(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
まず、本発明の第一実施形態に係る船舶の廃熱回収システム1の構成について
図1及び
図2を用いて説明する。
【0016】
船舶の廃熱回収システム1は、作動媒体が水(蒸気)であり、ディーゼルエンジンからなる主機100の廃熱を熱源として発電と蒸気利用装置101への蒸気供給とを並行して行う船舶の廃熱回収システムである。
図1に示すように、船舶の廃熱回収システム1は、蒸気発生器2と、スクロール形流体機械群3と、発電機7と、第一凝縮器8と、復水タンク9と、作動媒体供給ポンプ11と、仕切り弁12a・12b・12cと、制御装置14とを具備する。
【0017】
蒸気発生器2は、作動媒体である水を主機100の排気等で加熱して高温高圧の蒸気を生成する。蒸気発生器2は、作動媒体(後述の第一凝縮器8によって蒸気から凝縮された水)と排気との熱交換によって蒸気を生成する。蒸気発生器2は、排気通路15を介して主機100と接続され、作動媒体通路16dを介してスクロール形流体機械群3に接続される。蒸気発生器2において生成された蒸気は、作動媒体通路16dを介してスクロール形流体機械群3に供給される。なお、本実施形態において、熱源を主機100の排気ガスとしたがこれに限定するものではない。
【0018】
スクロール形流体機械群3は、膨張機であるスクロール形流体機械3a・3b・3cから構成される。スクロール形流体機械3a・3b・3cは、蒸気のエネルギーを回転力に変換して出力する。スクロール形流体機械群3は、船舶内の蒸気利用装置101が接続される作動媒体通路16dであって蒸気利用装置101よりも下流側に接続される。具体的には、スクロール形流体機械3a・3b・3cが作動媒体通路16a・16b・16cを介して作動媒体通路16dに並列に接続される。本実施形態においてスクロール形流体機械群3は、3機のスクロール形流体機械3a・3b・3cから構成されるが、これに限定されるものではない。スクロール形流体機械3a・3b・3cは、主に固定スクロール4と、可動スクロール5と、クランク軸6とを具備する。
【0019】
図2に示すように、固定スクロール4は、膨張室Cを構成する部材である。固定スクロール4は、鏡板4aと鏡板4aの一側板面に形成される固定スクロールラップ4bからなる。固定スクロールラップ4bは、いわゆるインボリュート曲線に基づいて形成されている。固定スクロール4の外縁部には、蒸気排出口4cが設けられている。スクロール形流体機械3a・3b・3cは、作動媒体通路16eを介して蒸気排出口4cに後述の第一凝縮器8と接続される。
【0020】
可動スクロール5は、膨張室Cを構成する部材である。可動スクロール5は、鏡板5aと鏡板の一側板面に形成される可動スクロールラップ5bからなる。可動スクロールラップ5bは、いわゆるインボリュート曲線に基づいて形成される。可動スクロール5は、固定スクロールラップ4bの隙間に対向する可動スクロールラップ5bが挿入され膨張室Cを構成する。可動スクロール5の旋回運動によってクランク軸6が回転される。なお、スクロール形流体機械3a・3b・3cは、可動スクロール5の旋回運動によって一本のクランク軸6が回転するように構成されているが、このような構成に限定するものではない。
【0021】
図1に示すように、発電機7は、外部からの駆動力によって電気を発電する。発電機7は、スクロール形流体機械3a・3b・3cのクランク軸6にそれぞれ連結される。すなわち、発電機7は、クランク軸6の回転によって発電可能に構成される。発電機7によって発電された電気は、船舶の廃熱回収システム1の外部に供給される。
【0022】
第一凝縮器8及び第二凝縮器102は、蒸気を給水によって冷却して凝縮させる(復水させる)。第一凝縮器8は、作動媒体通路16eを介してスクロール形流体機械3a・3b・3cから作動媒体である蒸気が供給される。第一凝縮器8は、作動媒体と冷却水通路17を介して供給される給水との熱交換によって蒸気を凝縮させる。第一凝縮器8は、作動媒体通路16fを介して復水タンク9に接続される。第二凝縮器102は、作動媒体通路16gを介して蒸気利用装置101から作動媒体である蒸気が供給される。第二凝縮器102は、作動媒体と冷却水通路17を介して供給される給水との熱交換によって蒸気を凝縮させる。第二凝縮器102は、作動媒体通路16hを介して復水タンク9に接続される。第一凝縮器8及び第二凝縮器102において凝縮された水は、作動媒体通路16f・16hを介して復水タンク9に供給される。
【0023】
復水タンク9は、第一凝縮器8及び第二凝縮器102によって凝縮された水を溜める。復水タンク9は、作動媒体通路16iを介して作動媒体供給ポンプ11に接続される。
