【文献】
杉本理恵、他5名,「圧縮性流体への音響放射による付加質量および付加減衰に関する研究」,21世紀のダンピング技術シンポジウム講演論文集,日本機械学会,1997年,p.89-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記歪分布算出手段は、前記応力分布に基づいて前記歪分布に対応する応力分布成分を算出し、前記応力分布成分を前記帯状体のヤング率で除した値を前記歪分布として算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の歪分布測定装置。
前記歪分布算出工程は、前記応力分布に基づいて前記歪分布に対応する応力分布成分を算出し、前記応力分布成分を前記帯状体のヤング率で除した値を前記歪分布として算出することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の歪分布測定方法。
長手方向に張力を付与された帯状体の幅方向の歪分布を、長手方向の2箇所の部位で支持された支持部位間で測定するようにコンピュータを機能させる歪分布測定プログラムであって、
前記2箇所の支持部位間で前記帯状体に振動荷重を付加する振動荷重付加手段と、
前記帯状体に付加された前記振動荷重によって前記帯状体に生じる振動変位を、前記帯状体の幅方向の複数の計測点で計測する振動計測手段と、
前記帯状体を、各計測点に対応する各節点に作用する応力を模擬する直線ばねを含む2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化手段と、
前記多質点系モデルの固有値解析から得られる各節点での固有振動数および振動モードが、各計測点で計測された振動変位から得られる固有振動数および振動モードと一致するような前記直線ばねの各ばね定数を算出するばね定数算出手段と、
算出された前記直線ばねの各ばね定数を、各計測点における応力値に換算するばね定数換算手段と、
前記複数の計測点で計測された振動変位から求められる、前記帯状体の固有振動数および振動モードに基づいて、前記帯状体の幅方向の応力分布を算出する応力分布算出手段と、
算出された応力分布に基づいて前記帯状体の幅方向の歪分布を算出する歪分布算出手段としてコンピュータを機能させ、
前記応力分布算出手段は、換算された各計測点における応力値から前記帯状体の幅方向の応力分布を求めることを特徴とする歪分布測定プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、応力分布により帯状体の歪分布状態を間接的に検出する方法では、通板用ロールの設置誤差による傾きや巻き取りリールの設置誤差による傾きにより帯状体の幅方向で片側の張力が高くなる偏張力が発生した場合に、帯状体の不均一歪を適切に評価できないという問題がある。そこで、走行中の帯状体の形状を直接的に把握することができれば、不均一歪みを除去または低減するように平坦度を制御しやすくなり、品質が向上する。
【0007】
本発明の目的は、走行中の帯状体の形状を直接的に把握することが可能な歪分布測定装置、歪分布測定方法、および、歪分布測定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における歪分布測定装置は、長手方向に張力を付与された帯状体の幅方向の歪分布を、長手方向の2箇所の部位で支持された支持部位間で測定する歪分布測定装置であって、前記2箇所の支持部位間で前記帯状体に振動荷重を付加する振動荷重付加手段と、前記帯状体に付加された前記振動荷重によって前記帯状体に生じる振動変位を、前記帯状体の幅方向の複数の計測点で計測する振動計測手段と、
前記帯状体を、各計測点に対応する各節点に作用する応力を模擬する直線ばねを含む2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化手段と、前記多質点系モデルの固有値解析から得られる各節点での固有振動数および振動モードが、各計測点で計測された振動変位から得られる固有振動数および振動モードと一致するような前記直線ばねの各ばね定数を算出するばね定数算出手段と、算出された前記直線ばねの各ばね定数を、各計測点における応力値に換算するばね定数換算手段と、前記複数の計測点で計測された振動変位から求められる、前記帯状体の固有振動数および振動モードに基づいて、前記帯状体の幅方向の応力分布を算出する応力分布算出手段と、算出された応力分布に基づいて前記帯状体の幅方向の歪分布を算出する歪分布算出手段と、を有
し、前記応力分布算出手段は、換算された各計測点における応力値から前記帯状体の幅方向の応力分布を求めることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、帯状体の幅方向の応力分布に基づいて帯状体の幅方向の歪分布を算出することにより、帯状体が幅方向にどのように歪んでいるのかを把握することができる。これにより、走行中の帯状体の形状を直接的に把握することができる。
【0010】
また
、帯状体の応力分布を、帯状体と物理的に近似する2次元の多質点系モデルによって算出することで、幅方向に複雑な応力分布を有する場合であっても、簡易な物理モデルを用いて計測点に分布する応力の夫々について高精度に算出することができる。
【0011】
また、本発明における歪分布測定装
置は、
長手方向に張力を付与された帯状体の幅方向の歪分布を、長手方向の2箇所の部位で支持された支持部位間で測定する歪分布測定装置であって、前記2箇所の支持部位間で前記帯状体に振動荷重を付加する振動荷重付加手段と、前記帯状体に付加された前記振動荷重によって前記帯状体に生じる振動変位を、前記帯状体の幅方向の複数の計測点で計測する振動計測手段と、前記帯状体を、前記支持部位間で前記帯状体に接する流体の付加質量と、各計測点に対応する各節点に作用する応力を模擬する直線ばねとを含む2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化手段と、前記多質点系モデルの固有値解析から得られる各節点での固有振動数および振動モードが、各計測点で計測された振動変位から得られる固有振動数および振動モードと一致するような前記直線ばねの各ばね定数を算出するばね定数算出手段と、算出された前記直線ばねの各ばね定数を、各計測点における応力値に換算するばね定数換算手段と、
前記複数の計測点で計測された振動変位から求められる、前記帯状体の固有振動数および振動モードに基づいて、前記帯状体の幅方向の応力分布を算出する応力分布算出手段と、算出された応力分布に基づいて前記帯状体の幅方向の歪分布を算出する歪分布算出手段と、を有し、前記応力分布算出手段は、換算された各計測点における応力値から前記帯状体の幅方向の応力分布を求め
ることを特徴とする。上記の構成によれば、密度の低い帯状体や板厚の薄い帯状体であっても、その振動に影響する周りの流体の付加質量を考慮に入れて、応力分布を精度よく測定することができる。
【0012】
また、本発明における歪分布測定装
置は、
長手方向に張力を付与された帯状体の幅方向の歪分布を、長手方向の2箇所の部位で支持された支持部位間で測定する歪分布測定装置であって、前記2箇所の支持部位間で前記帯状体に振動荷重を付加する振動荷重付加手段と、前記帯状体に付加された前記振動荷重によって前記帯状体に生じる振動変位を、前記帯状体の幅方向の複数の計測点で計測する振動計測手段と、前記帯状体を、各計測点に対応する各節点に作用する応力を模擬する直線ばねと、各節点における幅方向の曲げ剛性を模擬する回転ばねとを含む2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化手段と、前記多質点系モデルの固有値解析から得られる各節点での固有振動数および振動モードが、各計測点で計測された振動変位から得られる固有振動数および振動モードと一致するような前記直線ばねおよび前記回転ばねの各ばね定数を算出するばね定数算出手段と、算出された前記直線ばねおよび前記回転ばねの各ばね定数を、それぞれ各計測点における応力値および曲げ剛性値に換算するばね定数換算手段と、
前記複数の計測点で計測された振動変位から求められる、前記帯状体の固有振動数および振動モードに基づいて、前記帯状体の幅方向の応力分布を算出する応力分布算出手段と、算出された応力分布に基づいて前記帯状体の幅方向の歪分布を算出する歪分布算出手段と、を有し、前記応力分布算出手段は、換算された各計測点における応力値から前記帯状体の幅方向の応力分布を求め
