【実施例】
【0052】
≪液圧ブレーキシステムのハード構成≫
(a)全体構成
請求可能発明の実施例である液圧ブレーキシステムは、ブレーキオイルを作動液としてハイブリッド車両に搭載される液圧ブレーキシステムである。本液圧ブレーキシステムは、
図1に示すように、大まかには、(A) 4つの車輪10に設けられ、それぞれがブレーキ力を発生させる4つのブレーキ装置12と、(B) ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル14の操作が入力されるとともに、加圧された作動液を各ブレーキ装置12に供給するマスタシリンダ装置16と、(C) マスタシリンダ装置16と4つのブレーキ装置12の間に配置されたアンチロックユニット18と、(D) 大気圧の作動液を低圧源であるリザーバ20から汲み上げて加圧することにより、高圧の作動液を供給する高圧源装置22と、(E) 高圧源装置22から供給される作動液を調圧してマスタシリンダ装置16に供給する調圧器であるレギュレータ24と、(F) レギュレータ24から供給される作動液の圧力を調整するための電磁式増圧リニア弁26および電磁式減圧リニア弁28(以下、それぞれ、単に、「増圧リニア弁26」および「減圧リニア弁28」と略す場合がある)と、(G) それらの装置,機器,弁を制御することで当該液圧ブレーキシステムの制御を司る制御装置としてのブレーキ電子制御ユニット30とを含んで構成されている。ちなみに、アンチロックユニット18(以下、「ABSユニット18」と呼ぶ場合がある)は、図では、[ABS]という符号が付されている。また、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28は、図では、それぞれ、それらの記号標記である[SLA],[SLR]という符号が付されている。さらに、ブレーキ電子制御ユニット30は、以下、「ブレーキECU30」と呼ぶ場合があり、図では、[ECU]という符号で表わされている。なお、4つの車輪10は、左右前後を表わす必要がある場合に、右前輪10FR,左前輪10FL,右後輪10RR,左後輪10RLと表わすこととする。また、4つのブレーキ装置12等の構成要素も、左右前後を区別する必要がある場合に、車輪10と同様の符号を付して、12FR,12FL,12RR,12RL等と表わすこととする。
【0053】
(b)ブレーキ装置およびABSユニット
各車輪10に対応して設けられたブレーキ装置12は、車輪10とともに回転するディスクロータ,キャリアに保持されたキャリパ,キャリパに保持されたホイールシリンダ,キャリパに保持されてそのホイールシリンダによって動かされることでディスクロータを挟み付けるブレーキパッド等を含んで構成されたディスクブレーキ装置である。また、ABSユニット18は、各車輪に対応して設けられて対をなす増圧用開閉弁および減圧用開閉弁,ポンプ装置等を含んで構成されたユニットであり、スリップ現象等によって車輪10がロックした場合に作動させられて、車輪のロックが持続することを防止するための装置である。なお、ブレーキ装置12,ABSユニット18は、一般的な装置,ユニットであり、請求可能発明の特徴とは関連が小さいため、それらの構造についての詳しい説明は省略する。
【0054】
(c)マスタシリンダ装置
マスタシリンダ装置16は、ストロークシミュレータ一体型のマスタシリンダ装置であり、概して言えば、ハウジング40の内部に、2つの加圧ピストンである第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44、入力ピストン46が配設されるとともに、ストロークシミュレータ機構48が組み込まれている。なお、マスタシリンダ装置16に関する以下の説明において、便宜的に、図における左方を前方,右方を後方と呼び、同様に、後に説明するピストン等の移動方向について、左方に動くことを前進,右方に動くことを後退と呼ぶこととする。
【0055】
ハウジング40は、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44、入力ピストン46が配設される空間を有し、その空間は、前方側の端部が閉塞されるとともに、環状をなす区画部50によって前方室52と後方室54とに区画されている。第2加圧ピストン44は、前方に開口する有底円筒状をなしており、前方室52内において前方側に配設される。一方、第1加圧ピストン42は、有底円筒状をなすとともに後端に鍔56が形成された本体部58と、本体部58から後方に延びる突出部60とを有しており、本体部58が、前方室52内において第2加圧ピストン44の後方に配設されている。区画部50は、環状をなしていることから中央に開口62が形成されたものとされており、突出部60は、その開口62を貫通して後方室54に延び出している。入力ピストン46は、後方室54に、詳しく言えば、それの一部分が後方から後方室54の内部に臨み入るようにして、配設され、後端部に、リンクロッド64を介して、ブレーキペダル14が連結されている。
【0056】
第1加圧ピストン42と第2加圧ピストン44との間には、詳しく言えば、第1加圧ピストン42の本体部58の前方には、2つの後輪10RR,10RLに対応する2つのブレーキ装置12RR,12RLに供給される作動液を第1加圧ピストン42の前進によって加圧するための第1加圧室R1が、第2加圧ピストン44の前方側には、2つの前輪10FR,10FLに対応する2つのブレーキ装置12FR,12FLに供給される作動液を第2加圧ピストン44の前進によって加圧するための第2加圧室R2が、それぞれ形成されている。一方、第1加圧ピストン42と入力ピストン46との間には、ピストン間室R3が形成されている。詳しく言えば、区画部50に形成された開口62から後方に延び出す突出部60の後端と、入力ピストン46との前端とが向かい合うようにして、つまり、開口62を利用して第1加圧ピストン42と入力ピストン46とが向かい合うようにして、ピストン間室R3が形成されているのである。さらに、ハウジング40の前方室52内には、突出部60の外周において、区画部50の後端面と、第1加圧ピストン42の本体部58の後端面、つまり、鍔56の後端面とによって区画されるようにして、レギュレータ24から供給される作動液が導入される環状の入力室R4が、本体部58の外周における鍔56の前方に、その鍔56を挟んで入力室R4と対向する環状の対向室R5が、それぞれ形成されている。
【0057】
第1加圧室R1,第2加圧室R2は、それぞれ、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44が移動範囲における後端に位置する際に、低圧ポートP1,P2を介してリザーバ20と連通可能とされており、また、それぞれ、出力ポートP3,P4を介するとともにABSユニット18を介して、ブレーキ装置12と連通させられている。ちなみに、第1加圧室R1は、後に説明するレギュレータ24をも介してブレーキ装置12RR,12RLと連通させられている。なお、入力室R4は、入力ポートP5を介して、後に説明するレギュレータ24の調圧ポートと連通させられている。
【0058】
ピストン間室R3は、連結ポートP6と、対向室R5は、連通ポートP7と、それぞれ連通しており、それら連通ポートP6と連通ポートP7は、外部連通路である室間連通路70によって繋げられている。この外部連通路64の途中には、常閉型の電磁式開閉弁72、つまり、非励磁状態で閉弁状態となり、励磁状態で開弁状態となる開閉弁72が設けられており、開閉弁72が開弁状態とされた場合に、ピストン間室R3と対向室R5は連通させられる。それらピストン間室R3と対向室R5とが連通する状態では、それらによって、1つの液室、すなわち、反力室R6と呼ぶことのできる液室が形成されていると考えることができる。なお、電磁式開閉弁72は、ピストン間室R3と対向室R5との連通,非連通を切換える機能を有することから、以下、「室間連通切換弁72」と呼ぶこととする。
【0059】
また、マスタシリンダ装置16には、さらに2つの低圧ポートP8,P9が設けられており、それらは、内部通路にて連通している。一方の低圧ポートP8はリザーバ20に繋げられており、他方の低圧ポートP9は、外部連通路である低圧開放路74を介して、室間連通切換弁72と対向室R5との間において室間連通路70に繋げられている。低圧開放路74には、常開型の電磁式開閉弁76、つまり、非励磁状態で開弁状態となり、励磁状態で閉弁状態となる開閉弁76が設けられている。この開閉弁76は、対向室R5を低圧(本システムでは大気圧である)に開放する機能を有することから、以下、「低圧開放弁76」と呼ぶこととする
【0060】
ハウジング40には、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44、入力ピストン46が配設されている空間とは別の空間を有しており、ストロークシミュレータ機構48は、その空間と、その空間内に配設された反力ピストン80と、反力ピストン80を付勢する2つの反力スプリング82,84(いずれも圧縮コイルスプリングである)とを含んで構成されている。反力ピストン80の後方側には、バッファ室R7が形成されている(図では、殆ど潰れた空間として表わされている)。ブレーキペダル14の操作によって入力ピストン46が前進する際、バッファ室R7には、内部通路を介して、対向室R5の作動液、すなわち、反力室R6の作動液が導入され、その導入される作動液の量、すなわち、入力ピストン46の前進量に応じた反力スプリング82,84の弾性反力が反力室R6に作用することで、ブレーキペダル14に操作反力が付与される。つまり、このストロークシミュレータ機構48は、入力ピストン46の前進に対するその前進の量に応じた大きさの反力を入力ピストン46に付与する反力付与機構として機能しているのである。ちなみに、2つの反力スプリング82,84は直列的に配置されるとともに、反力スプリング84は、反力スプリング82に比較して、相当にばね定数が小さくされており、ブレーキペダル14の操作の進行の途中において反力スプリング84の変形が禁止されることで、ストロークシミュレータ機構48は、その途中から増加勾配が大きくなるような反力特性を実現するものとされている。なお、本システムでは、室間連通路70に、反力室R6の作動液の圧力(反力圧)を検出するための反力圧センサ86が設けられている(図では、反力圧の記号標記である[P
RCT]という符号が付されている)。
【0061】
通常の状態では、上記室間連通切換弁72は、開弁状態、上記低圧開放弁76は、閉弁状態にあり、ピストン間室R3と対向室R5とによって、上記反力室R6が形成されている。本マスタシリンダ装置16では、第1加圧ピストン42を前方に移動させるべくピストン間室R3の作動液の圧力が作用する第1加圧ピストン42の受圧面積(対ピストン間室受圧面積)、すなわち、第1加圧ピストン42の突出部58の後端の面積と、第1加圧ピストン42を後方に移動させるべく対向室R5の作動液の圧力が作用する第1加圧ピストン42の受圧面積(対対向室受圧面積)、すなわち、第1加圧ピストンの鍔56の前端面の面積とが、等しくされている。したがって、ブレーキペダル14を操作して入力ピストン46を前進させても、操作力、すなわち、反力室R6の圧力によっては、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44は前進せず、マスタシリンダ装置16によって加圧された作動液がブレーキ装置12に供給されることはない。その一方で、入力室R4に高圧源装置22からの作動液の圧力が導入されると、その作動液の圧力に依存して第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44は前進し、入力室R4の作動液の圧力に応じた圧力に加圧された作動液が、ブレーキ装置12に供給される。つまり、本マスタシリンダ装置16によれば、通常状態において、ブレーキペダル14に加えられた操作力に依存せずに高圧源装置22からマスタシリンダ装置16に供給される作動液の圧力に依存した大きさのブレーキ力をブレーキ装置12が発生させる高圧源圧依存制動力発生状態が実現されるのである。
【0062】