【0024】
作動媒体供給ポンプ11は、復水タンク9内の作動媒体を蒸気発生器2に供給する。作動媒体供給ポンプ11は、作動媒体通路16jを介して蒸気発生器2に接続される。また、作動媒体供給ポンプ11は、作動媒体通路16i及び作動媒体通路16jを介して作動媒体を蒸気発生器2に供給する。
【0025】
仕切り弁12a・12b・12cは、開閉することで作動媒体通路16a・16b・16cを連通又は閉塞する。仕切り弁12a・12b・12cは、電磁式の自動弁から構成される。仕切り弁12a・12b・12cは、作動媒体通路16a・16b・16cにそれぞれ設けられる。仕切り弁12a・12b・12cは、スクロール形流体機械3a・3b・3cに蒸気を供給する場合に開状態に制御され、スクロール形流体機械3a・3b・3cに蒸気を供給しない場合に閉状態に制御される。
【0026】
流量センサー13は、余剰蒸気の流量を計測する。流量センサー13は、蒸気利用装置101が接続される作動媒体通路であって蒸気利用装置101よりも下流側、かつスクロール形流体機械群3の上流側に接続される。これにより、流量センサー13は、蒸気利用装置101に供給されない余剰蒸気の流量Fを測定することができる。
【0027】
制御装置14は、熱需要に基づいて船舶の廃熱回収システム1の制御を行う。制御装置14は、船舶の廃熱回収システム1の制御を行うための種々のプログラムやデータが格納される。制御装置14は、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。
【0028】
制御装置14は、船舶の廃熱回収システム1を構成する各種装置、例えば、仕切り弁12a・12b・12cのソレノイドに接続され、仕切り弁12a・12b・12cの開閉状態を制御することができる。また、制御装置14は、流量センサー13に接続され、流量センサー13が検出する余剰蒸気の流量Fの信号を取得することができる。
【0029】
このような構成の船舶の廃熱回収システム1において、蒸気発生器2によって生成された蒸気のうち蒸気利用装置101に供給されなかった余剰蒸気がスクロール形流体機械群3に供給される。余剰蒸気の流量に応じてスクロール形流体機械3a・3b・3cのいずれかに選択的に余剰蒸気が供給される。スクロール形流体機械3a・3b・3cは、膨張室Cに余剰蒸気が供給されると膨張室Cを押し広げようとする蒸気の力によって可動スクロールに支持されるクランク軸6が回転される。クランク軸6に連結される発電機7は、スクロール形流体機械3a・3b・3cによって駆動される。スクロール形流体機械3a・3b・3cから排出された蒸気は、第一凝縮器8によって凝縮された後に蒸気発生器2に供給される。
【0030】
次に、
図3を用いて、船舶の廃熱回収システム1におけるスクロール形流体機械群3の効率について説明する。
【0031】
図3(a)及び
図3(b)は、本実施形態におけるη−F線図(効率−余剰蒸気の流量線図)で流量ある。流量Fは、スクロール形流体機械群3(
図3(b)においてはスクロール形流体機械)に供給される余剰蒸気の流量を示している(
図1参照)。効率ηは、スクロール形流体機械群3(
図3(b)においてはスクロール形流体機械)において供給される蒸気の流量に対して出力される仕事量の比率を示している。つまり、効率ηが大きいほど供給される蒸気のエネルギーが効率よく仕事に変換されるため、廃熱の利用効率が向上する。
【0032】
図3(a)における実線図は、スクロール形流体機械3a・3b・3cにおける効率ηを示している。本図において、流量Fが増加するにつれてスクロール形流体機械3a、スクロール形流体機械3b、スクロール形流体機械3cの順に余剰蒸気が追加供給される状態を示している。
図3(b)における実線図は、余剰蒸気の全てを供給可能な容量のスクロール形流体機械における効率ηを示している。
【0033】
図3(a)に示すように、流量F0は、蒸気利用装置101の全てに蒸気が供給された場合にスクロール形流体機械群3に供給される余剰蒸気の流量である。つまり、スクロール形流体機械群3には、常に流量F0以上の余剰蒸気が供給される。
【0034】
流量F1は、スクロール形流体機械群3のスクロール形流体機械3a・3b・3cのうちいずれか1機のスクロール形流体機械に余剰蒸気が供給される場合に、スクロール形流体機械群3の効率ηが上限値ηuに達する余剰蒸気の供給量(以下、単に「許容供給量F1」とする)である。この状態におけるスクロール形流体機械群3は、許容供給量F1以上の余剰蒸気が供給されると効率ηが低下する。また、許容供給量F1は、スクロール形流体機械群3のスクロール形流体機械3a・3b・3cのうち、いずれか2機のスクロール形流体機械に余剰蒸気が供給される場合に、スクロール形流体機械群3の効率ηが下限値ηlとなる余剰蒸気の供給量である。この状態におけるスクロール形流体機械群3は、許容供給量F1以下の余剰蒸気が供給されると効率ηがさらに低下する。