ることを特徴とする。上記の構成によれば、不均一歪みの一部顕在によって幅方向の曲げ剛性が変化する帯状体であっても、応力分布を精度よく測定することができる。
【0013】
また、本発明における歪分布測定装置において、前記歪分布算出手段は、前記応力分布に基づいて前記歪分布に対応する応力分布成分を算出し、前記応力分布成分を前記帯状体のヤング率で除した値を前記歪分布として算出してよい。上記の構成によれば、測定された応力分布から歪分布を算出することで、帯状体の不均一歪を直接的に把握することができる。
【0014】
また、本発明における歪分布測定装置においては、前記歪分布をグラフ化するグラフ化手段と、グラフを表示することが可能な表示手段と、グラフ化された前記歪分布を前記表示手段に表示させる表示制御手段と、を更に有していてよい。上記の構成によれば、歪分布をグラフ化して表示手段に表示させることにより、走行中の帯状体の形状を視覚的に把握することができる。
【0015】
また、本発明における歪分布測定装置においては、前記歪分布をサンプリングするサンプリング手段と、データシートを作成可能なデータシート作成手段と、サンプリングされた前記歪分布に基づいたデータシートを前記データシート作成手段に作成させるデータシート作成制御手段と、を更に有していてよい。上記の構成によれば、歪分布をサンプリングしてデータシートを作成することで、走行中の帯状体の形状を視覚的に把握することができる。
【0016】
また、本発明における歪分布測定方法は、長手方向に張力を付与された帯状体の幅方向の歪分布を、長手方向の2箇所の部位で支持された支持部位間で測定する歪分布測定方法であって、前記2箇所の支持部位間で前記帯状体に振動荷重を付加する振動荷重付加工程と、前記帯状体に付加された前記振動荷重によって前記帯状体に生じる振動変位を、前記帯状体の幅方向の複数の計測点で計測する振動計測工程と、
前記帯状体を、各計測点に対応する各節点に作用する応力を模擬する直線ばねを含む2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化工程と、前記多質点系モデルの固有値解析から得られる各節点での固有振動数および振動モードが、各計測点で計測された振動変位から得られる固有振動数および振動モードと一致するような前記直線ばねの各ばね定数を算出するばね定数算出工程と、算出された前記直線ばねの各ばね定数を、各計測点における応力値に換算するばね定数換算工程と、前記複数の計測点で計測された振動変位から求められる、前記帯状体の固有振動数および振動モードに基づいて、前記帯状体の幅方向の応力分布を算出する応力分布算出工程と、算出された応力分布に基づいて前記帯状体の幅方向の歪分布を算出する歪分布算出工程と、を有
し、前記応力分布算出工程は、換算された各計測点における応力値から前記帯状体の幅方向の応力分布を求めることを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、帯状体の幅方向の応力分布に基づいて帯状体の幅方向の歪分布を算出することにより、帯状体が幅方向にどのように歪んでいるのかを把握することができる。これにより、走行中の帯状体の形状を直接的に把握することができる。
【0018】
また
、帯状体の応力分布を、帯状体と物理的に近似する2次元の多質点系モデルによって算出することで、幅方向に複雑な応力分布を有する場合であっても、簡易な物理モデルを用いて計測点に分布する応力の夫々について高精度に算出することができる。
【0019】
また、本発明における歪分布測定方
法は、
長手方向に張力を付与された帯状体の幅方向の歪分布を、長手方向の2箇所の部位で支持された支持部位間で測定する歪分布測定方法であって、前記2箇所の支持部位間で前記帯状体に振動荷重を付加する振動荷重付加工程と、前記帯状体に付加された前記振動荷重によって前記帯状体に生じる振動変位を、前記帯状体の幅方向の複数の計測点で計測する振動計測工程と、前記帯状体を、前記支持部位間で前記帯状体に接する流体の付加質量と、各計測点に対応する各節点に作用する応力を模擬する直線ばねとを含む2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化工程と、前記多質点系モデルの固有値解析から得られる各節点での固有振動数および振動モードが、各計測点で計測された振動変位から得られる固有振動数および振動モードと一致するような前記直線ばねの各ばね定数を算出するばね定数算出工程と、算出された前記直線ばねの各ばね定数を、各計測点における応力値に換算するばね定数換算工程と、
前記複数の計測点で計測された振動変位から求められる、前記帯状体の固有振動数および振動モードに基づいて、前記帯状体の幅方向の応力分布を算出する応力分布算出工程と、算出された応力分布に基づいて前記帯状体の幅方向の歪分布を算出する歪分布算出工程と、を有し、前記応力分布算出工程は、換算された各計測点における応力値から前記帯状体の幅方向の応力分布を求め
ることを特徴とする。上記の構成によれば、密度の低い帯状体や板厚の薄い帯状体であっても、その振動に影響する周りの流体の付加質量を考慮に入れて、応力分布を精度よく測定することができる。
【0020】
また、本発明における歪分布測定方
法は、
長手方向に張力を付与された帯状体の幅方向の歪分布を、長手方向の2箇所の部位で支持された支持部位間で測定する歪分布測定方法であって、前記2箇所の支持部位間で前記帯状体に振動荷重を付加する振動荷重付加工程と、前記帯状体に付加された前記振動荷重によって前記帯状体に生じる振動変位を、前記帯状体の幅方向の複数の計測点で計測する振動計測工程と、前記帯状体を、各計測点に対応する各節点に作用する応力を模擬する直線ばねと、各節点における幅方向の曲げ剛性を模擬する回転ばねとを含む2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化工程と、前記多質点系モデルの固有値解析から得られる各節点での固有振動数および振動モードが、各計測点で計測された振動変位から得られる固有振動数および振動モードと一致するような前記直線ばねおよび前記回転ばねの各ばね定数を算出するばね定数算出工程と、算出された前記直線ばねおよび前記回転ばねの各ばね定数を、それぞれ各計測点における応力値および曲げ剛性値に換算するばね定数換算工程と、
前記複数の計測点で計測された振動変位から求められる、前記帯状体の固有振動数および振動モードに基づいて、前記帯状体の幅方向の応力分布を算出する応力分布算出工程と、算出された応力分布に基づいて前記帯状体の幅方向の歪分布を算出する歪分布算出工程と、を有し、前記応力分布算出工程は、換算された各計測点における応力値から前記帯状体の幅方向の応力分布を求め
ることを特徴とする。上記の構成によれば、不均一歪みの一部顕在によって幅方向の曲げ剛性が変化する帯状体であっても、応力分布を精度よく測定することができる。
【0021】
また、本発明における歪分布測定方法において、前記歪分布算出工程は、前記応力分布に基づいて前記歪分布に対応する応力分布成分を算出し、前記応力分布成分を前記帯状体のヤング率で除した値を前記歪分布として算出してよい。上記の構成によれば、測定された応力分布から歪分布を算出することで、帯状体の不均一歪を直接的に把握することができる。
【0022】
また、本発明における歪分布測定方法においては、前記歪分布をグラフ化するグラフ化工程と、グラフを表示することが可能な表示手段にグラフ化された前記歪分布を表示させる表示制御工程と、を更に有していてよい。上記の構成によれば、歪分布をグラフ化して表示手段に表示させることにより、走行中の帯状体の形状を視覚的に把握することができる。
【0023】
また、本発明における歪分布測定方法においては、前記歪分布をサンプリングするサンプリング工程と、サンプリングされた前記歪分布に基づいたデータシートを作成するデータシート作成工程と、を更に有していてよい。上記の構成によれば、歪分布をサンプリングしてデータシートを作成することで、走行中の帯状体の形状を視覚的に把握することができる。
【0024】
また、本発明における歪分布測定プログラムは、長手方向に張力を付与された帯状体の幅方向の歪分布を、長手方向の2箇所の部位で支持された支持部位間で測定するようにコンピュータを機能させる歪分布測定プログラムであって、前記2箇所の支持部位間で前記帯状体に振動荷重を付加する振動荷重付加手段と、前記帯状体に付加された前記振動荷重によって前記帯状体に生じる振動変位を、前記帯状体の幅方向の複数の計測点で計測する振動計測手段と、