本システムが搭載されている車両は、上述したようにハイブリッド車両であり、当該車両においては、回生ブレーキ力が利用できる。そのため、ブレーキ操作に基づいて決定されるブレーキ力から回生ブレーキ力を減じた分のブレーキ力を、ブレーキ装置12によって発生させればよい。本システムは、上記高圧源圧依存制動力発生状態が実現されることから、ブレーキ操作力に依存しないブレーキ力をブレーキ装置12が発生させることができる。そのような作用から、本システムは、ハイブリッド車両に好適な液圧ブレーキシステムなのである。
【0063】
一方、電気的失陥時等には、上記室間連通切換弁72は、閉弁状態、上記低圧開放弁76は、開弁状態にあり、ピストン間室R3は密閉されるとともに対向室R5は低圧(本システムでは大気圧である)に開放される。その状態では、ブレーキペダル14に加えられた操作力は、ピストン間室R3の作動液を介して第1加圧ピストン42に伝達され、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44は前進する。つまり、ブレーキペダル14に加えられた操作力に依存した大きさのブレーキ力をブレーキ装置12が発生させる操作力依存制動力発生状態が実現されるのである。なお、上記室間連通切換弁72を閉弁状態と、上記低圧開放弁76を開弁状態とし、入力室R4に高圧源装置22からの作動液を導入すれば、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44は、高圧源装置22からマスタシリンダ装置16に供給される作動液の圧力と操作力との両方によって前進させられ、それら両方に依存した大きさのブレーキ力、つまり、高圧源装置22からマスタシリンダ装置16に供給される作動液の圧力に依存した大きさのブレーキ力と操作力に依存した大きさのブレーキ力とが足し合わされたブレーキ力をブレーキ装置12が発生させる操作力・高圧源圧依存制動力発生状態が実現されることになる。
【0064】
(d)高圧源装置
高圧源装置22は、リザーバ20から作動液を汲み上げて加圧するポンプ90と、そのポンプ90を駆動するモータ92と、ポンプ90によって加圧された作動液を蓄えるアキュムレータ94(図では[ACC]という符号が付されている)とを含んで構成されている。なお、高圧源装置22には、アキュムレータ94内の作動液の圧力、すなわち、供給する作動液の圧力(高圧源圧)を検出するための高圧源圧センサ96が設けられている(図では、高圧源圧の記号標記である[P
ACC]という符号が付されている)。
【0065】
(e)レギュレータ
調圧器としてのレギュレータ24は、2重構造をなして内部に空間が形成されたハウジング100と、その空間内にハウジング100の軸線方向(左右方向)において図の左方から順に並んで配置された第1ピストン102,第2ピストン104,弁座環106,弁ロッド108を含んで構成されている。第1ピストン102,第2ピストン104は、それぞれ可動体として機能し、ハウジング100の軸線方向に移動可能とされている。第2ピストン104は、凹所が形成されたピストン本体110と、その凹所に嵌め込まれたプランジャ112とによって構成されている。弁座環106は、鍔部を有するとともに両端が開口する筒状をなしており、2つのスプリング114,116によって、第2ピストン104とハウジング100とに浮動支持されている。弁ロッド108は、左端が弁子として機能し、弁座として機能する弁座環106の右端部にその弁ロッド108の左端が着座可能に配設され、スプリング118によって左方に向かって付勢されている。つまり、弁座環106,弁ロッド106,スプリング118を含んで、後に説明する弁機構120が構成されているのであり、その弁機構120は、ハウジング100の軸線方向において可動体である第2ピストン104と並んで配設されているのである。なお、第2ピストン104のプランジャ112の先端(右端)は、弁座環106内において弁ロッド108の左端に当接可能とされている。
【0066】
ハウジング100の上記空間内には、複数の液室が区画形成されている。具体的には、第1ピストン102の左側には、第1パイロット室R8が、第1ピストン102と第2ピストン104との間には、第2パイロット室R9が、第2ピストン104のプランジャ112の外周における概してピストン本体110と弁座環106の鍔部との間には、調圧されて当該レギュレータ24からマスタシリンダ装置16へ供給される作動液が収容される調圧室R10が、弁ロッド108の外周には、高圧源装置22から供給される作動液を受け入れる高圧室R11が、それぞれ形成されている。大まかに言えば、調圧室R10は、第2ピストン104の上記弁機構120の側に形成され、高圧室R11と調圧室R10とは、それらで弁機構120を挟むようにして形成されているのである。
【0067】
ハウジング100には、各種のポートが設けられており、上記複数の液室は、それらのポートを介して当該システムの各装置等と連通させられている。具体的には、高圧室R11は、高圧ポートP10を介して、高圧源装置22からの作動液が供給される。調圧室R10は、調圧ポートP11を介して、マスタシリンダ装置16の入力ポートP5と連通させられている。第2ピストン104の内部には、プランジャ112を軸線方向に貫通する液通路と、その液通路に連通するとともにピストン本体110を径方向に貫通する液通路とからなる低圧通路130が設けられており、2つの低圧ポートP12,P13の各々は、その低圧通路130を介して互いに連通している。一方の低圧ポートP12は、上記低圧開放路74に繋げられており、低圧通路130は、マスタシリンダ装置16を介して、リザーバ20に連通している。すなわち、低圧通路130は、低圧源に連通する低圧源連通路として機能しているのである。ちなみに、他方の低圧ポートP13は、リリーフ弁132を介して、上記高圧ポートP8とは別の高圧ポートP14と繋げられており、高圧室R11の圧力が高すぎる状態となった場合に、高圧室R11の圧力がリザーバ20に開放される。
【0068】
第1パイロット室R8は、第1パイロットポートP15,P16を介して、それぞれ、マスタシリンダ装置16の出力ポートP3,後輪側のブレーキ装置12RR,12RLに連通させられている。つまり、第1パイロット室R8は、マスタシリンダ装置16からブレーキ装置12RR,12RLに供給される作動液の通路の一部とされている。第2パイロット室R9は、2つの第2パイロットポートP17,P18と繋がっており、一方の第2パイロットポートP17は、上記増圧リニア弁26を介して、高圧ポートP14に、他方の第2パイロットポートP18は、上記減圧リニア弁28を介して、上記低圧開放路74に繋げられている。つまり、第2パイロット室R9は、増圧リニア弁26を介して高圧源装置22に、減圧リニア弁28を介してリザーバ20に、それぞれ繋げられており、後に詳しく説明するように、第2パイロット室R9の作動液の圧力は、それら増圧リニア弁26,減圧リニア弁28によって調整された圧力(以下、「調整圧」と言う場合がある)に調整される。
【0069】
第2ピストン104には、調圧室R10の作動液の圧力、すなわち、当該レギュレータ24から供給される作動液の圧力(いわゆる「調圧器供給圧」であり、以下、「サーボ圧」と言う場合がある)と、第2パイロット室R9の圧力である第2パイロット圧との差圧に依拠する差圧作用力が作用し、その差圧作用力によって、第2ピストン104は、ハウジング100内を軸線方向に移動させられる。実際には、スプリング114,116の弾性反力等を考慮する必要があるが、簡単に言えば、第2ピストン104は、第2パイロット圧に依拠する作用力がサーボ圧に依拠する作用力に優る場合に、図における右方に、つまり、弁機構120に向かって移動させられ、逆に、サーボ圧に依拠する作用力が第2パイロット圧に依拠する作用力に優る場合に、図における左方に、つまり、弁機構120から離れる方向に移動させられる。右方に移動させられた場合、第2ピストン104が、プランジャ112の先端において、弁機構120と係合して、弁ロッド108の先端が弁座環106から離座することで、その弁機構120により、調圧室R10と高圧室R11とが連通する。その場合、プランジャ112の先端に設けられた上記低圧通路130の開口は、弁ロッド108の先端によって塞がれており、調圧室R10と低圧通路130との連通は遮断される。逆に、左方に移動させられた場合、プランジャ112の先端における第2ピストン104の弁機構120との係合が解除されることで、調圧室R10と高圧室R11との連通が遮断される。その場合、低圧通路130の開口が弁ロッド108の先端によっては塞がれずに、調圧室R10と低圧通路130とが連通する。このようなレギュレータ24の動作により、調圧室R10内の作動液の圧力は、第2パイロット圧に応じた圧力、つまり、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28によって調整された上記調整圧に応じた圧力に調整される。なお、本システムでは、サーボ圧を検出するためのサーボ圧センサ134が設けられている(図では、サーボ圧の記号標記である[P
SRV]という符号が付されている)。
【0070】
以上のような作用から、レギュレータ24は、高圧源装置22が、サーボ圧と第2パイロット圧との両者の圧力源として機能するタイプの調圧器であり、「高圧源圧依存型調圧器」と呼ぶことができる。そして、その調圧器が配備されている本液圧ブレーキシステムは、「高圧源圧依存型調圧器配備システム」と呼ぶことができるのである。
【0071】
通常の状態では、調圧器であるレギュレータ24からマスタシリンダ装置16に導入されるサーボ圧は、上述のように、上記調整圧に応じた圧力に調整される。先の説明から解るように、通常の状態では、マスタシリンダ装置16からブレーキ装置12に供給される作動液の圧力(以下、「マスタ圧」と言う場合がある)は、サーボ圧に応じた圧力となることから、マスタ圧は調整圧に応じた圧力となる。したがって、本システムでは、通常の状態において、調整圧に依存した大きさのブレーキ力がブレーキ装置12によって発生させられることとなる。その意味において、本システムは、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28によって調整された圧力に依存した大きさのブレーキ力を発生させる「リニア弁調整型システム」と呼ぶことができるのである。ちなみに、通常の状態では、第1パイロット室R8の圧力である第1パイロット圧はマスタ圧となるが、マスタシリンダ装置16の構造に依拠するサーボ圧とマスタ圧との比、および、レギュレータ24の構造に依拠する調整圧とサーボ圧との比は、調整圧となる第2パイロット圧とマスタ圧となる第1パイロット圧との差圧に依拠して第1ピストン102に作用する差圧作用力によっては第1ピストン102がハウジング100内おいて右方に移動しないように設定されている。
【0072】
例えば、増圧リニア弁26の失陥等により、第2パイロット室R9に調整圧の作動液を供給できない場合には、第1パイロット室R8に導入されたマスタ圧と、サーボ圧との差圧によって作用する差圧作用力によって、第1ピストン102と第2ピストン104とが、それらが当接した状態のまま、つまり、それらが一体となって、ハウジング100内を軸線方向に移動する。そして、通常の状態と同様に、弁機構120による高圧室R11と調圧室R10との連通とその連通の遮断、および、低圧通路130と調圧室R10との連通とその連通の遮断が切り換えられ、マスタ圧に応じた圧力となるサーボ圧の作動液が、レギュレータ24からマスタシリンダ装置16に供給される。つまり、本システムでは、第2パイロット室R9に調整圧の作動液を供給できない状況に陥った場合であっても、高圧源装置22が正常に機能しているとき、若しくは、正常に機能していなくてもアキュムレータ94にある程度の圧力が残っているときには、上記高圧源圧依存制動力発生状態の実現、つまり、高圧源装置22からマスタシリンダ装置16に供給される作動液の圧力に依存した大きさのブレーキ力をブレーキ装置12が発生させる状態の実現が可能とされているのである。
【0073】