【0035】
流量F2は、スクロール形流体機械群3のスクロール形流体機械3a・3b・3cのうちいずれか2機のスクロール形流体機械に余剰蒸気が供給される場合に、スクロール形流体機械群3の効率ηが上限値ηuに達する余剰蒸気の供給量(以下、単に「許容供給量F2」とする)である。この状態におけるスクロール形流体機械群3は、許容供給量F2以上の余剰蒸気が供給されると効率ηが低下する。また、許容供給量F2は、スクロール形流体機械群3の全てのスクロール形流体機械3a・3b・3cに余剰蒸気が供給される場合に、スクロール形流体機械群3の効率ηが下限値ηlに達する余剰蒸気の供給量である。この状態におけるスクロール形流体機械群3は、許容供給量F2以下の余剰蒸気が供給されると効率ηがさらに低下する。
【0036】
流量F3は、スクロール形流体機械群3の全てのスクロール形流体機械3a・3b・3cに余剰蒸気が供給される場合に、スクロール形流体機械群3の効率ηが上限値ηuに達する余剰蒸気の供給量(以下、単に「許容供給量F3」とする)である。
【0037】
次に、
図3(a)を用いて、船舶の廃熱回収システム1において流量Fが流量F0から許容供給量F3まで増加する場合におけるスクロール形流体機械群3の効率ηの変化の態様について説明する。
【0038】
流量Fが許容供給量F1以下の場合、スクロール形流体機械3aに余剰蒸気が供給される。流量Fが許容供給量F1に到達するとスクロール形流体機械3aの効率ηは上限値ηuとなる。つまり、許容供給量F1は、この状態におけるスクロール形流体機械群3の許容供給量の上限値である。
【0039】
流量Fが許容供給量F1を上回った場合、スクロール形流体機械3a及びスクロール形流体機械3bに余剰蒸気が供給される。従って、各スクロール形流体機械3a・3bに供給される余剰蒸気が減少するとともに効率ηが低下する。この際、各スクロール形流体機械3a・3bの効率ηは下限値ηlとなる。流量Fが許容供給量F2に到達するとスクロール形流体機械3a・3bの効率ηは上限値ηuとなる。つまり、許容供給量F2は、この状態におけるスクロール形流体機械群3の許容供給量の上限値である。
【0040】
流量Fが許容供給量F2を上回った場合、スクロール形流体機械3a、スクロール形流体機械3b及びスクロール形流体機械3cに余剰蒸気が供給される。従って、各スクロール形流体機械3a・3b・3cに供給される余剰蒸気が減少するとともに効率ηが低下する。この際、各スクロール形流体機械3a・3b・3cの効率ηは下限値ηlとなる。流量Fが許容供給量F3に到達するとスクロール形流体機械3a・3b・3cの効率ηは上限値ηuとなる。つまり、許容供給量F3は、この状態におけるスクロール形流体機械群3の許容供給量の上限値である。
【0041】
流量F0から許容供給量F3の間におけるスクロール形流体機械群3の効率は平均効率η0として表せる(
図3(a)における二点鎖線図参照)。なお、本実施形態において、スクロール形流体機械3a、スクロール形流体機械3b、スクロール形流体機械3cの順に余剰蒸気が追加供給されることとしたがこれに限定されるものではない。
【0042】
次に、本実施形態に係る船舶の廃熱回収システム1において流量Fが許容供給量F3から流量F0まで減少する場合におけるスクロール形流体機械群3の効率ηの変化の態様について説明する。
【0043】
流量Fが許容供給量F3の場合、スクロール形流体機械3a・3b・3cに余剰蒸気が供給される。流量Fが許容供給量F2に到達するとスクロール形流体機械群4の効率ηは下限値ηlとなる。つまり、許容供給量F2は、この状態におけるスクロール形流体機械群3の許容供給量の下限値である。
【0044】
流量Fが許容供給量F2を下回った場合、許容供給量F2以下の場合において効率ηを下限値ηlよりも低下させないために、スクロール形流体機械3cへの余剰蒸気の供給が停止され、スクロール形流体機械3a及びスクロール形流体機械3bに余剰蒸気が供給される。従って、各スクロール形流体機械3a・3bに供給される余剰蒸気が増加するとともに効率ηが上昇する。この際、各スクロール形流体機械3a・3bの効率ηは上限値ηuとなる。流量Fが許容供給量F1に到達するとスクロール形流体機械3a・3bの効率ηは下限値ηlとなる。つまり、許容供給量F1は、この状態におけるスクロール形流体機械群3の許容供給量の下限値である。
【0045】