前記帯状体を、各計測点に対応する各節点に作用する応力を模擬する直線ばねを含む2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化手段と、前記多質点系モデルの固有値解析から得られる各節点での固有振動数および振動モードが、各計測点で計測された振動変位から得られる固有振動数および振動モードと一致するような前記直線ばねの各ばね定数を算出するばね定数算出手段と、算出された前記直線ばねの各ばね定数を、各計測点における応力値に換算するばね定数換算手段と、前記複数の計測点で計測された振動変位から求められる、前記帯状体の固有振動数および振動モードに基づいて、前記帯状体の幅方向の応力分布を算出する応力分布算出手段と、算出された応力分布に基づいて前記帯状体の幅方向の歪分布を算出する歪分布算出手段としてコンピュータを機能させ
、前記応力分布算出手段は、換算された各計測点における応力値から前記帯状体の幅方向の応力分布を求めることを特徴とする。
【0025】
上記の構成によれば、帯状体の幅方向の応力分布に基づいて帯状体の幅方向の歪分布を算出することにより、帯状体が幅方向にどのように歪んでいるのかを把握することができる。これにより、走行中の帯状体の形状を直接的に把握することができる。
また、帯状体の応力分布を、帯状体と物理的に近似する2次元の多質点系モデルによって算出することで、幅方向に複雑な応力分布を有する場合であっても、簡易な物理モデルを用いて計測点に分布する応力の夫々について高精度に算出することができる。
また、本発明における歪分布測定プログラムは、長手方向に張力を付与された帯状体の幅方向の歪分布を、長手方向の2箇所の部位で支持された支持部位間で測定するようにコンピュータを機能させる歪分布測定プログラムであって、前記2箇所の支持部位間で前記帯状体に振動荷重を付加する振動荷重付加手段と、前記帯状体に付加された前記振動荷重によって前記帯状体に生じる振動変位を、前記帯状体の幅方向の複数の計測点で計測する振動計測手段と、前記帯状体を、前記支持部位間で前記帯状体に接する流体の付加質量と、各計測点に対応する各節点に作用する応力を模擬する直線ばねとを含む2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化手段と、前記多質点系モデルの固有値解析から得られる各節点での固有振動数および振動モードが、各計測点で計測された振動変位から得られる固有振動数および振動モードと一致するような前記直線ばねの各ばね定数を算出するばね定数算出手段と、算出された前記直線ばねの各ばね定数を、各計測点における応力値に換算するばね定数換算手段と、前記複数の計測点で計測された振動変位から求められる、前記帯状体の固有振動数および振動モードに基づいて、前記帯状体の幅方向の応力分布を算出する応力分布算出手段と、算出された応力分布に基づいて前記帯状体の幅方向の歪分布を算出する歪分布算出手段としてコンピュータを機能させ、前記応力分布算出手段は、換算された各計測点における応力値から前記帯状体の幅方向の応力分布を求めることを特徴とする。上記の構成によれば、密度の低い帯状体や板厚の薄い帯状体であっても、その振動に影響する周りの流体の付加質量を考慮に入れて、応力分布を精度よく測定することができる。
また、本発明における歪分布測定プログラムは、長手方向に張力を付与された帯状体の幅方向の歪分布を、長手方向の2箇所の部位で支持された支持部位間で測定するようにコンピュータを機能させる歪分布測定プログラムであって、前記2箇所の支持部位間で前記帯状体に振動荷重を付加する振動荷重付加手段と、前記帯状体に付加された前記振動荷重によって前記帯状体に生じる振動変位を、前記帯状体の幅方向の複数の計測点で計測する振動計測手段と、前記帯状体を、各計測点に対応する各節点に作用する応力を模擬する直線ばねと、各節点における幅方向の曲げ剛性を模擬する回転ばねとを含む2次元の多質点系モデルにモデル化するモデル化手段と、前記多質点系モデルの固有値解析から得られる各節点での固有振動数および振動モードが、各計測点で計測された振動変位から得られる固有振動数および振動モードと一致するような前記直線ばねおよび前記回転ばねの各ばね定数を算出するばね定数算出手段と、算出された前記直線ばねおよび前記回転ばねの各ばね定数を、それぞれ各計測点における応力値および曲げ剛性値に換算するばね定数換算手段と、前記複数の計測点で計測された振動変位から求められる、前記帯状体の固有振動数および振動モードに基づいて、前記帯状体の幅方向の応力分布を算出する応力分布算出手段と、算出された応力分布に基づいて前記帯状体の幅方向の歪分布を算出する歪分布算出手段としてコンピュータを機能させ、前記応力分布算出手段は、換算された各計測点における応力値から前記帯状体の幅方向の応力分布を求めることを特徴とする。上記の構成によれば、不均一歪みの一部顕在によって幅方向の曲げ剛性が変化する帯状体であっても、応力分布を精度よく測定することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の歪分布測定装置、歪分布測定方法、および、歪分布測定プログラムによると、走行中の帯状体の形状を直接的に把握することができる。これにより、帯状体の不均一歪を低減するようにロールベンディング装置やクーラントのゾーンコントロール装置等による平坦度制御を調整することが可能となり、平坦度の良い帯状体を製造することができるようになる。これらの効果により帯状体の平坦度不良が低減され、さらには製造ライン内における帯状体のスムーズな通板が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
[第1実施形態]
(歪分布測定装置の構成)
本発明の第1実施形態による歪分布測定装置は、
図1に示すように、走行する長手方向に張力を付与された帯状体1の幅方向の歪分布を、長手方向の2箇所の部位で支持ロール2a、2bによって支持された支持部位間で測定するものであり、2箇所の支持部位間で帯状体1に振動荷重を付加する振動荷重付加装置(振動荷重付加手段)3と、振動荷重付加装置3に入力される加振信号を増幅する増幅器6と、帯状体1に付加された振動荷重によって帯状体1に生じる振動変位を、帯状体1の幅方向の複数の計測点1aで計測する非接触式の変位計(振動計測手段)4と、各変位計4の出力に基づいて、帯状体1の幅方向の歪分布を演算する演算装置5と、を有している。帯状体1の各計測点1aは、支持部位間の長手方向の中間位置に等間隔で設定されている。
【0030】
振動荷重付加装置3は、帯状体1に向かって空気を間歇的に噴射することで帯状体1に振動荷重を付加するものであるが、振動荷重付加装置3は、水や油等の液体を間歇的に噴射するものや、磁力、静電力、電磁誘導による渦電流、音波等によって、帯状体1に振動荷重を付加するものとすることもできる。また、帯状体1の1点を打撃する装置や、支持ロール2a、2bのいずれかを加振する装置とすることもできる。
【0031】
増幅器6は、後述する加振信号を増幅するものである。
【0032】
変位計4は光反射式のレーザ変位計とされている。帯状体1が導電性を有するものである場合は、帯状体1に生じさせた渦電流の大きさを検出する渦電流式変位計や、帯状体1とセンサヘッドとの間の静電容量を検出する静電容量式変位計等とすることもできる。また、
図1では、便宜上、変位計4を幅方向に等間隔で5台配置するように図示しているが、変位計4の配置台数(計測点1aの数)は任意に設定することができ、幅方向での配置間隔も、例えば、幅端部を密に、幅中央部を粗くするように不等間隔で配置してもよい。さらに、一部の変位計4を幅方向に移動可能としてもよい。
【0033】
演算装置5は、帯状体1を2次元多質点系モデルにモデル化したり、後述する第2実施形態において、帯状体1の質量に加える空気の付加質量をモデル化したりするモデル化部(モデル化手段)5aと、振動荷重付加装置3に向かって加振信号を出力する加振信号出力部5bと、各変位計4で計測された各計測点1aの振動変位に係る振動信号が入力される振動信号入力部5cと、入力された振動信号から固有振動数や振動モードなどの振動特性を算出する振動特性算出部5dと、算出された固有振動数および振動モードから2次元多質点系モデルのばね定数を算出するばね定数算出部(ばね定数算出手段)5eと、算出された直線ばねの各ばね定数を、各計測点1aにおける応力値に換算するばね定数換算部(ばね定数換算手段)5fと、換算された各計測点1aにおける応力値から帯状体1の幅方向の応力分布を算出する応力分布算出部(応力分布算出手段)5gと、算出された応力分布に基づいて帯状体1の幅方向の歪分布を算出する歪分布算出部(歪分布算出手段)5hと、算出された歪分布を歪分布グラフとして表示する歪分布グラフ表示部5iと、算出された歪分布をデータシートとして出力するデータシート作成部5jと、で構成されている。