なお、本システムでは、レギュレータ24の第1パイロット室R8には、マスタ圧が導入されるように構成されているが、その構成に代え、例えば、反力室R6若しくはピストン間室R3の作動液の圧力が導入されるように構成することもできる。そのような構成であっても、第2パイロット室R9に調整圧の作動液を供給できない状況に陥った場合に、上記高圧源圧依存制動力発生状態の実現、詳しく言えば、ブレーキペダル14に加えられた運転者の操作力に応じた大きさのブレーキ力を高圧源装置22から供給される作動液の圧力に依存してブレーキ装置12が発生させる状態の実現が可能とされているのである。
【0074】
(f)増圧リニア弁および減圧リニア弁
増圧リニア弁26,減圧リニア弁28は、一般的な電磁式リニア弁であり、
図2に模式的に示す構造のものとされている。増圧リニア弁26は、高圧源装置22とレギュレータ24の第2パイロット室R9との間に配設された常閉型の電磁式リニア弁である。この増圧リニア弁26は、
図2(a)に示すように、先端140が弁子として機能するプランジャ142と、そのプランジャ142の先端140が着座する弁座144を有している。そして、その弁座144を挟んで、レギュレータ24の第2パイロット室R9と連通してそれの圧力である第2パイロット圧P
PLTに相当する調整圧P
AJTの作動液が収容される調整圧室R12が、プランジャの側に、高圧源装置22と連通して高圧源圧P
ACCの作動液が受け入れられる高圧室R13が、プランジャ142とは反対側に、それそれ形成されている。プランジャ142には、それら高圧源圧P
ACCと調整圧P
AJTとの差圧による差圧作用力FΔ
P・
Aが、当該プランジャ142を弁座144から離座させる方向に作用しており、その一方で、プランジャ142は、その差圧作用力FΔ
P・
Aを上回るスプリング146の付勢力、つまり、スプリング146を含んで構成される弾性付勢機構が発生させる弾性付勢力F
K・
Aによって、当該プランジャ142を弁座144に着座させる方向に付勢されている。また、プランジャ142には、電磁コイル148の励磁によって、そのコイル148に通電される励磁電流i
Aに応じた大きさの電磁作用力F
E・
Aが、差圧作用力FΔ
P・
Aと同じ方向、つまり、弾性付勢力F
K・
Aとは反対の方向に作用する。大まかに言えば、本増圧リニア弁26では、それらの力の釣り合いを考慮しつつ、任意の調整圧P
AJTが得られるような励磁電流がi
Aが決定され、コイル148に通電される。励磁電流i
Aの決定については、後に詳しく説明する。ちなみに、本増圧リニア弁26では、励磁電流i
Aが大きくなるほど、調整圧P
AJTが高くなる。言い換えれば、開弁度(例えば、閉弁状態から開弁状態への移行のし易さ)が高くなり、弾性付勢力F
K・
A,差圧作用力FΔ
P・
A,電磁作用力F
E・
Aがバランスした状態、つまり、開弁状態と閉弁状態との境目となる弁開閉均衡状態における開弁圧、すなわち、開閉均衡圧が高くなるのである。
【0075】
一方、減圧リニア弁28は、レギュレータ24の第2パイロット室R9と低圧源であるリザーバ22との間に配設された常開型の電磁式リニア弁である。この減圧リニア弁28は、
図2(b)に示すように、先端140が弁子として機能するプランジャ142と、そのプランジャ142の先端140が着座する弁座144を有し、その弁座144を挟んで、リザーバ20と連通して大気圧P
RSVとなる低圧室R14が、プランジャ142の側に、レギュレータ24の第2パイロット室R9と連通して第2パイロット圧P
PLTに相当する調整圧P
AJTの作動液が収容される調整圧室R12が、プランジャとは反対側に、それぞれ形成されている。プランジャ142には、それら調整圧P
AJTと大気圧P
RSVとの差圧による差圧作用力FΔ
P・
Rが、当該プランジャ142を弁座144から離座させる方向に作用しており、それに加え、プランジャ142は、スプリング146の付勢力、つまり、スプリング146を含んで構成される弾性付勢機構が発生させる弾性付勢力F
K・
Rによって、差圧作用力FΔ
P・
Rと同じ方向に付勢されている。その一方で、プランジャには、電磁コイル148の励磁によって、そのコイル148に通電される励磁電流i
Rに応じた大きさの電磁作用力F
E・
Rが、差圧作用力FΔ
P・
Rおよび弾性付勢力F
K・
Rとは反対方向に作用する。本減圧リニア弁28では、大まかに言えば、それらの力の釣り合いを考慮しつつ、任意の調整圧P
AJTが得られるような励磁電流がi
Rが決定され、コイル148に通電される。励磁電流i
Rの決定については、増圧リニア弁26の場合と同様に、後に詳しく説明する。ちなみに、本減圧リニア弁28では、励磁電流i
Rが大きくなるほど、調整圧P
AJTが高くなる。言い換えれば、開弁度(例えば、閉弁状態から開弁状態への移行のし易さ)が低くなり、上記弁開閉均衡状態における開弁圧、すなわち、開閉均衡圧が高くなるのである。
【0076】
以上のような増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の機能によれば、本システムでは、それら増圧リニア弁26,減圧リニア弁28を含んで、作動液を調整圧P
AJTに調整するための圧力調整弁装置が構成されていると考えることができる。そしてその圧力調整弁装置は、レギュレータ24の第2パイロット圧P
PLTを調整圧P
AJTとして調整するものとされているのである。
【0077】
(g)制御系
本システムの制御、つまり、ブレーキ制御は、ブレーキECU30によって行われる。ブレーキECU30は、大まかには、高圧源装置22(詳しくは、それが有するモータ92)の制御を行い、また、増圧リニア弁26および減圧リニア弁28制御を行う。ブレーキECU30は、中心的な要素であるコンピュータと、高圧源装置22のモータ92,増圧リニア弁26,減圧リニア弁28等をそれぞれ駆動させるための駆動回路(ドライバ)とを含んで構成されている。
【0078】
ブレーキECU30には、反力室R6若しくは対向室R5内の圧力P
RCT(以下、「反力圧P
RCT」と呼ぶことがある)、高圧源装置22からレギュレータ24に供給される作動液の圧力である高圧源圧P
ACC(いわゆる「アキュムレータ圧」である)、レギュレータ24からマスタシリンダ装置に送られる作動液の圧力である調圧器供給圧としてのサーボ圧P
SRVを、制御に必要な情報として取得するため、反力圧センサ86,高圧源圧センサ96,サーボ圧センサ134が接続されている。ちなみに、レギュレータ24から供給される作動液の圧力である調圧器供給圧としてのサーボ圧P
SRVは、ブレーキ装置12が発生させるブレーキ力を指標するブレーキ力指標の一種であるため、サーボ圧センサ134は、ブレーキ力指標検出器として機能する。また、本システムには、ブレーキ操作量δ
PDL,ブレーキ操作力F
PDLを、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル14の操作情報として取得するために、ブレーキ操作量センサ150,ブレーキ操作力センサ152が設けられており(図では、それぞれ、ブレーキ操作量,ブレーキ操作力の記号標記である[δ
PDL],[F
PDL]という符号が付されている)、それらのセンサ150,152も、ブレーキECU30に接続されている。本システムにおける制御は、それらセンサの検出値に基づいて行われる。
【0079】
≪液圧ブレーキシステムにおける制御,処理≫
以下に、本システムにおけるブレーキ制御について、その制御を行うためのプログラムを説明しつつ、そのプログラムの流れにそって説明する。そのプログラムに沿った制御では、高圧源装置22の制御、すなわち、高圧源圧P
ACCの制御である高圧源制御と、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の各々に供給される励磁電流I
A,I
Rを制御することで、ブレーキ装置12が発生させるブレーキ力を制御するブレーキ力制御とを行うが、このブレーキ力制御に関し、通常時には、フィードバック制御が行われ、サーボ圧センサ134が失陥した場合には、フィードフォワード制御が行われる。このことを念頭に置きつつ、本ブレーキ制御の理解を容易にするため、ブレーキ制御のメインフロー,高圧源制御,通常時のブレーキ力制御,フィードフォワード制御の内容、サーボ圧センサ失陥時のブレーキ力制御を順に説明し、その後に、本ブレーキ制御に関するブレーキECU30、つまり、制御装置の機能構成について説明する。
【0080】
(a)ブレーキ制御のメインフロー
ブレーキ制御は、ブレーキ装置12が適切なブレーキ力を発生させるために行われる制御であり、ブレーキECU30が、
図3にフローチャートを示すブレーキ制御プログラムを、短い時間ピッチ(例えば、数msec〜数十msec)で繰り返し実行することによって、行われる。
【0081】
このプログラムに従う制御処理では、まず、ステップ1(以下、「S1」と言う場合があり、他のステップも同様である)において、高圧源圧センサ96の検出により、高圧源圧P
ACCが取得される。次いで、S2において、後に詳しく説明する高圧源装置22の制御、つまり、高圧源制御が行われる。この高圧源制御は、高圧源装置22から供給される作動液の圧力である高圧源圧P
ACCの制御である。
【0082】
高圧源制御に続くS3において、ブレーキ操作の程度が、ブレーキ操作量センサ150,ブレーキ操作力センサ152のそれぞれの検出によって取得されたブレーキ操作量δ
PDL,ブレーキ操作力F
PDLに基づいて、公知の手法に従って認定される。次に、S4において、認定されたブレーキ操作の程度に基づいて、目標ブレーキ力G
*が決定される。目標ブレーキ力G
*は、本液圧ブレーキシステムに要求されているブレーキ力、すなわち、4つのブレーキ装置12が発生させるべきブレーキ力であり、具体的には、認定されたブレーキ操作の程度に基づいて、車両全体に必要とされるブレーキ力である対車両全体必要ブレーキ力が算出され、その対車両全体必要ブレーキ力から、現時点で発生させられる回生ブレーキ力を減じることによって、上記目標ブレーキ力G
*が決定される。次いで、S5において、決定された目標ブレーキ力G
*に基づいて、目標ブレーキ力指標、つまり、制御におけるブレーキ力指標の目標として、サーボ圧P
SRVの制御における目標である目標サーボ圧P
*SRVが決定される。具体的には、各ブレーキ装置12が有するホイールシリンダのピストンの受圧面積,マスタシリンダ装置16の入力室R4に対する第1加圧ピストン42の受圧面積,第1加圧室R1および第2加圧室R2に対する第1加圧ピストン42および第2加圧ピストン44の各々の受圧面積の比に基づいて、目標ブレーキ力G
*から、目標サーボ圧P
*SRVが算出されるのである。
【0083】
目標サーボ圧P
*SRVが決定された後、S6において、サーボ圧センサ96が失陥しているか否かが判断される。サーボ圧センサが失陥していないと判断された場合は、S7において、通常時ブレーキ力制御が、サーボ圧センサが失陥している判断された場合は、S8において、サーボ圧センサ失陥時ブレーキ力制御が、それぞれ行われる。
【0084】
(b)高圧源制御
S2の高圧源制御は、高圧源圧P
ACCを調整するための制御であり、
図4にフローチャートを示す高圧源制御ルーチンの実行によって行われる。このルーチンに従う処理では、まず、S11において、高圧源圧P
ACCが、設定上限圧P
ACC-Uを超えているか否かが判断される。高圧源圧P
ACCが設定上限圧P
ACC-Uを超えていると判断された場合には、S12において、ポンプ90の駆動を停止する旨の指令が発せられる。具体的には、モータ92の作動を停止する旨の信号が、駆動回路に送られる。それに対して、高圧源圧P
ACCが設定上限圧P
ACC・
Uを超えていないと判断された場合には、S13において、高圧源圧P
ACCが、設定下限圧P
ACC-Lを下回っているか否かが判断される。高圧源圧P
ACCが、設定下限圧P
ACC-Lを下回っていると判断された場合には、S14において、ポンプ90を駆動する旨の指令が発せられる。具体的には、モータ92を作動させる旨の信号がモータドライバに送られる。それに対して、高圧源圧P
ACCが、設定下限圧P
ACC-Lを下回っていないと判断された場合、すなわち、高圧源圧P
ACCが設定下限圧P
ACC-L以上かつ設定上限圧P
ACC-U以下である場合には、S15において、ポンプ90の現在の状態を維持する旨の指令が、つまり、ポンプ90が駆動させられている場合にはその駆動を継続する指令が、ポンプ90の停止させられている場合にはその停止を維持する旨の指令が発せられる。具体的には、モータ92が作動している場合には、作動させる旨の信号が、モータ90の作動が停止している場合には、停止する旨の信号が、駆動回路に送られる。このような通常高圧源制御が行われることにより、高圧源圧P