流量Fが許容供給量F1を下回った場合、許容供給量F1以下の場合において効率ηを下限値ηlよりも低下させないために、スクロール形流体機械3b・3cへの余剰蒸気の供給が停止され、スクロール形流体機械3aに余剰蒸気が供給される。従って、スクロール形流体機械3aに供給される余剰蒸気が増加するとともに効率ηが上昇する。この際、各スクロール形流体機械3aの効率ηは上限値ηuとなる。流量Fが流量F0に到達するとスクロール形流体機械3aの効率ηは下限値ηlとなる。
【0046】
次に、
図3(b)を用いて、余剰蒸気の全てを供給可能な容量のスクロール形流体機械において流量Fが流量F0から許容供給量F3まで増加する場合における効率ηについて説明する。
【0047】
当該スクロール形流体機械は、流量Fが許容供給量F3の場合に最大の効率ηとなるように構成されている。従って、流量Fがスクロール形流体機械群3における許容供給量F1以下の場合、効率ηが最大となる許容供給量F3の1/3以下の流量しか供給されていない。従って、流量F0から許容供給量F1までの間の当該スクロール形流体機械の平均効率η1は、スクロール形流体機械群3の平均効率η0よりも低い(
図3(b)一点鎖線参照)。
【0048】
同様に、流量Fが許容供給量F1から許容供給量F2の間の場合、効率ηが最大となる許容供給量F3の2/3以下の流量しか供給されていない。従って、許容供給量F1から許容供給量F2までの間の当該スクロール形流体機械の平均効率η2は、スクロール形流体機械群3の平均効率η0よりも低い(
図3(b)一点鎖線参照)。
【0049】
流量Fが許容供給量F2から許容供給量F3の間の場合、効率ηが最大となる許容供給量F3との2/3以上の流量が供給される。従って、許容供給量F2から許容供給量F3までの間の当該スクロール形流体機械の平均効率η3は、スクロール形流体機械群3の平均効率η0よりも高い(
図3(b)一点鎖線参照)。
【0050】
このように、スクロール形流体機械群3は、余剰蒸気の流量Fが許容供給量F2以下の場合において、余剰蒸気の全てを供給可能な容量のスクロール形流体機械よりも高い効率ηを示している。すなわち、スクロール形流体機械群3は、余剰蒸気の流量Fが減少している状態でも余剰蒸気の有するエネルギーを効率よく仕事に変換できる。従って、余剰蒸気の全てを供給可能な容量のスクロール形流体機械に比べて廃熱の利用効率が高い。
【0051】
以下では、
図1及び
図4を用いて上述の如く構成される船舶の廃熱回収システム1における制御装置14の動作態様について説明する。
【0052】
図1に示すように、制御装置14は、流量センサー13から余剰蒸気の流量Fの信号を取得する。制御装置14は、取得した情報に基づいて仕切り弁12a・12b・12cの開閉状態を制御する。
【0053】
図4に示すように、制御装置14は、以下のステップで仕切り弁12a・12b・12cの開閉状態を制御する。
【0054】
まず、ステップS101において、制御装置14は、制御装置14に接続されている流量センサー13からの余剰蒸気の流量Fの信号を取得する。
【0055】
ステップS102において、制御装置14は、余剰蒸気の流量Fの信号から、流量Fが許容供給量の上限値である許容供給量F1以下か否か判定する。その結果、流量Fが許容供給量の上限値である許容供給量F1以下であると判定した場合、制御装置14は、ステップをステップS103に移行させる。一方、流量Fが許容供給量の上限値である許容供給量F1以下でないと判定した場合、制御装置14は、ステップをステップS203に移行させる。
【0056】
ステップS103において、制御装置14は、仕切り弁12a・12b・12cの開閉を制御して仕切り弁12a・12b・12cのうちいずれか1つの仕切り弁(本実施形態では仕切り弁12a)を開状態とする。すなわち、スクロール形流体機械群3のスクロール形流体機械3a・3b・3cのうちいずれか1機のスクロール形流体機械(本実施形態ではスクロール形流体機械3a)に余剰蒸気が供給される。これにより、スクロール形流体機械群3の効率ηは、下限値ηlよりも低下することがない。その後、制御装置14は、ステップをステップS101に戻す。
【0057】
ステップS203において、制御装置14は、余剰蒸気の流量Fの信号から、流量Fが許容供給量の上限値である許容供給量F2以下か否か判定する。すなわち、流量Fが許容供給量の下限値である許容供給量F1を上回り、許容供給量の上限値である許容供給量F2以下か否か判定する。その結果、流量Fが許容供給量の上限値である許容供給量F2以下であると判定した場合、すなわち、流量Fが許容供給量の下限値である許容供給量F1を上回り、許容供給量の上限値である許容供給量F2以下であると判定した場合、制御装置14は、ステップをステップS204に移行させる。一方、流量Fが許容供給量の上限値である許容供給量F2以下でないと判定した場合、すなわち、流量Fが許容供給量の下限値である許容供給量F1を上回り、許容供給量の上限値である許容供給量F2以下でないと判定した場合、制御装置14は、ステップをステップS304に移行させる。