【0034】
演算装置5は、例えば、一般的なパーソナルコンピュータの様に、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶する記憶装置と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶する例えばRAM(Random Access Memory)のような一時記憶装置とを含んでいるものならば何でもよい。演算装置5が有する上記の各機能部5a〜5jは、これらハードウェアと記憶装置内のソフトウェアとで協働して構築されている。例えば、ソフトウェアには、測定した振動変位から固有振動数及び振動モードを解析するようなプログラムが含まれる。なお、演算装置5は、単体で形成されるものに限定されず、上記の各機能部5a〜5jが有する機能が上述のハードウェア及び記憶装置内のソフトウェアを夫々有する複数の装置に分散されるものであってもよい。
【0035】
(演算装置のハードウェア構成)
次に、演算装置5のハードウェア構成を
図2に示す。演算装置5は、CPU11と、一時記憶装置12と、記憶装置13と、信号入出力装置14と、設定入力装置15と、表示装置16と、データシート作成装置17と、を有している。CPU11は、後述する歪分布測定プログラムを実行し、帯状体モデル化計算、付加質量モデル化計算(第2実施形態のみ)、振動特性計算、歪分布計算など数値計算全般を行う回路である。
【0036】
一時記憶装置12は、歪分布測定プログラムの実行時に、プログラム本体を一時的に格納し、CPU11で行う各種計算に必要な帯状体の寸法や物性、付加質量情報(第2実施形態のみ)、帯状体のモデル化後のモデルデータ、振動特性データ、算出されたばね定数や応力分布、歪分布データなどを一時的に格納する。一時記憶装置12は、例えばRAMのような比較的小規模なデータを高速に転送可能なもので構成される。
【0037】
記憶装置13は、CPU11において算出されたデータを格納し、データベースとして保存する装置であり、例えば不揮発性の記憶装置であるHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ、光学ディスクなどを含む。記憶装置13には、帯状体のモデル化後のモデルデータ、振動特性データ、算出されたばね定数や応力分布、歪分布データなどが格納される。例えば、帯状体の寸法が変化した場合、帯状体モデルデータなどは新しい寸法で算出したモデルに更新する必要があるが、同じ寸法の帯状体が通板される場合には、前回の計測で算出して格納した値を再度読み込むことで、モデル化計算を省略することが可能である。
【0038】
信号入出力装置14は、振動荷重付加装置3(
図1参照)に向かって加振信号を出力するとともに、各変位計4(
図1参照)から送られてくる振動信号が入力される装置であり、例えば発信器やデータロガー、AD/DAボードなどを含む。
【0039】
設定入力装置15は、ユーザが各種入力を行うための装置であり、例えばマウス、キーボード、表示装置16の画面上に重畳して設けられたタッチパネルなどを含む。ユーザは、設定入力装置15を介して歪分布測定プログラムの開始や停止、終了操作などを行ない、帯状体の寸法や物性、付加質量計算のための空気の物性(第2実施形態のみ)などを設定する。設定入力画面の一例を
図3に示す。また、設定入力装置15を操作することで、例えば、過去に測定された歪分布データが格納された記憶装置13から歪分布データを読み出して、表示装置16に表示させたりデータシートを作成したりすることができる。
【0040】
表示装置(表示手段)16は、測定された歪分布データや応力分布データ、総張力データなどをユーザが確認できるように表示する装置であり、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などから構成される。CPU(グラフ化手段、表示制御手段)11は、歪分布データ等をグラフ化し、表示装置16に表示させる。棒グラフ表示画面の一例を
図4に、3次元グラフ表示画面の一例を
図5にそれぞれ示す。
【0041】
データシート作成装置(データシート作成手段)17は、測定された歪分布データや応力分布データ、総張力データなどをユーザがデータシートとして出力するための装置であり、例えば紙面にデータを印刷するプリンタや、PDFファイルなどに電子データ化するソフトウェアなどを含む。CPU(サンプリング手段、データシート作成制御手段)11は、歪分布データ等をサンプリングし、歪分布データ等に基づいたデータシートをデータシート作成装置17に作成させる。データシート出力例を
図6に示す。
【0042】
(歪分布測定システムの構成)
次に、歪分布測定システムの構成を
図7に示す。パーソナルコンピュータ21から出力された加振信号は、AD/DAボード22を介して電磁弁駆動回路(増幅器)23に入力され、増幅される。加振信号としては、例えばインパルス波形や周波数掃引波形が用いられる。特に、周波数掃引波形を用いて、帯状体の固有振動数が存在する周波数範囲で振動荷重の付加を行うと、固有振動モードが励起されて効果的な計測が可能となる。
【0043】
増幅されて電磁弁駆動回路23から出力された加振信号により、電磁弁24が駆動される。これにより、工場エアー配管25に接続されたエアーノズル26が開弁して、エアーノズル26から帯状体27に向かって空気が噴射される。加振された帯状体27の振動は幅方向に設置された変位計28により測定される。変位計28から出力された振動信号は、AD/DAボード22を介してパーソナルコンピュータ21に入力される。パーソナルコンピュータ21は、計測された振動信号を用いてモード解析を実行し、帯状体27の固有振動数や振動モードなどの振動特性を算出し、固有振動数と振動モードから応力分布を算出する。そして、パーソナルコンピュータ21は、算出した応力分布から歪分布を計算し、計算結果を画面に表示する。計測を終了する場合は、そのまま終了し、計測を終了しない場合は、加振信号を出力するところから同じ操作を繰り返し実行する。
【0044】
(歪分布測定プログラムの機能)
次に、
図7のパーソナルコンピュータ21、より具体的には
図2のCPU11が実行する歪分布測定プログラムの機能を
図8に示す。
【0045】
ユーザは帯状体の寸法や物性など(以下、帯状体情報という)を帯状体情報入力部31に入力する。ユーザが入力した帯状体情報は帯状体情報表示部32に表示され、ユーザは設定された値を確認することができる。また、後述する第2実施形態では、ユーザは空気の物性や圧力と温度の条件など(以下、付加質量情報という)を付加質量情報入力部33に入力する。ユーザが入力した付加質量情報は付加質量情報表示部34に表示され、ユーザは設定された値を確認することができる。
【0046】
歪分布測定プログラムは、入力された帯状体情報(第2実施形態では帯状体情報と付加質量情報)から記憶部35に格納されている過去のモデルデータを検索し、同一のモデルが見つかった場合には、一時記憶部36にモデルデータをコピーする。一方、同一のモデルが見つからなかった場合には、入力された帯状体情報を用いて帯状体モデル化部37で帯状体の2次元モデルを作成する。また、第2実施形態では、入力された付加質量情報を用いて付加質量モデル化部38で付加質量モデルを作成する。歪分布測定プログラムは、作成したモデルデータを一時記憶部36に格納し、そのモデルデータのコピーを記憶部35に格納する。
【0047】
次に、歪分布測定プログラムは、加振信号出力部39から振動荷重付加装置3(
図1参照)に加振信号を出力し、振動信号入力部40に入力された各変位計4(
図1参照)からの振動信号を一時記憶部36に格納する。そして、計測された振動信号から振動特性算出部41で帯状体の固有振動数や振動モードなどの振動特性を算出し、一時記憶部36に格納する。
【0048】
次に、歪分布測定プログラムは、一時記憶部36に格納したモデルデータと振動特性データからばね定数算出部42において帯状体モデルのばね定数を算出し、記憶部45に格納する。また、ばね定数から応力分布算出部43において応力分布を算出し、記憶部45に格納する。また、応力分布値から歪分布算出部44において歪分布を算出し、記憶部45に格納する。
【0049】