ACCは、通常、設定上限圧P
ACC-Uと設定下限圧P
ACC-Lとで画定される設定圧力範囲に維持されることになる。
【0085】
(c)通常時ブレーキ力制御
S7の通常時ブレーキ力制御は、
図5にフローチャートを示す通常時ブレーキ力制御ルーチンが実行されることによって行われる。このルーチンに従う処理では、まず、S21において、サーボ圧センサ134の検出によって実際のブレーキ力指標としての実際のサーボ圧P
SRVが取得され、続くS22において、既に決定されている目標サーボ圧P
*SRVから、取得されたサーボ圧P
SRVを減じることにより、サーボ圧偏差ΔP
SRV(=P
*SRV−P
SRV)が算出される。そして、S23において、取得されているサーボ圧P
SRVと、レギュレータ24の構造によって定まる増圧比(パイロット圧に対するサーボ圧の比)とに基づいて、第2パイロット室R9の作動液の圧力である第2パイロット圧P
PLT2が認定される。それらの決定,算出,認定の後、S24,S25において、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の各々への励磁電流I
A,I
Rの供給によってそれらの各々を制御する増圧弁フィードバック制御,減圧弁フィードバック制御が実行される。ちなみに、それら増圧弁フィードバック制御,減圧弁フィードバック制御によって、フィードバック制御が構成されている。
【0086】
c-1)増圧弁フィードバック制御
S24の増圧弁フィードバック制御は、簡単に言えば、励磁電流I
Aを、フィードフォワード制御の手法に基づいて決定される電流成分であるフィードフォワード成分I
A-FFに、フィードバック制御の手法に基づいて決定される電流成分であるフィードバック成分I
A-FBを加えることによって決定して、その決定された励磁電流I
Aを、増圧リニア弁26に供給するための制御である。この増圧弁フィードバック制御は、
図6にフローチャートを示す増圧弁フィードバック制御サブルーチンが実行されることによって行われる。
【0087】
増圧弁フィードバック制御サブルーチンに従う処理では、まず、S31において、増圧リニア弁26の構造に依拠して定まる上記弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVと励磁電流I
Aとの相互関係に従ってフィードフォワード成分I
A-FFが決定される。つまり、フィードフォワード成分I
A-FFは、増圧リニア弁26を開弁状態と閉弁状態との境目である上記弁開閉均衡状態とするための成分と考えることができる。サーボ圧P
SRVと第2パイロット圧P
PLT2(上記調整圧P
AJTに相当する)とは、上述の増圧比に従った関係にあるため、実際には、第2パイロット圧P
PLT2と高圧源圧P
ACCと励磁電流I
Aとの相互関係に従って決定される。
図2(a)を参照すれば解るように、具体的には、弁開閉均衡状態における差圧作用力FΔ
P-A,弾性付勢力F
K-A,電磁作用力F
E-Aの釣り合いは以下のような式で表わされる。
F
E-A=F
K-A−FΔ
P-A
ちなみに、弁開閉均衡状態における励磁電流をI
A-FFとすれば、
F
E-A=α
A・I
A-FF
FΔ
P-A=β
A・(P
ACC−P
PLT2) α
A,β
A:係数
であるから、上記式は、
I
A-FF={F
K-A−β
A・(P
ACC−P
PLT2)}/α
A
となる(F
K-Aは定数と考えることができる)。S31では、この式に従う励磁電流I
A-FFを、フィードフォワード成分I
A-FFとして決定する。ちなみに、増圧弁フィードバック制御でのフィードフォワード成分I
A-FFの決定においては、高圧源圧P
ACCは、高圧源圧センサ96の検出によって既に取得されている実際の圧力が、第2パイロット圧P
PLT2は、サーボ圧センサ134の検出により取得されている実際のサーボ圧P
SRVに依拠して認定された圧力がそれぞれ用いられる。また、弾性付勢力F
K-Aは、車両製造時において、増圧リニア弁26個々について、実測に基づき予め設定されており、したがって、上記相互関係は、予め設定された関係となる。
【0088】
続くS32において、サーボ圧偏差ΔP
SRVに基づいて、フィードバック成分I
A-FBが決定される。このフィードバック電流成分I
A-FBは、サーボ圧P
SRVを目標サーボ圧P
*SRVに近づけるための電流成分、すなわち、サーボ圧偏差ΔP
SRVをなくすための成分と考えることができる。具体的には、次式に従って、フィードバック成分I
A-FBが決定される。
I
A-FB=γ
A・ΔP
SRV=γ
A・(P
*SRV−P
SRV) γ
A:制御ゲイン
ちなみに、増圧弁フィードバック制御でのフィードバック成分I
A-FBの決定においては、サーボ圧センサ134の検出により取得されている実際のサーボ圧P
SRVに依拠して算出されたサーボ圧偏差ΔP
SRVが用いられる。
【0089】
次のS33において、実際に供給される励磁電流I
Aの基礎となる基礎励磁電流I
A0が、次式に基づいて決定される。
I
A0=I
A-FF+I
A-FB
そして、S34,S35において、目標サーボ圧P
*SRVの変化に基づいて、ブレーキ力が増加する過程であるブレーキ力増加過程,ブレーキ力が減少する過程であるブレーキ力減少過程あるいはブレーキ力が維持される過程であるブレーキ力維持過程(目標ブレーキ力が変化しない過程を意味する)のいずれにあるかが判断される。ブレーキ力増圧過程若しくはブレーキ力維持過程にあると判断された場合には、S36において、供給する励磁電流I
Aが、上記基礎励磁電流I
A0に決定される。一方、ブレーキ力減少過程にあると判断された場合には、S37において、増圧リニア弁26の電力消費に鑑み、励磁電流I
Aが、基礎励磁電流I
A0ではなく、0に決定される。そして、S38において、決定された励磁電流I
Aについての指令が発せられる。具体的には、駆動回路に励磁電流I
Aに関する信号が送られる。ちなみに、ブレーキ力増加過程,ブレーキ力維持過程,ブレーキ力減少過程のことを、フローチャートにおいては、サーボ圧P
SRVの変化に依拠して、それぞれ、増圧中,維持中,減圧中と表わしている。
【0090】
なお、上記増圧弁フィードバック制御では、ブレーキ力増加過程とブレーキ力維持過程とにおいて、基礎励磁電流I
A0が増圧リニア弁26に供給されている。そのことに鑑みて厳密に言えば、ブレーキ力増加過程,ブレーキ力維持過程のみ、フィードバック制御が行われていると考えることができる。
【0091】
c-2)減圧弁フィードバック制御
S25の減圧弁フィードバック制御は、簡単に言えば、増圧リニア弁26と同様に、励磁電流I
Rを、フィードフォワード成分I
R-FFにフィードバック成分I
R-FBを加えることによって決定して、減圧リニア弁28に供給するための制御である。この減圧弁フィードバック制御は、
図7にフローチャートを示す減圧弁フィードバック制御サブルーチンが実行されることによって行われる。
【0092】
減圧弁フィードバック制御サブルーチンに従う処理では、増圧リニア弁26に対する処理と同様、まず、S41において、減圧リニア弁28の構造に依拠して定まる上記弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVと励磁電流I
Rとの相互関係に従ってフィードフォワード成分I
R-FFが決定される。つまり、フィードフォワード成分I
R-FFは、減圧リニア弁28を開弁状態と閉弁状態との境目である上記弁開閉均衡状態とするための成分と考えることができる。サーボ圧P
SRVと第2パイロット圧P
PLT2とは上述の増圧比に従った関係にあるため、実際には、第2パイロット圧P
PLT2と大気圧P
RSVと励磁電流I
Rとの相互関係に従って決定される。
図2(b)を参照すれば解るように、具体的には、弁開閉均衡状態における差圧作用力FΔ
P-R,弾性付勢力F
K-R,電磁作用力F
E-Rの釣り合いは以下のような式で表わされる。
F
E-R=F
K-R+FΔ
P-R
ちなみに、弁開閉均衡状態における励磁電流をI
R-FFとすれば、
F
E-R=α
R・I
R-FF
FΔ
P-R=β
R・(P
PLT2−P
RSV) α
R,β
R:係数
であるから、上記式は、
I
R-FF={F
K-R+β
R・(P
PLT2−P
RSV)}/α
R
となる(F
K-Rは定数と考えることができる)。S41では、この式に従う励磁電流I
R-FFを、フィードフォワード成分I
R-FFとして決定する。ちなみに、減圧弁フィードバック制御でのフィードフォワード成分I
R-FFの決定においては、大気圧P
RSVは、概ね1気圧が、第2パイロット圧P
PLT2は、サーボ圧センサ134の検出により取得されている実際のサーボ圧P
SRVに依拠して認定された圧力がそれぞれ用いられる。また、弾性付勢力F
K-Rは、車両製造時において、減圧リニア弁28個々について、実測に基づき予め設定されており、したがって、上記相互関係は、予め設定された関係となる。
【0093】
続くS42において、サーボ圧偏差ΔP
SRVに基づいて、フィードバック成分I
R-FBが決定される。このフィードバック成分I
R-FBは、サーボ圧P
SRVを目標サーボ圧P
*SRVに近づけるための電流成分、すなわち、サーボ圧偏差ΔP
SRVをなくすための成分と考えることができる。具体的には、次式に従って、フィードバック成分I
R-FBが決定される。
I
R-FB=γ
R・ΔP
SRV=γ
R・(P
*SRV−P
SRV) γ
R:制御ゲイン
ちなみに、減圧弁フィードバック制御でのフィードバック成分I
R-FBの決定においては、サーボ圧センサ134の検出により取得されている実際のサーボ圧P
SRVに依拠して算出されたサーボ圧偏差ΔP
SRVが用いられる。
【0094】
次のS43において、実際に供給される励磁電流I
Rの基礎となる基礎励磁電流I
R0が、次式に基づいて決定される。
I
R0=I
R-FF+I
R-FB
ちなみに、減圧リニア弁28の場合、このフィードバック電流成分I
R-FBは、ブレーキ力減少過程においては実際のサーボ圧P
SRVが目標サーボ圧P
*SRVよりも高く、サーボ圧偏差ΔP
SRVが負になることで負の値となるため、結果的には、フィードフォワード成分I
Rー
FFを減じる成分となる。そして、S44,S45において、目標サーボ圧P
*SRVの変化に基づいて、ブレーキ力増加過程,ブレーキ力減少過程あるいはブレーキ力維持過程のいずれにあるかが判断される。ブレーキ力減少過程若しくはブレーキ力維持過程にあると判断された場合には、S46において、供給する励磁電流I
Rが、上記基礎励磁電流I
R0に決定される。一方、ブレーキ力増加過程にあると判断された場合には、S47において、減圧リニア弁28を充分な閉弁状態とすべく、励磁電流I
Rが、基礎励磁電流I
R0にマージン電流I
MAGを足し合わせた電流として決定される。そして、S48において、決定された励磁電流I
Rについての指令が発せられる。具体的には、駆動回路に励磁電流I
Rに関する信号が送られる。
【0095】
なお、上記減圧弁フィードバック制御では、ブレーキ力減少過程とブレーキ力維持過程とにおいて、基礎励磁電流I
R0が増圧リニア弁26に供給されている。そのことに鑑みて厳密に言えば、ブレーキ力減少過程,ブレーキ力維持過程のみ、フィードバック制御が行われていると考えることができる。
【0096】
(d)フィードフォワード制御の内容
本システムでは、サーボ圧センサ134の失陥時には、S7の通常時ブレーキ力に代えて、S8のサーボ圧センサ失陥時ブレーキ力制御が行われる。この制御では、先に説明したフィードバック制御に代えて、フィードフォワード制御が実行される。以下に、そのフィードバック制御について詳しく説明する。
【0097】
d-1)フィードフォワード制御の概要
先に説明したフィードバック制御では、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28に供給する励磁電流I
A,I
Rを決定するにあたって、ブレーキ力指標としてサーボ圧P
SRVを採用し、そのサーボ圧P
