動作され、バルブシート48が有する連通孔49を開放および閉鎖する。
なお、プランジャ52の最進出位置を規定する機構を設け、バルブシートに当接する直前にプランジャを急停止することにより液滴を飛翔吐出するようにしてもよい。
【0040】
プランジャ駆動機構53は、プランジャ52の動作量であるストロークを調節するストローク調整機構54と、調整したストロークを固定するための固定ネジ55を備える。プランジャ駆動機構53は、アダプタ56に接続されており、アダプタ挿入部57をシリンジ3の上部開口端に挿入し、アダプタ56と容器カバー4とを固定することで取り付けられる。プランジャ駆動機構53は、制御配線59により接続される吐出制御装置58により動作を制御される。吐出制御装置58は、圧縮気体源60から供給される圧縮気体を所望の圧力へ調整後、圧縮気体配管61を通じてシリンジ3内へと供給する。
【0041】
吐出装置46は、ベース62に固設された上容器支持部材63および下容器支持部材64によって支持されている。これにより、同じくベース62に固設されている攪拌装置1の外筒5に触れないよう一定の間隔を空けて支持されている。なお、ベース62には、図示しないXYZ駆動機構や固定スタンドなどへ締結部材によって固定するための固定用孔65が複数箇所設けられている。
【0042】
(動作)
上記構成の吐出装置46は、次のような動作をする。
プランジャ52の先端がバルブシート48に当接し、連通孔49を閉鎖している状態を初期状態とする。初期状態で攪拌子22を回転させ、攪拌を開始する。吐出制御装置58より吐出開始信号が発信されると、プランジャ駆動機構53が動作してプランジャ52を上昇させる。このときの上昇距離はストローク調整機構54によって決められている。プランジャ52が上昇してバルブシート48の連通孔49が開放されると、シリンジ3内の固体粒子混合液体32は圧縮気体の作用によりノズル50へと流れ込む。ノズル50へと流れ込んだ固体粒子混合液体32は、ノズル内の流路を通って吐出口から外へと排出される。このとき、固体粒子混合液体32はノズル50先端とつながった状態(糸切りが必要な状態)にある。所定の時間経過後、吐出制御装置58より吐出終了信号が発信されると、プランジャ駆動機構53が動作してプランジャ52を下降させる。プランジャ52が下降してバルブシート48に当接し、連通孔49を閉鎖すると、固体粒子混合液体32は、ノズル50先端から離れて、滴状になって飛翔していく。この間、攪拌子22は一定の速度で回転している。
以上が一回の吐出に係る基本動作である。複数回吐出を行う場合は、上記基本動作を繰り返す。
【0043】
《第二実施形態》
第二実施形態は、複数個の攪拌子を備える吐出装置に関する。ノズルに連通する容器(シリンジ)の容量が大きい場合や、沈降しやすい粒子を混ぜた液体を用いる場合などに適する構成である。
本実施形態の攪拌装置1は、シリンジ3の下方から磁力を作用させるのではなく、シリンジ3の側面方向から磁力を作用させるため、シリンジ3の長手方向に複数の撹拌子を配し、これらを回転させることができる。
図6に、第二実施形態の攪拌装置を備える吐出装置の要部断面図を示す。以下では、第一実施形態と異なる部分のみ説明し、重複する部分の説明は省略する。
【0044】
本実施形態の攪拌装置1は、3個の攪拌子22を一定の間隔で容器3内に配設する。ここで、攪拌子22を複数個設ける場合、それらに対応する磁石7およびこれを固定する部材も複数個設けなければならない。そこで、本実施形態では、3個の攪拌子22に対応する位置までを覆う長さであり、磁石7、磁石支持部材8および磁石固定板9を3組設けた外筒5を用いている。それに伴い、回動機構11も、第一実施形態と比べ上方に位置させる。
【0045】
外筒5を支持するベアリング6は、攪拌子保持機構2側の1箇所に設けるのでもよいが、
図6に示すように、2箇所とすることでより安定して回転させることができる。容器3の内部では、攪拌子22同士がくっついてしまわないよう、プランジャ52に一定間隔でストッパ66を設けてもよい。このストッパ66は回転しないようプランジャ52に固定されている。ストッパ66上端と攪拌子22との間は、予定しているストローク分以上の隙間を空けておくことで、吐出動作の妨げとなることを防ぐ。攪拌子22同士の間隔は、例えば、容器3の内径の約0.5〜1.5倍が好ましい。そうすることで、攪拌子22の上方および下方に流れを生起させ、均一に混合することができる。本構成例の各攪拌子22は、同心に整列させた状態(上面から見るとぴったりと重なる状態)で配置されているが、一定角度(例えば60度)ずつずらして配置してもよい。
【0046】
以上に説明した本実施形態の吐出装置46によれば、ノズルに連通する容器(シリンジ)の容量が大きい場合や、沈降しやすい粒子を混ぜた液体を用いる場合でも、固体粒子を液体中に均一に混合しながら吐出作業を行うことができる。
【0047】
《第三実施形態》
第三実施形態は、圧縮気体の作用により容器(シリンジ)3内の液体を吐出するエア式吐出装置に関する。
図7に、第三実施形態の攪拌装置を備える吐出装置の要部断面図を示す。以下では、第一実施形態と異なる部分のみ説明し、重複する部分の説明は省略する。
【0048】
本実施形態の吐出装置67は、プランジャ52とそれに関係する構成は無く、容器3と、ノズル50と、圧縮気体源60から供給される圧縮気体を所望の圧力へ調整して供給する吐出制御装置58と、容器3に調圧された圧縮気体をチューブ68を介して供給するアダプタ69と、を主要な構成要素とする。吐出装置67は、調圧された圧縮気体を所定時間容器内の液体に印加することで液体を吐出する。
吐出装置67は、下容器支持部材64に設けられたノズルガイド70に支持される。攪拌子22は、プランジャ52が無いために、貫通孔30を設けなくてもよいが、貫通孔30を通過する流れを生じさせるために設けてもよい。
【0049】
以上に説明した本実施形態の吐出装置67によれば、固体粒子を液体中に均一に混合しながら、プランジャでの吐出に適しない液体材料の吐出作業を行うことも可能である。
【0050】
《第四実施形態》
第四実施形態は、四翼型の攪拌子を備える吐出装置に関する。
図8に、第四実施形態の攪拌装置に係る攪拌子を説明する斜視図を示す。以下では、第一実施形態と異なる部分のみ説明し、重複する部分の説明は省略する。
【0051】
図8に示すように、攪拌子72は、貫通孔30を中心として対向する四枚の翼を有しており、上面視十字形となっている。第一実施形態の二翼型の攪拌子22と同様に、各翼にテーパー面24,25、上切り欠き面27、外側面26、下切り欠き部28、貫通孔30、平坦部29および孔31を設けている。
この攪拌子72により生起される流れは、攪拌子22により生起される流れ(
図5)と基本的傾向に違いはないが、流れが生起される箇所が2箇所ずつから4箇所ずつに増え、より分割された細かな流れとすることができ、容器内の液体中に分散した固体粒子を均一な混合状態とすることができる。
本実施形態では、孔31および磁石23を一対としているが、攪拌子自体の重さや液体の粘度などにより大きな力が必要なときは、孔31および磁石23を二対としてもよい。
なお、本実施形態では、四翼型の攪拌子を開示したが、用途に応じて三翼型の攪拌子を用いてもよい。