【0058】
ステップS204において、制御装置14は、仕切り弁12a・12b・12cの開閉を制御して仕切り弁12a・12b・12cのうちいずれか2つの仕切り弁(本実施形態では仕切り弁12a・12b)を開状態とする。すなわち、スクロール形流体機械群3のスクロール形流体機械3a・3b・3cのうちいずれか2機のスクロール形流体機械(本実施形態ではスクロール形流体機械3a・3b)に余剰蒸気が供給される。これにより、スクロール形流体機械群3の効率ηは、下限値ηlよりも低下することがない。その後、制御装置14は、ステップをステップS101に戻す。
【0059】
ステップS304において、制御装置14は、仕切り弁12a・12b・12cの開閉を制御して全ての仕切り弁12a・12b・12cを開状態とする。すなわち、スクロール形流体機械群3の全てのスクロール形流体機械3a・3b・3cに余剰蒸気が供給される。これにより、スクロール形流体機械群3の効率ηは、下限値ηlよりも低下することがない。その後、制御装置14は、ステップをステップS101に戻す。
【0060】
以上が本実施形態に係る船舶の廃熱回収システム1の動作態様についての説明である。なお、本発明の技術的思想は、上述したスクロール形流体機械3a・3b・3cへの適用に限るものではなく、その他の構成のスクロール形流体機械に適用することが可能である。
【0061】
加えて、スクロール形流体機械3a・3b・3cは、例えば高温蒸気を用いて推進力を得る船舶等に利用することが可能である。また、本スクロール形流体機械3a・3b・3cは、他の機器から廃熱を回収して回転動力に変換する動力機械として用いることが可能である。
【0062】
以上の如く、主機100からの廃熱を熱源として蒸気発生器2で生成された蒸気を蒸気利用装置101に供給する船舶の廃熱回収システム1において、膨張機であるスクロール形流体機械3a・3b・3cが並列に複数接続され、蒸気利用装置101に供給されない余剰蒸気がスクロール形流体機械3a・3b・3cごとに設けられる仕切り弁12a・12b・12cの開閉によりスクロール形流体機械3a・3b・3cにそれぞれ供給される。このように構成することで、余剰蒸気を単数又は複数のスクロール形流体機械3a・3b・3cに選択的に供給することができる。このため、余剰蒸気の流量に関わらず効率的に廃熱を回収することができる。
【0063】
また、制御装置14を更に備え、複数のスクロール形流体機械3a・3b・3cは、等しい容量で構成され、スクロール形流体機械3a・3b・3cに供給される前記余剰蒸気の流量がスクロール形流体機械3a・3b・3cの組み合わせから決まる許容供給量の上限値である許容供給量F1・F2を上回ると、前記余剰蒸気が供給されていないスクロール形流体機械3a・3b・3cのうち一のスクロール形流体機械の仕切り弁を開状態にし、スクロール形流体機械3a・3b・3cに供給される前記余剰蒸気の流量が許容供給量F1・F2の下限値以下になると、前記余剰蒸気が供給されているスクロール形流体機械のうち一のスクロール形流体機械の仕切り弁12a・12b・12cを閉状態にする。このように構成することで、余剰蒸気の供給量から膨張機の効率を考慮して単数又は複数の膨張機に選択的に余剰蒸気を供給することができる。このため、余剰蒸気の流量に関わらず効率的に廃熱を回収することができる。
【0064】
以下では、
図5を用いて、本発明に係る船舶の廃熱回収システム1における第一実施形態の他の制御形態である廃熱回収ランキンサイクルシステム1について説明する。なお、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0065】
制御装置14は、船舶の廃熱回収システム1を構成する各種装置、例えば、仕切り弁12a・12b・12cに接続され、仕切り弁12a・12b・12cの開閉状態を制御することができる。さらに、制御装置14は、仕切り弁12a・12b・12cの開状態の時間を計測することができる。すなわち、制御装置14は、スクロール形流体機械3a・3b・3cの使用頻度を計測することができる。また、制御装置14は、流量センサー13に接続され、流量センサー13が検出する余剰蒸気の流量Fの信号を取得することができる。
【0066】
上述の如く構成される船舶の廃熱回収システム1における制御装置14の動作態様について説明する。