SRVの目標サーボ圧P
*SRVに対する偏差であるサーボ圧偏差ΔP
SRVに基づくフィードバック成分I
A-FB,I
R-FBを決定している。ところが、サーボ圧センサ134の失陥時には、実際のサーボ圧P
SRVは取得することができないため、フィードバック成分I
A-FB,I
R-FBを決定することができない。そこで、フィードフォワード制御では、簡単に言えば、それらフィードバック成分I
A-FB,I
R-FBを含まない励磁電流I
A,I
R、言い換えれば、上述のフィードフォワード成分I
A-FF,I
R--FFからなる励磁電流I
A,I
Rを、目標サーボ圧P
*SRVに基づいて決定し、その決定した励磁電流I
A,I
Rを供給するようにしている。つまり、端的に言えば、フィードフォワード制御は、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の各々を弁開閉均衡状態に保ちつつ、サーボ圧P
SRVを目標サーボ圧P
*SRVに維持する制御と考えることができるのである。
【0098】
d-2)ブレーキ力の担保
先に説明したように、弁開閉均衡状態は、電磁作用力F
E-A,F
E-R,差圧作用力FΔ
P-A,FΔ
P-R,弾性付勢力F
K-A,F
K-Rのバランスによって決まる状態である。例えば、経時的若しくは経年的な増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の特性変化等によって、弁開閉均衡状態における励磁電流I
A,I
Rとサーボ圧P
SRVとの相互関係も変化し、上記フィードバック制御におけるフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFを決定するための式に従って、励磁電流I
A,I
Rを決定しても、目標とするブレーキ力が得られない可能性がある。特に、弾性付勢力F
K-A,F
K-Rの変化による影響が大きく、弾性付勢力F
K-A,F
K-Rが大きくなった場合には、フィードフォワード制御において、予め設定されている上記式に従って決定した励磁電流I
A,I
Rを増圧リニア弁26,減圧リニア弁28に供給したとしても、ブレーキ力が不足してしまうことになる。本システムでは、そのことに鑑み、フィードフォワード制御では、予め設定されている弁開閉状態における相互関係に従ってフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFを決定し、その決定されたフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFに、某かの補正を加え、あたかも、変化した弾性付勢力F
K-A,F
K-Rに基づいてフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFを決定したのと同等の励磁電流I
A,I
Rが供給されるような処理が行われる。
【0099】
詳しく説明すれば、増圧リニア弁26の弁開閉均衡状態におけるフィードフォワード成分I
A-FFと第2パイロット圧P
PLT2との関係は、上記式を変形すると、
P
PLT2=(α
A/β
A)・I
A-FF−F
K-A/β
A+P
ACC
となり、サーボ圧P
SRVと第2パイロット圧P
PLT2とは、
P
SRV/P
PLT2=ε ε:レギュレータ24の増圧比
という関係にあることから、増圧リニア弁26の弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVとフィードフォワード成分I
A-FFとの相互関係は、以下の式で表わすことができる。
P
SRV=ε・{(α
A/β
A)・I
A-FF−F
K-A/β
A+P
ACC}
同様に、減圧リニア弁28のフィードフォワード成分I
R-FFと第2パイロット圧P
PLT2との関係は、上記式を変形すると、
P
PLT2=(α
R/β
R)・I
R-FF−F
K-R/β
R+P
RSV
となり、上記サーボ圧P
SRVと第2パイロット圧P
PLT2との関係を考慮すれば、減圧リニア弁26の弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVとフィードフォワード成分I
R-FFとの相互関係は、以下の式で表わすことができる。
P
SRV=ε・{(α
R/β
R)・I
R-FF−F
K-R/β
R+P
RSV}
高圧源圧P
ACC,大気圧P
RSVはある範囲に収まるため、それらを一定であるとみなせば、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVとフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFとの関係は、簡単に、次式で表わすことができる。
P
SRV=a
A・I
A-FF+b
A a
A,b
A:係数
P
SRV=a
R・I
R-FF+b
R a
R,b
R:係数
【0100】
弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVとフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFとの関係を示す上記2つの式を、励磁電流−フィード
フォワード成分特性線として、グラフに表せば
図8(a)のようになる。この図から解るように、弁開閉均衡状態において、フィードフォワード成分I
A-FF,
IR-FFが大きくなるにつれて、サーボ圧P
SRV、つまり、開閉均衡圧は高くなる。そして、上記b
A,b
Rの値が小さくなるにつれて、つまり、弾性付勢力F
K-A,F
K-Rが大きくなるにつれて、特性線は、下側にシフトする。すなわち、ブレーキ力が小さくなる側にシフトするのである。
【0101】
上記のような特性変化を考慮し、本システムにおけるフィードフォワード制御では、車両製造時点において予め設定されている値を有する弾性付勢力F
K-A,F
K-Rに基づく特性線(
図8(a)におけるSL
0)に従うのではなく、その特性線をブレーキ力が小さくなる側にシフトさせた特性線(
図8(a)におけるSL’)従って、フィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFを決定するようにしている。概念的に言えば、予め設定されている弾性付勢力F
K-A,F
K-Rに代えて、それらよりも大きな弾性付勢力F’
K-A,F’
K-R(以下、「補正弾性付勢力F’
K-A,F’
K-Rを採用してフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFを決定するのと同等の処理を行っているのである。具体的には、励磁電流I
A,I
Rをシフトさせる一定の電流量(以下、「シフト量」と言う場合がある)ΔI
A,ΔI
Rを、次式、
ΔI
A=(F’
K-A−F
K-A)/α
A
ΔI
R=(F’
K-R−F
K-R)/α
R
に従って決定し、その決定したシフト量ΔI
A,ΔI
Rを、予め設定されている弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVと励磁電流I
A,I
Rとの相互関係に従って決定された励磁電流I
A,I
R(厳密に言えば、上記基礎励磁電流I
A0,I
R0である)に加えることで、励磁電流I
A,I
Rが決定される。このようにして励磁電流I
A,I
Rを決定することにより、
図8(a)に示すようように、同じサーボ圧P
SRVにすべく増圧リニア弁26,減圧リニア弁28に供給される励磁電流I
A,I
Rは、予め設定されている相互関係に従って決定される励磁電流I
A,I
Rより、シフト量ΔI
A,ΔI
Rだけ大きい値に決定されるのである。つまり、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28ともに、励磁電流I
A,I
Rが大きくなるにつれて、開閉均衡圧が高くなることから、励磁電流I
A,I
Rは、ブレーキ力が大きくなる側にシフト量ΔI
A,ΔI
Rだけシフトさせた値に決定されることになり、フィードフォワード制御においても、ブレーキ力不足とならないようにブレーキ力が担保されることになるのである。
【0102】
d-3)フィードフォワード成分のシフト量
上記のようにフィードフォワード制御において、励磁電流I
A,I
Rをシフトさせるのであるが、そのシフト量ΔI
A,ΔI
Rについては、設定に従って3種類の中から選択可能とされている。詳しく言えば、設定されている若しくは設定される3種類の弾性付勢力F
K-A,F
K-Rのいずれかを採用してフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFを決定する場合の励磁電流I
A,I
Rを実現させるべく、シフト量ΔI
A,ΔI
Rが決定される。
【0103】
上述したように、弾性付勢力F
K-A,F
K-Rは、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28個々に固有の値となり、その値は、車両製造時点で実測に基づいて設定されている。しかしながら、その値は、規格最大値F
K-A-MAX,F
K-R-MAX,規格最小値F
K-A-MIN,F
K-R-MINで画定されるある規格幅の中に収まるものとなっている。ちなみに、規格最大値F
K-A-MAX,F
K-R-MAXは、ブレーキ力が小さくなる側の限度であり、規格最小値F
K-A-MIN,F
K-R-MINブレーキ力が大きくなる側の限度である。それら規格最大値F
K-A-MAX,F
K-R-MAX,規格最小値F
K-A-MIN,F
K-R-MINとなる場合の特性線を、
図8(b)に示す。図から解るように、規格最大値F
K-A-MAX,F
K-R-MAXとなる場合の特性線SL
MINは(以下、「最小ブレーキ力特性線SL
MIN」と言う場合がある)、弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVとフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFとの関係において、ブレーキ力が小さい側の限度となり、規格最小値F
K-A-MIN,F
K-R-MINとなる場合の特性線SL
MAX以下、「最大ブレーキ力特性線SL
MAX」と言う場合がある)は、弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVとフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFとの関係において、ブレーキ力が大きい側の限度となる。すなわち、弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVとフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFとの関係も、予め設定された規格幅とされるのである。
【0104】
上記3種類のシフト量ΔI
A,ΔI
Rのうちの1つは、上記最小ブレーキ力特性線SL
MINに従ってフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFが決定された場合の励磁電流I
A,I
Rを実現させるためのシフト量ΔI
A,ΔI
Rであり、そのシフト量ΔI
A,ΔI
Rは、補正弾性付勢力F’
K-A,F’
K-Rとして規格最大値F
K-A-MAX,F
K-R-MAXを採用して、次式に従って決定される。
ΔI
A=(F
K-A-MAX−F
K-A)/α
A
ΔI
R=(F
K-R-MAX−F
K-R)/α
R
励磁電流I
A,I
Rは、このように決定されたシフト量ΔI
A,ΔI
Rだけシフトさせられ、その励磁電流I
A,I
Rが増圧リニア弁26,減圧リニア弁28に供給されるフィードフォワード制御では、充分なブレーキ力が担保されることになる。
【0105】
上記3種類のシフト量ΔI
A,ΔI
Rのうちのもう1つは、
図8(b)に示す小ブレーキ力寄り特性線SL
SMLに従ってフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFが決定された場合の励磁電流I
A,I
Rを実現させるためのシフト量ΔI
A,ΔI