次に、歪分布測定プログラムは、記憶部45に格納した応力分布データや歪分布データをグラフ化して表示部46に表示させる。また、ユーザの操作に応じてデータシート作成部47にデータシートを作成させる。
【0050】
(2次元多質点系モデル)
次に、モデル化部5a(
図1参照)で帯状体1をモデル化した2次元多質点系モデルを
図9に示す。この2次元多質点系モデルは、支持部位間の帯状体1について、振動変位の各計測点1aに対応する節点51に、各節点51に作用する応力を模擬した直線ばね52を接続し、帯状体1の幅方向と各計測点1aの振動方向との2次元のモデルに簡略化したものである。各節点51は、帯状体1の幅方向と一致するように延在する固定面53に、これと垂直な各直線ばね52で接続されるとともに、隣接する各節点51同士が2次元平面内で回転自在な連結部材54で連結され、隣接する各連結部材54同士は回転ばね55で連結されている。各連結部材54の質量は、その幅方向部位での帯状体1の質量となり、回転ばね55のばね定数は、各節点51における帯状体1の曲げ剛性となる。
【0051】
このように、2次元多質点系モデルは、帯状体1の張力の大小と固有振動数の大小との間に相関があることに着目し、振動荷重付加装置3により加振された帯状体1の各計測点1aにおける振動変位と、各直線ばね52の各節点51における振動変位とが等しいものとして、帯状体1の幅方向の応力分布を、直線ばね52のばね定数の変化として把握するようにモデル化したものである。
【0052】
(歪分布測定方法)
次に、第1実施形態における歪分布測定方法の手順を
図10に示す。この歪分布測定方法は、上述した歪分布測定装置を用いて、上述した歪分布測定プログラムにより実行される。以下、
図1および
図2を参照しながら説明する。
【0053】
まず、これから測定を行う帯状体1(
図1参照)と同じ寸法の帯状体のモデルデータが演算装置5の記憶装置13(
図2参照)に格納されているか否かを判断する(ステップS1、以下、単にS1という。他も同じ)。同種のモデルデータが記憶装置13に格納されていないと判断した場合には(S1:NO)、ユーザにより設定入力装置15(
図2参照)から入力された帯状体情報(帯状体の寸法や物性など)に基づいて、モデル化部5a(
図1参照)で帯状体1を2次元多質点系モデルにモデル化する(S5)。そして、モデルデータを記憶装置13に格納する(S7)。一方、同種のモデルデータが記憶装置13に格納されていると判断した場合には(S1:YES)、記憶装置13から同種のモデルデータを読み込む(S8)。
【0054】
以下、
図1を参照しつつ説明する。S7又はS8の後に、加振信号出力部5bから振動荷重付加装置3に向かって加振信号を出力することで、帯状体1に振動荷重付加装置3で振動を付加するとともに(S11)、各変位計4によって帯状体1の振動変位を計測する(S12)。計測された振動変位に係る振動信号は、振動信号入力部5cに入力され、振動特性算出部5dで、モデル化した帯状体1の固有振動数や振動モードなどの振動特性を算出して(S13)、ばね定数算出部5eで帯状体1のばね定数を算出し(S14)、ばね定数換算部5fでばね定数を応力値に換算し、応力分布算出部5gで応力値から帯状体1の幅方向の応力分布を算出する(S15)。
【0055】
その後、算出した応力分布に基づいて歪分布算出部5hで帯状体1の歪分布を算出して(S16)、歪分布グラフ表示部5iで、算出した歪分布を歪分布グラフとして表示装置16(
図2参照)に表示させる(S17)。その後、測定を終了するか否かを判断する(S18)。測定を続ける場合には(S18,NO)、ステップS11に戻って測定を繰り返す一方、測定を終了する場合には(S18,YES)、データシート作成部5jで、算出された歪分布に基づいたデータシートをデータシート作成装置17(
図2参照)に作成させる(S19)。そして、フローを終了する。
【0056】
(応力分布の測定方法)
次に、上述した歪分布測定装置を用いて帯状体1の応力分布を測定する方法を、
図1および
図9を参照しつつ、具体的に説明する。
【0057】
2次元多質点系モデルの運動方程式は、帯状体1の質量マトリクスをM、各節点51の変位ベクトルをx、加速度ベクトルをα、各直線ばね52のばね定数に相当する張力剛性マトリクスをK
T、回転ばね55のばね定数に相当する曲げ剛性マトリクスをK
Rとすると、(1)式で表される。
Mα+(K
T+K
R)x=0 ・・・(1)
【0058】
(1)式の運動方程式から、M
−1(K
T+K
R)φ=λφとなる固有値λと固有ベクトルφとが算出されるように、(2)式を用いて固有値解析を行う。
(Φ
TMΦ)
−1Φ
T(K
T+K
R)Φ=Λ ・・・(2)
ここで、Λは固有値を対角要素とする対角行列、Φは固有ベクトルを列ベクトルとする直交行列である。
【0059】
固有値解析により算出された固有値Λと固有ベクトルΦは、それぞれ(3)、(4)、(5)式で表される。
【数1】
Φ=〔φ
1 φ
2・・・φ
n〕 ・・・(4)
φ
i={φ
i1 φ
i2・・・φ
in} ・・・(5)
【0060】
振動特性算出部5dでは、各計測点1aで計測された振動変位に基づいて、固有振動数ω(角周波数)と振動モードベクトルvが算出される。i次の固有振動数ω
iと振動モードベクトルv
iは、(6)、(7)式で表される。
ω
i={ω
i1 ω
i2・・・ω
in}
T ・・・(6)
v
i={v
i1 v
i2・・・v
in}
T ・・・(7)
ここに、nは計測点の数である。
【0061】
(2)式で算出される固有値Λと固有ベクトルΦの関数に含まれる直線ばね52のばね定数に相当する張力剛性マトリクスK
Tは未知数である。なお、帯状体1を幅方向に曲げる曲げ剛性マトリクスK
Rは、その曲げに対する断面二次モーメントによって決まる既知数である。そこで、ばね定数算出部5eでは、(2)式で算出され、(3)、(4)、(5)式で示した固有値Λおよび固有ベクトルΦが、それぞれ振動特性算出部5dで算出され、(6)、(7)式で示した固有振動数ω
iおよび振動モードベクトルv
iと一致するような張力剛性マトリクスK
Tを、(8)式に示す評価関数Jを用いて決定する。
【数2】
ここで、積算数mは振動のモード次数である。具体的には、張力剛性マトリクスK
Tに初期値を設定して評価関数Jを計算し、張力剛性マトリクスK
Tの値を少しずつ変化させた繰り返し計算での評価関数Jの変化量が最小となるときの張力剛性マトリクスK
Tの値をばね定数k
j(j=1〜n)とする。jは節点番号である。
【0062】
この評価関数Jは、固有ベクトルφ
iと振動モードベクトルv
iの各成分の差と、固有値λ
iと固有振動数ω
iの二乗の差を固有振動数ω
iの二乗で除算した値とを二乗和するものであり、ばね定数k
jが物理的に正の値をとることから、k
j>0であることを拘束条件として、評価関数Jが最小となるように、最急降下法や準ニュートン法等によって、各直線ばね52のばね定数k
jが決定される。
【0063】
応力分布算出部5gでは、帯状体1の計測点jにおける応力T
jが(9)式で表されることに基づいて、応力分布を算出する。
T
j=4LM
jf
j2 ・・・(9)
ここで、M
jは計測点jのある要素の質量であり、帯状体1の密度をρ、計測点jの要素の部分断面積をA
jとすると、(10)式で表される。
M
j=ρA
jL ・・・(10)
また、Lは帯状体1の支持部位間のスパン、f
jは部分断面積A
jの要素のばね定数をk
jとしたときの1自由度振動系の固有振動数である。なお、添字jは計測点jにおける数値を意味する。
【0064】
一般的に、減衰のない1自由度振動系の固有振動数は(11)式で表される。
【数3】
ここに、m’は1自由度振動系の質量、k’はばね定数である。
【0065】
したがって、固有振動数f
jが直線ばね52のばね定数k
jで表される固有振動数と一致するものとして、f
jは(12)式で表される。
【数4】
ここで、M
eqjは、それぞれモード次数iでの計測点jにおける帯状体1の等価質量であり、(13)式で表される。
M
eqj=M
modal/v
ij2 ・・・(13)
ここで、M
modalは、帯状体1のモード質量であり、〔Φ〕
T〔M〕〔Φ〕から算出される。また、v
ijは、計測点jで測定されたi次の振動モードベクトルの成分である。
【0066】
したがって、各計測点jでの帯状体1の応力分布T
jは、(10)式に示した帯状体1の質量M
jを用いて、(14)式から算出することができる。
T
j=(k
jLM
j)/(π
2M
eqj) ・・・(14)
【0067】
(歪分布の測定方法)