【0067】
図5に示すように、制御装置14は、以下のステップで仕切り弁12a・12b・12cの開閉状態を制御する。
【0068】
ステップS101からステップS102は、上述の制御態様と同様であるため具体的説明を省略する。
【0069】
ステップ
S403において、制御装置14は、仕切り弁12a・12b・12cの開閉を制御して仕切り弁12a・12b・12cのうち最も開状態の時間が短い仕切り弁(本実施形態では仕切り弁12aとする)を開状態とする。すなわち、スクロール形流体機械群3のスクロール形流体機械3a・3b・3cのうち最も使用頻度の低いスクロール形流体機械(本実施形態ではスクロール形流体機械3aとする)に余剰蒸気が供給される。これにより、スクロール形流体機械群3の効率ηは、下限値ηlよりも低下することがない。また、スクロール形流体機械群3のスクロール形流体機械3a・3b・3cの使用頻度の偏りを防止する。その後、制御装置14は、ステップをステップS101に戻す。
【0070】
ステップS203は、上述の制御態様と同様であるため具体的説明を省略する。
【0071】
ステップ
S504において、制御装置14は、仕切り弁12a・12b・12cの開閉を制御して仕切り弁12a・12b・12cのうち最も開状態の時間が長い仕切り弁(本実施形態では仕切り弁12bとする)を閉状態とする。すなわち、スクロール形流体機械群3のスクロール形流体機械3a・3b・3cのうち最も使用頻度の高いスクロール形流体機械(本実施形態ではスクロール形流体機械3bとする)以外のスクロール形流体機械に余剰蒸気が供給される。これにより、スクロール形流体機械群3の効率ηは、下限値ηlよりも低下することがない。また、スクロール形流体機械群3のスクロール形流体機械3a・3b・3cの使用頻度の偏りを防止する。その後、制御装置14は、ステップをステップS101に戻す。
【0072】
ステップS304は、上述の制御態様と同様であるため具体的説明を省略する。
【0073】
以上の如く、前記制御装置14は、前記余剰蒸気が供給されていない前記膨張機のうち最も使用頻度の低い前記膨張機の前記仕切り弁12a・12b・12cを開状態にし、前記余剰蒸気が供給されている前記膨張機のうち最も使用頻度の高い前記膨張機の前記仕切り弁12a・12b・12cを閉状態にする。このように構成することで、接続されている膨張機の使用頻度を略一定に保ち、膨張機の効率の経年変化による個体差を小さくすることができる。このため、船舶の廃熱回収システム1の効率を維持しながら余剰蒸気の流量に関わらず効率的に廃熱を回収することができる。
【0074】
以下では、
図1、
図6及び
図7を用いて、本発明に係る船舶の廃熱回収システムにおける第二実施形態である船舶の廃熱回収システム20について説明する。なお、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0075】
船舶の廃熱回収システム20は、船舶の廃熱回収システム1における、スクロール形流体機械群3の構成が異なる。
【0076】
図1に示すように、スクロール形流体機械群21は、膨張機であるスクロール形流体機械21a・21b・21cから構成される。スクロール形流体機械21a・21b・21cは、蒸気のエネルギーを回転力に変換して出力する。スクロール形流体機械群21は、船舶内の蒸気利用装置101が接続される作動媒体通路であって蒸気利用装置101よりも下流側に接続される。具体的には、スクロール形流体機械21a・21b・21cが作動媒体通路を介して作動媒体通路に並列に接続される。
【0077】
スクロール形流体機械21a・21b・21cは、それぞれ容量が異なる。本実施形態において、スクロール形流体機械21a、スクロール形流体機械21b、スクロール形流体機械21cの順に容量が大きくなり、スクロール形流体機械21cの容量は、スクロール形流体機械21aとスクロール形流体機械21bとを合わせたものと等しいとする。なお、接続されるスクロール形流体機械の台数及び容量の組み合わせはこれに限定するものではない。
【0078】
次に、
図6を用いて、船舶の廃熱回収システム1におけるスクロール形流体機械群3の効率について説明する。
【0079】
図6は、本実施形態におけるη−F線図(効率−余剰蒸気の流量線図)である。
【0080】
流量F1は、スクロール形流体機械群21のスクロール形流体機械21aに余剰蒸気が供給される場合に、スクロール形流体機械群21の効率ηが上限値ηuaに達する余剰蒸気の供給量(以下、単に「許容供給量F1」とする)である。この状態におけるスクロール形流体機械群21は、許容供給量F1以上の余剰蒸気が供給されると効率ηが低下する。また、許容供給量F1は、スクロール形流体機械群21のスクロール形流体機械21bに余剰蒸気が供給される場合に、スクロール形流体機械群21の効率ηが下限値ηlbとなる余剰蒸気の供給量である。この状態におけるスクロール形流体機械群21は、許容供給量F1以下の余剰蒸気が供給されると効率ηがさらに低下する。