Rである。この小ブレーキ力寄り特性線SL
SMLは、上記最小ブレーキ力特性線SL
MINと上記最大ブレーキ力特性線SL
MAXとのちょうど中間の中間ブレーキ力特性線SL
MIDよりも、最小ブレーキ力特性線SL
MIN側に偏った特性線である。そのシフト量ΔI
A,ΔI
Rは、補正弾性付勢力F’
K-A,F’
K-Rとして特定大側値F
K-A-LRG,F
K-R-LRGを採用して、シフト量ΔI
A,ΔI
R決定される。ちなみに、特定大側値F
K-A-LRG,F
K-R-LRGは、規格最大値F
K-A-MAX,F
K-R-MAXと規格最小値F
K-A-MIN,F
K-R-MINとのちょうど中間となる規格中間値F
K-A-MID,F
K-R-MIDと、規格最大値F
K-A-MAX,F
K-R-MAXとの間の値とされている。具体的には、シフト量ΔI
A,ΔI
Rは、次式に従って決定される。
ΔI
A=(F
K-A-LRG−F
K-A)/α
A
ΔI
R=(F
K-R-LRG−F
K-R)/α
R
励磁電流I
A,I
Rは、このように決定されたシフト量ΔI
A,ΔI
Rだけシフトさせられ、そのシフトさせられた励磁電流I
A,I
Rが増圧リニア弁26,減圧リニア弁28に供給されるフィードフォワード制御では、ある程度ブレーキ力が担保されることになる。なお、特定大側値F
K-A-LRG,F
K-R-LRGが予め設定されている弾性付勢力F
K-A,F
K-Rよりも小さい場合には、シフト量ΔI
A,ΔI
Rは、0とされる。
【0106】
上記3種類のシフト量ΔI
A,ΔI
Rのうちの残る1つは、通常時ブレーキ力制御、つまり、フィードバック制御において、学習によって取得された弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVとフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFとの関係に従ってフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFが決定された場合の励磁電流I
A,I
Rを実現させるためのシフト量ΔI
A,ΔI
Rである。そのシフト量ΔI
A,ΔI
Rの決定に際し、学習によって取得された弾性付勢力F
K-A,F
K-Rの値を補正弾性付勢力F’
K-A,F’
K-Rとして採用する。弾性付勢力F
K-A,F
K-Rの学習、つまり、弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVとフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFとの相互関係の学習については、以下に詳しく説明する。
【0107】
d-4)弁開閉均衡状態におけるサーボ圧とフィードフォワード成分との相互関係の学習
フィードバック制御の最中に行われる学習、つまり、弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVとフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFとの相互関係の学習は、フィードフォワード制御におけるブレーキ力不足を回避するために行われる。そのため、弁開閉均衡状態における相互関係の、予め設定されている関係からの、ブレーキ力が小さくなる側、つまり、サーボ圧P
SRVが低くなる側へのズレを認知することによって行われる。言い換えれば、弾性付勢力F
K-A,F
K-Rが予め設定された値よりどの程度大きくなっているかを認知することによって行われる。
【0108】
増圧リニア弁26についての学習は、ブレーキ力増加過程が開始されたときに行われる。上述したフィードバック制御における基礎励磁電流I
A0の算出式は、
I
A0=I
R-FF+I
R・
FB
={F
K-A−β
A・(P
ACC−P
PLT2)}/α
A+γ
A・(P
*SRV−P
SRV)
のように表すことができる。この算出式および
図9(a)を参照して説明すれば、ブレーキ力増加過程が開始された時点では、第2パイロット圧P
PLT2は、大気圧P
RSVとなっており、あるフィードフォワード成分I
A-FFが決定される。その一方で、その時点では、目標サーボ圧P
*SRVは、実際のサーボ圧P
SRVと等しい。弁開閉均衡状態における相互関係が、予め設定されている関係からズレていない場合、つまり、実際の弾性付勢力F
K-Aが予め設定されている値である場合には、
図9(a)において破線で示すように、この時点から目標サーボ圧P
*SRVが上昇すれば、直ちに、実際のサーボ圧P
SRVも上昇する。それに伴って、その時点から、直ちに、フィードフォワード成分I
A-FFも増加し、フィードバック成分I
A-FBは、比較的小さい値だけ増加する。しかしながら、弾性付勢力F
K-Aが予め設定されている値よりも大きい場合には、
図9(a)において実線で示すように、ある程度目標サーボ圧P
*SRVが上昇するまでは、実際のサーボ圧P
SRVが上昇しない。つまり、フィードバック成分I
A-FBは、比較的急な勾配で増加し、ある程度増加したときに、フィードフォワード成分I
A-FFも増加し始めることになる。この実際のサーボ圧P
SRVの上昇を開始する時点におけるフィードバック成分I
A-FBの値が、弾性付勢力F
K-Aが予め設定されている値よりも大きいことによるフィードフォワード成分I
A-FFの不足分、つまり、その実際のサーボ圧P
SRVにおける不足電流ΔI
ASである。この不足電流ΔI
ASに基づいて、実際の弾性付勢力F
K-Aが算出される。このような学習は、ブレーキ力増加過程が開始されるごとに行われ、本システムでは、学習によって得られた実際の弾性付勢力F
K-Aのうち、最も大きな値のもの、つまり、弁開閉均衡状態における上記相互関係が最もズレた場合の値のものが、学習値F
K-A-STとして記憶される。この学習値F
K-A-STを採用することで、増圧リニア弁26に供給される励磁電流I
Aは、下記式で表わされるシフト量ΔI
A
ΔI
A=(F
K-A-ST−F
K-A)/α
A
だけ、上記設定された相互関係に従った励磁電流I
Aより大きくされるのである。
【0109】
減圧リニア弁28についての学習は、ブレーキ力維持過程において行われる。上述したフィードバック制御における基礎励磁電流I
R0の算出式は、
I
R0=I
R-FF+I
R-FB
={F
K-R+β
R・(P
PLT2−P
RSV)}/α
R+γ
R・(P
*SRV−P
SRV)
のように表わすことができる。この算出式および
図9(b)を参照して説明すれば、ブレーキ力維持過程においては、弾性付勢力F
K-Rが予め設定されている値であるときには、
図9(b)において破線で示すように、実際のサーボ圧P
SRVは目標サーボ圧P
*SRVと等しくなり、基礎励磁電流I
R0にはフィードフォワード成分I
R-FFしか含まれなくなる。しかしながら、弾性付勢力F
K-Rが予め設定されている値より大きい場合には、
図9(b)において実線で示すように、フィードフォワード成分I
R-FFだけでは、実際のサーボ圧P
SRVを目標サーボ圧P
*SRVに維持することができず、実際のサーボ圧P
SRVは目標サーボ圧P
*SRVには達しない。その結果、ブレーキ力維持過程であるにも関わらず、基礎励磁電流I
R0にはフィードバック成分I
R-FBが含まれることになる。このときのフィードバック成分I
R-FBの値が、弾性付勢力F
K-Rが予め設定されている値よりも大きいことによるフィードフォワード成分I
R-FFの不足分、つまり、その実際のサーボ圧P
SRVにおける不足電流ΔI
RSである。この不足電流ΔI
RSに基づいて、実際の弾性付勢力
FK-Rが算出される。このような学習は、ブレーキ力維持過程が到来するごとに行われ、本システムでは、学習によって得られた実際の弾性付勢力F
K-Rのうち、最も大きな値のものが、つまり、弁開閉均衡状態における上記相互関係が最もズレた場合の値のものが、学習値F
K-R-STとして記憶される。この学習値F
K-R-STを採用することで、減圧リニア弁28に供給される励磁電流I
Rは、下記式で表わされるシフト量
ΔIR
ΔI
R=(
FK-R-ST−F
K-R)/α
R
だけ、上記設定された相互関係に従った励磁電流I
Rより大きくされるのである。
【0110】
上記のようにして決定されたシフト量ΔI
A,ΔI
Rだけシフトさせられた励磁電流I
A,I
Rが増圧リニア弁26,減圧リニア弁28に供給されるフィードフォワード制御では、そのシフト量ΔI
A,ΔI
Rが学習に基づくものである故、比較的適正なブレーキ力が担保されることになる。言い換えれば、比較的精度よくブレーキ力を制御することが可能である。なお、実際の弾性付勢力F
K-A,F
K-Rについての上記学習値F
K-A-ST,F
K-R-STが、予め設定されている弾性付勢力F
K-A,F
K-R以下である場合には、シフト量ΔI
A,ΔI
Rは、0とされる。上記学習は、所定の学習プログラムが、本ブレーキ制御プログラムと並行して実行されることによって行われるが、本システムの説明では、そのプログラムについてのフローチャートの説明を省略する。
【0111】
d-5)ブレーキ力が大きくなり過ぎた場合の処置
先に説明したように、フィードフォワード制御では、ブレーキ力の不足とならないように、励磁電流I
A,I
Rが、設定された弁開閉状態における相互関係によって決定されたフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFにからなる励磁電流I
A,I
Rよりも、上記シフト量ΔI
A,ΔI
Rだけ大きくされる。大きくされた励磁電流I
A,I
Rを供給した場合、実際のサーボ圧P
SRVが高くなり過ぎ、ブレーキ力が大きくなり過ぎることも予測される。そのため、本システムでは、フィードフォワード制御において、ブレーキ力が設定程度を超えて大きくなっているか否かを判断し、大きくなり過ぎている場合に、ブレーキ力を小さくするような処置を講じるようにされている。
【0112】
フィードフォワード制御は、サーボ圧センサ134が失陥しているときに行われる制御であるから、フィードフォワード制御が行われているときには、実際のサーボ圧P
SRVは検出できない。そこで、ブレーキ力が設定程度を超えて大きくなっているか否かの判断は、高圧源センサ96の検出による高圧源圧P
ACCの変化、詳しくは、高圧源圧P
ACCの低下に基づいて行われる。増圧リニア弁26についての判断は、ブレーキ力増加過程においてフィードバック制御からフィードフォワード制御へ切り換ったとき、および、フィードフォワード制御におけるブレーキ力増加過程の開始時に行われる。一方、減圧リニア弁28についての判断は、フィードフォワード制御が行われている場合において、ブレーキ力維持過程からブレーキ力減少過程に移行したときに行われる。
【0113】
まず、
図10(a)を参照しつつ、ブレーキ力増加過程においてフィードバック制御からフィードフォワード制御に切換ったときの増圧リニア弁26についての判断を説明する。フィードフォワード制御において増圧リニア弁26に供給される励磁電流I
Aが適切な場合には、
図10(a)の破線で示すように、サーボ圧P
SRVは、概ね、フィードバック制御におけるサーボ圧P
SRVの変化の延長上になると考えられる。この場合、高圧源装置22からレギュレータ24を介してマスタシリンダ装置16に供給される作動液は、フィードバック制御における場合と概ね同じ供給速度(単位時間あたりの供給量を意味する)で供給され、それに伴い、高圧源圧P
ACCは、フィードバック制御における場合と概ね同じ勾配に沿って低下する。ところが、励磁電流I
Aが大き過ぎる場合には、
図10(a)において実線で示すように、切換り時点で、サーボ圧P
SRVは、急激に高くなると考えられる。その場合は、マスタシリンダ装置16に供給される作動液も急激に増加し、高圧源圧P
ACCも急激に低下する。この高圧源圧P
ACCの急激な低下をもって、ブレーキ力が大き過ぎると判断される。具体的には、切換り時点の高圧源圧P
ACCである切換時高圧源圧P
ACC-Cと、切換り後短い設定時間t
1経過した時点の高圧源圧P
ACCと差である高圧源圧差δP
ACC-1が、設定閾差δP
ACC-TH1を超えた場合に、ブレーキ力が設定程度を超えて大きい、つまり、励磁電流I