次に、応力分布に基づいて歪分布を算出する方法について説明する。
【0068】
まず、
図11(a)に示すように、板厚方向位置を横軸とし、応力分布を縦軸とするグラフにおいて、板厚方向に並んだ9つの節点のうち、任意の2つの節点を通る直線を引く。
図11(a)においては3つの直線61,62,63を図示している。これを、9つの節点の全ての組み合わせについて行い、各直線の傾きと切片とを計算する。ここで、節点がn個の場合には、n×(n―1)/2個の組み合わせについてそれぞれ直線を引いて、それぞれの傾きと切片とを計算する。
【0069】
図11(a)に示すように、応力値が下に凸な分布となっている場合には、各直線について、応力値が直線の値以上となる節点の数を数え、応力値が直線の値以上となる節点の数が2つである直線を選択する。例えば、応力値が直線の値以上となる節点の数は、直線61の場合には9個であり、直線62の場合には8個である。
図11(b)に示すように、応力値が下に凸な分布となっている場合には、選択する直線は、両端の2つの節点を通る直線64となる。この直線64から応力分布を差し引いて、直線と応力分布との差分であって帯状体の歪分布に対応する応力分布成分を求める。
図11(b)においては、この応力分布成分をハッチングで示している。そして、応力分布成分を帯状体のヤング率で割ることにより、
図11(c)に示すように、歪分布が算出される。
【0070】
一方、
図12(a)に示すように、応力値が上に凸な分布となっている場合には、任意の2つの節点を通る直線を引くと、応力値が直線の値以上となる節点の数が2つである直線は複数となる。例えば、
図12(a)に示す直線65,66,67は、いずれも応力値が直線の値以上となる節点の数が2つである。そこで、応力値が上に凸な分布となっている場合には、応力値が直線の値以上となる節点の数が2つである直線の各々について、応力分布との差分である応力分布成分を求め、応力分布成分のベクトルの大きさが最小である直線を選択する。
図12(a)に示す場合、直線65,66,67を含む複数の直線の各々について応力分布成分を求めて、応力分布成分のベクトルの大きさを比較し、応力分布成分のベクトルの大きさが最小である直線66を選択する。次に、
図12(b)に示すように、選択した直線66から応力分布を差し引いて、直線と応力分布との差分であって帯状体の歪分布に対応する応力分布成分を求める。
図12(b)においては、この応力分布成分をハッチングで示している。そして、応力分布成分を帯状体のヤング率で割ることにより、
図12(c)に示すように、歪分布が算出される。
【0071】
歪分布の経時変化を
図13に示す。縦軸は時間軸であり、横軸は板厚方向位置である。
図10に示すフローにおいて、S11からS18までを繰り返すことで、時間軸に沿って新たな歪分布が古い歪分布の上に順次表示されていくこととなる。これにより、帯状体が幅方向にどのように歪んでいるのかを把握することができる。
【0072】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る歪分布測定装置、歪分布測定方法、および、歪分布測定プログラムによると、帯状体の幅方向の応力分布に基づいて帯状体の幅方向の歪分布を算出することにより、帯状体が幅方向にどのように歪んでいるのかを把握することができる。これにより、走行中の帯状体の形状を直接的に把握することができる。
【0073】
また、帯状体の応力分布を、帯状体と物理的に近似する2次元の多質点系モデルによって算出することで、幅方向に複雑な応力分布を有する場合であっても、簡易な物理モデルを用いて計測点に分布する応力の夫々について高精度に算出することができる。
【0074】
また、歪分布に対応する応力分布成分を帯状体のヤング率で除した値を歪分布として算出することで、帯状体の不均一歪を直接的に把握することができる。
【0075】
また、歪分布をグラフ化して表示装置16に表示させることにより、走行中の帯状体の形状を視覚的に把握することができる。
【0076】
また、歪分布をサンプリングしてデータシートを作成することで、走行中の帯状体の形状を視覚的に把握することができる。
【0077】
[第2実施形態]
(2次元多質点系モデル)
次に、本発明の第2実施形態に係る歪分布測定装置について説明する。本実施形態の歪分布測定装置が、第1実施形態の歪分布測定装置と異なる点は、
図9に示す2次元多質点系モデルにおいて、各連結部材54の質量を、その幅方向部位での帯状体1の質量に空気(流体)の付加質量を加えたものとしてモデル化している点である。即ち、第1実施形態においては、振動する帯状体が、これに接する空気等の流体から受ける影響を考慮していないのに対し、本実施形態においては、振動する帯状体が、これに接する空気等の流体から受ける影響を考慮している。そのため、各連結部材54の質量は、その幅方向部位での帯状体1の質量に、後述する空気の付加質量を加えたものとなる。
【0078】
(歪分布測定方法)
第2実施形態の歪分布測定方法の手順を
図14に示す。この歪分布測定方法は、本実施形態の歪分布測定装置を用いて、本実施形態の歪分布測定プログラムにより実行される。以下、
図1および
図2を参照しながら説明する。
【0079】
まず、これから測定を行う帯状体1と同じ寸法の帯状体のモデルデータが演算装置5の記憶装置13に格納されているか否かを判断する(S1)。同種のモデルデータが記憶装置13に格納されていないと判断した場合には(S1:NO)、ユーザにより設定入力装置15から入力された付加質量情報(空気の物性や圧力と温度条件など)に基づいて、モデル化部5aで支持部位間で帯状体1に接する流体としての空気の付加質量をモデル化し(S2)、モデル化した付加質量を算出し(S3)、後述するように、算出した付加質量の自由度を縮小する(S4)。なお、
図10から明らかなように、第1実施形態においてはS2〜S4を実行していない。
【0080】
その後は、第1実施形態と同様に、モデル化部5aで帯状体1を2次元多質点系モデルにモデル化する(S5)。そして、モデルデータを記憶装置13に格納する(S7)。一方、同種のモデルデータが記憶装置13に格納されていると判断した場合には(S1:YES)、記憶装置13から同種のモデルデータを読み込む(S8)。
【0081】
S7又はS8の後は、第1実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0082】
(応力分布の測定方法)
次に、上述した歪分布測定装置を用いて帯状体1の応力分布を測定する方法を、
図1および
図9を参照しつつ、具体的に説明する。
【0083】
2次元多質点系モデルの運動方程式は、帯状体1の質量マトリクスをM、後述する空気の付加質量マトリクスをm
add、各節点51の変位ベクトルをx、加速度ベクトルをα、各直線ばね52のばね定数に相当する張力剛性マトリクスをK
T、回転ばね55のばね定数に相当する曲げ剛性マトリクスをK
Rとすると、(15)式で表される。
(M+m
add)α+(K
T+K
R)x=0 ・・・(15)
【0084】
(15)式の運動方程式から、(M+m
add)
−1(K
T+K
R)φ=λφとなる固有値λと固有ベクトルφとが算出されるように、(16)式を用いて固有値解析を行う。
{Φ
T(M+m
add)Φ}
−1Φ
T(K
T+K
R)Φ=Λ ・・・(16)
ここで、Λは固有値を対角要素とする対角行列、Φは固有ベクトルを列ベクトルとする直交行列である。
【0085】
図15は、モデル化部5aで用いる距離・流体力曲線法による付加質量の計算モデルを示す。この計算モデルは、支持部位間の帯状体1の表面を微小面積の要素7に区分し、以下に説明するように、振動変位によって各要素7に作用する音圧から空気の付加質量m
addを計算するものである。なお、要素7の区分は、帯状体1の表面積に比較して各要素7の面積が十分に小さければよく、例えば、縦横10×10程度の区分でよい。
【0086】
図16に示すように、半無限大平面を想定して、振動する要素をs、音圧が作用する要素をi、要素sと要素i間の距離をr
isとし、各要素i、sの面積をA
i、A
s、要素sの速度をv
s、加速度をα
s、要素iに作用する音圧をp
iとすると、帯状体1の振動による音響放射で要素iに作用する音圧による力P
iは(17)、(18)式で表される。
i≠sの場合は、
【数5】
i=sの場合は、
【数6】
ここに、ρ
airは空気の密度、ωは振動の角周波数、cは空気中の音速、kは波長常数(=ω/c)であり、ρ
airは、空気の温度T
air(℃)を用いて(19)式で表される。