【0081】
流量F2は、スクロール形流体機械群21のスクロール形流体機械21bに余剰蒸気が供給される場合に、スクロール形流体機械群21の効率ηが上限値ηubに達する余剰蒸気の供給量(以下、単に「許容供給量F2」とする)である。この状態におけるスクロール形流体機械群21は、許容供給量F2以上の余剰蒸気が供給されると効率ηが低下する。また、許容供給量F2は、スクロール形流体機械群21のスクロール形流体機械21cに余剰蒸気が供給される場合に、スクロール形流体機械群21の効率ηが下限値ηlcに達する余剰蒸気の供給量である。この状態におけるスクロール形流体機械群21は、許容供給量F2以下の余剰蒸気が供給されると効率ηがさらに低下する。
【0082】
流量F3は、スクロール形流体機械群21のスクロール形流体機械21cに余剰蒸気が供給される場合に、スクロール形流体機械群21の効率ηが上限値ηucに達する余剰蒸気の供給量(以下、単に「許容供給量F3」とする)である。すなわち、蒸気利用装置101が全く使用されていない場合にスクロール形流体機械群21に供給される余剰蒸気の供給量である。
【0083】
次に、船舶の廃熱回収システム20において流量Fが流量F0から許容供給量F3まで増加する場合におけるスクロール形流体機械群21の効率ηの変化の態様について説明する。
【0084】
流量Fが許容供給量F1以下の場合、スクロール形流体機械21aに余剰蒸気が供給される。流量Fが許容供給量F1に到達するとスクロール形流体機械21aの効率ηは上限値ηuaとなる。つまり、許容供給量F1は、この状態におけるスクロール形流体機械群21の許容供給量の上限値である。また、流量F0から許容供給量F1の間におけるスクロール形流体機械群21(スクロール形流体機械21a)の効率ηは平均効率ηaとして表せる(
図6における二点鎖線図参照)。
【0085】
流量Fが許容供給量F1を上回った場合、スクロール形流体機械21aよりも容量が大きいスクロール形流体機械21bに余剰蒸気が供給される。従って、スクロール形流体機械群21の効率ηが低下する。この際、スクロール形流体機械群21(スクロール形流体機械21b)の効率ηは下限値ηlbとなる。流量Fが許容供給量F2に到達するとスクロール形流体機械群21の効率ηは上限値ηubとなる。つまり、許容供給量F2は、この状態におけるスクロール形流体機械群21の許容供給量の上限値である。また、流量F1から許容供給量F2の間におけるスクロール形流体機械群21の効率ηは平均効率ηbとして表せる(
図6における二点鎖線図参照)。
【0086】
流量Fが許容供給量F2を上回った場合、スクロール形流体機械21bよりも容量が大きいスクロール形流体機械21cに余剰蒸気が供給される。従って、スクロール形流体機械群21の効率ηが低下する。この際、スクロール形流体機械群21(スクロール形流体機械21c)の効率ηは下限値ηlcとなる。流量Fが許容供給量F3に到達するとスクロール形流体機械群21の効率ηは上限値ηucとなる。つまり、許容供給量F3は、この状態におけるスクロール形流体機械群21の許容供給量の上限値である。また、流量F2から許容供給量F3の間におけるスクロール形流体機械群21の効率ηは平均効率ηcとして表せる(
図6における二点鎖線図参照)。
【0087】
次に、本実施形態に係る船舶の廃熱回収システム1において流量Fが許容供給量F3から流量F0まで減少する場合におけるスクロール形流体機械群21の効率ηの変化の態様について説明する。
【0088】
流量Fが許容供給量F3の場合、スクロール形流体機械21cに余剰蒸気が供給される。流量Fが許容供給量F2に到達するとスクロール形流体機械群21(スクロール形流体機械21c)の効率ηは下限値ηlcとなる。つまり、許容供給量F2は、この状態におけるスクロール形流体機械群21の許容供給量の下限値である。
【0089】
流量Fが許容供給量F2を下回った場合、許容供給量F2以下の場合において効率ηを下限値ηlcよりも低下させないために、スクロール形流体機械21cよりも容量が小さいスクロール形流体機械21bに余剰蒸気が供給される。従って、スクロール形流体機械群21の効率ηが上昇する。この際、スクロール形流体機械群21(スクロール形流体機械21b)の効率ηは上限値ηubとなる。流量Fが許容供給量F1に到達するとスクロール形流体機械群21の効率ηは下限値ηlbとなる。つまり、許容供給量F1は、この状態におけるスクロール形流体機械群21の許容供給量の下限値である。