Aが大き過ぎると判断される。
【0114】
次に、
図10(b)を参照しつつ、フィードフォワード制御におけるブレーキ力増加過程の開始時の増圧リニア弁26についての判断を説明する。ブレーキ力増加過程の開始によって、目標サーボ圧P
*SRVが上昇し、励磁電流I
Aが適切な場合には、実際のサーボ圧P
SRVは、
図10(b)において破線で示すように、目標サーボ圧P
*SRVの上昇に沿って上昇する。この上昇に応じて、高圧源圧P
ACCは、開始時高圧源圧P
ACC-Iから破線のように低下する。それに対し、励磁電流I
Aが大き過ぎる場合には、
図10(a)において実線で示すように、より急勾配で上昇し、高圧源装置22からレギュレータ24を介したマスタシリンダ装置16への作動液の供給速度は高くなることから、その上昇に応じて、高圧源圧P
ACCは、より急勾配で低下する。目標サーボ圧P
*SRVが設定判断圧P
*SRV-Jとなったときの高圧源圧P
ACCの開始時高圧源圧P
ACC-Iとの差である高圧源圧差δP
ACC-2が、励磁電流I
Aが適切な場合の高圧源圧差である基準高圧源圧差δP
ACC-20よりマージン差δP
ACC-Mを設けて設定された設定閾差δP
ACC-TH2より大きく低下した場合に、ブレーキ力が設定程度を超えて大きい、つまり、励磁電流I
Aが大き過ぎると判断される。
【0115】
さらに次に、
図10(c)を参照しつつ、フィードフォワード制御が行われている場合において、ブレーキ力維持過程からブレーキ力減少過程に移行したときに行われる減圧リニア弁28についての判断を説明する。後に詳しく説明するが、フィードフォワード制御では、ブレーキ力維持過程からブレーキ力減少過程に移行する際、増圧リニア弁26に供給される励磁電流I
Aは、直ちに0とされず、実際にブレーキ力が減少すると判断されたときに、0とされる。したがって、ブレーキ力減少過程が開始された時点では、増圧リニア弁26は、弁開閉均衡状態にある。減圧リニア弁28に供給される励磁電流I
Rが適切な場合には、
図10(c)における破線で示すように、目標サーボ圧P
*SRVの低下に対して殆ど遅れることなく、実際のサーボ圧P
SRVは低下を始める。この実際のサーボ圧P
SRVの低下が開始されるときには、レギュレータ24の第2パイロット圧P
PLT2の低下するが、増圧リニア弁26が弁開閉均衡状態にあるため、高圧源装置22から供給されている作動液は、第2パイロット室R9に流入することになる。この流入によって、高圧源圧P
ACCは低下する。減圧リニア弁28についての判断は、この高圧源圧P
ACCの低下をトリガとして行い、また、この低下をトリガとして、増圧リニア弁26へ供給される励磁電流I
Aが0とされる。
【0116】
減圧リニア弁28に供給される励磁電流I
Rが大き過ぎる場合には、
図10(c)において実線で示すように、目標サーボ圧P
*SRVが低下し始めても、直ちには、減圧リニア弁28は弁開閉均衡状態とならず、サーボ圧P
SRVは、遅れて低下する。つまり、上述の高圧源圧P
ACCの低下も遅れて発生する。このことを利用し、ブレーキ力維持過程からブレーキ力減少過程へ移行した時点での目標サーボ圧P
*SRVである移行時目標サーボ圧P
*SRV-Tと、高圧源圧P
ACCが低下した時点での目標サーボ圧P
*SRVとの差である目標サーボ圧差δP
*SRVが、設定閾差δP
*SRV-THを超えた場合に、ブレーキ力が設定程度を超えて大きい、つまり、励磁電流I
Rが大き過ぎると判断される。
【0117】
上記のようにして、ブレーキ力が設定程度を超えて大きいと判断された場合、つまり、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28へ供給される励磁電流I
A,I
Rが大き過ぎると判断された場合、その励磁電流I
A,I
Rは減少させられる。詳しく言えば、シフト量ΔI
A,ΔI
Rは、減少のために設定されている設定減少量ΔI
A-DEC,ΔI
R-DECだけ減少させられる。つまり、励磁電流I
A,I
Rは、ブレーキ力が小さくなる側にシフトさせられるのである。ちなみに、設定減少量ΔI
A-DEC,ΔI
R-DECは、ブレーキ力が小さくなる側へのシフト量であり、多くの場合に励磁電流I
A,I
Rを増加させるための上記シフト量ΔI
A,ΔI
Rよりも相当に小さくなるように設定されており、多くの場合、ブレーキ力が設定程度を超えて大きいと判断された都度、励磁電流I
A,I
Rが設定減少量ΔI
A-DEC,ΔI
R-DECずつ減少させられ、ブレーキ力は、段階的に適正な大きさに近づいていく。なお、シフト量ΔI
A,ΔI
Rが0とされていた場合、つまり、励磁電流I
A,I
Rをブレーキ力が大きくなる側にシフトさせていない場合でも、ブレーキ力が設定程度を超えて大きいと判断されたときには、シフト量ΔI
A,ΔI
Rは設定減少量ΔI
A-DEC,ΔI
R-DECだけ減少させられるようにされている。したがって、その場合であっても、その減少により、適切な大きさのブレーキ力が発生させられることになる。
【0118】
(e)サーボ圧センサ失陥時ブレーキ力制御
上述のフィードフォワード制御が行われるS8のサーボ圧センサ失陥時ブレーキ力制御は、
図11にフローチャートを示すサーボ圧センサ失陥時ブレーキ制御ルーチンが実行されることによって行われる。このルーチンに従う処理では、まず、S51において、今回の本ルーチンの実行が、S7の通常時ブレーキ力制御から切換った最初の実行であるか否かが判断される。最初の実行である場合には、S52において、上述した励磁電流励磁電流I
A,I
Rについてのシフト量ΔI
A,ΔI
Rが決定される。一方で、最初の実行ではない場合には、S52の決定は、スキップされる。S53〜S55では、上述したブレーキ力が設定程度を超えて大きいことを判断し、大きい場合にシフト量ΔI
A,ΔI
Rを小さくする側に変更するための第1〜第3シフト量変更処理が行われる。それらの処理の後、S56において、第2パイロット圧P
PLT2が認定される。この認定は、先の通常時ブレーキ力制御における認定が実際のサーボ圧P
SRVに基づくのと異なり、目標サーボ圧P
*SRVに基づいて行われる。具体的には、サーボ圧P
SRVが目標サーボ圧P
*SRVになっているとみなし、目標サーボ圧P
*SRVと上述したレギュレータ24の増圧比εとに基づいて、第2パイロット圧P
PLT2が認定される。その認定の後、上記フィードフォワード制御を構成する増圧弁フィードフォワード制御,減圧弁フィードフォワード制御が、それぞれ、S57,S58において行われる。以下に、それぞれの制御,処理について詳しく説明する。
【0119】
e-1)制御の切換り初期におけるシフト量の決定
制御の切換り初期において行われるS52のシフト量決定のための処理は、
図12にフローチャートを示す初期シフト量決定サブルーチンが実行されることによって行われる。このサブルーチンに従う処理では、まず、S61,S62において、シフト量選択パラメータSLTの値が判断される。このパラメータには、“1”,“2”,“3”のいずれかの値が、車両の種類,状態等に応じて予め設定されており、その値に応じて、本サブルーチンにおいて上記3種類のシフト量ΔI
A,ΔI
Rのうちのいずれかが決定される。具体的に言えば、パラメータが“1”に設定されている場合には、上記最小ブレーキ力特性線SL
MINに従ってフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFが決定された場合の励磁電流I
A,I
Rを実現させるためのシフト量ΔI
A,ΔI
Rとすべく、S63において、上述したように、補正弾性付勢力F’
K-A,F’
K-Rが、それぞれ、規格最大値F
K-A-MAX,F
K-R-MAXとされる。パラメータが“2”に設定されている場合には、上記小ブレーキ力寄り特性線SL
SMLに従ってフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFが決定された場合の励磁電流I
A,I
Rを実現させるためのシフト量ΔI
A,ΔI
Rとすべく、S64において、上述したように、補正弾性付勢力F’
K-A,F’
K-Rが、それぞれ、特定大側値F
K-A-LRG,F
K-R-LRGとされる。パラメータが“3”に設定されている場合には、上記学習によって取得された弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVとフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFとの関係に従ってフィードフォワード成分I
A-FF,I
R-FFが決定された場合の励磁電流I
A,I
Rを実現させるためのシフト量ΔI
A,ΔI
Rとすべく、S65において、上述したように、補正弾性付勢力F’
K-A,F’
K-Rが、それぞれ、学習値F
K-A-ST,F
K-R-STとされる。
【0120】
補正弾性付勢力F’
K-A,F’
K-Rが決定された後、S66において、増圧リニア弁26についての補正弾性付勢力F’
K-Aがフィードバック制御で用いられているところの予め設定されている弾性付勢力F
K-Aを超えているか否かが判断される。そして、弾性付勢力F
K-Aを超えている場合には、S67において、増圧リニア弁26についてのシフト量ΔI
Aが、補正弾性付勢力F’
K-Aに基づき、上記式に従って決定され、一方、弾性付勢力F
K-A以下である場合には、S68において、シフト量ΔI
Aが0とされる。次に、S69において、減圧リニア弁28についての補正弾性付勢力F’
K-Rがフィードバック制御で用いられているところの予め設定されている弾性付勢力F
K-Rを超えているか否かが判断される。そして、弾性付勢力F
K-Rを超えている場合には、S70において、減圧リニア弁28についてのシフト量ΔI
Rが、補正弾性付勢力F’
K-Rに基づき、上記式に従って決定され、一方、弾性付勢力F
K-R以下である場合には、S71において、シフト量ΔI
Rが0とされる。
【0121】
e-2)シフト量変更処理
S53の第1シフト量変更処理は、通常時ブレーキ力制御からサーボ圧センサ失陥時ブレーキ力制御に切換った際、ブレーキ力が設定程度を超えて大きくなっているか否かを判断し、大きくなっていると判断された場合に、増圧リニア弁26についてのシフト量ΔI
Aを減少させるための処理である。この処理は、
図13にフローチャートを示す第1シフト量変更サブルーチンが実行されることによって行われる。このサブルーチンに従う処理では、まず、S81において、判断のための条件が充足されているか否かが判定される。その条件は、ブレーキ力増加過程において制御が切換ったこと、現時点でもブレーキ増加過程にあること、かつ、制御の切換り後設定時間t
1が経過したことである。判断のための条件が充足されていると判定された場合、S82において、上述したように、高圧源圧差δP
ACC-1が設定閾差δP
ACC-TH1を超えているか否かが判断され、超えている場合に、S83において、増圧リニア弁26についてのシフト量ΔI
Aが、設定減少量ΔI
A-DECだけ減少させられる。
【0122】
S54の第2シフト量変更処理は、ブレー力増加過程が開始した際、ブレーキ力が設定程度を超えて大きくなっているか否かを判断し、大きくなっていると判断された場合に、増圧リニア弁26についてのシフト量ΔI
Aを減少させるための処理である。この処理は、
図14にフローチャートを示す第2シフト量変更サブルーチンが実行されることによって行われる。このサブルーチンに従う処理では、まず、S91において、判断のための条件が充足されているか否かが判定される。その条件は、ブレーキ力増加過程が開始され現時点でもその過程にあること、かつ、目標サーボ圧P
*SRVが設定判断圧P
*SRV-Jとなったことである。判断のための条件が充足されていると判定された場合、S92において、上述したように、高圧源圧差δP
ACC-2が設定閾差δP
ACC-TH2を超えているか否かが判断され、超えている場合に、S93において、増圧リニア弁26についてのシフト量ΔI
Aが、設定減少量ΔI
A-DECだけ減少させられる。
【0123】
S55の第3シフト量変更処理は、ブレー力維持過程からブレーキ力減少過程に移行した際、ブレーキ力が設定程度を超えて大きくなっているか否かを判断し、大きくなっていると判断された場合に、減圧リニア弁28についてのシフト量ΔI