ρ
air=1.293×273.2/(273.2+T
air) ・・・(19)
空気の温度T
airがあまり変化せず、例えば、0℃に近い場合は、ρ
air=1.293としてもよい。
【0087】
一方、要素sの振動に伴う音圧の発生で要素iに作用する力P
iは複素数のベクトルとなり、実部を振動速度v
sの係数c
airで、虚部を振動速度と90°位相がずれた加速度α
sの係数m
airで、(20)式のように表すことができる。
P
i=c
airv
s+m
airα
s ・・・(20)
ここに、実部は付加減衰項、虚部は付加質量項となり、虚部の係数m
airを空気の付加質量とみなすことができる。
【0088】
(17)、(18)式と(20)式から求められる各要素ごとのm
airを、(21)式で示すように、形状関数Nを用いて節点自由度に変換し、帯状体1の表裏両面分として2倍することにより、帯状体1に作用する付加質量分布M
addを計算することができる。
【数7】
【0089】
(21)式で計算した付加質量分布M
addの計算例を
図17に示す。
図17の計算例は、分布状態を見やすくするために、各要素の付加質量マトリクスの対角項のみの分布を表示したものである。
【0090】
つぎに、(21)式で計算された付加質量分布M
addを、2次元多質点系モデルの自由度に合わせて、帯状体1の長手方向に縮小する方法を説明する。
図18に示すように、多質点系モデルの帯状体1の長手方向の各点における質量mを1点の等価質量m
eqに縮小した等価モデルを考える。各質量mの質量マトリクスをM、振動モードをφとすると、両モデルの運動エネルギが等しいと置くことで、次式が得られる。
【数8】
ここに、Xは振動変位、ωは振動の角周波数である。振動モードをX=1と正規化すれば、等価質量m
eqは(23)式で求められる。
m
eq=φ
TMφ ・・・(23)
【0091】
(23)式を付加質量マトリクスM
addに適用して、
図19に示すように、帯状体1の長手方向の1箇所に付加される等価質量マトリクスm
addに縮小する。帯状体1の長手方向の節点数をl、幅方向の節点数をnとすると、付加質量マトリクスM
addと等価質量マトリクスm
addは、それぞれ部分行列M
ij(i,j=1〜n)を用いて(24)、(25)式で表される。
【数9】
【数10】
ここに、
φ={sinθ
1 sinθ
2・・・sinθ
m}
T ・・・(26)
θ
i=(i−1)π/(m−1) (i=1〜m) ・・・(27)
(25)式の等価質量マトリクスm
addの対角項m
ii(i=1〜n)は、帯状体表面の微小面積ごとの分布質量を意味し、非対角項m
ij(i≠j)は、振動することで発生する圧力分布によって影響しあう2つの異なる微小面積間の連成質量を意味する。
【0092】
(25)式より、縮小変換マトリクスΦおよび等価質量マトリクスm
addは、それぞれ(28)、(29)式で計算される。
【数11】
m
add=Φ
TM
addΦ ・・・(29)
したがって、(29)式で計算された等価質量マトリクスm
addを(16)式に代入することにより、固有値Λと固有ベクトルΦが算出される。算出された固有値Λと固有ベクトルΦは、それぞれ(30)、(31)、(32)式で表される。
【数12】
Φ=〔φ
1 φ
2・・・φ
n〕 ・・・(31)
φ
i={φ
i1 φ
i2・・・φ
in} ・・・(32)
【0093】
なお、付加質量マトリクスM
addを幅方向に縮小する場合は、
図20(a)、
図20(b)に示すように、幅方向の各節点に分布する質量mを分割して、隣り合う節点に配分する簡易的な縮小方法を採用することができる。すなわち、節点数が奇数の場合は、縮小変換マトリクスΦ
1/2を(33)式、節点数が偶数の場合は、縮小変換マトリクスΦ
1/2を(34)式として、
【数13】
【数14】
等価質量マトリクスm
addを(35)式で計算することができる。
m
add=Φ
1/2TM
addΦ
1/2 ・・・(35)
【0094】
振動特性算出部5dでは、各計測点1aで計測された振動変位に基づいて、固有振動数ω(角周波数)と振動モードベクトルvが算出される。i次の固有振動数ω
iと振動モードベクトルv
iは、(36)、(37)式で表される。
ω
i={ω
i1 ω
i2・・・ω
in}
T ・・・(36)
v
i={v
i1 v
i2・・・v
in}
T ・・・(37)
ここに、nは測定点の数である。
【0095】
(16)式で算出される固有値Λと固有ベクトルΦの関数に含まれる直線ばね52のばね定数に相当する張力剛性マトリクスK
Tは未知数である。なお、帯状体1を幅方向に曲げる曲げ剛性マトリクスK
Rは、その曲げに対する断面二次モーメントによって決まる既知数である。そこで、ばね定数算出部5eでは、(16)式で算出され、(30)、(31)、(32)式で示した固有値Λおよび固有ベクトルΦが、それぞれ振動特性算出部5dで算出され、(36)、(37)式で示した固有振動数ω
iおよび振動モードベクトルv
iと一致するような張力剛性マトリクスK
Tを、(38)式に示す評価関数Jを用いて決定する。
【数15】
ここで、積算数mは振動のモード次数である。具体的には、張力剛性マトリクスK
Tに初期値を設定して評価関数Jを計算し、張力剛性マトリクスK
Tの値を少しずつ変化させた繰り返し計算での評価関数Jの変化量が最小となるときの張力剛性マトリクスK
Tの値をばね定数k
j(j=1〜n)とする。jは節点番号である。
【0096】
この評価関数Jは、固有ベクトルφ
iと振動モードベクトルv
iの各成分の差と、固有値λ
iと固有振動数ω
iの二乗の差を固有振動数ω
iの二乗で除算した値とを二乗和するものであり、ばね定数k
jが物理的に正の値をとることから、k
j>0であることを拘束条件として、評価関数Jが最小となるように、最急降下法や準ニュートン法等によって、直線ばね52a〜52eのばね定数k
jが決定される。
【0097】
応力分布算出部5gでは、帯状体1の計測点jにおける応力T
jが(39)式で表されることに基づいて、応力分布を算出する。
T
j=4LM
jf
j2 ・・・(39)
ここで、M
jは計測点jのある要素の質量であり、帯状体1の密度をρ、計測点jの要素の部分断面積をA
jとすると、(40)式で表される。
M
j=ρA
jL ・・・(40)
また、Lは帯状体1の支持部位間のスパン、f
jは部分断面積A
jの要素のばね定数をk
jとしたときの1自由度振動系の固有振動数である。なお、添字jは計測点jにおける数値を意味する。
【0098】
一般的に、減衰のない1自由度振動系の固有振動数は(41)式で表される。
【数16】
ここに、m’は1自由度振動系の質量、k’はばね定数である。
【0099】
したがって、固有振動数f
jが直線ばね52のばね定数k
jで表される固有振動数と一致するものとして、f
jは(42)式で表される。
【数17】
ここで、M
eqjは、それぞれモード次数iでの計測点jにおける帯状体1の等価質量であり、(43)式で表される。
M
eqj=M
modal/v
ij2 ・・・(43)
ここで、M
modalは、帯状体1のモード質量であり、〔Φ〕
T〔M〕〔Φ〕から算出される。また、v
ijは、計測点jで測定されたi次の振動モードベクトルの成分である。
【0100】
したがって、各計測点jでの帯状体1の応力分布T
jは、(40)式に示した帯状体1の質量M
jを用いて、(44)式から算出することができる。
T
j=(k
jLM
j)/(π
2M
eqj) ・・・(44)
【0101】
その他の構成は第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0102】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る歪分布測定装置、歪分布測定方法、および、歪分布測定プログラムによると、密度の低い帯状体や板厚の薄い帯状体であっても、その振動に影響する周りの流体の付加質量を考慮に入れて、応力分布を精度よく測定することができる。
【0103】
[第3実施形態]
(2次元多質点系モデル)
次に、本発明の第3実施形態に係る歪分布測定装置について説明する。本実施形態の歪分布測定装置が第1実施形態の歪分布測定装置と異なる点は、
図9に示す2次元多質点系モデルにおいて、各計測点1aにおける幅方向の曲げ剛性を、各節点51における回転ばね55のばね定数の変化として把握するようにモデル化している点である。即ち、第1実施形態および第2実施形態においては、幅方向の曲げ剛性を模擬する回転ばね55のばね定数が既知であったのに対し、本実施形態においては、回転ばね55のばね定数は未知数である。