【0090】
流量Fが許容供給量F1を下回った場合、許容供給量F1以下の場合において効率ηを下限値ηlbよりも低下させないために、スクロール形流体機械21bよりも容量が小さいスクロール形流体機械21aに余剰蒸気が供給される。従って、スクロール形流体機械群21の効率ηが上昇する。この際、スクロール形流体機械群21(スクロール形流体機械21a)の効率ηは上限値ηuaとなる。流量Fが流量F0に到達するとスクロール形流体機械群21の効率ηは下限値ηlaとなる。
【0091】
船舶の廃熱回収システム1において、スクロール形流体機械21cの容量は、スクロール形流体機械21aとスクロール形流体機械21bとを合わせたものと等しい。つまり、流量Fが許容供給量F2以上である場合に、スクロール形流体機械21aとスクロール形流体機械21bとに余剰蒸気を供給することが可能である。しかし、スクロール形流体機械21aの平均効率ηaとスクロール形流体機械21bの平均効率ηbとは、スクロール形流体機械21cの平均効率ηcよりも低い。従って、スクロール形流体機械群21の効率ηを高くするために容量の大きいスクロール形流体機械を優先的に選択して余剰蒸気を供給する。また、余剰蒸気を供給するスクロール形流体機械を組み合わせる場合においても、容量の大きいスクロール形流体機械を優先的に選択して余剰蒸気を供給するスクロール形流体機械の数が最小になるようにする。
【0092】
以下では、
図1及び
図7を用いて、本発明に係る船舶の廃熱回収システムにおける第二実施形態である船舶の廃熱回収システム20について説明する。なお、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0093】
図1に示すように、制御装置14は、以下のステップで仕切り弁12a・12b・12cの開閉状態を制御する。
【0094】
ステップS101からステップS102は、上述の制御態様と同様であるため具体的説明を省略する。
【0095】
ステップS103において、制御装置14は、仕切り弁12a・12b・12cの開閉を制御してスクロール形流体機械21aに余剰蒸気を供給するための仕切り弁12aのみを開状態とする。すなわち、スクロール形流体機械群21のうち最も容量の小さいスクロール形流体機械21aに余剰蒸気が供給される。これにより、スクロール形流体機械群21の効率ηは、下限値ηlaよりも低下することがない。その後、制御装置14は、ステップをステップS101に戻す。
【0096】
ステップS203は、上述の制御態様と同様であるため具体的説明を省略する。
【0097】
ステップ
S604において、制御装置14は、仕切り弁12a・12b・12cの開閉を制御してスクロール形流体機械21bに余剰蒸気を供給するための仕切り弁12bのみを開状態とする。すなわち、スクロール形流体機械群21のうちスクロール形流体機械21aよりも容量が大きくスクロール形流体機械21cよりも容量が小さいスクロール形流体機械21bに余剰蒸気が供給される。これにより、スクロール形流体機械群21の効率ηは、下限値ηlbよりも低下することがない。その後、制御装置14は、ステップをステップS101に戻す。
【0098】
ステップ
S704において、制御装置14は、スクロール形流体機械21cに余剰蒸気を供給するための仕切り弁12cのみを開状態とする。すなわち、スクロール形流体機械群21のうちスクロール形流体機械21a・21bよりも容量が大きいスクロール形流体機械21cに余剰蒸気が供給される。これにより、スクロール形流体機械群21の効率ηは、下限値ηlcよりも低下することがない。その後、制御装置14は、ステップをステップS101に戻す。
【0099】
以上の如く、制御装置14を更に備え、複数のスクロール形流体機械21a・21b・21cは、異なる容量の組み合わせから構成され、スクロール形流体機械21a・21b・21cの組み合わせから決まる許容供給量の下限値である許容供給量F1から許容供給量の上限値である許容供給量F2まで、又は許容供給量の下限値である許容供給量F2から許容供給量の上限値である許容供給量F3までの範囲内に、スクロール形流体機械21a・21b・21cの数が最も少なくなる組み合わせで前記余剰蒸気の流量が含まれるように仕切り弁12a・12b・12cを開閉する。このように構成することで、余剰蒸気の供給量からスクロール形流体機械21a・21b・21cの効率を考慮して最適な組み合わせのスクロール形流体機械21a・21b・21cに選択的に余剰蒸気を供給することができる。このため、余剰蒸気の流量に関わらず効率的に廃熱を回収することができる。