Rを減少させるための処理である。この処理は、
図15にフローチャートを示す第3シフト量変更サブルーチンが実行されることによって行われる。このサブルーチンに従う処理では、まず、S101において、判断のための条件が充足されているか否かが判定される。その条件は、ブレーキ力維持過程からブレーキ力減少過程に移行し、現時点でもブレーキ力減少過程にあること、かつ、高圧源圧P
ACCが低下したことである。判断のための条件が充足されていると判定された場合、S102において、上述したように、目標サーボ圧差δP
*SRVが設定閾差δP
*SRVー
THを超えているか否かが判断され、超えている場合に、S103において、減圧リニア弁28についてのシフト量ΔI
Rが、設定減少量ΔI
R-DECだけ減少させられる。
【0124】
e-3)増圧弁フィードフォワード制御
S57の増圧弁フィードフォワード制御は、簡単に言えば、フィードフォワード制御の手法に基づいてフィードフォワード成分I
A-FFを決定し、この決定されたフィードフォワード成分I
A-FFからなる励磁電流I
Aを、増圧リニア弁26に供給するための制御である。この制御は、
図16にフローチャートを示す増圧弁フィードフォワード制御サブルーチンが実行されることによって行われる。
【0125】
増圧弁フィードフォワード制御サブルーチンに従う処理では、まず、S111において、フィードバック制御における場合と同様の式
によって、つまり、増圧リニア弁26について予め設定されているところの弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVと励磁電流I
Aとの相互関係に従って、フィードフォワード成分I
A-FFが決定される。具体的には、目標サーボ圧P
*SRVに依拠して認定された第2パイロット圧P
PLT2と高圧源圧P
ACCとに基づいて決定される。続くS112において、実際に供給される励磁電流I
Aの基礎となる基礎励磁電流I
A0が、次式に基づいて決定される。
I
A0=
IA-FF+ΔI
A
つまり、決定されたフィードフォワード成分I
A-FFに上記シフト量ΔI
Aを加えることによって、基礎励磁電流I
A0が決定されるのである。
【0126】
基礎励磁電流I
A0の決定の後、S113,S114において、フィードバック制御の場合と同様に、ブレーキ力増加過程,ブレーキ力維持過程,ブレーキ力減少過程のいずれであるかが判断される。ブレーキ力増加過程,ブレーキ力維持過程にあると判断された場合には、S115において、フィードバック制御の場合と同様に、供給する励磁電流I
Aが上記基礎励磁電流I
A0に決定される。一方、ブレーキ力減少過程にあると判断された場合は、フィードバック制御の場合と異なり、S116における高圧源圧P
ACCの低下の判断の結果、高圧源圧P
ACCが実際に低下したと判断された時点から、S117において、励磁電流I
Aが0に決定される。これは、先に説明したように、第3シフト量変更処理の実行を担保するための処理である。励磁電流励I
Aの決定後、S118において、その励磁電流I
Aについての指令が発せられる。
【0127】
なお、上記増圧弁フィードフォワード制御も、増圧弁フィードバック制御と同様、ブレーキ力増加過程とブレーキ力維持過程とにおいて、基礎励磁電流I
A0が増圧リニア弁26に供給されている。そのことに鑑みて厳密に言えば、ブレーキ力増加過程,ブレーキ力維持過程のみ、フィードフォワード制御が行われていると考えることができる。
【0128】
e-4)減圧弁フィードフォワード制御
S58の減圧弁フィードフォワード制御は、簡単に言えば、フィードフォワード制御の手法に基づいてフィードフォワード成分I
R-FFを決定し、この決定されたフィードフォワード成分I
R-FFからなる励磁電流I
Rを、減圧リニア弁28に供給するための制御である。この制御は、
図17にフローチャートを示す減圧弁フィードフォワード制御サブルーチンが実行されることによって行われる。
【0129】
減圧弁フィードフォワード制御サブルーチンに従う処理では、まず、S121において、フィードバック制御における場合と同様の式
によって、つまり、減圧リニア弁28について予め設定されているところの弁開閉均衡状態におけるサーボ圧P
SRVと励磁電流I
Rとの相互関係に従って、フィードフォワード成分I
R-FFが決定される。具体的には、目標サーボ圧P
*SRVに依拠して認定された第2パイロット圧P
PLT2と大気圧P
RSVとに基づいて決定される。続くS122において、実際に供給される励磁電流I
Rの基礎となる基礎励磁電流
IR0が、次式に基づいて決定される。
I
R0=I
R-FF+ΔI
R
つまり、決定されたフィードフォワード成分I
R-FFに上記シフト量ΔI
Rを加えることによって、基礎励磁電流I
R0が決定されるのである。
【0130】
基礎励磁電流I
R0の決定の後、S123,S124において、フィードバック制御の場合と同様に、ブレーキ力増加過程,ブレーキ力維持過程,ブレーキ力減少過程のいずれであるかが判断される。ブレーキ力減少過程,ブレーキ力維持過程にあると判断された場合には、S125において、フィードバック制御の場合と同様に、供給する励磁電流I
Rが上記基礎励磁電流I
R0に決定される。一方、ブレーキ力増加過程にあると判断された場合も、フィードバック制御の場合と同様、S126において、励磁電流I
Rが、基礎励磁電流I
R0に上記マージン電流I
MAGを加えた値に決定される。励磁電流励I
Rの決定後、S127において、その励磁電流I
Rについての指令が発せられる。
【0131】
なお、上記減圧弁フィードフォワード制御も、減圧弁フィードバック制御と同様、ブレーキ力維持過程とブレーキ力減少過程とにおいて、基礎励磁電流I
R0が減圧リニア弁28に供給されている。そのことに鑑みて厳密に言えば、ブレーキ力維持過程,ブレーキ力減少過程のみ、フィードフォワード制御が行われていると考えることができる。
【0132】
(f)制御装置の機能構成
上記ブレーキ制御プログラムに従った処理を行う当該システムの制御装置であるブレーキECU30は、その制御機能に鑑みれば、
図18のブロック図に示すような機能構成を有していると考えることができる。具体的に言えば、i)高圧源装置22の制御を司る高圧源制御部160、ii)励磁電流I
A,I
Rをフィードフォワード成分とフィードバック成分とに基づいて決定し、その決定された励磁電流I
A,I
Rを増圧リニア弁26,減圧リニア弁28に供給するフィードバック制御部162、iii)励磁電流I
A,I
Rをフィードフォワード成分に基づいて決定し、その決定された励磁電流I
A,I
Rを増圧リニア弁26,減圧リニア弁28に供給するフィードフォワード制御部164、iv)フィードフォワード制御による励磁電流I
A,I
Rの決定に際し、その励磁電流I
A,I
Rをシフトさせる励磁電流シフト部166、v)サーボ圧センサ134に失陥が発生した場合に、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28に供給する励磁電流I
A,I
Rに関する制御実行する機能部を、フィードバック制御部からフィードフォワード制御部に切換える制御切換部168を有していると考えることができる。
【0133】
上記ブレーキ制御プログラムに従う処理との関係で、より詳しく言えば、高圧源制御部160は、
図4に示す高圧源制御ルーチンの実行によって機能する機能部と考えることができ、フィードバック制御部162は、
図5に示す通常ブレーキ力制御ルーチンにおけるS24,S25、つまり、
図6,
図7に示す増圧弁フィードバック制御サブルーチン,減弁フィードバック制御サブルーチンの実行によって機能する機能部と、フィードフォワード制御部164は、
図11に示すサーボ圧センサ失陥時ブレーキ力制御ルーチンにおけるS57,S58、つまり、
図16,
図17に示す増圧弁フィードフォワード制御サブルーチン,減圧弁フィードフォワード制御サブルーチンの実行によって機能する機能部と、それぞれ考えることができる。また、励磁電流シフト部166は、
図11に示すサーボ圧センサ失陥時ブレーキ力制御ルーチンにおけるS52〜S56、つまり、
図12〜
図15に示す初期シフト量決定サブルーチン,第1〜第3シフト量変更サブルーチンの実行によって機能する機能部と考えることができ、制御切換部168は、
図3に示すメインフローのS6、つまり、通常時ブレーキ力制御からサーボ圧センサ失陥時制御に切換える処理の実行によって機能する機能部と考えることができる。
【0134】
≪変形例≫
以下に、請求可能発明が適用できる上記実施例の変形例について、説明する。
【0135】
上記実施例のシステムでは、高圧源装置22からの作動液がレギュレータ24によって調圧されてマスタシリンダ装置16に供給され、その作動液の圧力によってマスタシリンダ装置16において作動液が加圧され、その加圧された作動液がブレーキ装置12に供給されるように構成されていた。このような構成に代え、例えば、レギュレータ24から調圧されて供給された作動液が、直接的にブレーキ装置に供給されるように構成されていてもよい。また、例えば、レギュレータ24を備えず、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28によって高圧源装置22からの作動液の圧力を調整し、その調整された圧力の作動液が、直接的にマスタシリンダ装置16に供給されるように構成されていてもよい。そのような構成の場合には、その調整された圧力である調整圧をブレーキ力指標として採用することができる。さらに、例えば、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28によって高圧源装置22からの作動液の圧力を調整し、その調整された圧力の作動液が、直接的にブレーキ装置12に供給されるように構成されていてもよい。そのような構成の場合にも、その調整された圧力である調整圧をブレーキ力指標として採用することができる。また、上記実施例のシステムにおいて、マスタシリンダ装置16からブレーキ装置12に供給される作動液の圧力であるマスタ圧を検出するマスタ圧センサを設け、そのマスタ圧をブレーキ力指標として採用することも可能である。
【0136】
上記実施例のシステムでは、常閉型の増圧リニア弁26,常開型の減圧リニア弁28が採用されているが、増圧リニア弁26として、常開型のリニア弁を、また、減圧リニア弁28として、常閉型のリニア弁を採用することも可能である。この場合、ブレーキ力を担保するための励磁電流I
A,I
Rについてのシフトは、励磁電流I
A,I
Rを減少させる向きのシフトとなる場合もあり得る。
【0137】
上記実施例のシステムでは、増圧リニア弁26に関して、ブレーキ力増加過程,ブレーキ力維持過程においてだけ、フィードバック制御の手法,フィードフォワード制御の手法に従って決定された励磁電流I
A(基礎励磁電流I
A0)がそのまま供給され、減圧リニア弁28に関して、ブレーキ力維持過程,ブレーキ力減少過程においてだけ、フィードバック制御の手法,フィードフォワード制御の手法に従って決定された励磁電流I
R(基礎励磁電流I
R0)が供給されていた。そのような供給形態に代え、ブレーキ力増加過程,ブレーキ力維持過程,ブレーキ力減少過程のすべてについて、フィードバック制御の手法,フィードフォワード制御の手法に従って決定された励磁電流I
A,I
Rが供給される供給形態であってもよく、逆に、それらの過程の内の任意の1つまたは2つの過程にのみフィードバック制御の手法,フィードフォワード制御の手法に従って決定された励磁電流I
A,I
Rが供給される供給形態であってもよい。
【0138】
上記実施例のシステムでは、フィードフォワード制御に関して、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の両方に、ブレーキ力を担保するための励磁電流I
A,I
Rのシフトが行われていた。このような形態に代え、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の一方だけに、ブレーキ力を担保するための励磁電流I
A,I
Rのシフトが行われるような形態であってもよい。