【0104】
(歪分布測定方法)
第3実施形態の歪分布測定方法の手順を
図21に示す。この歪分布測定方法は、本実施形態の歪分布測定装置を用いて、本実施形態の歪分布測定プログラムにより実行される。以下、
図1および
図2を参照しながら説明する。
【0105】
まず、これから測定を行う帯状体1と同じ寸法の帯状体のモデルデータが演算装置5の記憶装置13に格納されているか否かを判断する(S1)。同種のモデルデータが記憶装置13に格納されていないと判断した場合には(S1:NO)、ユーザにより設定入力装置15から入力された帯状体情報(帯状体の寸法や物性など)に基づいて、モデル化部5aで帯状体1を2次元多質点系モデルにモデル化する(S6)。このモデル化は、各計測点1aにおける幅方向の曲げ剛性を、各節点51における回転ばね55のばね定数の変化として把握するようにしている点で、
図10,
図14のS5とは異なっている。そして、モデルデータを記憶装置13に格納する(S7)。一方、同種のモデルデータが記憶装置13に格納されていると判断した場合には(S1:YES)、記憶装置13から同種のモデルデータを読み込む(S8)。
【0106】
S7又はS8の後は、第1実施形態と同じであるのでその説明を省略する。
【0107】
(応力分布の測定方法)
次に、上述した歪分布測定装置を用いて帯状体1の応力分布を測定する方法を、
図1および
図9を参照しつつ、具体的に説明する。
【0108】
2次元多質点系モデルの運動方程式は、帯状体1の質量マトリクスをM、各節点51の変位ベクトルをx、加速度ベクトルをα、各直線ばね52のばね定数に相当する張力剛性マトリクスをK
T、回転ばね55のばね定数に相当する曲げ剛性マトリクスをK
τとすると、(45)式で表される。
Mα+(K
T+K
τ)x=0 ・・・(45)
【0109】
質量マトリクスMは、帯状体1の寸法および物性から算出される既知行列であり、(46)式で表される。
【数18】
【0110】
質量マトリクスMの各要素に含まれる質量mと慣性モーメントJは、長手方向の振動モードを正弦波で近似して縮小した場合の等価質量と等価剛性から算出される。支持ロール2a、2b間の距離をL、帯状体1の板厚をt、密度をρ、連結部材54の長さをlとすると、支持ロール2a、2b間の中心における等価質量mは、長手方向の振動モードを1次とすると、(47)式で求められる。
m=ρtlL/2 ・・・(47)
また、慣性モーメントJは、(47)式で求めた等価質量mから(48)式で求められる。
J=m(t
2+l
2)/12 ・・・(48)
【0111】
張力剛性マトリクスK
Tと曲げ剛性マトリクスK
τは未知行列であり、張力剛性マトリクスK
Tは直線ばね52のばね定数k
j(j=1〜n)を用いて(49)式で表される。
【数19】
【0112】
また、曲げ剛性マトリクスK
τは回転ばね55のばね定数τ
j(j=1〜n−2)を用いて(50)式で表される。
【数20】
【0113】
曲げ剛性マトリクスK
τの各要素に含まれる幅方向の曲げ剛性に相当するばね定数τ
iが算出されたときの断面二次モーメントI
jへの換算式は(51)式で表される。
I
j=τ
jl/E ・・・(51)
【0114】
(45)式の運動方程式から、M
−1(K
T+K
R)φ=λφとなる固有値λと固有ベクトルφとが算出されるように、(52)式を用いて固有値解析を行う。
(Φ
TMΦ)
−1Φ
T(K
T+K
R)Φ=Λ ・・・(52)
ここで、Λは固有値を対角要素とする対角行列、Φは固有ベクトルを列ベクトルとする直交行列である。
【0115】
固有値解析により算出された固有値Λと固有ベクトルΦは、それぞれ(53)、(54)、(55)式で表される。
【数21】
Φ=〔φ
1 φ
2・・・φ
n〕 ・・・(54)
φ
i={φ
i1 φ
i2・・・φ
in} ・・・(55)
【0116】
振動特性算出部5dでは、各計測点1aで計測された振動変位に基づいて、固有振動数ω(角周波数)と振動モードベクトルvが算出される。i次の固有振動数ω
iと振動モードベクトルv
iは、(56)、(57)式で表される。
ω
i={ω
i1 ω
i2・・・ω
in}
T ・・・(56)
v
i={v
i1 v
i2・・・v
in}
T ・・・(57)
ここに、nは計測点の数である。
【0117】
(52)式で算出される固有値Λと固有ベクトルΦの関数に含まれる直線ばね52のばね定数に相当する張力剛性マトリクスK
Tは未知数である。また、帯状体1を幅方向に曲げる曲げ剛性マトリクスK
τは、その曲げに対する断面二次モーメントによって決まる未知数である。そこで、ばね定数算出部5eでは、(52)式で算出され、(53)、(54)、(55)式で示した固有値Λおよび固有ベクトルΦが、それぞれ振動特性算出部5dで算出され、(56)、(57)式で示した固有振動数ω
iおよび振動モードベクトルv
iと一致するような張力剛性マトリクスK
Tを、(58)式に示す評価関数Jを用いて決定する。
【数22】
ここで、積算数mは振動のモード次数である。具体的には、張力剛性マトリクスK
Tおよび曲げ剛性マトリクスK
τに初期値を設定して評価関数Jを計算し、張力剛性マトリクスK
Tおよび曲げ剛性マトリクスK
τの値を少しずつ変化させた繰り返し計算での評価関数Jの変化量が最小となるときの張力剛性マトリクスK
Tの値をばね定数k
j(j=1〜n)とするとともに、評価関数Jの変化量が最小となるときの曲げ剛性マトリクスK
τの値をばね定数τ
j(j=1〜n−2)とする。jは節点番号である。
【0118】
この評価関数Jは、固有ベクトルφ
iと振動モードベクトルv
iの各成分の差と、固有値λ
iと固有振動数ω
iの二乗の差を固有振動数ω
iの二乗で除算した値とを二乗和するものであり、ばね定数k
jおよびばね定数τ
jが物理的に正の値をとることから、k
j>0、τ
j>0であることを拘束条件として、評価関数Jが最小となるように、最急降下法や準ニュートン法等によって、各直線ばね52のばね定数k
jおよび回転ばね55のばね定数τ
jが決定される。
【0119】
応力分布算出部5gでは、帯状体1の計測点jにおける応力T
jが(59)式で表されることに基づいて、応力分布を算出する。
T
j=4LM
jf
j2 ・・・(59)
ここで、M
jは計測点jのある要素の質量であり、帯状体1の密度をρ、計測点jの要素の部分断面積をA
jとすると、(60)式で表される。
M
j=ρA
jL ・・・(60)
また、Lは帯状体1の支持部位間のスパン、f
jは部分断面積A
jの要素のばね定数をk
jとしたときの1自由度振動系の固有振動数である。なお、添字jは計測点jにおける数値を意味する。
【0120】
一般的に、減衰のない1自由度振動系の固有振動数は(61)式で表される。
【数23】
ここに、m’は1自由度振動系の質量、k’はばね定数である。
【0121】
したがって、固有振動数f
jが直線ばね52のばね定数k
jで表される固有振動数と一致するものとして、f
jは(62)式で表される。
【数24】
ここで、M
eqjは、それぞれモード次数iでの計測点jにおける帯状体1の等価質量であり、(63)式で表される。
M
eqj=M
modal/v
ij2 ・・・(63)
ここで、M
modalは、帯状体1のモード質量であり、〔Φ〕
T〔M〕〔Φ〕から算出される。また、v
ijは、計測点jで測定されたi次の振動モードベクトルの成分である。
【0122】
したがって、各計測点jでの帯状体1の応力分布T
jは、(60)式に示した帯状体1の質量M
jを用いて、(64)式から算出することができる。
T
j=(k
jLM
j)/(π
2M
eqj) ・・・(64)
【0123】
また、算出した回転ばね55のばね定数τ
jは、(51)式によって断面二次モーメントI
jに換算され、幅方向の曲げ剛性分布が算出される。
【0124】
その他の構成は第1実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0125】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る歪分布測定装置、歪分布測定方法、および、歪分布測定プログラムによると、不均一歪みの一部顕在によって幅方向の曲げ剛性が変化する帯状体であっても、応力分布を精度よく測定することができる。
【0126】
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。